(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ハンドの駆動方法およびハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240814BHJP
H02N 2/12 20060101ALI20240814BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240814BHJP
B25J 7/00 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
B25J15/00 F
H02N2/12
B25J15/08 C
B25J15/08 A
B25J7/00
(21)【出願番号】P 2020183022
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 優作
(72)【発明者】
【氏名】朝内 昇
(72)【発明者】
【氏名】山村 光宏
(72)【発明者】
【氏名】川路 道子
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-157405(JP,A)
【文献】特開2000-292145(JP,A)
【文献】特開2004-050321(JP,A)
【文献】特開2021-013991(JP,A)
【文献】特開平08-090478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0331709(US,A1)
【文献】実開昭63-032786(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第102485439(CN,A)
【文献】特開2001-315084(JP,A)
【文献】特開2021-100768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H02N 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1指部および第2指部と、前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を駆動して前記第1指部と前記第2指部との相対位置を制御する駆動部と、前記第1指部と前記第2指部との相対位置を検出する位置検出部と、を有し、前記第1指部と前記第2指部とで対象物を挟持するハンドの駆動方法であって、
前記位置検出部により、前記第1指部および前記第2指部が前記対象物を挟むときの前記第1指部と前記第2指部との相対位置を基準相対位置として検出するステップと、
前記第1指部および前記第2指部に挟持された前記対象物を開放する指示を受け付けたら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の相対位置を前記基準相対位置よりも
所定距離以上離間した目標相対位置とするステップと、
前記目標相対位置となったら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を
振動の振幅が前記所定距離となるように振動させるステップと、を有することを特徴とするハンドの駆動方法。
【請求項2】
前記振動させるステップに先立って前記振幅に基づいて前記目標相対位置を決定するステップを有する請求項1に記載のハンドの駆動方法。
【請求項3】
対象物を挟持する第1指部および第2指部と、
前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を駆動して前記第1指部と前記第2指部との相対位置を制御する駆動部と、
前記第1指部と前記第2指部との相対位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した相対位置を記憶する記憶部と、
前記駆動部の駆動を制御する駆動制御部と、を有し、
前記位置検出部は、前記第1指部および前記第2指部が前記対象物を挟むときの前記第1指部と前記第2指部との相対位置を基準相対位置として検出し、
前記記憶部は、前記基準相対位置を記憶し、
前記駆動制御部は、前記第1指部および前記第2指部に挟持された前記対象物を開放する指示を受け付けたら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の相対位置を前記基準相対位置よりも
所定距離以上離間した目標相対位置とし、前記目標相対位置となったら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を
振動の振幅が前記所定距離となるように振動させることを特徴とするハンド。
【請求項4】
前記基準相対位置は、前記第1指部および前記第2指部に前記対象物からの反力が加わったときの位置である請求項3に記載のハンド。
【請求項5】
前記振動は、前記基準相対位置への移動と前記目標相対位置への移動との繰り返しである請求項3または4に記載のハンド。
【請求項6】
前記駆動部は、超音波モーターを備え、
前記超音波モーターを前記第1指部または前記第2指部の共振周波数で駆動することにより前記振動を発生させる請求項3または4に記載のハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドの駆動方法およびハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたマイクログリップは、U字形把握指と、このU字形把握指を開閉する圧電素子と、を有する。圧電素子に電圧を印加するとU字形把握指の先端部同士が当接して閉止し、圧電素子への電圧の印加を停止するとU字形把握指の先端部同士が離間して開放する。そのため、圧電素子の駆動によってU字形把握指の先端部を閉止、開放することにより、U字形把握指の先端部で把持対象物を把握し、開放することができる。
【0003】
ここで、U字形把握指で把握した把持対象物を開放する際、把持対象物がU字形把握指に付着し、うまく離脱しない場合がある。そこで、特許文献1のマイクログリップは、閉止と開放とを交互に繰り返すようにU字形把握指を高周波で振動させることにより、U字形把握指に付着した把持対象物を強制的に離脱させる離脱機構をさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のマイクログリップでは、閉止と開放とを交互に繰り返すようにU字形把握指を高周波で振動させるため、閉止側に振動した際に把持対象物に過度な応力が加わり、把持対象物を破損、損傷させてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハンドの駆動方法は、第1指部および第2指部と、前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を駆動して前記第1指部と前記第2指部との相対位置を制御する駆動部と、前記第1指部と前記第2指部との相対位置を検出する位置検出部と、を有し、前記第1指部と前記第2指部とで対象物を挟持するハンドの駆動方法であって、
前記位置検出部により、前記第1指部および前記第2指部が前記対象物を挟むときの前記第1指部と前記第2指部との相対位置を基準相対位置として検出するステップと、
前記第1指部および前記第2指部に挟持された前記対象物を開放する指示を受け付けたら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の相対位置を前記基準相対位置よりも前記振動の振幅以上離間した目標相対位置とするステップと、
前記目標相対位置となったら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を振動させるステップと、を有する。
【0007】
本発明のハンドは、対象物を挟持する第1指部および第2指部と、
前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を駆動して前記第1指部と前記第2指部との相対位置を制御する駆動部と、
前記第1指部と前記第2指部との相対位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した相対位置を記憶する記憶部と、
前記駆動部の駆動を制御する駆動制御部と、を有し、
前記位置検出部は、前記第1指部および前記第2指部が前記対象物を挟むときの前記第1指部と前記第2指部との相対位置を基準相対位置として検出し、
前記記憶部は、前記基準相対位置を記憶し、
前記駆動制御部は、前記第1指部および前記第2指部に挟持された前記対象物を開放する指示を受け付けたら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の相対位置を前記基準相対位置よりも前記振動の振幅以上離間した目標相対位置とし、前記目標相対位置となったら、前記駆動部により、前記第1指部および前記第2指部の少なくとも一方を振動させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るハンドを示す断面図である。
【
図2】
図1のハンドが有する超音波モーターを示す平面図である。
【
図3】
図2の超音波モーターに印加する駆動電圧の一例を示す図である。
【
図6】挟持動作の手順を示すフローチャートである。
【
図7】挟持動作の際の回転量差Δθの推移を示すグラフである。
【
図8】保持動作の手順を示すフローチャートである。
【
図9】開放動作の手順を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態に係るハンドの開放動作の手順を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態に係るハンドを示す断面図である。
【
図12】
図11のハンドの開放動作の手順を示すフローチャートである。
【
図13】第4実施形態に係るハンドを示す断面図である。
【
図14】
図13のハンドの挟持動作の手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図13のハンドの保持動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハンドの駆動方法およびハンドを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るハンドを示す断面図である。
図2は、
図1のハンドが有する超音波モーターを示す平面図である。
図3は、
図2の超音波モーターに印加する駆動電圧の一例を示す図である。
図4および
図5は、それぞれ、
図1のハンドの動作を示す断面図である。
図6は、挟持動作の手順を示すフローチャートである。
図7は、挟持動作の際の回転量差Δθの推移を示すグラフである。
図8は、保持動作の手順を示すフローチャートである。
図9は、開放動作の手順を示すフローチャートである。
【0011】
図1に示すハンド1の使用態様としては特に限定されず、例えば、多関節ロボットのアーム先端に取り付けるエンドエフェクターとして用いられたり、使用者が直接把持して用いられたりする。
【0012】
ハンド1は、基体2と、基体2に対して回転軸Jまわりに回転可能に支持された第1ローター31と、第1ローター31を回転軸Jまわりに回転させる駆動部としての超音波モーター4と、第1ローター31と同軸的に配置され、基体2に対して回転軸Jまわりに回転可能に支持された第2ローター32と、第1ローター31と第2ローター32との間に配置され、第1ローター31と第2ローター32とを接続する弾性を有する伝達部5と、第1ローター31の変位量すなわち回転量を検出する第1エンコーダー61と、第2ローター32の変位量すなわち回転量を検出する第2エンコーダー62と、第2ローター32に固定されたピニオン70と、基体2に対して矢印方向にスライド可能に支持されると共にピニオン70に噛合し、ピニオン70の回転により互いに相反方向に移動する一対のラック71、72と、ラック71に固定された第1指部81と、ラック72に固定された第2指部82と、超音波モーター4の駆動を制御する制御装置9と、を有する。
【0013】
このようなハンド1では、制御装置9による制御によって超音波モーター4を駆動すると、第1ローター31が回転軸Jまわりに回転し、この回転が伝達部5を介して第2ローター32に伝達されて第2ローター32が回転軸Jまわりに回転する。さらに、第2ローター32の回転によってピニオン70が回転し、一対のラック71、72が互いに相反方向に移動する。これにより、第1指部81および第2指部82が離間および接近して開閉する。この第1指部81および第2指部82の開閉によって、ワークWを挟持したり、挟持したワークWを開放したりすることができる。
【0014】
第1ローター31は、ベアリングBB1を介して基体2に対し軸支され、回転軸Jまわりに回転可能である。第1ローター31は、円筒状の基部311と、基部311から周方向に突出した円盤状のローター本体312と、を有する。このような第1ローター31には第1エンコーダー61が配置され、第1エンコーダー61によって第1ローター31の回転量および角速度が検出される。なお、第1エンコーダー61としては、特に限定されず、例えば、第1ローター31の回転時にその回転量を検出するインクリメンタル型のエンコーダーであってもよいし、第1ローター31の回転の有無に関わらず、第1ローター31の原点からの絶対位置を検出するアブソリュート型のエンコーダーであってもよい。
【0015】
第1エンコーダー61は、ロータリーエンコーダーであり、ローター本体312の下方において基部311に固定された円盤状のスケール611と、スケール611を間に挟んで配置され、基体2に固定された発光素子612および受光素子613と、を有する。スケール611には、周方向に並んで配置された図示しない複数のスリットが形成されており、このスリットを通過した発光素子612からの光を受光素子613が受光する。そのため、受光素子613の受光回数に基づいて第1ローター31の回転量を検出することができ、単位時間当たりの受光回数に基づいて第1ローター31の角速度を検出することができる。ただし、第1エンコーダー61の構成としては、特に限定されない。
【0016】
第2ローター32は、ベアリングBB2を介して基体2に対し軸支され、回転軸Jまわりに回転可能である。つまり、第1ローター31および第2ローター32は、同軸的に配置され、共に回転軸Jまわりに回転可能である。このような第2ローター32には第2エンコーダー62が配置され、第2エンコーダー62によって第2ローター32の回転量および角速度が検出される。第2エンコーダー62としては、特に限定されず、例えば、第2ローター32の回転時にその回転量を検出するインクリメンタル型のエンコーダーであってもよいし、第2ローター32の回転の有無に関わらず、第2ローター32の原点からの絶対位置を検出するアブソリュート型のエンコーダーであってもよい。
【0017】
第2エンコーダー62は、前述した第1エンコーダー61と同様の構成である。すなわち、第2エンコーダー62は、ロータリーエンコーダーであり、第2ローター32に固定された円盤状のスケール621と、スケール621を間に挟んで配置され、基体2に固定された発光素子622および受光素子623と、を有する。スケール621には、周方向に並んで配置された図示しない複数のスリットが形成されており、このスリットを通過した発光素子622からの光を受光素子623が受光する。そのため、受光素子623の受光回数に基づいて第2ローター32の回転量を検出することができ、単位時間当たりの受光回数に基づいて第2ローター32の角速度を検出することができる。ただし、第2エンコーダー62の構成としては、特に限定されない。
【0018】
上述のような第1ローター31と第2ローター32との間には、第1ローター31と第2ローター32とを接続し、第1ローター31の回転を第2ローター32に伝達する伝達部5が配置されている。伝達部5は、弾性を有し、回転軸Jまわりにねじれ変形可能となっている。伝達部5としては、上述の機能を有していれば、特に限定されず、本実施形態では、ばね、特に、回転軸Jと同軸的に配置されたコイルばね51で構成されている。ただし、伝達部5の構成は、弾性変形、特に、回転軸Jまわりのねじれ変形が可能であれば、特に限定されず、例えば、板ばねであってもよいし、樹脂製のシート材、板材、ブロック材等であってもよい。
【0019】
また、第1ローター31と第2ローター32との間には、第1ローター31に駆動力を伝達して第1ローター31を回転軸Jまわりに回転させる超音波モーター4が配置されている。超音波モーター4は、回転軸Jまわりに等間隔に複数配置され、特に、本実施形態では、2つの超音波モーター4が回転軸Jまわりに180°間隔で配置されている。ただし、超音波モーター4の数や配置は、特に限定されない。
【0020】
これら2つの超音波モーター4は、圧電モーターであり、
図2に示すように、振動部41と、振動部41の先端部に配置された突出部44と、振動部41を支持する支持部42と、振動部41と支持部42とを接続する梁部43と、を有する。そして、支持部42が付勢部材46を介して基体2に固定されている。固定された状態では、付勢部材46によってローター本体312に向けて付勢されており、突出部44がローター本体312の上面に押し付けられている。
【0021】
また、振動部41には、振動部41を屈曲振動させる駆動用の6つの圧電素子4A、4B、4C、4D、4E、4Fが設けられている。これら6つの圧電素子4A~4Fは、それぞれ、振動部41の長手方向に伸縮するようになっており、制御装置9による制御によって、圧電素子4A~4Fをそれぞれ所定のタイミングで伸縮させることにより、振動部41が屈曲振動し、この屈曲振動が突出部44を介してローター本体312に伝達されることにより、第1ローター31が基体2に対して回転軸Jまわりに回転する。また、振動部41には、振動部41の屈曲振動に応じた検出信号を出力する検出用の圧電素子4Gが設けられている。
【0022】
例えば、
図3に示す駆動信号V1を圧電素子4A、4Fに印加し、駆動信号V2を圧電素子4C、4Dに印加し、駆動信号V3を圧電素子4B、4Eに印加すると、振動部41が長手方向に伸縮振動しつつ幅方向に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、突出部44の先端が
図2中の矢印A1で示すように反時計回りに楕円軌道を描く楕円運動する。これにより、ローター本体312が送り出され、ローター本体312が矢印B1で示す方向に回転する。また、駆動信号V1、V3の波形を切り換えると、振動部41が長手方向に伸縮振動しつつ幅方向に屈曲振動し、これらの振動が合成されて、突出部44が
図2中の矢印A2で示すように時計回りに楕円運動する。これにより、ローター本体312が送り出され、ローター本体312が矢印B2で示す方向に回転する。なお、以下では、説明の便宜上、駆動信号V1、V2、V3をまとめて駆動信号Vとも言う。
【0023】
以上のような超音波モーター4は、例えば、電磁モーター等の他のモーターと比べて小型化が可能である。そのため、ハンド1の小型化を図ることができる。また、超音波モーター4は、電磁モーターと比べて、低速・高トルクの特性を有し、このような特性は、ハンド1の駆動に適している。そのため、より安定した駆動が可能なハンド1となる。ただし、ローター本体312を回転させることができれば、超音波モーター4の構成や印加する駆動信号は、特に限定されない。
【0024】
図1に戻って、第2ローター32の上端部にはピニオン70が固定されている。ピニオン70は、第2ローター32と共に回転軸Jまわりに回転する。また、ピニオン70には、一対のラック71、72が噛合している。ラック71、72は、それぞれ、ガイド710、720を介して基体2に支持され、基体2に対して回転軸Jに直交する方向に移動可能である。また、ラック71、72は、ピニオン70を間に挟んで配置されており、ピニオン70が回転すると、互いに相反方向に移動する。そして、ラック71には第1指部81が固定されており、ラック72には第2指部82が固定されている。そのため、ピニオン70を回転させてラック71、72を相反方向にスライドさせることにより、第1、第2指部81、82を離間および接近させて開閉することができる。
【0025】
以上、ハンド1の構成について説明した。このようなハンド1では、
図4に示すように、ワークWに触れず、第1、第2指部81、82にワークWからの反力Nが加わらない状態で、第1、第2指部81、82を互いに接近させる方向である挟持方向に第1ローター31を回転させたときは、コイルばね51が実質的に弾性変形しない。そのため、第2ローター32は、第1ローター31と実質的に同じだけ回転する。したがって、第1ローター31の回転量θ1と第2ローター32の回転量θ2とが等しくなる。
【0026】
一方、
図5に示すように、第1、第2指部81、82がワークWに触れ、第1、第2指部81、82にワークWからの反力Nが加わる状態で、第1、第2指部81、82を互いに接近させる挟持方向に第1ローター31を回転させた場合には、反力Nによってコイルばね51が捩じれる方向に弾性変形し、コイルばね51の上端と下端とで回転軸Jを中心とする回転量に差が生じる。そのため、第1ローター31の回転量θ1よりも第2ローター32の回転量θ2が少なくなる。つまり、第1ローター31の回転量θ1と第2ローター32の回転量θ2との間に回転量差Δθ=θ1-θ2が生じ、この回転量差Δθは、ワークWの把持力と比例する。
【0027】
制御装置9は、回転量θ1、θ2に基づいて第1指部81と第2指部82との相対位置Zを検出する位置検出部91と、位置検出部91が検出した相対位置Zを記憶する記憶部92と、回転量θ1、θ2や回転量差Δθに基づいて超音波モーター4の駆動を制御する駆動制御部93と、を有する。このような制御装置9は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0028】
以上、ハンド1の構成について説明した。次に、ハンド1の駆動方法について
図6ないし
図9に基づいて詳細に説明する。ハンド1の駆動方法は、ワークWを挟持する挟持動作S1と、ワークWを挟持した状態を維持する保持動作S2と、挟持したワークWを開放する開放動作S3と、を有する。
【0029】
まず、挟持動作S1について説明する。
図6に示すように、制御装置9は、まず、ステップS11として、第1エンコーダー61および第2エンコーダー62の位置情報を初期化する。次に、制御装置9は、ステップS12として、第1、第2指部81、82の間にワークWを位置させた状態で、超音波モーター4を駆動し、第1、第2指部81、82を挟持方向に移動させてこれらでワークWを挟持する。
図7に示すように、第1、第2指部81、82がワークWに接触していない状態ではコイルばね51が弾性変形せず、第1、第2ローター31、32の回転量θ1、θ2が実質的に等しく、回転量差Δθ=0である。
【0030】
超音波モーター4の駆動を続け、第1、第2指部81、82がさらに接近してワークWに触れるとワークWからの反力Nが生じ、この反力Nによってコイルばね51が回転軸Jまわりにねじれ変形する。そのため、コイルばね51のねじれ変形の分だけ、第2ローター32の回転量θ2が第1ローター31の回転量θ1よりも小さくなり、回転量差Δθ>0となる。超音波モーター4の駆動をさらに続けるとワークWの把持力が徐々に増し、それに伴って回転量差Δθも徐々に増加する。
【0031】
次に、制御装置9は、ステップS13として、第1、第2指部81、82がワークWに触れ、第1、第2指部81、82にワークWからの反力Nが加わったときの第1、第2指部81、82の相対位置Zを基準相対位置Zaとして記憶する。反力Nが加わることは、回転量θ1、θ2に差が生じることを意味するため、言い換えると、制御装置9は、回転量θ1、θ2に差が生じ回転量差Δθ>0となったときの第1、第2指部81、82の相対位置Zを基準相対位置Zaとして記憶する。これにより、基準相対位置Zaをより適切に設定することができる。
【0032】
例えば、
図7に示すように、第1、第2指部81、82を挟持方向に移動させてワークWを挟持する過程で、位置検出部91が、回転量θ1、θ2を周期的に繰り返し検出する中で、回転量θ1、θ2に差が生じて回転量差Δθが0から上昇し始めた時刻t0を前記「第1、第2指部81、82にワークWからの反力Nが加わったとき」とすることができ、時刻t0における回転量θ2を基準相対位置Zaとすることができる。このようにして位置検出部91が求めた基準相対位置Zaは、記憶部92に記憶される。
【0033】
ここで、制御装置9には、ワークWを挟持するのに適した目標把持力のときに生じる回転量差Δθが基準回転量差として記憶されている。本実施形態の基準回転量差は、所定の回転量θaに±θαの幅を持たせた値すなわちθa-θα以上θa+θα以下に設定されている。そこで、制御装置9は、θa-θα≦Δθ≦θa+θαとなるように超音波モーター4の駆動を継続する。制御装置9は、ステップS14として、回転量差Δθを基準回転量差と比較し、θa-θα≦Δθ≦θa+θαであるかを判断する。θa-θα≦Δθ≦θa+θαでなければ、θa-θα≦Δθ≦θa+θαとなるまで超音波モーター4の駆動を継続する。反対に、θa-θα≦Δθ≦θa+θαであれば、制御装置9は、ステップS15として、超音波モーター4の駆動を停止し、その把持力を維持する。これにより、ワークWを目標把持力で把持することができる。
【0034】
なお、前述したように、超音波モーター4の停止時には突出部44がローター本体312に押し付けられており、これらの間に高い摩擦力が生じている。そのため、超音波モーター4の駆動を停止しても第1ローター31が回転することはなく、ワークWの把持力を維持し続けることができる。
【0035】
以上、挟持動作について説明した。このような方法によれば、予め設定された把持力でワークWを適切に把持することができる。そのため、把持力が強すぎてワークWが破損したり、把持力が弱すぎてワークWが不本意に離脱したりするのを効果的に抑制することができる。また、十分な把持力でワークWを把持したら、超音波モーター4を停止するため、それ以上超音波モーター4を過度に駆動することがない。
【0036】
次に、保持動作S2について説明する。挟持動作S1が終了してから、ハンド1が開放動作S3を行う位置および姿勢(以下「目標位置」とも言う)に到達するまでは、ハンド1を保持動作S2で駆動させる。目標位置へ移動する際、ハンド1に加速度、角速度および振動等の各種外力が加わり、当該外力の影響により、ワークWの把持力が変化するおそれがある。そのため、制御装置9は、ハンド1が挟持動作S1を終えてから目標位置に到達するまでの間、把持力が目標把持力に維持されるようにハンド1の駆動を制御する。これにより、ハンド1が挟持動作S1を終えて目標位置まで移動している最中にワークWが意図せず離脱したり、ワークWの位置が意図せずにずれてしまったりするのを効果的に抑制することができ、ワークWを目標位置までより確実にかつ安定して搬送することができる。
【0037】
図8に示すように、このような保持動作S2では、制御装置9は、まず、ステップS21として、回転量差Δθ>θa+θαであるかを判断する。回転量差Δθ>θa+θαでない場合、制御装置9は、ステップS22として、回転量差Δθ<θa-θαであるかを判断する。反対に、回転量差Δθ>θa+θαの場合、制御装置9は、ステップS23として、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させてワークWの把持力を下げる。ステップS22において、回転量差Δθ<θa-θαである場合、制御装置9は、ステップS24として、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を挟持方向に回転させてワークWの把持力を高める。回転量差Δθ<θa-θαでない場合および前述のステップS23、S24を終えると、制御装置9は、ステップS25として、開放動作S3の開始指令である開放命令を受け付けたか否かを判断する。開放命令を受け付けていない場合は、ステップS21に戻り、開放命令を受けた場合には、保持動作S2を終了して開放動作S3に移行する。
【0038】
以上、保持動作S2について説明した。このような方法によれば、挟持動作S1を終えてから目標位置に到達するまで目標把持力で安定してワークWを把持し続けることができる。そのため、目標位置への移動中にワークWが意図せず離脱したり、ワークWの位置が意図せずにずれてしまったりするのを効果的に抑制することができる。なお、保持動作S2は、これに限定されず、例えば、ステップS21とステップS23は、順序が逆であってもよい。
【0039】
次に、開放動作S3について説明する。挟持動作S1により第1、第2指部81、82で挟持したワークWを開放する際、ワークWが第1、第2指部81、82に引っ掛かったり付着したりして、うまく離脱しない場合がある。そこで、ハンド1は、開放動作S3の際に第1、第2指部81、82を振動させて第1、第2指部81、82に付着したワークWを強制的に離脱させる機能を備えている。
【0040】
なお、以下では、説明の便宜上、第1、第2指部81、82を振動させて第1、第2指部81、82に付着したワークWを強制的に離脱させる制御を「振動制御」とも言う。また、振動制御時(後述するステップS36、S37の繰り返し時)の第1、第2指部81、82の振幅をYとする。振幅Yは、実験、シミュレーション等によって予め求められており、制御装置9の記憶部92に記憶されている。振幅Yについてより詳細に説明すると、振動制御時の第1指部81の振幅をY1とし、振動制御時の第2指部82の振幅をY2としたとき、Y=Y1+Y2となる。なお、振動制御は、第1、第2指部81、82のどちらか一方だけを振動させてもよい。そのため、例えば、第1指部81だけを振動させる場合には、Y=Y1であり、第2指部82だけを振動させる場合には、Y=Y2である。なお、振動制御は、記憶された振幅Yとなるように強制的に振動させる制御であるため、例えば、外部から伝わる揺れによって、第1、第2指部81、82が振動するものとは異なる。
【0041】
図9に示すように、このような開放動作S3では、制御装置9は、まず、ステップS31として、振動制御の要否を判断する。振動制御の要否は、例えば、ワークWの種類すなわち形状、重さ、材質等によって予めユーザーによって決定されていてもよい。また、ワークWの種類と振動制御の要否とを紐付けたテーブルを用意し、制御装置9が当該テーブルを参照することにより、振動制御の要否を判断してもよい。
【0042】
振動制御を行う場合、制御装置9は、ステップS32として、記憶部92から振幅Yを読み込み、目標相対位置Zmを決定する。目標相対位置Zmは、基準相対位置Za+振幅Y以上(Zm≧Za+Y)、言い換えると、第1、第2指部81、82が基準相対位置Zaよりも振幅Y以上離間した相対位置に設定される。特に、本実施形態では、Zm=Za+Wである。次に、制御装置9は、ステップS33として、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させる。これにより、第1、第2指部81、82が開放方向に移動する。次に、制御装置9は、ステップS34として、第1、第2指部81、82の相対位置Zが目標相対位置Zmに到達した否かを判断する。つまり、Z≧Zmであるか否かを判断する。
【0043】
Z≧Zmでない場合、すなわちZ<Zmの場合、制御装置9は、ステップS33に戻り、Z≧ZmとなるまでステップS33を繰り返す。反対に、Z≧Zmである場合、制御装置9は、ステップS35として、超音波モーター4の駆動を停止し、第1、第2指部81、82の移動を終了する。次に、制御装置9は、ステップS36として、超音波モーター4を駆動し、第1、第2指部81、82の相対位置ZがZa≦Z<Zmとなるように、第1ローター31を挟持方向に回転させる。特に、本実施形態では、相対位置ZがZaとなるまで第1ローター31を挟持方向に回転させる。次に、制御装置9は、ステップS37として、超音波モーター4を駆動し、第1、第2指部81、82の相対位置ZがZ≧Zmとなるように、第1ローター31を開放方向に回転させる。特に、本実施形態では、相対位置ZがZmとなるまで第1ローター31を開放方向に回転させる。
【0044】
次に、制御装置9は、ステップS38として、ステップS36、S37の実施回数iが目標実施回数ia以上となったか否かを判断する。i<iaであれば、制御装置9は、ステップS36、S37の実施回数iが目標実施回数ia以上となるまでステップS36、S37を繰り返す。反対に、i≧iaであれば、制御装置9は、ステップS39として、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させる。これにより、第1、第2指部81、82が開放方向に移動し、ワークWに対して十分に開いた状態となる。ステップS31にて振動制御不要と判断した場合も、制御装置9は、ステップS39を行う。
【0045】
以上、開放動作について説明した。このような方法では、ステップS36、S37を目標実施回数ia以上高速で繰り返すことにより、第1、第2指部81、82を振幅Yで振動させている。振動を与えることにより、第1、第2指部81、82に付着しているワークWを強制的に離脱させることができる。したがって、ワークWをより確実に開放することができる。特に、ハンド1では、第1、第2指部81、82の振動が基準相対位置Zaと目標相対位置Zmとの繰り返しであり、第1、第2指部81、82が最も接近した状態であっても、基準相対位置Zaと等しい。基準相対位置Zaにおける第1、第2指部81、82の離間距離は、ワークWの幅とほぼ等しいため、このような振動によれば、ワークWに過度な応力が加わり難い。したがって、振動に起因したワークWの破損、損傷が効果的に抑制される。また、本実施形態のように、基準相対位置Zaへの移動と目標相対位置Zmへの移動とを繰り返すことにより、第1、第2指部81、82を簡単な制御で振動させることができる。
【0046】
以上、ハンド1の構成および駆動方法について説明した。このようなハンド1は、前述したように、対象物であるワークWを挟持する第1指部81および第2指部82と、第1指部81および第2指部82の少なくとも一方を駆動して第1指部81と第2指部82との相対位置Zを制御する駆動部としての超音波モーター4と、第1指部81と第2指部82との相対位置Zを検出する位置検出部91と、位置検出部91が検出した相対位置Zを記憶する記憶部92と、超音波モーター4の駆動を制御する駆動制御部93と、を有する。また、位置検出部91は、第1指部81および第2指部82がワークWを挟むときの第1指部81と第2指部82との相対位置Zを基準相対位置Zaとして検出し、記憶部92は、基準相対位置Zaを記憶し、駆動制御部93は、第1指部81および第2指部82に挟持されたワークWを開放する指示を受け付けたら、超音波モーター4により、第1指部81および第2指部82の相対位置Zを基準相対位置Zaよりも離間した目標相対位置Zmとし、目標相対位置Zmとなったら、超音波モーター4により、第1指部81および第2指部82の少なくとも一方を振動させる。その際、目標相対位置Zmは、第1指部81および第2指部82が基準相対位置Zaよりも振動の振幅Y以上離間している。このような構成によれば、第1、第2指部81、82を振動させてもワークWに過度な応力が加わり難い。したがって、振動に起因したワークWの破損、損傷が効果的に抑制される。
【0047】
また、前述したように、基準相対位置Zaは、第1指部81および第2指部82にワークWからの反力Nが加わったときの位置である。これにより、基準相対位置Zaをより適切に設定することができる。
【0048】
また、前述したように、振動は、基準相対位置Zaへの移動と目標相対位置Zmへの移動との繰り返しである。これにより、第1、第2指部81、82を簡単な制御で振動させることができる。
【0049】
また、前述したように、ハンド1の駆動方法は、第1指部81および第2指部82と、第1指部81および第2指部82の少なくとも一方を駆動して第1指部81と第2指部82との相対位置Zを制御する駆動部としての超音波モーター4と、第1指部81と第2指部82との相対位置Zを検出する位置検出部91と、を有し、第1指部81と第2指部82とで対象物であるワークWを挟持するハンド1の駆動方法であり、位置検出部91により、第1指部81および第2指部82がワークWを挟むときの第1指部81と第2指部82との相対位置Zを基準相対位置Zaとして検出するステップS13と、第1指部81および第2指部82に挟持されたワークWを開放する指示を受け付けたら、超音波モーター4により、第1指部81および第2指部82の相対位置Zを基準相対位置Zaよりも離間した目標相対位置ZmとするステップS34と、目標相対位置Zmとなったら、超音波モーター4により、第1指部81および第2指部82の少なくとも一方を振動させるステップS36、S37と、を有する。そして、目標相対位置Zmは、第1指部81および第2指部82が基準相対位置Zaよりも振動の振幅Y以上離間している。このような駆動方法によれば、第1、第2指部81、82を振動させてもワークWに過度な応力が加わり難い。したがって、振動に起因したワークWの破損、損傷が効果的に抑制される。
【0050】
また、前述したように、振動させるステップS36、S37に先立って、振幅Yに基づいて目標相対位置Zmを決定するステップS32を有する。これにより、振動させるステップS36、S37をスムーズに行うことができる。
【0051】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態に係るハンドの開放動作の手順を示すフローチャートである。
【0052】
本実施形態のハンド1は、開放動作S3において振動を与える方法が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図10において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0053】
本実施形態の開放動作S3では、超音波モーター4を第1指部81または第2指部82の共振周波数f0で駆動することにより、第1指部81または第2指部82を振動させる。本実施形態では、第1、第2指部81、82が互いに同様の構成であるため、第1、第2指部81、82の共振周波数f0は、互いに等しいものとして以下説明する。第1、第2指部81、82の共振周波数f0は、実験、シミュレーション等によって予め求められ、記憶部92に記憶されている。
【0054】
図10に示すように、本実施形態の開放動作S3では、制御装置9は、まず、ステップS31Aとして、振動制御の要否を判断する。振動制御を行う場合、制御装置9は、ステップS32Aとして、記憶部92から振幅Yを読み込み、振幅Yと基準相対位置Zaとから目標相対位置Zmを決定する。なお、本実施形態の振幅Yは、後述するステップS36Aにおける第1、第2指部81、82の共振の振幅である。次に、制御装置9は、ステップS33Aとして、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させる。これにより、第1、第2指部81、82が開放方向に移動する。次に、制御装置9は、ステップS34Aとして、第1、第2指部81、82の相対位置Zが目標相対位置Zmに到達した否かを判断する。つまり、Z≧Zmであるか否かを判断する。
【0055】
Z≧Zmでない場合、制御装置9は、ステップS33Aに戻り、Z≧ZmとなるまでステップS33Aを繰り返す。反対に、Z≧Zmである場合、制御装置9は、ステップS35Aとして、超音波モーター4の駆動を停止する。ここまでは、前述した第1実施形態と同様である。
【0056】
次に、制御装置9は、ステップS36Aとして、第1、第2指部81、82の共振周波数f0で超音波モーター4を駆動する。具体的には、共振周波数f0と等しい周波数に設定された駆動電圧を圧電素子4A~4Fに同位相で印加し、振動部41を共振周波数f0で長手方向に縦振動させる。そして、当該振動が第1、第2指部81、82に伝わり、第1、第2指部81、82が共振する。
【0057】
次に、制御装置9は、ステップS37Aとして、共振周波数f0による超音波モーター4の駆動時間が所定時間T(秒)を経過したか否かを判断する。所定時間Tを経過していなければ、制御装置9は、ステップS36Aに戻る。反対に、所定時間Tを経過していれば、制御装置9は、ステップS38Aとして、超音波モーター4の駆動を停止する。次に、制御装置9は、ステップS39Aとして、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させる。これにより、第1、第2指部81、82が開放方向に移動し、ワークWに対して十分に開いた状態となる。ステップS31Aにて振動制御不要と判断した場合も、制御装置9は、ステップS39Aを行う。
【0058】
以上、開放動作S3について説明した。このような方法では、ステップS36Aによって第1、第2指部81、82を共振させている。これにより、第1、第2指部81、82に付着しているワークWを強制的に離脱させることができる。したがって、ワークWをより確実に開放することができる。特に、ハンド1では、第1、第2指部81、82の共振を利用しているため、第1、第2指部81、82をより確実にかつより大きい振幅Yで振動させることができる。そのため、付着しているワークWをより確実に離脱させることができる。また、共振を利用することにより、第1、第2指部81、82を容易に振動させることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態のハンド1は、駆動部としての超音波モーター4を備え、超音波モーター4を第1指部81または第2指部82の共振周波数f0で駆動することにより振動を発生させる。これにより、第1、第2指部81、82の共振を利用することができ、第1、第2指部81、82をより確実にかつより大きい振幅Yで振動させることができる。そのため、付着しているワークWをより確実に離脱させることができる。
【0060】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0061】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係るハンドを示す断面図である。
図12は、
図11のハンドの開放動作の手順を示すフローチャートである。
【0062】
本実施形態のハンド1は、開放動作S3において振動制御の要否を判断するタイミングが異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図11および
図12において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0063】
図11に示すように、本実施形態のハンド1は、第1、第2指部81、82のワークWとの接触面に配置され、第1、第2指部81、82とワークWとの接触を検出する力覚センサー10を有する。なお、第1、第2指部81、82とワークWとの接触を検出することができれば力覚センサー10に限定されず、例えば、歪みゲージを用いたロードセルを用いてもよい。また、カメラを用いて第1、第2指部81、82とワークWとの接触を検出する構成であってもよい。
【0064】
次に、ハンド1の駆動方法について説明する。本実施形態の駆動方法は、開放動作S3だけが第1実施形態と異なるため、以下では、開放動作S3だけを説明する。本実施形態の開放動作S3は、第1、第2指部81、82を開放方向へ移動させてワークWの開放を試みた後に振動制御の要否を判断する点で、第1実施形態と異なる。
【0065】
図12に示すように、本実施形態の開放動作S3では、制御装置9は、まず、ステップS31Bとして、記憶部92から振幅Yを読み込み、振幅Yと基準相対位置Zaとから目標相対位置Zmを決定する。次に、制御装置9は、ステップS32Bとして、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させる。これにより、第1、第2指部81、82を開放方向に移動させ、ワークWの開放を試みる。次に、制御装置9は、ステップS33Bとして、第1、第2指部81、82の相対位置Zが目標相対位置Zmに到達した否かを判断する。つまり、Z≧Zmであるか否かを判断する。Z≧Zmでない場合、すなわちZ<Zmの場合、制御装置9は、ステップS32Bに戻り、Z≧ZmとなるまでステップS32Bを繰り返す。
【0066】
反対に、Z≧Zmである場合、制御装置9は、ステップS34Bとして、超音波モーター4の駆動を停止する。次に、制御装置9は、ステップS35Bとして、力覚センサー10からの信号に基づいて力覚センサー10にワークWが接触しているか否か、つまり、第1、第2指部81、82にワークWが付着しているか否かを判断する。ワークWが付着している場合、制御装置9は、ステップS36Bとして、振動制御の要否を判断する。付着したワークWを離脱させる必要があるため、制御装置9は、通常では振動制御が必要と判断するが、例えば、個別な或いは特殊な事情を有する場合には、振動制御は不要と判断することもできる。また、このような判断を行うことなく、ステップS35BでワークWが付着していると判断された場合には必ず振動制御を行うこととしてもよい。
【0067】
次に、制御装置9は、ステップS37Bとして、超音波モーター4を駆動し、第1、第2指部81、82の相対位置ZがZa≦Z<Zmとなるように、第1ローター31を挟持方向に回転させる。特に、本実施形態では、相対位置ZがZaとなるまで第1ローター31を挟持方向に回転させる。次に、制御装置9は、ステップS38Bとして、超音波モーター4を駆動し、第1、第2指部81、82の相対位置ZがZ≧Zmとなるように、第1ローター31を開放方向に回転させる。特に、本実施形態では、相対位置ZがZmとなるまで第1ローター31を開放方向に回転させる。
【0068】
次に、制御装置9は、ステップS39Bとして、ステップS37B、S38Bの実施回数iが目標実施回数ia以上となったか否かを判断する。i<iaであれば、制御装置9は、ステップS37Bに戻り、ステップS37B、S38Bの実施回数iが目標実施回数ia以上となるまでステップS37B、S38Bを繰り返す。反対に、i≧iaであれば、制御装置9は、ステップS30Bとして、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させる。これにより、第1、第2指部81、82が開放方向に移動し、ワークWに対して十分に開いた状態となる。ステップS35BにてワークWが付着していないと判断した場合、ステップS36Bにて振動制御は不要と判断した場合も、制御装置9は、ステップS30Bを行う。
【0069】
以上、開放動作S3について説明した。このような方法では、ワークWの開放を試みた結果、ワークWが第1、第2指部81、82に付着している場合にだけ振動制御を行う。そのため、無駄な振動制御の実施が抑制され、その分、ハンド1のサイクルタイムが短くなる。
【0070】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0071】
<第4実施形態>
図13は、第4実施形態に係るハンドを示す断面図である。
図14は、
図13のハンドの挟持動作の手順を示すフローチャートである。
図15は、
図13のハンドの保持動作の手順を示すフローチャートである。
【0072】
本実施形態のハンド1は、伝達部5の構成が異なること、第2エンコーダー62が省略されていること以外は、前述した第3実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図13~
図15において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0073】
図13に示すハンド1においては、伝達部5は、硬質であり、弾性を有さない。つまり、ワークWからの反力N程度では実質的に変形しない。そのため、第1ローター31と第2ローター32とは、伝達部5によって直結されているとも言える。また、第1ローター31、伝達部5および第2ローター32をまとめて第1ローター31とし、第1ローター31の上端部にピニオン70が接続されているとも言える。このように、第1ローター31と第2ローター32とが直結されているため、第1、第2エンコーダー61、62のいずれか一方が不要となる。そのため、本実施形態では、第2エンコーダー62を省略している。
【0074】
以上、ハンド1の構成について説明した。次に、ハンド1の駆動方法について
図14および
図15に基づいて詳細に説明する。ハンド1の駆動方法は、ワークWを挟持する挟持動作S1と、ワークWを挟持した状態を維持する保持動作S2と、挟持したワークWを開放する開放動作S3と、を有する。このうち、開放動作S3については、前述した第1実施形態と同様であるため、以下では、挟持動作S1および保持動作S2についてのみ説明する。
【0075】
まず、挟持動作S1について説明する。
図14に示すように、制御装置9は、まず、ステップS11Cとして、第1エンコーダー61の位置情報を初期化する。次に、制御装置9は、ステップS12Cとして、第1、第2指部81、82の間にワークWを位置させた状態で、超音波モーター4を駆動し、第1、第2指部81、82を挟持方向に移動させる。超音波モーター4の駆動を続け、第1、第2指部81、82がワークWに触れると、それに応じた信号が力覚センサー10から出力される。そのため、制御装置9は、ステップS13Cとして、力覚センサー10からの出力と回転量θ1とに基づいて、第1、第2指部81、82がワークWに触れたときの第1、第2指部81、82の相対位置Zを求め、これを基準相対位置Zaとして記憶する。
【0076】
ここで、制御装置9には、ワークWを挟持するのに適した目標把持力のときに生じる力覚センサー10の信号強度が目標信号強度として記憶されている。そこで、制御装置9は、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の範囲内となるように超音波モーター4の駆動を継続する。制御装置9は、ステップS14Cとして、力覚センサー10の信号強度と目標信号強度とを比較し、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の範囲内にあるか否かを判断する。力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の範囲内になければ、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の範囲内となるまで超音波モーター4の駆動を継続する。反対に、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の範囲内にあれば、制御装置9は、ステップS15Cとして、超音波モーター4の駆動を停止し、その把持力を維持する。これにより、ワークWを目標把持力で把持することができる。
【0077】
次に、保持動作S2について説明する。
図15に示すように、制御装置9は、まず、ステップS21Cとして、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の上限値を超えているか否かを判断する。力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の上限値を超えていない場合、制御装置9は、ステップS22Cとして、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の下限値未満であるか否かを判断する。反対に、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の上限値を超えている場合、制御装置9は、ステップS23Cとして、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を開放方向に回転させてワークWの把持力を下げる。
【0078】
ステップS22Cにおいて、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の下限値未満の場合、制御装置9は、ステップS24Cとして、超音波モーター4を駆動し、第1ローター31を挟持方向に回転させてワークWの把持力を高める。反対に、力覚センサー10の信号強度が目標信号強度の下限値未満でない場合や、前述のステップS23C、S24Cを終えた場合、制御装置9は、ステップS25Cとして、開放動作S3の開始指令である開放命令を受け付けたか否かを判断する。開放命令を受け付けていない場合は、ステップS21に戻り、開放命令を受けた場合には、保持動作S2を終了して開放動作S3に移行する。
【0079】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0080】
以上、本発明のハンドの駆動方法およびハンドを図示の好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…ハンド、10…力覚センサー、2…基体、31…第1ローター、311…基部、312…ローター本体、32…第2ローター、4…超音波モーター、4A…圧電素子、4B…圧電素子、4C…圧電素子、4D…圧電素子、4E…圧電素子、4F…圧電素子、4G…圧電素子、41…振動部、42…支持部、43…梁部、44…突出部、46…付勢部材、5…伝達部、51…コイルばね、61…第1エンコーダー、611…スケール、612…発光素子、613…受光素子、62…第2エンコーダー、621…スケール、622…発光素子、623…受光素子、70…ピニオン、71…ラック、710…ガイド、72…ラック、720…ガイド、81…第1指部、82…第2指部、9…制御装置、91…位置検出部、92…記憶部、93…駆動制御部、A1…矢印、A2…矢印、B1…矢印、B2…矢印、BB1…ベアリング、BB2…ベアリング、J…回転軸、N…反力、S1…挟持動作、S11…ステップ、S11C…ステップ、S12…ステップ、S12C…ステップ、S13…ステップ、S13C…ステップ、S14…ステップ、S14C…ステップ、S15…ステップ、S15C…ステップ、S2…保持動作、S21…ステップ、S21C…ステップ、S22…ステップ、S22C…ステップ、S23…ステップ、S23C…ステップ、S24…ステップ、S24C…ステップ、S25…ステップ、S25C…ステップ、S3…開放動作、S30B…ステップ、S31…ステップ、S31A…ステップ、S31B…ステップ、S32…ステップ、S32A…ステップ、S32B…ステップ、S33…ステップ、S33A…ステップ、S33B…ステップ、S34…ステップ、S34A…ステップ、S34B…ステップ、S35…ステップ、S35A…ステップ、S35B…ステップ、S36…ステップ、S36A…ステップ、S36B…ステップ、S37…ステップ、S37A…ステップ、S37B…ステップ、S38…ステップ、S38A…ステップ、S38B…ステップ、S39…ステップ、S39A…ステップ、S39B…ステップ、T…所定時間、V…駆動信号、V1…駆動信号、V2…駆動信号、V3…駆動信号、W…ワーク、Y…振幅、Z…相対位置、Za…基準相対位置、Zm…目標相対位置、f0…共振周波数、i…実施回数、ia…目標実施回数、Δθ…回転量差、θ1…回転量、θ2…回転量