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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車載用カメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/71 20230101AFI20240814BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240814BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
H04N23/71
G03B15/00 V
G03B7/091
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020207969
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094850
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】西川 雅人
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-073927(JP,A)
【文献】特開2018-006861(JP,A)
【文献】特開2017-017480(JP,A)
【文献】特開2018-037061(JP,A)
【文献】特開2010-041668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/71
G03B 15/00
G03B 7/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車(80)のウインドシールド(88)の後方に設置されて前記自車の前方を撮像する撮像部(10)と、前記撮像部の露光を制御する露光制御部(21)と、前記撮像に基づく画像処理を行う画像処理部(22)と、を有する車載用カメラ(60)において、
前記自車の前方に、輝度が自車進行方向において所定基準以上変わると認められる輝度境界(B)があるか否かの境界判定を行う境界判定部(41)と、
前記輝度境界があると判定されたことを条件に境界対処を行うことにより、前記自車が前記輝度境界を通過する際に、前記露光と前記画像処理における輝度設定とのうちの少なくともいずれか一方を、前記境界対処を行わない場合に比べて素早く変更させる対処部(42)と、
前記自車の速度が閾速度よりも低い低速状態であるか否かを判定する低速判定部(31)と、
を有し、
前記低速状態であると判定されたことを条件に、前記境界判定において前記輝度境界があると判定することを禁止する、車載用カメラ。
【請求項2】
前記撮像部よりも下方において、前記自車内における光源(87)の光が前記ウインドシールドに反射して前記撮像部に取り込まれるのを遮るように、前方に突出するフード(52)を有する請求項1に記載の車載用カメラ。
【請求項3】
前記境界判定部は、前記自車よりも前方の近傍領域(A1)の輝度(a1)と、前記近傍領域よりも前方の遠方領域(A2)の輝度(a2)とに基づいて前記境界判定を行う、請求項1又は2に記載の車載用カメラ。
【請求項4】
前記対処部は、前記自車が前記輝度境界を通過する前に、前記変更を開始させ、前記自車が前記輝度境界を通過した後に、前記変更を終了させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の車載用カメラ。
【請求項5】
前記自車のヨーレートが閾ヨーレートよりも高い高ヨーレート状態であるか否かを判定する高ヨーレート判定部(32)を有し、
前記高ヨーレート状態であると判定されたことを条件に、前記境界判定において前記輝度境界があると判定することを禁止する、請求項1~のいずれか1項に記載の車載用カメラ。
【請求項6】
前記自車の外界の輝度が閾輝度よりも低い低輝度状態であるか否かを判定する低輝度判定部(33)を有し、
前記境界判定部は、前記低輝度状態であると判定されたことを条件に、前記境界判定において前記輝度境界があると判定することを禁止する、請求項1~のいずれか1項に記載の車載用カメラ。
【請求項7】
前記境界判定部は、前記自車の速度が所定速度よりも高い場合において前記境界判定を行うエリアよりも、前記自車の速度が前記所定速度よりも低い場合において前記境界判定を行うエリアの方が、前記自車に近くになるように制御する、請求項1~のいずれか1項に記載の車載用カメラ。
【請求項8】
前記境界判定部は、前記自車のヨーレートが所定ヨーレートよりも低い場合において前記境界判定を行うエリアよりも、前記自車のヨーレートが前記所定ヨーレートよりも高い場合において前記境界判定を行うエリアの方が、前記自車のヨーの方向側になるように制御する、請求項1~のいずれか1項に記載の車載用カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載用のカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のカメラの中には、次に示す撮像部と露光制御部と画像処理部とを有するものがある。撮像部は、自車のウインドシールドの後方に設置されて自車の前方を撮像する。露光制御部は、撮像部の露光を制御する。画像処理部は、撮像に基づく画像処理を行う。このような技術を示す文献としては、例えば次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-146014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のカメラにおいては、例えばスマートフォン等の車内光源の光が、ウインドシールドに反射して撮像部に取り込まれることにより、被写体の手前に車内光源が映り込む、車内光源の映り込みが発生するおそれがある。そのため、カメラの中には、撮像部の下方において、前方に突出するフードを有するものがある。
【0005】
このフードによれば、車内光源の光がウインドシールドに反射して撮像部に取り込まれるのを遮ることにより、車内光源の映り込みを抑制できる。しかしそのトレードオフとして、日差しの強い日向では、太陽からの光がウインドシールドを通過してフードの表面に反射してから、ウインドシールドに反射して撮像部に取り込まれることにより、被写体の手前に太陽が映り込む、太陽の映り込みが発生してしまう。
【0006】
そのため、日向では、露光制御部が露光を下げると共に、画像処理部がゲイン等の輝度設定を下げ、日蔭では、露光制御部が露光を上げると共に、画像処理部が輝度設定を上げる必要がある。
【0007】
しかしながら、例えば自車が走行により日向から日蔭に入った直後には、太陽の映り込みが急になくなる。その際、露光や輝度設定の増加調節が間に合わず、画像が過度に暗くなってしまうおそれがある。また、反対に、例えば自車が走行により日蔭から日向に入った直後には、太陽の映り込みが急に発生する。その際、露光や輝度設定の減少調節が間に合わず、画像が過度に明るくなってしまうおそれがある。
【0008】
なお、以上では、カメラがフードを有する場合について説明したが、フードを有しない場合においても、ウインドシールドを通過した太陽の光が、ダッシュボード等に反射してから、ウインドシールドに反射して撮像部に取り込まれることにより、太陽の映り込みが発生し得る。つまり、上記の課題は、カメラがフードを有する場合に顕著に発生するが、カメラがフードを有しない場合においても、発生し得る。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、自車が走行により日向及び日蔭の一方から他方に入った直後に、画像が過度に暗くなったり明るくなったりするのを抑制することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車載用カメラは、撮像部と露光制御部と画像処理部とを有する。前記撮像部は、自車のウインドシールドの後方に設置されて前記自車の前方を撮像する。前記露光制御部は、前記撮像部の露光を制御する。前記画像処理部は、前記撮像に基づく画像処理を行う。
【0011】
前記車載用カメラは、さらに境界判定部と対処部とを有する。前記境界判定部は、前記自車の前方に、輝度が自車進行方向において所定基準以上変わると認められる輝度境界があるか否かの境界判定を行う。前記対処部は、前記輝度境界があると判定されたことを条件に境界対処を行う。それにより、前記自車が前記輝度境界を通過する際に、前記露光と前記画像処理における輝度設定とのうちの少なくともいずれか一方を、前記境界対処を行わない場合に比べて素早く変更させる。
【0012】
本発明によれば、輝度境界があるか否かの境界判定を行い、輝度境界があると判定されたことを条件に、境界対処を行う。その境界対処により、自車が輝度境界を通過する際に、露光と画像処理における輝度設定とのうちの少なくともいずれか一方を、境界対処を行わない場合に比べて素早く変更させる。そのため、自車が走行により日向及び日蔭の一方から他方に入った直後に、画像が過度に暗くなったり明るくなったりするのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のカメラを示す斜視図
図2】カメラ及びその周辺を示す側面図
図3】カメラ及びその周辺を示す模式図
図4】カメラ及びその周辺を示す側面図
図5】自車の前方の例を示す斜視図
図6】光の強さの推移と、露光・ゲイン等の推移とのイメージを示すグラフ
図7】自車が交差点で曲がる直前の様子を示す平面図
図8】自車がカーブを走行している様子を示す平面図
図9】自車が夜間に走行している様子を示す平面図
図10】各判定の流れの例を示すフローチャート
図11】第2実施形態において、自車が交差点で曲がる直前の様子を示す平面図
図12】第3実施形態において、自車がカーブを走行している様子を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の車載用のカメラ60を示す斜視図である。以下では、自車80の前方を「前」といい、自車80の後方を「後」といい、自車80の車幅方向を「左右」という。カメラ60は、自車80の前方の所定範囲が撮像範囲となるように、例えば、ウインドシールド88よりも後方における、運転手の視界においてはルームミラーに隠れる位置等に設置される。
【0016】
カメラ60は、筐体50と、筐体50のレンズ孔51から前方に突出する形で設置されている撮像部10とを有し、撮像部10の前端には、レンズ11が取り付けられている。筐体50は、レンズ11よりも下方において前方に突出するフード52を有する。フード52は、前後左右に広がる板状の形状をしている。
【0017】
図2は、カメラ60及び周辺を示す側面図である。フード52は、例えばスマートフォン等の車内光源87の光が、破線で示すように、ウインドシールド88で反射してレンズ11に取り込まれるのを遮ることにより、被写体92の手前に車内光源87が映り込む、車内光源87の映り込みを回避する。
【0018】
図3は、本実施形態のカメラ60及びその周辺を示す模式図である。撮像部10は、前述のレンズ11の他に、イメージセンサ12を有する。イメージセンサ12は、例えば画素毎にフォトダイオードを有し、フォトダイオードに下限値以上かつ上限値以下の強さの光が照射されると、その照射光の強さに応じた電気信号を出力する。イメージセンサ12は、例えばCCDセンサであってもよいし、CMOSセンサであってもよい。
【0019】
カメラ60は、前述の筐体50及び撮像部10の他に、制御部20を有する。制御部20は、CPU、ROM、RAM等を有する電子制御ユニット(ECU)であり、筐体50の内側に収納されている。制御部20は、露光制御部21と画像処理部22とを有する。
【0020】
露光制御部21は、シャッタ時間や絞りの制御である露光制御により、イメージセンサ12に照射される光の強さを調節する。具体的には、露光制御部21は、イメージセンサ12に照射される光の強さが強くなった場合には露光を小さくし、イメージセンサ12に照射される光の強さが弱くなった場合には露光を大きくする。それにより、イメージセンサ12に照射される光の強さを、前述の下限値以上かつ上限値以下に調節する。イメージセンサ12に照射される光の強さが下限値以下になると、露光不足としてのいわゆる「黒つぶれ」が発生し、上限値以上になると、露光オーバーとしてのいわゆる「白飛び」が発生してしまうからである。
【0021】
画像処理部22は、イメージセンサ12から出力される電気信号に基づいて、画像を生成する。その際、画像処理部22は、トーンカーブ、ゲイン等の輝度設定を制御する。具体的には、画像処理部22は、画像における輝度が低くなった場合には、トーンカーブを上げつつゲインを上げることにより、画像におけるコントラストを上げつつ輝度を上げる。他方、画像における輝度が高くなった場合には、トーンカーブを下げつつゲインを下げることにより、画像におけるコントラストを下げつつ輝度を下げる。それにより、画像におけるコントラスト及び輝度が適切な範囲内に収まるように制御する。以下では、トーンカーブ及びゲインを「ゲイン等」という。
【0022】
カメラ60は、撮像部10及び制御部20により取得した画像を、運転支援装置86に出力する。その画像に基づいて、運転支援装置86は、例えば、レーンキープ制御、オートクルーズ制御、プリクラッシュセーフティ制御等の運転支援を実施する。
【0023】
次に、本実施形態で解決すべき課題について説明する。図4は、カメラ60及びその周辺を示す側面図である。本実施形態によれば、カメラ60がフード52を有するため、前述の通り、車内光源87の映り込みを回避できる。しかしそのトレードオフとして、図4に示すように、日差しの強い日向では、太陽91の光がウインドシールド88を通過してフード52の表面に反射してから、ウインドシールド88で反射してレンズ11に取り込まれることにより、被写体92の手前に太陽91が映り込む、太陽91の映り込みが発生してしまう。
【0024】
そのため、日向では、露光制御部21が露光を下げるように制御すると共に、画像処理部22がゲイン等を下げるように制御する。他方、日蔭では、露光制御部21が露光を上げるように制御すると共に、画像処理部22がゲイン等を上げるように制御する。
【0025】
しかしながら、例えば自車80が走行により日向から日蔭に入った直後には、太陽91の映り込みが急になくなる。その際、露光の増加調節が間に合わず、黒つぶれ等が発生したり、ゲイン等の増加調節が間に合わず、画像が過度に暗くなってしまったりするおそれがある。また、反対に、例えば自車80が走行により日蔭から日向に入った直後には、太陽91の映り込みが急に発生する。その際、露光の減少調節が間に合わず、白飛び等が発生したり、ゲイン等の減少調節が間に合わず、画像が過度に明るくなってしまったりするおそれがある。
【0026】
そこで、このような課題を解決すべく、制御部20は、さらに境界判定部41と対処部42とを有する。
【0027】
図5は、自車80の前方の例を示す斜視図である。境界判定部41は、自車80の前方に、輝度が自車進行方向において所定基準以上変わると認められる輝度境界Bがあるか否かの境界判定を行う。具体的には、境界判定部41は、自車80の前方にある近傍領域A1の輝度(a1)に対する、近傍領域A1よりも前方にある遠方領域A2の輝度(a2)の割合である輝度比率(a2/a1)が、1よりも小さい所定の下限比率よりも小さいか否か、及び1よりも大きい所定の上限比率よりも大きいか否か判定する。そして、輝度比率(a2/a1)が下限比率よりも小さいと判定した場合、日向から日蔭への輝度境界Bがあると判定し、輝度比率(a2/a1)が上限比率よりも大きいと判定した場合、日蔭から日向への輝度境界Bがあると判定する。他方、輝度比率(a2/a1)が下限比率よりも大きく且つ上限比率よりも小さい場合、輝度境界Bがないと判定する。
【0028】
近傍領域A1は、例えば、自車80よりも所定距離(例えば数メートル~数十メートル)前方の所定領域(例えば、縦:数メートル、横:数メートル)とすることができる。そして、遠方領域A2は、近傍領域A1よりも所定距離前方の所定領域とすることができる。そして、近傍領域A1の輝度(a1)は、画像内における近傍領域A1の平均の輝度とし、遠方領域A2の輝度(a2)は、画像内における遠方領域A2の平均の輝度とすることができる。
【0029】
より具体的には、境界判定部41は、例えば、画像内の位置と自車80からの実際の距離との対応関係に基づいて、画像内における近傍領域A1及び遠方領域A2を定めてもよいし、画像認識や、レーダーとのフュージョン等により、画像内における近傍領域A1及び遠方領域A2を定めてもよい。
【0030】
対処部42は、境界判定部41により、日向から日蔭への輝度境界Bがあると判定されたことを条件に、自車80が輝度境界Bを通過する際に露光及びゲイン等を増加させる境界対処を行う。また、対処部42は、境界判定部41により、日蔭から日向への輝度境界Bがあると判定されたことを条件に、自車80が輝度境界Bを通過する際に露光及びゲイン等を減少させる境界対処を行う。具体的には、それらの境界対処における露光の調節は、対処部42が露光制御部21に働きかけることにより行い、ゲイン等の調節は、対処部42が画像処理部22に働きかけることにより行う。それらの境界対処により、露光及びゲイン等を、境界対処を行わない場合に比べて素早く適切な大きさに変更させる。その境界対処の詳細について、以下に説明する。
【0031】
図6は、撮像部10に照射される光の強さの推移と、露光・ゲイン等の推移とのイメージを示すグラフである。この図6の左寄り部分に示すように、自車80が日向から日蔭への輝度境界Bを通過する際には、境界対処として、露光及びゲイン等を上げる。このとき、輝度境界Bを通過する若干前から、露光及びゲイン等の上昇を開始させる。それにより、破線で示す境界対処なしの場合に比べて、露光及びゲイン等を素早く上昇させることができる。なお、この破線で示す境界対処なしの場合は、自車80が輝度境界Bを通過した後に、露光制御部21による前述の照射される光の強さに応じて露光を調節する機能により、露光が上昇すると共に、画像処理部22による前述の画像の輝度に応じてゲイン等を調節する機能により、ゲイン等が上昇する場合である。
【0032】
さらにこの境界対処を行うとき、露光及びゲイン等の上昇速度、すなわち図6における露光・ゲイン等の正の傾きを、境界対処なしの場合に比べて、大きくすることが好ましい。それによっても、境界対処なしの場合に比べて、露光及びゲイン等を素早く上昇させることができる。そして、自車80が輝度境界Bを通過した後に、露光及びゲイン等の上昇を終了させる。これにより、露光及びゲイン等の上昇開始から終了までの期間である境界対処期間T1を、自車80が輝度境界Bを通過するタイミングt1に合わせることができる。
【0033】
他方、この図6の右寄り部分に示すように、自車80が日向から日蔭への輝度境界Bを通過する際には、境界対処として、露光及びゲイン等を下げる。このときも、輝度境界Bを通過する若干前から、露光及びゲイン等の減少を開始させる。それにより、破線で示す境界対処なしの場合に比べて、露光及びゲイン等を素早く減少させることができる。さらにこの境界対処を行うとき、露光及びゲイン等の減少速度、すなわち図6における露光・ゲイン等の負の傾きを、境界対処なしの場合に比べて、大きくすることが好ましい。それによっても、境界対処なしの場合に比べて、露光及びゲイン等を素早く減少させることができる。そして、自車80が輝度境界Bを通過した後に、露光及びゲイン等の減少を終了させる。これにより、露光及びゲイン等の減少開始から終了までの期間である境界対処期間T2を、自車80が輝度境界Bを通過するタイミングt2に合わせることができる。
【0034】
以上に示した境界対処によれば、自車80が日向から日蔭への輝度境界Bを通過するタイミングで、露光及びゲイン等を素早く上げ、自車80が日陰から日向への輝度境界Bを通過するタイミングで、露光及びゲイン等を素早く下げることができる。そのため、自車80が輝度境界Bを通過した直後に、黒つぶれや白飛びが発生したり、画像が過度に暗くなったり明るくなったりするのを、抑制できる。よって、上記の課題を解決できる。
【0035】
制御部20は、以上に示した境界対処が誤作動しないように、さらに低速判定部31と高ヨーレート判定部32と低輝度判定部33とを有する。その詳細について、以下に説明する。
【0036】
図7は、自車80が交差点で曲がる直前の様子を示す平面図である。このように、自車80が交差点で曲がる直前において、自車前方に破線で示すように近傍領域A1と遠方領域A2とを設定して境界判定を行った場合には、自車80が通過しない直進領域において、境界判定を行ってしまう。さらに、その境界判定において、輝度境界Bがあると判定された場合には、自車80が通過しない直進領域に輝度境界Bがあることに基づいて、境界対処を実施してしまう。また、自車80と先行車との車間が詰まっている場合には、先行車によって撮像部10の視界が遮られるため、境界判定を適切に行うことができない。
【0037】
そこで、低速判定部31は、自車80の速度が閾速度よりも低い低速状態であるか否かを判定し、低速状態であると判定したことを条件に、境界判定において輝度境界Bがあると判定することを禁止する。低速状態である場合には、左折や右折等のために自車80が減速している可能性や、車間が詰まっている可能性が高いからである。この禁止により、自車80が通過しない直進領域に輝度境界Bがあることに基づいて境界対処を実施してしまうといった弊害や、先行車によって撮像部10の視界が遮られているにも関わらず、境界判定をしてしまうといった弊害を抑制できる。
【0038】
図8は、自車80がカーブを走行している様子を示す平面図である。このように、自車80がカーブを走行している際に、自車前方に破線で示すように近傍領域A1と遠方領域A2とを設定して境界判定を行った場合には、自車80が通過しない自車前方領域において、境界判定を行ってしまう。さらに、その境界判定において、輝度境界Bがあると判定された場合には、自車80が通過しない自車前方領域に輝度境界Bがあることに基づいて、境界対処を実施してしまう。そこで、高ヨーレート判定部32は、自車80のヨーレートが閾ヨーレートよりも高い高ヨーレート状態であるか否かを判定し、高ヨーレート状態であると判定したことを条件に、境界判定において輝度境界Bがあると判定することを禁止する。この禁止により、自車80が通過しない自車前方領域に輝度境界Bがあることに基づいて、境界対処を実施してしまうといった弊害を抑制できる。
【0039】
図9は、自車80が夜間に走行している様子を示す平面図である。夜間等においては、路面における自車80のヘッドライト89等により照らされている部分とそれ以外の部分との間を、輝度境界Bと認識してしまうおそれがある。そこで、低輝度判定部33は、自車80の外界の輝度が閾輝度よりも低い低輝度状態であるか否かを判定する。このような判定は、例えば、イメージセンサ12に取り込まれる光の量と露光とに基づいて判定することができる。そして、低輝度判定部33は、低輝度状態であると判定したことを条件に、境界判定において輝度境界Bがあると判定することを禁止する。それにより、路面におけるヘッドライト等により照らされている部分とそれ以外の部分との間を、輝度境界Bと認識してしまうといった弊害を抑制できる。
【0040】
図10は、以上に示した各判定の流れの例を示すフローチャートである。このフローは、例えば所定時間毎に繰り返し行われる。まず、S101において、低速判定部31が、低速状態であるか否かを判定する。低速状態であると判定した場合(S101:YES)、境界判定を行うことなく、フローを終了する。他方、S101において、低速状態ではないと判定した場合、S102に進む。
【0041】
そのS102では、高ヨーレート判定部32が、高ヨーレート状態であるか否かを判定する。高ヨーレート状態であると判定した場合(S102:YES)、境界判定を行うことなく、フローを終了する。他方、S102において、高ヨーレート状態ではないと判定した場合、S103に進む。
【0042】
そのS103では、低輝度判定部33が、低輝度状態であるか否かを判定する。低輝度状態であると判定した場合(S103:YES)、境界判定を行うことなく、フローを終了する。他方、S103において、低輝度状態ではないと判定した場合、S104に進む。
【0043】
そのS104では、境界判定部41が、輝度境界Bがあるか否かの境界判定を行う。輝度境界Bがないと判定した場合(S104:NO)、境界対処を行うことなく、フローを終了する。他方、S104において、輝度境界Bがあると判定した場合(S104:YES)、S105に進み、対処部42により境界対処を実施した後、フローを終了する。
【0044】
以下に本実施形態の効果をまとめる。カメラ60がフード52を有するため、車内光源87の映り込みを抑制できる。
【0045】
低速判定部31は、低速状態であるか否かを判定し、低速状態であると判定したことを条件に、輝度境界Bがあると判定することを禁止する。そのため、前述の通り、自車80が通過しない直進領域に輝度境界Bがあることに基づいて境界対処を実施してしまうといった弊害や、先行車によって撮像部10の視界が遮られているにも関わらず、境界判定をしてしまうといった弊害を抑制できる。
【0046】
高ヨーレート判定部32は、高ヨーレート状態であるか否かを判定し、高ヨーレート状態であると判定したことを条件に、輝度境界Bがあると判定することを禁止する。そのため、前述の通り、自車80が通過しない自車前方領域に輝度境界Bがあることに基づいて、境界対処を実施してしまうといった弊害を抑制できる。
【0047】
低輝度判定部33は、低輝度状態であるか否かを判定し、低輝度状態であると判定したことを条件に、輝度境界Bがあると判定することを禁止する。そのため、前述の通り、路面におけるヘッドライト89等により照らされている部分とそれ以外の部分との間を、輝度境界Bと認識してしまうといった弊害を抑制できる。
【0048】
境界判定部41は、近傍領域A1の輝度と遠方領域A2の輝度とに基づいて輝度境界Bがあるか否かの境界判定を行う。そのため、自車前方の輝度の違いに基づいて、境界判定を実施できる。
【0049】
対処部42は、境界判定において輝度境界Bがあると判定されたことを条件に、境界対処を行う。その境界対処により、自車80が輝度境界Bを通過する前に、露光及びゲイン等の変更を開始させる。そのため、境界対処なしの場合に比べて、露光及びゲイン等を素早く変更できる。そのため、自車80が走行により日向及び日蔭の一方から他方に入った直後に、黒つぶれや白飛びが発生したり、画像が過度に暗くなったり明るくなったりするのを抑制できる。
【0050】
そして、境界対処における露光及びゲイン等の変更は、自車80が輝度境界Bを通過した後に終了する。そのため、境界対処期間T1,T2が、自車80が輝度境界Bを通過するタイミングt1,t2に合わせられる。
【0051】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。以下の実施形態においては、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等について同一の符号を付する。本実施形態においては、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0052】
図11は、自車80が交差点で曲がる直前の様子を示す平面図である。前述の通り、自車80の速度が低い場合には、左折や右折等のために自車80が減速している可能性や、車間が詰まっている可能性が高い。そこで、境界判定部41は、自車80の速度が所定速度よりも高い場合において境界判定を行うエリア(破線で示すA1,A2)よりも、自車80の速度が所定速度よりも低い場合において境界判定を行うエリア(実線で示すA1,A2)の方が、自車80に近くなるように制御する。より具体的には、境界判定部41は、例えば自車80の速度がより低いほど、近傍領域A1及び遠方領域A2をより自車80の近くに設定する。
【0053】
本実施形態によれば、自車80の速度が低い場合において境界判定を行うエリアを、自車80に近くに設定する。そのため、左折や右折等により自車80が通過しない直進領域に輝度境界Bがあることに基づいて境界対処を実施してしまうといった弊害や、車間が詰まって先行車により撮像部10の視界が遮られている領域について境界判定をしてしまうといった弊害を極力回避しつつ、境界判定を実施できる。
【0054】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。本実施形態においては、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0055】
図12は、自車80がカーブを走行している様子を示す平面図である。前述の通り、自車80がカーブを走行している際に、自車前方に破線で示すように近傍領域A1と遠方領域A2とを設定して境界判定を行った場合には、自車80が通過しない自車前方領域において、境界判定を行ってしまう。そこで、境界判定部41は、自車80のヨーレートが所定ヨーレートよりも低い場合において境界判定を行うエリア(破線で示すA1,A2)よりも、自車80のヨーレートが所定ヨーレートよりも高い場合において境界判定を行うエリア(実線で示すA1,A2)の方が、自車80のヨーの方向側になるように制御する。より具体的には、境界判定部41は、例えば自車80のヨーレートがより大きいほど、近傍領域A1及び遠方領域A2をより自車80のヨーの方向側に設定する。
【0056】
本実施形態によれば、自車80のヨーレートが高い場合において境界判定を行うエリアを、自車80のヨーの方向側に設定する。そのため、自車80が通過しない自車前方領域において境界判定を行ってしまうといった弊害を極力回避しつつ、境界判定を実施できる。
【0057】
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
【0058】
各実施形態では、カメラ60は、運転支援装置86に画像を送信するための運転支援用のカメラであるが、これに代えて、ドライブレコーダ用のカメラにしてもよい。各実施形態では、カメラ60はフード52を有しているが、フード52を有していなくてもよい。各実施形態では、1つの筐体50に、撮像部10と制御部20とが設置されているが、これに代えて、撮像部10と制御部20とが別体的に設けられていてもよい。
【0059】
各実施形態では、制御部20が、低速判定部31と高ヨーレート判定部32と低輝度判定部33とを有しているが、これらのうちの一部又は全部を省いてもよい。また例えば、第2実施形態と第3実施形態との両方を含む態様を実施するようにしてもよい。
【0060】
各実施形態では、境界判定部41は、近傍領域A1の輝度(a1)に対する遠方領域A2の輝度(a2)の割合である輝度比率(a2/a1)に基づいて、境界判定を行っている。これに代えて、近傍領域A1の輝度(a1)と遠方領域A2の輝度(a2)との差である輝度差(a2-a1)に基づいて、境界判定を行ってもよい。具体的には、輝度差(a2-a1)が負の所定閾値よりも小さい箇所、すなわち負の輝度差(a2-a1)の絶対値が負の所定閾値の絶対値よりも大きい箇所に、日向から日蔭への輝度境界Bがあり、輝度差(a2-a1)が正の所定閾値よりも大きい箇所に、日蔭から日向への輝度境界Bがあると判定してもよい。
【0061】
各実施形態では、境界判定部41は、近傍領域A1の輝度(a1)と遠方領域A2の輝度(a2)とに基づいて、境界判定を行っている。これに代えて、自車前方の輝度を自車進行方向に微分した微分値に基づいて、境界判定を行ってもよい。具体的には、微分値が負の所定閾値よりも小さい箇所、すなわち負の微分値の絶対値が負の所定閾値の絶対値よりも大きい箇所に、日向から日蔭への輝度境界Bがあり、微分値が正の所定閾値よりも大きい箇所に、日蔭から日向への輝度境界Bがあると判定してもよい。
【0062】
各実施形態では、境界判定部41は、日向から日蔭への輝度境界Bと、日蔭から日向への輝度境界Bとの両方の有無を判定しているが、一方の有無のみを判定するようにしてもよい。
【0063】
各実施形態では、対処部42は、境界対処において露光とゲイン等との両方を調節しているが、これに代えて、露光及びゲイン等のうちの一方のみを調節するようにしてよい。
【0064】
各実施形態では、対処部42は、境界対処として、自車80が輝度境界Bを通過する前に、露光やゲイン等の変更を開始させ、自車80が輝度境界Bを通過した後に、露光やゲイン等の変更を終了させている。これに代えて、自車80が輝度境界Bを通過する前に、露光やゲイン等の調節感度を上げ、自車80が輝度境界Bを通過した後に、露光やゲイン等の調節感度を下げて元の感度に戻すようにしてもよい。これによれば、自車80が輝度境界Bを通過した後に、露光やゲイン等の変更を開始することになるが、調節感度が上がっているため、露光やゲイン等を素早く調節できる。しかも、その後、調節感度を元の感度に戻すため、自車80が輝度境界Bを通過した直後以外において、調節感度の過剰により露光やゲイン等が不安定になってしまうといった弊害を、回避できる。
【0065】
第2実施形態では、境界判定部41は、自車80の速度が低い場合において境界判定を行うエリアが、自車80に近くなるように制御している。これに代えて又は加えて、自車80の速度が低い場合において境界判定を行うエリアが、小さくなるように制御してもよい。
【0066】
第3実施形態では、境界判定部41は、自車80のヨーレートが高い場合において境界判定を行うエリアが、自車80のヨーの方向側になるように制御している。これに代えて又は加えて、自車80のヨーレートが高い場合において境界判定を行うエリアが、小さくなるように制御してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…撮像部、21…露光制御部、22…画像処理部、41…境界判定部、42…対処部、60…カメラ、80…自車、88…ウインドシールド、B…輝度境界。
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図12