(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ミラー駆動装置及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240814BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60K35/23
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2020217310
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】船見 大輝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅博
(72)【発明者】
【氏名】野口 建
(72)【発明者】
【氏名】本多 拓人
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-134704(JP,A)
【文献】国際公開第2011/132776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
G02B 7/00
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転可能に設けられた反射鏡と、
前記反射鏡と共に移動するレバーと、
前記レバーを覆うカバーと、
前記カバーを介して前記レバーを挟み込む挟込部を有し、前記挟込部を直線移動させることで、前記軸線を中心に前記反射鏡を回転駆動する駆動部と、
前記反射鏡を保持するホルダとを備え
るミラー駆動装置であって、
前記レバーは、前記ホルダに固定され、前記ホルダから前記挟込部に向かって延びており、
前記カバーは、前記挟込部の直線移動に応じて
、前記レバーが延びる方向である延在方向に沿って前記レバーに対して摺
動し、
前記レバーは、先端に位置する先端面と、前記延在方向において前記先端と反対の端に位置する基端面とを有し、
前記カバーは、前記レバーに対して前記カバーが摺動可能な範囲を規制する第1規制部及び第2規制部を有し、ここで、前記第1規制部が前記先端面と接触している第1状態では、前記第2規制部は前記基端面から離れ、前記第2規制部が前記基端面と接触している第2状態では、前記第1規制部は前記先端面から離れる、
ミラー駆動装置。
【請求項2】
前記レバーは、板状をなし、第1主面と、前記第1主面の裏に位置するとともに前記第1主面と前記先端面を介して繋がる第2主面とをさらに有し、
前記カバーは、前記第1主面を覆う第1部分と、前記第2主面を覆う第2部分とを有し、
前記第2規制部は、前記第2部分から前記基端面に沿って折り曲げられた形状をなす、
請求項
1に記載のミラー駆動装置。
【請求項3】
前記挟込部は、互いに向かい合って、前記カバーを介して前記レバーを挟み込む曲面部及び弾性部を有し、
前記弾性部は、前記カバーを介して前記レバーを前記曲面部に向かって付勢する、
請求項1又は2に記載のミラー駆動装置。
【請求項4】
軸線を中心に回転可能に設けられた反射鏡と、
前記反射鏡と共に移動するレバーと、
前記レバーを覆うカバーと、
前記カバーを介して前記レバーを挟み込む挟込部を有し、前記挟込部を直線移動させることで、前記軸線を中心に前記反射鏡を回転駆動する駆動部と、を備えるミラー駆動装置であって、
前記カバーは、前記挟込部の直線移動に応じて前記レバーに対して摺動し、
前記挟込部は、互いに向かい合って、前記カバーを介して前記レバーを挟み込む曲面部及び弾性部を有し、
前記弾性部は、前記カバーを介して前記レバーを前記曲面部に向かって付勢する、
ミラー駆動装置。
【請求項5】
前記ミラー駆動装置は、前記反射鏡を保持するホルダをさらに備え、
前記レバーは、前記ホルダに固定され、前記ホルダから前記挟込部に向かって延び、
前記カバーは、前記挟込部の直線移動に応じて、前記レバーが延びる方向である延在方向に沿って前記レバーに対して摺動する、
請求項4に記載のミラー駆動装置。
【請求項6】
前記レバーと前記カバーの間、及び、前記カバーと前記挟込部の間にグリスが塗布されている、
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のミラー駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のミラー駆動装置と、
画像を表す表示光を放射する表示部と、を備え、
前記反射鏡で反射した前記表示光に基づき前記画像の虚像を表示する、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ミラー駆動装置及びヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミラー駆動装置として、例えば特許文献1には、反射鏡と共に移動するレバー(同文献の垂下部)を挟み込む挟込部(同文献の第1及び第2の突起部)を直線移動させることで、反射鏡を回転駆動する構成が記載されている。このミラー駆動装置は、ヘッドアップディスプレイ装置に設けられ、反射鏡として、例えば凹面鏡を回転駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、反射鏡が回転駆動される際には、レバーが挟込部に対してのみ摺動するため、レバー及び挟込部が摩耗する虞がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、レバー及び挟込部の摩耗を抑制できるミラー駆動装置及びヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係るミラー駆動装置は、
軸線を中心に回転可能に設けられた反射鏡と、
前記反射鏡と共に移動するレバーと、
前記レバーを覆うカバーと、
前記カバーを介して前記レバーを挟み込む挟込部を有し、前記挟込部を直線移動させることで、前記軸線を中心に前記反射鏡を回転駆動する駆動部と、
前記反射鏡を保持するホルダとを備え、
前記レバーは、前記ホルダに固定され、前記ホルダから前記挟込部に向かって延びており、
前記カバーは、前記挟込部の直線移動に応じて、前記レバーが延びる方向である延在方向に沿って前記レバーに対して摺動し、
前記レバーは、先端に位置する先端面と、前記延在方向において前記先端と反対の端に位置する基端面とを有し、
前記カバーは、前記レバーに対して前記カバーが摺動可能な範囲を規制する第1規制部及び第2規制部を有し、ここで、前記第1規制部が前記先端面と接触している第1状態では、前記第2規制部は前記基端面から離れ、前記第2規制部が前記基端面と接触している第2状態では、前記第1規制部は前記先端面から離れるミラー駆動装置であるか、或いは、本開示の第1の観点に係るミラー駆動装置は、
軸線を中心に回転可能に設けられた反射鏡と、
前記反射鏡と共に移動するレバーと、
前記レバーを覆うカバーと、
前記カバーを介して前記レバーを挟み込む挟込部を有し、前記挟込部を直線移動させることで、前記軸線を中心に前記反射鏡を回転駆動する駆動部と、を備えるミラー駆動装置であって、
前記カバーは、前記挟込部の直線移動に応じて前記レバーに対して摺動し、
前記挟込部は、互いに向かい合って、前記カバーを介して前記レバーを挟み込む曲面部及び弾性部を有し、
前記弾性部は、前記カバーを介して前記レバーを前記曲面部に向かって付勢するミラー駆動装置である。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の第2の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
前記ミラー駆動装置と、
画像を表す表示光を放射する表示部と、を備え、
前記反射鏡で反射した前記表示光に基づき前記画像の虚像を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レバー及び挟込部の摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)装置の車両への搭載態様を示す図。
【
図2】同上実施形態に係るHUD装置の概略構成図。
【
図3】同上実施形態に係るミラー駆動装置の要部を示すとともに、第1状態にあるカバーを示す図。
【
図4】同上実施形態に係るミラー駆動装置の要部を示すとともに、第1状態と第2状態の間の状態にあるカバーを示す図。
【
図5】同上実施形態に係るグリスの塗布箇所を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD:Head-Up Display)装置10は、
図1に示すように、例えば、車両1のダッシュボード2に設けられる。HUD装置10は、ウインドシールド3に向けて表示光Lを放射する。ウインドシールド3で反射した表示光Lは、ユーザ4に表示光Lが表す画像の虚像Vを視認させる。虚像Vは、車両1に関する各種情報(以下、車両情報と言う。)を示し、ウインドシールド3を介して車両1の前方に表示される。
【0012】
HUD装置10は、
図2に示すように、表示部11と、光路変更鏡12と、凹面鏡13を有するミラー駆動装置20と、筐体14と、を備える。
【0013】
表示部11は、画像を表示することで、その画像を表す表示光Lを放射する。表示部11は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)と、LCDを背後から照明するバックライトとを含んで構成される。LCDは、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型である。バックライトは、例えば、LED(Light Emitting Diode)、導光部材等から構成される。
【0014】
光路変更鏡12は、表示部11から放射された表示光Lの光路を変更する。具体的に、光路変更鏡12で反射した表示光Lは、凹面鏡13に向かう。光路変更鏡12は、平面鏡又は曲面鏡からなり、図示しない部材を介して筐体14に固定される。
【0015】
凹面鏡13は、光路変更鏡12からの表示光Lをウインドシールド3に向けて反射する。凹面鏡13は、光路変更鏡12に向く反射面13aで表示光Lを反射する。凹面鏡13の機能により、虚像Vは、表示部11に表示されている画像が拡大されたサイズでユーザ4に視認される。
【0016】
筐体14は、表示部11、光路変更鏡12及びミラー駆動装置20を収容する。筐体14は、合成樹脂、金属等から遮光性を有して箱状に形成される。なお、筐体14は、複数の部材の組み合わせにより構成されてもよい。筐体14には、ウインドシールド3に向かって開口する開口部14aが設けられている。筐体14には、開口部14aを塞ぐ透光板15が取り付けられている。表示部11から発せられ、光路変更鏡12、凹面鏡13の順で反射した表示光Lは、透光板15を透過して、ウインドシールド3に向かって放射される。
【0017】
ミラー駆動装置20は、反射鏡の一例である凹面鏡13の他に、凹面鏡13を保持するホルダ30と、ホルダ30に固定されたレバー40と、レバー40を覆うカバー50と、カバー50を介してレバー40を挟み込む挟込部60を有し、凹面鏡13を回転駆動する駆動部70(
図6参照)と、制御部80と、を備える。なお、駆動部70は、挟込部60をX方向に直線移動させることで、軸線AXを中心に凹面鏡13を回転駆動する。
【0018】
ホルダ30は、マグネシウム等の金属材料、又は、合成樹脂材料からなり、
図2に示すように、凹面鏡13を保持する。具体的に、ホルダ30は、凹面鏡13を背後(反射面13aの裏)から保持する保持部31と、レバー40と接続される接続部32と、を有する。保持部31は、軸部31aを備える。軸部31aは、軸線AXが延びる方向(
図2の紙面法線方向)がその高さ方向である略円柱状に形成されている。なお、軸部31aは、ホルダ30に一対設けられるが、
図2では一方の軸部31aのみ示している。軸部31aは、筐体14に設けられた軸受部(図示せず)に回転可能に支持される。これにより、ホルダ30に保持された凹面鏡13は、筐体14に対し、軸線AXを中心として回転可能に設けられる。接続部32は、保持部31の下端部から背後に向かって延びる形状をなす。
【0019】
レバー40は、
図3、
図4に示すように、ホルダ30から挟込部60に向かって延びる。以下、レバー40が伸びる方向を延在方向Sと言う。例えば、レバー40は、ホルダ30と一体に形成される。レバー40は、その基端が接続部32と接続されるとともに、接続部32から下方に折れ曲がる形状をなす。
【0020】
レバー40は、平板状をなし、第1主面41と、第2主面42と、先端面43と、基端面44と、傾斜面45と、を有する。
【0021】
第1主面41は、凹面鏡13の反射面13aの側に向く。第2主面42は、第1主面41の裏に位置し、第1主面41と先端面43を介して繋がる。先端面43は、レバー40の先端に位置する。先端面43は、例えば、先端に向かって凸状の曲面である。基端面44は、延在方向Sにおいてレバー40の先端とは反対の端(基端)に位置する。基端面44は、例えば平坦面であり、接続部32の上面32aと略平行で、且つ、上面32aから凹んで形成されている。傾斜面45は、第2主面42よりも基端面44の側に位置し、第2主面42から基端面44に向かって傾斜する。第2主面42と基端面44は、傾斜面45を介して繋がる。
【0022】
カバー50は、挟込部60の直線移動に応じて、レバー40に対して摺動可能にレバー40に取り付けられる。カバー50は、例えば、ステンレス鋼などの金属からなる板状の部材を折り曲げることで形成される。カバー50は、第1主面41を覆う第1部分51と、第2主面42を覆う第2部分52と、レバー40に対してカバー50が摺動可能な範囲を規制する第1規制部53及び第2規制部54と、を有する。
【0023】
第1部分51は、第1主面41に沿うとともに、延在方向Sにおける長さが第1主面41よりも短く設定される。第2部分52は、第2主面42に沿うとともに、延在方向Sにおける長さが、第2主面41と傾斜面45の合計長さよりも長く設定される。なお、第2部分52と傾斜面45との間には、隙間が生じる。この隙間によって、後述するグリスGの余剰分を逃がすことができる。
【0024】
第1規制部53は、先端面43を覆う部分であり、第1部分51と第2部分52を接続する。カバー50において、第1部分51、第1規制部53及び第2部分52は、側面視でU字状をなす。第1部分51及び第2部分52の間隔は、レバー40の厚みよりも若干狭く設定される。これにより、カバー50は、第1部分51及び第2部分52によってレバー40を弾性的に挟み込む。第2規制部54は、第2部分42から基端面44に沿って折り曲げられた形状をなす。
【0025】
図3に示すように、第1規制部53が先端面43と接触している第1状態では、第2規制部54が基端面44から離れる。一方で、第2規制部53が基端面44と接触している第2状態では、第1規制部53が先端面43から離れる。つまり、カバー50は、第2状態の場合に第1規制部53と先端面43の間に生じる、延在方向Sの間隔の範囲内で、レバー40に対して摺動可能である。
【0026】
なお、
図4は、第1状態と第2状態の一方から他方へ遷移途中の状態にあるカバー50を示している。この遷移途中の状態では、第1規制部53は先端面43と接触せず、第2規制部54も基端面44と接触しない。
【0027】
図5に模式的に示すように、レバー40とカバー50の間、及び、カバー50と挟込部60の間には、グリスGが塗布されている。グリスGによって、レバー40に対してカバー50が摺動する際の摩擦係数を低減することができる。具体的に、グリスGは、第1主面41と第1部分51の間、第2主面42と第2部分52の間、第1部分51と後述の弾性部63の間、及び、第2部分52と後述の曲面部62の間のそれぞれに塗布されている。
【0028】
駆動部70は、
図6に示すように、挟込部60と、モータ71と、支持体72と、ガイドシャフト73と、回路基板74と、を備える。
【0029】
モータ71は、例えば、PM(Permanent Magnet)型のステッピングモータからなる。モータ71は、制御部80の制御で動作し、
図6に示す、X方向に延びる回転軸71aを回転させる。回転軸71aの外周面には、螺旋状のネジ溝が形成されている。
【0030】
支持体72は、主にモータ71を支持するものであり、例えば、金属から形成されている。支持体72は、筐体14の底部14b(
図2参照)に対して固定される平板部72aと、X方向において互いに対向する第1壁部721及び第2壁部722と、を有する。支持体72は、ビス等の固定手段によって平板部72aが底部14bに固定される。なお、支持体72は、図示しない緩衝部材を介して底部14bに固定されていてもよい。第1壁部721は平板部72aの一端部から立設され、第2壁部722は平板部72aの他端部から立設されている。第1壁部721における第2壁部722と対向する面の裏面に、モータ71が取り付けられている。モータ71は、ビス等の固定手段により第1壁部721に固定されている。モータ71から延びる回転軸71aは、第1壁部721に設けられた挿通孔O1を通って、第2壁部722に設けられた軸受孔O2に回転可能に支持されている。
【0031】
ガイドシャフト73は、挟込部60の移動方向を案内するものであり、回転軸71aと同様にX方向に延びている。ガイドシャフト73は、一端が第1壁部721に支持され、他端が第2壁部722に支持されている。
【0032】
挟込部60は、スライダ61と、互いに向かい合って、カバー50を介してレバー40を挟み込む曲面部62及び弾性部63と、を有する。
【0033】
スライダ61にはガイドシャフト73が挿入されるガイド孔O3が形成されている。また、スライダ61には回転軸71aのネジ溝と噛み合うナット部(図示せず)が設けられており、当該ナット部は、回転軸71aの回転に応じてスライダ61をX方向に移動させる。このような構成により、スライダ61は、回転軸71aの回転に応じて、ガイドシャフト73に沿ってX方向にスライド可能である。スライダ61には、上方に立つとともに互いに対向する一対の壁部61a、61bが設けられている。
【0034】
図3、
図4に示すように、曲面部62及び弾性部63は、スライダ61の上方に設けられている。曲面部62は壁部61aに設けられ、弾性部63は壁部61bに設けられている。曲面部62は、カバー50の第2部分52に向かう凸状の曲面を有し、この曲面の先端が第2部分52と実質的に点接触する。なお、曲面部62は、円柱の外周面に相当する形状を有し、第2部分52と実質的に線接触してもよい。弾性部63は、例えば、カバー50の第1部分51を押圧する板ばねからなる。弾性部63は、カバー50を介してレバー40を曲面部62に向かって付勢する。これにより、挟込部60は、カバー50との接触抵抗を低減させつつ、カバー50を介してレバー40を良好に挟み込むことができる。スライダ61と一対の壁部61a、61bと曲面部62とは、例えば、ポリアセタール等の合成樹脂材料から一体に形成されている。なお、曲面部62と弾性部63は、上記と逆の位置関係で設けられてもよい。
【0035】
図6に示す回路基板74は、各種回路が形成され、モータ71、モータ71を駆動するための駆動回路、スイッチ75等が実装されたプリント回路板である。回路基板74は、支持体72の第1壁部721の上部に固定されている。スイッチ75は、X方向において挟込部60と対向する位置に設けられる。スイッチ75は、X方向に往復移動可能な挟込部60と接触すると、接触したことを示す検出信号を制御部80に供給する。制御部80は、当該検出信号を取得した際の挟込部60の位置を原点とし、凹面鏡13の駆動制御を行う。
【0036】
制御部80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータから構成され、ミラー駆動装置20の動作を制御する。ROMには、CPUの処理手順を定めるプログラム、凹面鏡13の初期設定位置を示すデータ等の固定データが記憶される。例えば、初期設定位置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等のデータを書き換え可能な不揮発性メモリに記憶される。例えば、制御部80は、筐体14の所定位置に設けられた、図示せぬプリント回路板(回路基板74とは異なる基板)に実装されている。
【0037】
この実施形態では、制御部80は、ミラー駆動装置20の動作だけでなく、HUD装置10の全体動作を制御し、表示部11の表示動作も制御する。例えば、制御部80は、車両1の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)等の車載システムと通信を行い、車両情報を示す画像を表示部11に表示させる。
【0038】
また、制御部80は、前述の駆動回路を介し、マイクロステップ駆動方式でモータ71の動作を制御する。制御部80は、モータ71の動作を制御して挟込部60をX方向に移動させることで、凹面鏡13の回転位置を制御する。例えば、制御部80は、挟込部60がスイッチ75に接触した地点を原点としてRAMに記憶し、この原点を基準として、駆動中のモータ71の駆動ステップ数を数えることで凹面鏡13の現在位置を特定する。
【0039】
また、制御部80は、虚像Vの表示が可能である凹面鏡13の回転範囲内で凹面鏡13の位置を調整することで、ユーザ4から見た虚像Vの上下方向における表示位置を調整する。当該調整は、ユーザ4の視点位置を検出する視点検出部、ユーザ4による入力操作を受け付ける操作部などの周知の構成からの情報に基づき実行される。そして、制御部80は、調整後の凹面鏡13の位置を新たな初期設定位置とし、メモリに記憶されている初期設定位置を更新する。
【0040】
ここで、凹面鏡13と挟込部60との位置関係について説明する。
図2において、挟込部60がX方向に沿って左に移動すると、凹面鏡13は軸線AXを中心に右回りに回転する。一方、挟込部60がX方向に沿って右に移動すると、凹面鏡13は軸線AXを中心に左回りに回転する。挟込部60がX方向に沿って往復可能な範囲のうち、挟込部60が最も左にある位置は、挟込部60がスイッチ75に接触する原点位置である。一方、当該往復可能な範囲のうち、挟込部60が最も右にある位置(最もスイッチ75から離れた位置)を最離反位置とする。また、原点位置と最離反位置の間にあり、挟込部60が原点位置から所定距離だけ離れた位置を境界位置とする。
挟込部60が原点位置から境界位置までの範囲(以下、表示不能範囲と言う。)にある場合、凹面鏡13は、表示光Lをウインドシールド3に到達させない姿勢で、虚像Vの表示を不能とする表示不能状態に制御される。一方、挟込部60が境界位置から最離反位置までの範囲(以下、表示可能範囲と言う。)にある場合、凹面鏡13は、表示光Lをウインドシールド3に到達させることが可能な姿勢で、虚像Vの表示を可能とする表示可能状態に制御される。
【0041】
車両1に搭載されたバッテリー等からの電力に基づき、HUD装置10が起動すると、制御部80は、モータ71を駆動して挟込部60をスイッチ75に接触させ、接触した地点を原点として記憶する。制御部80は、原点を記憶した後、挟込部60を表示不能範囲から表示可能範囲に移動させ、凹面鏡13を表示不能状態から表示可能状態に変化させる。そして、制御部80は、表示可能範囲の中における位置であって、メモリに記憶された初期設定位置に挟込部60を位置させる。その後、制御部80は、表示部11の動作を制御し、虚像Vの表示制御を行う。
【0042】
この実施形態では、挟込部60が最離反位置にあるときにカバー50が第1状態であり、挟込部60が原点位置にあるときにカバー50が第2状態であるように設定される。こうすれば、カバー50がレバー40に対して延在方向Sに摺動可能な範囲と、挟込部60がX方向に移動可能な範囲とを対応させることができ、良好な機械的構成を提供できる。以下、挟込部60とカバー50の動作を説明する。
挟込部60が最離反位置にあるときには、カバー50は、
図3に示すように、第1規制部53がレバー40の先端面43と接触する第1状態にある。挟込部60が最離反位置から原点位置に移動していくと、凹面鏡13が軸線AXを中心に
図1の右回りに回転していく。この過程で、カバー50は、レバー40に対して下方に摺動していき、
図4に示すように、第1規制部53がレバー40の先端面43から徐々に離れていく。やがて、挟込部60が原点位置に到達すると、カバー50は、第2規制部53がレバー40の基端面44と接触する、図示せぬ第2状態となる。第2状態から第1状態への遷移は、カバー50が以上と逆に動作する。
【0043】
以上に説明したミラー駆動装置20及びHUD装置10は、軸線AXを中心に回転可能に設けられた凹面鏡13(反射鏡の一例)と、凹面鏡13と共に移動するレバー40と、レバー40を覆うカバー50と、軸線AXを中心に凹面鏡13を回転駆動する駆動部70と、を備える。駆動部70は、カバー50を介してレバー40を挟み込む挟込部60を有し、挟込部60を直線移動させることで、凹面鏡13を回転駆動する。そして、カバー50は、挟込部60の直線移動に応じてレバー40に対して摺動する。
ここで、レバー40にカバー50をビス等の固定手段で固定する比較例を考えた場合、挟込部60のX方向の移動に応じて、カバー50が挟込部60に対してのみ摺動するため、カバー60及び挟込部60が顕著に摩耗していく虞がある。
しかしながら、以上の実施形態で説明した構成によれば、挟込部60のX方向の移動に応じて、挟込部60及びカバー50の相対的な摺動と、カバー50及びレバー40の相対的な摺動とが生じるため、各部への負担を分散することができる。結果として、当該構成によれば、レバー40及び挟込部60の摩耗を抑制できる。また、当該構成によれば、カバー50の摩耗を抑制できる。また、当該構成によれば、凹面鏡13の回転駆動によって耳障りな音が生じることも抑制できる。
【0044】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、実施形態に適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0045】
以上の実施形態では、挟込部60が最離反位置にあるときにカバー50が第1状態であり、挟込部60が原点位置にあるときにカバー50が第2状態であるように設定される例を示した。しかしながら、挟込部60のX方向における位置と、レバー40に対するカバー50の位置との対応関係は以上の例に限定されず、任意に設定可能である。
【0046】
レバー40及びカバー50の形状は以上の例に限定されない。挟込部60の直線移動に応じてレバー40に対してカバー50を摺動させることができれば、レバー40は、円柱などの柱状であってもよい。
【0047】
表示部11と凹面鏡13とを結ぶ表示光Lの光路において、鏡を何枚用いるか、どのように表示光Lの光路を折り返すか等は、設計に応じて適宜変更可能である。
【0048】
以上では、ミラー駆動装置20が凹面鏡13を回転駆動する例を説明したが、ミラー駆動装置20は、他の曲面鏡、平面鏡など回転駆動する構成であってもよい。また、ミラー駆動装置20は、HUD装置10以外の装置に設けられてもよい。
【0049】
表示部11は、LCDを用いたものに限られず、OLED(Organic Light-Emitting Diode)を用いたものであってもよい。また、表示部11は、例えば、DMD(Digital Micromirror Device)、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型表示デバイスを用いたものであってもよい。
【0050】
表示光Lの投射対象は、車両1のウインドシールド3に限定されず、板状のハーフミラー、ホログラム素子等により構成されるコンバイナであってもよい。
【0051】
HUD装置10が搭載される車両1の種類は限定されない、HUD装置10は、自動四輪車、自動二輪車など様々な車両に搭載可能である。また、HUD装置10は、航空機、船舶、スノーモービル等、車両1以外の乗り物に搭載されてもよい。
【0052】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0053】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0054】
1…車両、2…ダッシュボード、3…ウインドシールド、4…ユーザ
L…表示光、V…虚像
10…ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置
11…表示部
13…凹面鏡(反射鏡の一例)
20…ミラー駆動装置
30…ホルダ、
40…レバー
41…第1主面、42…第2主面、43…先端面、44…基端面
50…カバー
51…第1部分、52…第2部分、53…第1規制部、54…第2規制部
60…挟込部
61…スライダ、62…曲面部、63…弾性部
70…駆動部
80…制御部
AX…軸線、S…延在方向、G…グリス