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特許7537237シミュレーション装置、シミュレーション方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20240814BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240814BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10
H05K9/00 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020189731
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078798
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】正田 亮
(72)【発明者】
【氏名】安 祐樹
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063970(JP,A)
【文献】特開2002-111277(JP,A)
【文献】国際公開第2007/129607(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105304248(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111666731(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
H05K 9/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、前記複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する算出処理部と、
前記入力パラメータ及び前記周波数を前記算出処理部に供給し、前記算出処理部が算出した前記反射減衰量を取得し、前記反射減衰量に基づく結果情報を出力部に出力させる制御処理部と
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
前記制御処理部は、前記周波数の変化に対する前記反射減衰量の変化を分析する場合に、前記周波数を所定の周波数範囲内で変更して前記算出処理部に供給して、前記反射減衰量を取得し、前記周波数の変化に対する前記反射減衰量の変化を示す前記結果情報を前記出力部に出力させる
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記制御処理部は、前記入力パラメータの変化、及び前記周波数の変化に対する前記反射減衰量の変化を分析する場合に、前記入力パラメータのうちの少なくとも1つを所定の変更範囲内で変更し、前記周波数を所定の周波数範囲内で変更して前記算出処理部に供給して、前記反射減衰量を取得し、前記入力パラメータの変化、及び前記周波数の変化に対する前記反射減衰量の変化を示す前記結果情報を前記出力部に出力させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記制御処理部は、前記周波数に対する最適な前記入力パラメータを分析する場合に、指定された単一の周波数と、指定された制約条件に基づいて変更した前記入力パラメータとを前記算出処理部に供給して、前記反射減衰量を取得し、前記単一の周波数に対応する前記電波吸収量が最大になる前記反射減衰量を推定し、推定した当該反射減衰量に対応する前記入力パラメータを前記結果情報として前記出力部に出力させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記制御処理部は、前記算出処理部が算出した前記反射減衰量と、前記反射減衰量の実測値とのずれを分析する場合に、複数の周波数に対する前記反射減衰量の実測値を取得し、指定された制約条件に基づいて変更した前記入力パラメータ及び前記周波数を前記算出処理部に供給して、前記反射減衰量を取得し、取得した前記反射減衰量と、前記反射減衰量の実測値との誤差が最小になる前記入力パラメータを、前記結果情報として前記出力部に出力させる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記制御処理部は、バラツキを考慮した前記反射減衰量を算出する場合に、指定されたバラツキ条件と乱数とに基づいて、前記入力パラメータにバラツキを付加して、前記算出処理部に供給して前記反射減衰量を取得する処理を、所定の回数分実行し、前記所定の回数分の前記反射減衰量の平均値を、前記バラツキを考慮した前記反射減衰量として生成する。
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記制御処理部は、前記電磁波抑制シートのロバスト性を分析する場合に、指定された前記入力パラメータのバラツキ条件に基づいて、前記入力パラメータを変更して前記算出処理部に供給し、多目的最適化アルゴリズムにより得られたパレート解を、前記結果情報として前記出力部に出力させる
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記制御処理部は、指定された前記入力パラメータの上限値及び下限値を、前記算出処理部に供給し、前記上限値及び前記下限値のそれぞれに対応する前記反射減衰量を、前記結果情報として、前記出力部に出力させる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記複数層には、第1の誘電体層と、第2の誘電体層と、前記第1の誘電体層と前記第2の誘電体層との間に配置された抵抗層とが含まれ、
前記入力パラメータには、前記第1の誘電体層及び前記第2の誘電体層の厚み及び比誘電率と、前記抵抗層のシート抵抗とが含まれる
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記複数層には、第1の誘電体層と、第2の誘電体層とが含まれ、
前記入力パラメータには、前記第1の誘電体層及び前記第2の誘電体層の厚み及び比誘電率とが含まれる
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
算出処理部が、少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、前記複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する算出処理ステップと、
制御処理部が、前記入力パラメータ及び前記周波数を前記算出処理部に供給し、前記算出処理部が算出した前記反射減衰量を取得し、前記反射減衰量に基づく結果情報を出力部に出力させる制御処理ステップと
含むことを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項12】
コンピュータに、
少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、前記複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する算出処理ステップと、
前記入力パラメータ及び前記周波数により前記算出処理ステップの処理を実行させ、前記算出処理ステップによって、算出された前記反射減衰量を取得し、前記反射減衰量に基づく結果情報を出力部に出力させる制御処理ステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置、シミュレーション方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器から発生する電磁波の透過を抑制して、電磁波による他の電子機器の干渉を防止し、電子機器の本来の性能を維持するための電磁波抑制シートが使用されている。このような電磁波抑制シートを設計する際には、例えば、電磁波抑制シートを構成する各層の材質や厚みなどを変更した試作品に対して、電波吸収量の指標である反射減衰量を計測する実験に基づいて、電磁波抑制シートを設計していた。なお、磁性材料の特性をシミュレーションする技術として、例えば、特許文献1に記載する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6733509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の試作及び実験に基づく設計手法では、要求仕様に対する最適値を見つけるためには、多くの時間を必要として、効率よく設計することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、電磁波抑制シートの設計を効率よく行うことができるシミュレーション装置、シミュレーション方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、前記複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する算出処理部と、前記入力パラメータ及び前記周波数を前記算出処理部に供給し、前記算出処理部が算出した前記反射減衰量を取得し、前記反射減衰量に基づく結果情報を出力部に出力させる制御処理部とを備えることを特徴とするシミュレーション装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、算出処理部が、少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、前記複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する算出処理ステップと、制御処理部が、前記入力パラメータ及び前記周波数を前記算出処理部に供給し、前記算出処理部が算出した前記反射減衰量を取得し、前記反射減衰量に基づく結果情報を出力部に出力させる制御処理ステップと含むことを特徴とするシミュレーション方法である。
【0008】
また、本発明の一態様は、コンピュータに、少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、前記複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する算出処理ステップと、前記入力パラメータ及び前記周波数を前記算出処理ステップに供給し、前記算出処理ステップによって、算出された前記反射減衰量を取得し、前記反射減衰量に基づく結果情報を出力部に出力させる制御処理ステップとを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電磁波抑制シートの設計を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態によるシミュレーション装置の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態における電磁波抑制シートの構成例を示す図である。
図3】本実施形態によるシミュレーション装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】本実施形態によるシミュレーション装置の周波数特性分析処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態における周波数特性分析の結果情報の一例を示す図である。
図6】本実施形態によるシミュレーション装置の周波数特性・パラメータ分析処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態における周波数特性・パラメータ分析結果の一例を示す図である。
図8】本実施形態における周波数特性・パラメータ分析結果の別の一例を示す図である。
図9】本実施形態によるシミュレーション装置のパラメータ最適化処理の一例を示すフローチャートである。
図10】本実施形態によるシミュレーション装置の実測値フィッティング処理の一例を示すフローチャートである。
図11】本実施形態における実測値フィッティング処理結果の一例を示す図である。
図12】本実施形態によるシミュレーション装置のバラツキ周波数特性分析処理の一例を示すフローチャートである。
図13】本実施形態によるシミュレーション装置のバラツキ実測値フィッティング処理の一例を示すフローチャートである。
図14】本実施形態によるシミュレーション装置のロバスト設計分析処理の一例を示すフローチャートである。
図15】本実施形態によるシミュレーション装置の多目的最適化処理の一例を示すフローチャートである。
図16】本実施形態によるシミュレーション装置のマージン設計分析処理の一例を示すフローチャートである。
図17】本実施形態における電磁波抑制シートの別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態によるシミュレーション装置、及びシミュレーション方法について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態によるシミュレーション装置1の一例を示す概略ブロック図である。
図1に示すように、シミュレーション装置1は、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。
シミュレーション装置1は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバ装置などのコンピュータ装置であり、電磁波抑制シートを解析する各種シミュレーション処理を実行する。
【0013】
入力部11は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置であり、シミュレーション処理のための設定情報や入力パラメータなどの各種情報を受け付けて、制御部14に出力する。
表示部12(出力部の一例)は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、シミュレーションの選択メニューや結果情報などの各種情報を表示(出力)する。
【0014】
記憶部13は、シミュレーション装置1が利用する各種情報を記憶する。記憶部13は、モデル記憶部131と、設定情報記憶部132と、実測値記憶部133と、結果情報記憶部134とを備える。
【0015】
モデル記憶部131は、電磁波抑制シートに関するシミュレーションを実行する際に、電磁波抑制シートの反射減衰量を算出するための演算式などのモデル情報を記憶する。反射減衰量とは、周波数に対する電波吸収量の指標である。ここで、図2を参照して、本実施形態における電磁波抑制シートSTの構成、及び等価回路モデルについて説明する。
【0016】
図2は、本実施形態における電磁波抑制シートSTの構成例を示す図である。
図2(a)に示すように、電磁波抑制シートSTは、電磁波を反射することで、位相のズレを利用して電磁波を抑制する反射型の電磁波抑制シートであり、少なくとも導体層ST1と誘電体層(ST2,ST4)とを含む複数層で構成されている。電磁波抑制シートSTは、例えば、導体層ST1と、誘電体層ST2(第1の誘電体層)と、抵抗層ST3と、誘電体層ST2(第1の誘電体層)とを備える。
【0017】
なお、図2(a)は、電磁波抑制シートSTの断面構造を示しており、の図2(a)において、X軸方向及びY軸方向は、電磁波抑制シートSTのシート面の方向であり、Z軸方向は、電磁波抑制シートSTの厚み方向を示している。
導体層ST1は、例えば、Al(アルミニウム)などの金属層や導体メッシュなどであり、電磁波を反射する反射体である。導体層ST1は、誘電体層ST2の一方の主面に配置されている。
【0018】
また、誘電体層ST2は、導体層ST1と抵抗層ST3との間に配置された、厚みd誘電体の抑制層である。また、抵抗層ST3は、誘電体層ST2と誘電体層ST4との間に配置された所定のシート抵抗を持った層である。また、誘電体層ST4は、電磁波が入射される厚みdの層である。
【0019】
なお、図2(a)において、インピーダンスZは、空気のインピーダンスであり、インピーダンスZは、誘電体層ST2のインピーダンスである。また、インピーダンスZは、誘電体層ST4のインピーダンスである。
また、γは、空気の伝播係数であり、γは、誘電体層ST2の伝播係数であり、γは、誘電体層ST4の伝播係数である。
【0020】
また、図2(b)は、上述した電磁波抑制シートSTを2端子対回路によりモデル化した等価回路モデルを示している。ここで、図2(b)に示す等価回路モデルから反射減衰量を算出する算出方法について説明する。
【0021】
一般に、2端子対回路では、入力電圧V1及び入力電流I1は、出力電圧V2及び出力電流I2により、下記の式(1)により表現される。
【0022】
【数1】
【0023】
また、式(1)は、行列式にすると、下記の式(2)により表現できる。
【0024】
【数2】
【0025】
ここで、ABCDからなる行列が、伝達行列(F行列、又はFパラメータ)である。
図2(b)に示す等価回路モデルにおける伝達行列Fは、下記の式(3)により表される。
【0026】
【数3】
【0027】
ここで、Rは、抵抗層ST3のシート抵抗(□/Ω)である。
また、伝播係数γは、下記の式(4)により表される。
【0028】
【数4】
【0029】
ここで、εは、真空の誘電率を示し、μは、真空の誘電率を示している。また、εrnは、比誘電率を示し、fは、電磁波の周波数を示している。また、ここでのnは、“1”又は“2”である。
また、インピーダンスZは、下記の式(5)により表される。
【0030】
【数5】
【0031】
すなわち、電磁波の周波数f、誘電体層ST2の厚みd及び比誘電率εr1、抵抗層ST3のシート抵抗R、誘電体層ST4の厚みd及び比誘電率εr2から、上述した式(3)~式(5)を用いて、伝達行列Fを算出することが可能である。
【0032】
また、導体層ST1により、2端子対回路の出力端子が短絡されていると考えると、誘電体層ST4(表面層)前面から見込んだ入力電圧V及び入力電流Iは、下記の式(6)により表される。
【0033】
【数6】
【0034】
また、式(6)から、誘電体層ST4(表面層)前面から見込んだ入力インピーダンスZ及び電圧反射係数Γは、下記の式(7)により表される。
【0035】
【数7】
【0036】
そして、反射減衰量は、電圧反射係数Γから下記の式(8)により表される。
【0037】
【数8】
【0038】
このように、伝達行列Fを算出することで、上述した式(7)及び式(8)を用いて、反射減衰量を算出することが可能である。
モデル記憶部131は、電磁波抑制シートSTの構成に応じた反射減衰量を算出する、上述したような計算式などを記憶する。
【0039】
図1の説明に戻り、設定情報記憶部132は、シミュレーション装置1のシミュレーションに使用する各種設定情報を記憶する。設定情報には、例えば、電磁波の周波数、電磁波抑制シートSTにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータ、設定情報を変化させる場合の開始値、終了値、ステップ値などが含まれる。
【0040】
なお、上述した図2に示す電磁波抑制シートSTの入力パラメータは、例えば、誘電体層ST2の厚みd及び比誘電率εr1、抵抗層ST3のシート抵抗R、誘電体層ST4の厚みd及び比誘電率εr2などである。
【0041】
実測値記憶部133は、例えば、周波数と反射減衰量の実測値とを対応づけて、複数の周波数に対応する反射減衰量を記憶する。なお、実測値記憶部133には、反射減衰量の実測値を予め記憶させているものとする。
結果情報記憶部134は、各種シミュレーション結果を結果情報として記憶する。結果情報には、算出した反射減衰量や、当該反射減衰量に基づいて生成された、各種グラフプロット、表などが含まれる。
【0042】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、シミュレーション装置1を統括的に制御する。制御部14は、算出処理部141と、制御処理部142と、表示処理部143とを備える。
【0043】
算出処理部141は、供給された(入力された)周波数及び入力パラメータに基づいて、電磁波抑制シートSTの反射減衰量を算出する。算出処理部141は、指定された周波数及び入力パラメータと、電磁波抑制シートSTの複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列Fとに基づいて、反射減衰量を算出する。
【0044】
算出処理部141は、モデル記憶部131からモデル情報を取得し、例えば、上述した式(3)~式(5)を用いて、電磁波の周波数f及び入力パラメータから伝達行列Fを算出する。なお、入力パラメータは、例えば、誘電体層ST2の厚みd及び比誘電率εr1、抵抗層ST3のシート抵抗R、誘電体層ST4の厚みd及び比誘電率εr2である。
また、算出処理部141は、算出した伝達行列Fの成分B及び成分Dと、上述した式(7)及び式(8)を用いて、反射減衰量を算出する。
【0045】
制御処理部142は、算出処理部141の処理を用いて、各種シミュレーションの制御を実行する。制御処理部142は、入力パラメータ及び周波数を算出処理部141に供給し、算出処理部141が算出した反射減衰量を取得し、反射減衰量に基づく結果情報を表示部12(出力部)に出力させる。すなわち、制御処理部142は、入力パラメータ及び周波数により算出処理ステップの処理を実行させ、算出された反射減衰量を取得し、反射減衰量に基づく結果情報を表示部12に出力させる。
【0046】
なお、制御処理部142は、結果情報を結果情報記憶部134に記憶させ、結果情報を表示部12に出力させる際に、後述する表示処理部143を介して、結果情報記憶部134が記憶する結果情報を表示部12に表示させる。
【0047】
制御処理部142は、例えば、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を分析する場合(周波数分析処理の場合)に、周波数を所定の周波数範囲内で変更して算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得し、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を示す結果情報を表示部12に出力させる。
【0048】
この場合、制御処理部142は、入力部11を介して、層構造の設定及び周波数の設定を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。層構造の設定は、例えば、図2(a)に示すような電磁波抑制シートSTの層構造に対応した入力パラメータなどであり、周波数の設定は、例えば、開始周波数、終了周波数、及び変更ステップ幅などである。制御処理部142は、設定情報記憶部132が記憶する周波数の設定に基づいて、周波数を変更しながら、算出処理部141に反射減衰量を算出させる。制御処理部142は、例えば、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を示すグラフを生成し、結果情報として、表示部12に出力させる。
【0049】
また、制御処理部142は、入力パラメータの変化、及び周波数の変化に対する反射減衰量の変化を分析する場合(周波数特性・パラメータ分析処理の場合)に、入力パラメータのうちの少なくとも1つを所定の変更範囲内で変更し、周波数を所定の周波数範囲内で変更して算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得する。制御処理部142は、入力パラメータの変化、及び周波数の変化に対する反射減衰量の変化を示す結果情報を表示部12に出力させる。
【0050】
この場合、制御処理部142は、入力部11を介して、層構造の設定及び周波数の設定を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。また、制御処理部142は、入力部11を介して、例えば、入力パラメータの1つを選択して、選択した入力パラメータの設定(例えば、開始値、終了値、及び変更ステップ幅など)を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。制御処理部142は、設定情報記憶部132が記憶する周波数の設定及び入力パラメータの設定情報に基づいて、周波数及び入力パラメータを変更しながら、算出処理部141に反射減衰量を算出させる。制御処理部142は、例えば、周波数及び入力パラメータの変化に対する反射減衰量の変化を示すグラフを生成し、結果情報として、表示部12に出力する。
【0051】
また、制御処理部142は、周波数に対する最適な入力パラメータを分析する場合(パラメータ最適化処理の場合)に、指定された単一の周波数と、指定された制約条件に基づいて変更した入力パラメータとを算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得する。制御処理部142は、単一の周波数に対応する電波吸収量が最大になる反射減衰量を推定し、推定した当該反射減衰量に対応する入力パラメータを結果情報として表示部12に出力させる。
【0052】
この場合、制御処理部142は、入力部11を介して、層構造の設定、目標の単一の周波数、及び入力パラメータの制約条件を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。入力パラメータの制約条件には、最適条件の入力パラメータを特定するために入力パラメータを変更する制約条件であって、各入力パラメータの変更範囲、ステップ幅などである。制御処理部142は、設定情報記憶部132が記憶する入力パラメータの制約条件に基づいて、入力パラメータを変更し、目標の単一の周波数に対する反射減衰量を算出処理部141にさせる。制御処理部142は、反射減衰量が最大になる入力パラメータの組み合わせを、最適条件の入力パラメータとして特定し、当該入力パラメータの組み合わせの値を、結果情報として、表示部12に出力させる。
【0053】
また、制御処理部142は、算出処理部141が算出した反射減衰量と、反射減衰量の実測値とのずれを分析する場合(実測値フィッティング処理の場合)に、複数の周波数に対する反射減衰量の実測値を取得し、指定された制約条件に基づいて変更した入力パラメータ及び周波数を算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得する。制御処理部142は、取得した反射減衰量と、反射減衰量の実測値との誤差が最小になる入力パラメータを、結果情報として表示部12に出力させる。
【0054】
この場合、制御処理部142は、入力部11を介して、層構造の設定、周波数の設定、及び入力パラメータの制約条件を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。また、制御処理部142は、入力部11を介して、反射減衰量の実測値を指定し、指定された反射減衰量の実測値を実測値記憶部133から取得する。制御処理部142は、入力パラメータの制約条件に基づいて、入力パラメータを変更させて、周波数の変化に対する反射減衰量を算出処理部141に算出させる。
【0055】
制御処理部142は、反射減衰量の実測値と、算出した反射減衰量との平均二乗誤差(MSE)を算出して、平均二乗誤差(MSE)が最小になる入力パラメータの組み合わせ(入力パラメータの条件)を特定する。なお、制御処理部142は、下記の式(9)を用いて、平均二乗誤差(MSE)を算出する。
【0056】
【数9】
【0057】
ここで、y及びy^は、算出した反射減衰量及び反射減衰量の実測値である。
制御処理部142は、周波数の変化に対する算出した反射減衰量及び反射減衰量の実測値の変化を示すグラフ、並びに、特定した入力パラメータの値を、結果情報として表示部12に出力させる。
【0058】
また、制御処理部142は、バラツキを考慮した反射減衰量を算出する場合に、指定されたバラツキ条件と乱数とに基づいて、入力パラメータにバラツキを付加して、算出処理部141に供給して反射減衰量を取得する処理を、所定の回数分実行し、所定の回数分の反射減衰量の平均値を、バラツキを考慮した反射減衰量として生成する。
【0059】
この場合、制御処理部142は、入力部11を介して、入力パラメータのバラツキ条件(例えば、平均値及び標準偏差など)を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。なお、ここでのバラツキは、例えば、電磁波抑制シートST内での局所的なバラツキである。制御処理部142は、設定情報記憶部132が記憶するバラツキ条件に基づいて、正規乱数を生成し、当該正規乱数により、n個(例えば、200個)の入力パラメータの値を生成する。制御処理部142は、生成したn個の入力パラメータに対応するn個の反射減衰量を算出処理部141に算出され、n個の反射減衰量の平均値を、バラツキを考慮した反射減衰量とする。
【0060】
制御処理部142は、上述した周波数分析処理、実測値フィッティング処理、及びパラメータ最適化処理に対して、n個の反射減衰量の平均値を反射減衰量として適用して、バラツキ周波数特性分析処理、バラツキ実測値フィッティング処理、及びロバスト設計分析処理として実行する。
【0061】
また、制御処理部142は、電磁波抑制シートSTのロバスト性を分析する場合(多目的最適化分析処理の場合)に、指定された入力パラメータのバラツキ条件に基づいて、入力パラメータを変更して算出処理部141に供給し、多目的最適化アルゴリズムにより得られたパレート解を、結果情報として表示部12に出力させる。
【0062】
この場合、制御処理部142は、目標の単一周波数に対して、多目的最適化アルゴリズムにより入力パラメータを変更し、上述したバラツキを考慮した入力パラメータにより、n個の反射減衰量を算出するともに、入力パラメータの平均値(標準値)の反射減衰量を算出して、バラツキを考慮した最適な入力パラメータの組み合わせ(最適な入力パラメータの条件)をパレート解とする。
【0063】
また、制御処理部142は、指定された入力パラメータの上限値及び下限値を、算出処理部141に供給し、上限値及び下限値のそれぞれに対応する反射減衰量を、結果情報として、表示部12に出力する。制御処理部142は、例えば、電磁波抑制シートSTのロール単位、又は生産ロット単位のバラツキを考慮した分析処理を行う場合(マージン設計分析処理の場合)に、入力部11を介して、バラツキの設定情報(平均値及び標準偏差)を取得する。制御処理部142は、バラツキの設定情報(平均値及び標準偏差)に基づいて指定された入力パラメータの上限値及び下限値を生成する。制御処理部142は、例えば、標準偏差の3倍を平均値に加算又は減算して、上限値及び下限値を生成する。制御処理部142は、生成した上限値及び下限値に対して、周波数を変化させて反射減衰量を算出処理部141に算出させて、上限値及び下限値ごとの周波数の変化に対する反射減衰量の変化を示すグラフを、結果情報として、表示部12に出力させる。
【0064】
表示処理部143は、表示部12に各種情報を表示(出力)させる制御を行う。表示処理部143は、例えば、制御処理部142の表示指令に基づいて、結果情報記憶部134が記憶する各種結果情報を、表示部12に表示させる。
【0065】
次に、図面を参照して、本実施形態によるシミュレーション装置1の動作について説明する。
図3は、本実施形態によるシミュレーション装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0066】
図3に示すように、シミュレーション装置1の制御処理部142は、シミュレーション処理のメニュー選択により、各処理に分岐を行う(ステップS101)。制御処理部142は、例えば、シミュレーション処理のメニュー画面を表示部12に表示させ、入力部11を介して選択された処理に応じて、各処理に分岐を行う。
【0067】
制御処理部142は、周波数特性分析が選択された場合に、処理をステップS102に進め、周波数分析処理を実行する。また、制御処理部142は、周波数特性・パラメータ分析が選択された場合に、処理をステップS103に進め、周波数特性・パラメータ分析を実行する。また、制御処理部142は、パラメータ最適化処理が選択された場合に、処理をステップS104に進め、パラメータ最適化処理を実行する。また、制御処理部142は、実測値フィッティング処理が選択された場合に、処理をステップS105に進め、実測値フィッティング処理を実行する。
【0068】
また、制御処理部142は、バラツキ周波数特性分析が選択された場合に、処理をステップS106に進め、バラツキ周波数特性分析を実行する。制御処理部142は、バラツキ実測値フィッティング処理が選択された場合に、処理をステップS107に進め、バラツキ実測値フィッティング処理を実行する。制御処理部142は、ロバスト設計分析が選択された場合に、処理をステップS108に進め、ロバスト設計分析処理を実行する。制御処理部142は、多目的最適化分析が選択された場合に、処理をステップS109に進め、多目的最適化分析処理を実行する。制御処理部142は、マージン設計分析が選択された場合に、処理をステップS110に進め、マージン設計分析処理を実行する。
【0069】
次に、制御処理部142は、各処理の実行が完了したら、処理をステップS111に進め、シミュレーション処理が終了であるか否かを判定する。制御処理部142は、例えば、入力部11を介して、シミュレーション処理の終了指示を取得した場合に、シミュレーション処理が終了であると判定し、この場合(ステップS111:YES)に、処理を終了する。また、制御処理部142は、シミュレーション処理が終了しないと判定した場合(ステップS111:YES)に処理をステップS101に戻す。
【0070】
次に、図4を参照して、上述した図3に示すステップS102の周波数分析処理の詳細について説明する。
図4は、本実施形態によるシミュレーション装置1の周波数特性分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0071】
図4に示すように、制御処理部142は、まず、層構造の設定を実行する(ステップS201)。制御処理部142は、入力部11を介して、例えば、図2(a)に示すような電磁波抑制シートSTの層構造に対応した入力パラメータを取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。ここで、入力パラメータは、例えば、誘電体層ST2の厚みd及び比誘電率εr1、抵抗層ST3のシート抵抗R、誘電体層ST4の厚みd及び比誘電率εr2などである。
【0072】
次に、制御処理部142は、周波数の設定を実行する(ステップS202)。制御処理部142は、入力部11を介して、周波数の設定として、例えば、開始周波数、終了周波数、及び変更ステップ幅を取得し、取得した周波数の設定を、設定情報記憶部132に記憶させる。なお、制御処理部142は、周波数の初期値として、開始周波数を設定する。
【0073】
次に、制御処理部142は、周波数に対する反射減衰量を算出処理部141に算出させる(ステップS203)。制御処理部142は、取得した入力パラメータの設定値及び周波数を算出処理部141に供給し、算出処理部141は、モデル記憶部131が記憶するモデル情報(式(3)~式(5)、式(7)、及び式(8)など)を利用して、周波数に対する反射減衰量を算出する。
【0074】
次に、制御処理部142は、終了の周波数であるか否かを判定する(ステップS204)。制御処理部142は、終了周波数に達したか否かを判定する。制御処理部142は、終了の周波数である場合(ステップS204:YES)に、処理をステップS206に進める。まら、制御処理部142は、終了の周波数でない場合(ステップS204:NO)に、処理をステップS205に進める。
【0075】
ステップS205において、制御処理部142は、周波数を変更する。制御処理部142は、現在の周波数に上述した変更ステップ幅を加算して周波数を変更して、ステップS203に戻し、終了周波数になるまでステップS203の反射減衰量の算出処理を繰り返す。
【0076】
また、ステップS206において、制御処理部142は、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を、結果情報として出力する。制御処理部142は、例えば、図5に示すような波形W1のグラフを、結果情報として生成して、表示処理部143を介して、表示部12に表示させる。ステップS206の処理後に、制御処理部142は、周波数分析処理を終了する。
【0077】
図5は、本実施形態における周波数特性分析の結果情報の一例を示す図である。
図5において、グラフの縦軸は、反射減衰量を示し、横軸は、周波数を示している。波形W1は、周波数の変化に対する反射減衰量を示しており、電磁波抑制シートSTの周波数特性を分析することが可能である。
【0078】
次に、図6を参照して、上述した図3に示すステップS103の周波数特性・パラメータ分析処理の詳細について説明する。周波数特性・パラメータ分析処理では、周波数と、入力パラメータのうちの1つとの両方を変化させて、反射減衰量の変化を分析する。
図6は、本実施形態によるシミュレーション装置1の周波数特性・パラメータ分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0079】
図6に示すステップS251の処理は、上述した図4に示すステップS201の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
ステップS252において、制御処理部142は、周波数及び入力パラメータの設定を実行する。制御処理部142は、入力部11を介して、周波数の設定として、例えば、開始周波数、終了周波数、及び変更ステップ幅を取得するとともに、入力パラメータの設定として、例えば、入力パラメータの開始値、終了値、及び変更ステップ幅を取得する。ここで、入力パラメータは、厚みd、比誘電率εr1、シート抵抗R、厚みd、及び比誘電率εr2のうちの1つである。制御処理部142は、取得した周波数の設定及び入力パラメータの設定を、設定情報記憶部132に記憶させる。なお、制御処理部142は、周波数の初期値として、開始周波数を設定し、入力パラメータの初期値として、入力パラメータの開始値を設定する。
【0080】
次に、制御処理部142は、入力パラメータ及び周波数に対する反射減衰量を算出処理部141に算出させる(ステップS253)。制御処理部142は、取得した入力パラメータの設定値及び周波数を算出処理部141に供給し、算出処理部141は、モデル記憶部131が記憶するモデル情報(式(3)~式(5)、式(7)、及び式(8)など)を利用して、入力パラメータ及び周波数に対する反射減衰量を算出する。
【0081】
続く、ステップS254及びステップS255の処理は、上述した図4に示すステップS204及びステップS205の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。ステップS255の処理後に、制御処理部142は、処理をステップS253に戻す。
【0082】
また、ステップS256において、制御処理部142は、終了の入力パラメータであるかを判定する。制御処理部142は、入力パラメータの終了値に達したか否かを判定する。制御処理部142は、終了の入力パラメータである場合(ステップS256:YES)に、処理をステップS258に進める。まら、制御処理部142は、終了の入力パラメータでない場合(ステップS256:NO)に、処理をステップS257に進める。
【0083】
ステップS257において、制御処理部142は、入力パラメータの値を変更する。制御処理部142は、現在の入力パラメータの値に上述した変更ステップ幅を加算して入力パラメータの値を変更して、ステップS253に戻す。
【0084】
また、ステップS258において、制御処理部142は、周波数及び入力パラメータの変化に対する反射減衰量の変化を、結果情報として出力する。制御処理部142は、例えば、図7及び図8に示すような2次元プロットのグラフを、結果情報として生成して、表示処理部143を介して、表示部12に表示させる。ステップS258の処理後に、制御処理部142は、周波数特性・パラメータ分析処理を終了する。
【0085】
図7は、本実施形態における周波数特性・パラメータ分析結果の一例を示す図である。
図7に示す例では、入力パラメータとして、抵抗層ST3のシート抵抗Rを変化させるとともに、周波数を変化させた場合の反射減衰量の変化を示いている。
【0086】
図8は、本実施形態における周波数特性・パラメータ分析結果の別の一例を示す図である。
図8に示す例では、入力パラメータとして、誘電体層ST2(抑制層)の厚さdを変化させるとともに、周波数を変化させた場合の反射減衰量の変化を示いている。
【0087】
次に、図9を参照して、上述した図3に示すステップS104のパラメータ最適化処理の詳細について説明する。パラメータ最適化処理では、目標の単一周波数に対して、反射減衰量が最大になる入力パラメータの最適値を分析する。
図9は、本実施形態によるシミュレーション装置1のパラメータ最適化処理の一例を示すフローチャートである。
【0088】
図9に示すステップS301の処理は、上述した図4に示すステップS201の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、制御処理部142は、目標の単一周波数の設定を実行する(ステップS302)。制御処理部142は、入力部11を介して、目標の周波数値を取得し、取得した目標の周波数値を設定情報記憶部132に記憶させる。なお、制御処理部142は、周波数を目標の周波数値に設定する。
【0089】
次に、制御処理部142は、入力パラメータの範囲を設定する(ステップS303)。制御処理部142は、入力部11を介して、入力パラメータの範囲(制約条件)を取得し、取得した入力パラメータの範囲(制約条件)を設定情報記憶部132に記憶させる。なお、制御処理部142は、各入力パラメータに、入力パラメータの範囲内の初期値を設定する。
【0090】
次に、制御処理部142は、入力パラメータに対する反射減衰量を算出処理部141に算出させる(ステップS304)。制御処理部142は、入力パラメータの設定値及び目標の周波数を算出処理部141に供給し、算出処理部141は、モデル記憶部131が記憶するモデル情報(式(3)~式(5)、式(7)、及び式(8)など)を利用して、入力パラメータ及び周波数に対する反射減衰量を算出する。
【0091】
次に、制御処理部142は、結果が収束したか、又は指定回数に達したか否かを判定する(ステップS305)。制御処理部142は、算出した反射減衰量が収束値(例えば、最大値、ピーク値)になったか、又は指定回数に達したか否かを判定する。制御処理部142は、結果が収束した(反射減衰量が最大値に達した)、又は指定回数に達した場合(ステップS305:YES)に、処理をステップS307に進める。また、制御処理部142は、結果が収束していない(反射減衰量が最大値に達していない)、且つ指定回数に達していない場合(ステップS305:NO)に、処理をステップS306に進める。
【0092】
ステップS306において、制御処理部142は、入力パラメータを変更する。制御処理部142は、入力パラメータの値を入力パラメータの範囲(制約条件)で変更して、処理をステップS304に戻す。
【0093】
また、ステップS307において、制御処理部142は、設定した単一周波数に対して、反射減衰量が最大値となる最適の入力パラメータを、結果情報として出力する。すなわち、制御処理部142は、各入力パラメータの最適値を、表示処理部143を介して、表示部12に表示させる。ステップS307の処理後に、制御処理部142は、入力パラメータ最適化処理を終了する。
【0094】
次に、図10を参照して、上述した図3に示すステップS105の実測値フィッティング処理の詳細について説明する。実測値フィッティング処理では、周波数に対する反射減衰量の実測値と、シミュレーション値とを比較して、2つの誤差が最小になるように入力パラメータを調整(フィッティング)する分析を行う。
図10は、本実施形態によるシミュレーション装置1の実測値フィッティング処理の一例を示すフローチャートである。
【0095】
図10に示すステップS351の処理は、上述した図4に示すステップS201の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、制御処理部142は、周波数に対する反射減衰量の実測値及び周波数の設定を取得する(ステップS352)。制御処理部142は、反射減衰量の実測値を実測値記憶部133から取得する。また、制御処理部142は、入力部11を介して、周波数の設定を取得し、取得した周波数の設定を設定情報記憶部132に記憶させる。
【0096】
続く、ステップS353は、上述した図9に示すステップS303の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、ステップS354からステップS356の処理は、上述した図6に示すステップS253からステップS255の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0097】
ステップS257のおいて、制御処理部142は、平均二乗誤差(MSE)を算出する。制御処理部142は、反射減衰量の実測値と、算出処理部141が算出した反射減衰量の値(シミュレーション値)との平均二乗誤差(MSE)を上述した式(9)を用いて算出する。
【0098】
次に、制御処理部142は、誤差が最小値であるか否かを判定する(ステップS358)。制御処理部142は、平均二乗誤差(MSE)が、例えば、所定の閾値以下になったか否かにより、誤差が最小値に達したか否かを判定する。制御処理部142は、誤差が最小値である場合(ステップS358:YES)に、処理をステップS360に進める。また、制御処理部142は、誤差が最小値でない場合(ステップS358:NO)に、処理をステップS359に進める。
【0099】
ステップS359において、制御処理部142は、周波数を開始値(開始周波数)に変更し、入力パラメータを変更する。制御処理部142は、入力パラメータの値を入力パラメータの範囲(制約条件)で変更する。ステップS359の処理後に、制御処理部142は、処理をステップS354に戻す。
【0100】
また、ステップS360において、制御処理部142は、平均二乗誤差が最小の最適の入力パラメータを結果情報として出力する。制御処理部142は、平均二乗誤差が最小の最適の入力パラメータを表示部12に表示させるとともに、例えば、図11に示すような、実測値とシミュレーション値との一致具合を示すグラフを、結果情報として生成し、表示部12に表示させる。ステップS360の処理後に、制御処理部142は、実測値フィッティング処理を終了する。
【0101】
図11は、本実施形態における実測値フィッティング処理結果の一例を示す図である。
図11において、グラフの縦軸は、反射減衰量を示し、横軸は、周波数を示している。
また、波形W2が実測値を示し、波形W3が、シミュレーション値を示している。
【0102】
次に、図12を参照して、上述した図3に示すステップS106のバラツキ周波数特性分析処理の詳細について説明する。バラツキ周波数特性分析処理では、電磁波抑制シートST内の局所的なバラツキを考慮して、周波数に対する反射減衰量の特性分析を行う。
図12は、本実施形態によるシミュレーション装置1のバラツキ周波数特性分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0103】
図12に示すステップS401の処理は、上述した図4に示すステップS201の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
次に、制御処理部142は、入力パラメータのバラツキ設定を行う(ステップS402)。制御処理部142は、入力部11を介して、バラツキ設定として、入力パラメータの平均値及び標準偏差を取得し、取得したバラツキ設定を設定情報記憶部132に記憶させる。
【0104】
次に、制御処理部142は、正規乱数によりn個分の入力パラメータを生成する(ステップS403)。制御処理部142は、入力パラメータの平均値と標準偏差から正規乱数を生成し、当該正規乱数により、n個分の入力パラメータを生成し、設定情報記憶部132に記憶させる。
【0105】
続く、ステップS404の処理は、上述した図4に示すステップS202の処理と同様である。
また、ステップS405からステップS407の処理は、上述した図10に示すステップS354からステップS356の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。なお、ここでの入力パラメータの少なくとも1つは、上述したn個分の入力パラメータのうちの1つを使用する。
【0106】
次に、ステップS408において、制御処理部142は、終了の入力パラメータであるか否かを判定する。制御処理部142は、例えば、n個分の入力パラメータのうちの終了の入力パラメータであるか否かを判定する。制御処理部142は、終了の入力パラメータである場合(ステップS408:YES)に、処理をステップS410に進める。また、制御処理部142は、終了の入力パラメータでない場合(ステップS408:NO)に、処理をステップS409に進める。
【0107】
ステップS409において、制御処理部142は、周波数を開始値に変更し入力パラメータを変更する。制御処理部142は、入力パラメータの値を、n個の入力パラメータのうちの次の入力パラメータの値に変更し、処理をステップS405に戻す。
【0108】
また、ステップS410において、制御処理部142は、n個ごとの平均反射減衰量を算出する。すなわち、制御処理部142は、各周波数に対応する平均反射減衰量を算出する。
【0109】
次に、制御処理部142は、周波数及び入力パラメータの変化に対する反射減衰量の変化を結果情報として出力する(ステップS412)。制御処理部142は、平均反射減衰量を用いて、上述した図5に示すようなグラフを、表示部12に表示させる。ステップS412の処理後に、制御処理部142は、バラツキ周波数特性分析処理を終了する。
【0110】
次に、図13を参照して、上述した図3に示すステップS107のバラツキ実測値フィッティング処理の詳細について説明する。バラツキ実測値フィッティング処理では、電磁波抑制シートST内の局所的なバラツキを考慮して、実測値とのフィッティング処理を行う。
図13は、本実施形態によるシミュレーション装置1のバラツキ周波数特性分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0111】
図13において、ステップS451からステップS453の処理は、上述した図10に示すステップS351からステップS353の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、ステップS454からステップS462の処理は、上述した図12に示すステップS402からステップS410の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0112】
また、ステップS463からステップS466の処理は、上述した図10に示すステップS357からステップS360の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。なお、図13に示す例では、制御処理部142は、平均二乗誤差(MSE)を、実測値と、平均反射減衰量とにより算出する。ステップS466の処理後に、制御処理部142は、バラツキ実測値フィッティング処理を終了する。
【0113】
次に、図14を参照して、上述した図3に示すステップS108のロバスト設計分析処理の詳細について説明する。ロバスト設計分析処理では、電磁波抑制シートST内の局所的なバラツキを考慮して、目標の単一周波数に対して入力パラメータの最適化処理を行う。
図14は、本実施形態によるシミュレーション装置1のロバスト設計分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0114】
図14において、ステップS501からステップS503の処理は、上述した図9に示すステップS301からステップS303の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、ステップS504及びステップS505の処理は、上述した図13に示すステップS454及びステップS455の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0115】
また、ステップS506からステップS508の処理は、上述した図9に示すステップS304からステップS306の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、ステップS509の処理は、上述した図13に示すステップS462の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0116】
また、ステップS510からステップS512の処理は、上述した図9に示すステップS305からステップS307の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。なお、ステップS511の処理後に、制御処理部142は、処理をステップS505に戻す。また、ステップS512の処理後に、制御処理部142は、ロバスト設計分析処理を終了する。
【0117】
次に、図15を参照して、上述した図3に示すステップS109の多目的最適化分析処理の詳細について説明する。多目的最適化分析処理では、電磁波抑制シートST内の局所的なバラツキを考慮して、目標の単一周波数に対して入力パラメータの最適化処理を多目的最適化アルゴリズムを用いて行う。
図15は、本実施形態によるシミュレーション装置1の多目的最適化分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0118】
図15において、ステップS551からステップS553の処理は、上述した図9に示すステップS301からステップS303の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、ステップS554において、制御処理部142は、多目的最適化アルゴリズムを実行する。すなわち、制御処理部142は、多目的最適化アルゴリズムにより入力パラメータの値(平均値)を選択する(入力パラメータを設定する)。
【0119】
次に、制御処理部142は、入力パラメータの平均値に対する反射減衰量を算出する(ステップS555)。制御処理部142は、選択した入力パラメータの平均値及び目標の単一周波数により、算出処理部141に、反射減衰量を算出させる。
【0120】
続く、ステップS556からステップS560の処理は、上述した図14に示すステップS505からステップS509の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
また、ステップS561において、制御処理部142は、パレート解が最適か、又は指定回数に達したか否かを判定する。制御処理部142は、算出した平均反射減衰量が最適解(例えば、最大値、ピーク値)になったか、又は指定回数に達したか否かを判定する。制御処理部142は、パレート解が最適である(平均反射減衰量が最大値に達した)、又は指定回数に達した場合(ステップS561:YES)に、処理をステップS562に進める。また、制御処理部142は、パレート解が最適でない(平均反射減衰量が最大値に達していない)、且つ指定回数に達していない場合(ステップS561:NO)に、処理をステップS354に戻す。
【0121】
ステップS562において、制御処理部142は、設定した単一周波数に対して、最適の入力パラメータを、結果情報として出力する。すなわち、制御処理部142は、各入力パラメータの最適値を、表示処理部143を介して、表示部12に表示させる。ステップS562の処理後に、制御処理部142は、多目的最適化分析処理を終了する。
【0122】
次に、図16を参照して、上述した図3に示すステップS1010のマージン設計分析処理の詳細について説明する。マージン設計分析処理では、電磁波抑制シートSTの1ロール内(1ロット内)又はロット間の広範囲なバラツキを考慮して、入力パラメータの上限値(Max値)及び下限値(Min値)の反射減衰量を分析する。
図16は、本実施形態によるシミュレーション装置1のマージン設計分析処理の一例を示すフローチャートである。
【0123】
図16において、ステップS601及びステップS602の処理は、上述した図6に示すステップS251及びステップS252の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0124】
また、ステップS604において、制御処理部142は、入力パラメータのバラツキを設定(標準偏差)を取得する。制御処理部142は、入力部11を介して、入力パラメータのバラツキを設定(標準偏差)を取得し、設定情報記憶部132に記憶させる。なお、ここでのバラツキは、例えば、局所的なバラツキではなく、電磁波抑制シートST内の1ロール内(1ロット内)又はロット間などの広範囲におけるバラツキである。
【0125】
次に、制御処理部142は、入力パラメータのMax値(上限値)、Min値(下限値)を入力条件として生成する(ステップSS604)。制御処理部142は、標準偏差から例えば、平均値と3σ(3シグマ:σは、標準偏差を示す)とにより、Max値(上限値)、及びMin値(下限値)を生成する。
【0126】
次に、ステップS605からステップS609の処理は、上述した図6に示すステップS253からステップS257の処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。なお、図16に示す例では、制御処理部142は、入力条件として、Max値(上限値)とMin値(下限値)とを切り替える。
【0127】
ステップS610において、制御処理部142は、入力条件ごとの周波数に対する反射減衰量の変化を結果情報として出力する。すなわち、制御処理部142は、例えば、Max値(上限値)における反射減衰量の周波数特性と、Min値(下限値)における反射減衰量の周波数特性とを示すグラフを、表示部12に表示させる。ステップS562の処理後に、制御処理部142は、マージン設計分析処理を終了する。
【0128】
以上説明したように、本実施形態によるシミュレーション装置1は、算出処理部141と、制御処理部142とを備える。算出処理部141は、少なくとも導体層ST1と誘電体層(ST2、ST4)とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートSTにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列F(Fパラメータ)とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する。制御処理部142は、入力パラメータ及び周波数を算出処理部141に供給し、算出処理部141が算出した反射減衰量を取得し、反射減衰量に基づく結果情報を表示部12(出力部)に出力させる。
【0129】
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、入力パラメータと周波数を指定することで、電磁波抑制シートSTにの構造に応じた反射減衰量を算出することできる。そのため、本実施形態によるシミュレーション装置1は、従来のように、毎回試作を行う必要がなく、試作前に、電磁波抑制シートSTにの構造を絞り込むことができる。よって、本実施形態によるシミュレーション装置1は、電磁波抑制シートSTの設計を効率よく行うことができる。
【0130】
また、本実施形態では、制御処理部142は、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を分析する場合(例えば、周波数特性分析処理の場合)に、周波数を所定の周波数範囲内で変更して算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得し、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を示す結果情報を表示部12に出力させる。
【0131】
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、周波数の変化に対する反射減衰量の変化を視覚的に容易に確認することができる。よって、本実施形態によるシミュレーション装置1は、電磁波抑制シートSTの設計をさらに効率よく行うことができる。
【0132】
また、本実施形態では、制御処理部142は、入力パラメータの変化、及び周波数の変化に対する反射減衰量の変化を分析する場合(例えば、周波数特性・パラメータ分析処理の場合)に、入力パラメータのうちの少なくとも1つを所定の変更範囲内で変更し、周波数を所定の周波数範囲内で変更して算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得する。制御処理部142は、入力パラメータの変化、及び周波数の変化に対する反射減衰量の変化を示す結果情報を表示部12に出力させる。
【0133】
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、周波数と入力パラメータとの両方の変化に対する反射減衰量の変化を視覚的に容易に確認することができる。よって、本実施形態によるシミュレーション装置1は、電磁波抑制シートSTの設計をさらに効率よく行うことができる。
【0134】
また、本実施形態では、制御処理部142は、周波数に対する最適な入力パラメータを分析する場合(例えば、パラメータ最適化処理の場合)に、指定された単一の周波数と、指定された制約条件に基づいて変更した入力パラメータとを算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得する。制御処理部142は、単一の周波数に対応する電波吸収量が最大になる反射減衰量を推定し、推定した当該反射減衰量に対応する入力パラメータを結果情報として表示部12に出力させる。
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、目標の周波数に対する入力パラメータの最適値を用意に見つけることができる。
【0135】
また、本実施形態では、制御処理部142は、算出処理部141が算出した反射減衰量と、反射減衰量の実測値とのずれを分析する場合(例えば、実測値フィッティング処理の場合)に、複数の周波数に対する反射減衰量の実測値を取得し、指定された制約条件に基づいて変更した入力パラメータ及び周波数を算出処理部141に供給して、反射減衰量を取得する。制御処理部142は、取得した反射減衰量と、反射減衰量の実測値との誤差(例えば、平均二乗誤差)が最小になる入力パラメータを、結果情報として表示部12に出力させる。
【0136】
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、シミュレーションの演算結果と実測値とのずれを用意に把握することができ、例えば、シミュレーションの演算結果を補正することも可能である。よって、本実施形態によるシミュレーション装置1は、シミュレーションの精度を向上させることができる。
【0137】
また、本実施形態では、制御処理部142は、バラツキを考慮した反射減衰量を算出する場合に、指定されたバラツキ条件と乱数(例えば、正規乱数)とに基づいて、入力パラメータにバラツキを付加して、算出処理部141に供給して反射減衰量を取得する処理を、所定の回数分実行する。制御処理部142は、所定の回数分(所定の個数分)の反射減衰量の平均値を、バラツキを考慮した反射減衰量として生成する。ここでのバラツキは、例えば、電磁波抑制シートST内の局所的なバラツキである。
【0138】
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、バラツキを考慮したシミュレーションを用意に実行することができ、シミュレーションの精度をさらに向上させることができる。
【0139】
また、本実施形態では、制御処理部142は、電磁波抑制シートSTのロバスト性を分析する場合(例えば、多目的最適化分析処理の場合)に、指定された入力パラメータのバラツキ条件に基づいて、入力パラメータを変更して算出処理部141に供給し、多目的最適化アルゴリズムにより得られたパレート解を、結果情報として表示部12に出力させる。
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、ロバスト性を分析を容易に行うことができ、設計効率を高めることができる。
【0140】
また、本実施形態では、制御処理部142は、指定された入力パラメータの上限値(Max値)及び下限値(Min値)を、算出処理部141に供給し、上限値及び下限値のそれぞれに対応する反射減衰量を、結果情報として、表示部12に出力させる。
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、例えば、電磁波抑制シートSTの1ロール内(1ロット内)又はロット間の広範囲なバラツキを考慮したマージン設計を用意に行うことができる。本実施形態によるシミュレーション装置1は、設計効率を高めることができる。
【0141】
なお、本実施形態におけるバラツキの指標となる標準偏差は、反射減衰量を実際に測定する際の有効面積内を対象にした各物性のバラツキ(部分バラツキ)と、製造ロット全体を対象にしたバラツキ(全体バラツキ)とが考えられる。本実施形態によるシミュレーション装置1は、例えば、製造ロット全体のデータを平均X、及び標準偏差sを計算し、工程能力Cp、Cpkの予測値として情報を得る事も可能であるし、平均Xに3s又は-3sを加えた値の反射減衰量の周波数特性を計算することも可能である。また、本実施形態によるシミュレーション装置1は、(X+3s)又は(X-3s)を中心値とした上で、部分バラツキを考慮し平均化した反射減衰量の周波数特性を出力し、取り得る反射減衰量の周波数特性の最大値、最小値を計算することもできる。このように、本実施形態によるシミュレーション装置1は、指定された入力パラメータの上限値(Max値)及び下限値(Min値)による反射減衰量を算出することで、様々なバラツキの状況に対応したシミュレーションを行うことができる。
【0142】
また、本実施形態では、複数層には、誘電体層ST2(第1の誘電体層)と、誘電体層ST4(第2の誘電体層)と、誘電体層ST2と誘電体層ST4との間に配置された抵抗層ST3とが含まれる。入力パラメータには、誘電体層ST2及び誘電体層ST4の厚み及び比誘電率と、抵抗層ST3のシート抵抗とが含まれる。
これにより、本実施形態によるシミュレーション装置1は、例えば、図2(a)に示すような構造の電磁波抑制シートSTに対して、設計を効率よく行うことができる。
【0143】
また、本実施形態によるシミュレーション方法は、算出処理ステップと、制御処理ステップとを含む。算出処理ステップにおいて、算出処理部141が、少なくとも導体層と誘電体層とを含む複数層で構成された電磁波抑制シートSTにおける各層のインピーダンス成分を特定する入力パラメータと、複数層の構造に対応する2端子対回路による等価回路モデルの伝達行列とに基づいて、指定された周波数に対する電波吸収量の指標である反射減衰量を算出する。制御処理ステップにおいて、制御処理部142が、入力パラメータ及び周波数を算出処理部141に供給し、算出処理部141が算出した反射減衰量を取得し、反射減衰量に基づく結果情報を表示部12に出力させる。すなわち、制御処理ステップにおいて、制御処理部142は、入力パラメータ及び周波数により算出処理ステップの処理を実行させ、算出処理ステップによって、算出された反射減衰量を取得し、反射減衰量に基づく結果情報を表示部12に出力させる。
これにより、本実施形態によるシミュレーション方法は、上述したシミュレーション装置1と同様の効果を奏し、電磁波抑制シートSTの設計を効率よく行うことができる。
【0144】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、シミュレーション装置1は、図2(a)に示す構造の電磁波抑制シートSTに適用する例を説明したが、これに限定されるものではなく、他の構造の電磁波抑制シートに対して適用可能である。
【0145】
例えば、図17は、本実施形態における電磁波抑制シートの別の構成例を示す図である。
シミュレーション装置1は、図17(a)に示すような電磁波抑制シートSTaに対して適用してもよい。
図17(a)に示すように、電磁波抑制シートSTaは、導体層ST1を含む複数層を備えており、複数層には、誘電体層ST2(第1の誘電体層)と、誘電体層ST4(第2の誘電体層)とが含まれ、抵抗層ST3を含んでいない構成になっている。
【0146】
また、図17(b)は、この電磁波抑制シートSTaを2端子対回路によりモデル化した等価回路モデルを示している。
また、図17(b)に示す等価回路モデルにおける伝達行列Fは、下記の式(10)により表される。
【0147】
【数10】
【0148】
ここで、電磁波抑制シートSTaの入力パラメータには、誘電体層ST2及び誘電体層ST4の厚み及び比誘電率とが含まれる。
シミュレーション装置1は、上述した式(10)を用いるとこで、図2(a)に示す電磁波抑制シートSTと同様に、反射減衰量を算出することが可能である。
【0149】
また、上記の実施形態において、出力部が表示部12である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、プリンタや、ネットワークカード、各種外部と接続可能なインターフェース部など、シミュレーション装置1の外部に出力する構成であれば、他の出力部であってもよい。
【0150】
また、上記の実施形態において、入力部11を介して、各種情報(設定情報など)を取得する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ネットワークを介して、外部の記憶装置から取得するようにしてもよい。
【0151】
また、上記の実施形態において、シミュレーション装置1は、記憶部13を備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、記憶部13の一部、又は全部を外部に備えるようにしてもよい。
【0152】
また、上記の実施形態において、シミュレーション装置1は、1台のコンピュータ装置である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数のサーバ装置などにより構成されるようにしてもよい。
【0153】
また、上記の実施形態において、誤差の指標として、平均二乗誤差(MSE)を用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、RMSE(Root Mean Square Error)、RMSPE(Root Mean Square Percentage Error;平均平方二乗誤差率)など、他の評価関数をもちいてもよい。
【0154】
また、上記の実施形態において、バラツキ条件の入力、及びバラツキの設定には、標準偏差を用いる例を説明したがこれに限定されるものではない。例えば、測定点数が少ない場合には、標準偏差の代わりに、T分布を用いるようにしてもよい。また、バラツキは、正規分布に限定されるものではなく、正規分布の代わりに、T分布、二項分布、ポアソン分布、ベータ分布、指数分布、ガンマ分布、ガウス分布、対数正規分布、フォン・ミーゼス分布、パレート分布、ワイブル分布などが、適宜選択、又は組み合わせて用いられてもい。
【0155】
なお、上述したシミュレーション装置1が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したシミュレーション装置1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述したシミュレーション装置1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0156】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後にシミュレーション装置1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0157】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0158】
1 シミュレーション装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
14 制御部
131 モデル記憶部
132 設定情報記憶部
133 実測値記憶部
134 結果情報記憶部
141 算出処理部
142 制御処理部
143 表示処理部
ST、STa 電磁波抑制シート
ST1 導体層
ST2、ST4 誘電体層
ST3 抵抗層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17