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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240814BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F24F7/06 P
F24F7/10 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020194963
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083568
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】岩山 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】喜多 裕美
(72)【発明者】
【氏名】中原 みまえ
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-199986(JP,A)
【文献】特開平11-244067(JP,A)
【文献】特開平11-244066(JP,A)
【文献】特開平11-247316(JP,A)
【文献】特開2004-060993(JP,A)
【文献】実開昭59-125247(JP,U)
【文献】実開昭57-090643(JP,U)
【文献】特開平02-156904(JP,A)
【文献】実開昭58-174554(JP,U)
【文献】特開2002-213788(JP,A)
【文献】特開平10-061044(JP,A)
【文献】特開平10-061045(JP,A)
【文献】特開2001-304641(JP,A)
【文献】特開2005-160674(JP,A)
【文献】特開2011-167370(JP,A)
【文献】特開2008-183134(JP,A)
【文献】特開2002-277012(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0098309(KR,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0337954(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00
A47B 61/04
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下換気のための床下通風路が設けられた床と、
壁内換気のための壁内通風路が設けられた外壁と、
履物の収納空間が設けられ、前記床上に配置された下駄箱と、
前記床下通風路から前記収納空間へ空気を取り込む取込ダクトと、を備え、
前記収納空間は、前記床下通風路に連通すると共に前記壁内通風路に連通
前記床には、前記床下通風路を外気空間に連通させる床下換気口が複数設けられ、
前記取込ダクトには、複数の前記床下換気口のうち一の前記床下換気口の側を向く第1ダクト口と、複数の前記床下換気口のうち他の前記床下換気口の側を向く第2ダクト口と、が設けられている、建築物。
【請求項2】
前記第1ダクト口及び前記第2ダクト口は、上下方向において前記床下換気口に重なると共に、上下方向の寸法が前記床下換気口よりも小さい、請求項に記載の建築物。
【請求項3】
前記取込ダクトは、前記第1ダクト口及び前記第2ダクト口のうち一方から他方への空気の吹き抜けを抑制する仕切り部を含む、請求項又はに記載の建築物。
【請求項4】
前記仕切り部は、前記取込ダクト内に取り込まれた空気を前記収納空間へ案内する案内部を含む、請求項に記載の建築物。
【請求項5】
前記第1ダクト口と一の前記床下換気口との間の距離は、一の前記床下換気口から前記床下通風路に取り込まれた空気の一部が前記第1ダクト口から前記取込ダクトに取り込まれると共に、当該空気の残部が前記取込ダクトに取り込まれずに前記床下通風路を流れるように定められている、請求項のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項6】
前記床には、前記取込ダクトが取り付けられる取込口が設けられ、
前記取込口は、前記外壁の面方向において互いに間隔を空けて複数設けられ、又は前記面方向に延びる形状を有する、請求項のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項7】
前記下駄箱は、前記収納空間において上下方向に互いに間隔を空けて配置された複数の棚板を含み、
複数の前記棚板のうち最下段の前記棚板は、前記床下通風路から前記収納空間へ取り込まれた空気を前記収納空間のうち前記外壁側の領域へ案内するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項8】
複数の前記棚板は、下段側から上段側に向かって前記外壁側の端部が前記外壁により近づくように配置されている、請求項に記載の建築物。
【請求項9】
前記複数の棚板のうち少なくとも1つは、前記外壁側の端部が下段側に折り返された爪部である、請求項又はに記載の建築物。
【請求項10】
前記下駄箱は、前記収納空間を開閉する扉であって、前記収納空間を間に挟んで前記外壁の反対側に設けられた前記扉を含み、
前記収納空間のうち前記扉の内面と前記棚板との間には、通風可能な隙間が設けられている、請求項のいずれか1項に記載の建築物。
【請求項11】
前記扉は気密構造を有する、請求項1に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、下駄箱内の臭気や湿気を緩和するための換気について種々の対策が検討されている。
【0003】
特許文献1には、住宅等の玄関に設置した下駄箱と、下駄箱内の空気を排出する換気扇と、住宅床下基礎部に設けられると共に室外に連通する通気ダクトとを有し、換気扇の吐出口と通気ダクトを下駄箱の下部と住宅床下基礎部との間の空間でフレキシブルダクトによって連通接続させた下駄箱換気システムが記載されている。この換気システムによれば、換気扇を運転させることにより、下駄箱内の空気は換気扇の吸込口より吸い込まれ、フレキシブルダクト及び通気ダクトを通り室外へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-304641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された下駄箱換気システムは、換気扇を用いて下駄箱内の空気を強制排出するものであり、下駄箱内の収納空間において換気扇の設置スペースを確保する必要がある。このため、下駄箱内において履物の収納スペースが狭くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、下駄箱内において履物の収納スペースを広く確保しつつ下駄箱内を換気することが可能な建築物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る建築物は、床下換気のための床下通風路が設けられた床と、壁内換気のための壁内通風路が設けられた外壁と、履物の収納空間が設けられ、前記床上に配置された下駄箱と、前記床下通風路から前記収納空間へ空気を取り込む取込ダクトと、を備える。前記収納空間は、前記床下通風路に連通すると共に前記壁内通風路に連通前記床には、前記床下通風路を外気空間に連通させる床下換気口が複数設けられ、前記取込ダクトには、複数の前記床下換気口のうち一の前記床下換気口の側を向く第1ダクト口と、複数の前記床下換気口のうち他の前記床下換気口の側を向く第2ダクト口と、が設けられている
【0008】
この構成によれば、床下通風路から下駄箱の収納空間に空気を取り込むことができる。そして、当該空気が収納空間を流れた後、壁内通風路へ排出されることにより、収納空間内の臭気や湿気を外へ追い出すことができる。このように、下駄箱内の換気において床及び壁の換気用通風路を利用することができるため、換気扇を設置する必要がない。このため、換気扇の設置により下駄箱内の収納スペースが狭くなることはなく、収納スペースを広く確保しつつ下駄箱内を換気することができる。
【0010】
床下通風路における風向きは、季節等によって変わる場合がある。すなわち、一の床下換気口から空気が取り込まれて他の床下換気口から排気される状態から、他の床下換気口から空気が取り込まれて一の床下換気口から排気される状態に変わる場合がある。これに対し、各床下換気口の側を向くダクト口をそれぞれ設けることにより、風向きの変化に拘わらず取込ダクト内に空気を取り込むことができる。
【0011】
上記建築物において、前記第1ダクト口及び前記第2ダクト口は、上下方向において前記床下換気口に重なると共に、上下方向の寸法が前記床下換気口よりも小さくてもよい。
【0012】
この構成によれば、床下通風路に取り込まれた空気のうち一部を取込ダクトにより収納空間へ導くと共に、残部を床下通風路に流すことができる。これにより、床下の換気機能を維持しつつ下駄箱内を換気することができる。
【0013】
上記建築物において、前記取込ダクトは、前記第1ダクト口及び前記第2ダクト口のうち一方から他方への空気の吹き抜けを抑制する仕切り部を含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、取込ダクト内での空気の吹き抜けを抑制することにより、取込ダクト内に取り込まれた空気を収納空間へより確実に導くことができる。
【0015】
上記建築物において、前記仕切り部は、前記取込ダクト内に取り込まれた空気を前記収納空間へ案内する案内部を含んでいてもよい。
【0016】
この構成によれば、取込ダクト内に取り込まれた空気を収納空間へより導き易くなる。
【0017】
上記建築物において、前記第1ダクト口と一の前記床下換気口との間の距離は、一の前記床下換気口から前記床下通風路に取り込まれた空気の一部が前記第1ダクト口から前記取込ダクトに取り込まれると共に、当該空気の残部が前記取込ダクトに取り込まれずに前記床下通風路を流れるように定められていてもよい。
【0018】
この構成によれば、床下の換気機能を維持しつつ下駄箱内を換気することができる。
【0019】
上記建築物において、前記第1ダクト口及び前記第2ダクト口には、フィルターが取り付けられていてもよい。
【0020】
この構成によれば、下駄箱の収納空間への虫や埃等の侵入を防ぐことができる。
【0021】
上記建築物において、前記床には、前記取込ダクトが取り付けられる取込口が設けられていてもよい。前記取込口は、前記外壁の面方向において互いに間隔を空けて複数設けられ、又は前記面方向に延びる形状を有していてもよい。
【0022】
この構成によれば、床下換気用の空気を収納空間へより効率的に取り込むことができる。
【0023】
上記建築物において、前記下駄箱は、前記収納空間において上下方向に互いに間隔を空けて配置された複数の棚板を含んでいてもよい。複数の前記棚板のうち最下段の前記棚板は、前記床下通風路から前記収納空間へ取り込まれた空気を前記収納空間のうち前記外壁側の領域へ案内するように構成されていてもよい。複数の前記棚板は、下段側から上段側に向かって前記外壁側の端部が前記外壁により近づくように配置されていてもよい。
【0024】
この構成によれば、収納空間へ取り込まれた空気を棚板間の各領域に均一に流すことができるため、各段を満遍なく換気することができる。
【0025】
上記建築物において、前記複数の棚板のうち少なくとも1つは、前記外壁側の端部が下段側に折り返された爪部であってもよい。
【0026】
この構成によれば、収納空間へ取り込まれた空気を棚板間の領域に効率的に取り込むことができる。
【0027】
上記建築物において、前記下駄箱は、前記収納空間を開閉する扉であって、前記収納空間を間に挟んで前記外壁の反対側に設けられた前記扉を含んでいてもよい。前記収納空間のうち前記扉の内面と前記棚板との間には、通風可能な隙間が設けられていてもよい。
【0028】
この構成によれば、収納空間のうち扉側の領域も確実に換気することができる。
【0029】
上記建築物において、前記扉は気密構造を有していてもよい。
【0030】
この構成によれば、下駄箱内の臭気が屋内空間へ漏れるのを抑制しつつ、下駄箱内を換気することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、下駄箱内において履物の収納スペースを広く確保しつつ下駄箱内を自然に換気することが可能な建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態1に係る建築物の構成を模式的に示す図である。
図2】上記建築物における空気の取込口の位置を説明するための平面図である。
図3】上記建築物における取込ダクトの構成を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態2に係る建築物における空気の取込口の位置を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る建築物を詳細に説明する。
【0034】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る建築物1の構成を、図1図3に基づいて説明する。建築物1は、例えば住宅であり、床下換気及び壁内換気用の通風路を利用して下駄箱30内を換気可能な構造を有する。図1は、上下方向に沿った断面図であり、床10と外壁20との接続部に下駄箱30が設置された様子を示している。図1に示すように、建築物1は、床10と、外壁20と、下駄箱30と、取込ダクト40とを主に備える。以下、各構成要素についてそれぞれ説明する。
【0035】
床10には、床下換気のための床下通風路S1が設けられている。床10は、断熱構造を有すると共に、地面F1から床下通風路S1を取り囲むように垂直上向きに延びる垂直基礎部12と、垂直基礎部12の上端に繋がると共に地面F1に平行な床板11とを含む。図1に示すように、床下通風路S1は、地面F1と垂直基礎部12と床板11とによって取り囲まれた空間であり、水平方向に広がっている。なお、床10は、土台、大引及び根太等の他の部材もさらに備えるが、図1ではこれらが省略されている。
【0036】
垂直基礎部12は、床下通風路S1側を向く内面12Aと、内面12Aと反対側(外気空間側)を向く外面12Bとを含む。垂直基礎部12には、床下通風路S1を外気空間に連通させる床下換気口が複数設けられている(第1床下換気口10A,第2床下換気口10B)。第1床下換気口10A及び第2床下換気口10Bは、いずれも垂直基礎部12を厚さ方向に貫通する孔であり、一方端が内面12A側(床下通風路S1側)に開口すると共に、他方端が外面12B側(外気空間側)に開口する。
【0037】
図1の例では、第1床下換気口10Aが床下通風路S1から外気空間へ空気W1を流出させる流出口として機能しており、第2床下換気口10Bが外気空間から床下通風路S1へ空気W1を流入させる流入口として機能しているが、これに限定されない。例えば、季節等によって風向きが変わる場合に、第1床下換気口10Aが空気W1の流入口として機能すると共に、第2床下換気口10Bが空気W1の流出口として機能する場合もある。なお、床下換気口の数も特に限定されず、3つ以上設けられていてもよい。
【0038】
床板11は、床下通風路S1側を向く下面11Aと、下面11Aと反対側を向く上面11Bとを含む。床板11には、取込ダクト40が取り付けられる取込口13が設けられている。取込口13は、床板11を厚さ方向に貫通する孔であり、一方端が下面11A側(床下通風路S1側)に開口すると共に、他方端が上面11B側(下駄箱30の収納空間S3側)に開口する。
【0039】
図2は、下駄箱30を上方から見た平面図であり、取込口13を破線により示している。図2に示すように、本実施形態では、取込口13は、外壁20の面方向(下駄箱30の長手方向)において互いに間隔を空けて複数(例えば2つ)設けられている。このため、取込ダクト40も取込口13の数に合わせて複数(例えば2本)設けられている。また取込口13は平面視円形の孔であるが、この形状に限定されない。
【0040】
図1に示すように、外壁20には、壁内換気のための壁内通風路S2が設けられている。壁内通風路S2は、外壁20の面方向(図1の紙面奥行方向)及び上下方向に広がっている。図1に示すように、本実施形態では、空気W2を流入させる流入口21が壁内通風路S2の下部に設けられると共に、空気W2を流出させる流出口22が壁内通風路S2の上部に設けられている。また壁内通風路S2における空気W2の流量(風量)は、床下通風路S1における空気W1の流量(風量)よりも少ない。このため、床下通風路S1における風圧は、壁内通風路S2における風圧よりも大きい。なお、流入口21と流出口22は図1の位置に限定されず、上下逆であってもよい。
【0041】
外壁20は、床板11の上面11Bのうち第1床下換気口10Aの上側に位置する部分から垂直上向きに延びている。外壁20には、下駄箱30の収納空間S3と壁内通風路S2とを連通させる排出口24が設けられている。排出口24は、外壁20を厚さ方向に貫通する孔であり、図略の排出ダクトが取り付けられている。
【0042】
下駄箱30には、履物(例えばブーツ100やサンダル101等)の収納空間S3が設けられており、床10上に配置されている。具体的には、下駄箱30は、床板11の上面11Bに配置された底板(図示しない)と、当該底板から垂直上向きに延びる収納扉32と、外壁20の内面23に沿って配置された背面板(図示しない)と、収納扉32の上端と背面板の上端とを繋ぐ天板31と、図1中の紙面奥行方向に収納空間S3を挟んで配置された一対の側板(図示しない)とを含む。図1に示すように、収納扉32は、取込口13から見て外壁20と反対側に配置されている。収納空間S3は、底板、収納扉32、背面板、天板31及び側板の各内面によって取り囲まれた直方体状の空間である。
【0043】
収納扉32は、屋内空間(例えば玄関)側から収納空間S3を開閉するためのものであり、収納空間S3を間に挟んで外壁20の反対側に設けられている。本実施形態では、収納扉32が気密構造を有しており、収納空間S3から屋内空間への臭気の漏れは抑制される。
【0044】
下駄箱30は、収納空間S3において上下方向に互いに間隔を空けて配置された複数の棚板をさらに含む(第1~第4棚板33~36)。図1に示すように、第1~第4棚板33~36は、それぞれ水平姿勢で配置されており、収納扉32側の前端(第1~第4前端33B~36B)と、外壁20側の後端(第1~第4後端33A~36A)とを含む。
【0045】
収納空間S3のうち第1~第4前端33B~36Bと収納扉32の内面との間には、上下方向に延びると共に通風可能な隙間(前側通風路)が設けられている。図1に示すように、各前端と収納扉32の内面との間の隙間は、下方から上方に向かって大きくなっている。また収納空間S3のうち第1~第4後端33A~36Aと背面板(図示しない)との間にも、上下方向に延びると共に通風可能な隙間(後側通風路)が設けられている。第2~第4棚板34~36は、一対の側板(図示しない)によって上下方向の所定の位置で支持されている。また本実施形態における第2~第4後端34A~36Aは、全て下段側に折り返された爪部となっている。
【0046】
収納空間S3のうち第4棚板36よりも上側には、上板37が設けられている。図1に示すように、上板37は、前端と収納扉32の内面との間に隙間が空くと共に、後端が背面板(図示しない)に固定された状態で設けられている。
【0047】
図1に示すように、第1~第4棚板33~36は、下段側から上段側に向かって後端が外壁20により近づくように配置されている。すなわち、第2後端34Aは第1後端33Aよりも外壁20側にずれており、第3後端35Aは第2後端34Aよりも外壁20側にずれており、第4後端36Aは第3後端35Aよりも外壁20側にずれている。
【0048】
収納空間S3は、取込口13を介して床下通風路S1に連通すると共に、排出口24を介して壁内通風路S2に連通している。このため、床下通風路S1から収納空間S3に空気W1が取り込まれ、当該空気W1が収納空間S3を上昇することによって下駄箱30内が換気される。より具体的には、床下通風路S1における圧力が収納空間S3における圧力よりも大きいため、床下通風路S1から収納空間S3へ空気W1が押し込まれる。そして、天板31の近傍まで上昇した空気W1は、排出口24を介して壁内通風路S2へ排出され、壁内通風路S2を流れる空気W2と共に外気空間へ排出される。
【0049】
複数の棚板のうち最下段の第1棚板33は、床下通風路S1から収納空間S3へ取り込まれた空気W1を、収納空間S3のうち外壁20側の領域へ案内するように構成されている。具体的には、第1棚板33は、第1前端33Bが底板(図示しない)に固定されると共に、第1前端33Bから第1後端33Aに向かって底板との間の隙間が徐々に広がるように裏面(取込口13側を向く面)が曲面になっている。
【0050】
取込ダクト40は、床下通風路S1から収納空間S3へ空気W1を取り込むためのものであり、取込口13に取り付けられている。図1に示すように、取込ダクト40には、第1床下換気口10Aの側を向く第1ダクト口41と、第2床下換気口10Bの側(第1ダクト口41と反対側)を向く第2ダクト口42とがそれぞれ設けられている。
【0051】
第1ダクト口41及び第2ダクト口42は、床下通風路S1から取込ダクト40内に空気W1を取り込むための円形の開口部であり、床下通風路S1に臨んでいる。第1床下換気口10Aから空気W1が取り込まれる場合には、第1ダクト口41から取込ダクト40内に空気W1が取り込まれる。一方、第2床下換気口10Bから空気W1が取り込まれる場合には、第2ダクト口42から取込ダクト40内に空気W1が取り込まれる。
【0052】
取込ダクト40は、取込口13に取り付けられた被取付部46を含むと共に、当該被取付部46から第1ダクト口41及び第2ダクト口42のそれぞれに向かって延びる分岐ダクトである。被取付部46は、取込口13の孔内に挿入された中空円筒状のダクト部分であり、上端が下駄箱30の底板(図示しない)を貫通すると共に収納空間S3に開口している。
【0053】
第1ダクト口41は、上下方向において第1床下換気口10Aに重なると共に、上下方向の寸法が第1床下換気口10Aよりも小さい。より具体的には、第1ダクト口41は第1床下換気口10Aの高さ範囲に収まっており、第1ダクト口41の最上縁が第1床下換気口10Aの最上縁と略同じ高さ位置にある一方、第1ダクト口41の最下縁が第1床下換気口10Aの最下縁よりも上側に位置する。同様に、第2ダクト口42は、上下方向において第2床下換気口10Bに重なると共に、上下方向の寸法が第2床下換気口10Bよりも小さい。すなわち、第2ダクト口42は第2床下換気口10Bの高さ範囲に収まっており、第2ダクト口42の最上縁が第2床下換気口10Bの最上縁と略同じ高さ位置にある一方、第2ダクト口42の最下縁が第2床下換気口10Bの最下縁よりも上側に位置する。
【0054】
第1ダクト口41と第1床下換気口10Aとの間の水平距離は、第1床下換気口10Aから床下通風路S1に取り込まれた空気W1の一部が第1ダクト口41から取込ダクト40に取り込まれると共に、当該空気W1の残部が取込ダクト40に取り込まれずに床下通風路S1を流れるように定められている。同様に、第2ダクト口42と第2床下換気口10Bとの間の水平距離は、第2床下換気口10Bから床下通風路S1に取り込まれた空気W1の一部が第2ダクト口42から取込ダクト40に取り込まれると共に、当該空気W1の残部が取込ダクト40に取り込まれずに床下通風路S1を流れるように定められている。
【0055】
図3は、取込ダクト40のうち第1ダクト口41及び第2ダクト口42の近傍の拡大図である。取込ダクト40は、第1ダクト口41及び第2ダクト口42のうち一方から他方への空気の吹き抜けを抑制する仕切り部43を含む。図3に示すように、仕切り部43は、第1ダクト口41と第2ダクト口42との間に設けられた壁であり、第1ダクト口41及び第2ダクト口42と同等以上の高さH1を有する。
【0056】
より具体的には、仕切り部43は、取込ダクト40内に取り込まれた空気を収納空間S3(図1)へ向かって上方に案内する案内部を含む(第1案内部44、第2案内部45)。図3に示すように、第1案内部44は、第1ダクト口41の下縁から上側(頂部43A)に向かって円弧状に延びると共に、第1ダクト口41から離れる方向に凸状に膨らむ曲面部である。第2案内部45は、第1案内部44と対称に設けられており、第2ダクト口42の下縁から上側(頂部43A)に向かって円弧状に延びると共に、第2ダクト口42から離れる方向に凸状に膨らむ曲面部である。第1案内部44と第2案内部45は、頂部43Aにおいて繋がっている。
【0057】
第1ダクト口41には、第1フィルター41Aが取り付けられており、第2ダクト口42には、第2フィルター42Aが取り付けられている。第1フィルター41A及び第2フィルター42Aは、空気の通過を許容すると共に虫、埃等の侵入を阻止する。なお、これらのフィルターは、本発明における必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0058】
以上の通り、本実施形態に係る建築物1によれば、床下通風路S1から収納空間S3に空気W1を取り込むことができる。空気W1は、第1棚板33の裏面によって収納空間S3のうち外壁20側の領域に案内され、後側通風路を上昇しつつ各棚板間の領域に取り込まれる。また空気W1は、各棚板の前端まで流れた後、前側通風路を上昇する。その後、空気W1は、天板31の内面に衝突し、上板37の上側領域において前方から後方に流れる。
【0059】
このようにして、収納空間S3内を広範囲に亘って流れた後、空気W1は排出口24を通じて壁内通風路S2へ排出される。これにより、収納空間S3が換気され、収納空間S3内の臭気や湿気を壁内通風路S2を通じて外気空間へ追い出すことができる。このように、本実施形態に係る建築物1によれば、床10及び外壁20における換気用の通風路を下駄箱30内の換気に利用することができるため、下駄箱30内に換気扇を設置する必要がない。このため、換気扇の設置により履物の収納スペースが狭くなることがなく、収納スペースを広く確保しつつ下駄箱30内を換気することができる。また換気扇を使用しないため、省電力化を図ることもできる。
【0060】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る建築物1Aについて、図4に基づいて説明する。実施形態2に係る建築物1Aは、基本的に実施形態1に係る建築物1と同様の構成を備え且つ同様の効果を奏するものであるが、取込口の構成において異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0061】
図4は、下駄箱30を上方から見た平面図であり、図2に対応するものである。図2と同様に、図4中においても取込口13Aが破線により示されている。図4に示すように、実施形態2における取込口13Aは、外壁20の面方向(下駄箱30の長手方向)に延びる平面視長方形状を有する。また図示は省略するが、取込ダクト40の被取付部46(図1)の形状も、当該取込口13Aに取り付け可能なように、外壁20の面方向に延びる平面視長方形状となる。
【0062】
上記形状の取込口13Aを採用することにより、床下通風路S1から収納空間S3へ空気W1をより効率的に取り込むことができるため、収納空間S3の換気効率をより向上させることができる。なお、図4では、取込口13Aが1つのみ設けられているが、取込口13Aが複数並んで設けられていてもよい。
【0063】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
【0064】
下駄箱30において、第2~第4後端34A~36Aが全て爪部である場合に限定されず、第2~第4後端34A~36Aのうち一部のみが爪部であってもよい。また第2~第4後端34A~36Aの全てが爪部でなくてもよい。
【0065】
取込ダクト40において、ダクト口の数は床下換気口の数に応じて適宜変更されてもよく、3つ以上設けられていてもよい。またダクト口が複数設けられる場合に限定されず、ダクト口が1つのみ設けられていてもよい。
【0066】
取込ダクト40において、第1ダクト口41が第1床下換気口10Aの高さ範囲外に位置していてもよいし、第2ダクト口42が第2床下換気口10Bの高さ範囲外に位置していてもよい。
【0067】
第1ダクト口41及び第2ダクト口42の形状は円形に限定されず、例えば角形であってもよい。また取込ダクト40が省略されてもよい。
【0068】
実施形態1では取込口13が第1棚板33の下方に設けられる場合を説明したが、これに限定されない。例えば、取込口13は、図1の位置よりも後側(外壁20側)に設けられ、取込ダクト40の上端開口から収納空間S3の後側通風路に空気W1が直接吹き出されてもよい。この場合、第1ダクト口41と第1床下換気口10Aとが近接するのを、以下の方法により回避することができる。例えば、第1床下換気口10Aを、第1ダクト口41に対して、図1中の紙面奥行方向にずれた位置に設けてもよい。また別の方法としては、第1ダクト口41及び第2ダクト口42の位置を図1のままとし、被取付部46と第1ダクト口41及び第2ダクト口42とを繋ぐ連結部(図示しない)を床板11の下面11Aに沿って設けてもよい。これにより、第1ダクト口41と第1床下換気口10Aとの間の水平距離を維持しつつ、収納空間S3の後側通風路へ空気W1を直接吹き出すことができる。
【0069】
収納空間S3において、前側通風路(棚板の前端と収納扉32の内面との間の隙間)が省略されてもよい。すなわち、収納扉32を閉じた状態において、棚板の前端が収納扉32の内面に当接してもよい。この場合、各棚板のうち前端側の部分にスリットが形成され、当該スリットを空気W1が通過するように構成されてもよい。このスリットは、各棚板を厚さ方向に貫通すると共に、下駄箱30の長手方向に長い長方形状を有する。当該スリットの開口面積は、下方から上方に向かって拡大してもよい。
【0070】
第1~第4後端33A~36Aが外壁20の内面23に当接していてもよい。この場合に、各棚板のうち後端側の部分にスリットが形成され、当該スリットの開口面積が下方から上方に向かって拡大してもよい。
【0071】
実施形態1では、第1~第4後端33A~36Aが下段型から上段型に向かって後方(外壁20側)にシフトする場合を説明したが、これに限定されない。第1~第4後端33A~36Aの水平方向の位置が全て揃っていてもよい。
【0072】
収納扉32は気密構造を有するものに限定されず、例えばルーバー付きの扉であってもよい。
【0073】
実施形態1では、住宅を建築物の一例として説明したが、住宅以外の建築物についても本発明を適用可能である。
【0074】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1,1A 建築物
10 床
10A 第1床下換気口
10B 第2床下換気口
13,13A 取込口
20 外壁
30 下駄箱
32 収納扉
33 第1棚板
33A 第1後端
34 第2棚板
34A 第2後端
35 第3棚板
35A 第3後端
36 第4棚板
36A 第4後端
40 取込ダクト
41 第1ダクト口
41A 第1フィルター
42 第2ダクト口
42A 第2フィルター
43 仕切り部
44 第1案内部
45 第2案内部
100 ブーツ(履物)
101 サンダル(履物)
S1 床下通風路
S2 壁内通風路
S3 収納空間
W1,W2 空気
図1
図2
図3
図4