(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
B25C 7/00 20060101AFI20240814BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20240814BHJP
B25F 5/00 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
B25C7/00 A
B25C1/04
B25F5/00 D
(21)【出願番号】P 2020523597
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019699
(87)【国際公開番号】W WO2019235178
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2018107810
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大塚 和弘
(72)【発明者】
【氏名】根内 拓哉
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179526(JP,A)
【文献】特開2012-115922(JP,A)
【文献】特開2014-108495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0228606(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0306752(US,A1)
【文献】米国特許第09205545(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 7/00
B25C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
作業者が操作力を付加して作動する操作部材と、
止具を打ち込む相手材に接触及び離反が可能であり、かつ、前記相手材に接触して作動する接触部材と、
圧縮性気体が供給及び排出される圧力室と、
前記圧力室に前記圧縮性気体が供給されると前記止具を打撃する方向に作動する打撃部と、
前記操作部材、および前記接触部材の作動に基づいて前記圧力室に前記圧縮性気体を供給する気体供給機構と、
前記操作部材および前記接触部材とは独立して設けられ、作業者が操作力を付加して作動するとともに、前記操作部材または前記接触部材の少なくとも一方の作動、もしくは、前記操作部材および前記接触部材の両方の作動に基づく前記気体供給機構の作動を制御する伝達制御部材と、を有し、
前記伝達制御部材に作業者の操作力が付加されない状態で、前記操作部材に操作力が付加されて作動し、前記接触部材が前記相手材に接触して作動した場合には、前記気体供給機構が前記圧力室に前記圧縮性気体を供給することが規制されるとともに、
前記操作部材および前記伝達制御部材に作業者の操作力が付加されて作動し、かつ、前記接触部材が接触して作動した場合には、前記気体供給機構が前記圧力室に前記圧縮性気体を供給することが許容され、前記打撃部による前記止具を打撃する動作が行われる打込機。
【請求項2】
前記伝達制御部材は、前記操作部材または前記接触部材の作動範囲の内外で移動可能であり、前記操作部材または前記接触部材の作動範囲内に位置する第1状態と、前記操作部材に対する操作力が解除されて前記操作部材または前記接触部材の作動範囲外に位置する第2状態と、を有する請求項1記載の打込機。
【請求項3】
前記操作部材に操作力が付加して作動されている場合に、前記伝達制御部材の状態を前記第1状態と前記第2状態とで切り替え可能な駆動部と、前記駆動部を制御するスイッチと、が設けられ、
前記駆動部は、
前記操作部材に操作力が付加されて作動し、かつ、前記スイッチに操作力が付加されて作動した場合に、前記伝達制御部材が前記第2状態となる解除制御と、
前記スイッチの操作力が解除された場合に、前記伝達制御部材を前記第1状態とする規制制御と、を行う、請求項2記載の打込機。
【請求項4】
前記伝達制御部材または前記駆動部の少なくとも一方は、電力が供給されて磁力を発生させる磁力形成要素を含み、
前記駆動部は、前記磁力形成要素に対する電力の供給と、電力の停止とを制御することにより、前記伝達制御部材の状態を前記第1状態と前記第2状態とで切り替え、
前記ハウジングは、前記操作部材を作動可能に支持する支持軸を有し、
前記支持軸は、前記操作部材を作動可能に支持し、かつ、前記伝達制御部材を作動可能に支持し、
前記操作部材を回動可能に支持する第1支持軸と、前記伝達制御部材を作動可能に支持する第2支持軸とが別々に設けられ、
前記解除制御は、前記操作部材に対する操作力が付加されて作動した時点から、前記伝達制御部材を前記第2状態にするものである、請求項3記載の打込機。
【請求項5】
前記伝達制御部材は前記作業者によって把持可能な伝達制御操作部材と、前記第1状態と前記第2状態を切替え可能な伝達制御摺動部を有する、請求項2記載の打込機。
【請求項6】
モード選択部材を有し、前記モード選択部材は、
前記接触部材を前記相手材に接触させて作動した状態で、前記操作部材に操作力を付加して作動することで前記気体供給機構が前記圧力室に前記圧縮性気体を供給する第1モードと、
前記操作部材に操作力を付加して作動した状態で、前記接触部材を前記相手材に接触させて作動することで前記気体供給機構が前記圧力室に前記圧縮性気体を供給する第2モードと、
を有する、請求項1記載の打込機。
【請求項7】
前記伝達制御部材は、前記操作部材または前記接触部材の作動に基づく前記気体供給機構の作動を規制する第1状態と、前記操作部材または前記接触部材の作動に基づく前記気体供給機構の作動を許容する第2状態と、を有し、
前記操作部材に操作力が付加されて作動している場合に、前記伝達制御部材の状態を前記第1状態と前記第2状態とで切り替え可能な駆動部と、前記駆動部に対する電力の供給及び停止を行う電力供給部と、が設けられ、前記駆動部は、電力が供給されて起動し、前記電力供給部は、前記作業者が前記モード選択部材を操作して前記第1モードを選択すると、前記駆動部に対する電力の供給を停止し、前記作業者が前記モード選択部材を操作して前記第2モードを選択すると、前記駆動部に電力を供給する、請求項6記載の打込機。
【請求項8】
前記モード選択部材は、モード切替付勢部材を有し、前記作業者が前記モード選択部材の操作を行っている場合に
前記第2モードが維持され、前記作業者が前記モード選択部材の操作を中断している場合は、前記モード切替付勢部材によって前記第2モードが解除され前記第1モードが維持される、請求項6または請求項7記載の打込機。
【請求項9】
前記作業者が一方の手により把持し、前記操作部材を操作可能な第1把持部と、前記作業者が他方の手により把持し、前記モード選択部材に操作力を付加可能な第2把持部とを有した、請求項8記載の打込機。
【請求項10】
前記ハウジングに設けた枢支部と、前記枢支部を介して回動可能なモード切替操作部材と、前記モード選択部材、および、前記モード切替操作部材とを連結する線形部材と、を有し、前記モード切替操作部材が作業者によって操作された場合に、
前記第2モードが維持される、請求項8記載の打込機。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記操作部材を作動可能に支持する支持軸を有し、
前記支持軸を、前記止具を打撃する方向と交差する第1方向、および、前記第1
方向とは反対の第2方向に摺動可能、かつ、前記操作部材を回動可能に支持する軸受部と、前記支持軸に前記第1方向の付勢力を与える支持軸付勢部材と前記操作部材を
前記第2方向に摺動操作可能とする摺動操作部とを有し、
前記第1モードにおいて、前記操作部材は、前記作業者が前記軸受部の前記第1方向の端部にて回動する動作によって前記止具を打撃する動作が行われ、
前記第2モードにおいて、前記操作部材は、前記作業者が前記軸受部を
前記第2方向の端部に移動する操作と、回動する操作の両方がなされた場合に、前記止具を打撃する動作が行われる請求項6に記載の打込機。
【請求項12】
前記伝達制御部材は、前記圧力室に対する前記圧縮性気体の供給および排出を制御する制御弁部を有する、請求項1記載の打込機。
【請求項13】
作業者が把持するハンドルを備えたハウジングと、作業者が操作する操作部材と、止具を打ち込む相手材に接触および離反が可能であり、かつ、前記相手材に接触して作動する接触部材と、前記止具を打撃する方向に作動する打撃部と、前記打撃部に前記止具を打撃する方向の作動力を与える打撃駆動部と、を有する打込機であって、
前記操作部材は、前記作業者が前記ハンドルを把持した状態で、前記ハンドルを把持した手で操作可能な第1操作部材と、前記第1操作部材とは独立して設けられ、前記作業者が前記ハンドルを把持した手とは異なる他方の手により操作可能な第2操作部材と、を有し、
前記接触部材が前記相手材に接触して作動した状態で、前記第1操作部材が操作されると、前記第2操作部材の操作状態に関わらず、前記打撃駆動部が動作し、前記打撃部により前記止具を打撃し、
前記第1操作部材を操作し、前記第2操作部材を操作しない状態で、前記接触部材が作動されても前記打撃駆動部は動作せず、
前記第1
操作部材および
前記第2操作部材を操作した状態で、前記接触部材が作動されると、前記打撃部により前記止具を打撃する打込機。
【請求項14】
前記ハウジングから、
第1方向に延在する
第3把持部と、
前記第1方向と異なる
第2方向に延在する
第4把持部とを有し、
前記第1操作部材は、
前記第3把持部、又は、前記ハウジングと
前記第3把持部の接続領域に設けられ、
前記第2操作部材は、
前記第4把持部、又は、前記ハウジングと
前記第4把持部の接続領域に設けられる、請求項13記載の打込機。
【請求項15】
前記ハウジングは、本体部と、ヘッド部と、前記ハウジングから延在する
第5把持部とを有し、
前記第1操作部材は、
前記第5把持部、又は、前記ハウジングと
前記第5把持部の接続領域に設けられ、
前記第2操作部材は、前記ヘッド部に設けられる、請求項13記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮性気体の圧力で作動する打撃部を有する、打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮性気体が供給される圧力室と、圧力室に供給される圧縮性気体の圧力で作動する打撃部と、を有する打込機の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打込機は、打撃部、ピストン上室、メインバルブ室、シリンダ、蓄圧室、切替ノブ、気体供給機構としてのトリガバルブ、操作部材としてのトリガ、接触部材としてのプッシュレバー、を有する。特許文献1に記載された打込機は、トリガに操作力が付加され、かつ、プッシュレバーが相手材に押し付けられると、トリガバルブが作動して、蓄圧室の圧縮性気体がメインバルブ室に供給される。シリンダは、メインバルブ室の圧力で作動し、蓄圧室の圧縮性気体がピストン上室に供給され、打撃部が上死点から下死点に向けて作動する。
【0003】
特許文献1に記載された打込機は、作業者が切替ノブを操作して第1モードと第2モードとを切り替えることが可能である。作業者は、第1モードを選択した後、プッシュレバーを相手材に押し付けた後にトリガに操作力を付加する。作業者は、第2モードを選択した後、トリガに操作力を付加した状態で、プッシュレバーを相手材に押し付ける操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、第2モードにおいては、トリガに操作力を付加している状態であるため、プッシュレバーを相手材に押し付ける操作の過程で、意図している打込み位置とは若干異なった位置や角度に打ち込みがなされる場合があることを認識した。
【0006】
本発明の目的は、接触部材の作動力が気体供給機構に伝達されることを制限する機能を設け、作業者が能動的に当該制限を解除することが可能な打込機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の打込機は、操作部材を作動可能に支持する支持軸を備えたハウジングと、止具を打ち込む相手材に接触及び離反が可能であり、かつ、相手材に接触して作動する接触部材と、圧縮性気体が供給及び排出される圧力室と、圧力室に圧縮性気体が供給されると止具を打撃する方向に作動する打撃部と、操作部材、および、接触部材の作動に基づいて圧力室に圧縮性気体を供給する気体供給機構とを有し、操作部材または接触部材の少なくとも一方の作動、もしくは、操作部材および接触部材の両方の作動に基づく気体供給機構の作動を制御する伝達制御部材が設けられ、操作部材および伝達制御部材に操作力が付加され、かつ、接触部材が作動された場合に止具を打撃する動作が行われる。また、その余の具体的な手段は、下記発明を実施するための形態欄に記載された一部、又は、その全部の構成からなる。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態の打込機によれば、作業者が操作部材、及び、伝達制御部材に操作力を付加することに連動して、接触部材の作動力が気体供給機構に伝達されることを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の打込機のヘッドカバー内を示す断面図である。
【
図3】
図1の打込機のシリンダ内を示す断面図である。
【
図4】
図1の打込機に設けたトリガ及び規制機構であり、トリガ及び規制機構が初期状態にある断面図である。
【
図5】
図1の打込機の制御系を示すブロック図である。
【
図6】トリガが作動状態にあり、規制機構が初期状態にある断面図である。
【
図7】トリガが作動状態にあり、規制機構が作動状態にある断面図である。
【
図8】トリガが作動状態にあり、規制機構が初期状態にあり、トリガバルブが作動状態にある断面図である。
【
図9】打込機に設けた制御部が行うことの可能な制御例1を示すフローチャートである。
【
図10】打込機の実施形態1の変形例1を示す部分的な断面図である。
【
図11】打込機の実施形態1の変形例2であり、第2モードでトリガ及びプッシュレバーが初期位置にある状態の正面断面図である。
【
図12】打込機の実施形態1の変形例2であり、第1モードを選択した場合の平面断面図である。
【
図13】打込機の実施形態1の変形例2であり、第2モードを選択した場合の平面断面図である。
【
図14】打込機の実施形態1の変形例2であり、第2モードでトリガ及びプッシュレバーが作動位置にある状態の正面断面図である。
【
図15】打込機の実施形態1の変形例2であり、第1モードでトリガ及びプッシュレバーが初期位置にある状態の正面断面図である。
【
図16】打込機の実施形態1の変形例3を示す部分的な断面図である。
【
図17】打込機の実施形態2(モード1)を示す側面図である。
【
図18】打込機の実施形態2(モード2)を示す側面図である。
【
図19】打込機の実施形態2におけるA-A断面図である。
【
図20】打込機の実施形態3における正面図である。
【
図21】打込機の実施形態3における側面図である。
【
図22】打込機の実施形態3におけるA-A断面図である。
【
図23】打込機の実施形態3の変形例1を示す正面図である。
【
図24】打込機の実施形態3の変形例1を示す側面図である。
【
図25】打込機の実施形態3の変形例1におけるA-A断面図である。
【
図26】打込機の実施形態3の変形例2のモード1を示す正面図である。
【
図27】打込機の実施形態3の変形例2のモード2を示す正面図である。
【
図28】打込機の実施形態3の変形例2の別形態のモード1を示す正面図である。
【
図29】打込機の実施形態3の変形例2の別形態のモード2を示す正面図である。
【
図30】打込機の実施形態4(モード1)を示す部分断面図である。
【
図31】打込機の実施形態4(モード2)を示す部分断面図である。
【
図32】打込機の実施形態5における制御レバーを操作する前の断面図である
。
【
図33】打込機の実施形態5における制御レバーを操作する
後の断面図である
。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の打込機に含まれるいくつかの実施形態のうち、代表的な打込機を、図面を参照して説明する。
【0011】
(実施形態1) 打込機の実施形態1を、
図1および
図2を参照して説明する。打込機10は、本体11、シリンダ12、打撃部13、トリガ14、射出部15及びプッシュレバー16を有し、伝達機構59が設けられている。また、マガジン17が打込機10に取り付けられている。本体11は、筒形状の胴部18と、胴部18に固定したヘッドカバー19と、胴部18に接続されたハンドル20と、を有する。ハンドル20は、胴部18の外面から突出しており、伝達制御部9は、好適には電気接点を有するスイッチ91であって、ヘッドカバー19の表面において、作業者が操作可能な状態で設けられている。
【0012】
図1及び
図2のように、蓄圧室21が、ハンドル20の内部、胴部18の内部、ヘッドカバー19の内部に亘って形成されている。プラグがハンドル20に取り付けられており、プラグにエアホースが接続される。圧縮性気体としての圧縮空気は、エアホースを介して蓄圧室21内に供給される。シリンダ12は胴部18内に設けられている。
【0013】
ヘッドバルブ22がヘッドカバー19内に設けられている。ヘッドバルブ22は、円筒形状であり、ヘッドバルブ22は、シリンダ12の中心線A1方向に移動可能である。ヘッドバルブ22は、排気通路23を有する。排気通路23は、本体11の外部B1につながっている。制御室24が、ヘッドカバー19とヘッドバルブ22との間に形成されている。付勢部材25が、制御室24に設けられている。付勢部材25は、一例として、金属製の圧縮コイルスプリングである。ストッパ26がヘッドカバー19に取り付けられている。ストッパ26は一例として合成ゴム製である。
【0014】
シリンダ12は、胴部18に対して中心線A1方向に位置決め固定されている。シリンダ12において、中心線A1方向でヘッドバルブ22に最も近い箇所の端部に、バルブシート27が取り付けられている。バルブシート27は環状であり、かつ、合成ゴム製である。ヘッドバルブ22とバルブシート27との間にポート28が形成される。
【0015】
ヘッドバルブ22は、付勢部材25の付勢力、制御室24の圧力により、中心線A1方向でバルブシート27に近付く向きに付勢される。ヘッドバルブ22は、蓄圧室21の圧力で、バルブシート27から離れる向きに付勢される。ヘッドバルブ22が、バルブシート27に押し付けられて、ヘッドバルブ22がポート28を閉じる。ヘッドバルブ22がバルブシート27から離反して、ヘッドバルブ22がポート28を開く。
【0016】
打撃部13は、ピストン29と、ピストン29に固定されたドライバブレード30と、を有する。ピストン29は、シリンダ12内に配置され、ピストン29は、中心線A1方向に移動可能である。ピストン29の外周面にシール部材31が取り付けられている。ピストン上室32が、ストッパ26とピストン29との間に形成される。ヘッドバルブ22がポート28を開いていると、蓄圧室21の圧縮空気がピストン上室32に接続され、かつ、ヘッドバルブ22は、ピストン上室32と排気通路23とを遮断する。ヘッドバルブ22がポート28を閉じていると、蓄圧室21はピストン上室32から遮断され、かつ、ピストン上室32と排気通路23とが接続される。
【0017】
射出部15は、胴部18に対して、中心線A1方向でヘッドカバー19が設けられている個所とは反対の端部に固定されている。
【0018】
図1及び
図3のように、バンパ33が、シリンダ12内に設けられている。バンパ33は、シリンダ12内において、中心線A1方向で射出部15に最も近い位置に配置されている。バンパ33は、合成ゴム製、または、シリコンゴム製である。バンパ33は軸孔34を有し、ドライバブレード30は軸孔34内で中心線A1方向に移動可能である。シリンダ12内において、ピストン29とバンパ33との間にピストン下室35が形成されている。シール部材31は、ピストン下室35とピストン上室32とを気密に遮断する。
【0019】
シリンダ12を径方向に貫通する通路36,37が設けられている。通路37は、中心線A1方向で通路36と射出部15との間に配置されている。戻り空気室38が、シリンダ12の外面と胴部18との間に形成されている。逆止弁39がシリンダ12に設けられている。ピストン下室35及び戻り空気室38内に亘って、圧縮空気が封入されている。
【0020】
図1及び
図4のように、トリガ14は本体11に取り付けられている。トリガ14は、本体11に対して支持軸40を介して取り付けられている。トリガ14は、支持軸40を中心として所定角度の範囲内で作動、つまり、回動可能である。トリガ14は、ストッパ41を有する。作業者は、ハンドル20を手で握り、指でトリガ14に操作力を付加または解除する。作業者がトリガ14に操作力を付加すると、トリガ14は
図4で反時計回りに作動する。
【0021】
トリガアーム42がトリガ14に取り付けられている。トリガアーム42はトリガ14に対して支持軸43を中心として、所定角度の範囲内で作動可能である。トリガアーム42の自由端44は、トリガ14の長さ方向で、支持軸40と支持軸43との間に位置する。トリガアーム42は支持軸43を中心として付勢する付勢部材45が設けられている。付勢部材45は、一例として金属製のスプリングである。付勢部材45は、トリガアーム42を
図4で反時計回りに付勢する。トリガアーム42に加わる付勢力の一部は、トリガ14に伝達される。トリガ14は、付勢部材45により、
図4で時計回りに付勢される。
【0022】
図1及び
図4のように、トリガバルブ46が、胴部18とハンドル20との接続箇所に設けられている。トリガバルブ46は、プランジャ47、ボディ48、弁体49、付勢部材50、弁体49に設けたシール部材51,52、ボディ48に設けた通路53、排気通路54を有する。排気通路54は、外部B1につながっている。通路55が本体11に設けられ、通路53は、通路55を介して制御室24につながっている。
【0023】
プランジャ47は中心線A2方向に移動可能であり、中心線A2方向におけるプランジャ47の位置に応じて、弁体49が中心線A2方向に移動及び停止する。中心線A2方向における弁体49の位置に応じて、シール部材51,52が、それぞれボディ48に接触または離反する。シール部材51がボディ48から離反すると、蓄圧室21と通路53とが接続されるとともに、シール部材52がボディ48に接触し、通路53と排気通路54とが遮断される。シール部材51がボディ48に接触すると、蓄圧室21と通路53とが遮断されるとともに、シール部材52がボディ48から離反し、通路53と排気通路54とが接続される。
【0024】
図1に示す射出部15は、一例として、金属製または非鉄金属製である。射出部15は射出路56を有する。射出路56内に中心線A1が位置し、ドライバブレード30は射出路56内で中心線A1方向に移動可能である。
【0025】
マガジン17は、射出部15に対して固定されている。マガジン17は釘57を収容する。マガジン17は、フィーダ58を有し、フィーダ58はマガジン17内の釘57を射出路56に送る。
【0026】
プッシュレバー16は射出部15に取り付けられている。プッシュレバー16は、射出部15に対して、中心線A1方向の所定範囲内で作動可能である。
図4に伝達機構59の拡大図が記載されている。伝達機構59は、プッシュレバー16の作動力をプランジャ47に伝達するものである。伝達機構59は、プランジャ60、シリンダ61、ピン62及び付勢部材63を有する。プランジャ60、シリンダ61、ピン62は、金属製である。また、本体11にホルダ64及びアジャスタ65が設けられている。ホルダ64は筒形状であり、ホルダ64及びアジャスタ65は、シリンダ61を作動可能に支持する。プランジャ60、シリンダ61及びピン62は、中心線A3方向に作動可能である。中心線A2と中心線A3とは平行である。なお、中心線A2と中心線A3とは、同軸に配置されていてもよい。
【0027】
プッシュレバー16とプランジャ60とが、作動力を伝達可能に接続されている。プランジャ60とシリンダ61とが作動力を伝達可能に接続されている。シリンダ61は支持孔66を有し、付勢部材63は支持孔66に配置されている。ピン62の中心線A3方向の一部は、支持孔66に配置され、ピン62の中心線A3方向の一部は、支持孔66の外に配置されている。付勢部材63は、一例として金属製の圧縮スプリングである。付勢部材63は、ピン62を中心線A3方向でトリガバルブ46に近づける向きで付勢する。付勢部材63のバネ定数は、付勢部材50のバネ定数よりも大きい。シリンダ61の外周面に凹部61Aが設けられている。ピン62において、支持孔66の外に配置されている箇所の外面に、係合部67が設けられている。係合部67の外面は円弧形状である。トリガアーム42の自由端44は、中心線A3方向でプランジャ47とピン62との間に配置されている。
【0028】
図4に示す規制機構68が設けられている。
図4に示す規制機構68は、一例として、トリガ14に設けられている。規制機構68は、ピン62の作動力が、プランジャ47に伝達されることを阻止する機能を有する。規制機構68は、ストッパ69、電磁石70及び付勢部材71を有する。ストッパ69は、合成樹脂製または金属製であり、ストッパ69は、支持軸40により支持されている。ストッパ69は、トリガ14に対して支持軸40を中心として所定角度の範囲内で作動可能、つまり、回転可能である。永久磁石72がストッパ69に取り付けられている。付勢部材71は、一例として金属製のねじりコイルスプリングである。付勢部材71は、ストッパ69を
図4で反時計回りに付勢する。
【0029】
電磁石70は、磁性材料、導電性のコイルを有する。電磁石70は、コイルを電流が通ると磁力を発生し、コイルを電流が通らなければ磁力が消滅する。電磁石70が発生する磁力が、永久磁石72の磁力に反発するように、コイルを通る電流の向きが設定される。つまり、電磁石70の極性は、永久磁石72の極性と同じである。電磁石70は、ストッパ69の作動範囲内に配置されている。電磁石70に電流が流れていない場合、付勢部材71により付勢されるストッパ69は、電磁石70に押し付けられて初期位置で停止する。電磁石70に電力が供給されて電磁石70が磁力を発生すると、ストッパ69は付勢部材71の付勢力に抗して、
図4で時計回りに作動し、かつ、電磁石70から離反した位置で停止する。
【0030】
図5は、打込機10の制御系を示すブロック図である。打込機10は、モード選択部材73、電源スイッチ74、トリガセンサ75、プッシュレバーセンサ76、制御部77、電源78、電流制御回路79及びアクチュエータ80と、伝達制御スイッチ91を有する。電流制御回路79は、電源78とアクチュエータ80との間に設けられている。電源78は、一例として、電池パックを用いることが可能である。電池パックは、ケースと、ケース以内に収容された電池とを有する。電池パックは、本体11の外面、またはマガジン17の外面に対して取り付け及び取り外しが可能である。
【0031】
モード選択部材73は、本体11に設けられている。モード選択部材73は、一例として、所定角度の範囲内で作動可能なレバーである。モード選択部材73は、第1モードに対応する第1操作位置と、第2モードに対応する第2操作位置とを有する。第1モードは、
図1に示すプッシュレバー16を相手材81に接触させた状態で、作業者がトリガ14に操作力を付加するものである。第2モードは、作業者がトリガ14に操作力を付加した状態で、プッシュレバー16を相手材81に接触させるものである。作業者は、トリガ14に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー16が相手材81から離反した状態で、モード選択部材73を操作して第1モードまたは第2モードを選択する。
【0032】
電源スイッチ74は、モード選択部材73が第1操作位置にあると、電源78と制御部77とを遮断し、モード選択部材73が第2操作位置にあると、電源78と制御部77とを接続する。電源スイッチ74は接触スイッチ、一例として、タクタイルスイッチである。電流制御回路79は、一例として、複数の電界効果トランジスタを有する。
【0033】
トリガセンサ75は、トリガ14に対する操作力の有無、及びプッシュレバー16の作動状態に応じた信号を出力する。トリガセンサ75は、一例として接触センサを用いることが可能である。トリガ14は初期位置と作動位置との間で作動可能である。トリガ14の初期位置は、
図4のようにトリガ14の一部がホルダ64に接触して停止した位置である。なお、付勢部材45の力でトリガアーム42がピン62に接触して、トリガ14が停止している位置を初期位置として定義することも可能である。トリガ14の作動位置は、トリガ14の一部が、ボディ48または本体11に接触して、トリガ14が停止した位置である。トリガセンサ75は、接触子75Aを有し、物体が接触子75Aに押し付けられるとトリガセンサ75はオンし、物体が接触子75Aを押す力が低下するか、または離反すると、トリガセンサ75はオフする。トリガセンサ75は、本実施形態では、次のような場合にオンまたはオフする。
【0034】
トリガセンサ75は、
図4のようにトリガ14が初期位置に停止していると、プッシュレバー16の位置に関わりなくオフする。また、トリガセンサ75は、
図7のようにトリガ14に操作力が付加されて作動位置に停止し、かつ、プッシュレバー16が相手材81から離反している状態においてオンする。作動位置に停止しているトリガ14は、トリガセンサ75に接触せず、トリガアーム42の一部が接触子75Aを押すと、トリガセンサ75がオンする。
【0035】
図7のように、トリガセンサ75がオンしている場合に、プッシュレバー16が相手材81に押し付けられてピン62が初期位置から作動し、ピン62が
図8に示す作動位置に到達すると、トリガセンサ75はオフする。これは、ピン62に押されたトリガアーム42が時計回りに作動して、トリガアーム42が接触子75Aを押す力が低下するからである。このように、トリガ14が作動位置に停止している状態で、トリガセンサ75はオンまたはオフが可能である。
図4に示すトリガセンサ75は、一例として、ハンドル20の外面に設けられている。
【0036】
プッシュレバーセンサ76は、プッシュレバー16が初期位置または作動位置に応じた信号と、プッシュレバー16が初期位置と作動位置との中間位置を通過することに応じた信号を出力する。プッシュレバーセンサ76として、プッシュレバー16のプランジャ作動を直接検出せず、シリンダ61の中心線A3方向における位置に応じた信号を出力する接触センサを用いた例を開示する。プッシュレバー16が初期位置にある場合、つまり、相手材81から離反している場合、プッシュレバーセンサ76はオフする。
【0037】
プッシュレバーセンサ76は、プッシュレバー16が初期位置と作動位置との中間位置にあり、ピン62に接触するとオンする。プッシュレバーセンサ76は、プッシュレバー16が作動位置に到達するとオフする。具体的には、プッシュレバーセンサ76は、凹部61Aに相当する位置ではシリンダ61から離反し、オフする。トリガセンサ75及びプッシュレバーセンサ76の信号は、制御部77に入力される。
【0038】
伝達制御部9を構成する伝達制御スイッチ91は、
図1に示すヘッドカバー19の表面に露出しており、伝達制御スイッチ91を押圧するとオンする。具体的には、作業者が一方の手でハンドル20を把持した状態において、他方の手でヘッドカバー19に向かって押し込むように操作した場合に、オン信号が制御部77に入力される。
【0039】
制御部77は、入力インタフェース、出力インタフェース、記憶部、演算処理部の他、タイマー等を任意に有するマイクロコンピュータである。制御部77は、電源スイッチ74がオンすると起動し、電源スイッチ74がオフすると停止する。アクチュエータ80は、電磁石70を含む。制御部77は、電流制御回路79の接続及び遮断を制御し、かつ、電磁石70に対する電流の向きを制御する。
【0040】
制御部77は、プッシュレバー16が相手材81から離れており、かつ、トリガセンサ75がオンすると、トリガ14に操作力が付加されたと判断する。制御部77は、プッシュレバーセンサ76がオフからオンに切り替わると、プッシュレバー16が相手材81に押し付けられて作動したと判断する。制御部77は、プッシュレバーセンサ76がオンからオフに切り替わると、プッシュレバー16が作動した後に初期位置に到達したと判断する。また、制御部77は、伝達制御スイッチ91がオフからオンに切り替わると、伝達制御スイッチに操作力が付加されたと判断する。
【0041】
(打込機の使用例) 次に、打込機10の使用例を説明する。作業者がトリガ14に対する操作力を解除し、プッシュレバー16が相手材81から離反し、かつ、伝達制御スイッチ91が解除されていると、トリガ14がホルダ64に押し付けられるか、または、トリガアーム42の自由端44がピン62の先端に押し付けられて、トリガ14及びトリガアーム42が初期位置で停止している。
【0042】
トリガ14に対する操作力が解除され、プッシュレバー16が相手材81から離れており、かつ、伝達制御スイッチ91が解除されていると、トリガバルブ46、ヘッドバルブ22、打撃部13は、次のような初期状態にある。
【0043】
トリガバルブ46が初期状態にあると、蓄圧室21と通路53とが接続され、かつ、通路53と排気通路54とが遮断される。このため、蓄圧室21の圧縮空気が制御室24に供給され、ヘッドバルブ22はポート28を閉じている。つまり、ヘッドバルブ22は、蓄圧室21とピストン上室32とを遮断している。また、ヘッドバルブ22は、ピストン上室32と排気通路23とを接続し、ピストン上室32は、排気通路23を介して外部B1につながっている。したがって、ピストン上室32の圧力は、大気圧と同じであり、かつ、ピストン下室35の圧力よりも低い。このため、ピストン29は、ピストン下室35の圧力でストッパ26に押し付けられた状態で停止している。このように、打撃部13は、
図1及び
図2に示す上死点で停止している。
【0044】
作業者は、トリガ14に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー16が相手材81から離反している状態で、モード選択部材73を操作して、第1モードまたは第2モードを選択する。第1モードは、プッシュレバー16を相手材81に接触させた状態で、前記トリガ14に操作力を付加するモードであり、第2モードでは、トリガ14に操作力を付加している状態で、プッシュレバー16を相手材81に接触させるモードである。
【0045】
(第1モードを選択した例) 作業者が第1モードを選択すると、電源スイッチ74はオフする。つまり、電源78の電力は制御部77に供給されず、制御部77は停止している。また、電磁石70に電力は供給されない。このため、ストッパ69は、電磁石70に接触した初期位置で停止している。トリガ14が初期位置で停止し、かつ、電磁石70に電力が供給されない場合、初期位置で停止するストッパ69は、ピン62の作動範囲外、特に、係合部67の作動範囲外に位置する。また、電源スイッチ74はオフであるから、制御部77は停止したままであり、伝達制御スイッチ91の動作の影響を受けない。
【0046】
そして、作業者がトリガ14に対する操作力を解除している状態で、プッシュレバー16を相手材81に押し付ける。プッシュレバー16を相手材81に押し付けた反力で、プッシュレバー16はバンパ33に近づく向きで作動する。プッシュレバー16の作動力は、プランジャ60、付勢部材63及びシリンダ61を介してピン62に伝達される。ピン62は、中心線A3方向でプランジャ47に近づく向きで作動する。ストッパ69は、係合部67の作動範囲外に位置しており、ピン62の作動を阻止しない。ピン62の作動力はトリガアーム42に伝達され、トリガアーム42は
図4で反時計回りに作動する。ピン62が停止すると、トリガアーム42も停止する。この時点において、トリガアーム42の作動力はプランジャ47に伝達されず、トリガバルブ46は初期状態にある。
【0047】
プッシュレバー16を相手材81に押し付けた状態で、作業者がトリガ14に操作力を付加すると、トリガ14は支持軸40を中心として
図4で反時計回りに作動する。すると、トリガアーム42はトリガ14と共に作動する。トリガ14がトリガセンサ75に押し付けられて作動位置で停止すると、トリガアーム42も停止する。トリガ14が反時計回りに作動し、かつ、作動位置で停止すると、ピン62の係合部67は、中心線A3方向でストッパ69の先端とトリガアーム42の自由端44との間に位置する。
【0048】
このように、トリガ14が反時計回りに作動する過程で、トリガアーム42の作動力がプランジャ47に伝達される。プランジャ47は、付勢部材50の付勢力に抗して初期位置から作動し、トリガバルブ46は作動状態になる。このように、トリガアーム42は、トリガ14と協働して作動力をプランジャ47に伝達する。
【0049】
トリガバルブ46が作動状態になると、蓄圧室21と通路53とが遮断され、かつ、通路53と排気通路54とが接続される。このため、制御室24の圧縮空気は、通路55、通路53及び排気通路54を介して外部B1に排出され、制御室24の圧力が大気圧と同じになる。
【0050】
制御室24の圧力が大気圧と同じになると、ヘッドバルブ22は、蓄圧室21の圧力で付勢部材25の付勢力に抗して作動する。このため、ヘッドバルブ22は、ピストン上室32と排気通路23とを遮断し、かつ、ポート28を開く。つまり、蓄圧室21とピストン上室32とが接続され、ピストン上室32の圧力が上昇する。ピストン上室32の圧力がピストン下室35の圧力よりも高くなると、打撃部13は、上死点から下死点に向けて中心線A1方向に作動し、ドライバブレード30が射出路56の釘57を打撃する。打撃された釘57は、相手材81に打ち込まれる。
【0051】
打撃部13が釘57を相手材81に打ち込んだ後、
図3のように、ピストン29がバンパ33に衝突し、バンパ33は打撃部13の運動エネルギの一部を吸収する。ピストン29がバンパ33に衝突した時点における打撃部13の位置は、下死点である。また、打撃部13が上死点から下死点に向けて作動中、逆止弁39が通路36を開き、ピストン下室35の圧縮空気は、通路36から戻り空気室38に流れ込む。
【0052】
打撃部13が釘57を打撃した後、作業者は、プッシュレバー16を相手材81から離反させ、かつ、トリガ14に対する操作力を解除する。すると、ピン62は、付勢部材45の付勢力でプランジャ47から離反する向きで作動する。すると、係合部67がストッパ69の先端に接触し、かつ、ストッパ69が電磁石70に押し付けられた状態で、ピン62が作動するか、または、ストッパ69が付勢部材71の付勢力に抗して時計回りに作動して、ストッパ69が電磁石70から離反した状態で、ピン62が作動し、ピン62及びストッパ69は、
図4に示す初期位置で停止する。
【0053】
さらに、トリガバルブ46は作動状態から初期状態に戻り、ヘッドバルブ22はポート28を閉じ、かつ、ピストン上室32と排気通路23とを接続する。すると、ピストン上室32の圧力が大気圧と同じになり、ピストン29は、ピストン下室35の圧力で下死点から上死点に向けて作動する。また、戻り空気室38の圧縮空気は、通路37を経由してピストン下室35に流れ込み、打撃部13は上死点に戻り停止する。
【0054】
(第2モードを選択した例) 作業者が、モード選択部材73を操作して第2モードを選択すると、電源スイッチ74がオンし、制御部77が起動する。作業者は、
図4のようにトリガ14が初期位置で停止し、かつ、ピン62が初期位置で停止している状態において、プッシュレバー16を相手材81から離反させたまま、トリガ14に操作力を付加し、トリガ14を
図4で反時計回りに作動させ、トリガ14を作動位置で停止させる。すると、ストッパ69はトリガ14と共に
図4で反時計回りに作動し、かつ、トリガ14と共に
図6に示す作動位置で停止する。ストッパ69が作動位置で停止すると、ストッパ69の先端は、係合部67の作動領域内に位置する。また、トリガアーム42はピン62から離反し、ストッパ41に接触して停止する。
【0055】
一方、制御部77は、トリガセンサ75の信号から、トリガ14に操作力が付加されたことを検出し、かつ、伝達制御スイッチ91がオフからオンに切り替わることを検知すると、電磁石70に電力を供給する。電磁石70に磁力が発生すると、ストッパ69は付勢部材71の付勢力に抗して、
図7のように時計回りに作動し、ストッパ69の先端は、係合部67の作動領域の外で停止する。
【0056】
そして、伝達制御スイッチ91がオン状態、すなわち、ストッパ69の先端が、係合部67の作動領域の外で停止した状態である場合に、プッシュレバー16が相手材81に押し付けられると、プッシュレバーセンサ76がオンする。また、シリンダ61及びピン62が初期位置からプランジャ47に近づく向きで作動し、シリンダ61及びピン62が作動位置で停止する。シリンダ61が作動位置に到達すると、プッシュレバーセンサ76がオフし、制御部77は電磁石70に対する電力の供給を停止する。このため、ストッパ69は初期位置に戻って停止する。
【0057】
ピン62の作動力は、トリガアーム42を介してプランジャ47に伝達される。このため、トリガバルブ46は、
図7に示す初期状態から、
図8に示す作動状態に切り替わる。したがって、打撃部13は上死点から下死点に向けて作動し、打撃部13は釘57を相手材81に打ち込む。
【0058】
これに対して、制御部77は、プッシュレバー16が相手材81に押し付けられるよりも前に伝達制御スイッチ91がオフ状態となった場合には、電磁石70に対する電力の供給を停止する。つまり、ストッパ69は、
図6に示す初期位置で停止する。トリガ14が作動位置にあり、かつ、ストッパ69が初期位置で停止すると、ストッパ69の先端は、係合部67の作動範囲内に位置する。
【0059】
このため、伝達制御スイッチ91の非操作時に、プッシュレバー16が相手材81に押し付けられると、ストッパ69の先端が係合部67に係合する。つまり、ストッパ69は、プッシュレバー16の作動力が、プランジャ47に伝達されることを阻止する。したがって、トリガバルブ46は初期状態に維持され、かつ、打撃部13は初期位置で停止している。
【0060】
このように、作業者がトリガ14に操作力を付加することに連動して、ストッパ69は、プッシュレバー16の作動力がトリガバルブ46に伝達されることを阻止できる。また、トリガ14に操作力が付加され、かつ、伝達制御スイッチ91に操作力が付加されたた時に限り、電磁石70に電力を供給する。したがって、電源78の電力消費量を極力低減可能である。また、作業者が第1モードを選択した場合は、制御部77に電力は供給されず、第2モードを選択した場合に、制御部77に電力を供給する。したがって、電源78の電力消費量を低減可能である。
【0061】
さらに、電源78から電磁石70に電力を供給できない場合、一例として、電源78の電圧が低下した場合は、第1モードを選択することで電磁石70の動作を必要とせずに、打込みを行うことができ、伝達制御スイッチ91の操作の有無は必要とされない。すなわち、プッシュレバー16を相手材81に押し付けた場合に、ストッパ69がピン62の作動を阻止せず、ピン62が初期位置から作動位置に移動することができ、その状態でトリガ14を操作することで、トリガバルブ46に作動力が伝達され、打撃部13を上死点から下死点に向けて作動させることができる。
【0062】
さらに、シリンダ61とピン62との間には、付勢部材63が設けられている。付勢部材63として金属製のスプリングを用いると、係合部67がストッパ69に押し付けられる力が過大であると、スプリングが弾性変形することで、ストッパ69が受ける荷重を低減可能である。したがって、規制機構68の負荷を低減可能である。
【0063】
(制御例1)
図9は、制御部77が行うことの可能な制御例1を示すフローチャートである。なお、
図9には、作業者が行う操作、制御部77が行う制御以外の事項も含まれている。ステップS1では、打込機10が初期状態にある。打込機10の初期状態は、トリガ14に対する操作力が解除され、かつ、プッシュレバー16が相手材81から離反され、かつ、アクチュエータ80、すなわち電磁石70に対する電力供給が停止していることを意味する。
【0064】
制御部77は、ステップS2でトリガ14に操作力が付加されて、トリガセンサ75がオンしたかを判断する。トリガセンサ75は、
図7のように、ピン62を支点として反時計回りに作動するトリガアーム42が接触子75Aを押すとオンする。
【0065】
制御部77は、ステップS2でNoと判断すると、
図9の制御例1を終了する。制御部77は、ステップS2でYesと判断すると、ステップS3で伝達制御部9に電力を供給し、伝達制御スイッチ91がオンしたかを判断する。ステップS3で伝達制御スイッチ91がオフと判断された場合は、ステップS4によってアクチュエータに対する電力供給があった場合には供給を停止し、伝達制御スイッチ91がオンされるまで待機する。
【0066】
制御部77は、ステップS5において、アクチュエータに電力が供給されていない場合は電力の供給を行い、S6において、プッシュレバーセンサ76がオンしたかを判断する。制御部77は、ステップS6でYesと判断すると、プッシュレバー16が作動位置に到達したと判断する。
【0067】
このように、トリガ14に操作力が付加され、伝達制御スイッチ91が操作された状態でプッシュレバー16が相手材81に押し付けられると、トリガバルブ46が初期状態から作動状態に切り替わり、ステップS7で、打撃部13が上死点から下死点に向けて作動する。
【0068】
作業者は、打撃部13が上死点から下死点に向けて作動した後、プッシュレバー16を相手材81から離反させる。制御部77はステップS8でプッシュレバー16が初期位置に戻されたことを検出する。また、制御部77はステップS9でトリガ14に対する操作力が解除されたかを判断する。制御部77は、プッシュレバー16が初期位置で停止しており、かつ、トリガセンサ75がオフすると、トリガ14に対する操作力が解除されたと判断する。制御部77がステップS9でNoと判断するということは、作業者の意図が第2モードでの打撃作業の継続にあるため、制御部77は、ステップS3に戻る。
【0069】
これに対して、制御部77がステップS9でYesと判断すると、ステップS10において、アクチュエータに対する電力の供給を停止した上で、
図9の制御例1を終了する。
【0070】
(実施形態1の変形例1) 打込機10の変形例1を、
図10を用いて説明する。
図10は、トリガ14が操作され、図示しないプッシュレバーから延在し、プッシュレバーにより作動されるピン62が作動されていない状態を表している。
図1、
図2及び
図3に示す構造と同じ構造は、
図1、
図2及び
図3に示す符号と同じ符号を付してある。ストッパ69は、付勢部材71により
図10で反時計回りに付勢される。トリガ14にピン82が設けられている。トリガ14に電磁石70Aが設けられている。電磁石70Aは、電力が供給された場合の極性が、永久磁石72の極性とは異なる。電磁石70Aに対する電力の供給が停止していると、付勢部材71により付勢されるストッパ69は、ピン82に接触して二点鎖線の初期位置で停止する。電磁石70Aに電力が供給され電磁石70Aが磁力を発生すると、ストッパ69は付勢部材71の付勢力に抗して時計回りに作動し、電磁石70Aに接触して実線の作動位置で停止する。
図10の打込機10は、
図5に示す制御系を有する。電磁石70Aは、アクチュエータ80の一例である。
【0071】
次に、変形例1打込機10の使用例を説明する。作業者が第1モードを選択すると、電磁石70Aに対する電力の供給は停止される。トリガ14が初期位置で停止している状態において、ストッパ69の先端は、
図4の実施形態1と同様に、変形例1においても係合部67の作動範囲外に位置する。
【0072】
トリガ14が初期状態にあり、かつ、作業者がプッシュレバー16を相手材81に接触させ、プッシュレバー16が初期位置から作動すると、ピン62は作動可能である。この状態において、トリガ14の回動操作を行えば、トリガアームには、プッシュレバーからの作動力とトリガ14の操作力の両方が加わるため、トリガバルブ46は初期状態から作動状態に切り替わり、打撃部13が上死点から下死点に向けて作動する。また、プッシュレバー16が相手材81から離反し、ピン62が作動位置から初期位置に戻る過程で、ピン62の作動がストッパ69に阻止されることは無い。その原理は、打込機10の実施形態1と同様である。
【0073】
次に、
図10に示す打込機10において、作業者が第2モードを選択すると、制御部77は、
図9の制御例1を行うことが可能である。制御部77が、
図9のステップS5において、アクチュエータ(電磁石70A)に電力を供給すると、ストッパ69が二点鎖線で示す初期位置から、実線で示す作動位置に作動し、かつ、作動位置で停止する。
【0074】
ストッパ69が作動位置で停止すると、トリガ14の操作の有無によらず、ストッパ69は、係合部67の作動範囲外に位置する。このため、トリガ14の回動操作を行った上でプッシュレバー16が相手材81に押し付けられて作動すると、ストッパ69はピン62の作動を阻止しない。したがって、トリガバルブ46は、初期状態から作動状態に切り替り、打撃部13は上死点から下死点に向けて作動する。
【0075】
また、制御部77は、
図9のステップS4、あるいは、S10において、電磁石70Aに対する電力の供給を停止すると、ストッパ69はピン82に接触した初期位置で停止する。次に、作業者がプッシュレバー16を相手材81から離反させると、ピン62が作動位置から初期位置に戻る過程で、ストッパ69が時計回りに回動可能なため、ストッパ69はピン62の作動を阻止しない。その原理は、打込機10の実施形態1と同様である。
【0076】
上述のとおり、打込機10の変形例1は、打込機10の実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0077】
(実施形態1の変形例2) 打込機10の変形例2は、
図11に示されている。規制機構としてのソレノイド83が、トリガ14に設けられている。ソレノイド83は、プッシュレバー16の作動力、具体的にはピン62の作動力が、プランジャ47に伝達されることを阻止する機能を有する。ソレノイド83は、コイル84、プランジャ85及び付勢部材86を有する。プランジャ85は磁性材製であり、中心線A4方向に移動可能である。中心線A4は中心線A3と交差する。付勢部材86は、一例として金属製のスプリングである。プランジャ85は、付勢部材86の付勢力でピン62に近づく向きで付勢され、かつ、初期位置で停止する。コイル84は、電力が供給されると磁力を発生し、プランジャ85をピン62から離反させる向きで付勢し、プランジャ85は作動位置で停止する。打込機10の
変形例2は、
図5の制御系を有する。ソレノイド83は、アクチュエータ80の一例である。また、
トリガアーム42は
図11で反時計回りに付勢され、トリガ14は、
図11で時計回りに付勢されている。
【0078】
さらに、トリガ14は、
図12及び
図13のように、主軸92及び支持軸40を介して本体11により支持されている。主軸92は円柱形状であり、主軸92は、中心線A5を中心として回転可能である。主軸92にモード選択部材73が取り付けられている。支持軸40は、主軸92の中心線A5から偏心した中心線A6を中心として配置されている。作業者がモード選択部材73を操作すると主軸92が回転し、主軸92は、第1モードまたは第2モードに対応する位置で停止可能である。
【0079】
プランジャ85が初期位置で停止している状態で、作業者が第1モードを選択した場合におけるプランジャ85とピン62との距離は、作業者が第2モードを選択した場合におけるプランジャ85とピン62との距離よりも長い。
図12、
図15は、第1モードを選択した場合におけるプランジャ85の位置である。
図11、
図13及び
図14は、第2モードを選択した場合におけるプランジャ85の位置である。打込機10の変形例2における他の構造は、打込機10の実施形態1における他の構造と同じである。
【0080】
(第1モードを選択した例) 打込機10の変形例2において、作業者が第1モードを選択すると、
図5に示す制御部77に電力は供給されず、制御部77は停止している。作業者が第1モードを選択すると、ソレノイド83に電力は供給されず、プランジャ85は初期位置で停止している。プランジャ85はピン62の作動範囲外に位置する。
【0081】
作業者が第1モードを選択し、プッシュレバー16を相手材81に押し付けると、ピン62が作動してトリガアーム42を作動させる。次いで、作業者がトリガ14に操作力を付加すると、トリガバルブ46が初期状態から作動状態に切り替わる。したがって、打撃部13は上死点から下死点に向けて作動する。
【0082】
その後、作業者がトリガ14に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー16を相手材81から離反すると、トリガバルブ46は作動状態から初期状態に戻る。作業者がトリガ14に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー16を相手材81から離反して、ピン62が作動位置から初期位置に戻る場合、プランジャ85がピン62に接触することはない。
【0083】
(第2モードを選択した例) 打込機10の変形例2において、作業者が第2モードを選択すると、
図5に示す制御部77に電力が供給され、制御部77が起動し、
図9の制御例と同様の制御を行うことが可能である。
【0084】
作業者がトリガ14に操作力を付加すると、制御部77は、ステップS2でYesと判断し、制御部77は、ステップS3で伝達制御スイッチ91のオンを検出する。そして、
図14において二点鎖線で示したように、プランジャ85はピン62の作動範囲内に位置し、ピン62の作動を規制する。この状態において、ステップS5においてアクチュエータ(ソレノイド83)に電力を供給する。このため、プランジャ85の先端85Aは、ピン62の作動範囲外に移動して停止する。また、トリガアーム42は、
図11に実線で示す初期位置から二点鎖線で示す中間位置へ作動する。
【0085】
制御部77は、ステップS6でプッシュレバーセンサがオンである場合に、ステップS7において、打撃部13を上死点から下死点に向けて作動させる。
【0086】
そして、制御部77は、ステップS8でプッシュレバー16が初期位置に戻されてプッシュレバーセンサ76がオフされると、ステップS10でソレノイド83に対する電力の供給を停止する。よって、上述のとおり、打込機10の変形例2は、打込機10の実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0087】
(実施形態1の変形例3)
図16は、打込機10の変形例3の部分的断面図である。ストッパ69は、支持軸88を中心として作動可能に本体11に取り付けられている。ストッパ69を支持する支持軸88は、トリガ14を支持する支持軸40とは別部材である。
図16における他の構成は、
図4に示す他の構成と同じである。
図5の制御系は、
図16の変形例3に用いることが可能である。打込機10の
変形例3において、
図9の制御例を行うことも可能である。
【0088】
(実施形態2)
図17は、打込機210の実施形態2を示す側面図であり、実施形態1と同様に、圧縮性気体としての圧縮空気を用いて動作を行う打込機であり、詳述しない構成は実施の形態1と同様の構造である。
【0089】
打込機210は、トリガ214、射出部215及びプッシュレバー216を有し、伝達機構259が設けられている。また、マガジン217が打込機210に取り付けられている。本体211は、筒形状の胴部218と、胴部218に固定したヘッドカバー219と、胴部218に接続されたハンドル220と、を有する。ハンドル220は、胴部218の外面から突出しており、また、マガジン217の側方には、射出部215方向に付勢部材253によって付勢された伝達制御部252が設けられている。
【0090】
モード選択部材273は、本体211に設けられている。モード選択部材273は、一例として、所定角度の範囲内で作動可能なレバーである。モード選択部材273は、第1モードに対応する第1操作位置と、第2モードに対応する第2操作位置とを有する。第1モードは、プッシュレバー216を相手材に接触させた状態で、作業者がトリガ214に操作力を付加するものである。また、第2モードは、作業者がトリガ214に操作力を付加した状態で、プッシュレバー216を相手材に接触させるものである。
【0091】
作業者は、トリガ214に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー216が相手材から離反した状態で、モード選択部材273を操作して第1モードまたは第2モードを選択する。モード選択部材273は、モード選択付勢部材254により一方向、例えば回動軸線方向に付勢されており、かつ、図示しないジョイントボールが嵌合する凹部を第1操作位置、第2操作位置の二か所に設けられている。このため、第1モード、第2モードのいずれの状態においても、作業者が切替え操作を行った後においては、その選択されたモードが保持されるよう、モード選択部材273の位置が固定される。
【0092】
(第1モードを選択した例) 作業者が第1モードを選択した場合を
図17に示す。
図17において、モード選択部材273は、偏心円形状を有している。そして、規制部材251がモード選択部材273に対し、図示しない付勢部材によって付勢され当接している。また、
図19(a)に示すように、モード選択部材273のピン部273aは回動軸273bに対して偏心する軸部273cを有しており、トリガ214は、軸部273cによって紙面下方に移動されている。この結果、回動軸
243にて回動可能に係合されたトリガアーム242の端部が、プッシュレバー216から延在され、摺動可能に係合されているピン262に近接する位置に設けられている。
【0093】
トリガアーム242とピン262は、第1の実施形態と同様に、第1モードにおいては、プッシュレバーが先に作動した場合にトリガアーム242の端部とピン262が当接し、その後、トリガ214が回動するよう作業者が操作力を加えた場合にピン262からの作動力がトリガアーム242に伝達され、プッシュレバーからの作動力とトリガ214の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。一方、作業者がプッシュレバーの作動よりも先にトリガを操作した場合には、トリガアーム242の端部とピン262の係合は解除される。
【0094】
規制部材251は、第1モードにおいて、モード選択部材273の回動軸から最も離間した位置にて当接し、その結果として、付勢力に抗して紙面下方に移動している。また、規制部材251はその下端に傾斜部251aを有しており、伝達制御部252は、当該傾斜部に面する位置に当接部252aを有している。
【0095】
第1モードにおいて、規制部材251が下方に移動している結果として、伝達制御部252は、規制部材251の傾斜部251aと当接する当接部252aによって、紙面左方向に、付勢部材253の付勢力に抗して移動している。
【0096】
したがって、第1モードにおいては、伝達制御部252は、プッシュレバー216を規制しない位置に移動されるため、
図17のプッシュレバー規制領域215aはスペースとなり、プッシュレバー216の摺動を妨げない。よって、この状態においてプッシュレバー216を相手材に接触させることでプッシュレバー216を摺動させた後、トリガ214を操作することで、打撃部が作動される。
【0097】
(第2モードを選択した例) 第2モードを選択すると、初めに、
図18(a)に示すように、モード選択部材273が回動することにより、規制部材251は回動軸に最も近接した位置にてモード選択部材273と当接し、その結果として、付勢力にて紙面上方の位置に保持される。また、
図19(b)に示すように、偏心する軸部273cによってトリガ214
は紙面上方に移動されている。この結果、回動軸243にて回動可能に係合されたトリガアーム242の端部が、プッシュレバー216から延在され、摺動可能に係合されているピン262と常に当接する位置に設けられ、プッシュレバーの作動とトリガ214の回動の順序を問わず、プッシュレバーからの作動力とトリガ214の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。
【0098】
第2モードにおいて、規制部材251が上方に移動している結果として、伝達制御部252は、付勢部材253によって、紙面右方向に移動する。したがって、第2モードの初期状態においては、伝達制御部252は、プッシュレバー216を規制する位置に移動されるため、
図18(a)のプッシュレバー規制領域215aを塞ぐ形となり、プッシュレバー216の摺動が規制される。
【0099】
ここで、伝達制御部252を作業者が付勢部材253に抗して紙面左方向に移動させた状態を
図18(b)で示す。この状態においては、伝達制御部252は、プッシュレバー216を規制しない位置に移動されるため、
図18(b)に示したとおりプッシュレバー規制領域215aはスペースとなり、プッシュレバー216の摺動を妨げない。
【0100】
したがって、第2モードにおいては、伝達制御部252を作業者が操作しない場合は、
図18(a)のように、プッシュレバーが規制されて打撃部の動作が規制される。一方、トリガ214を操作した後に、作業者が伝達制御部252を移動させる動作を行った上でプッシュレバー216を作動させることで、
図18(b)のように、打撃部の作動が許容される。
【0101】
(実施形態3)
図20、
図21は、打込機310の実施形態3を示す正面図及び側面図であり、上述実施形態1等と同様に、圧縮性気体としての圧縮空気を用いて動作を行う打込機であり、詳述しない構成は実施の形態1あるいは実施の形態2と同様の構造である。
【0102】
打込機310は、トリガ314、射出部315及びプッシュレバー316を有している。また、筒形状の胴部318とハンドル320を有し、マガジン317が打込機310に取り付けられている。ハンドル320は、胴部318の外面から突出しており、ハンドル320と交差する方向に、サブハンドル373が設けられている。さらに、モード選択部材373Aは、本体311に設けられている。モード選択部材373Aは、一例として、所定角度の範囲内で作動可能なレバーであり、その回動軸の延長線上に、前述したサブハンドル373が設けられている。本実施の形態では、一例として、作業者がハンドル320を右手で把持し、サブハンドル373を左手で把持することを想定している。
【0103】
モード選択部材373Aは、第1モードに対応する第1操作位置と、第2モードに対応する第2操作位置とを有する。第1モードは、プッシュレバー316を相手材に接触させた状態で、作業者がトリガ314に操作力を付加するものである。また、第2モードは、作業者がトリガ314に操作力を付加した状態で、プッシュレバー316を相手材に接触させるものである。
【0104】
作業者は、トリガ314に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー316が相手材から離反した状態で、サブハンドル373を回動することでモード選択部材373Aを操作して第1モードまたは第2モードを選択する。モード選択部材373Aは、モード選択付勢部材324により回動方向に付勢されており、かつ、作業者が回動動作を行っていないときには第1モードが保持される。すなわち、第2モードは、作業者がサブハンドルを回動した状態にて保持されたときにのみ、そのモードを選択することができ、サブハンドルを回動していないときや、サブハンドルを把持していないときには、第1モードしか選択することができない。
【0105】
(第1モードを選択した例) 作業者が第1モードを選択した場合、すなわち、サブハンドルに操作がされていない場合を
図22(a)に示す。
図22(a)において、モード選択部材373
Aは、ピン部373aと回動軸373bに対して偏心する軸部373cを有しており、トリガ314は、軸部373cによって紙面下方に移動されている。この結果、回動軸343にて回動可能に係合されたトリガアーム342の端部が、プッシュレバー316から延在され、摺動可能に係合されているピン362に近接する位置に設けられている。
【0106】
トリガアーム342とピン362は、第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、第1モードにおいては、プッシュレバーが先に作動した場合にトリガアーム342の端部とピン362が当接し、その後、トリガ314が回動するよう作業者が操作力を加えた場合にピン362からの作動力がトリガアーム342に伝達され、プッシュレバーからの作動力とトリガ314の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。一方、作業者がプッシュレバーの作動よりも先にトリガを操作した場合には、トリガアーム342の端部とピン362の係合は解除される。
【0107】
(第2モードを選択した例) 第2モードを選択したい場合は、上述したとおり、作業者は、サブハンドル373を把持し、かつ、回動動作を行うことで、
図22(b)に示すように、モード選択部材373Aが回動することにより、偏心する軸部373cによってトリガ314は、紙面上方に移動されている。この結果、回動軸
343によって回動可能に係合されたトリガアーム342の端部が、プッシュレバー316から延在され、摺動可能に係合されているピン362と常に当接する位置に設けられ、プッシュレバー316の作動とトリガ314の回動の順序を問わず、プッシュレバー316からの作動力とトリガ314の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。
【0108】
すなわち、本実施形態の第2モードを選択した場合の動作は、使用者が一方の手でハンドル320を把持し、他方の手でサブハンドル373を把持した上で、作業者が能動的にサブハンドル373の回動動作を行い、第2モードが選択されて場合に駆動する構成となっている。このため、サブハンドル373は、上述した実施の形態と同様に、本件発明の伝達制御部としてして機能する。
【0109】
(実施形態3の変形例1)
図23、
図24は、打込機410の実施形態3の変形例1を示す正面図及び側面図であり、上述実施形態と同様に、圧縮性気体としての圧縮空気を用いて動作を行う打込機であり、詳述しない構成は実施の形態3と同様の構造である。
【0110】
打込機410は、トリガ414、射出部415及びプッシュレバー416を有している。また、筒形状の胴部418とハンドル420を有し、マガジン417が打込機410に取り付けられている。ハンドル420は、胴部418の外面から突出している。さらに、モード選択部材473は、本体411に設けられている。モード選択部材473は、一例として、所定角度の範囲内で回動可能なレバーであり、その外側には、ハンドル420を把持した状態で作業が操作可能な位置、すなわち、指が届く位置に、モード選択指掛け部473dを有している。
【0111】
モード選択部材473は、第1モードに対応する第1操作位置と、第2モードに対応する第2操作位置とを有する。第1モードは、プッシュレバー416を相手材に接触させた状態で、作業者がトリガ414に操作力を付加するものである。また、第2モードは、作業者がトリガ414に操作力を付加した状態で、プッシュレバー416を相手材に接触させるものである。
【0112】
作業者は、トリガ414に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー416が相手材から離反した状態で、モード選択部材473を回動することで第1モードまたは第2モードを選択する。モード選択部材473は、モード選択付勢部材424により作業者が回動動作を行っていないときには第1モードが保持される。すなわち、第2モードは、作業者がモード選択部材473を回動した状態にて保持されたときにのみ、そのモードを選択することができる。
【0113】
(第1モードを選択した例) 作業者が第1モードを選択した場合、すなわち、モード選択部材473に操作がされていない場合を
図25(a)に示す。
図25(a)において、モード選択部材473は、ピン部473aと、回動軸473bに対して偏心する軸部473cを有しており、トリガ414は、軸部473cによって紙面下方に移動されている。この結果、回動軸443にて回動可能に係合されたトリガアーム442の端部が、プッシュレバー416から延在され、摺動可能に係合されているピン462に近接する位置に設けられている。
【0114】
トリガアーム442とピン462は、上述した第3の実施形態と同様に、第1モードにおいては、プッシュレバーが先に作動した場合にトリガアーム442の端部とピン462が当接し、その後、トリガ414が回動するよう作業者が操作力を加えた場合にピン462からの作動力がトリガアーム442に伝達され、プッシュレバーからの作動力とトリガ414の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。一方、作業者がプッシュレバーの作動よりも先にトリガ414を操作した場合には、トリガアーム442の端部とピン462の係合は解除される。
【0115】
(第2モードを選択した例) 第2モードを選択したい場合は、上述したとおり、作業者は、ハンドル
420を把持し、かつ、モード選択部材473に対して回動動作を行うことで、
図25(b)に示すように、モード選択部材473が回動することにより、偏心する軸部473cによってトリガ
414は、紙面上方に移動されている。この結果、回動軸443によって回動可能に係合されたトリガアーム442の端部が、プッシュレバー416から延在され、摺動可能に係合されているピン462と常に当接する位置に設けられ、プッシュレバー416の作動とトリガ
414の回動の順序を問わず、プッシュレバー416からの作動力とトリガ414の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。
【0116】
すなわち、本実施形態の第2モードを選択した場合の動作は、使用者が一方の手でハンドルを把持した上で、把持した手の一部の指によってモード選択指掛け部473dを操作し、モード選択部材473を回動させて能動的に第2モードに選択した上で、他の指でトリガ414を操作した場合に駆動する構成となっている。このため、モード選択指掛け部473dは、上述した実施の形態と同様に、本件発明の伝達制御部としてして機能している。
【0117】
なお、本実施形態3の変形例1においては、モード選択部材473が第1モード側に回動動作にて付勢される構成を例示したが、軸部473cの回動軸の延在方向に、モード選択部材473を摺動させた場合に軸部473cが偏心動作を生じるような構成、例えば、螺旋溝をモード選択部材473に設け、当該溝に係合する凸部を胴部418部等に設け、かつ、軸部473cの回動軸の延在方向に付勢するようにモード選択付勢部材424を設けることで、モード選択指掛け部473dに代えて、モード選択部材473自体を作業者が、ハンドルを把持した手で操作する伝達制御部として用いることも可能である。
【0118】
上述した変形例では、作業者がハンドルを把持する一方の手のみにより、トリガ操作とモード選択部材の操作をできる配置の例を例示したが、一方の手のみにより操作することに代わり、両方の手を用いて操作してもよいことは言うまでもない。また、トリガ操作とモード選択部材の操作を異なった手で行うことを前提として、モード選択部材の配置を定めてもよい。この場合は、例えば、ハンドルを把持し、トリガを一方の手により操作し、モード選択部材の操作は、第3の実施形態と同様に、他方の手によって操作可能となる。
【0119】
(実施形態3の変形例2)
図26乃至
図29は、打込機510の実施形態3の変形例2を示す二通りの正面図であり、
図26と
図28は、モード1の状態、
図27と
図29はモード2を選択した場合の構造を示している。上述実施形態と同様に、圧縮性気体としての圧縮空気を用いて動作を行う打込機であり、詳述しない構成は実施の形態3と同様の構造である。
【0120】
打込機510は、トリガ514、射出部515及びプッシュレバー516を有している。また、筒形状の胴部518とハンドル520を有し、マガジン517が打込機510に取り付けられている。ハンドル520は、胴部518の外面から突出している。さらに、モード選択部材573は、本体511に設けられている。モード選択部材573は、一例として、所定角度の範囲内で回動可能なレバーである。また、ヘッドカバー519、あるいは、胴部518には、伝達制御部590として、モード選択レバー552がモード選択レバー回動軸591によって回動可能に係合されており、モード選択レバー552は、ワイヤ551の端部551aが接続されており、ワイヤ551の他端551bはモード選択部材573と結合されている。また、ワイヤ551は、ヘッドカバー519に取付けられているガイド部材592によって、ガイドされている。
【0121】
モード選択部材573は、上述した第3実施形態やその変形例同様、第1モードに対応する第1操作位置と、第2モードに対応する第2操作位置とを有する。第1モードは、プッシュレバー516を相手材に接触させた状態で、作業者がトリガ514に操作力を付加するものである。また、第2モードは、作業者がトリガ514に操作力を付加した状態で、プッシュレバー516を相手材に接触させるものである。
【0122】
作業者は、トリガ514に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー516が相手材から離反した状態で、モード選択レバー552を回動操作することでモード選択部材573を回動させ、第1モードまたは第2モードを選択する。モード選択部材573は、図示しないモード選択付勢部材により作業者が回動動作を行っていないときには第1モードが保持される。すなわち、第2モードは、作業者がモード選択レバー552を操作し、モード選択部材573を回動した状態にて保持されたときにのみ、そのモードを選択することができる。
【0123】
各モードの具体的な構造、及び、動作については、上述した第3の実施形態やその変形例と同様であるため割愛する。この変形例では、作業者がハンドルを把持してトリガを一方の手により操作し、伝達制御部590、すなわち、モード選択部材573の操作は他方の手によって操作するにあたり、操作性のよいヘッドカバー519や胴部518にモード選択レバー552を設けることが可能となる。また、回動軸591からモード選択レバー552の操作端部までの距離を、回動軸からワイヤ551の接続部までの距離よりも大きくすることで、モード選択レバーの操作力を軽減することが可能となり、作業者の打込み作業の疲労を軽減させることができる。
【0124】
(実施形態4)
図30、
図31は、打込機610の実施形態4を示す側面拡大図であり、上述実施形態1等と同様に、圧縮性気体としての圧縮空気を用いて動作を行う打込機であり、詳述しない構成は上述した実施の形態と同様の構造である。
例えば、プランジャ647、ボディ648、弁体649、通路655は、実施形態1のプランジャ47、ボディ48、弁体49、通路55にそれぞれ対応する。
【0125】
打込機610は、トリガ摺動操作部614aを有したトリガ614を有している。また、筒形状の胴部618と接続するハンドル620を有し、図示しないマガジンが打込機610に取り付けられている。トリガ614は、その一端の回動軸643を介してトリガアーム642を回動可能に保持し、かつ、トリガアーム642は、トリガ解除付勢部材645により紙面下方に付勢されている。
【0126】
また、トリガ614は、トリガアームの回動軸643と反対側の端部において、回動、及び摺動可能な長穴状の回動穴650aを有し、胴部618等に係止される回動ピン650bと結合し、回動部650を構成している。回動穴650aは、トリガ614の長手方向にその長手方向が延在している。トリガ614は、モード選択トリガ付勢部材699により紙面右側、すなわち、胴部618とトリガアーム642の回動軸643が離間する方向に付勢されている。また、トリガ614の回動軸と胴部618との間には、モード選択部材673が設けられており、好適には、回動軸を有した半円状の部材により、トリガ614と胴部618とに当接可能に設けられている。
【0127】
モード選択部材673は、第1モードに対応する第1操作位置と、第2モードに対応する第2操作位置とを有する。第1モードは、図示しないプッシュレバーを相手材に接触させた状態で、作業者がトリガ614に操作力を付加するものである。また、第2モードは、作業者がトリガ614に操作力を付加した状態で、プッシュレバーを相手材に接触させるものである。
【0128】
作業者は、トリガ614に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバーが相手材から離反した状態で、モード選択部材673を操作して第1モードまたは第2モードを選択する。モード選択部材673は、上述した第2実施形態と同様に、第1モードと第2モードのいずれの状態であってもその状態を維持できるような構成を具備している。
【0129】
(第1モードを選択した例) 作業者が第1モードを選択した場合を
図30(a)(b)に示す。
図30(a)において、モード選択部材673は、トリガ614を胴部618から離間する方向に規制する構成を有しており、トリガ
614は、その
回動部650が紙面左側に固定されている。この結果、回動軸643にて回動可能に係合されたトリガアーム642の端部が、プッシュレバーから延在され、摺動可能に係合されているピン662に近接する位置に設けられている。
【0130】
トリガアーム642とピン662は、第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、第1モードにおいては、プッシュレバーが先に作動した場合にトリガアーム642の端部とピン662が当接し、その後、トリガ614が回動するよう作業者が操作力を加えた場合にピン662からの作動力がトリガアーム642に伝達され、プッシュレバーからの作動力とトリガ614の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。一方、作業者がプッシュレバーの作動よりも先にトリガ614を操作した場合には、
図30(b)に示すように、トリガアーム642の端部とピン662の係合は解除され、打撃部の作動はなされない。
【0131】
(第2モードを選択した例) 第2モードを選択したい場合は、
図31(a)に示すように、モード選択部材673が回動することにより、トリガ614の回動軸
643の摺動の規制が解除されており、モード選択トリガ付勢部材699の付勢力によって紙面右側に付勢された状態となっている。そして、
図31(b)のように、作業者がトリガ614を操作して回動させると、胴部618とトリガアーム
642の回動軸643が離間する方向に付勢されたまま回動され、トリガアーム642の端部とピン662は係合が解除された状態となる。したがって、
図31(b)の状態でプッシュレバーを作動させても、ピン662とトリガアーム642の係合が解除されているため、打撃部の作動はなされない。
【0132】
一方、作業者が
図31(b)の状態から、さらにトリガ摺動操作部614aを操作してトリガ614を紙面左方向に摺動、すなわち、モード選択トリガ付勢部材699の付勢力に抗して移動させて
図31(c)の状態とし、そのあとにプッシュレバーを作動させた場合には、トリガアーム642の端部が、プッシュレバーから延在されたピン662と当接する位置に設けられ、プッシュレバーの作動の都度、プッシュレバーからの作動力とトリガ614の作動力が協働して、トリガバルブ46を駆動する。
【0133】
本実施形態では、第2モードを選択した場合の動作は、使用者がトリガ614の通常の操作(回動動作)を行った上で、トリガ614を摺動させる動作を改めて行った場合に、プッシュレバーの作動による打込みを許容する構成であり、トリガ摺動操作部614a、及び、トリガ614を回動のみならず摺動可能とした構成は、上述した実施の形態と同様に、本件発明の伝達制御部を構成するものである。
【0134】
(実施形態5)
図32、及び、
図33は、実施形態5を示す断面図であり、
図32は、伝達制御部790を操作前の状態、
図33は伝達制御部790を操作後の状態を示している。
上述実施形態1等と同様に、圧縮性気体としての圧縮空気を用いて動作を行う打込機であり、詳述しない構成は上述した実施の形態と同様の構造である。例えば、ボディ748は、実施形態1のボディ48に対応する。
【0135】
打込機710は、トリガ714を有している。また、筒形状の胴部718と接続するハンドル720を有し、マガジン717が打込機710に取り付けられている。マガジン717は、一例として止具の連結方向が射出方向と直交する方向から斜め上方になっているアングルタイプの連結止具を搭載可能なマガジン717を例示しているが、他の実施の形態同様、止具の連結方向が射出方向と直交する構成の止具、及びマガジン717を用いても良い。
【0136】
トリガ714は、その一端の回動軸を介してトリガアーム742を回動可能に保持し、かつ、トリガアーム742は、回動軸とは反対側の端部において、プッシュレバー716から延在されたピン762と接続可能に構成される。また、トリガ714は、図示しないモード選択部材により、第1モードと第2モードを切り替えることが可能である。第1モードと第2モードの意味は、上述した他の実施形態と同様である。
【0137】
本実施形態におけるモード選択部材は、従来から単発、連発モードとして周知の構成を適用することが可能であり、その一例として、トリガ714の回動軸に対して偏心したモード選択部材を設けることで、第1のモードの時には、ピン762がプッシュレバー716により作動した上で、作業者がトリガ714を回動操作した場合にのみピン762とトリガアーム742が係合して、トリガバルブ746の開閉が許容される。一方、第2のモードの時には、ピン762とトリガアーム742は常に係合可能な状態が維持され、プッシュレバー716の作動と作業者によるトリガ714の回動操作が、順序を問わず条件として満たされた場合に、トリガバルブ746の開閉が許容される。
【0138】
本実施の形態では、トリガバルブ746とヘッドバルブ722とを連通する制御通路755において、開閉弁を有する伝達制御部790を設けている。伝達制御部790は、制御レバー752と、ヘッドカバー719に対して回動されるレバー回動軸791、シリンダ回動軸792によって回動可能に係合され、胴部718に対して摺動可能なシリンダ軸頭部793及びシリンダ軸794と、シリンダ軸とヘッドカバー719、あるいは胴部718との間で制御通路755を開閉可能に制御する遮蔽弁795と、遮蔽弁795を遮蔽方向に付勢する遮蔽弁付勢部材796とを設けている。また、シリンダ軸794は、外部に露出しているその頭部793との間において気密性が保たれるよう、O-リング等を有している。また、制御レバー752は、図示しない付勢部材、あるいは、遮蔽弁付勢部材796の力によって、紙面上方に向かう回動方向に付勢がされている。
【0139】
作業者は、トリガ714に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバーが相手材から離反した状態で、図示しないモード選択部材を操作して第1モードまたは第2モードを選択する。モード選択部材は、上述した第2実施形態と同様に、第1モードと第2モードのいずれの状態であってもその状態を維持できるような構成を具備している。
【0140】
作業者は、第1モード、あるいは第2モードのいずれであっても、作業を開始する場合は、伝達制御部790を操作、すなわち、制御レバー752を回動させる動作を行う。すなわち、遮蔽弁795が解放され、制御通路755において、トリガバルブ746とヘッドバルブ722とが連通された状態を構成する必要がある。
【0141】
(第1モードを選択した例) 作業者がプッシュレバーを作動させ、ピン762が紙面上方に移動した状態において、制御レバー752を回動操作し、その後にトリガ714を回動操作させる。例えば、一方の手でハンドル720を把持し、プッシュレバーを相手材に押付ける動作を行った上で、他方の手により制御レバー752を押し込みつつ、プッシュレバー先端が浮いたりずれたりしないようヘッドカバー719を保持し、その上で、トリガ714を回動操作させる。その結果、トリガバルブ746と、ヘッドバルブ722とが制御通路755によって連通されることにより、圧縮空気の力でヘッドバルブ722が駆動し、止具の打撃動作がなされる。
【0142】
(第2モードを選択した例) 作業者がトリガ714を作動操作した状態において制御レバー752を回動操作し、その後にプッシュレバーを作動させる。例えば、一方の手でハンドル720を把持した上でトリガ714を回動操作し、他方の手で、制御レバー752を押し込みつつ、ヘッドカバー719を相手材方向に押付けることで、プッシュレバーを作動させることが容易にできる。その結果、トリガバルブ746と、ヘッドバルブ722とが制御通路755によって連通されることにより、圧縮空気の力でヘッドバルブ722が駆動し、止具の打撃動作がなされる。
【0143】
上記1から5の実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次のとおりである。打込機10等は、打込機の一例である。トリガ14等は、操作部材の一例であり、プッシュレバー16等は、接触部材の一例である。ピストン上室32等は、圧力室の一例である。打撃部13等は、打撃部の一例である。ヘッドバルブ22、トリガバルブ46等は、気体供給機構の一例である。ピン62、トリガアーム42等は、操作部材または接触部材からの作動力を伝達する伝達部材の一例である。ストッパ69、プランジャ85は、規制部材の一例である。制御部77、電磁石70,70A、コイル84は、駆動部の一例である。電磁石70,70A、コイル84は、磁力形成要素である。
【0144】
ストッパ69の先端が、係合部67の作動範囲内に位置することが、第1状態の一例である。制御部77が、電磁石70,70Aに電力を供給して、ストッパ69の先端を係合部67の作動範囲内に位置させることが、規制制御の一例である。プランジャ85の先端85Aが、ピン62の作動範囲内に位置することが、第1状態の一例である。制御部77が、ソレノイド83を制御して、プランジャ85の先端85Aをピン62の作動範囲内に位置させることが、規制制御の一例である。
【0145】
ストッパ69の先端が、係合部67の作動範囲外に位置することが、第2状態の一例である。制御部77が、電磁石70,70Aに対する電力の供給を停止して、ストッパ69の先端を係合部67の作動範囲外に位置させることが、解除制御の一例である。プランジャ85の先端85Aが、ピン62の作動範囲外に位置することが、第2状態の一例である。制御部77がソレノイド83を制御して、プランジャ85の先端85Aを、ピン62の作動範囲外に位置させることが、解除制御の一例である。本体11は、ハウジングの一例である。支持軸40は、支持軸の一例である。支持軸40は、第1支持軸の一例であり、支持軸88は、第2支持軸の一例である。モード選択部材73は、モード選択部材の一例である。電源スイッチ74、電源78は、電力供給部の一例である。釘57は、止具の一例である。付勢部材63は、緩衝部材の一例である。トリガセンサ75は、信号出力部の一例である。
【0146】
トリガセンサ75が第1の状態でオンしている場合に、プッシュレバー16が相手材81に押し付けられてトリガセンサ75がオンからオフに切り替わり、トリガセンサ75から出力される信号が、第1信号の一例である。トリガ14が作動位置に停止してトリガセンサ75がオンしている場合に、トリガ14が作動位置から初期位置に向けて作動することにより、トリガセンサ75がオフして出力される信号が、第2信号の一例である。トリガアーム42は、アームの一例である。トリガアーム42が接触子75Aを押すことが、アームが信号出力部に作用する一例である。
【0147】
打込機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、操作部材は、操作力が付加されて所定角度の範囲内で回転する要素の他、操作力が付加されて所定の範囲内で作動する要素を含む。操作部材は、レバー、ノブ、ボタン、アーム等を含む。接触部材は、相手材に押し付けられて作動する要素であり、レバー、アーム、ロッド、プランジャ等を含む。
【0148】
制御部は、電気部品または電子部品の単体でもよいし、複数の電気部品または複数の電子部品を有するユニットでもよい。電気部品または電子部品は、プロセッサ、制御回路及びモジュールを含む。気体供給機構は、通路同士の接続と、通路同士の遮断とを切り替える切替バルブを含む。
【0149】
ハウジングは、打込機の部品要素を支持する要素、または、その要素に接続される部材であり、ハウジングは、ケース、ブラケット、シェルを含む。圧縮性気体は、圧縮空気に代えて、不活性ガス、例えば、窒素ガス、希ガスを用いることもできる。第1モードを単発打ちと定義し、第2モードを連発打ちと定義することも可能である。
【0150】
トリガセンサ75は、トリガ14の状態に応じた信号を出力する。トリガ14の状態は、トリガ14に付加される操作力の有無、トリガ14の初期位置に対する作動角度、等である。プッシュレバーセンサ76は、プッシュレバー16の作動力が伝達されて作動するシリンダ61の状態に応じた信号を出力する。シリンダ61の状態は、シリンダ61に伝達される作動力の有無、シリンダ61の初期位置に対する作動量、等である。トリガセンサ75、プッシュレバーセンサ76は、接触センサまたは非接触センサを用いることが可能である。接触センサの一例は、タクタイルスイッチである。非接触センサの一例は、光センサ、磁気センサ、赤外線センサである。トリガセンサ75及びプッシュレバーセンサ76の信号は、制御部77に入力される。
【0151】
プッシュレバーセンサ76が、シリンダ61の作動量を検出可能であると、制御部77は、
図9のステップS5において、シリンダ61が初期位置から作動位置に向けて所定量作動した時点で、電磁石70,70Aに対する電力の供給を停止することも可能である。所定量は、電磁石70,70Aに対する電流の供給を停止した場合に、ストッパ69がピン62の作動を阻止することがない値である。所定量のデータは、シミュレーション、実験を行って求めた値であり、制御部77に予め記憶されている。
【0152】
また、
図4に示す規制機構68の変更例として、プッシュレバー16に永久磁石72を設け、ストッパ69に電磁石70を設けることも可能である。
図11の規制機構68の変更例として、プッシュレバー16に永久磁石72を設け、ストッパ69に電磁石70Aを設けることも可能である。トリガアームは、信号出力部に接触または離間して、信号出力部から信号を出力させるように、作動及び停止可能な要素であればよい。つまり、トリガアームと呼ばれるものに限らず、レバーでもよい。
【0153】
また、伝達制御部の動作を、実施の形態2以下で例示したようなトリガの回動操作を行う手とは異なる手で行った場合には、打込機を十分に保持した状態で打込み動作がなされるため、相手材の意図した位置に止具を打込むことができる。さらに、打込み不足(釘浮き)などが減少し、より仕上がりの良い作業を実現することができる。また、第1のモードと第2モードを有する場合に、第2のモードにおいては、プッシュレバーを作動させる際に、両手の力を用いて打込み作業が行われることになるため、作業者の片手に与える負担が軽減されるため、作業性が向上される。
【符号の説明】
【0154】
10,210,310,410,510,610,710…打込機、11,211,311…本体、13…打撃部、14,214,314,414,514,614,714…トリガ、16,216,316,416,516,716…プッシュレバー、32…ピストン上室、40,88…支持軸、42,242,342,442,642,742…トリガアーム、46…トリガバルブ、62,362,462…ピン、63…付勢部材、69…ストッパ、70,70A…電磁石、73,273,373,473…モード選択部材、74…電源スイッチ、75…トリガセンサ、77…制御部、78…電源、84…コイル、85…プランジャ、9,252…伝達制御部、91…伝達制御スイッチ、251…規制部材、253…付勢部材、215a…プッシュレバー規制領域、373…サブハンドル、552…モード選択レバー、614a…トリガ摺動操作部、753…制御レバー