(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】媒体、カートリッジ、及び媒体作成方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/02 20060101AFI20240814BHJP
B41J 17/32 20060101ALI20240814BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20240814BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240814BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240814BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240814BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240814BHJP
【FI】
G09F3/02 W
B41J17/32 A
B41J3/36 T
B32B27/00 M
B32B27/20 A
B32B7/027
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2020219015
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】西原 佳佑
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-034163(JP,A)
【文献】特開2018-058933(JP,A)
【文献】特開平10-081100(JP,A)
【文献】特開2012-245769(JP,A)
【文献】特開2017-185679(JP,A)
【文献】特開2008-106112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B41J 3/01-3/54
3/62
17/00-17/42
27/00-27/22
31/00-35/38
C09J 7/00-7/50
G09F 1/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱媒体と粘着媒体とを互いの厚み方向に重ねて貼り合わすことで構成されるサーマルプリンタに用いられる媒体であって、
前記感熱媒体は、
透明性を有し、第1面を有する感熱媒体基材と、
前記感熱媒体基材の前記第1面側に設けられ、透明性を有し、所定温度以上に加熱されることで透明性が低下して発色する第一発色層と
を備え、
前記粘着媒体は、
粘着媒体基材と、
粘着層と
を備え、
前記粘着媒体は、パール顔料を含有し、
前記粘着媒体は前記粘着層が前記感熱媒体の前記感熱媒体基材の前記第1面側から貼り合わされ
、
前記粘着層は、透明性を有し、
前記パール顔料は、前記粘着層に含有され、
前記粘着媒体基材は、複数の色からなり、
前記粘着媒体基材には、前記複数の色の内少なくとも二つの色の色差によって表現される模様が形成されることを特徴とする媒体。
【請求項2】
前記粘着媒体基材は、前記複数の色の内少なくとも二つの色がグラデーション状に変化するグラデーション領域を有することを特徴とする請求項
1に記載の媒体。
【請求項3】
前記粘着媒体基材に凹凸が形成されることを特徴とする請求項
1又は2の何れかに記載の媒体。
【請求項4】
前記感熱媒体は、前記第一発色層と前記感熱媒体基材との間に設けられ、透明性を有し、前記所定温度と異なる温度に加熱されることで透明性が低下して前記第一発色層とは異なる色に発色する第二発色層を更に備えることを特徴とする請求項1~
3の何れかに記載の媒体。
【請求項5】
請求項1~
4の何れかに記載の媒体を収納するカートリッジであって、
ケースと、
前記ケースの内部に設けられ、前記感熱媒体を保持する第一保持部と、
前記ケースの内部に設けられ、前記粘着媒体を保持する第二保持部と
を備えることを特徴とするカートリッジ。
【請求項6】
感熱媒体と粘着媒体とを互いの厚み方向に重ねて貼り合わすことで構成されるサーマルプリンタに用いられる媒体を作成する媒体作成方法であって、
前記感熱媒体は、透明性を有し、第1面を有する感熱媒体基材と、前記感熱媒体基材の前記第1面側に設けられ、透明性を有し、所定温度以上に加熱されることで透明性が低下して発色する第一発色層とを備え、
前記粘着媒体は、粘着媒体基材と、粘着層とを備え、
前記粘着媒体は、パール顔料を含有
し、
前記粘着層は、透明性を有し、
前記パール顔料は、前記粘着層に含有され、
前記粘着媒体基材は、複数の色からなり、
前記粘着媒体基材には、前記複数の色の内少なくとも二つの色の色差によって表現される模様が形成され、
前記媒体作成方法は、
前記感熱媒体を加熱することで印刷する印刷工程と、
前記粘着媒体を前記印刷工程で印刷された前記感熱媒体の前記感熱媒体基材の前記第1面側に貼り合わせて前記媒体を作成する貼り合わせ工程と
を備えることを特徴とする媒体作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体、カートリッジ、及び媒体作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の感熱媒体は基材と複数の感熱層とを有する。複数の感熱層は加熱されるときの温度に応じて各層に応じた色を発色する。これにより、特許文献1では複数色で印刷された印刷結果物が作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の印刷結果物は複数の感熱層の発色により色の三属性(色相、彩度、及び明度)が変化する色彩を表現できる。しかしながら、複数の感熱層の発色では、例えば光沢感等といった視覚効果を得ることができないので、特許文献1の印刷結果物は多様な色を表現することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、多様な色を表現できる媒体、カートリッジ、及び媒体作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る媒体は、感熱媒体と粘着媒体とを互いの厚み方向に重ねて貼り合わすことで構成されるサーマルプリンタに用いられる媒体であって、前記感熱媒体は、透明性を有し、第1面を有する感熱媒体基材と、前記感熱媒体基材の前記第1面側に設けられ、透明性を有し、所定温度以上に加熱されることで透明性が低下して発色する第一発色層とを備え、前記粘着媒体は、粘着媒体基材と、粘着層とを備え、前記粘着媒体は、パール顔料を含有し、前記粘着媒体は前記粘着層が前記感熱媒体の前記感熱媒体基材の前記第1面側から貼り合わされることを特徴とする。
【0007】
第一態様によれば、感熱媒体が加熱されることで第一発色層が発色する。又、粘着媒体に到達した入射光がパール顔料にて一部がパール顔料の芯材および色材の表面で反射される。また、パール顔料で反射された光が異なるパール顔料に到達することで、更にパール顔料の芯材および色材の表面で反射される。そして、パール顔料の芯材および色材の表面で反射された反射光は互いに干渉することにより、粘着媒体に反射光の干渉に伴う色彩(以下、干渉色という。)と光沢感が付与される。媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、感熱媒体で表現される色の三属性(色相、彩度、及び明度)と粘着媒体の光沢感・干渉色とが組み合わされ、第一発色層の発色だけでは表現できない多様な色を表現できる。
【0008】
本発明の第一態様に係る媒体において、前記パール顔料は、前記粘着層に含有されてもよい。この場合、粘着層におけるパール顔料の芯材・色材の表面で反射された反射光は、互いに干渉することにより、粘着層にパール顔料による干渉色と光沢感が付与される。ここにおいて、媒体は感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0009】
本発明の第一態様に係る媒体において、前記粘着層は、透明性を有してもよい。この場合、粘着層が透明性を有するので、粘着媒体に到達した入射光が粘着媒体基材まで届き、パール顔料の芯材・色材の表面での反射光と、粘着媒体基材の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着媒体にパール顔料と粘着媒体基材による干渉色が付与される。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0010】
本発明の第一態様に係る媒体において、前記パール顔料は、前記粘着層に含有され、前記粘着媒体基材は、複数の色からなってもよい。この場合、感熱媒体に貼り合わされる粘着層はパール顔料により光沢感が付与される。また、粘着層におけるパール顔料の芯材・色材の表面での反射光と、粘着媒体基材での反射光とが干渉される。ここで、粘着媒体基材で反射する反射光の色彩は、反射した箇所における粘着媒体基材の色に応じて変化する。そして、粘着媒体基材の色に応じて変化する反射光とパール顔料の芯材・色材の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着媒体での干渉光の色彩が変化する。更に、粘着層に含まれるパール顔料による光沢感が組み合わされ、粘着媒体は多様な色を表現できる。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0011】
本発明の第一態様に係る媒体において、前記粘着媒体基材には、前記複数の色の内少なくとも二つの色の色差によって表現される模様が形成されてもよい。この場合、粘着媒体基材で反射する反射光の色彩は、反射した箇所における粘着媒体基材の色に応じて変化する。そして、粘着媒体基材の色に応じて変化する反射光とパール顔料の芯材・色材の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着媒体での干渉光の色彩が幾何学的に変化する。更に、粘着層に含まれるパール顔料による光沢感が組み合わされ、粘着媒体は多様な色を表現できる。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0012】
本発明の第一態様に係る媒体において、前記粘着媒体基材は、前記複数の色の内少なくとも二つの色がグラデーション状に変化するグラデーション領域を有してもよい。この場合、粘着媒体基材のグラデーション領域において少なくとも二つの色がグラデーション状に変化するので、粘着媒体基材で反射する反射光の色彩は、反射した箇所における粘着媒体基材の色に応じて変化する。そして、粘着媒体基材の色に応じて変化する反射光とパール顔料の芯材・色材の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着媒体での干渉光の色彩が連続的に変化する。更に、粘着層に含まれるパール顔料による光沢感が組み合わされ、粘着媒体は多様な色を表現できる。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0013】
本発明の第一態様に係る媒体において、前記粘着媒体基材に凹凸が形成されてもよい。この場合、粘着媒体基材に凹凸が形成されることにより、粘着層の厚みが粘着媒体基材の凹凸により変化する。粘着層と粘着媒体基材との境界面で反射する反射光はパール顔料の芯材・色材の表面での反射光と干渉される。ここで、粘着層と粘着媒体基材との境界面で反射する反射光とパール顔料の芯材・色材の表面での反射光との位相関係は、粘着層の厚みに応じて変化する。よって、粘着媒体での干渉光の色彩が粘着媒体基材に形成される凹凸によって変化する。更に、粘着層に含まれるパール顔料による光沢感が組み合わされ、粘着媒体は多様な色を表現できる。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0014】
本発明の第二態様に係る媒体は、感熱媒体と粘着媒体とを互いの厚み方向に重ねて貼り合わすことで構成されるサーマルプリンタに用いられる媒体であって、前記感熱媒体は、透明性を有し、第1面を有する感熱媒体基材と、前記感熱媒体基材の前記第1面側に設けられ、透明性を有し、所定温度以上に加熱されることで透明性が低下して発色する第一発色層とを備え、前記粘着媒体は、粘着媒体基材と、粘着層とを備え、前記粘着媒体は、金属色が付与され、前記粘着媒体は前記粘着層が前記感熱媒体の前記感熱媒体基材の前記第1面側から貼り合わされることを特徴とする。第二態様によれば、感熱媒体が加熱されることで第一発色層が発色する。又、粘着媒体に金属色が付与されることで、粘着媒体に到達した入射光が反射し、粘着媒体に光沢感が付与される。媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、感熱媒体で表現される色の三属性(色相、彩度、及び明度)と粘着媒体の光沢感とが組み合わされ、第一発色層の発色だけでは表現できない多様な色を表現できる。
【0015】
本発明の第二態様に係る媒体において、前記粘着層は透明性を有し、前記金属色は、前記粘着媒体基材に付与されてもよい。この場合、粘着媒体に到達した入射光が粘着媒体基材まで届き、金属色が付与された粘着媒体基材にて反射する。これにより、粘着媒体基材に光沢感が付与される。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0016】
本発明の第三態様に係る媒体は、感熱媒体と粘着媒体とを互いの厚み方向に重ねて貼り合わすことで構成されるサーマルプリンタに用いられる媒体であって、前記感熱媒体は、透明性を有し、第1面を有する感熱媒体基材と、前記感熱媒体基材の前記第1面側に設けられ、透明性を有し、所定温度以上に加熱されることで透明性が低下して発色する第一発色層とを備え、前記粘着媒体は、粘着媒体基材と、粘着層とを備え、前記粘着媒体は、蛍光色が付与され、前記粘着媒体は前記粘着層が前記感熱媒体の前記感熱媒体基材の前記第1面側から貼り合わされることを特徴とする。第三態様によれば、感熱媒体が加熱されることで第一発色層が発色する。又、粘着媒体に蛍光色が付与されることで、粘着媒体に蛍光性が付与される。故に、粘着媒体に到達した入射光の一部は粘着媒体で吸収された後、粘着媒体から発せられる。媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、感熱媒体で表現される色の三属性(色相、彩度、及び明度)と粘着媒体の蛍光色とが組み合わされ、第一発色層の発色だけでは表現できない多様な色を表現できる。
【0017】
本発明の第三態様に係る媒体において、前記粘着層は透明性を有し、前記蛍光色は、前記粘着媒体基材に付与されてもよい。この場合、粘着媒体基材に蛍光色が付与される。粘着媒体に到達した入射光は粘着媒体基材まで届き、一部が粘着媒体基材で吸収された後、粘着媒体基材から発せられる。ここにおいて、媒体は、感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされることで、より多様な色を表現できる。
【0018】
本発明の第一~第三態様に係る媒体において、前記感熱媒体は、前記第一発色層と前記感熱媒体基材との間に設けられ、透明性を有し、前記所定温度と異なる温度に加熱されることで透明性が低下して前記第一発色層とは異なる色に発色する第二発色層を更に備えてもよい。この場合、感熱媒体は第二発色層を更に備えるので、第一発色層の色と第二発色層の色との組み合わせにより多様な色相、彩度、及び明度を表現できる。媒体は感熱媒体と粘着媒体とが貼り合わされ、より多様な色を表現できる。
【0019】
本発明の第四態様に係るカートリッジは、請求項1~12の何れかに記載の媒体を収納するカートリッジであって、ケースと、前記ケースの内部に設けられ、前記感熱媒体を保持する第一保持部と、前記ケースの内部に設けられ、前記粘着媒体を保持する第二保持部とを備えることを特徴とする。第四態様によれば、第一~第三態様と同様の効果を奏することができる。
【0020】
本発明の第五態様に係る媒体作成方法は、感熱媒体と粘着媒体とを互いの厚み方向に重ねて貼り合わすことで構成されるサーマルプリンタに用いられる媒体を作成する媒体作成方法であって、前記感熱媒体は、透明性を有し、第1面を有する感熱媒体基材と、前記感熱媒体基材の前記第1面側に設けられ、透明性を有し、所定温度以上に加熱されることで透明性が低下して発色する第一発色層とを備え、前記粘着媒体は、粘着媒体基材と、粘着層とを備え、前記粘着媒体は、パール顔料を含有するか、あるいは、金属色が付与されるか、あるいは、蛍光色が付与され、前記媒体作成方法は、前記感熱媒体を加熱することで印刷する印刷工程と、前記粘着媒体を前記印刷工程で印刷された前記感熱媒体の前記感熱媒体基材の前記第1面側に貼り合わせて前記媒体を作成する貼り合わせ工程とを備えることを特徴とする。第五態様によれば、第一~第三態様と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】テープカセット30および装着部8の斜視図である。
【
図3】テープカセット30が装着された装着部8の平面図である。
【
図4】感熱テープ4、粘着テープ7、および貼り合わせテープ9を示す斜視図である。
【
図6】第一粘着層における光の多重反射を説明する図である。
【
図7】サーマルプリンタ1による印刷の流れを説明する平面図である。
【
図8】サーマルプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図9】貼り合わせテープ作成処理のフローチャートである。
【
図11】第二実施形態に係る粘着テープ7Aを説明する図である。
【
図12】第三実施形態に係る粘着テープ7Bを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、制御等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0023】
以下では、
図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、および下側をそれぞれサーマルプリンタ1の前側、後側、右側、左側、上側、および下側とする。
図2の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、および下側を、それぞれ、テープカセット30の前側、後側、右側、左側、上側、および下側とする。
図3では、理解を容易にするために、装着部8にテープカセット30が装着された状態を、上ケース312を取り除いて示している。
【0024】
第一実施形態の印刷システムは、サーマルプリンタ1(
図1参照)とテープカセット30(
図2参照)とを含む。サーマルプリンタ1はテープカセット30を使用して、感熱テープ4に文字、図形、記号等を印刷できる。印刷された感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされることで、貼り合わせテープ9が作成される。
【0025】
<サーマルプリンタ1の外観構成>
図1に示すように、サーマルプリンタ1は本体カバー2を備える。本体カバー2は箱状である。本体カバー2の上面前部にはキーボード3が設けられる。ユーザはキーボード3を操作することで各種情報をサーマルプリンタ1に入力する。キーボード3の後側にはディスプレイ5が設けられる。ディスプレイ5は入力された各種情報を表示可能である。
【0026】
ディスプレイ5の後側にはカセットカバー6が設けられる。カセットカバー6は後述の装着部8(
図2参照)を上側から開閉可能に覆う。ユーザはテープカセット30(
図2参照)の交換時にカセットカバー6を開閉する。本体カバー2の左面後部には排出スリット(図示略)が設けられる。排出スリットは貼り合わせテープ9をサーマルプリンタ1の外部に排出する。
【0027】
<サーマルプリンタ1の内部構成>
図2に示すように、カセットカバー6(
図1参照)の下側には装着部8が設けられる。装着部8はテープカセット30に対応した形状で本体カバー2の上面から下方に凹む。装着部8にはテープカセット30が着脱可能に装着される。装着部8の前部にはヘッドホルダ19が設けられる。ヘッドホルダ19は板状であり、上下左右に延びる。ヘッドホルダ19の前面191(
図3参照)にはサーマルヘッド10が設けられる。サーマルヘッド10は複数の発熱体11を備える。複数の発熱体11は上下方向に一列に並ぶ。サーマルヘッド10はテープカセット30が装着部8に装着された状態で後述の開口部341から露出した感熱テープ4を、複数の発熱体11によって加熱する。
【0028】
ヘッドホルダ19の左斜め後方には後述の感熱テープ4および粘着テープ7を搬送するための駆動軸18が設けられる。駆動軸18は装着部8の底面から上方に延び、搬送モータ95(
図8参照)によって回転駆動される。
【0029】
図3に示すように、駆動軸18の左側には切断機構16が設けられる。切断機構16は切断モータ96(
図8参照)の駆動により貼り合わせテープ9を切断する。ヘッドホルダ19の前側にはプラテンホルダ12が設けられる。プラテンホルダ12はアーム状であり、支持軸121によって上下方向の軸周りに揺動可能に支持される。支持軸121はプラテンホルダ12の右端に設けられる。
【0030】
プラテンホルダ12の先端側にはプラテンローラ15と可動ローラ14とが共に回転可能に支持される。プラテンローラ15はプラテンホルダ12の揺動に伴ってサーマルヘッド10に相対して接離可能である。可動ローラ14はプラテンローラ15の左側に設けられ、プラテンホルダ12の揺動に伴って後述の搬送ローラ33に相対して接離可能である。
【0031】
カセットカバー6が開放されると、プラテンホルダ12が待機位置(
図3の点線で図示する位置)に向けて移動し、カセットカバー6が閉鎖されると、プラテンホルダ12が印刷位置(
図3の実線で図示する位置)に向けて移動するように構成される。待機位置では、プラテンホルダ12が装着部8から離れる方向に移動する。このため、ユーザはテープカセット30を装着部8に着脱できる。
【0032】
印刷位置では、プラテンホルダ12が装着部8に近付く方向に移動する。このため、装着部8にテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15が感熱テープ4をサーマルヘッド10に押圧し、可動ローラ14が感熱テープ4と粘着テープ7とを重ね合わせて搬送ローラ33に押圧する。
【0033】
プラテンローラ15は搬送モータ95(
図8参照)によって駆動軸18と共に回転駆動される。なお、搬送による感熱テープ4の弛みを抑制するため、プラテンローラ15の回転速度が駆動軸18(搬送ローラ33)の回転速度よりも小さくなるように、プラテンローラ15および駆動軸18が複数のギア(図示略)を介して搬送モータ95に連結される。
【0034】
<テープカセット30の構成>
図2に示すように、テープカセット30はカセットケース31を有する。カセットケース31は略直方体状であり、下ケース311と上ケース312とが組み合わされることで構成される。
【0035】
カセットケース31の前面301にはアーム部34が設けられる。アーム部34はカセットケース31の右前部から左前方に延びる。アーム部34の左端には開口部341が設けられる。開口部341は上下方向に延びるスリット状に形成され、後述の第一供給ロール40(
図3参照)から引き出された感熱テープ4をカセットケース31の内部から外部に排出する。これにより、感熱テープ4の一部がカセットケース31の外部に露出する。
【0036】
アーム部34の後側にはヘッド挿入部39が形成される。ヘッド挿入部39はカセットケース31を上下方向に貫通する。ヘッド挿入部39の左前部は前方に開口する。以下、この開口を「ヘッド開口391」という。ヘッド開口391は開口部341よりも感熱テープ4の搬送方向下流(左側)に位置する。ヘッド挿入部39には装着部8にテープカセット30が装着された状態でヘッドホルダ19が挿入される。
【0037】
ヘッド挿入部39の左側には搬送ローラ33が設けられる。搬送ローラ33は搬送方向(左右方向)において開口部341と後述のガイド部38との間に位置する。搬送ローラ33は筒状であり、上下方向に延びる。搬送ローラ33の前端部はカセットケース31から前方に露出する。搬送ローラ33は感熱テープ4と粘着テープ7とが重ね合わされた状態で粘着テープ7を支持する。搬送ローラ33は支持孔35によって回転可能に支持される。支持孔35はカセットケース31を上下方向に貫通する。搬送ローラ33の内側には装着部8にテープカセット30が装着された状態で駆動軸18が挿入される。搬送ローラ33は駆動軸18による回転駆動によって回転し、感熱テープ4および粘着テープ7を搬送する。
【0038】
カセットケース31の左前角部にはガイド部38が設けられる。ガイド部38は開口部341よりも搬送方向下流(左側)、詳細には搬送ローラ33よりも搬送方向下流に位置する。ガイド部38は上下方向に延びるスリット状に形成される。貼り合わせテープ9は搬送ローラ33を経て搬送されると、ガイド部38の内側を通過する。このとき、ガイド部38は貼り合わせテープ9を幅方向両側から支持する。これにより、貼り合わせテープ9の姿勢が保持された状態で貼り合わせテープ9がカセットケース31から排出される。つまり、ガイド部38は貼り合わせテープ9をカセットケース31の外部へとガイドする。
【0039】
図3に示すように、カセットケース31の内部には第一供給ロール40と第二供給ロール70とが収容される。第一供給ロール40は感熱テープ4の供給源であり、カセットケース31内の右後部に設けられる。第一供給ロール40は、感熱テープ4が第一テープスプール21の回転中心から離れる方向に向かって平面視で時計回り方向に第一テープスプール21に巻回されることで構成される。詳細には、感熱テープ4は後述の基材41(
図4(A)参照)に対して複数の感熱層42(
図4(A)参照)が内側になるように巻回される。第一テープスプール21は支持孔36によって回転可能に支持される。支持孔36はカセットケース31を上下方向に貫通する。
【0040】
第二供給ロール70は粘着テープ7の供給源であり、カセットケース31内の左後部、つまり第一供給ロール40の左側に設けられる。第二供給ロール70は、粘着テープ7が第二テープスプール22の回転中心から離れる方向に向かって平面視で反時計回り方向に第二テープスプール22に巻回されることで構成される。詳細には、粘着テープ7は後述の第一粘着層73(
図4(B)参照)が第二粘着層74(剥離紙75、
図4(B)参照)に対して内側になるように巻回される。第二テープスプール22は支持孔37によって回転可能に支持される。支持孔37はカセットケース31を上下方向に貫通する。
【0041】
<感熱テープ4の構成>
以下では、
図4の上側および下側をそれぞれ各テープの上側および下側とする(
図7、
図11、
図12も同様)。
図4(A)に示すように、感熱テープ4は長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には感熱テープ4は基材41と複数の感熱層42と複数の遮熱層43とオーバーコート層44(以下、総称して「感熱テープ4の各層」ともいう。)とを有する。第一実施形態では複数の感熱層42は第一感熱層421と第二感熱層422と第三感熱層423とを含む。複数の遮熱層43は第一遮熱層431と第二遮熱層432とを含む。
【0042】
基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、第二感熱層422、第二遮熱層432、第三感熱層423、およびオーバーコート層44は、この順で感熱テープ4の下側から順に感熱テープ4の厚み方向(
図4(A)の上下方向)に並んで積層される。つまり、オーバーコート層44は複数の感熱層42に対して基材41とは反対側、詳細には感熱テープ4の上面に設けられる。以下、基材41の第一感熱層421が積層する面を第1面という。
【0043】
基材41は樹脂フィルムであり、詳細には無発泡樹脂フィルムであり、より詳細には無発泡ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。つまり、基材41の内部には気泡が含まれていない。
【0044】
複数の感熱層42の各層は、各層に応じた発色温度に加熱されることで、各層に応じた色を発色する。複数の感熱層42には例えば特開2008-6830号公報に記載の薬品が用いられる。
【0045】
第一感熱層421は第一遮熱層431の下面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第一感熱層421は第一温度を超えた場合に第一色に発色する。第一実施形態では第一色はシアンである。
【0046】
第二感熱層422は第二遮熱層432の下面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第二感熱層422は第二温度を超えた場合に第二色に発色する。第二温度は第一温度よりも高い。第一実施形態では第二色はマゼンタである。
【0047】
第三感熱層423は第二遮熱層432の上面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第三感熱層423は第三温度を超えた場合に第三色に発色する。第三温度は第二温度よりも高い。第一実施形態では第三色はイエローである。
【0048】
感熱テープ4において、第一色がシアンであり、第二色がマゼンタであり、第三色がイエローである。つまり、第一感熱層421、第二感熱層422、および第三感熱層423は色の三原色を発色する。感熱テープ4では複数の感熱層42の発色により色の三原色を組み合わせることで多くの色を表現(カラー表示)できる。
【0049】
複数の遮熱層43はシート状である。複数の遮熱層43の熱伝導性は低いので、複数の遮熱層43は熱伝導に対して抵抗として作用する。従って、複数の遮熱層43のそれぞれの内部には熱が伝わる方向に温度勾配が生じる。後述するようにサーマルヘッド10が感熱テープ4を
図4の上側から加熱した場合には、各遮熱層43の下面の温度は、各遮熱層43の上面の温度よりも低くなる。これにより、各遮熱層43は、各遮熱層43の上下両側に隣接する2つの感熱層42の温度に、遮熱層43の熱伝導性に応じて所望の差をつけることができる。
【0050】
詳細には、第二遮熱層432は第二感熱層422の温度を第三感熱層423の温度よりも低くすることができる。第一遮熱層431は第一感熱層421の温度を第二感熱層422の温度よりも低くすることができる。このように、感熱テープ4は遮熱層43の作用によって、第一感熱層421の温度を第一温度より高く且つ第二温度よりも低い温度に、第二感熱層422の温度を第二温度よりも高く且つ第三温度よりも低い温度に、第三感熱層423の温度を第三温度よりも高い温度に、それぞれ意図的に制御することが可能となる。
【0051】
オーバーコート層44は第三感熱層423の上面にコーティングされることで膜状に形成される。オーバーコート層44は基材41とは反対側(つまり、感熱テープ4の上面側)から複数の感熱層42を保護する。
【0052】
感熱テープ4は全体として感熱テープ4の厚み方向に可視光透過性(透明性)を有する。つまり、感熱テープ4の各層はいずれも透明性を有する。基材41の可視光透過率(%)は、複数の感熱層42、複数の遮熱層43、およびオーバーコート層44の少なくともいずれかの可視光透過率と同じでもよいし、いずれの可視光透過率とも異なっていてもよい。感熱テープ4の各層の可視光透過率は例えば90%以上であり、好ましくは99%以上であり、より好ましくは99.9%以上である。感熱テープ4の各層の透明性は、感熱テープ4の各層の可視光透過率が90%未満であったとしても、少なくとも感熱層42での発色を基材41を介してユーザが視認できる程度であればよい。感熱テープ4の各層はいずれも透明または半透明であり、好ましくは透明である。
【0053】
<粘着テープ7の構成>
図4(B)に示すように、粘着テープ7は長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には粘着テープ7は両面粘着テープ71と剥離紙75とを備える。両面粘着テープ71は基材72と第一粘着層73と第二粘着層74とを有する。基材72は不透明であり、白色と黒色の二色からなる。基材72には、白色と黒色の二色の色差によって表現される模様が形成される。より具体的には、
図5に示すように、基材72には白色の格子と黒色の格子とが基材72の長手方向と短手方向のそれぞれの方向に交互に並べられた市松模様が形成される。
【0054】
第一粘着層73は基材72の下面に設けられる。第二粘着層74は基材72の上面に設けられる。つまり、両面粘着テープ71は基材72の上下両面に粘着剤が塗布されることで構成される。第一粘着層73、第二粘着層74の粘着剤としては、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系、ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、合成ゴム系、天然ゴム系、アクリル樹脂系等の粘着剤が使用できる。
【0055】
第一粘着層73は透明性を有する。第一粘着層73には、光輝顔料であるパール顔料710(
図6参照)が添加される。第一実施形態のパール顔料710は鱗片上雲母、ガラス、アルミナ、金属等の芯材711の表面に、酸化チタン、酸化鉄等の色材やソリッド顔料を色材712としてコーティングしたものが使用される。パール顔料710の色目によっては、芯材711に色材712をコーティングせず、芯材711の反射光の干渉で色彩を醸し出すものも使用できる。
【0056】
そして、このときの上記ソリッド顔料には、酸化物等の無機顔料及び捺染系顔料等の有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華等の酸化物;アルミナ白、酸化鉄黄等の水酸化物:硫化亜鉛、リトポン等の硫化物;黄鉛、モ
リブデートオレンジ等のクロム酸化物;ホワイトカーボン、クレー等のケイ酸塩;沈降性硫酸バリウム、バライト粉等の硫酸塩;炭酸カルシウム、鉛白等の炭酸塩;その他、フェロシアン化物(紺青)、炭素(カーボンブラック)等、が使用できる。有機顔料としては、例えば、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料、キノリンエローレーキ等の酸性染料、マラカイトグリーン等の建染染料、アリザリンレーキ等の媒染染料を含む捺染系顔料;カーミン6B等の溶性アゾ、ジスアゾエロー等の不溶性アゾ、クロモフアルエロー3G等の縮合アゾ、ニッケルアゾエロー等のアゾ錯塩、パーマネントオレンジHL等のベンズイダゾロンアゾを含むアゾ系顔料;フタロシアニンブルー等のフタロシアニン顔料;フラバンスロンエロー等の縮合多環顔料;ナフトールエローS等のニトロ系顔料;ピグロントグリーンB等のニトロソ系顔料;その他、アルカリブルー等、が使用できる。
【0057】
図6に示すように、パール顔料710は第一粘着層73の内部で分散し、第一粘着層73の長手方向に配向する。第一粘着層73に入射した入射光の一部は第一粘着層73内に分散するパール顔料710に到達する。パール顔料710に到達した入射光はパール顔料710の芯材711および色材712の表面で一部が反射される。また、パール顔料710で反射された光が第一粘着層73内に分散する異なるパール顔料710に到達することで、更にパール顔料710の芯材711および色材712の表面で一部が反射される(層間多重反射)。これにより芯材711および色材712の表面で反射された反射光が互いに干渉されることで、第一粘着層73には反射光の干渉に伴う真珠のような色彩(干渉色)と光沢感が付与される。
【0058】
第二粘着層74にはパール顔料710が添加されていない。第一実施形態において第二粘着層74は透明または不透明である。基材72の可視光透過率(%)は、第一粘着層73および第二粘着層74の少なくともいずれかの可視光透過率と同じでもよいし、いずれの可視光透過率とも異なっていてもよい。第一実施形態において第一粘着層73の透明性は、少なくとも基材72の色を第一粘着層73を介してユーザが視認できる程度であればよい。
【0059】
剥離紙75は第二粘着層74を介して両面粘着テープ71に貼り合わされる。剥離紙75には切れ目76が設けられる。切れ目76は粘着テープ7の長手方向に延び、剥離紙75を短手方向に2つに分断する。なお、切れ目76は両面粘着テープ71の一部にも入り込んでいるが、第一粘着層73には達していない。つまり、基材72は切れ目76を跨いで一続きに繋がっている。換言すれば、両面粘着テープ71は切れ目76を跨いで一続きに繋がっている。
【0060】
<貼り合わせテープ9の構成>
図4(C)に示すように、貼り合わせテープ9は、印刷された感熱テープ4の上面に粘着テープ7の下面が貼り合わされることで構成される。換言すると、感熱テープ4の基材41の第1面側にあるオーバーコート層44と、粘着テープ7の第一粘着層73とが貼り合わされる。このため、貼り合わせテープ9では、基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、第二感熱層422、第二遮熱層432、第三感熱層423、オーバーコート層44、第一粘着層73、基材72、第二粘着層74、および剥離紙75が、この順で厚み方向に並んで積層される。
【0061】
ユーザは貼り合わせテープ9を基材41側(つまり、貼り合わせテープ9の下面側)から見る(目視方向Y1参照)。感熱テープ4が全体として透明性を有するので、貼り合わせテープ9を基材41側からユーザが見ると、複数の感熱層42の各層の発色(つまり、印刷された画像)を基材41を介して見ることができ、且つ粘着テープ7が背景として見える。第一実施形態では基材72は不透明であり、白色と黒色の二色の市松模様が形成される。貼り合わせテープ9の基材41側から入射して基材72で反射する反射光の色彩は反射した箇所における基材72の色に応じて変化する。そして、基材72での反射光とパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着テープ7での干渉光の色彩が幾何学的に変化する。更に、貼り合わせテープ9の基材41側から入射してパール顔料710で多重反射された反射光による光沢感が組み合わされる。よって、貼り合わせテープ9を基材41側からユーザが見ると、背景が光沢感をもって幾何学的に色彩が変化する。ユーザは例えば剥離紙75を両面粘着テープ71から剥離して所定の壁、台紙等に貼り付けて、貼り合わせテープ9を使用できる。
【0062】
なお、粘着テープ7側(つまり、貼り合わせテープ9の上面側)からでは、剥離紙75を両面粘着テープ71から剥離したとしても、両面粘着テープ71の方が複数の感熱層42よりも手前にあるので、ユーザは複数の感熱層42の発色(つまり、印刷された画像)を見ることができない。
【0063】
<感熱テープ4および粘着テープ7の搬送経路>
図3に示すように、感熱テープ4は第一供給ロール40の右端から下方に引き出され、カセットケース31の右前角部で左方に曲がる。感熱テープ4はアーム部34の内部を通過し、開口部341からカセットケース31の外部へ出る。
【0064】
ヘッド開口391では、
図7(A)に示すように、感熱テープ4の複数の感熱層42側(感熱テープ4の上面側)がサーマルヘッド10に対向し、感熱テープ4の基材41側(感熱テープ4の下面側)がプラテンローラ15に対向する。つまり、サーマルヘッド10はテープカセット30が装着部8に装着された状態で複数の感熱層42に対して基材41とは反対側(つまり、感熱テープ4の後側)に位置する。このため、ヘッド開口391において感熱テープ4は基材41とは反対側からサーマルヘッド10によって加熱される(印刷方向Y2参照)。
【0065】
図3に示すように、感熱テープ4はヘッド開口391を経由して搬送ローラ33と可動ローラ14との間を通過する。このとき、
図7(B)に示すように、感熱テープ4の複数の感熱層42側が搬送ローラ33に対向し、感熱テープ4の基材41側が可動ローラ14に対向する。
【0066】
図3に示すように、粘着テープ7は第二供給ロール70の左端から下方に引き出される。粘着テープ7は搬送ローラ33の外周のうち右前部に接触しながら左方に曲がる。このとき、
図7(B)に示すように、粘着テープ7の剥離紙75側(粘着テープ7の上面側)が搬送ローラ33に対向し、粘着テープ7の両面粘着テープ71側(粘着テープ7の下面側)が可動ローラ14に対向する。このため、搬送ローラ33は、複数の感熱層42に対して基材41とは反対側から粘着テープ7が感熱テープ4に重ね合わされた状態で、粘着テープ7に対して感熱テープ4とは反対側から粘着テープ7を支持する。
【0067】
可動ローラ14は、感熱テープ4と粘着テープ7とが重ね合わされた状態で、搬送ローラ33との間で挟んで感熱テープ4と粘着テープ7とを貼り合わせる。これにより、貼り合わせテープ9が作成される。
図3に示すように、貼り合わせテープ9はガイド部38の内側を通過してテープカセット30の外部に排出される。貼り合わせテープ9は切断機構16へと搬送されて、切断機構16により切断される。切断された貼り合わせテープ9は本体カバー2の排出スリットからサーマルプリンタ1の外部へと排出される。
【0068】
<サーマルプリンタ1の電気的構成>
図8に示すように、サーマルプリンタ1はCPU91を備える。CPU91はサーマルプリンタ1を制御し、プロセッサとして機能する。CPU91には、フラッシュメモリ92、ROM93、RAM94、キーボード3、ディスプレイ5、サーマルヘッド10、搬送モータ95、および切断モータ96が電気的に接続する。
【0069】
フラッシュメモリ92はCPU91によって実行されるプログラム等を記憶する。ROM93は各種プログラムの実行時に必要な各種パラメータを記憶する。RAM94は画像を形成するための印刷データ等、種々の一時データを記憶する。
【0070】
<サーマルプリンタ1による貼り合わせテープ作成処理>
ユーザはキーボード3を操作することで印刷開始指示をサーマルプリンタ1に入力する。CPU91は印刷開始指示を取得すると、フラッシュメモリ92からプログラムを読み出して貼り合わせテープ作成処理を実行する。貼り合わせテープ作成処理ではサーマルプリンタ1による印刷動作が制御されて、貼り合わせテープ9が作成される。
【0071】
図9に示すように、CPU91はユーザによって指定された画像を示す画像データを取得する(S1)。ユーザは貼り合わせテープ9に形成される画像をキーボード3を介してあらかじめ指定する。貼り合わせテープ9に形成される画像とは、ユーザが貼り合わせテープ9を目視方向Y1から見た場合に視認可能な画像である。
【0072】
CPU91は取得された画像データに基づいて印刷制御を行う(S2)。S2では、CPU91は搬送モータ95を制御して駆動軸18を回転駆動する。これにより、搬送ローラ33と可動ローラ14との協働によって、第一供給ロール40から感熱テープ4が引き出され、且つ第二供給ロール70から粘着テープ7が引き出される。
【0073】
CPU91は搬送モータ95を制御しながらサーマルヘッド10を制御する。詳細には、CPU91は感熱テープ4を搬送しながら、複数の発熱体11を選択的に発熱させる。このとき、上述したように、感熱テープ4は複数の感熱層42に対して基材41とは反対側からサーマルヘッド10によって加熱される。
【0074】
CPU91は印刷された感熱テープ4に、粘着テープ7を貼り合わせる制御を行う(S3)。具体的には、CPU91は搬送モータ95を制御して駆動軸18を回転駆動することで、印刷された感熱テープ4および粘着テープ7を搬送する。搬送ローラ33と可動ローラ14との間で、複数の感熱層42に対して基材41とは反対側から、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされる。これにより、貼り合わせテープ9が作成される。CPU91は切断モータ96を制御することで切断機構16によって貼り合わせテープ9を切断する(S4)。CPU91は貼り合わせテープ作成処理を終了する。
【0075】
<第一実施形態の主な効果>
貼り合わせテープ9は、印刷された感熱テープ4の上面に粘着テープ7の下面が貼り合わされることで構成される。感熱テープ4は基材41と複数の感熱層42と複数の遮熱層43とオーバーコート層44とを有する。感熱テープ4の各層はいずれも透明性を有する。基材41の第1面側には、感熱層42である第三感熱層423が設けられる。第三感熱層423は第三温度を超えた場合に第三色(イエロー)に発色する。粘着テープ7は両面粘着テープ71を備える。両面粘着テープ71は基材72と第一粘着層73と第二粘着層74とを有する。第一粘着層73は基材72の下面に設けられる。第一粘着層73には、光輝顔料であるパール顔料710が添加される。
【0076】
この場合、
図6に示すように、パール顔料710は第一粘着層73の内部で分散し、第一粘着層73の長手方向に配向する。第一粘着層73に入射した入射光の一部は第一粘着層73内に分散するパール顔料710に到達する。パール顔料710に到達した入射光はパール顔料710の芯材711および色材712の表面で一部が反射される。また、パール顔料710で反射された光が第一粘着層73内に分散する異なるパール顔料710に到達することで、更にパール顔料710の芯材711および色材712の表面で一部が反射される。これにより、芯材711および色材712の表面で反射された反射光が互いに干渉されることで、第一粘着層73には反射光の干渉に伴う真珠のような色彩(干渉色)と光沢感が付与される。そして、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされることで、貼り合わせテープ9において、第三感熱層423で表現される第三色(イエロー)と、粘着テープ7で表現される光沢感・干渉色とが組み合わされる。よって、貼り合わせテープ9は第三感熱層423の発色だけでは表現できない多様な色を表現できる。
【0077】
パール顔料710は第一粘着層73に含有される。この場合、感熱テープ4に貼り合わされる第一粘着層73はパール顔料710により光沢感が付与される。また、パール顔料710の芯材711・色材712の表面での反射光と、基材72での反射光とが干渉される。これにより、粘着テープ7にパール顔料710と基材72による干渉色が付与される。ここにおいて、貼り合わせテープ9は感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされることで、感熱テープ4の発色だけでは表現できない、より多様な色を表現できる。
【0078】
第一粘着層73は透明性を有する。この場合、粘着テープ7に到達した入射光が基材72まで届き、第一粘着層73に含まれるパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光と、基材72の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着テープ7にパール顔料710と基材72による干渉色が付与される。ここにおいて、貼り合わせテープ9は感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされることで、感熱テープ4の発色だけでは表現できない、より多様な色を表現できる。
【0079】
基材72は複数の色(第一実施形態では、白色および黒色)からなる。これにより、感熱テープ4に貼り合わされる第一粘着層73はパール顔料710により光沢感が付与される。また、基材72で反射する反射光の色彩は、反射した箇所における基材72の色に応じて変化する。そして、基材72の色に応じて変化する反射光とパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着テープ7での干渉光の色彩が変化する。更に、パール顔料710による光沢感が組み合わされ、粘着テープ7は多様な色を表現できる。ここにおいて、貼り合わせテープ9は感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされ、感熱テープ4の発色だけでは表現できない、より多様な色を表現できる。
【0080】
基材72には白色と黒色との二色の色差によって表現される模様が形成される。これにより、基材72の位置に応じて基材72の色が変化し、基材72で反射する反射光の色彩は反射した箇所における基材72の色に応じて変化する。そして、基材72の色に応じて変化する反射光とパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着テープ7での干渉光の色彩が幾何学的に変化する。更に、パール顔料710による光沢感が組み合わされ、粘着テープ7は多様な色を表現できる。ここにおいて、貼り合わせテープ9は感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされ、感熱テープ4の発色だけでは表現できない、より多様な色を表現できる。
【0081】
感熱テープ4には基材41と第三感熱層423との間に、感熱層42である第一感熱層421、第二感熱層422が設けられる。第一感熱層421は第一温度を超えた場合に第一色(シアン)に発色する。第二感熱層422は第二温度を超えた場合に第二色(マゼンタ)に発色する。第三感熱層423で発色される第三色と、第一感熱層421で発色される第一色、および第二感熱層422で発色される第二色との組み合わせにより、感熱テープ4は多様な色(色相、彩度、および明度)を表現できる。貼り合わせテープ9において、感熱テープ4で表現される色と、粘着テープ7で表現される光沢感、干渉色とが組み合わされる。よって、貼り合わせテープ9は多様な色を表現できる。
【0082】
テープカセット30はカセットケース31を有する。カセットケース31の内部には支持孔36、37が設けられる。支持孔36は第一テープスプール21を回転可能に支持する。支持孔37は第二テープスプール22を回転可能に支持する。第一テープスプール21には、感熱テープ4が第一テープスプール21の回転中心から離れる方向に向かって平面視で時計回り方向に第一テープスプール21に巻回される。第二テープスプール22には、粘着テープ7が第二テープスプール22の回転中心から離れる方向に向かって平面視で反時計回り方向に第二テープスプール22に巻回される。これにより、テープカセット30は多様な色を表現できる貼り合わせテープ9を提供できる。
【0083】
CPU91は印刷制御を行う(S2)。S2では、CPU91は搬送モータ95を制御しながらサーマルヘッド10を制御する。詳細には、CPU91は感熱テープ4を搬送しながら、複数の発熱体11を選択的に発熱させる。このとき、感熱テープ4の複数の感熱層42はサーマルヘッド10によって加熱される。複数の感熱層42の各層は各層に応じた発色温度に加熱されることで各層に応じた色を発色する。CPU91は印刷された感熱テープ4に、粘着テープ7を貼り合わせる制御を行う(S3)。詳細には、CPU91は搬送モータ95を制御して、印刷された感熱テープ4および粘着テープ7を搬送する。搬送ローラ33と可動ローラ14との間で、複数の感熱層42に対して基材41とは反対側から、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされる。これにより、多様な色を表現できる貼り合わせテープ9が作成される。
【0084】
<第一実施形態の対応記載>
上記実施形態において感熱テープ4が本発明の「感熱媒体」に相当する。粘着テープ7が本発明の「粘着媒体」に相当する。貼り合わせテープ9が本発明の「媒体」に相当する。基材41が本発明の「感熱媒体基材」に相当する。第三温度が本発明の「所定温度」に相当する。第三感熱層423が本発明の「第一発色層」に相当する。基材72が本発明の「粘着媒体基材」に相当する。第一粘着層73が本発明の「粘着層」に相当する。第一感熱層421、第二感熱層422が本発明の「第二発色層」に相当する。テープカセット30が本発明の「カートリッジ」に相当する。カセットケース31が本発明の「ケース」に相当する。支持孔36が本発明の「第一保持部」に相当する。支持孔37が本発明の「第二保持部」に相当する。
図9のS2の処理が本発明の「印刷工程」に相当する。
図9のS3の処理が本発明の「貼り合わせ工程」に相当する。
【0085】
<第一実施形態の変形例>
本発明は上記実施形態から種々の変更が可能である。例えば上記実施形態において基材72の色は白色と黒色以外の二色で構成されてもよい。また、基材72の色は白と透明のように、一部が透明で構成されてもよい。また、基材72の色は一色または三色以上で構成されてもよい。また、基材72は無色透明でもよい。
【0086】
基材72の色が三色以上で構成される場合、基材72が有する色から少なくとも二つの色の色差によって模様が表現されてもよい。基材72が白色、黒色、および赤色の三色を有し、白色、黒色、および赤色の三色の色差によって模様が表現される一例を
図10に示す。
図10では基材72の赤色の箇所を斜線を用いて図示する。また、基材72に、基材72の色の色差によって表現される模様が形成されなくてもよい。
【0087】
上記実施形態において基材72が有する複数の色の内少なくとも二つの色がグラデーション状に変化するグラデーション領域を有してもよい。一例として、基材72が白色と黒色を有する場合、基材72の長手方向の一端側が白色、他端側が黒色であり、基材72の色が一端側から他端側に向かうにつれ、白色から連続的に黒色に変化してもよい。この場合、基材72全体がグラデーション領域となる。他の例として、複数の格子が基材72の長手方向と短手方向のそれぞれの方向に並べられた模様が形成される場合に、複数の格子の一部が長手方向の一端側が白色、他端側が黒色であり、該格子の中の色が一端側から他端側に向かうにつれ、白色から連続的に黒色に変化してもよい。この場合、該格子がグラデーション領域となる。グラデーション領域において三色以上の色がグラデーション状に変化してもよい。
【0088】
この場合、基材72のグラデーション領域において少なくとも二つの色がグラデーション状に変化するので、基材72で反射する反射光の色彩は、反射した箇所における基材72の色に応じて変化する。そして、基材72の色に応じて変化する反射光とパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光とが干渉される。これにより、粘着テープ7での干渉光の色彩が連続的に変化する。更に、パール顔料710による光沢感が組み合わされ、粘着テープ7は多様な色を表現できる。ここにおいて、貼り合わせテープ9は感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされ、感熱テープ4の発色だけでは表現できない、より多様な色を表現できる。
【0089】
上記実施形態において基材72に凹凸が形成されてもよい。この場合、基材72の凹凸により、基材72に塗布される第一粘着層73の厚みが変化する。第一粘着層73と基材72との境界面で反射する反射光はパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光と干渉される。第一粘着層73と基材72との境界面で反射した反射光とパール顔料710の芯材711および色材712の表面での反射光との位相関係は、第一粘着層73の厚みに応じて変化する。よって、粘着テープ7での干渉光の色彩が基材72に形成される凹凸によって変化する。更に、パール顔料710による光沢感が組み合わされ、粘着テープ7は多様な色を表現できる。ここにおいて、貼り合わせテープ9は感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされ、感熱テープ4の発色だけでは表現できない、より多様な色を表現できる。
【0090】
上記実施形態において基材72はパール顔料710を含有してもよい。この場合、第一粘着層73はパール顔料710を含有していなくてもよい。同様に、上記実施形態において第二粘着層74はパール顔料710を含有してもよい。この場合、第一粘着層73および基材72の少なくとも一方はパール顔料710を含有していなくてもよい。パール顔料710を含有する基材72または第二粘着層74よりも下側の層(例えば、第一粘着層73)は透明または半透明であり、透明性を有することが望ましい。
【0091】
第二粘着層74は不透明でもよいし、半透明または透明でもよい。基材72の可視光透過率は感熱テープ4の各層のいずれかの可視光透過率よりも低くてもよいし、感熱テープ4の各層のいずれかの可視光透過率よりも高くてもよい。両面粘着テープ71が透明または半透明の場合(つまり透明性を有する場合)、例えば貼り合わせテープ9が所定の壁に貼り付けられると、貼り付けられた壁が背景となる。このため、ユーザは貼り合わせテープ9を貼り付ける壁に応じて背景を自由に変更できる。
【0092】
上記実施形態において粘着テープ7は基材72と第一粘着層73とで構成されてもよい。この場合、例えば貼り合わせテープ9の完成後、基材72のうち第一粘着層73とは反対側の面(つまり、外に露出する面)にユーザが粘着剤を塗布してもよい。粘着テープ7は自己粘着性を有していてもよい。粘着テープ7の厚みが小さい場合、テープカセット30は第二供給ロール70の大きさを小型化できる。よって、テープカセット30はカセットケース31を小型化できる。
【0093】
上記実施形態において切れ目76は直線でなくてもよく、例えば波線等でもよい。切れ目76は1本でなくてもよく、複数本の切れ目76が幅方向に並んで剥離紙75に設けられていてもよい。例えば長手方向に所定の間隔を空けて複数本の切れ目76が幅方向に延びてもよいし、幅方向および長手方向に対して斜めに延びていてもよい。
【0094】
上記実施形態において基材41は発泡PETフィルムでもよい。基材41は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMMA)、ポリブテン(PB)、ポリブタジエン(BDR)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン(NY)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、発泡ポリスチレン(FS/EPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、普通セロハン(PT)、防湿セロハン(MST)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ビニロン(VL)、ポリウレタン(PU)、およびトリアセチルセルロース(TAC)等の樹脂フィルムであってもよい。この場合、基材41は発泡樹脂フィルムでもよいし、無発泡樹脂フィルムでもよい。
【0095】
基材41が発泡樹脂フィルムで構成されている場合、発泡樹脂の熱伝導率は、無発泡の同じ樹脂の熱伝導率よりも小さいので、変形例は簡易な構成で基材41の熱伝導性を低くできる。基材41の熱伝導性が低い場合、サーマルプリンタ1による印刷時には、感熱層42側から感熱テープ4に入力された熱が、基材41へと拡散しにくい。よって、変形例は感熱層42を発色させるために感熱テープ4に入力する熱量を簡易な構成で少なくできる。すなわち、変形例は基材41に発泡樹脂フィルムを用いることで、熱伝導性を低くするために特殊な材料を基材41に用いることなく、感熱層42を発色させるために感熱テープ4に入力する熱量を少なくできる。
【0096】
サーマルプリンタ1による印刷後、感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされると、基材41は感熱層42を保護するラミネート部材として機能する。基材41の熱伝導率が低ければ、熱伝導率の高い素材を使う場合に比べて、基材41は基材41側から入力される熱に対して感熱層42の不要な変色を防ぐことができる。
【0097】
基材41が無発泡樹脂フィルムで構成されている場合、発泡樹脂フィルムの場合よりも基材41の可視光透過率が高くなりやすい。よって、貼り合わせテープ9は印刷された画像をユーザに綺麗に見せることができる。
【0098】
基材41は、用途に応じた程度の透明性があれば、金属箔(アルミニウム箔、銅箔)、真空蒸着フィルム(VM)等であってもよいし、半透明紙、和紙、上質紙、無塵紙、グラシン紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、ラミネート紙(ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等)、合成紙、クラフト紙等の各種紙でもよい。基材41は、不織布、ガラスクロス等でもよい。
【0099】
オーバーコート層44は例えば遮熱層43と同じ材質であってもよい。つまり、上記実施形態において第三遮熱層(図示略)がオーバーコート層44として設けられてもよい。オーバーコート層44は省略されてもよい。この場合、サーマルヘッド10から複数の感熱層42への熱伝達性が高くなる。よって、サーマルプリンタ1はサーマルヘッド10による加熱時間を短縮化できる。サーマルプリンタ1はオーバーコート層44にかかるコストを削減できる。
【0100】
上記実施形態では感熱テープ4が複数の感熱層42を有する。これに対し、感熱テープ4は1つの感熱層のみを有していてもよい。この場合、例えば基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、およびオーバーコート層44は、この順に並んで積層される。印刷後に切れ目76を有する粘着テープ7が感熱テープ4に対して基材41とは反対側から貼り合わされる。このため、テープカセット30は切れ目76による印刷品質の劣化を抑制できる。つまり、印刷された感熱テープ4に後から粘着テープ7が貼り合わされるので、テープカセット30は複数の感熱層42を有する感熱テープ4の場合のみならず、1つの感熱層を有する感熱テープ4であってもホワイトライン現象の発生を抑制できる。
【0101】
なお、感熱テープ4が1つの感熱層を有する場合、第一遮熱層431およびオーバーコート層44の両方とも省略されてもよい。この場合、基材41の上面に薬品が塗布されることで上記1つの感熱層が形成されてもよい。
【0102】
上記実施形態において複数の感熱層42は2層で構成されてもよい。つまり、第三感熱層423は省略されてもよい。この場合、第二遮熱層432も省略されてもよい。この場合、第一遮熱層431の下面に薬品が塗布されることで第一感熱層421が形成され、第一遮熱層431の上面に薬品が塗布されることで第二感熱層422が形成されてもよい。つまり、感熱テープ4には少なくとも1つの遮熱層が設けられていればよい。
【0103】
上記実施形態において複数の感熱層42は4層以上で構成されてもよい。例えば第三感熱層423に対して第二感熱層422とは反対側に第四感熱層(図示略)が設けられてもよい。この場合、第四感熱層は例えば第四温度を超えた場合に第四色に発色する。第四温度は第三温度よりも高い。第四色は例えばブラックである。この場合、厚み方向において第三感熱層423と第四感熱層との間には第三遮熱層(図示略)が設けられる。
【0104】
上記実施形態において第一色、第二色、および第三色はそれぞれシアン、マゼンタ、およびイエロー以外の色でもよく、例えばそれぞれ同じ色でもよい。貼り合わせテープ9は同じ色の層を複数重ね合わせることで、形成された画像の奥行きを表現できる。
【0105】
上記実施形態において複数の感熱層42はそれぞれ複数の遮熱層43の上面に薬品が塗布されることで形成されてもよい。複数の感熱層42はあらかじめシート状に形成され、複数の遮熱層43に接着されてもよい。
【0106】
上記実施形態においてカセットケース31には第一供給ロール40に代えて第一供給ファンホールドが収容されてもよい。つまり、第一供給ファンホールドは、感熱テープ4が折り畳まれた状態で感熱テープ4の供給部としてカセットケース31に収容されていてもよい。カセットケース31には第二供給ロール70に代えて第二供給ファンホールドが収容されてもよい。つまり、第二供給ファンホールドは、粘着テープ7が折り畳まれた状態で粘着テープ7の供給部としてカセットケース31に収容されていてもよい。
【0107】
上記実施形態において第一供給ロール40は第一テープスプール21が省略された、いわゆるコアレスタイプであってもよい。第二供給ロール70は第二テープスプール22が省略された、いわゆるコアレスタイプであってもよい。
【0108】
上記実施形態において搬送ローラ33はサーマルプリンタ1側に設けられていてもよい。つまり、搬送ローラ33は駆動軸18にあらかじめ装着されていてもよい。印刷された感熱テープ4および粘着テープ7はサーマルプリンタ1側の部材(駆動軸18にあらかじめ装着されている搬送ローラ33および可動ローラ14)によって互いに貼り合わされてもよい。
【0109】
上記実施形態においてS1の処理はサーマルプリンタ1に接続された外部機器(パーソナルコンピュータ、スマートフォン等)で実行されてもよい。また、S4の処理は省略されてもよい。例えば貼り合わせテープ9の切断はユーザによって手動で行われてもよい。切断機構16は切断位置において粘着テープ7を長手方向に一続きに繋げたまま、貼り合わせテープ9のうち感熱テープ4を厚み方向に全部切断する、いわゆるハーフカットを実行できてもよい。
【0110】
ユーザが手作業で、印刷された感熱テープ4と粘着テープ7とを貼り合わせてもよい。この場合、サーマルプリンタ1には感熱テープ4と粘着テープ7とを貼り合わせる機構が設けられていなくてもよい。カセットケース31の上面、底面、側面の一部は省略されてもよい。搬送ローラ33は回転不能であってもよく、例えば固定された円柱体、板状体等であってもよい。この場合、例えば搬送モータ95の駆動力は可動ローラ14に伝達されてもよい。
【0111】
CPU91の代わりにマイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等がプロセッサとして用いられてもよい。貼り合わせテープ作成処理は複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。非一時的な記憶媒体は情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。プログラムは例えばネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、フラッシュメモリ92に記憶されてもよい。この場合、プログラムはサーバに備えられたハードディスクドライブ等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。なお、上述した変形例は矛盾が生じない限り、互いに組み合わされてもよい。
【0112】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態について説明する。以下では、第一実施形態と同様の機能を有する構成には第一実施形態と同じ符号を付して説明を省略または簡略化する。第二実施形態は粘着テープ7に代わり粘着テープ7Aがテープカセット30に収容されている点が第一実施形態と異なる。第二実施形態では第一実施形態と同じサーマルプリンタ1が使用される。第二実施形態では第一実施形態と同じテープカセット30が使用される。第二実施形態では第一実施形態と同じ制御(貼り合わせテープ作成処理)が行われる。
【0113】
図11(A)に示すように、粘着テープ7Aは両面粘着テープ71Aと剥離紙75とを備える。両面粘着テープ71Aは基材72Aと第一粘着層73Aと第二粘着層74とを有する。基材72Aは不透明で、白色である。基材72Aの下面には金属蒸着膜77が形成される。金属蒸着膜77は、例えばアルミニウム蒸着膜である。金属蒸着膜77は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や化学蒸着法により形成される。
【0114】
第一粘着層73Aは金属蒸着膜77の下面に設けられる。第一粘着層73Aは透明である。第一粘着層73Aの粘着剤は第二粘着層74と同様の粘着剤が使用できる。第一粘着層73Aにはパール顔料710が添加されていない。
図11(B)に示すように、貼り合わせテープ9は、印刷された感熱テープ4のオーバーコート層44と、粘着テープ7Aの第一粘着層73Aとが貼り合わされて構成される。
【0115】
<第二実施形態の主な効果、変形例>
粘着テープ7Aは両面粘着テープ71Aを備える。両面粘着テープ71Aは基材72Aと第一粘着層73Aと第二粘着層74とを有する。基材72Aの下面には金属蒸着膜77が形成される。これにより、基材72Aには金属色が付与される。粘着テープ7Aに到達した入射光は金属蒸着膜77で反射する。故に粘着テープ7Aに金属色による光沢感が付与される。そして、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7Aが貼り合わされることで、貼り合わせテープ9において、感熱層42で表現される色と、粘着テープ7Aの光沢感とが組み合わされる。よって、貼り合わせテープ9は感熱層42の発色だけでは表現できない多様な色を表現できる。
【0116】
なお、第二実施形態では、金属蒸着膜77はアルミニウム以外の金属で構成されてもいい。金属蒸着膜77は基材72Aの上面、または基材72Aの上下両面に形成されてもよい。また、粘着テープ7Aに金属色を付与する別の手段として、基材72Aに金属粉を添加してもよい。この手段でも基材72Aに金属色が付与される。金属粉を添加する方法の場合、第一粘着層73Aまたは第二粘着層74が金属粉を含有してもよい。この場合、基材72Aは金属粉を含有しなくてもよい。また、基材72Aはシート(例えば、樹脂フィルム)と金属箔(アルミニウム箔、銅箔)とで構成されてもよい。この手段でも基材72Aに金属色が付与される。
【0117】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態について説明する。第一、第二実施形態と同様の機能を有する構成には第一実施形態と同じ符号を付して説明を省略または簡略化する。第三実施形態は粘着テープ7に代わり粘着テープ7Bがテープカセット30に収容されている点が第一実施形態と異なる。第三実施形態では第一実施形態と同じサーマルプリンタ1が使用される。第三実施形態では第一実施形態と同じテープカセット30が使用される。第三実施形態では第一実施形態と同じ制御(貼り合わせテープ作成処理)が行われる。
【0118】
図12(A)に示すように、粘着テープ7Bは両面粘着テープ71Bと剥離紙75とを備える。両面粘着テープ71Bは基材72Bと第一粘着層73Aと第二粘着層74とを有する。基材72Bには蛍光顔料が含有される。蛍光顔料は、例えばルモゲンエロー昼夜蛍光顔料である。
【0119】
第一粘着層73Aは基材72Bの下面に設けられる。
図12(B)に示すように、貼り合わせテープ9は印刷された感熱テープ4のオーバーコート層44と、粘着テープ7Bの第一粘着層73Aとが貼り合わされて構成される。
【0120】
<第三実施形態の主な効果、変形例>
粘着テープ7Bは両面粘着テープ71Bを備える。両面粘着テープ71Bは基材72Bと第一粘着層73Aと第二粘着層74とを有する。基材72Bは蛍光顔料を含有する。これにより、基材72Bには蛍光色が付与される。基材72Bには蛍光性が付与され、粘着テープ7Bに到達した入射光の一部は基材72Bで吸収された後、基材72Bから再放出される。そして、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7Bが貼り合わされることで、貼り合わせテープ9において、感熱層42で表現される色と、粘着テープ7Bの蛍光色とが組み合わされる。よって、貼り合わせテープ9は感熱層42の発色だけでは表現できない多様な色を表現できる。
【0121】
なお、第三実施形態では、蛍光顔料は、例えばルモゲンエロー昼夜蛍光顔料以外の蛍光顔料(例えば、シグナルレッド昼夜蛍光顔料、アニリンブラック昼光蛍光顔料等)でもよい。第一粘着層73Aまたは第二粘着層74は蛍光顔料を含有してもよい。この場合、基材72Bは蛍光顔料を含有しなくてもよい。
【0122】
第一実施形態~第三実施形態は、技術的に矛盾しない範囲内において、互いに適宜組み合わされ得る。具体的には、第一実施形態に係る粘着テープ7下面の一部に、第二実施形態に係る粘着テープ7Aの金属蒸着膜77が形成されてもよい。第一実施形態に係る粘着テープ7が、第三実施形態に係る粘着テープ7Bのように、基材72に蛍光顔料が添加されてもよい。第二実施形態に係る粘着テープ7Aの第一粘着層73Aに、第三実施形態に係る粘着テープ7Bの基材72Bに添加される蛍光顔料が添加されてもよい。これらは単なる組み合わせの一例であり、各実施形態の組み合わせは、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0123】
1 サーマルプリンタ
4 感熱テープ
7、7A、7B 粘着テープ
9 貼り合わせテープ
10 サーマルヘッド
11 発熱体
30 テープカセット
31 カセットケース
36、37 支持孔
41、72、72A、72B 基材
42 感熱層
71、71A、71B 両面粘着テープ
73、73A 第一粘着層
74 第二粘着層
77 金属蒸着膜
91 CPU
421 第一感熱層
422 第二感熱層
423 第三感熱層