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特許7537234エンジンの制御方法及びエンジンシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エンジンの制御方法及びエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240814BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F02D45/00 360Z
F02D43/00 301B
F02D43/00 301H
F02D43/00 301J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020187350
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076784
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 統之
(72)【発明者】
【氏名】乃生 芳尚
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-215267(JP,A)
【文献】特開2008-303798(JP,A)
【文献】特開2015-200257(JP,A)
【文献】特開2019-132155(JP,A)
【文献】特開2014-145306(JP,A)
【文献】特開2015-190393(JP,A)
【文献】特開2012-225186(JP,A)
【文献】特開2011-196208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0175438(US,A1)
【文献】国際公開第2019/016862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、
吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、
混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、
前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、渦の中心がシリンダー内の中央部に位置している第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、
前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外であって、渦の中心がシリンダー内の中央部からずれていて、シリンダー内の一部の領域への火炎伝播が阻害されると判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、
前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有する
ことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項2】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、
吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、
混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、
前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、
前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外と判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、
前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有し、
前記燃料噴射弁は、前記補助燃料噴射工程において、前記判定工程で前記パラメータが前記第1閾値よりも小さいと判定された場合は、第1噴射時期に補助燃料を噴射し、前記第2閾値よりも大きいと判定された場合は、前記第1噴射時期よりも遅角側の第2噴射時期に補助燃料を噴射する、
ことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項3】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、
吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、
混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、
前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、
前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外と判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、
前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有し、
前記パラメータ検出工程において、前記点火装置は、前記吸気バルブが閉弁したのち、前記パラメータを検出し、
前記判定工程において、前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の縦渦の流動状態を判定する、
ことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項4】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、
吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、
混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、
前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、
前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外と判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、
前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有し、
前記パラメータ検出工程において、前記点火装置は、吸気行程で前記パラメータを検出し、かつ圧縮行程で前記パラメータを検出する、
ことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項5】
前記パラメータ検出工程において、前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁したのち、前記吸気バルブが閉弁するまでに前記パラメータを検出し、
前記判定工程において、前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の横渦の流動状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジンの制御方法。
【請求項6】
前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁しかつ、該開弁から所定の時定数が経過したのち、前記パラメータを検出する、
ことを特徴とする請求項に記載のエンジンの制御方法。
【請求項7】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、
該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、
前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、
を備えたエンジンと、
前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、
前記制御器は、
前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、
混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが、渦の中心がシリンダー内の中央部に位置している第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、
前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外であって、渦の中心がシリンダー内の中央部からずれていて、シリンダー内の一部の領域への火炎伝播が阻害されると判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、
前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備える、
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項8】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、
該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、
前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、
を備えたエンジンと、
前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、
前記制御器は、
前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、
混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、
前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外と判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、
前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備え、
前記燃料噴射弁は、前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値より小さいと判定した場合は、第1噴射時期に補助燃料を噴射し、前記第2閾値よりも大きいと判定した場合は、前記第1噴射時期よりも遅角側の第2噴射時期に補助燃料を噴射する、
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項9】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、
該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、
前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、
を備えたエンジンと、
前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、
前記制御器は、
前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、
混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、
前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外と判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、
前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備え、
前記点火装置は、前記吸気バルブが閉弁したのち、前記パラメータを検出し、
前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の縦渦の流動状態を判定する、
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項10】
ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、
該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、
前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、
を備えたエンジンと、
前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、
前記制御器は、
前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、
混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、
前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外と判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、
前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備え、
前記点火装置は、吸気行程で前記パラメータを検出し、かつ圧縮行程で前記パラメータを検出する、
ことを特徴とするエンジンシステム。
【請求項11】
前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁したのち、前記吸気バルブが閉弁するまでに、前記パラメータを検出し、
前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の横渦の流動状態を判定する、
ことを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項12】
前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁しかつ、所定の時定数が経過したのち、前記パラメータを検出する、
ことを特徴とする請求項11に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気筒内の流動に応じたエンジンの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃費を向上させるためには、燃焼速度を高めることが有益である。点火プラグを備えるエンジンでは、点火プラグが気筒内の混合気に点火することで点火プラグ周りに火炎が生成され、この火炎が未燃混合気を反応させながら気筒内の全体に伝播することによって1サイクルの燃焼が完了する。したがって、該火炎が未燃混合気を素早く反応させ燃焼速度を高めるためには、火炎と未燃混合気との火炎接触面積が大きいほうがよく、多くの乱流を生成することが好ましい。気筒内の乱流生成を促進するために、気筒内にスワール流れを生じさせたり、タンブル流れを生じさせたりすることが、従来から行われている。
【0003】
上述の乱流は、圧縮行程中、ピストンが上死点に上昇するまでに流動がつぶれて生成されることが知られているが、吸気流動の状態は毎サイクル変わる可能性がある。そのため、従来から気筒内の流動を推定する手法が種々検討されている。
【0004】
一例として、特許文献1には、燃焼室に配設された点火プラグで複数回点火して点火プラグの放電経路の電流値を検出し、この電流値から推定できる気筒内の流動に応じて点火時期を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-145306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、本願発明者らは、特許文献1に記載されたような放電経路の電流値に基づく流動に応じた燃焼の改善について、鋭意研究をした結果、吸気流動によって気筒内に形成された渦中心の位置によって、圧縮行程後半の気筒内の流動状態に差が生じ、この流動状態のばらつきが、燃焼変動の一要因となっていることを見出した。
【0007】
吸気流動は縦渦成分と横渦成分が合成されて、気筒内において斜め流動になる。渦中心の位置が平面視及び側面視で気筒中央付近に存在する場合は圧縮行程後半でも旋回流が維持される結果、乱流度合いが、気筒内の全体において均等又は略均等となる。この場合、火炎は、気筒内の中央付近から周辺部へ、均等又は略均等に伝播する。
【0008】
しかし、縦渦成分の渦中心の位置が、側面視で気筒下方側付近にずれた場合は圧縮行程後半で、渦中心がピストンの頂面に接触することにより縦渦の下半分が潰れ、気筒内の流動が、吸気バルブから排気バルブに向かう方向に流れる正一方向流動となることを、本願発明者らは見出した。気筒内の流動が正一方向流動になると、気筒内において排気バルブ側の領域の乱流度合いは強いが、吸気バルブ側の領域の乱流度合いは弱くなる。この場合、火炎は、排気バルブ側の領域へは伝播しやすい一方、吸気バルブ側の領域へは伝播しにくい。
【0009】
また、縦渦成分の渦中心の位置が、側面視で気筒上方側付近にずれた場合は圧縮行程後半で、渦中心がシリンダーの天井部に接触することにより縦渦の上半分が潰れ、気筒内の流動が、排気バルブから吸気バルブへ向かう方向に流れる反一方向流動となる。気筒内の流動が反一方向流動になると、気筒内において吸気バルブ側の領域の乱流度合いは強いが、排気バルブ側の領域の乱流度合いが弱くなる。この場合、火炎は、吸気バルブ側の領域へは伝播しやすい一方、排気バルブ側の領域へは伝播しにくい。
【0010】
一方で、横渦成分の渦中心の位置が、平面視で気筒外方側に傾いた場合は、気筒内の中心部から周辺部に向かって伝播しようとする火炎の一部が、気筒の中心に対して傾いた横渦の流れによって、その伝播を妨げられる結果、火炎が、特定の領域へは伝播しにくいことを、本願発明者らは見出した。
【0011】
気筒内の一部の領域への火炎伝播が阻害されることは、燃焼速度を低下させて、燃焼変動を生じさせる。従って、エンジンの燃焼変動を抑制するためには、気筒内の流動状態に応じて一部の領域への火炎伝播を促進する必要がある。エンジンの燃焼変動を抑制すれば、エンジンの燃費は向上する。
【0012】
そこで、本願は上述の事情に鑑み、気筒内の流動状態を推定し、この流動状態に応じて燃料噴射弁を制御することによって燃焼変動を抑制する制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、上記課題を解決するためにさらに鋭意研究を重ねた結果、吸気行程または圧縮行程で、混合気の燃焼を開始する前に、点火プラグの電極間に発生させた放電経路の電流値を検出すれば、気筒内の渦中心の位置が推定でき、圧縮行程後半の流動の状態を推定できることを見出した。
【0014】
そこで、上記考え方を具現化する本発明は、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、吸気行程又は圧縮行程に、前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、渦の中心がシリンダー内の中央部に位置している第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外であって、渦の中心がシリンダー内の中央部からずれていて、シリンダー内の一部の領域への火炎伝播が阻害されると判定された場合に、前記主燃料の噴射時期より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有する。
【0015】
本願明細書では、便宜上、正一方向流動は吸気バルブから排気バルブに向かう流動を示し、反一方向流動は排気バルブから吸気バルブに向かう流動を示すが、これらの表記を逆にしてもよい。
【0016】
本願発明のエンジンは、ペントルーフ型の天井部を有するシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグと、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を備える。天井部がペントルーフ型であることで、気筒内に導入された吸気は縦渦を形成し、吸気バルブを介してシリンダー内に導入された吸気は、横渦も形成する。気筒内の流動は、シリンダーの軸に対して傾いた斜め流動となる。
【0017】
吸気行程又は圧縮行程に、前記燃料噴射弁が燃料を噴射する主燃料噴射工程で気筒内に混合気を形成し、混合気が着火しない時期に、点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加して、前記電極間との間に放電経路を生じさせる。パラメータ検出工程で、点火装置が、点火プラグに生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出する。尚、パラメータ検出工程は、主燃料の噴射の後でもよいし、噴射の前でもよい。
【0018】
点火プラグにエネルギを付与することによって、電極間に生じた放電経路は、点火プラグ付近の流動が強いほど伸びる。放電経路が伸長することで、電極間の抵抗が増大し、電極間に印加した電圧の降下が促進される。その結果、点火プラグに付与したエネルギが消費される時間、つまり放電時間が短くなる。点火装置が、電流値に関するパラメータとして、電流の放電時間を検出することによって点火プラグ付近の流動の強さを計測でき、その流動の強さに基づいて、気筒内における渦中心の位置が推定できることを、本願発明者らは見出した。
【0019】
より詳細には、縦渦の中心が、側面視で気筒中央付近に位置するときは、縦渦の中心が点火プラグから、ある程度離れるため、点火プラグ付近の流動の強さが中程度になる。この場合パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内に収まる。縦渦の中心が気筒上方側にずれると、縦渦の中心が点火プラグに近いため、点火プラグ付近の流動が弱くなる(つまり、流速が遅い)。この場合パラメータが、第2閾値よりも大きくなる。縦渦の中心が気筒下方側にずれると、縦渦の中心が点火プラグから遠いため、点火プラグ付近の流動が強くなる(つまり、流速が速い)。この場合パラメータが、第1閾値よりも小さくなる。制御器は、パラメータ検出工程で検出されたパラメータが、第1閾値よりも小さいか、第2閾値よりも大きいかを判断することで、気筒内の混合気を点火する前に、流動が正一方向流動か、反一方向流動か推定でき、乱流度合いの弱い領域の有無を推定できる。
【0020】
また、横渦の中心が、平面視で気筒中央付近に位置するときは、点火プラグ付近の流動の強さが中程度になって、パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内に収まる。横渦の中心が気筒中央に対して傾くと、点火プラグ付近の流動が弱くなって、パラメータが第2閾値よりも大きくなったり、点火プラグ付近の流動が強くなって、パラメータが第1閾値よりも小さくなったりする。制御器は、パラメータ検出工程で検出されたパラメータが、第1閾値よりも小さいか、第2閾値よりも大きいかを判断することで、気筒内の混合気を点火する前に、火炎が伝播しにくい領域の有無を推定できる。
【0021】
そして、前記判定工程で、パラメータが第1閾値より小さい、又は第2閾値よりも大きいと判定された場合に、燃料噴射弁は、補助燃料噴射工程で、主燃料よりも遅角側のタイミングで補助燃料を噴射する。補助燃料は、乱流度合いが弱い領域、又は、火炎が伝播しにくい領域(以下、特定領域と呼ぶ)における混合気の燃料濃度を濃くする。このことにより、圧縮行程後半に、特定領域以外の領域には通常の混合気を配置し、特定領域には相対的に濃い混合気を配置することができる。この補助燃料の噴射後に、点火装置が、前記点火プラグを用いて、混合気に点火することで、特定領域への火炎伝播が促進され、シリンダー内の全体に火炎が、均等又は略均等に伝播する。その結果、燃焼速度が速くなる。
【0022】
このように、各サイクルの気筒内の流動状態に応じて、必要な場合は、燃料噴射弁が補助燃料を噴射することにより、サイクル毎の燃焼速度が一定または略一定になって、燃焼変動が抑制できる。このエンジンは、燃費が向上する。
【0023】
本発明はまた、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外と判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有し、前記燃料噴射弁は、前記補助燃料噴射工程において、前記判定工程で前記パラメータが前記第1閾値よりも小さいと判定された場合は、第1噴射時期に補助燃料を噴射し、前記第2閾値よりも大きいと判定された場合は、前記第1噴射時期よりも遅角側の第2噴射時期に補助燃料を噴射する。
【0024】
パラメータが第1閾値よりも小さいと判定された場合は、縦渦については、圧縮行程後半で吸気バルブから排気バルブに向かう正一方向流動になるため、吸気バルブ側の乱流が生成されにくい。パラメータが第1閾値よりも小さいと判定された場合は、相対的に進角側のタイミングで、燃料噴射弁が補助燃料を噴射することで、補助燃料は、気筒内の強い圧縮圧を受けることなく、縦渦の流動に乗って、排気バルブ側から吸気バルブ側の領域に運ばれる。このため、点火の際に吸気バルブ側に濃い混合気を配置することができる。
【0025】
一方、パラメータが第2閾値よりも大きいと判定された場合は、縦渦については、圧縮行程後半で排気バルブから吸気バルブに向かう反一方向流動になるため、排気バルブ側の乱流が生成されにくい。パラメータが第2閾値よりも大きいと判定された場合は、相対的に遅角側のタイミングで、燃料噴射弁が補助燃料を噴射することで、補助燃料は、気筒内の強い圧縮圧を受けて、シリンダー内の中央部に留まると共に、そこから流動が弱い排気バルブ側へ流れる。このため、点火の際に排気バルブ側に濃い混合気を配置することができる。
【0026】
また、パラメータが第1閾値よりも小さいと判定された場合は、横渦については、その中心が吸気バルブ側へ傾いている。これは、シリンダー内に導入された吸気流動の径方向の速度分布において最大流速が比較的低く、流速分布の尖度が低いことに起因する。この場合、火炎が、吸気バルブ側の領域へ伝播しにくくなる。パラメータが第1閾値よりも小さいと判定された場合は、相対的に進角側のタイミングで、燃料噴射弁が補助燃料を噴射する。補助燃料は、横渦の流動に乗って、時間をかけて吸気バルブ側の領域に運ばれる。点火の際に吸気バルブ付近に濃い混合気を配置することができる。
【0027】
一方、パラメータが第2閾値よりも大きいと判定された場合は、横渦については、その中心が排気バルブ側へ傾いている。これは、シリンダー内に導入された吸気流動の、ライナー付近の流速が極端に速くなることに起因する。この場合も、火炎が、吸気バルブ側の領域へ伝播しにくくなる。パラメータが第2閾値よりも大きいと判定された場合は、相対的に遅角側のタイミングで、燃料噴射弁が補助燃料を噴射する。このことで、補助燃料は、ライナー付近の高速な流動に乗って、速やかに吸気バルブ側の領域に運ばれて、点火の際に吸気バルブ付近に濃い混合気を配置することができる。
【0028】
前記パラメータ検出工程において、前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁したのち、前記吸気バルブが閉弁するまでに前記パラメータを検出し、前記判定工程において、前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の横渦の流動状態を判定する、としても良い。
【0029】
タンブル流れとスワール流れによって発生する斜め流動は縦渦と横渦とに分けることができ、主にスワール流れに起因する横渦の中心は、吸気バルブが開弁したのち吸気バルブが閉まるまでの吸気行程の期間において、安定する。そこで、吸気バルブが開弁したのち、吸気バルブが閉まるまでの期間に、点火装置がパラメータを検出することで、制御器は、横渦の中心位置を含んだ流動状態を精度よく推定できる。
【0030】
一実施形態として、前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁しかつ、該開弁から所定の時定数が経過したのち、前記パラメータを検出する、としても良い。
【0031】
吸気バルブが開いた瞬間から所定期間は吸気がばらつきやすい。従って、この所定期間、点火装置はパラメータの検出を禁止することで、制御器は、横渦による渦中心の位置をさらに精度よく推定できる。
【0032】
本発明はまた、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外と判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有し、前記パラメータ検出工程において、前記点火装置は、前記吸気バルブが閉弁したのち、前記パラメータを検出し、前記判定工程において、前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の縦渦の流動状態を判定する。
【0033】
主にタンブル流れに起因する縦渦の中心は、吸気バルブが閉弁したのちの圧縮行程の期間において安定する。そこで、吸気バルブが閉弁したのちに、点火装置がパラメータを検出することで、制御器は、縦渦の中心位置を含んだ流動状態を精度よく推定できる。
【0034】
本発明はまた、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダーと、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置と、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁と、を持つエンジンを、制御器を用いて制御する方法であって、吸気行程又は圧縮行程に前記燃料噴射弁が主燃料を噴射し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射工程、混合気が着火しない時期に、前記点火装置が、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するパラメータ検出工程、前記制御器が、該パラメータ検出工程で検出された前記パラメータが、第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定工程、前記判定工程で、前記パラメータが前記第1閾値から前記第2閾値までの範囲外と判定された場合に、前記主燃料の噴射より後に、前記燃料噴射弁が、補助燃料を噴射する補助燃料噴射工程、及び、前記補助燃料の噴射より後に、前記点火装置が、前記点火プラグを用いて、前記混合気に点火する点火工程、を有し、前記パラメータ検出工程において、前記点火装置は、吸気行程で前記パラメータを検出し、かつ圧縮行程で前記パラメータを検出する。
【0035】
つまり、点火装置が、吸気行程及び圧縮行程の両方においてパラメータを検出することで、上述したように、制御器は、横渦成分による渦中心の位置、及び縦渦成分による渦中心の位置を推定できるため、気筒内の斜め流動の状態をより精度よく推定できる。
【0036】
また本発明は、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、を備えたエンジンと、前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、前記制御器は、前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが、渦の中心がシリンダー内の中央部に位置している第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外であって、渦の中心がシリンダー内の中央部からずれていて、シリンダー内の一部の領域への火炎伝播が阻害されると判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備えることを特徴とするエンジンシステムである。
【0037】
このようなエンジンシステムは、前述したように、点火装置が、点火プラグの電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出すれば、シリンダー内における渦中心の位置が推定できるという本願発明者らの知見に基づいている。
【0038】
制御器は、推定した渦中心の位置に応じて、必要であれば、主燃料の噴射よりも後でかつ、点火よりも前に、燃料噴射弁に補助燃料を噴射させる。このことにより、圧縮行程後半に、特定領域に濃い混合気を配置できる。
【0039】
制御器は、その後、点火プラグが混合気に点火するように点火装置を制御することで、濃い混合気が配置された領域の燃焼速度が速くなる。
【0040】
こうして、各サイクルにおいて、必要な場合は補助燃料を噴射することにより、サイクル毎の燃焼速度が一定または略一定になるため、燃焼変動が抑制できる。
【0041】
本発明はまた、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、を備えたエンジンと、前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、前記制御器は、前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外と判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備え、前記燃料噴射弁は、前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値より小さいと判定した場合は、第1噴射時期に補助燃料を噴射し、前記第2閾値よりも大きいと判定した場合は、前記第1噴射時期よりも遅角側の第2噴射時期に補助燃料を噴射する。
【0042】
パラメータと、第1閾値及び第2閾値との大小関係に基づいて補助燃料の噴射時期が変わることによって、特定領域に濃い混合気を配置できる。
【0043】
前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁したのち、前記吸気バルブが閉弁するまでに、前記パラメータを検出し、前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の横渦の流動状態を判定する、としても良い。
【0044】
上述したように、吸気バルブが開弁したのち、吸気バルブが閉まるまでの吸気行程に、点火装置がパラメータを検出することで、制御器は、横渦による渦中心の位置を精度よく推定できる。
【0045】
前記点火装置は、前記吸気バルブが開弁しかつ、所定の時定数が経過したのち、前記パラメータを検出する、としても良い。
【0046】
上述したように、吸気バルブが開いた瞬間から所定期間は吸気流動がばらつきやすい。従って、この所定期間、点火装置はパラメータの検出を禁止することで、制御器は、横渦による渦中心の位置を精度よく推定できる。
【0047】
本発明はまた、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、を備えたエンジンと、前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、前記制御器は、前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外と判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備え、前記点火装置は、前記吸気バルブが閉弁したのち、前記パラメータを検出し、前記制御器は、前記パラメータに基づいて、前記シリンダー内の縦渦の流動状態を判定する。
【0048】
上述したように、吸気バルブが閉弁したのちの圧縮行程に、点火装置がパラメータを検出することで、制御器は、縦渦による渦中心の位置を精度よく推定できる。
【0049】
本発明はまた、ペントルーフ型の天井部を有しかつ、該天井部に設けられた吸気バルブを通じて空気が導入されるシリンダー、該シリンダーの中央部に配置された点火プラグを含む点火装置、及び、前記シリンダーの中央部に配置された燃料噴射弁、を備えたエンジンと、前記点火装置、及び前記燃料噴射弁に電気的に接続された制御器と、を有するエンジンシステムであって、前記制御器は、前記燃料噴射弁が、吸気行程又は圧縮行程に、主燃料を噴射するように前記燃料噴射弁を制御し、燃料及び空気を含む混合気を前記シリンダー内に設ける主燃料噴射部と、混合気が着火しない時期に、前記点火プラグの電極間に高電圧を印加しかつ、前記電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出するように前記点火装置を制御し、そして前記点火装置が検出したパラメータが第1閾値から第2閾値までの範囲内か範囲外かを判定することにより、前記シリンダー内の渦流動の状態を判定する判定部と、前記判定部が、前記パラメータが前記第1閾値から第2閾値までの範囲外と判定した場合に、前記主燃料の噴射より後に前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射するように、前記燃料噴射弁を制御する補助燃料噴射部と、前記燃料噴射弁が補助燃料を噴射したのち、前記混合気に点火プラグが点火するように前記点火装置を制御する主点火制御部と、を備え、前記点火装置は、吸気行程で前記パラメータを検出し、かつ圧縮行程で前記パラメータを検出する。
【0050】
上述のように、点火装置が、吸気行程及び圧縮行程の両方において前記パラメータを検出することで、制御器は、横渦成分による渦中心の位置、及び縦渦成分による渦中心の位置を推定できるため、気筒内の斜め流動の状態をより精度よく推定できる。
【発明の効果】
【0051】
以上説明したように、前記のエンジンの制御方法、及び、前記のエンジンシステムによると、吸気流動にばらつきが生じても、補助燃料の噴射によって燃焼速度を一定にできるから、燃焼変動が抑制でき、エンジンの燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、エンジンシステムを例示する図である。
図2図2の上図は、エンジンの燃焼室の構造を例示する平面図であり、下図は、上図のII-II断面図である。
図3図3は、エンジンシステムのブロック図である。
図4図4は、点火装置を例示する図である。
図5図5は、エンジンの制御に係る機能ブロックを示すブロック図である。
図6図6は、縦渦の中心位置と、圧縮行程後半のシリンダー内の流動状態とを説明する図である。
図7図7は、点火プラグ付近の流動の強さが異なる場合における、点火プラグの電極間における電圧及び電流の時間変化を例示する図である。
図8図8は、点火プラグが検出する放電時間と、縦渦の中心位置とを示す図である。
図9図9は、横渦の中心位置と、シリンダー内の火炎の伝播状態との関係を説明する図である。
図10図10は、点火プラグが検出する放電時間と、横渦の中心位置との関係を示す図である。
図11図11は、主燃料の噴射タイミング、放電のタイミング、補助燃料の噴射タイミング、及び、主点火のタイミングを例示するタイミングチャートである。
図12図12は、縦渦の中心位置がピストンに近い場合における、シリンダー内の流動の変化と補助燃料の分布とを説明する図である。
図13図13は、縦渦の中心位置が天井部に近い場合における、シリンダー内の流動の変化と補助燃料の分布とを説明する図である。
図14図14は、横渦の中心位置が排気バルブ側に傾いた場合、及び、横渦の中心位置が吸気バルブ側に傾いた場合のそれぞれにおける、シリンダー内の流動の変化と補助燃料の分布とを説明する図である。
図15図15は、ECUが実行する、エンジン制御の手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、エンジンの制御方法、及び、エンジンシステムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明するエンジン、エンジンシステム、及び、その制御方法は例示である。
【0054】
図1は、エンジンシステムを例示する図である。図2は、エンジンの燃焼室の構造を例示する図である。図1における吸気側と排気側との位置と、図2における吸気側と排気側との位置とは、入れ替わっている。図3は、エンジンの制御装置を例示するブロック図である。
【0055】
エンジンシステムは、エンジン1を有している。エンジン1は、シリンダー11を有している。シリンダー11の中で、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程が繰り返される。エンジン1は、4ストロークエンジンである。エンジン1は、四輪の自動車に搭載されている。エンジン1が運転することによって自動車は走行する。エンジン1の燃料は、この構成例においてはガソリンである。
【0056】
(エンジンの構成)
エンジン1は、シリンダーブロック12と、シリンダーヘッド13とを備えている。シリンダーヘッド13は、シリンダーブロック12の上に載置される。シリンダーブロック12に、複数のシリンダー11が形成されている。エンジン1は、多気筒エンジンである。図1では、一つのシリンダー11のみを示す。
【0057】
各シリンダー11には、ピストン3が内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン3は、シリンダー11の内部を往復動する。ピストン3、シリンダー11及びシリンダーヘッド13は、燃焼室17を形成する。
【0058】
シリンダーヘッド13の下面、つまり、シリンダー11の天井部は、図2の下図に示すように、傾斜面1311と、傾斜面1312とによって構成されている。傾斜面1311は、後述する吸気バルブ21側の傾斜面1311であり、シリンダー11の中央部に向かって上り勾配となっている。傾斜面1312は、排気バルブ22側の傾斜面1312であり、シリンダー11の中央部に向かって上り勾配となっている。シリンダー11の天井部は、いわゆるペントルーフ型である。
【0059】
シリンダーヘッド13には、シリンダー11毎に、吸気ポート18が形成されている。吸気ポート18は、シリンダー11内に連通している。吸気ポート18は、詳細な図示は省略するが、いわゆるタンブルポートである。つまり、吸気ポート18は、シリンダー11の中にタンブル流が発生するような形状を有している。ペントルーフ型のシリンダー11の天井部と、タンブルポートとは、シリンダー11の中にタンブル流を発生させる。
【0060】
吸気ポート18には、吸気バルブ21が配設されている。吸気バルブ21は、吸気ポート18を開閉する。動弁機構は、吸気バルブ21を所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構としてもよい。図3に示すように、動弁機構は、吸気S-VT(Sequential-Valve Timing)23を有している。吸気S-VT23は、電動式又は油圧式である。吸気S-VT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。吸気バルブ21の開弁期間は変化しない。
【0061】
シリンダーヘッド13には、シリンダー11毎に、排気ポート19が形成されている。排気ポート19は、シリンダー11内に連通している。
【0062】
排気ポート19には、排気バルブ22が配設されている。排気バルブ22は、排気ポート19を開閉する。動弁機構は、排気バルブ22を所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構としてもよい。図3に示すように、動弁機構は、排気S-VT24を有している。排気S-VT24は、電動式又は油圧式である。排気S-VT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。排気バルブ22の開弁期間は変化しない。
【0063】
シリンダーヘッド13には、シリンダー11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。図2に示すように、インジェクタ6は、シリンダー11の中央部に配設されている。より詳細に、インジェクタ6は、傾斜面1311と傾斜面1312とが交差するペントルーフの谷部に配設されている。
【0064】
インジェクタ6は、シリンダー11の中に燃料を直接噴射する。インジェクタ6は、燃料噴射弁の一例である。インジェクタ6は、詳細な図示は省略するが、複数の噴口を有する多噴口型である。インジェクタ6は、図2に二点鎖線で示すように、シリンダー11の中央部から周辺部に向かって、放射状に広がるように燃料を噴射する。インジェクタ6は、図例では、周方向に等角度に配置された十個の噴孔を有しているが、噴孔の数、及び、配置は特に制限されない。
【0065】
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク63と、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を圧送する。燃料ポンプ65は、この構成例においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から圧送された燃料を、高い燃料圧力で蓄える。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口からシリンダー11の中に噴射される。インジェクタ6に供給する燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更してもよい。尚、燃料供給システム61の構成は、前記の構成に限定されない。
【0066】
シリンダーヘッド13には、シリンダー11毎に、点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、シリンダー11の中の混合気に強制的に点火をする。点火プラグ25の中心電極及び接地電極は、詳細な図示は省略するが、シリンダー11の中央部において、シリンダー11の天井部の付近に位置している。
【0067】
図1又は図3に示すように、点火プラグ25は、点火装置7に対して電気的に接続されている。点火装置7は、点火プラグ25の電極間に電圧を印加することによって放電(アーク放電)を実行させ、シリンダー11内の混合気に点火する。点火装置7はまた、詳細は後述するが、混合気が着火しない時期に、点火プラグ25に放電を実行させ、その時に電極間に生じた放電経路の電流値に関するパラメータを検出する。検出したパラメータは、シリンダー11内の流動状態の推定に用いられる。点火装置7の構成は、後述する。
【0068】
エンジン1の一側面には吸気通路40が接続されている。吸気通路40は、各シリンダー11の吸気ポート18に連通している。シリンダー11に導入される空気は、吸気通路40を流れる。吸気通路40の上流端部には、エアクリーナー41が配設されている。エアクリーナー41は、空気を濾過する。吸気通路40の下流端近傍には、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、シリンダー11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の下流端が、各シリンダー11の吸気ポート18に接続されている。
【0069】
吸気通路40におけるエアクリーナー41とサージタンク42との間には、スロットルバルブ43が配設されている。スロットルバルブ43は、バルブの開度を調節することによって、シリンダー11の中への空気の導入量を調節する。
【0070】
エンジン1は、シリンダー11内にスワール流を発生させるスワール発生部を有している。スワール発生部は、詳細な図示は省略するが、吸気通路40に取り付けられたスワールコントロールバルブ56を有している。スワールコントロールバルブ56は、サージタンク42よりも下流において、互いに平行な第1吸気通路18a及び第2吸気通路18b(図2参照)のうちの、第2吸気通路18bに配設されている。スワールコントロールバルブ56は、第2吸気通路18bの断面を絞ることができる開度調節バルブである。スワールコントロールバルブ56の開度が小さいと、図2に示す第1吸気通路18aからシリンダー11に流入する吸気流量が相対的に多くかつ、第2吸気通路18bからシリンダー11に流入する吸気流量が相対的に少ないから、シリンダー11内のスワール流が強くなる。スワールコントロールバルブ56の開度が大きいと、第1吸気通路18a及び第2吸気通路18bのそれぞれからシリンダー11に流入する吸気流量が、略均等になるから、シリンダー11内のスワール流が弱くなる。スワールコントロールバルブ56を全開にすると、スワール流が発生しない。尚、スワール流は、白抜きの矢印で示すように、図2における反時計回り方向に周回する。
【0071】
尚、スワールコントロールバルブ56によってスワール流を発生させる代わりに、エンジン1の吸気ポート18を、スワール流を生成可能なヘリカルポートに構成してもよい。
【0072】
エンジン1の他側面には、排気通路50が接続されている。排気通路50は、各シリンダー11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、シリンダー11から排出された排気ガスが流れる通路である。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダー11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の上流端が、各シリンダー11の排気ポート19に接続されている。
【0073】
排気通路50には、複数の触媒コンバーターを有する排気ガス浄化システムが配設されている。上流の触媒コンバーターは、例えば三元触媒511と、GPF(Gasoline Particulate Filter)512とを有している。下流の触媒コンバーターは、三元触媒513を有している。尚、排気ガス浄化システムは、図例の構成に限定されるものではない。例えば、GPFは省略してもよい。また、触媒コンバーターは、三元触媒を有するものに限定されない。さらに、三元触媒及びGPFの並び順は、適宜変更してもよい。
【0074】
吸気通路40と排気通路50との間には、EGR通路52が接続されている。EGR通路52は、排気ガスの一部を吸気通路40に還流させるための通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における上流の触媒コンバーターと下流の触媒コンバーターとの間に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路40におけるスロットルバルブ43とサージタンク42との間に接続されている。
【0075】
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラー53が配設されている。EGRクーラー53は、排気ガスを冷却する。EGR通路52にはまた、EGRバルブ54が配設されている。EGRバルブ54は、EGR通路52を流れる排気ガスの流量を調節する。EGRバルブ54の開度を調節することによって、冷却した排気ガスの還流量を調節することができる。
【0076】
エンジン1の制御装置は、図3に示すように、エンジン1を運転するためのECU(Engine Control Unit)10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラーであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)101と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ102と、電気信号の入出力をするI/F回路103と、を備えている。ECU10は、制御器の一例である。
【0077】
ECU10には、図1及び図3に示すように、各種のセンサSW1~SW9が接続されている。センサSW1~SW9は、信号をECU10に出力する。センサには、以下のセンサが含まれる。
エアフローセンサSW1:吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されかつ、吸気通路40を流れる空気の流量を計測する。
吸気温度センサSW2:吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されかつ、吸気通路40を流れる空気の温度を計測する。
吸気圧センサSW3:サージタンク42に取り付けられかつ、シリンダー11に導入される空気の圧力を計測する
筒内圧センサSW4:各シリンダー11に対応してシリンダーヘッド13に取り付けられかつ、各シリンダー11内の圧力を計測する。
水温センサSW5:エンジン1に取り付けられかつ、冷却水の温度を計測する。
クランク角センサSW6:エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフト15の回転角を計測する。
アクセル開度センサSW7:アクセルペダル機構に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する。
吸気カム角センサSW8:エンジン1に取り付けられかつ、吸気カムシャフトの回転角を計測する。
排気カム角センサSW9:エンジン1に取り付けられかつ、排気カムシャフトの回転角を計測する。
【0078】
ECU10は、これらのセンサSW1~SW9の信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、予め定められている制御ロジックに従って、各デバイスの制御量を演算する。制御ロジックは、メモリ102に記憶されている。制御ロジックは、メモリ102に記憶しているマップを用いて、目標量及び/又は制御量を演算することを含む。
【0079】
ECU100は、演算をした制御量に係る電気信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気S-VT23、排気S-VT24、燃料供給システム61、スロットルバルブ43、EGRバルブ54、及び、スワールコントロールバルブ56に出力する。
【0080】
各種のセンサ及び各種のデバイスに電気的に接続されたECU10は、後述するように、エンジン1を運転するための、複数の機能ブロックを構成する。
【0081】
(点火装置の構成)
図4は、点火装置7の構成を例示している。点火装置7は、点火プラグ25の中心電極251と接地電極252との間に電圧を印加し、シリンダー11内において放電させる。点火装置7は点火コイル70を有している。点火コイル70は、1次コイル70a、2次コイル70c、及び、鉄芯70bを有している。点火装置7はまた、コンデンサ72と、トランジスタ73と、エネルギ発生装置74と、点火制御器75と、を備えている。
【0082】
中心電極251は、点火コイル70の2次コイル70cに接続されている。接地電極252は、接地されている。2次コイル70cによって、電極間に印加された2次電圧が、絶縁破壊に要求される電圧に達すると、中心電極251と接地電極252との間にある空隙に放電が生じる。
【0083】
1次コイル70aの一端はコンデンサ72に接続されている。コンデンサ72は、1次コイル70aに1次電流を流すための電気エネルギを蓄える。エネルギ発生装置74は、電源を含んでいる。エネルギ発生装置74は、コンデンサ72を充電する。
【0084】
1次コイル70aの一端はトランジスタ73のコレクタに接続されている。トランジスタ73は、点火コイル70の1次電流を断続する。
【0085】
2次コイル70cの一端は、前述したように、中心電極251に接続されており、他端は、点火制御器75に接続されている。
【0086】
点火制御器75は、エネルギ発生装置74及びトランジスタ73を制御し、所定のタイミングで、点火プラグ25を用いて、シリンダー11内の混合気に点火する。
【0087】
点火制御器75はまた、2次コイル70cが点火プラグ25の電極間に印加する2次電圧と、2次コイル70cから点火プラグ25に流れる2次電流とを計測できる。前述の通り、点火装置7は、混合気が着火しない時期に、点火プラグ25に放電を実行させ、その時に電流値に関するパラメータを検出する。
【0088】
(エンジンの運転制御)
次に、ECU10によるエンジン1の運転制御について説明する。このエンジン1は、火花点火式のエンジンである。インジェクタ6は、エンジン1の運転状態に対応する量の燃料を、吸気行程又は圧縮行程中に、シリンダー11内に噴射する。シリンダー11の中に、混合気が設けられる。点火プラグ25は、圧縮上死点付近の所定のタイミングで、混合気に点火し、混合気が燃焼する。
【0089】
燃費を向上させるために、このエンジン1は、シリンダー11内に乱流を発生させる。シリンダー11内に乱流が発生すると、燃焼速度が高まる。具体的にエンジン1は、シリンダー11の天井部がペントルーフ型であると共に、吸気ポート18がタンブルポートである。シリンダー11の中に導入された吸気は、タンブル流を生成する。エンジン1はまた、スワールコントロールバルブ56を有している。スワールコントロールバルブ56を閉じることによって、シリンダー11の中に導入された吸気は、スワール流を生成する。タンブル流とスワール流とが組み合わさることで、シリンダー11内には、縦渦と横渦とが合成された斜め流動が形成される。
【0090】
ここで、シリンダー11内の吸気流動の状態は、毎サイクルで同じではなく、様々な要因によってサイクル毎に変わる可能性がある。シリンダー11内の吸気流動の状態が変わると、燃焼速度が変わる場合がある。燃焼速度がサイクル毎に変わってしまうと、エンジン1の燃焼変動を招いてしまう。ここに開示するエンジンシステム、及び、エンジン1の制御方法は、サイクル毎に燃焼速度が変わることを抑制することにより、エンジン1の燃焼変動を抑制する。
【0091】
より具体的に、このエンジンシステムは、サイクル毎に、シリンダー11内の流動の状態を推定すると共に、推定した流動の状態に基づいて、必要に応じて、シリンダー11内に補助燃料を噴射する。
【0092】
図5は、燃焼変動の抑制制御を実行するエンジン1の制御装置の構成を例示するブロック図である。図5は、ECU10が有する機能ブロックを図示している。ECU10は、機能ブロックとして、主燃料噴射部81、及び、主点火制御部82を有している。主燃料噴射部81は、エンジン1の要求トルクに対応する主燃料の量及び噴射タイミングを設定すると共に、インジェクタ6に、主燃料の噴射を実行させる機能ブロックである。主点火制御部82は、主燃料の噴射の後に、点火プラグ25を用いて、シリンダー11内に設けられた混合気に、所定のタイミングで点火させる機能ブロックである。
【0093】
ECU10はまた、判定部83、及び、補助燃料噴射部84を有している。判定部83は、後述するように、点火装置7及び点火プラグ25を用いて検出したパラメータに基づいて、シリンダー11内の流動状態を判定する機能ブロックである。補助燃料噴射部84は、判定部83が判定したシリンダー11内の流動状態に基づき、点火プラグ25が混合気に点火する前に、必要に応じてシリンダー11内に補助燃料を噴射する機能ブロックである。
【0094】
以下、図5に例示するエンジンの制御装置が実行する、シリンダー11内の流動の状態推定を説明し、その後、推定した流動の状態に応じた、補助燃料の噴射制御を説明する。
【0095】
(流動状態の推定)
図6は、圧縮行程前半における縦渦の中心位置と、圧縮行程後半におけるシリンダー11内の流動状態とを示す図である。図6のチャート601は、圧縮行程の前半において縦渦の中心の位置が、シリンダー11内のピストン3に近い位置である場合の、シリンダー11内の流動状態を例示し、チャート604は、チャート601の状態からクランク角が進行した圧縮行程の後半での、シリンダー11内の流動状態を例示している。
【0096】
同様に、チャート602は、圧縮行程の前半において縦渦の中心の位置が、シリンダー11内のピストン3と天井部との中間位置である場合の、シリンダー11内の流動状態を例示し、チャート605は、チャート602の状態からクランク角が進行した圧縮行程の後半での、シリンダー11内の流動状態を例示している。
【0097】
また、チャート603は、圧縮行程の前半において縦渦の中心の位置が、シリンダー11内の天井部に近い位置である場合の、シリンダー11内の流動状態を例示し、チャート606は、チャート603の状態からクランク角が進行した圧縮行程の後半での、シリンダー11内の流動状態を例示している。
【0098】
尚、圧縮行程の前半とは、圧縮行程を前半と後半とに二等分した場合の前半であり、圧縮行程の後半とは、圧縮行程を前半と後半とに二等分した場合の後半である。
【0099】
先ず、チャート602に示すように、シリンダー11内の縦渦の中心が、側面視でシリンダー11の中央付近に存在する場合は、チャート605に実線の矢印で示すように、圧縮行程後半でも旋回流が維持される。その結果、乱流度合いが、シリンダー11内の全体において均等又は略均等となる。この場合、火炎は、シリンダー11内の中央付近から周辺部へ、均等又は略均等に伝播する。火炎の伝播は、シリンダー11内の乱流によって促進されるから、燃焼速度は、比較的速い。
【0100】
チャート601に示すように、縦渦の中心の位置が、側面視でシリンダー11の下方側付近にずれて存在する場合は、チャート604に示すように、圧縮行程後半で、渦中心がピストン3の頂面に接触することにより縦渦の下半分が潰れ、同図に矢印で示すように、シリンダー11内の流動が、吸気バルブ21から排気バルブ22に向かう一方向の流動となる。以下この一方向流動を、正一方向流動と呼ぶ。シリンダー11内の流動が正一方向流動となると、シリンダー11内の、乱流度合いが不均等になる。具体的には、排気バルブ側の領域の乱流度合いは強いが、吸気バルブ側の領域の乱流度合いは弱くなる(同図の一点鎖線で囲んだ領域参照)。この場合、シリンダー11の中央部において混合気に点火されることにより発生した火炎は、排気バルブ側の領域へは伝播しやすい一方、吸気バルブ側の領域へは伝播しにくい。チャート604の場合、チャート605の場合と比べて燃焼速度が遅くなる。
【0101】
チャート603に示すように、縦渦の中心の位置が、側面視でシリンダー11の上方側付近にずれて存在する場合は、圧縮行程後半で、渦中心がシリンダー11の天井部に接触することにより縦渦の上半分が潰れ、チャート606に矢印で示すように、シリンダー11内の流動が、排気バルブ22から吸気バルブ21へ向かう一方向の流動となる。以下この一方向流動を、反一方向流動と呼ぶ。シリンダー11内の流動が反一方向流動となると、シリンダー11内の、乱流度合いが不均等になる。具体的には、吸気バルブ側の領域の乱流度合いは強いが、排気バルブ側の領域の乱流度合いが弱くなる(同図の一点鎖線で囲んだ領域参照)。この場合、火炎は、吸気バルブ側の領域へは伝播しやすい一方、排気バルブ側の領域へは伝播しにくい。チャート606の場合、チャート605の場合と比べて燃焼速度が遅くなる。
【0102】
エンジンシステムにおいて、点火装置7は、シリンダー11内の流動状態を検出する。具体的に点火装置7は、混合気が着火しない時期に、シリンダー11内において放電を行い、その放電が継続する時間を検出する。判定部83は、検出された放電時間に基づいて、点火プラグ25付近の流動の強さを推定すると共に、推定した流動強さに基づいて、縦渦の中心位置を判断する。
【0103】
図7は、点火プラグ25付近の流動の強さが異なる場合における、点火プラグ25の電極間における電圧の時間変化701、及び、電流の時間変化702を例示している。点火プラグ25にエネルギを付与することによって、その電極間に電圧を印加すれば、中心電極251と接地電極252との間に放電経路が形成される(チャート703、704参照)。放電経路は、点火プラグ25付近の流動が強いほど、その流動に流されて伸びる。放電経路が伸長することで、電極間の抵抗が増大し、電極間に印加した電圧の降下が促進する。点火プラグ25付近の流動が強くなるほど、点火プラグ25に付与したエネルギが消費される時間、つまり放電時間が短くなる。
【0104】
より詳細に、図7に実線で示すように、点火プラグ25付近の流動がない場合、放電経路はあまり伸長しないので(チャート703参照)、放電時間は長い。点火プラグ25付近の流動が強くなるほど、放電経路は伸長するので(チャート704参照)、チャート701、702に破線で示すように、放電時間が短くなる。つまり、点火プラグ25の電極間における電流の放電時間と、点火プラグ25付近の流動の強さとは、比例する。点火装置7が放電時間を検出すれば、判定部83は、点火プラグ25付近の流動の強さ(つまり、流速)を推定できる。
【0105】
図8は、点火装置7が検出する放電時間と、シリンダー11内における縦渦の中心位置との関係を示している。図8のチャート800は、放電時間と、点火プラグ25付近の流速Vpとの関係を示している。前述したように、放電時間と流速Vpとは比例関係を有しており、放電時間が短いほど、流速Vpが速く、放電時間が長いほど、流速Vpが遅い。
【0106】
図8のチャート802に示すように、縦渦の中心位置が、圧縮行程の前半において、シリンダー11内のピストン3と天井部との中間位置である場合、点火プラグ25と渦の中心位置とが、ある程度、離れるため、点火プラグ25付近の流速は、V1とV2との間になる。
【0107】
一方、チャート801に示すように、縦渦の中心位置が、圧縮行程の前半において、ピストン3に近い位置である場合、点火プラグ25と渦の中心とが大きく離れるため、点火プラグ25付近の流速Vpは、V1よりも速くなる。
【0108】
また、チャート803に示すように、縦渦の中心位置が、圧縮行程の前半において、天井部に近い位置である場合、点火プラグ25と渦の中心とが近いため、点火プラグ25付近の流速Vpは、V2よりも遅くなる。
【0109】
主としてタンブル流によりシリンダー11内に形成される縦渦は、吸気バルブ21が閉じた後の圧縮行程において安定になり、その中心位置が定まる。従って、圧縮行程の前半において、点火プラグ25が放電(後述する第2放電)を行いかつ、点火装置7が検出した放電時間(後述する第2放電時間)が、速度V1に対応する第1閾値よりも短い場合は、縦渦の中心位置が、ピストン3に近い位置であると推定でき、放電時間が、速度V2に対応する第2閾値よりも長い場合は、縦渦の中心位置が、天井部に近い位置であると推定でき、放電時間が第1閾値と第2閾値との間の場合は、縦渦の中心位置が、シリンダー11の中間位置であると推定できる。
【0110】
図9は、吸気行程における横渦の中心位置と、圧縮行程後半のシリンダー11内の流動状態との関係を示す図である。図9のチャート901は、吸気行程において横渦の中心の位置が、シリンダー11内の排気バルブ側に傾いた場合の、シリンダー11内の流動状態を例示し、チャート904は、チャート901の状態からクランク角が進行した圧縮行程の後半以降における、火炎の伝播状態を例示している。
【0111】
同様に、チャート902は、吸気行程において横渦の中心の位置が、シリンダー11内の中央部において、シリンダー11の軸にほぼ沿っている場合の、シリンダー11内の流動状態を例示し、チャート905は、チャート902の状態からクランク角が進行した圧縮行程の後半以降における、火炎の伝播状態を例示している。
【0112】
また、チャート903は、吸気行程において縦渦の中心の位置が、シリンダー11内の吸気バルブ側に傾いた場合の、シリンダー11内の流動状態を例示し、チャート906は、チャート903の状態からクランク角が進行した圧縮行程の後半以降における、火炎の伝播状態を例示している。
【0113】
先ず、チャート902に示すように、シリンダー11内の横渦の中心が、平面視でシリンダー11の中央部において、シリンダー11の軸に沿って存在する場合は、圧縮行程後半でも横渦の中心が軸付近に位置する。シリンダー11内における乱流度合いも、シリンダー11内の全体において均等又は略均等である。シリンダー11の中央部において、点火プラグ25が混合気に点火すると、火炎は、チャート905に破線の矢印で示すように、横渦によって周方向に曲げられながら、シリンダー11内の中央部から周辺部へと伝播する。火炎は、シリンダー11内の中央付近から周辺部へ、均等又は略均等に伝播する。火炎の伝播は、シリンダー11内の乱流によって促進されるから、燃焼速度は、比較的速い。
【0114】
チャート901に示すように、横渦の中心の位置が、平面視で排気バルブ側に傾いている場合は、横渦の中心とシリンダー11の中心とがずれる。シリンダー11内における乱流度合いは、シリンダー11内の全体において不均等になる。また、圧縮行程の後半の圧縮上死点付近において、シリンダー11の中央部において、点火プラグ25が混合気に点火すると、火炎は、チャート904に破線の矢印で示すように、横渦によって周方向に曲げられながら、シリンダー11内の中央部から周辺部へと伝播する。このとき、横渦の中心から離れるほど、横渦の流速が速くなる(チャート904の同心円参照)。つまり、横渦の中心から遠い吸気バルブ側は相対的に横渦の流速が速い。シリンダー11の中央部から排気バルブ側へと伝播する火炎は、周方向に曲げられながら径方向の外方へ伝播する一方、シリンダー11の中央部から吸気バルブ側へと伝播する火炎は、横渦の速い流速によって強く曲げられる結果、径方向の外方へ伝播しにくくなる。その結果、チャート904に一点鎖線で示すように、吸気バルブ側の領域が、火炎伝播しにくい領域となる。この場合は、チャート905の場合と比較して、燃焼速度が遅くなる。
【0115】
チャート903に示すように、横渦の中心の位置が、平面視で吸気バルブ側に傾いている場合も、横渦の中心と、シリンダー11の中心とがずれる。シリンダー11内における乱流度合いは、シリンダー11内の全体において不均等になる。また、圧縮行程の後半の圧縮上死点付近において、シリンダー11の中央部において、点火プラグ25が混合気に点火すると、火炎は、チャート906に破線の矢印で示すように、横渦によって周方向に曲げられながら、シリンダー11内の中央部から周辺部へと伝播する。このとき、シリンダー11の中央部から吸気バルブ側に向かう方向は、実線の矢印で示す反時計回りの横渦の流れに対向する方向となる。その結果、シリンダー11の中央部から排気バルブ側へと伝播する火炎は、周方向に曲げられながら径方向の外方へ伝播する一方、シリンダー11の中央部から吸気バルブ側へと伝播する火炎は、横渦の流れに押し戻される結果、径方向の外方へ伝播しにくくなる。チャート906に一点鎖線で示すように、吸気バルブ側の領域が、火炎伝播しにくい領域となる。この場合も、チャート905の場合と比較して、燃焼速度が遅くなる。
【0116】
図10は、点火装置7が検出する放電時間と、シリンダー11内における横渦の中心位置との関係を示している。図10のチャート1000は、放電時間と、点火プラグ25付近の流速との関係を示している。
【0117】
スワール流の形成のため、吸気は、主に第1吸気通路18aからシリンダー11内に流入する。図10のチャート1002に示すように、主に第1吸気通路18aから流入する吸気によって、吸気行程におけるシリンダー11内には流速分布が生じる。吸気行程における速度分布が同図に例示するような分布、つまり、シリンダー11の中央部とライナーとの間の所定の径方向位置において流速最大となり、そこから中央部に向かうに従い流速が低下しかつ、ライナーに向かうに従い流速が低下するような分布であれば、横渦の中心はシリンダー11の中央部付近において、軸に沿うようになる。この場合、点火プラグ25付近の流速は、V3とV4との間になる。
【0118】
一方、チャート1001に示すように、吸気行程において、ライナー付近の流速が極端に高い流速分布になると、横渦の中心は、排気バルブ側へ傾く。この場合、点火プラグ25付近の流速は、V4よりも遅くなる。
【0119】
また、チャート1003に示すように、吸気行程における流速分布において最大流速が比較的に低く、流速分布の尖度が低い場合、横渦の中心は、吸気バルブ側へ傾く。この場合、点火プラグ25付近の流速は、V3よりも速くなる。
【0120】
主としてスワール流によりシリンダー11内に形成される横渦は、吸気バルブ21が開弁したのち、閉弁するまでの吸気行程において、安定化する。点火装置7は、吸気行程において、点火プラグ25に放電(後述する第1放電)させ、その放電時間(後述する第1放電時間)を検出する。より詳細には、吸気バルブ21が開弁した瞬間から所定期間は、吸気の流動は、ばらつきやすい。吸気バルブ21の開弁から所定時間が経過したのち、吸気バルブ21が閉弁するまでにおいて、横渦は安定化する。点火装置7は、吸気バルブ21の開弁から所定時間(後述する時定数Δt)が経過したのち、点火プラグ25に放電させ、その放電時間を検出する。
【0121】
判定部83は、放電時間が、速度V3に対応する第1閾値よりも短い場合は、横渦の中心位置が吸気バルブ側へ傾いていると推定でき、放電時間が、速度V4に対応する第2閾値よりも長い場合は、横渦の中心位置が排気バルブ側へ傾いていると推定でき、放電時間が第1閾値と第2閾値との間の場合は、横渦の中心位置が、シリンダー11の中央部において、シリンダー11の軸に沿っていると推定できる。尚、第1閾値に対応する速度V3と、前記の速度V1とは同じとは限らない。同様に、第2閾値に対応する速度V4と、前記の速度V2とは同じとは限らない。
【0122】
(補助燃料の噴射制御)
図11は、インジェクタ6による燃料噴射、及び、点火プラグ25による、放電及び点火のタイミングを例示するタイミングチャートである。図11の左から右にクランク角は進む。
【0123】
前述したように、吸気流動のばらつきによって、縦渦、及び/又は、横渦の中心位置がずれると、シリンダー11内において、乱流度合いが弱くなる領域、及び/又は、火炎が伝播しにくい領域が発生する。補助燃料は、こうした乱流度合いが弱くなる領域、及び/又は、火炎が伝播しにくい領域に、局所的に燃料濃度の高い混合気を配置し、それによって、当該特定領域への火炎伝播を促進させる。
【0124】
先ず、主燃料噴射部81は、吸気バルブ21が開弁した後、吸気バルブ21が閉弁するまでの吸気行程の期間において、インジェクタ6を通じて主燃料をシリンダー11内に噴射させる(主燃料噴射1104参照)。主燃料は、流動によってシリンダー11内に拡散し、シリンダー11内に混合気を形成する。
【0125】
チャート1102に示すように、判定部83は、点火装置7及び点火プラグ25に、吸気バルブ21が開弁してから、所定の時定数Δtが経過した後の吸気行程期間において、第1放電1105を実行させる。第1放電1105は、混合気が着火しない期間に行われる放電である。点火装置7は、第1放電に対応する第1放電時間を検出する。判定部83は、第1放電1105の際に検出された第1放電時間から、横渦の中心位置を推定する。
【0126】
判定部83はまた、点火装置7及び点火プラグ25に、吸気バルブ21が閉弁したのちの、圧縮行程における、例えば前半に第2放電1106を実行させる。第2放電1106も、混合気が着火しない期間に行われる放電である。点火装置7は、第2放電に対応する第2放電時間を検出する。判定部83は、第2放電1106の際に検出された第2放電時間から、縦渦の中心位置を推定する。
【0127】
点火装置7が検出した第1放電時間、及び、第2放電時間が共に、第1閾値と第2閾値との間である場合、縦渦の中心位置がシリンダー11におけるピストン3と天井部との中間に位置しかつ、横渦の中心位置がシリンダー11の中央部において、シリンダー11の軸に沿っている。この場合、補助燃料の噴射が不要である。図11のチャート1102に示すように、補助燃料噴射部84は、補助燃料の噴射を中止し、主点火制御部82は、点火プラグ25を用いて、圧縮行程後半の、圧縮上死点付近における所定のタイミングで、混合気に点火する(図11の主点火1107参照)。この場合、横渦及び縦渦の中心位置が、シリンダー11の中央部に位置しているから、乱流度合いは、シリンダー11内の全体において均等又は略均等である。火炎は、シリンダー11の中央部から周辺部に向かって均等又は略均等に伝播する。燃焼速度は比較的速い。
【0128】
次に、点火装置7が検出した第2放電時間が第1閾値よりも小さい(第2放電時間が第1閾値よりも短い)場合について説明する。この場合、縦渦の中心位置は、シリンダー11におけるピストン3に近い位置であり、圧縮行程の後半には、シリンダー11内に正一方向流動が生じる。図11のチャート1101に示すように、補助燃料噴射部84は、インジェクタ6に、所定量の補助燃料、つまり、第1補助燃料1108を噴射させる。インジェクタ6は、例えば圧縮行程の前半又は圧縮行程の後半の第1噴射時期において、第1補助燃料1108を噴射する。
【0129】
図12は、縦渦の中心位置が、シリンダー11におけるピストン3に近い位置にある場合における、シリンダー11内の流動の変化と第1補助燃料の分布とを説明する図である。前述したように、縦渦の中心位置がピストン3の付近に位置している場合、P1201、P1202、P1203、P1204とピストン3が上昇するに従い、渦の中心がピストン3の頂面に当たることにより縦渦の下半分が潰れ、P1205に黒色矢印で示すように、圧縮行程の後半におけるシリンダー11内の流動が、吸気バルブ21から排気バルブ22に向かう方向の正一方向流動となる。
【0130】
圧縮行程の相対的に早いタイミング(P1203)でシリンダー11内に噴射された第1補助燃料は、シリンダー11内の圧力がそれほど高くないため、渦が潰れる前に、縦渦に乗って、排気バルブ側から吸気バルブ側へと運ばれる(P1203、P1204、P1205のハッチングを付した箇所を参照)。その結果、吸気バルブ付近に濃い混合気を配置することができる。
【0131】
第1補助燃料1108の噴射後、主点火制御部82は、点火プラグ25を用いて、圧縮行程後半の、圧縮上死点付近における所定のタイミングで、混合気に点火する(チャート1101の主点火1107参照)。正一方向流動によって、火炎は、吸気バルブ側へ伝播しにくいが、吸気バルブ側の混合気の燃料濃度が高いため、吸気バルブ側への火炎伝播が促進される。その分、燃焼速度が高くなり、燃焼速度は、放電時間が第1閾値と第2閾値との間である場合と同程度に高まる。よって、エンジン1の燃焼変動が抑制される。
【0132】
次に、点火装置7が検出した第2放電時間が第2閾値よりも大きい(第2放電時間が第2閾値よりも長い)場合について説明する。この場合、縦渦の中心位置は、シリンダー11における天井部に近い位置であり、圧縮行程の後半には、シリンダー11内に反一方向流動が生じる。図11のチャート1103に示すように、補助燃料噴射部84は、インジェクタ6に、所定量の補助燃料、つまり、第2補助燃料1109を噴射させる。インジェクタ6は、圧縮行程の後半の第2噴射時期において、第2補助燃料1109を噴射する。第2補助燃料1109の噴射時期は、第1補助燃料1108の噴射時期よりも遅い。
【0133】
図13は、縦渦の中心位置が、シリンダー11における天井部に近い位置にある場合における、シリンダー11内の流動の変化と第2補助燃料の分布とを説明する図である。前述したように、縦渦の中心位置が天井部付近に位置している場合、P1301、P1302、P1303、P1304とピストン3が上昇するに従い、渦の中心が天井部に当たることにより縦渦の上半分が潰れ、P1305に黒色の矢印で示すように、圧縮行程の後半におけるシリンダー11内の流動が、排気バルブ22から吸気バルブ21に向かう方向の反一方向流動となる。
【0134】
インジェクタ6は、圧縮行程の後半に第2補助燃料を噴射する(P1304参照)。圧縮行程の後半はシリンダー11内の圧力が高いため、シリンダー11内に噴射された第2補助燃料は、その強い圧縮圧を受けて、シリンダー11内の中央部に留まると共に、相対的に流動が弱い排気バルブ側へ流れる(P1304、P1305のハッチングを付した箇所を参照)。その結果、排気バルブ付近に濃い混合気を配置することができる。
【0135】
第2補助燃料1109の噴射後、主点火制御部82は、点火プラグ25を用いて、圧縮行程後半の、圧縮上死点付近における所定のタイミングで、混合気に点火する(チャート1103の主点火1107参照)。反一方向流動によって、火炎は、排気バルブ側へ伝播しにくいが、排気バルブ側の混合気の燃料濃度が高いため、排気バルブ側への火炎伝播が促進される。その分、燃焼速度が高くなり、燃焼速度は、放電時間が第1閾値と第2閾値との間である場合と同程度に高まる。よって、エンジン1の燃焼変動が抑制される。
【0136】
従って、シリンダー11内における流動状態に応じて、補助燃料の噴射を行うことにより、吸気流動の状態がサイクル毎にばらついて、縦渦の中心位置がばらついても、ECU10は、燃焼速度を同じ、又は、略同じにすることができるから、燃焼変動が抑制できる。
【0137】
次に、点火装置7が検出した第1放電時間が第1閾値よりも小さい(第1放電時間が第1閾値よりも短い)場合について説明する。この場合、横渦の中心位置は、シリンダー11における吸気バルブ側に傾いている。図11のチャート1101に示すように、補助燃料噴射部84は、インジェクタ6に、所定量の補助燃料、つまり、第1補助燃料1108を噴射させる。インジェクタ6は、例えば圧縮行程の前半又は圧縮行程の後半の第1噴射時期において、第1補助燃料1108を噴射する。
【0138】
図14のP1401及びP1402は、横渦の中心位置が吸気バルブ側に傾いている場合における、シリンダー11内の流動の変化と、第1補助燃料の分布とを説明する図である。横渦の中心が吸気バルブ側に傾いている場合、P1401に例示するように、圧縮行程におけるシリンダー11内の速度分布は、流速分布の尖度が低いため、極端に速い流速の箇所は存在しない。
【0139】
第2放電後の、圧縮行程の前半又は後半において、シリンダー11内の中央部から放射状に噴射された第1補助燃料は、流れに乗って周方向に搬送される。補助燃料の噴射のタイミングが相対的に進角しているため、排気バルブ側へ噴射された補助燃料の噴霧は、点火タイミングまでの長い時間を利用して、吸気バルブ側まで運ばれる。その結果、点火タイミング(P1402)において、吸気バルブ側の混合気の燃料濃度が高まる。
【0140】
第1補助燃料の噴射後、主点火制御部82は、点火プラグ25を用いて、圧縮行程後半の、圧縮上死点付近における所定のタイミングで、混合気に点火する(チャート1101の主点火1107参照)。前述したように、火炎は、中心位置がずれた横渦によって、径方向の外方への伝播が妨げられる結果、吸気バルブ側へ伝播しにくいが、吸気バルブ側の混合気の燃料濃度が高いため、吸気バルブ側への火炎伝播が促進される。その分、燃焼速度が高くなり、燃焼速度は、放電時間が第1閾値と第2閾値との間である場合と同程度に高まる。エンジン1の燃焼変動が抑制される。
【0141】
次に、点火装置7が検出した第1放電時間が第2閾値よりも大きい(第1放電時間が第2閾値よりも長い)場合について説明する。この場合、横渦の中心位置は、シリンダー11における排気バルブ側に傾いている。図11のチャート1103に示すように、補助燃料噴射部84は、インジェクタ6に、所定量の補助燃料、つまり、第2補助燃料1109を噴射させる。インジェクタ6は、圧縮行程の後半の第2噴射時期において、第2補助燃料1109を噴射する。第2補助燃料1109の噴射時期は、第1補助燃料1108の噴射時期よりも遅い。
【0142】
図14のP1403及びP1404は、横渦の中心位置が排気バルブ側に傾いている場合における、シリンダー11内の流動の変化と、第2補助燃料の分布とを説明する図である。横渦の中心が排気バルブ側に傾いている場合、P1403に例示するように、圧縮行程後半におけるシリンダー11内の速度分布は、ライナー付近において極端に速い流速が存在する。
【0143】
圧縮行程の後半の遅いタイミングにおいて、シリンダー11内の中央部から放射状に噴射された第2補助燃料の内、吸気バルブ側に噴射された補助燃料は、遅い流速の流れに乗ることで移動量が少なく、吸気バルブ側に留まる。一方、排気バルブ側に噴射された補助燃料は、速い流速の流れに乗ることで、周方向に、速やかに吸気バルブ側まで運ばれる。その結果、点火タイミング(P1404)において、補助燃料の噴霧が重なり合い、吸気バルブ側の混合気の燃料濃度が高まる。
【0144】
第2補助燃料1109の噴射後、主点火制御部82は、点火プラグ25を用いて、圧縮行程後半の、圧縮上死点付近における所定のタイミングで、混合気に点火する(チャート1103の主点火1107参照)。前述したように、火炎は、中心位置がずれた横渦によって伝播方向が曲げられる結果、吸気バルブ側へ伝播しにくいが、吸気バルブ側の混合気の燃料濃度が高いため、吸気バルブ側への火炎伝播が促進される。その分、燃焼速度が高くなり、燃焼速度は放電時間が第1閾値と第2閾値との間である場合と同程度に高まる。よって、エンジン1の燃焼変動が抑制される。
【0145】
従って、シリンダー11内における流動状態に応じて、補助燃料の噴射を行うことにより、吸気流動の状態がサイクル毎にばらついて、横渦の中心位置がばらついても、ECU10は、燃焼速度を同じ、又は、略同じにすることができるから、エンジン1の燃焼変動が抑制できる。
【0146】
尚、第1放電、第2放電、及び、主点火のそれぞれにおいて、点火プラグ25に付与されるエネルギは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0147】
(エンジンの制御装置の制御手順)
次に、図15のフローチャートを参照しながら、前述したエンジン1の制御装置の制御手順を説明する。先ずステップS1において、ECU10は、各センサSW1~SW9のセンサ値を取得する。続くステップS2において、取得したセンサ値に基づいて、ECU10は、エンジン1の要求トルクを算出する。ECU10は、ステップS3において、要求トルクを満たすための、主噴射の噴射量及びその噴射時期を決定する。また、ECU10は、主点火時期を決定する。
【0148】
ステップS4においてECU10は、第1放電、及び、第2放電の時期を決定する。このステップにおいてECU10は、第1放電を実行する際の時定数Δtも定める。ECU10は、例えばエンジン1の運転状態、つまりエンジン1の負荷、及び/又は、回転数に応じて、時定数Δtを調整してもよい。
【0149】
続くステップS5において、ECU10は、ステップS3において決定した噴射量、及び、噴射タイミングに従って、インジェクタ6に、主噴射1104を実行させる。図11に例示したように、インジェクタ6は、吸気行程の期間中に、主噴射1104を行う。
【0150】
ステップS6においてECU10は、点火装置7に第1放電1105を実行させる。点火装置7は、吸気行程の期間に、第1放電1105を実行すると共に、その第1放電時間を検出する。また、ステップS7においてECU10は、点火装置7に第2放電1106を実行させる。点火装置7は、圧縮行程の前半に、第2放電1106を実行すると共に、その第2放電時間を検出する。
【0151】
ステップS8においてECU10は、第1放電時間が第1閾値よりも小さいか、また、第2放電時間が第1閾値よりも小さいか、を判断する。ステップS8の判断がYESの場合、プロセスはステップS10に進む。ステップS8の判断がNOの場合、プロセスはステップS9に進む。
【0152】
ステップS9においてECU10は、第1放電時間が第2閾値よりも大きいか、また、第2放電時間が第2閾値よりも大きいか、判断する。ステップS9の判断がYESの場合、プロセスはステップS11に進む。ステップS9の判断がNOの場合、プロセスはステップS13に進む。つまり、ステップS9の判断がNOの場合、補助燃料は噴射されない。
【0153】
ステップS10においてECU10は、第1補助燃料1108の噴射量、及び、噴射時期を決定する。第1補助燃料1108の噴射時期は、前述したように、第2補助燃料1109の噴射時期よりも進角側である。ステップS11においてECU10は、第2補助燃料1109の噴射量、及び、噴射時期を決定する。第2補助燃料1109の噴射時期は、第1補助燃料1108の噴射時期よりも遅角側である。第1補助燃料1108の噴射量及び噴射時期、並びに、第2補助燃料1109の噴射量及び噴射時期は、エンジン1の運転状態に応じて決定すればよい。
【0154】
補助燃料の噴射量及び噴射時期を決定すれば、ECU10は、次のステップS12において、補助燃料の噴射を、圧縮行程の前半又は後半(第1補助燃料1108の場合)、又は、圧縮行程の後半(第2補助燃料1109の場合)に実行し、ステップS13において、ECU10は、点火プラグ25を用いて混合気に点火する。
【0155】
尚、補助燃料の噴射量は、例えば排出ガス性能が悪化しない程度に抑えることが好ましい。補助燃料の噴射量を少なくすることによって、排出ガス性能を良好に維持できると共に、燃費の悪化を抑制できる。
【0156】
インジェクタ6は、吸気行程中に主燃料を噴射することに限らず、圧縮行程中に主燃料を噴射してもよい。点火プラグ25は、第1放電を、主燃料の噴射よりも後に行ってもよいし、主燃料の噴射よりも前に行ってもよい。同様に、点火プラグ25は、第2放電を、主燃料の噴射よりも後に行ってもよいし、主燃料の噴射よりも前に行ってもよい。
【0157】
また、ここに開示する技術が適用可能なエンジン1は、前述した構成に限らず、様々な構成のエンジンに、ここに開示する技術は適用可能である。
【符号の説明】
【0158】
1 エンジン
10 ECU(制御器)
11 シリンダー
1311 傾斜面(天井部)
1312 傾斜面(天井部)
25 点火プラグ
6 インジェクタ(燃料噴射弁)
7 点火装置
81 主燃料噴射部
82 主点火制御部
83 判定部
84 補助燃料噴射部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15