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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】充電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20240814BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240814BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20240814BHJP
   H01M 10/48 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/44 P
H02J7/04 C
H02J7/04 F
H01M10/48 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020203295
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090785
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕也
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-296302(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002135(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0102763(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0178661(US,A1)
【文献】特開平08-329987(JP,A)
【文献】特開2003-243039(JP,A)
【文献】特開平9-007641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42
H01M 10/44
H02J 7/04
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの自動停止機能を有する車両に搭載される充電装置であって、
低電圧バッテリと、
高電圧バッテリと、
前記低電圧バッテリと前記高電圧バッテリとの間に設けられ前記低電圧バッテリと前記高電圧バッテリとの間で電圧の変換を行う電圧変換部と、
前記電圧変換部を制御する制御部と、を備え、
前記低電圧バッテリは、前記高電圧バッテリから供給される電力によって充電されるよう構成されており、
前記制御部は、前記車両がイグニッションオフされてからイグニッションオンされるまでのイグニッションオフ時間が所定時間以上である場合、前記低電圧バッテリが満充電であると判定された後も前記低電圧バッテリの充電を行うよう、前記電圧変換部を制御することを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記低電圧バッテリには、前記車両に搭載される電装負荷が接続されており、
前記制御部は、前記満充電であると判定された後の前記低電圧バッテリの充電としてパルス充電を行い、前記パルス充電においては、前記低電圧バッテリの充電電圧が漸増及び漸減するよう前記電圧変換部を制御することを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記低電圧バッテリに対する充電電流が所定値未満の場合に前記低電圧バッテリが満充電であると判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリの成層化を改善するために、バッテリの再充電中、または再充電が終了する前に、過充電電流をバッテリに供給する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-243039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載されたバッテリを過充電状態にする方法としては、例えば満充電状態の当該バッテリを、車両に搭載された発電機で発電した電力によってさらに充電することが考えられる。
【0005】
しかしながら、エンジンの自動停止機能を備える車両にあっては、エンジンの自動停止中は発電機で発電を行うことができないため、バッテリを過充電状態にすることができないという課題がある。
【0006】
特許文献1に記載の装置にあっては、エンジンの自動停止機能を備える車両に搭載されることについては何ら考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、エンジンの自動停止機能を備える車両に搭載されるバッテリであっても、電解液の濃度を均一化することができ、バッテリ性能が低下することを防止することができる充電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、エンジンの自動停止機能を有する車両に搭載される充電装置であって、低電圧バッテリと、高電圧バッテリと、前記低電圧バッテリと前記高電圧バッテリとの間に設けられ前記低電圧バッテリと前記高電圧バッテリとの間で電圧の変換を行う電圧変換部と、前記電圧変換部を制御する制御部と、を備え、前記低電圧バッテリは、前記高電圧バッテリから供給される電力によって充電されるよう構成されており、前記制御部は、前記車両がイグニッションオフされてからイグニッションオンされるまでのイグニッションオフ時間が所定時間以上である場合、前記低電圧バッテリが満充電であると判定された後も前記低電圧バッテリの充電を行うよう、前記電圧変換部を制御する構成を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エンジンの自動停止機能を備える車両に搭載されるバッテリであっても、電解液の濃度を均一化することができ、バッテリ性能が低下することを防止することができる充電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る充電装置を備えた車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る充電装置によって実行される長期放置充電時間設定処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る充電装置によって実行される電圧制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る充電装置の作用を説明するタイミングチャートの一例である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る充電装置の変形例の作用を説明するタイミングチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る充電装置は、エンジンの自動停止機能を有する車両に搭載される充電装置であって、低電圧バッテリと、高電圧バッテリと、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間に設けられ低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間で電圧の変換を行う電圧変換部と、電圧変換部を制御する制御部と、を備え、低電圧バッテリは、高電圧バッテリから供給される電力によって充電されるよう構成されており、制御部は、車両がイグニッションオフされてからイグニッションオンされるまでのイグニッションオフ時間が所定時間以上である場合、低電圧バッテリが満充電であると判定された後も低電圧バッテリの充電を行うよう、電圧変換部を制御することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る充電装置は、エンジンの自動停止機能を備える車両に搭載されるバッテリであっても、電解液の濃度を均一化することができ、バッテリ性能が低下することを防止することができる。
【実施例
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る充電装置を搭載した車両について図面を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、低電圧バッテリ3と、高電圧バッテリ4と、電圧変換部5と、制御部としての制御装置10と、を含んで構成されている。本実施例において、低電圧バッテリ3、高電圧バッテリ4、電圧変換部5及び制御装置10は、充電装置を構成する。
【0014】
エンジン2は、車両1の図示しない駆動輪に動力を伝達する駆動源を構成する。エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0015】
低電圧バッテリ3は、約12[V]の出力電圧を発生する低電圧のバッテリであり、鉛電池からなる。低電圧バッテリ3は、電圧変換部5を介して高電圧バッテリ4に接続されており、高電圧バッテリ4から電圧変換部5を介して供給される電力によって充電されるようになっている。
【0016】
低電圧バッテリ3には、車両1に搭載される電装負荷6が接続されている。電装負荷6としては、例えば、図示しないヘッドライトや、インストルメントパネルのランプ類及びメータ類等がある。
【0017】
高電圧バッテリ4は、低電圧バッテリ3より高電圧を発生するようにセルの個数等が設定された高電圧バッテリであり、例えばリチウムイオン電池からなる。高電圧バッテリ4は、図示しない発電機で発電された電力によって充電されるようになっている。
【0018】
当該発電機としては、例えば、エンジン2の動力によって駆動するISGやオルタネータ等のモータジェネレータが用いられる。車両1が駆動源としてモータを備える場合には、当該モータを上記発電機として用いることもできる。また、高電圧バッテリ4は、発電機によらず、又は、発電機に加えて、例えば外部電源から供給される電力によって充電される構成であってもよい。
【0019】
電圧変換部5は、低電圧バッテリ3と高電圧バッテリ4との間に設けられ、低電圧バッテリ3と高電圧バッテリ4との間で電圧の変換を行う、例えば降圧コンバータ等のDC/DCコンバータによって構成されている。
【0020】
本実施例において、電圧変換部5は、高電圧バッテリ4から入力された高電圧を任意の低電圧に降圧して、低電圧バッテリ3に出力するようになっている。電圧変換部5は、制御装置10に接続されており、制御装置10によって制御されるようになっている。
【0021】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0022】
当該コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置10として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、本実施例における制御装置10として機能する。
【0023】
制御装置10には、エンジン2及び電圧変換部5の他に、イグニッションスイッチ11、クランク角センサ12、アクセルセンサ13、車速センサ14及び低電圧バッテリセンサ31等の各種スイッチ及びセンサ類が接続されている。
【0024】
イグニッションスイッチ11は、イグニッション操作に応じてオン(以下、「イグニッションオン」という)又はオフ(以下、「イグニッションオフ」という)されるスイッチである。
【0025】
クランク角センサ12は、エンジン2の図示しないクランクシャフトの回転角(以下、「クランク角」という)を検出する。制御装置10は、クランク角センサ12から入力されたクランク角を示す情報に基づきエンジン2の回転数であるエンジン回転数を算出する。
【0026】
アクセルセンサ13は、図示しないアクセルペダルの操作量を検出する。車速センサ14は、車両1の速度である車速を検出する。低電圧バッテリセンサ31は、低電圧バッテリ3の充電電流及び放電電流(以下、これら電流を総称して「充放電電流」ともいう)を検出する。
【0027】
また、制御装置10には、タイマ7が接続されている。タイマ7は、例えば、車両1がイグニッションオフされてから次回イグニッションオンされるまでの時間(以下、「イグニッションオフ時間」という)を計時する。
【0028】
制御装置10は、所定の自動停止条件の成立時にエンジン2を自動停止させる、アイドリングストップ制御を実行するようになっている。制御装置10は、所定の再始動条件の成立時に、自動停止しているエンジン2を再始動させるようになっている。このように、本実施例の車両1は、エンジン2の自動停止機能を有する。
【0029】
制御装置10は、低電圧バッテリ3のSOC(State Of Charge)に応じて、高電圧バッテリ4から電力を供給して低電圧バッテリ3を充電するように、電圧変換部5の出力電圧を制御する。
【0030】
例えば、制御装置10は、低電圧バッテリ3の充電時、電圧変換部5の出力電圧を予め設定された適正充電電圧に制御する。適正充電電圧は、低電圧バッテリ3のOCV(Open Circuit Voltage)以上の電圧の適合値であって、予め実験的に求められて制御装置10のROMに記憶されている。
【0031】
制御装置10は、低電圧バッテリ3が満充電であるか否かを判定する満充電判定を行うようになっている。制御装置10は、満充電判定において、低電圧バッテリ3に対する充電電流が所定値未満の場合に低電圧バッテリ3が満充電であると判定する。前述の所定値は、低電圧バッテリ3が満充電であると判定することのできる電流値であって、予め実験的に求めて制御装置10のROMに記憶されている。
【0032】
制御装置10は、車両1がイグニッションオンされると、タイマ7によって計時されたイグニッションオフ時間が所定時間以上であるか否かを判定するようになっている。前述の所定時間は、車両1がイグニッションオンされずに放置されることで低電圧バッテリ3の電解液の濃度に偏りが生じたと判断できる時間であり、予め実験的に求めて制御装置10のROMに記憶されている。
【0033】
制御装置10は、上述のイグニッションオフ時間が所定時間以上である場合、上記満充電判定によって低電圧バッテリ3が満充電であると判定された後も低電圧バッテリ3の充電を継続して行うよう、電圧変換部5の出力電圧を制御する。
【0034】
具体的には、制御装置10は、イグニッションオフ時間が所定時間以上である場合、低電圧バッテリ3が満充電であると判定された後も、所定の充電継続時間が経過するまで電圧変換部5の出力電圧を上述の適正充電電圧に制御する。このときの電圧変換部5の出力電圧は、低電圧バッテリ3のOCV以上であって低電圧バッテリ3を充電可能な電圧であれば、上述の適正充電電圧よりも低い電圧であってもよい。
【0035】
これにより、イグニッションオフ時間が所定時間以上である場合、低電圧バッテリ3が過充電状態となり、電解液がガス化して気泡が発生し、当該気泡の浮力によって電解液が撹拌される。この結果、電解液の濃度が均一化される。
【0036】
上述の所定の充電継続時間は、上述のような撹拌によって電解液の濃度が均一化されたと判断できる時間であり、予め実験的に求めて制御装置10のROMに記憶されている。所定の充電継続時間は、後述する図2の長期放置充電時間設定処理においてイグニッションオフ時間が所定時間以上であると判定された場合に、長期放置充電時間としてセットされる。
【0037】
次に、図2及び図3を参照して、上述のように構成された制御装置10によって実行される、長期放置充電時間設定処理及び電圧制御の処理について説明する。長期放置充電時間設定処理及び電圧制御の処理は、車両1がイグニッションオンされた際に実行される。
【0038】
図2に示すように、制御装置10は、車両1がイグニッションオンされると、イグニッションオフ時間が所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0039】
制御装置10は、ステップS1においてイグニッションオフ時間が所定時間以上であると判定した場合には、長期放置充電時間に所定の充電継続時間をセットして(ステップS2)、長期放置充電時間設定処理を終了する。
【0040】
制御装置10は、ステップS1においてイグニッションオフ時間が所定時間以上でないと判定した場合には、長期放置充電時間に前回イグニッションオフ時の値をセットして(ステップS3)、長期放置充電時間設定処理を終了する。本実施例においては、制御装置10は、前回イグニッションオフ時の値として「0」をセットする。
【0041】
図3に示すように、制御装置10は、低電圧バッテリ3の充電電流が所定値未満であるか否かを判定する(ステップS11)。制御装置10は、ステップS11において低電圧バッテリ3の充電電流が所定値未満でない、すなわち所定値以上であると判定した場合には、再度、ステップS11の処理を行う。
【0042】
制御装置10は、ステップS11において低電圧バッテリ3の充電電流が所定値未満であると判定した場合には、長期放置充電時間が「0」であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0043】
制御装置10は、ステップS12において長期放置充電時間が「0」であると判定した場合には、電圧変換部5の出力電圧を、低電圧バッテリ3の充放電電流が0[A]になるような電圧に制御して(ステップS13)、電圧制御の処理を終了する。
【0044】
ステップS12において長期放置充電時間が「0」であると判定される場合としては、長期放置充電時間設定処理(図2参照)においてイグニッションオフ時間が所定時間以上でないと判定された場合のほか、長期放置充電時間設定処理(図2参照)において長期放置充電時間としてセットされた所定の充電継続時間が経過した場合を含む。
【0045】
制御装置10は、ステップS12において長期放置充電時間が「0」でないと判定した場合には、電圧変換部5の出力電圧を、低電圧バッテリ3のOCV以上の電圧に制御する(ステップS14)。これにより、低電圧バッテリ3の充電が継続される。
【0046】
次いで、制御装置10は、長期放置充電時間をカウントダウンして、すなわち所定の充電継続時間をカウントダウンして(ステップS15)、処理をステップS12に戻す。これにより、長期放置充電時間が「0」となるまで低電圧バッテリ3の充電が継続される。
【0047】
次に、図4を参照して、本実施例に係る充電装置の作用について説明する。
図4に示す例では、車両1のイグニッションオン後に低電圧バッテリ3の充電が必要な場合を示している。
【0048】
図4中、「Pb電流」は、低電圧バッテリ3の充放電電流である。また、図4中、電圧変換部5の低電圧側端子間電圧とPb電流において、実線は長期ソークの場合、破線は短期ソークの場合をそれぞれ示している。長期ソークとは、イグニッションオフ時間が所定時間以上である場合のことであり、短期ソークとは、イグニッションオフ時間が所定時間未満である場合のことである。電圧変換部5の低電圧側端子間電圧とは、低電圧バッテリ3に接続される電圧変換部5の端子間の電圧である。
【0049】
図4に示すように、時刻t1において、車両1がイグニッションオンされると、図示しないスタータの駆動により、短期ソーク及び長期ソークのいずれの場合も電圧変換部5の低電圧側端子間電圧及びPb電流が一時的に低下する。さらに、エンジン回転数が上昇する。
【0050】
低電圧側端子間電圧及びPb電流の一時的な低下の後は、低電圧バッテリ3の充電に伴い、短期ソーク及び長期ソークのいずれの場合も電圧変換部5の低電圧側端子間電圧がOCV以上の適正充電電圧となる。また、Pb電流は、充電側に遷移、すなわち充電電流として増加する。長期ソークよりも短期ソークの場合の方が充電電流が大きいのは、短期ソークの方が長期ソークの場合よりも電気的な負荷が小さいためである。
【0051】
その後、時刻t2において、エンジン2がアイドルストップされる。次いで、長期ソークの場合、時刻t3においてPb電流が所定値未満となると、低電圧バッテリ3が満充電であると判定されるが、そのまま充電が継続される。
【0052】
このため、長期ソークの場合、時刻t3の経過後も電圧変換部5の低電圧側端子間電圧がOCV以上の適正充電電圧に維持される。
【0053】
その後、時刻t4において、エンジン2がアイドルストップから復帰、すなわち再始動する。次いで、短期ソークの場合、時刻t5においてPb電流が所定値未満となり低電圧バッテリ3が満充電であると判定されると、低電圧バッテリ3の充放電電流が0[A]になるような電圧に電圧変換部5の低電圧側端子間電圧が遷移する。これにより、短期ソークの場合は、低電圧バッテリ3の充電が終了する。
【0054】
長期ソークの場合は、時刻t5の経過後も充電が継続され、所定の充電継続時間が経過したタイミングで当該充電が終了する。
【0055】
以上のように、本実施例に係る充電装置は、車両1がイグニッションオンされた際にイグニッションオフ時間が所定時間以上であると判定された場合、満充電判定によって低電圧バッテリ3が満充電であると判定された後も低電圧バッテリ3の充電を継続して行うよう、電圧変換部5の出力電圧を制御する構成を有する。
【0056】
この構成により、本実施例に係る充電装置は、イグニッションオフ時間が所定時間以上である場合には、低電圧バッテリ3を過充電状態とし電解液をガス化させることで発生する気泡の浮力によって電解液を攪拌することができる。
【0057】
これにより、本実施例に係る充電装置は、エンジンの自動停止機能を備える車両に搭載される低電圧バッテリ3であっても、電解液の濃度を均一化することができ、当該低電圧バッテリ3のバッテリ性能が低下することを防止することができる。
【0058】
また、本実施例に係る充電装置は、電解液を撹拌する必要のない短期ソークの場合は低電圧バッテリ3に対する過充電を行わないので、過充電が不要な場合には電圧変換部5の出力電圧を低下させることができ、燃費が悪化することを防止できる。
【0059】
なお、本実施例においては、図4に示すように長期ソークの場合において低電圧バッテリ3が満充電であると判定された後は、電圧変換部5の出力電圧を一定の電圧(本実施例では、適正充電電圧)に維持する構成としたが、これに限らず、例えば次の変形例のように構成してもよい。
【0060】
図5は、本実施例に係る充電装置の変形例の作用を説明するタイミングチャートの一例である。
【0061】
上記変形例では、制御装置10は、満充電であると判定された後の低電圧バッテリ3の充電としてパルス充電を行うようになっている。パルス充電においては、低電圧バッテリ3の充電電圧が漸増及び漸減するよう電圧変換部5の出力電圧を制御する。
【0062】
したがって、上記変形例では、図5に示すように、時刻t3において低電圧バッテリ3が満充電であると判定されると、低電圧バッテリ3の充電がパルス充電に切り替えられることで、電圧変換部5の低電圧側端子間電圧及びPb電流がパルス状に遷移する。
【0063】
上記変形例において、制御装置10は、パルス充電における電圧変換部5の出力電圧の単位時間当たりの変化量が例えば1[V]/sよりも遅くなるよう、電圧変換部5の出力電圧を制御する。
【0064】
ここで、エンジン2の始動直後は、エンジン回転数が安定しないことから発電機の発電電圧も不安定となるため、低電圧バッテリ3に接続される電装負荷6の電圧も影響を受ける可能性がある。
【0065】
上記変形例によれば、上述のようなパルス充電を行うため、低電圧バッテリ3の満充電後の充電継続に際して低電圧バッテリ3に接続される電装負荷6が電圧変換部5の出力電圧の変動の影響を受けることを抑制できる。したがって、上記のようなエンジン2の始動直後における電装負荷6の電圧への影響も小さくすることができる。
【0066】
また、上記変形例では、パルス充電によって、例えば、電圧変動に伴う表示計器類のちらつき等を抑制することができる。
【0067】
このように、上記変形例によれば、低電圧バッテリ3における電解液の撹拌性を向上させつつ、乗員に違和感を与えることを抑制することができる。
【0068】
さらに、上記変形例によれば、パルス充電によって電気的振動を与えることで、電極に付着しているサルフェーションを分解、除去することもでき、低電圧バッテリ3の長寿命化を図ることができる。
【0069】
また、本実施例においては、イグニッションオフ時間が所定時間以上であるか否かの判定に基づき、それぞれ異なる値を長期放置充電時間にセットする構成としたが、これに限らず、例えば放電深度(DOD:Depth of Discharge)が所定深度以下であるか否かの判定に基づき、それぞれ異なる値を長期放置充電時間にセットする構成としてもよい。
【0070】
DODは、低電圧バッテリ3の放電容量に対する放電量の比である。制御装置10は、例えば、放電中の低電圧バッテリ3の放電電流の積算値と低電圧バッテリ3の放電容量とに基づきDODを算出することができる。制御装置10は、例えば、算出したDODに基づき低電圧バッテリ3が劣化していると判定した場合には、メータ装置に設けられた警告表示等によって運転者にバッテリ交換を促す構成としてもよい。
【0071】
また、本実施例においては、長期ソークの場合に長期放置充電時間にセットされる所定の充電継続時間を一定時間としたが、これに限らず、イグニッションオフ時間の長さに応じて所定の充電継続時間を可変としてもよい。
【0072】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0073】
1 車両
2 エンジン
3 低電圧バッテリ
4 高電圧バッテリ
5 電圧変換部
6 電装負荷
7 タイマ
10 制御装置(制御部)
11 イグニッションスイッチ
12 クランク角センサ
13 アクセルセンサ
14 車速センサ
31 低電圧バッテリセンサ
図1
図2
図3
図4
図5