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特許7537267動力伝達装置、モータユニット、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】動力伝達装置、モータユニット、及び車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20240814BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F16H57/04 Q ZHV
H02K7/116
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020210172
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096913
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 翼
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
(72)【発明者】
【氏名】麻生 啓介
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-090979(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延びる第1軸を中心として回転可能な第1シャフトの軸方向一方側に接続されるギヤ部と、
前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、を備え、
前記ギヤ部は、
前記第1シャフトを回転可能に支持する第1ベアリングと、
第2軸を中心として回転可能な第2シャフトと、
前記第2シャフトを回転可能に支持する第2ベアリングと、
を有し、
前記第2軸は、前記第1軸と平行であって、前記第1軸よりも下方に配置され、
前記ギヤハウジングは、
前記第1ベアリングを保持する第1ベアリング保持部と、
前記第2ベアリングを保持する第2ベアリング保持部と、
前記第1ベアリングよりも下方に配置される第1通路と、
を有し、
前記第1ベアリング保持部及び前記第2ベアリング保持部は、軸方向に延びる筒状であって、
前記第1ベアリング保持部には、潤滑液が供給され、
前記第2ベアリング保持部は、前記第2軸を基準とする径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記第1ベアリングよりも下方に配置され、
前記第1通路の一方端部は、前記第1ベアリングを通じて前記第1ベアリング保持部と繋がり、
前記第1通路の他方端部は、前記開口部を通じて前記第2ベアリング保持部に繋がり、
前記第1通路の前記一方端部のうちの少なくとも軸方向他方側の端部は、前記第1ベアリングよりも軸方向他方側に配置される、動力伝達装置。
【請求項2】
前記第2軸は、前記第1軸よりも軸方向及び上下方向と垂直な方向の一方側に配置され、
前記第1通路は、傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記軸方向及び上下方向と斜めに交わり、前記第1通路の前記一方端部から前記他方端部に向かうにつれて下方に傾く、請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
水平方向に沿って延びる第1軸を中心として回転可能な第1シャフトの軸方向一方側に接続されるギヤ部と、
前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、を備え、
前記ギヤ部は、
前記第1シャフトを回転可能に支持する第1ベアリングと、
第2軸を中心として回転可能な第2シャフトと、
前記第2シャフトを回転可能に支持する第2ベアリングと、
を有し、
前記第2軸は、前記第1軸と平行であって、前記第1軸よりも下方に配置され、
前記ギヤハウジングは、
前記第1ベアリングを保持する第1ベアリング保持部と、
前記第2ベアリングを保持する第2ベアリング保持部と、
前記第1ベアリングよりも下方に配置される第1通路と、
を有し、
前記第1ベアリング保持部及び前記第2ベアリング保持部は、軸方向に延びる筒状であって、
前記第1ベアリング保持部には、潤滑液が供給され、
前記第2ベアリング保持部は、前記第2軸を基準とする径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記第1ベアリングよりも下方に配置され、
前記第1通路の一方端部は、前記第1ベアリングを通じて前記第1ベアリング保持部と繋がり、
前記第1通路の他方端部は、前記開口部を通じて前記第2ベアリング保持部に繋がり、
前記第1通路の前記他方端部は、前記第2ベアリングの軸方向一方側の端部に繋がり、
前記第2ベアリングの軸方向一方側の端部は、前記第1ベアリングの軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に配置される、動力伝達装置。
【請求項4】
水平方向に沿って延びる第1軸を中心として回転可能な第1シャフトの軸方向一方側に接続されるギヤ部と、
前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、を備え、
前記ギヤ部は、
前記第1シャフトを回転可能に支持する第1ベアリングと、
第2軸を中心として回転可能な第2シャフトと、
前記第2シャフトを回転可能に支持する第2ベアリングと、
を有し、
前記第2軸は、前記第1軸と平行であって、前記第1軸よりも下方に配置され、
前記ギヤハウジングは、
前記第1ベアリングを保持する第1ベアリング保持部と、
前記第2ベアリングを保持する第2ベアリング保持部と、
前記第1ベアリングよりも下方に配置される第1通路と、
を有し、
前記第1ベアリング保持部及び前記第2ベアリング保持部は、軸方向に延びる筒状であって、
前記第1ベアリング保持部には、潤滑液が供給され、
前記第2ベアリング保持部は、前記第2軸を基準とする径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記第1ベアリングよりも下方に配置され、
前記第1通路の一方端部は、前記第1ベアリングを通じて前記第1ベアリング保持部と繋がり、
前記第1通路の他方端部は、前記開口部を通じて前記第2ベアリング保持部に繋がり、
前記第1ベアリング保持部に収容され、前記第1軸を基準とする径方向に広がる環状部を有する供給制限部材をさらに備え、
前記環状部は、前記第1ベアリングよりも軸方向一方側に配置され、前記第1ベアリングの軸方向一方側の端部と軸方向に対向し、
前記環状部は、軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を有する、動力伝達装置。
【請求項5】
前記供給制限部材は、前記環状部の径方向内端部から軸方向他方側に延びる凸部をさらに有し、
前記凸部は、軸方向に延びる筒状の前記第1シャフトの軸方向一方側の端部に挿通される、請求項に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記凸部は、軸方向に延びる筒状である、請求項に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
水平方向に沿って延びる第1軸を中心として回転可能な第1シャフトの軸方向一方側に接続されるギヤ部と、
前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、を備え、
前記ギヤ部は、
前記第1シャフトを回転可能に支持する第1ベアリングと、
第2軸を中心として回転可能な第2シャフトと、
前記第2シャフトを回転可能に支持する第2ベアリングと、
を有し、
前記第2軸は、前記第1軸と平行であって、前記第1軸よりも下方に配置され、
前記ギヤハウジングは、
前記第1ベアリングを保持する第1ベアリング保持部と、
前記第2ベアリングを保持する第2ベアリング保持部と、
前記第1ベアリングよりも下方に配置される第1通路と、
を有し、
前記第1ベアリング保持部及び前記第2ベアリング保持部は、軸方向に延びる筒状であって、
前記第1ベアリング保持部には、潤滑液が供給され、
前記第2ベアリング保持部は、前記第2軸を基準とする径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記第1ベアリングよりも下方に配置され、
前記第1通路の一方端部は、前記第1ベアリングを通じて前記第1ベアリング保持部と繋がり、
前記第1通路の他方端部は、前記開口部を通じて前記第2ベアリング保持部に繋がり、
前記ギヤ部は、
前記第1軸と平行な第3軸を中心として回転可能な第1ギヤと、
前記第1シャフトの外周面に配置される第2ギヤと、
前記第2シャフトの外周面に配置されて、前記第2ギヤと噛み合う第3ギヤと、
前記第2シャフトの外周面に配置されて、前記第1ギヤと噛み合う第4ギヤと、
をさらに有し、
前記第1ギヤの下端部は、前記ギヤハウジングの下部に貯留された前記潤滑液の内部に配置され、
前記ギヤハウジングは、
前記第1ギヤよりも前記第3軸を基準とする径方向外方に配置され、上方が開口する受け皿部と、
前記受け皿部の軸方向一方側の端部と前記第1ベアリング保持部とを繋ぐ第2通路と、
をさらに有し、
前記受け皿部は、前記第1ギヤと前記第3軸を基準とする径方向に対向する突出部を有し、
前記突出部は、前記受け皿部の軸方向と垂直な方向における前記第1ギヤ側の端部の上端部において、前記第1ギヤの外周面に近づく方向に延びる、動力伝達装置。
【請求項8】
水平方向に沿って延びる第1軸を中心として回転可能な第1シャフトの軸方向一方側に接続されるギヤ部と、
前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、を備え、
前記ギヤ部は、
前記第1シャフトを回転可能に支持する第1ベアリングと、
第2軸を中心として回転可能な第2シャフトと、
前記第2シャフトを回転可能に支持する第2ベアリングと、
を有し、
前記第2軸は、前記第1軸と平行であって、前記第1軸よりも下方に配置され、
前記ギヤハウジングは、
前記第1ベアリングを保持する第1ベアリング保持部と、
前記第2ベアリングを保持する第2ベアリング保持部と、
前記第1ベアリングよりも下方に配置される第1通路と、
前記ギヤハウジングの軸方向他方側を覆い、前記第1軸と交差する方向に拡がる側板部と、
前記側板部から軸方向他方側に凹み、軸方向一方側に開口する凹部と、
前記側板部から軸方向一方側に延びて上側に開口する受け皿部と、
前記側板部の軸方向一方側の面に形成され、前記凹部に繋がる溝部と、
を有し、
前記第1ベアリング保持部及び前記第2ベアリング保持部は、軸方向に延びる筒状であって、
前記第1ベアリング保持部には、潤滑液が供給され、
前記第2ベアリング保持部は、前記第2軸を基準とする径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記第1ベアリングよりも下方に配置され、
前記第1通路の一方端部は、前記第1ベアリングを通じて前記第1ベアリング保持部と繋がり、
前記第1通路の他方端部は、前記開口部を通じて前記第2ベアリング保持部に繋がり、
前記第1通路の前記一方端部のうちの少なくとも軸方向他方側の端部は、前記第1ベアリングよりも軸方向他方側に配置され、
前記ギヤ部は、前記第1軸と平行な第3軸を中心に回転可能な第1ギヤをさらに有し、
前記受け皿部は、前記第1ギヤの外周面と径方向に対向する対向面を有し、
前記溝部は、前記対向面から前記第1ギヤの外周面に向かって下方に傾斜する、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の動力伝達装置と、
駆動源であるモータと、を備えるモータユニット。
【請求項10】
請求項に記載のモータユニットを有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置、モータユニット、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディファレンシャルリングギヤの回転により掻き揚げられたオイルが、電動モータからの駆動力が入力される入力軸を回転可能に支持する軸受に供給される駆動装置が知られている(特開2019-152236号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-152236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ギヤでオイルを掻き揚げる場合、入力軸のトルクをディファレンシャルギヤに伝達する減速装置などの奥まった部分に配置されるベアリングにオイルを供給し難い場合があった。
【0005】
本発明は、ベアリングを効果的に潤滑することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な動力伝達装置は、ギヤ部と、ギヤハウジングと、を備える。前記ギヤ部は、水平方向に沿って延びる第1軸を中心として回転可能な第1シャフトの軸方向一方側に接続される。前記ギヤハウジングは、前記ギヤ部を収容する。前記ギヤ部は、第1ベアリングと、第2シャフトと、第2ベアリングと、を有する。前記第1ベアリングは、前記第1シャフトを回転可能に支持する。前記第2シャフトは、前記第2軸を中心として回転可能である。前記第2ベアリングは、前記第2シャフトを回転可能に支持する。前記第2軸は、前記第1軸と平行であって、前記第1軸よりも下方に配置される。前記ギヤハウジングは、第1ベアリング保持部と、第2ベアリング保持部と、第1通路と、を有する。前記第1ベアリング保持部は、前記第1ベアリングを保持する。前記第2ベアリング保持部は、前記第2ベアリングを保持する。前記第1通路は、前記第1ベアリングよりも下方に配置される。前記第1ベアリング保持部及び前記第2ベアリング保持部は、軸方向に延びる筒状である。前記第1ベアリング保持部には、潤滑液が供給される。前記第2ベアリング保持部は、前記第2軸を基準とする径方向に貫通する開口部を有し、前記開口部は、前記第1ベアリングよりも下方に配置される。前記第1通路の一方端部は、前記第1ベアリングを通じて前記第1ベアリング保持部と繋がる。前記第1通路の他方端部は、前記開口部を通じて前記第2ベアリング保持部に繋がる。
【0007】
本発明の例示的なモータユニットは、上記の動力伝達装置と、駆動源であるモータと、を備える。
【0008】
本発明の例示的な車両は、上記のモータユニットを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の例示的な動力伝達装置、モータユニット、及び車両によれば、ベアリングを効果的に潤滑することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態のモータユニットの概念図である。
図2図2は、出力シャフトの断面図である。
図3図3は、ギヤハウジングの蓋部を取り外した状態の軸方向から見た図である。
図4図4は、ギヤハウジングの側板部の軸方向から見た図である。
図5図5は、受け皿部を拡大した斜視図である。
図6図6は、受け皿部を拡大した側面図である。
図7図7は、凹部および差動装置のケースを拡大した斜視図である。
図8図8は、溝部を拡大した斜視図である。
図9図9は、蓋部の内側の側面図である。
図10図10は、供給制限部材の斜視図である。
図11図11は、モータユニットを有する車両の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態にかかるモータユニットについて説明する。
【0012】
本明細書において、モータ2の回転軸J2と平行な方向をモータユニット1の「軸方向」とする。軸方向について、図1に示すとおり,動力伝達装置3側を軸方向一方側Nとし、モータ2側を軸方向他方側Tとする。また、所定の軸と直交する径方向を単に「径方向」と称し、所定の軸を中心とする周方向を単に「周方向」と称する。さらに、本明細書において「平行な方向」は、完全に平行な場合のみでなく、略平行な方向も含む。そして、所定の方向または平面に「沿って延びる」とは、厳密に所定の方向に延びる場合に加えて、厳密な方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0013】
<モータユニット1>
以下、図面を基に本発明の例示的な一実施形態にかかるモータユニット1について説明する。図1は、一実施形態のモータユニット1の概念図である。なお、図1は、あくまで概念図であり、各部の配置および寸法は、実際のモータユニット1と同じであるとは限らない。
【0014】
モータユニット1は、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、少なくともモータを動力源とする車両に搭載される。モータユニット1は、上記の車両の動力源として使用される。図11は、モータユニット1を有する車両200の一例を示す概略図である。なお、図11は、車両200を概念的に図示している。車両200は、モータユニット1と、バッテリー150と、を有する。バッテリー150は、モータユニット1に供給するための電力を蓄積する。モータユニット1は、車両200の例であれば、左右の前輪を駆動する。なお、モータユニット1は、少なくともいずれかの車輪を駆動すればよい。
【0015】
図1に示すように、モータユニット1は、駆動源であるモータ2と、モータ2の動力を伝達する動力伝達装置3と、を有する。図1に示すように、モータ2は、水平方向に延びる回転軸J2を中心として回転するロータ21と、ロータ21の径方向外側に位置するステータ25と、を有する。
【0016】
<モータ2>
モータ2は、直流のブラシレスモータである。モータ2は、不図示のインバータからの電力によって駆動される。モータ2は、ステータ25の内方にロータ21が回転可能に配置されたインナーロータ型モータである。
【0017】
<ロータ21>
ロータ21は、ステータ25に電力が供給されることで回転する。図1に示すように、ロータ21は、動力シャフト22と、ロータコア23と、ロータマグネット24と、を有する。ロータ21は、水平方向に延びる回転軸J2を中心として回転する。
【0018】
動力シャフト22は、回転軸J2を中心として回転する。動力シャフト22は、内部に回転軸J2に沿って貫通する中空部221を有する。つまり、動力シャフト22は、軸方向に延びる筒状である。動力シャフト22は、軸方向一方側Nに中空部221に潤滑液CLが流入する流入口220を有する。流入口220は、後述する蓋部62の後述する油路627とつながっている。
【0019】
動力シャフト22は、後述の第1ベアリング41、第2ベアリング42、第3ベアリング43および第4ベアリング44を介してモータハウジング5およびギヤハウジング6に回転可能に支持される。
【0020】
なお、動力シャフト22は、軸方向の中間部分で分割可能であってもよい。動力シャフト22が分割可能である場合、分割された動力シャフト22は、例えば、雄ねじおよび雌ねじを用いたねじカップリングを採用することが可能である。また、圧入、溶接等の固定方法にて接合してもよい。圧入、溶接等の固定方法を採用する場合、軸方向に延びる凹部および凸部を組み合わせるセレーションを採用してもよい。このような構成とすることで、回転を確実に伝達することが可能である。また、動力シャフト22は、単一の部材として形成されてもよい。
【0021】
ロータコア23は、例えば、薄板状の電磁鋼板を積層して形成される。ロータコア23は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア23には、複数のロータマグネット24が固定される。複数のロータマグネット24は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0022】
<ステータ25>
図1に示すように、ステータ25は、ステータコア26と、コイル27と、ステータコア26とコイル27との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ25は、モータハウジング5に保持される。ステータコア26は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に延びる複数の磁極歯(不図示)を有する。
【0023】
磁極歯に導線を巻き付けることでコイル27が形成される。コイル27は、ステータコア26の軸方向端面から突出するコイルエンド271を有する。
【0024】
<モータその他>
動力シャフト22の軸方向他方側Tの端部には、レゾルバ(不図示)が取り付けられる。レゾルバは、ロータ21の位置、すなわち、回転角度を検出する。また、モータハウジング5の内部の軸方向他方側Tの端部には、バスバ(不図示)が配置されている。バスバは、不図示のインバータユニットとコイル27とを接続し、コイル27に電力を供給する。
【0025】
<モータハウジング5>
図1に示すように、モータ2は、モータハウジング5の内部に収容される。モータハウジング5は、モータハウジング本体51と、ベアリングホルダ52とを有する。モータハウジング本体51およびベアリングホルダ52は、例えば、鉄、アルミ、これらの合金等の導電材料、換言すると、金属で形成されるが、これらに限定されない。なお、モータハウジング本体51およびベアリングホルダ52は、同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。接触部分での異種金属接触腐食を抑制するため、同一の材料で形成されていることが好ましい。
【0026】
<モータハウジング本体51>
モータハウジング本体51は、筒状である。モータハウジング本体51の軸方向一方側Nの端部は、後述するギヤハウジング6の側板部61にて覆われる。ステータコア26は、モータハウジング本体51の内部に固定される。なお、本実施形態のモータユニット1では、モータハウジング本体51と側板部61とは、単一の部材で形成される。このように、モータハウジング本体51と側板部61とを単一の部材で形成することで、モータハウジング5の剛性を高めることができる。
【0027】
<ベアリングホルダ52>
ベアリングホルダ52は、モータハウジング本体51の軸方向他方側Tに固定される。モータハウジング本体51の軸方向他方側Tの端部は、ベアリングホルダ52にて覆われる。ベアリングホルダ52のモータハウジング本体51への固定は、例えば、ねじによる固定を挙げることができるが、これに限定されず、ねじ込み、圧入等、ベアリングホルダ52をモータハウジング本体51に強固に固定できる方法を広く採用できる。
【0028】
これにより、モータハウジング本体51とベアリングホルダ52とは密着する。ここで、密着とは、部材内部の潤滑液CLが外部に漏れないおよび外部の水、埃、塵等の異物が侵入しない程度の密閉性を有していることを指す。密着については、以下同様の構成とする。
【0029】
ベアリングホルダ52には、動力シャフト22の軸方向他方側Tの端部を回転可能に保持する第3ベアリング43が取り付けられる。換言すると、動力シャフト22の軸方向他方側Tの端部は、第3ベアリング43を介して、モータハウジング5に回転可能に支持される。
【0030】
<動力伝達装置3>
動力伝達装置3の詳細について、図面を参照して説明する。モータユニット1において、動力伝達装置3は、モータ2の動力をモータユニット1の外部に配置されたシャフト(不図示)に伝達する。例えば、モータユニット1が車両の駆動に用いられる場合、外部のシャフトは車両の駆動軸である。図1に示すように、動力伝達装置3は、ギヤ部30と、ギヤ部30を収容するギヤハウジング6と、を有する。
【0031】
ギヤ部30は、減速装置31と、出力シャフト32とを有する。図1に示すように、減速装置31は、動力シャフト22に接続される。減速装置31は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置31は、モータ2から出力されるトルクを出力シャフト32へ伝達する。すなわち、ギヤ部30は、水平方向に沿って延びる回転軸J2を中心として回転する動力シャフト22の軸方向一方側Nに接続される。なお、回転軸J2は、本発明の「第1軸」の一例である。動力シャフト22は、本発明の「第1シャフト」の一例である。
【0032】
<減速装置31>
減速装置31は、メインドライブギヤ311と、中間ドリブンギヤ312と、ファイナルドライブギヤ313と、中間シャフト314と、を有する。換言すると、ギヤ部30は、メインドライブギヤ311と、中間ドリブンギヤ312と、ファイナルドライブギヤ313と、中間シャフト314と、を有する。なお、メインドライブギヤ311は、本発明の「第2ギヤ」の一例である。中間ドリブンギヤ312は、本発明の「第3ギヤ」の一例である。ファイナルドライブギヤ313は、本発明の「第4ギヤ」の一例である。中間シャフト314は、本発明の「第2シャフト」の一例である。モータ2から出力されるトルクは、動力シャフト22、メインドライブギヤ311、中間ドリブンギヤ312、中間シャフト314およびファイナルドライブギヤ313を介して出力シャフト32の第1ギヤ331へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置31は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0033】
メインドライブギヤ311は、動力シャフト22の外周面に配置される。メインドライブギヤ311は、動力シャフト22と同一の部材であってもよいし、別の部材であって強固に固定されてもよい。メインドライブギヤ311は、動力シャフト22とともに、回転軸J2を中心に回転する。
【0034】
中間シャフト314は、回転軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びる。中間シャフト314の両端は、ギヤハウジング6に第1中間ベアリング315および第2中間ベアリング316を介して中間軸J4周りに回転可能に支持される。換言すると、ギヤ部30は、第1中間ベアリング315および第2中間ベアリング316と、を有する。中間シャフト314は、中間軸J4を中心として回転可能である。第1中間ベアリング315および第2中間ベアリング316は、中間シャフト314を回転可能に支持する。中間軸J4は、回転軸J2と平行であって、回転軸J2よりも下方に配置される。また、中間軸J4は、回転軸J2よりも軸方向及び上下方向と垂直な方向の一方側に配置され、本実施形態では、軸方向及び上下方向と垂直な方向において回転軸J2よりも差動軸J5側に配置される。なお、中間軸J4は、本発明の「第2軸」の一例である。第2中間ベアリング316は、本発明の「第2ベアリング」の一例である。中間ドリブンギヤ312およびファイナルドライブギヤ313は、中間シャフト314の外周面に配置される。中間ドリブンギヤ312は、中間シャフト314と同一の部材であってもよいし、別の部材であって強固に固定されてもよい。ファイナルドライブギヤ313も中間ドリブンギヤ312と同様である。
【0035】
中間ドリブンギヤ312とファイナルドライブギヤ313とは、中間シャフト314と一体的に、中間軸J4を中心として回転する。中間ドリブンギヤ312は、メインドライブギヤ311に噛み合う。ファイナルドライブギヤ313は、出力シャフト32の第1ギヤ331と噛み合う。
【0036】
動力シャフト22のトルクは、メインドライブギヤ311から中間ドリブンギヤ312に伝達される。そして、中間ドリブンギヤ312に伝達されたトルクは、中間シャフト314を介してファイナルドライブギヤ313に伝達される。さらに、ファイナルドライブギヤ313から、出力シャフト32にトルクが伝達される。
【0037】
<出力シャフト32>
図2は、出力シャフト32の断面図である。図1図2に示すように、出力シャフト32は、軸方向一方側Nおよび他方側Tに配置されたシャフト本体321と、差動装置33と、を有する。すなわち、出力シャフト32は、差動装置33を有する。シャフト本体321は、円柱状であり、中心が回転軸J2と平行な差動軸J5と一致する。シャフト本体321は、減速装置31から伝達されたトルクによって、差動軸J5周りに回転される。なお、シャフト本体321に回転差が発生しない構成の場合、差動装置33を省略してもよい。この場合、出力シャフト32は、1本であり、後述の第1ギヤ331は、出力シャフト32に直接固定されてもよい。なお、以下の説明において、必要に応じて、出力シャフト本体321を、軸方向一方側Nの出力シャフト本体321N、軸方向他方側Tの出力シャフト本体321Tと称する場合がある。
【0038】
<差動装置33>
図2に示すように、差動装置33は、第1ギヤ331と、ケース332と、一対のピニオンギヤ333と、ピニオンシャフト334と、一対のサイドギヤ335と、を有する。すなわち、ギヤ部30は、出力シャフト32に取り付けられた第1ギヤ331を有する。一対のピニオンギヤ333、ピニオンシャフト334および一対のサイドギヤ335は、ケース332の内部に配置される。
【0039】
第1ギヤ331は、差動装置33のリングギヤである。第1ギヤ331は、ケース332の外面にねじ止めにて固定される。第1ギヤ331は、ファイナルドライブギヤ313と噛み合っている。第1ギヤ331およびケース332は、回転軸J2と平行な差動軸J5を中心として回転可能である。差動装置33のケース332は、後述するギヤハウジング6の凹部64に配置される。詳細は後述するが、ケース332は、第1出力ベアリング341および第2出力ベアリング342にて、ギヤハウジング6に回転可能に支持される。
【0040】
なお、第1ギヤ331のケース332への固定は、ねじ止めに限定されず、圧入、溶接、溶着等、第1ギヤ331をケース332に強固に固定できる方法を広く採用することができる。第1ギヤ331の下端部は、ギヤハウジング6の下部に貯留された潤滑油などの潤滑液CLの内部に配置される(図1参照)。そのため、第1ギヤ331が回転するとき、第1ギヤ331のギヤ歯によって潤滑液CLが掻き上げられる。第1ギヤ331にて掻き上げられた潤滑液CLによって、ギヤ部30の各ギヤ、ベアリングが潤滑または冷却される。また、掻き上げられた潤滑液CLは、後述の受け皿部63に貯められて、動力シャフト22を介してモータ2の冷却にも利用される。潤滑液CLによる、潤滑および冷却の詳細については、後述する。
【0041】
ピニオンシャフト334はケース332の内面から、差動軸J5と直交する方向に延びる。ピニオンシャフト334の両端は、ケース332の内面に固定される。ピニオンシャフト334には、一対のピニオンギヤ333が回転可能に取り付けられる。一対のピニオンギヤ333は、かさ歯車である。一対のピニオンギヤ333は、ピニオンシャフト334の周りにそれぞれ独立して回転可能である。
【0042】
各出力シャフト本体321は、ケース332の差動軸J5に沿う方向の両端からケース332の内部に挿入される。出力シャフト本体321はケース332と独立して回転可能に配置される。一対のサイドギヤ335は、各出力シャフト本体321それぞれのケース332の内部に挿入された部分に固定される。そして、一対のサイドギヤ335は、かさ歯車であり、一対のピニオンギヤ333と、噛み合っている。
【0043】
差動装置33において、各出力シャフト本体321に回転差がないとき、一対のピニオンギヤ333は、ピニオンシャフト334を中心とする回転が停止した状態で、ケース332とともに差動軸J5周りに回転する。そして、一対のピニオンギヤ333と噛合した一対のサイドギヤ335には、ケース332からトルクが伝達される。これにより、各出力シャフト本体321は、同じ方向に同じ回転速度で回転する。各出力シャフト本体321には、同じ大きさのトルクが伝達される。
【0044】
一方、出力シャフト本体321に回転差があるとき、一対のピニオンギヤ333はピニオンシャフト334を中心に回転している状態で、ケース332とともに差動軸J5周りに回転することで、一対のサイドギヤ335の回転差を吸収する。そして、一対のピニオンギヤ333と噛合した一対のサイドギヤ335には、ケース332からトルクが伝達される。このとき、各出力シャフト本体321には、回転差を吸収しつつ、同じトルクが伝達される。
【0045】
出力シャフト本体321は、ギヤハウジング6の外部に突出している。出力シャフト本体321には、例えば、車両の駆動輪に接続されるドライブシャフト(不図示)が接続される。
【0046】
<ギヤハウジング6>
ギヤハウジング6について、図面を参照して説明する。図3は、ギヤハウジング6の蓋部62を取り外した状態の軸方向から見た図である。図4は、ギヤハウジング6の側板部61の軸方向から見た図である。図5は、受け皿部63を拡大した斜視図である。図6は、受け皿部63を拡大した側面図である。図7は、凹部64および差動装置33のケース332を拡大した斜視図である。図8は、溝部65を拡大した斜視図である。図9は、蓋部62の内側の側面図である。
【0047】
図1に示すとおり、ギヤハウジング6の内部空間60には、潤滑液CLが貯留される。また、ギヤハウジング6の内部空間60にはギヤ部30が収容される。すなわち、ギヤハウジング6には、ギヤ部30が収容され、内部に潤滑液CLが貯留される。
【0048】
ギヤハウジング6は、側板部61(図3図4等参照)と、蓋部62と、受け皿部63(図1図5図6等参照)と、凹部64(図2図7図8等参照)と、溝部65(図7図8等参照)と、を有する。側板部61および蓋部62は、例えば、鉄、アルミ、これらの合金等の導電材料、換言すると、金属で形成されるが、これらに限定されない。なお、側板部61および蓋部62は、同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。接触部分での異種金属接触腐食を抑制するため、同一の材料で形成されていることが好ましい。なお、上述のとおり、側板部61は、モータハウジング5のモータハウジング本体51と単一の部材で形成される。
【0049】
<側板部61>
図1図4に示すとおり、側板部61は、ギヤハウジング6の軸方向他方側Tを覆う。側板部61は、回転軸J2と交差する方向に拡がる。さらに説明すると、側板部61は、回転軸J2と直交する方向に拡がる。側板部61には、第1貫通孔611が形成されている。すなわち、ギヤハウジング6は、軸方向他方側Tの端部に配置されて軸方向と交差する方向に拡がる側板部61を有する。
【0050】
第1貫通孔611は、軸方向に貫通しており、中心が回転軸J2と一致する。動力シャフト22は、第1貫通孔611を貫通して配置される。動力シャフト22は、第2ベアリング42および第4ベアリング44を介して側板部61に回転可能に支持される。第2ベアリング42は、側板部61の軸方向一方側Nに配置され、第4ベアリング44は、側板部61の軸方向他方側Tに配置される。これにより、動力シャフト22は、軸方向の中間部分を回転可能に支持されるため、動力シャフト22が回転するとき、動力シャフト22の振れ、たわみ等が抑制される。
【0051】
図1図4に示すとおり、側板部61は、第1中間ベアリング保持部612を有する。第1中間ベアリング保持部612は、中心が中間軸J4と重なる筒状である。第1中間ベアリング315が、第1中間ベアリング保持部612に取り付けられる。
【0052】
<凹部64>
凹部64は、側板部61と単一の部材で形成される。凹部64は、側板部61の軸方向他方側Tの面から軸方向他方側Tに延びる筒状である。凹部64は、筒部641と、底部642とを有する。また、凹部64は、軸方向一方側Nに開口する。つまり、凹部64は、ギヤハウジング6の内部とつながっている。すなわち、ギヤハウジング6は、側板部61から軸方向他方側Tに凹み、軸方向一方側Nに開口する筒状の凹部64を有する。
【0053】
筒部641の中心は、差動軸J5と一致する。底部642は、筒部641の軸方向他方側Tの端部から筒部641の内方に拡がる平板状である。底部642には、第1出力シャフト貫通孔643と、第1出力ベアリング341を取り付ける第1ベアリング取付部644を有する。第1出力シャフト貫通孔643は、軸方向に貫通する。軸方向他方側Tの出力シャフト本体321Tは、第1出力シャフト貫通孔643を貫通する(図1図2参照)。右側の出力シャフト32と第1出力シャフト貫通孔643との間には、潤滑液CLの漏れを抑制するため、オイルシール(不図示)が設けられる。第1出力ベアリング341は、差動装置33のケース332を回転可能に支持する。すなわち、ギヤ部30は、凹部64の軸方向他方側Tの端部に配置されたベアリング341を有する。
【0054】
<溝部65>
溝部65は、側板部61の軸方向一方側Nの面に形成される。図4図7に示すとおり、溝部65は、周開口部651と、軸開口部652と、内周面653と、を有する。周開口部651は、凹部64の内周面に開口する。また、軸開口部652は、ギヤハウジング6の内部空間60に臨み、側板部61の軸方向一方側Nの面に開口する。すなわち、溝部65は、凹部64の内周面に開口する周開口部651および側板部61の軸方向一方側Nの面に開口する軸開口部652を有する。そして、周開口部651は、ケース332と径方向に対向する(図2参照)。すなわち、ケース332の外側面の一部は、溝部65と対向する。なお、周開口部651の軸方向一方側Nの端縁と、軸開口部652のケース332側の端縁とは連続する。
【0055】
図2に示すように、溝部65は、軸方向に延び、側板部61の軸方向一方側Nの面から第1ベアリング取付部644に到達する。また、溝部65の軸開口部652の一端は後述する受け皿部63の外面(対向面631)に到達する。溝部65は受け皿部63から周開口部651に向かって下方に傾斜する。すなわち、溝部65は、周開口部651に向かって下方に傾斜するとともに、軸方向他方側Tの端部がベアリング34に到達する。そして、溝部65の内部は周開口部651に向かって下方に傾斜する。さらに詳しく説明すると、溝部65、特に、溝部65の周開口部651は、差動装置33のケース332に沿って、軸方向に延びる。
【0056】
そして、周開口部651に面して軸開口部652の一端から延びる内周面653は、軸方向他方側Tに向かうにつれて第1ベアリング取付部644に接近する。すなわち、溝部65の周開口部651に面した内周面653は、軸方向他方側Tに向かうにつれてベアリング34に近づく。このように構成することで、第1ギヤ331にて掻き上げられて、受け皿部63の第1ギヤ331と対向する対向面631に当たった潤滑液CLを安定して第1出力ベアリング341に供給することができる。これにより、第1出力ベアリング341の潤滑および冷却を効率よく行うことができる。
【0057】
軸開口部652は、凹部64の内周と受け皿部63とをつなぐ。すなわち、溝部65の軸開口部652は、対向面631に到達する。図7図8に示すとおり、軸開口部652は、上方の辺縁部654と、下方の辺縁部655と有する。溝部65の軸開口部652の上方の辺縁部654は、軸方向一方側Nに向かうにつれて上方に向かう。また、軸開口部652の下方の辺縁部655から軸方向一方側Nに延びるガイド部656を有する。
【0058】
<蓋部62>
蓋部62は、側板部61の軸方向一方側Nに取り付けられる。図1図9に示すとおり、蓋部62は、有底筒状であり、蓋筒部621と、蓋底部622とを有する。蓋底部622は、蓋筒部621の軸方向一方側Nの端部から径方向内方に拡がる。蓋筒部621の軸方向他方側Tの端部は、開口しており、側板部61に密着して固定される。すなわち、ギヤハウジング6は、側板部61の軸方向一方側Nを覆う蓋部62を有する。
【0059】
つまり、側板部61と、蓋部62とで囲まれる部分が、ギヤハウジング6の内部空間60である。蓋部62の側板部61への固定は、ねじ止めにて行われるが、これに限定されず、圧入、溶接等であってもよい。しかしながら、内部に配置されるギヤ部30のメンテナンス等のため、蓋部62は、側板部61に対して着脱可能であることが好ましい。
【0060】
蓋底部622は、蓋ベアリング保持部623と、第2中間ベアリング保持部624と、第2出力ベアリング取付部625と、第2出力シャフト貫通孔626と、油路627,628と、供給制限部材629と、を有する。換言すると、ギヤハウジング6は、蓋ベアリング保持部623と、第2中間ベアリング保持部624と、第2出力ベアリング取付部625と、第2出力シャフト貫通孔626と、油路627,628と、供給制限部材629と、を有する。蓋ベアリング保持部623および第2中間ベアリング保持部624は、軸方向に延びる筒状であり、蓋底部622の軸方向他方側Tの面から軸方向他方側Tに突出する。なお、蓋ベアリング保持部623は、本発明の「第1ベアリング保持部」の一例である。第2中間ベアリング保持部624は、本発明の「第2ベアリング保持部」の一例である。蓋ベアリング保持部623は、第1ベアリング41を保持する。第1ベアリング41は、動力シャフト22の軸方向一方側Nの端部を保持する。換言すると、第1ベアリング41は、動力シャフト22を回転可能に支持する。また、ギヤ部30は、第1ベアリング41を有する。なお、第1ベアリング41は、本発明の「第1ベアリング」の一例である。第1ベアリング41には、本実施形態では、ボールベアリングなどの転がり軸受が採用される。これにより、動力シャフト22のギヤハウジング6の内部に配置される部分は、第1ベアリング41および第2ベアリング42を介してギヤハウジング6に回転可能に支持される。後述するように、蓋ベアリング保持部623には、潤滑液CLが供給される。
【0061】
また、第2中間ベアリング保持部624は、第2中間ベアリング316を保持する。第2中間ベアリング316は、中間シャフト314の軸方向一方側Nの端部を保持する。これにより、中間シャフト314は、軸方向の両端を第1中間ベアリング315および第2中間ベアリング316を介して、ギヤハウジング6に回転可能に配置される。第2中間ベアリング保持部624は、開口部6241を有する。開口部6241は、中間軸J4を基準とする径方向に第2中間ベアリング保持部624を貫通する。開口部6241は、第1ベアリング41よりも下方に配置される。
【0062】
第2出力シャフト貫通孔626の中央は、差動軸J5と一致し、軸方向一方側Nの出力シャフト本体321Nが貫通する。軸方向一方側Nの出力シャフト本体321Nと第2出力シャフト貫通孔626との隙間には、オイルシール(不図示)が配置される。また、第2出力ベアリング取付部625は第2出力シャフト貫通孔626の径方向外方に配置される。第2出力ベアリング取付部625は、円筒状であり、中心が差動軸J5と一致する。
【0063】
そして、第2出力ベアリング取付部625には、第2出力ベアリング342が取付られる。第2出力ベアリング342は、差動装置33のケース332を保持する。これにより、差動装置のケース332は、第1出力ベアリング341および第2出力ベアリング342を介してギヤハウジング6に回転可能に支持される。すなわち、ギヤ部30は、回転軸J2に沿って延び、ベアリング341、342を介してギヤハウジング6に回転可能に支持される出力シャフト32を有する。
【0064】
油路627は、蓋底部622の軸方向他方側Tに形成された溝である。前述の如く、ギヤハウジング6は、油路627を有する。油路627は、受け皿部63の軸方向一方側Nの端部と蓋ベアリング保持部623とを繋ぐ潤滑液CLの通路である。なお、油路627は、本発明の「第2通路」の一例である。油路627の一端は、蓋ベアリング保持部623の中央部に延びる。また、油路627の他端は、受け皿部63の軸方向一方側Nの端部と接続される。すなわち、蓋部62は、受け皿部63に接続される油路627を有する。受け皿部63に貯まった潤滑液CLは、油路627に供給される。図1に示すように、油路627に供給された潤滑液CLの一部は、第1ベアリング41に供給されたのち、油路628に流入する。また、油路627に供給された潤滑液CLの他の一部は、動力シャフト22の軸方向一方側Nの流入口220から中空部221に流入する。
【0065】
<受け皿部63>
受け皿部63には、第1ギヤ331によって掻き上げられた潤滑液CLが貯められる。図3図5図6等に示すように、受け皿部63は、中間ドリブンギヤ312の上方に配置される。受け皿部63の底部は、中間ドリブンギヤ312の外周に沿って配置される。このように構成することで、受け皿部63をより低い位置に配置することができ、モータハウジング5を低く抑えることができる。
【0066】
受け皿部63は、第1ギヤ331よりも差動軸J5を基準とする径方向外方に配置され、図4図9に示すように、上方が開口する。前述の如く、ギヤハウジング6は、受け皿部63を有する。受け皿部63は、側板部61から軸方向一方側Nに延びる。受け皿部63の軸方向一方側Nの端部は、蓋底部622と連結する。すなわち、受け皿部63の軸方向一方側Nの端部は、蓋部62に連結する。
【0067】
受け皿部63は、対向面631を有する。対向面631は、第1ギヤ331のギヤ歯と対向する。対向面631は、全体が第1ギヤ331のギヤ歯と対向してもよいし、一部が第1ギヤ331のギヤ歯と対向してもよい。すなわち、受け皿部63は、少なくとも第1ギヤ331の外周面と径方向に対向する対向面631を有する。
【0068】
対向面631は、上方に延びており、上方に向かうにつれて第1ギヤ331のギヤ歯から離れる方向に延びる。すなわち、対向面631は上部に向かうにつれて、第1ギヤ331の中心と対向面631の下端部とをつないだ線と第1ギヤ331の外周面とが交わる点における第1ギヤ331の周接線から離れる。
【0069】
図4に示すように、受け皿部63は、突出部632を有する。突出部632は、対向面631の上端から突出する。また、突出部632は、第1ギヤ331と差動軸J5を基準とする径方向に対向する。すなわち、受け皿部63は、対向面631の上端部から第1ギヤ331の外周面に近づく方向に延びる突出部632を有する。詳細には、突出部632は、受け皿部63の軸方向と垂直な方向における第1ギヤ331側の端部の上端部において、第1ギヤ331の外周面に近づく方向に延びる。こうすれば、ギヤハウジング6の下部に貯留された潤滑液CLを蓋ベアリング保持部623に供給できる。たとえば、ギヤハウジング6の下部に貯留された潤滑液CLは、第1ギヤ331の回転によりギヤハウジング6の下部から掻き揚げられて、突出部632の上面を経由して受け皿部63に溜まり、油路627を通じて蓋ベアリング保持部623に供給される。
【0070】
そして、突出部632は、ギヤハウジング6の内部空間60の上面60Uに沿って延びる。さらに説明すると、突出部632の先端部において、ギヤハウジング6の内部空間60の上面60Uとの隙間が、第1ギヤ331との隙間よりも大きい。
【0071】
図9に示すように、受け皿部63は、底部の一部が下方に尖った角部633を有する。角部633は、油路627の他方側の端部よりも下方に配置される。すなわち、受け皿部63の上面の一部は、油路627よりも下方に配置される。
【0072】
<油路628>
次に、図1及び図9に示すように、油路628は、第1ベアリング41よりも下方に配置される。なお、油路628は、本発明の「第1通路」の一例である。油路628は、蓋ベアリング保持部623と第2中間ベアリング保持部624とを繋ぐ潤滑液CLの通路である。油路628の一方端部は、第1ベアリング41を通じて蓋ベアリング保持部623と繋がる。油路628の他方端部は、開口部6241を通じて第2中間ベアリング保持部624に繋がる。蓋ベアリング保持部623に供給された潤滑液CLは、第1ベアリング41に供給されたのち、第1ベアリング41及び油路628を通じて第2中間ベアリング保持部624に流れ、第2中間ベアリング316に供給される。第2中間ベアリング保持部624は、図9に示すように、第1ギヤ331及び受け皿部63よりも軸方向一方側Nに配置される。つまり、第2中間ベアリング保持部624は、第1ギヤ331及び受け皿部63に対して奥まった所に配置されるため、第1ギヤ331が掻き揚げた潤滑液CLを受け皿部63から直接に供給することは難しい。対して、油路628を用いることにより、容易に、第1ベアリング41から流れ出た潤滑液CLを第2中間ベアリング316に供給して第2中間ベアリング316を潤滑できる。従って、直接には潤滑液CLを供給し難い位置に配置されたベアリングにも、潤滑液CLを供給することができる。よって、ベアリングを効果的に潤滑することができる。
【0073】
油路628は、傾斜面6281を有する。傾斜面6281は、軸方向及び上下方向と斜めに交わり、油路628の一方端部から他方端部に向かうにつれて下方に傾く。こうすれば、第1ベアリング41から流れ出た潤滑液CLを傾斜面6281に沿って流すことにより、第2中間ベアリング保持部624に供給できる。たとえば、油路628は、壁面6282をさらに有する。壁面6282は、蓋底部622の軸方向他方側Tの端面の一部である。第1ベアリング41から流れ出た潤滑液CLは、蓋ベアリング保持部623の軸方向他方側Tの端部から壁面6282を伝って、傾斜面6281に流れ落ちる。そして、この潤滑液CLは、傾斜面6281に沿って開口部6241へと流れて、第2中間ベアリング保持部624に供給される。
【0074】
好ましくは、油路628の一方端部のうちの少なくとも軸方向他方側Tの端部は、第1ベアリング41よりも軸方向他方側Tに配置される。たとえば、傾斜面6281のうちの少なくとも軸方向他方側Tの端部は、第1ベアリング41よりも軸方向他方側Tに配置される。こうすれば、第1ベアリング41から流れ出た潤滑液CLは、油路628からあまりこぼれることなく、油路628の一方端部に流れることができる。従って、この潤滑液CLを効率良く、第2中間ベアリング保持部624に供給できる。
【0075】
また、好ましくは、油路628の他方端部は、第2中間ベアリング316の軸方向一方側Nの端部に繋がる。たとえば、傾斜面6281の下端部(換言すると、第2中間ベアリング保持部624側の端部)は、第2中間ベアリング316の軸方向一方側Nの端部に接続される。こうすれば、油路628の他方端部に流れ落ちた潤滑液CLをそのまま第2中間ベアリング316に供給できる。この潤滑液CLで第2中間ベアリング316を効率よく潤滑できる。
【0076】
この際、好ましくは、第2中間ベアリング316の軸方向一方側Nの端部は、第1ベアリング41の軸方向一方側Nの端部よりも軸方向他方側Tに配置される。こうすれば、油路628の一方端部から他方端部までの最短距離をより短くすることができる。従って、第1ベアリング41から油路628の一方端部に流れ出た潤滑液CLを第2中間ベアリング316に供給し易くなる。
【0077】
<供給制限部材629>
次に、図1及び図10を参照して、供給制限部材629について説明する。図10は、供給制限部材629の斜視図である。
【0078】
供給制限部材629は、蓋ベアリング保持部623から第1ベアリング41に供給される潤滑液CLの供給量を制限する。この制限により、蓋ベアリング保持部623から流入口220を通じてモータ2側に供給される潤滑液CLを確保できる。動力伝達装置3は、供給制限部材629を備える。供給制限部材629は、図1に示すように、環状部6291と、凸部6292と、を有する。
【0079】
環状部6291は、蓋ベアリング保持部623に収容され、回転軸J2を基準とする径方向に広がる。環状部6291は、第1ベアリング41よりも軸方向一方側Nに配置され、第1ベアリング41の軸方向一方側Nの端部と軸方向に対向する。こうすれば、蓋ベアリング保持部623に供給された潤滑液CLの第1ベアリング41への供給量を環状部6291によって制限できる。
【0080】
環状部6291は、少なくとも1つの貫通孔6293を有する。貫通孔6293は、環状部6291を軸方向に貫通する。なお、環状部6291の数は、図10では4個であるが、この例示には限定されない。環状部6291の数は、単数であってもよいし、4以外の複数であってもよい。好ましくは、貫通孔6293は、第1ベアリング41の内輪及び外輪間と軸方向に対向する。こうすれば、蓋ベアリング保持部623内の潤滑液CLを貫通孔6293を通じて第1ベアリング41に供給できる。さらに、貫通孔6293の数を調節することにより、第1ベアリング41への潤滑液CLの供給量を調節することができる。ここで、環状部6291は、軸方向において隙間を有して第1ベアリング41と対向してもよいが、環状部6291が貫通孔6293を有する場合には第1ベアリング41の軸方向一方側Nの端部に接してもよい。
【0081】
なお、上述の例示に限定されず、環状部6291は、貫通孔6293を有さなくてもよい。但し、この場合には、環状部6291は、軸方向において隙間を有して第1ベアリング41と対向する。
【0082】
次に、凸部6292は、環状部6291の径方向内端部から軸方向他方側Tに延びる。凸部6292は、軸方向に延びる筒状の動力シャフト22の軸方向一方側Nの端部に挿通され、たとえば図1に示すように動力シャフト22の流入口220に挿通される。なお、凸部6292は、好ましくは、筒状の動力シャフト22の軸方向一方側Nの端部に固定されない。たとえば、凸部6292の外周面は、回転軸J2を基準とする径方向において隙間を有して、筒状の動力シャフト22の内周面と対向する。凸部6292を動力シャフト22の軸方向一方側Nの端部に挿通することで、軸方向と垂直な方向において環状部6291が回転軸J2を基準とする径方向にずれることを抑制できる。
【0083】
また、凸部6292は、軸方向に延びる筒状であり、つまり軸方向に貫通する貫通孔(符号省略)を有する形状である。こうすれば、凸部6292の内部を通じて、筒状の動力シャフト22の内部を蓋ベアリング保持部623の内部と繋ぐことができる。従って、蓋ベアリング保持部623に供給された潤滑液CLを凸部6292の内部を通じて筒状の動力シャフト22の内部に供給できる。なお、この例示に限定されず、凸部6292は、柱状であってもよく、つまり軸方向に貫通する貫通孔(符号省略)を有さない形状であってもよい。こうすれば、蓋ベアリング保持部623から動力シャフト22の内部への潤滑液CLの供給量を制限できる。従って、動力シャフト22及び第1ベアリング41に供給される蓋ベアリング保持部623内の潤滑液CLをより適切に振り分けるできる。
【0084】
<冷却液循環部7>
モータユニット1は、潤滑液CLを循環させる冷却液循環部7を有する。冷却液循環部7は、配管部71と、ポンプ72と、オイルクーラ73と、モータオイルリザーバ74とを有する。
【0085】
配管部71は、モータハウジング5に形成される配管である。配管部71は、ポンプ72とモータハウジング本体51の内部に配置されたモータオイルリザーバ74とを繋ぎ、モータオイルリザーバ74に潤滑液CLを供給する。ポンプ72は、内部空間60の下部領域に貯留される潤滑液CLを吸い込む。ポンプ72は、電動ポンプであるが、これに限定されない。例えば、モータユニット1の動力シャフト22の動力の一部を利用して駆動する構成であってもよい。
【0086】
オイルクーラ73は、配管部71のポンプ72とモータオイルリザーバ74との間に配置される。つまり、ポンプ72で吸引された潤滑液CLは、配管部71を介してオイルクーラ73を通過してモータオイルリザーバ74に送られる。オイルクーラ73には、例えば、外部から供給される水等の冷媒が供給される。そして、冷媒と潤滑液CLとの間で熱交換して、潤滑液CLの温度を下げる。なお、オイルクーラ73は、ここでは、冷媒を用いる液冷式であるが、これに限定されず、車両の走行風で冷却する、いわゆる、空冷式であってもよい。オイルクーラ73を用いることで、モータオイルリザーバ74に供給される潤滑液CLの温度を下げることができ、モータ2の冷却効率を高めることが可能である。
【0087】
モータオイルリザーバ74は、モータハウジング5の内部の上部領域に配置されて上方に開口したトレイである。さらに説明すると、モータオイルリザーバ74は、モータ収容空間50の中であって、ステータ25の鉛直上方に配置される。モータオイルリザーバ74の底部には、滴下孔が形成されており、滴下孔から潤滑液CLを滴下することで、モータ2を冷却する。滴下孔は、例えば、ステータ25のコイル27のコイルエンド271の上部に形成され、コイル27が潤滑液CLによって冷却される。
【0088】
<モータユニット1および動力伝達装置3の潤滑動作および冷却動作>
次に、モータユニット1および動力伝達装置3の潤滑動作および冷却動作について説明する。なお、冷却液循環部7による、モータ2の冷却については、上述の通りであるため、詳細は省略する。
【0089】
ギヤハウジング6の内部空間60には、潤滑液CLが貯留される。そして、ギヤハウジング6の内部空間60内において、差動装置33の第1ギヤ331のギヤ歯の一部が潤滑液CLに浸かっている。そして、モータ2が回転することで、ギヤ部30に回転が伝達されて、第1ギヤ331が回転する。第1ギヤ331の回転によって、第1ギヤ331のギヤ歯が、潤滑液CLを掻き上げる。
【0090】
第1ギヤ331によって掻き上げられた潤滑液CLは、第1ギヤ331の上端部で、第1ギヤ331から離れる。例えば、第1ギヤ331の外周面のギヤ歯の周速は早いとき、第1ギヤ331から離れるときの潤滑液CLの速度が速く、多くの潤滑液CLは、ギヤハウジング6の内部空間60の上面60Uに沿って飛散する。そのため、第1ギヤ331にて掻き上げられた潤滑液CLの多くは、受け皿部63の突出部632の上方と上面60Uとの間を通過して、受け皿部63に貯まる。受け皿部63に貯まった潤滑液CLは、蓋部62の油路627から蓋ベアリング保持部623に流入する。
【0091】
蓋ベアリング保持部623内の潤滑液CLの一部は、第1ベアリング41を介して油路628に流入する。たとえば、第1ベアリング41に供給された潤滑液CLは、第1ベアリング41の内輪及び外輪間を通じて、第1ベアリング41の軸方向他方側Tの端部から流れ出る。流れ出た潤滑液CLは、壁面6282を伝って傾斜面6281に流れ落ちる。傾斜面6281上の潤滑液CLは、傾斜面6281を伝って流れ落ちる。その少なくとも一部は、開口部6241を通じて第2中間ベアリング保持部624に流れ込み、そして、第2中間ベアリング316に供給されて、第2中間ベアリング316を潤滑する。
【0092】
一方、蓋ベアリング保持部623内の潤滑液CLの他の一部は、流入口220から、中空部221に流入する。
【0093】
動力シャフト22の中空部221の潤滑液CLは、動力シャフト22の回転で発生する負圧によって軸方向他方側Tに引っ張られる。中空部221内を流れた潤滑液CLは、動力シャフト22に設けられた、オイル散布孔からコイルエンド271に向かって散布される。潤滑液CLによって、コイル27は冷却される。また、モータハウジング5の内部に配置された、第3ベアリング43、第4ベアリング44にも潤滑液CLが供給され、潤滑および冷却される。モータハウジング5に供給された潤滑液CLは、モータハウジング5の内部の下部に貯まり、側板部61に設けられた貫通孔を介して、ギヤハウジング6の内部空間60に戻る。
【0094】
一部の潤滑液CLは、側板部61の軸方向一方側Nの面に接触し、軸方向一方側Nの面に沿って下方に流れる。側板部61の溝部65の上方の部分に付着して下方に流れた潤滑液CLは、溝部65の軸開口部652の上端の辺縁部654に沿って、溝部65の内部に流れる。これにより、第1ギヤ331にて掻き上げられて、側板部61の軸方向一方側Nの面に沿って流れ落ちる潤滑液CLを上方の辺縁部654に沿って溝部65の内部に導くことができる。
【0095】
また、第1ギヤ331によって掻き揚げられた潤滑液CLの一部は、第1ギヤ331の上端部よりもさらに下方まで第1ギヤ331に運ばれて、第1ギヤ331から離れる。上端部よりも下方まで第1ギヤ331に運ばれた潤滑液CLは、受け皿部63の対向面631に衝突する。対向面631に接触した潤滑液CLは、対向面631に沿って下方に流れる。そして、溝部65の軸開口部652の下方の辺縁部655にガイド部656を備えることで、受け皿部63の対向面631に沿って下方に流れる潤滑液CLを溝部65の内部に導くことができる。これにより、凹部64に配置された差動装置33および第1出力ベアリング341に潤滑液CLを効果的に流入させることができる。
【0096】
そして、溝部65は、凹部64の第1ベアリング取付部644に到達している。そして、周開口部651に面した内周面653が第1ベアリング取付部644に向かうにつれて、第1ベアリング取付部644に接近する。そのため、溝部65に流入した潤滑液CLをより効果的に第1出力ベアリング341に供給することができる。
【0097】
また、溝部65が周開口部651を有するとともに、溝部65の周開口部651側が下方に傾斜しているため、溝部65に流入した潤滑液CLの一部は、第1出力ベアリング341に到達する前に、周開口部651から凹部64の内部に流出し、ケース332に流れる。これにより、ケース332およびケース332の内部のギヤを潤滑、冷却することができる。
【0098】
受け皿部63が突出部632を有することで、第1ギヤ331の外周面の周速度が遅く、掻き上げられる潤滑液CLの第1ギヤ331から離れる速度が遅い場合でも、途中で失速した潤滑液CLが突出部632の上面に付着し、受け皿部63に流入する。そのため、多くの潤滑液CLを受け皿部63に供給することが可能である。これにより、受け皿部63を介して、各部に潤滑液CLを多く供給することができ、第1出力ベアリング341の潤滑および冷却の効率を高めることができる。
【0099】
突出部632が、内部空間60の上面60Uに沿って延びるため、第1ギヤ331で掻き上げられた潤滑液CLのうち適量を受け皿部63に送ることができる。換言すると、第1ギヤ331で掻き上げられた潤滑液CLのうち一定量を突出部632の下面に衝突させて、溝部65にも一定量の潤滑液CLを供給することができる。これにより、第1出力ベアリング341、凹部64に配置された差動装置33に一定量の潤滑液CLを供給し続けることが可能である。なお、突出部632の先端部とギヤハウジング6の内部空間60の上面60Uとの隙間が、突出部632の先端部と第1ギヤ331との隙間よりも大きい。このようにすることで、掻き上げられる潤滑液CLの多くを受け皿部63に導くことができる。
【0100】
また、対向面631の上方が第1ギヤ331から離れて形成されることで、受け皿部63を深く形成することができ、受け皿部63に多くの潤滑液CLが供給されても、潤滑液CLを受けることができる。
【0101】
受け皿部63の上面の下端を、油路627の受け皿部63と接続する部分よりも低く形成している。このように構成することで、一定の量の潤滑液CLを受け皿部63に残すことができ、潤滑液CL切れを抑制できる。
【0102】
本実施形態にかかる動力伝達装置3において、第1ギヤ331で掻き揚げられた潤滑液CLの一部を受け皿部63の対向面631に衝突させる。対向面631に沿って流れた潤滑液CLを、溝部65に導く。ギヤハウジング6の内部空間60において、潤滑液CLが流入しにくい凹部64の端部に配置された第1出力ベアリング341に一定量の潤滑液CLを送ることができるため、第1出力ベアリング341を効果的に潤滑および冷却を行うことができる。
【0103】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の動力伝達装置は、モータ、エンジン等の動力軸からの出力を外部に伝達する動力伝達機構として用いることができる。本発明のモータユニットは、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)および電気自動車(EV)などの車両の駆動用モータとして用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 モータユニット
2 モータ
3 動力伝達装置
5 モータハウジング
6 ギヤハウジング
7 冷却液循環部
21 ロータ
22 動力シャフト
23 ロータコア
24 ロータマグネット
25 ステータ
26 ステータコア
27 コイル
30 ギヤ部
31 減速装置
32 出力シャフト
33 差動装置
34 ベアリング
41 第1ベアリング
42 第2ベアリング
43 第3ベアリング
44 第4ベアリング
51 モータハウジング本体
52 ベアリングホルダ
60 内部空間
60U 上面
61 側板部
62 蓋部
63 受け皿部
64 凹部
65 溝部
71 配管部
72 ポンプ
73 オイルクーラ
74 モータオイルリザーバ
150 バッテリー
200 車両
220 流入口
221 中空部
271 コイルエンド
311 メインドライブギヤ
312 中間ドリブンギヤ
313 ファイナルドライブギヤ
314 中間シャフト
315 第1中間ベアリング
316 第2中間ベアリング
321 出力シャフト本体
331 第1ギヤ
332 ケース
333 ピニオンギヤ
334 ピニオンシャフト
335 サイドギヤ
341 ベアリング
341 第1出力ベアリング
342 第2出力ベアリング
50 モータ収容空間
611 第1貫通孔
612 第1中間ベアリング保持部
621 蓋筒部
622 蓋底部
623 蓋ベアリング保持部
624 第2中間ベアリング保持部
625 第2出力ベアリング取付部
626 第2出力シャフト貫通孔
627,628 油路
629 供給制限部材
631 対向面
632 突出部
633 角部
641 筒部
642 底部
643 第1出力シャフト貫通孔
644 第1ベアリング取付部
651 周開口部
652 軸開口部
653 内周面
654 上方の辺縁部
655 下方の辺縁部
656 ガイド部
6241 開口部
6281 傾斜面
6282 壁面
6291 環状部
6292 凸部
6293 貫通孔
CL 潤滑液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11