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  • 特許-積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240814BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240814BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240814BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20240814BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240814BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240814BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240814BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240814BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/08
C09J5/06
C09J133/06
C09J133/14
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021031061
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131872
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507276(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033704(WO,A1)
【文献】特開2016-104830(JP,A)
【文献】特開2011-246613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の製造方法であって、
粘着シートと被着体とを貼合して仮接着する工程と、
加熱処理又は加熱加圧処理をして前記粘着シートと前記被着体とを本接着する工程とを備え、
前記粘着シートは、粘着剤組成物の硬化物で形成され、
前記粘着剤組成物は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)と、架橋剤(D)とを含有し、
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位(a)と、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体単位(b)と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位(c)とを含む重合体であり、
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前記(メタ)アクリルエステル単位(a)を50~95質量%、前記単量体単位(b)を1~50質量%、前記マクロモノマー単位(c)を1~15質量%含み、
前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、(メタ)アクリル酸エステルを含む重合体であり、かつ、当該(メタ)アクリル酸エステルが少なくとも(メタ)アクリル酸メチルを含み、
下記物性(1)、物性(2)及び物性(3)を満たす、積層体の製造方法。
物性(1);JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて測定された、貼合30分後の対ガラス粘着力が0.01~5N/25mmである。
物性(2);粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後の、JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて測定された対ガラス粘着力が10N/25mm以上である。
物性(3);JIS K 7136に準じて測定されたヘーズが0~2%である。
【請求項2】
前記本接着は、50~120℃で1~120分の加熱処理により行われる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記マクロモノマー単位(c)の数平均分子量が5000~10000である、請求項1又は2に記載の粘積層体の製造方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径が0.1~5μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)との屈折率差が0~0.05である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記架橋剤(D)がイソシアネート化合物、エポキシ化合物及び金属キレートからなる群より選ばれる1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、主組成が(メタ)アクリル酸メチルの重合体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記積層体は、光学デバイス用又は画像表示装置用である、請求項1~のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、あるいはタッチパネル等の表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置及び入力装置の製造において、光学部材を貼り合せる場合、透明な粘着シートが使用される。また、表示装置と入力装置とを貼り合わせる際にも透明な粘着シートが使用され、これにより所望の積層体が形成される。
【0003】
光学部材どうしを粘着シートで貼り合せた後において、光学部材の位置を調整するために、あるいは、部材間の気泡等の異物を除去するために、粘着シートの貼り直し、つまり、粘着シートをリワーク(再剥離)させたいとの要求もある。このため、リワーク性を高めた粘着シートの開発も進められている。例えば、特許文献1~3には、粘着剤層に粒子を含有させることで、粘着シートにリワーク性を付与できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/239616号
【文献】特開2015-3943号公報
【文献】特開2015-3944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に開示される技術では、粘着シートにリワーク性を付与できるものの、粒子が含まれることでヘーズが高くなって透明性が損なわれることから、光学用途への使用が制限され、所望の積層体が得られにくい問題があった。このようにリワーク性と透明性とはトレードオフの関係にあるため、製造過程でのリワーク性と、得られる積層体の透明性を両立することは難しいものであった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、製造過程でのリワーク性に優れ、透明性が要求される積層体を得る方法として適した製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の成分で構成される粘着シートを使用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
積層体の製造方法であって、
粘着シートと被着体とを貼合して仮接着する工程と、
加熱処理又は加熱加圧処理をして前記粘着シートと前記被着体とを本接着する工程とを備え、
前記粘着シートは、粘着剤組成物の硬化物で形成され、
前記粘着剤組成物は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)と、架橋剤(D)とを含有し、
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位(a)と、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体単位(b)と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位(c)とを含む重合体であり、
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前記(メタ)アクリルエステル単位(a)を50~95質量%、前記単量体単位(b)を1~50質量%、前記マクロモノマー単位(c)を1~15質量%含み、
下記物性(1)、物性(2)及び物性(3)を満たす、積層体の製造方法。
物性(1);JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて測定された、貼合30分後の対ガラス粘着力が0.01~5N/25mmである。
物性(2);粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後の、JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて測定された対ガラス粘着力が10N/25mm以上である。
物性(3);JIS K 7136に準じて測定されたヘーズが0~2%である。
項2
前記本接着は、50~120℃で1~120分の加熱処理により行われる、項1に記載の積層体の製造方法。
項3
前記マクロモノマー単位(c)の数平均分子量が5000~10000である、項1又は2に記載の粘積層体の製造方法。
項4
前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径が0.1~5μmである、項1~3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
項5
前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と前記(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)との屈折率差が0~0.05である、項1~4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
項6
前記架橋剤(D)がイソシアネート化合物、エポキシ化合物及び金属キレートからなる群より選ばれる1種を含む、項1~5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
項7
前記積層体は、光学デバイス用又は画像表示装置用である、項1~6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体の製造方法は、製造過程でのリワーク性に優れ、また、透明性が要求される積層体を得る方法として適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】積層体の一例を示す概略図である。
図2】本発明の製造方法で使用する剥離シート付き粘着シートの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
1.積層体の製造方法
本発明の積層体の製造方法は、粘着シートと被着体とを貼合して仮接着する工程と、加熱処理又は加熱加圧処理をして前記粘着シートと前記被着体とを本接着する工程とを備える。斯かる製造方法では、特定の成分で構成され、かつ、所定の物性を有する粘着シートを使用するので、製造過程でのリワーク性に優れるものである。また、本発明の製造方法で使用する粘着シートは透明性にも優れるので、透明性が要求される積層体を得る方法として適している。
【0013】
以下、粘着シートと被着体とを貼合して仮接着する工程を「工程1」、加熱処理又は加熱加圧処理をして前記粘着シートと前記被着体とを本接着する工程を「工程2」と表記する。
【0014】
工程1において、粘着シートと被着体とを接触させる方法に特に制限は無く、例えば、粘着シートと被着体とを接触させた状態で適宜、加圧を行うことができる。この加圧は、例えば、ハンドローラー、ラミネーター等の公知の加圧装置を用いることができる。加圧を行わずに、粘着シートと被着体とを接触させるだけで仮接着をすることもできる。
【0015】
粘着シートが両面粘着シートである場合は、粘着シートの両面に被着体を接触させて仮接着を行うことができる。工程1により、被着体が粘着シートで仮接着された積層体(仮接着積層体)が得られる。
【0016】
工程2は、工程1で得た仮接着積層体の加熱処理又は加熱加圧処理を行うための工程である。これによって、粘着シートと被着体とがより強固に接着されて本接着(完全接着)された積層体が形成される。
【0017】
工程2での加熱処理又は加熱加圧処理における温度は、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、また、120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましい。加熱処理又は加熱加圧処理における時間は、加熱温度によって適宜調整することができ、例えば、1分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましく、10分以上であることがさらに好ましく、また、120分以下であることが好ましく、100分以下であることがより好ましく、90分以下であることがさらに好ましい。工程2で仮接着積層体に加熱加圧処理を施す場合、加圧条件は、例えば、0.2~0.9MPaの圧力とすることができる。
【0018】
工程2での加熱処理又は加熱加圧処理の回数は特に限定されず、例えば、1回のみとすることができ、あるいは、複数回とすることもできる。また、粘着シートが両面粘着シートである場合、粘着シートを一方の被着体に貼合し、加熱処理又は加熱加圧処理をした後、該粘着シートの他方の面に被着体を貼合し、加熱処理又は加熱加圧処理をすることもできる。
【0019】
本発明の製造方法によれば、後記するようにリワーク性に優れる粘着シートを使用して積層体を得るので、工程1の仮接着において、粘着シートと被着体との位置調整、品質検査及び貼り直し等が必要になった場合に、粘着シートを被着体から容易に剥離することができる。また、粘着シートを被着体から剥離しても、粘着シートに由来する糊残りが生じることも抑制される。
【0020】
さらに、工程2の加熱処理又は加熱加圧処理で本接着を行った後は、粘着シートと被着体が強固に密着して接着しており、各層が強固に密着した積層体を得ることができる。
【0021】
本発明の製造方法で得られる積層体は、ヘーズが低い(つまり、透明性が高い)ので、得られる積層体の透明性も損なわれにくい。従って、本発明の製造方法は、高い透明性が求められる積層体の製造に適している。
【0022】
2.積層体
本発明の製造方法で得られる積層体は、粘着シートと、被着体とを備える。粘着シートとして両面粘着シートを使用する場合、被着体は、粘着シートの両面に直接設けられていることが好ましい。この場合、積層体は、被着体/粘着シート/被着体がこの順で積層された構造を有する。
【0023】
被着体の種類は特に限定されず、例えば、光学デバイス等に使用される光学部材を貼りあわせるために使用することができる。
【0024】
光学部材としては、タッチパネル、あるいは、画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。
【0025】
画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。本発明の積層体の製造方法では、液晶モジュールとタッチパネルモジュールなどのモジュール同士を貼り合わせてもよい。
【0026】
被着体を構成する具体的な材料としては、ガラス、ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース,ポリイミド、セルロースアシレートなどが例示される。
【0027】
図1は、本発明の製造方法で得られる積層体の一例である。この図1に示されるように、積層体100は、被着体50/粘着剤層11/被着体50がこの順で積層されて形成されていることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法で得られる積層体は各種用途に適用することができ、例えば、光学デバイス、画像表示装置等の好適に使用することができる。特に、積層体は、透明性の高い粘着シートで貼りあわされて形成されているので、光学デバイス、画像表示装置等に適用した場合に画像の意匠性及び視認性をより向上させることができる。
【0029】
3.粘着シート
本発明の製造方法で使用する粘着シート(以下、単に「粘着シート」という))は、粘着剤組成物の硬化物で形成される。つまり、粘着シートは、粘着剤組成物を硬化してなるものである。
【0030】
前記粘着剤組成物は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)と、架橋剤(D)とを含有する。また、粘着シートは、後記する物性(1)、物性(2)及び物性(3)を兼ね備えるものである。
【0031】
本発明の製造方法で使用する粘着シートは、リワーク性(つまり、位置調整能)に優れるものであり、しかも、高い透明性を有する。また、粘着シートは、リワーク性に適した初期粘着力を有していることに加えて、被着体どうしを貼合した後、加熱することで粘着力を高めることができる性質(いわゆる、加熱接着性)を有する。これにより、粘着シートは、被着体どうしを強固に貼り合わせることも可能である。
【0032】
<架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)>
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位(a)と、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体単位(b)と、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位(c)とを含む重合体である。以下、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル単位(a)を単に「(メタ)アクリルエステル単位(a)」と表記し、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体単位(b)を単に「単量体単位(b)」と表記する。また、メタクリル酸メチル単位を有するマクロモノマー単位(c)を単に「マクロモノマー単位(c)」と表記する。
【0033】
なお、(メタ)アクリルエステル単位(a)における「単位」、及び、「単量体単位」とは、重合体を構成する繰り返し単位であることを意味する。また、マクロモノマー単位も重合体を構成する繰り返し単位を意味するが、マクロモノマー自体が複数の繰り返し単位(セグメント)から構成されるものであるので、当該セグメント全体を「マクロモノマー単位」とする。
【0034】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を、「(メタ)アリル」とは「アリル」または「メタリル」を意味する。
【0035】
(メタ)アクリルエステル単位(a)は、炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物に由来する繰り返し単位である。炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物は、例えば、公知の(メタ)アクリルエステル化合物を広く挙げることができ、具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル等が挙げられる。炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物は、ヒドロキシル基及びカルボキシ基を有していないことが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリルエステル単位(a)において、アルキル基の炭素数は4~8であることが好ましく、4~6であることがより好ましい。
【0037】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる(メタ)アクリルエステル単位(a)は、1種のみであってもよいし、2種類以上を含むこともできる。
【0038】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)において、(メタ)アクリルエステル単位(a)の含有割合は50質量%以上95質量%以下である。この場合、粘着シートは、所望のリワーク性及び透明性を有することができ、かつ、物性(1)~(3)を満たす。(メタ)アクリルエステル単位(a)の含有割合が50質量%未満である場合、粘着シートの初期の粘着性能(加熱処理前の粘着性能)が悪化するおそれがある。粘着シートのリワーク性及び透明性がより向上しやすいという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリルエステル単位(a)の含有割合は、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、粘着シートのリワーク性及び透明性がより向上しやすいという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリルエステル単位(a)の含有割合は、好ましくは94質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは92質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。
【0039】
なお、本発明において、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)中の各構成単位の含有量は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)を製造するときに使用する当該構成単位に由来する重合性単量体の使用量に一致するものとみなすことができる。
【0040】
単量体単位(b)は、カルボキシ基及び/又はヒドロキシル基を有する単量体に由来する繰り返し単位である。
【0041】
カルボキシ基を有する単量体は、例えば、公知のカルボキシ基含有重合性単量体を広く挙げることができ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0042】
ヒドロキシル基を有する単量体は、例えば、公知のヒドロキシル基含有重合性単量体を広く挙げることができ、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、単量体単位(b)として、カルボキシ基を有する単量体単位及びヒドロキシル基を有する単量体単位の両方を含むことができ、あるいは、いずれか一方のみを含むことができる。単量体単位(b)が、カルボキシ基を有する単量体単位及びヒドロキシル基を有する単量体単位の両方を含む場合、これらの含有比率は特に限定されず、如何なる含有比率であっても所望の粘着シートを得ることができる。
【0044】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)において、単量体単位(b)の含有割合は1質量%以上50質量%以下である。単量体単位(b)の含有割合が1質量%未満である場合、粘着シートの初期の粘着性能(加熱処理前の粘着性能)が悪化し、50質量%を超えると粘着シートの初期の粘着力が大きくなり過ぎて、所望のリワーク性を得ることができない。粘着シートが優れたリワーク性及び透明性を有しやすいという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)における単量体単位(b)の含有割合は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上である。また、粘着シートが優れたリワーク性及び透明性を有しやすいという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)における単量体単位(b)の含有割合は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0045】
マクロモノマー単位(c)は、メタクリル酸メチル系マクロモノマーに由来する繰り返し単位である。メタクリル酸メチル系マクロモノマーは、例えば、複数のメタクリル酸メチル単位で構成され、重合可能な反応性基を末端等に有するオリゴマーもしくはポリマーである。斯かるメタクリル酸メチル系マクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを広く挙げることができる。メタクリル酸メチル系マクロモノマーは、例えば、メチルメタクリレートを3~500個重合したオリゴマーもしくはポリマーとすることができる。また、メタクリル酸メチル系マクロモノマーに導入された重合可能な反応性基としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等を挙げることができる。重合可能な反応性基は、メタクリル酸メチル系マクロモノマー末端に導入されていることが好ましい。
【0046】
マクロモノマー単位(c)の数平均分子量は、5000~10000であることが好ましい。つまり、メタクリル酸メチル系マクロモノマーの数平均分子量は、5000~10000であることが好ましい。この場合、粘着シートのリワーク性が向上しやすく、ヘーズをより低く抑えることができる。メタクリル酸メチル系マクロモノマーの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。ただし、市販品のメタクリル酸メチル系マクロモノマーを用いる場合において、数平均分子量のメーカー保証値又は測定値が判明している場合は、その値をメタクリル酸メチル系マクロモノマーの数平均分子量とする。
【0047】
メタクリル酸メチル系マクロモノマーは、例えば、公知の製造方法で製造することができ、あるいは、市販品等から入手することができる。市販品のメタクリル酸メチル系マクロモノマーとしては、例えば、東亞合成社製のAA-6が挙げられる。
【0048】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)において、マクロモノマー単位(c)の含有割合は1質量%以上15質量%以下である。マクロモノマー単位(c)の含有割合が1質量%未満である場合、粘着シートの初期の粘着力が大きくなり過ぎて、所望のリワーク性を得ることができず、15質量%を超えると粘着シートの加熱後の粘着力が発現しなくなる。粘着シートのリワーク性及び加熱後の粘着力がより向上しやすいという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるマクロモノマー単位(c)の含有割合は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。粘着シートのリワーク性及び透明性がより向上しやすいという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるマクロモノマー単位(c)の含有割合は、好ましくは14質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0049】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、本発明の効果が阻害されない限り、(メタ)アクリルエステル単位(a)、単量体単位(b)及びマクロモノマー単位(c)以外の他の構成単位を含むことができる。他の構成単位は、例えば、前記(メタ)アクリルエステル化合物と共重合可能な化合物に由来する構成単位を広く挙げることができる。斯かる化合物としては、具体的には、炭素数3以下の(メタ)アクリルエステル化合物(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル等)、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられ、その他、アミノ基含有(メタ)アクリルエステル、グリシジル基含有(メタ)アクリルエステル、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリルエステル等も挙げることができる。
【0050】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)が上記他の構成単位を含む場合、その含有割合は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の全質量に対して15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリルエステル単位(a)、単量体単位(b)及びマクロモノマー単位(c)のみで構成されていてもよい。つまり、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)において、(メタ)アクリルエステル単位(a)、単量体単位(b)及びマクロモノマー単位(c)の含有割合をそれぞれX(質量%)、Y(質量%)及びZ(質量%)としたときに、X+Y+Z=100であることが好ましい。
【0051】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)において、各構成単位の配列順序は特に限定されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を形成することができる。特に、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、マクロモノマー単位(c)を有することから、マクロモノマー単位に起因するブロック部位を有し、例えば、このブロック部位は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)において分岐鎖となり得る。斯かる分岐鎖が存在することで、ポリマー内でブロック部位がミクロ相分離構造をとりやすくなるため、より効果的に粘着シートの初期粘着力を低く抑えることができると共に、加熱後の粘着力を高める作用も発揮することができる。従って、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ランダム共重合体でありながらも、マクロモノマー単位に起因する分岐鎖を有している構造であることが好ましい。
【0052】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は特に限定されない。例えば、粘着シートの初期粘着力を低く抑える一方で、加熱後粘着力を高くすることが容易となりやすい点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は10万~200万が好ましく、20万~150万がより好ましい。なお、架橋性(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、後述する架橋剤で架橋される前の値を意味する。架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。
【0053】
粘着剤組成物に含まれる架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることができる。
【0054】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の重合方法を利用した製造方法により、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)を得ることができる。架橋性(メタ)アクリル共重合体(A)は、市販品等から入手することもできる。
【0055】
架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の屈折率は特に限定されない。粘着シートの透明性を高めるという点で、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の屈折率は1.45~1.50であることが好ましく、1.46~1.49であることがより好ましい。なお、ここでいう架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の屈折率とは、JIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のA法によって測定された値を示す。
【0056】
<(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)>
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含有する微粒子状の材料である。
【0057】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)において、(メタ)アクリル系樹脂の種類は特に限定されず、公知の(メタ)アクリル系樹脂を広く例示することができる。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられる。斯かる(メタ)アクリル酸エステルは、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルの他、前述の炭素数4~10のアルキル基を有する(メタ)アクリルエステル化合物、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(アルキル炭素数は例えば2~10)、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。中でも、粘着シートにリワーク性を付与しやすく、かつ、ヘーズを低くしやすいという点で、(メタ)アクリル系樹脂は(メタ)アクリル酸メチル重合体であることが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)における(メタ)アクリル系樹脂は、単独重合体(ホモポリマー)であってもよいし、共重合体であってもよい。(メタ)アクリル系樹脂が共重合体である場合、前述の(メタ)アクリルエステル単位を2種以上含む重合体が例示される他、(メタ)アクリルエステルと、該(メタ)アクリルエステル以外の重合性単量体との共重合体とすることもできる。(メタ)アクリルエステル以外の重合性単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)における(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、又は、(メタ)アクリルエステル及び該(メタ)アクリルエステル以外の重合性単量体との共重合体であることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は(メタ)アクリル酸エステルの共重合体であることがさらに好ましい。中でも、屈折率及びヘーズの調整が容易になりやすいという点で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は架橋又は非架橋のポリメタクリル酸メチル粒子であることが特に好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)における(メタ)アクリル系樹脂は、架橋構造を有することができ、あるいは、非架橋構造を有することもできる。(メタ)アクリル系樹脂が架橋構造を有する場合、当該架橋構造は、例えば、多官能性重合性単量体等の公知の架橋剤によって形成され得る。
【0061】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径は特に限定されない。粘着シートのリワーク性が向上しやすく、ヘーズも低くなりやすいという点で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径は0.1~5μmであることが好ましく、0.2~3μmであることがより好ましい。
【0062】
本明細書において、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径とは、透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した値を意味する。具体的には、粘着シートのTEM画像又はSEM画像において観察される微粒子を無作為に1個選択し、その最大長(Dmax)及び最大長垂直長(DV-max)を測長して微粒子の相乗平均値(つまり、(Dmax×DV-max)1/2の値)を算出する。同様の方法で計100個の微粒子それぞれの相乗平均値を算出し、その平均値を粘着シートに含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径として決定する。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒径は、個数平均粒子径を意味する。なお、最大長(Dmax)は、粒子画像の輪郭上の2点における最大長さであり、最大長垂直長(DV-max)は最大長に平行な2本の直線で粒子画像を挟んだときの、この2本の直線間の最短長さである。
【0063】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率は特に限定されない。粘着シートの透明性を高めるという点で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率は1.45~1.51であることが好ましく、1.46~1.50であることがより好ましい。
【0064】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率について、より具体的には、粘着剤組成物に含まれる前記架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)との屈折率差(絶対値)が0~0.05であることがさらに好ましい。この場合、粘着シートはより優れた透明性を有することができる。なお、ここでいう(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率とは、JIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のB法によって測定された値を示す。
【0065】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることができる。
【0066】
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法と同様の方法で、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を製造することができる。また、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)は、市販品からも入手することが可能である。
【0067】
<架橋剤(D)>
架橋剤(D)は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の架橋反応を進行させることができるための成分を広く挙げることができる。特に、架橋剤は、カルボキシ基又はヒドロキシル基と反応することができる成分を広く挙げることができる。
【0068】
斯かる架橋剤(D)は、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。
【0069】
中でも、架橋剤(D)は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物及び金属キレートからなる群より選ばれる1種を含むことが好ましい。この場合、得られる粘着シートは、優れたリワーク性を発揮することができ、また、高い透明性を有しやすい。架橋剤(D)が金属キレートを含む場合は、後記する架橋遅延剤を併用することが好ましい。
【0070】
イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;が挙げられる。イソシアネート化合物は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。市販品の例としては、トリレンジイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD-110N)等が挙げられる。
【0071】
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ化合物の市販品としては、例えば、TETRAD-C(三菱ガス化学社製)、TETRAD-X三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
【0072】
金属キレート化合物としては、例えば、架橋反応に使用される公知の金属キレート化合物を挙げることができ、市販品の例としては、アルミキレートA(川研ファインケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0073】
<粘着剤組成物>
粘着剤組成物は、上記のように、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)、及び、架橋剤(D)を含有する。
【0074】
粘着剤組成物において、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の含有量は特に限定されず、例えば、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の総質量100質量部あたり、0.3~5質量部とすることができ、0.5~3質量部とすることが好ましい。この場合、得られる粘着シートは優れたリワーク性が維持されつつ、ヘーズ値を小さくすることができる。
【0075】
粘着剤組成物において、架橋剤(D)の含有量は特に限定されず、例えば、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の総質量100質量部あたり、0.01~5質量部とすることができる。この場合、得られる粘着シートの加工性が高まりやすい。架橋剤(D)の含有量は架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)の総質量100質量部あたり、0.05~3質量部とすることができる。
【0076】
粘着剤組成物は、上記のように、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)、及び、架橋剤(D)を含有する他、必要に応じて溶剤を含むことができる。粘着剤組成物が溶剤を含むことで粘着剤組成物の塗工性が向上し、粘着シートを形成しやすくなる。
【0077】
溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は特に限定されず、架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対し、25~500質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましい。加えて、粘着剤組成物の全質量に対する溶剤の含有割合は、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
【0079】
粘着剤組成物に含まれる溶剤は、1種単独とすることができ、あるいは、2種以上とすることもできる。
【0080】
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有できる。他の成分としては、例えば、粘着剤組成物への添加剤として使用される公知の成分を挙げることができる。その他成分として、例えば、架橋遅延剤、可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
【0081】
架橋遅延剤としてはアセチルアセトン等を挙げることができる。特に前記架橋剤(D)が金属キレートを含む場合は、架橋遅延剤を併用することが好ましい。可塑剤としては、例えば無官能基アクリル重合体が挙げられる。無官能基アクリル重合体としては、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を挙げることができる。無官能基アクリル重合体は架橋しないため、粘着性に影響を与えずに段差追従性を高めることができる。
【0082】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
【0083】
粘着剤組成物がその他成分を含む場合、その含有割合は特に限定されず、例えば、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部あたり、15質量部以下、好ましくは10質量部以下とすることができる。
【0084】
粘着剤組成物を調製する方法は特に限定されず、例えば、公知の粘着剤組成物の調製方法を広く採用することができる。
【0085】
<粘着シートの構成及び物性>
粘着シートは、前述の粘着剤組成物の硬化物からなるものである。つまり、粘着シートは、前述の粘着剤組成物を硬化させて得ることができる。粘着剤組成物の硬化物は、粘着シートにおいて、粘着剤層として機能することができる。粘着シートは、例えば、粘着剤層のみで構成することができる。つまり、粘着シートは、粘着剤組成物の硬化物のみで形成することもできる。粘着剤層は単層構造とすることができ、あるいは、単層の粘着剤層を複数積層した多層構造を有することもできる。粘着シートは、片面粘着シート及び両面粘着シートのいずれであってもよく、両面粘着シートであることが好ましい。
【0086】
<粘着シートの物性>
(物性1)
粘着シートは下記物性(1)を満たす。
物性(1);JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて測定された、貼合30分後の対ガラス粘着力が0.01~5N/25mmである。
【0087】
物性(1)において、粘着シートの対ガラス粘着力を測定する際には、JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて、ガラスに貼合後1分後の対ガラス粘着力を測定する。より具体的には、粘着シートの一方の面に100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)を貼合した後、これをオートクレーブ内で100℃、0.5MPa(ゲージ圧を意味する)の条件で30分処理する。このように処理された片面にPET基材を有する粘着シートをソーダガラス(平岡特殊硝子制作(株) 圧着面は錫フロートの反対面)に貼合する。この際、試験板にソーダガラスを用いること以外はJIS Z 0237に記載の180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて、測定用サンプルを作製する。そして、圧着1分後に300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定する。この粘着力を物性(1)における対ガラス粘着力とする。
【0088】
物性(1)において、対ガラス粘着力の値は、リワーク性が特に向上するという点で、0.05N/25mm以上であることが好ましい。また、物性(1)における対ガラス粘着力は、4.8N/25mm以下であることが好ましく、4.6N/25mm以下であることがより好ましく、4.5N/25mm以下であることがさらに好ましい。
【0089】
物性(1)における対ガラス粘着力は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体の構成単位の種類及び比率、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒子径及び配合量、並びに架橋剤(D)の配合量を調節することで、調整することができる。
【0090】
(物性2)
粘着シートは下記物性(2)を満たす。
物性(2);粘着シートをガラス板に貼合し、100℃、0.5MPa(ゲージ圧を意味する)の条件で30分間加熱処理した後の、JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じて測定された対ガラス粘着力が10N/25mm以上である。
【0091】
物性(2)において、粘着シートの対ガラス粘着力を測定する際には、物性(1)の方法と同様にして測定用サンプルを作製する。その後、この測定用サンプルを、オートクレーブ内にて100℃、0.5MPaの条件で30分間処理したのち23℃相対湿度50%の環境下に2時間静置する。次いで、物性(1)と同様の方法で300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定する。この粘着力を物性(2)における対ガラス粘着力とする。
【0092】
物性(2)において、対ガラス粘着力の値は、加熱処理後の被着体に対する粘着力が高まりやすいという点で、10N/25mm以上であることが好ましく、15N/25mm以上であることがより好ましく、20N/25mm以上であることがさらに好ましく、25N/25mm以上であることが特に好ましい。また、物性(2)における対ガラス粘着力は特に限定されず、例えば、ディスプレイなどを廃棄や解体しやすいという点で50N/25mm以下であることが好ましい。
【0093】
物性(2)における対ガラス粘着力は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体の構成単位の種類及び比率、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の平均粒子径及び配合量、並びに架橋剤(D)の配合量を調節することで、調整することができる。
【0094】
(物性3)
粘着シートは下記物性(3)を満たす。
物性(3);JIS K 7136に準じて測定されたヘーズが0~2%である。
【0095】
物性(3)において、粘着シートのヘーズを測定する際には、JIS K 7136に準じて測定する。具体的には、空気等が混入しないように厚さ1.2mmである一対の透明ガラス板(松浪硝子工業社製、S9112)を粘着シートによって貼合して積層サンプルを作製し、当該積層サンプルを用いて、JIS K7136(2000)に準拠して、ヘーズを測定する。この測定には日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いることができる。積層サンプルは、例えば、以下のように作製する。剥離シート付き粘着シートの軽剥離側の剥離シートを剥がし、一方の透明ガラス板に貼合した後、重剥離側の剥離シート(重剥離セパレーター)を剥がした面に、他方の透明ガラス板を、空気などが混入しないように貼り合わせる。これをオートクレーブ内にて100℃、0.5MPa(ゲージ圧を意味する)の条件で30分間処理した後、23℃相対湿度50%の環境下に2時間静置して、積層サンプルを得ることができる。
【0096】
物性(3)において、ヘーズの値は、粘着シートの透明性が高まりやすいという点で、1.9%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましい。ヘーズの値は0%であってもよい。
【0097】
ヘーズの値は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体の構成単位の種類及び比率、並びに、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率、平均粒子径及び配合量を調節することで、調整することができる。
【0098】
粘着シートは上記物性(1)を有するので、初期粘着力が強すぎず、これにより、位置調整能(リワーク性)に優れている。このため、粘着シートを、例えば光学部材貼合用途等の部材どうしの貼り合わせに用いる場合において、粘着シートを光学部材から容易に剥離することができるので、貼り直し作業を容易に行うことができ、また、粘着シートに由来する糊残りも生じにくい。
【0099】
粘着シートは上記物性(2)を有するので、被着体を貼り合わせてから加熱することで、粘着力を高めることができる。これにより、被着体同士を強固に貼り合わせることが可能となる。このように、粘着シートは、初期粘着力を低く抑える一方で、加熱後粘着力を高くすることができ、相反する2つの粘着性能を兼ね備えるものである。
【0100】
さらに、粘着シートは上記物性(3)を有するので、高い透明性を有する。従って、本発明の粘着シートは高い透明性が要求される光学用途等への使用にも好適である。
【0101】
以上のように、粘着シートは物性(1)~(3)を有することで、粘着シートにリワーク性を付与できつつ、高い透明性を付与することができ、従来はトレードオフの関係にあった粘着シートの透明性及びリワーク性を両立させることができる。また、粘着シートは、貼りあわせ後、時間が経過しても剥がれがみられず、経時安定性にも優れるものである。従って、粘着シートは、本発明の積層体の製造方法での使用に好適である。
【0102】
<粘着シートのその他特性>
粘着シートの厚みは、用途に応じて適宜設定できるので特に限定されず、例えば、5~300μmであることが好ましく、8~200μmであることがより好ましく、10~150μmであることが特に好ましい。
【0103】
粘着シートのゲル分率も特に限定されず、粘着シートに含まれる成分及び種類に応じて適宜設定することができる。例えば、粘着シートのゲル分率は35~100%、好ましくは40~95%、より好ましくは45~90%である。なお、上記ゲル分率は、粘着シートを加熱する前のゲル分率であるが、粘着シートにおいては、加熱前後のゲル分率の変化は小さいため、100℃、0.5MPaの条件で30分間加熱処理した後の粘着シートのゲル分率も上記範囲内であることが好ましい。
【0104】
粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定した値である。まず、粘着シート(粘着剤層)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定する。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0105】
<剥離シート付き粘着シート>
図2に示すように、本発明の製造方法で使用する粘着シートには剥離シートを設けて剥離シート付き粘着シートとすることもできる。剥離シート付き粘着シート10は、粘着剤層11(粘着シート)の両表面に剥離シート12a及び12bを有することができる。
【0106】
剥離シートとしては、例えば、公知の剥離シートを広く適用することができ、例えば、剥離シート用基材の片面に剥離剤層が形成されてなる剥離性積層シートを挙げることができ、その他、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムで形成される低極性基材が挙げられる。前記剥離シート用基材には、例えば、紙類、高分子フィルムが使用される。
【0107】
剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-4527、SD-7220等や、信越化学工業(株)製のKS-3600、KS-774、X62-2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤としては、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と、(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位とを有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有すことも好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24-843、SD-7292、SHR-1404等や、信越化学工業(株)製のKS-3800、X92-183等が挙げられる。
【0108】
剥離性積層シートは、市販品から入手することもでき、例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0109】
剥離シート付き粘着シートは、粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方(軽剥離側)の剥離シートだけを重剥離側よりも先に剥離することが容易となる。
【0110】
(粘着シートの製造方法)
粘着シートの製造方法は特に限定されず、公知の方法を広く採用することができる。中でも、剥離シート上に上述した粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程と、この塗膜を加熱する工程を含む製造方法により、粘着シートを形成することが好ましい。斯かる製造方法において、粘着剤組成物に溶剤が含まれる場合は、前記加熱する工程で溶剤が除去されると同時に架橋性(メタ)アクリル共重合体および架橋剤の反応が進行して硬化物(粘着剤層)が形成される。
【0111】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、アプリケーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0112】
粘着剤組成物を塗工するにあたって使用する基材は、特に限定されない。例えば、粘着剤組成物は、樹脂製の基材、ガラス製の基材等の各種基材に塗工することができる。例えば、剥離シート付き粘着シートを得る場合は、基材として剥離シートを選択できる。また、粘着剤組成物は接着対象とする部材上に直接塗工することもできる。
【0113】
粘着剤組成物の塗工後の厚みも特に制限されず、目的とする粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。
【0114】
塗膜を加熱する工程では、加熱温度は特に限定されず、例えば、50~150℃とすることが好ましい。加熱時間は、加熱温度、塗膜の厚み及び粘着剤組成物の溶剤の含有量によって適宜調節することができ、例えば、1~60分とすることができる。塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。また、加熱後は、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施すことが好ましい。エージング処理は、例えば、23℃で7日間静置して行うことができる。
【実施例
【0115】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0116】
[架橋性(メタ)アクリル共重合体A-1の合成]
アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸(AA)及びメタクリル酸メチル系マクロモノマー(AA-6、数平均分子量6000、東亞合成社製)を質量比で94:3:3となるように配合したモノマーを、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が30質量%で、重量平均分子量が72万である架橋性(メタ)アクリル共重合体(A-1)(表1において「A-1」と表記)の溶液を得た。
【0117】
[架橋性(メタ)アクリル共重合体A-2の合成]
BA、アクリル酸2ヒドロキシエチル(2HEA)及びメタクリル酸メチル系マクロモノマー(AA-6、数平均分子量6000、東亞合成社製)を質量比で70:20:10となるように配合したモノマーを、重合溶媒である酢酸エチル中、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下で60℃に加熱して重合させた。これにより、固形分濃度が35質量%で、重量平均分子量が60万である架橋性(メタ)アクリル共重合体(A-2)(表1において「A-2」と表記)の溶液を得た。
【0118】
(実施例1)
[粘着剤組成物の調製]
アクリル共重合体(A-1)100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)としてMX-80H3WT(平均粒径0.8μm、綜研化学社製)を1質量部、架橋剤としてエポキシ系化合物(テトラッドX、三菱瓦斯化学社製)及び金属キレート化合物(アルミキレートA、川研ファインケミカル社製)をそれぞれ0.1質量部及び0.5質量部、架橋遅延剤としてアセチルアセトン(東京化成工業社製)を5質量部、シランカップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)を0.5質量部含む原料を、当該原料の濃度が25質量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物a-1を調製した。
【0119】
[粘着シートの作製]
上記のようにして調製した粘着剤組成物a-1を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第1の剥離シート、王子エフテックス社製、50RL-07(2))の表面に、乾燥後の塗工厚みが25μmになるようにアプリケーターで均一に塗工して塗膜を形成した。斯かる塗膜を、空気循環式恒温オーブンにより、100℃で3分間乾燥させることで、第1の剥離シートの表面に粘着剤層(粘着シート)を形成した。
【0120】
次いで、該粘着剤層の表面に第1の剥離シートと剥離力の異なる、厚さ38μmの第2の剥離シート(王子エフテックス社製、38RL-07(L))を貼合し、23℃、相対湿度50%の条件で14日間養生した。これにより、粘着剤層(粘着シート)が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着シート/第2の剥離シートの構成を備える剥離シート付き粘着シートを得た。
【0121】
得られた剥離シート付き粘着シートと、光学部材とを仮接着して、後記する[位置調整能(リワーク性)]を評価した。また、得られた剥離シート付き粘着シートを用いて、後記する[画像の意匠性及び視認性]に記載の方法で積層体(積層サンプル)を形成した。
【0122】
(実施例2)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)として、MX-300(平均粒径3μm、綜研化学社製)に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0123】
(実施例3)
アクリル共重合体(A-2)100質量部に対して、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)としてXX-5910(平均粒径0.3μm、積水化成品工業社製)を1.5質量部、架橋剤としてイソシアネート系化合物(コロネートL-55、東ソー社製)を0.1質量部、シランカップリング剤(KBM403、信越化学工業社製)を0.5質量部含む原料を、当該原料の濃度が27質量%となるように酢酸エチルに加え、攪拌することで粘着剤組成物a-2を調製した。
【0124】
次いで、粘着剤組成物a-1を粘着剤組成物a-2変更したこと以外は実施例1と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0125】
(実施例4)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)として、BMSA-18GN(平均粒径0.8μm、積水化成品工業社製)に変更すると共に、その使用量を2質量部に変更したこと以外は実施例3と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0126】
(実施例5)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の使用量を0.5質量部に変更したこと以外は実施例4と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0127】
(比較例1)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)を使用せずに粘着剤組成物を調製したこと以外は実施例1と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0128】
(比較例2)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の代わりに、メラミン系樹脂かなる粒子エポスターM30(平均粒径3μm、日本触媒社製)に変更したこと以外は実施例3と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0129】
(比較例3)
(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)として、MBX-20(平均粒径20μm、積水化成品工業社製)に変更すると共に、その使用量を1質量部に変更したこと以外は実施例3と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得て、積層体(積層サンプル)を形成した。
【0130】
[物性1;対ガラス粘着力]
JIS Z 0237に記載の粘着力の測定方法に準じた。まず、剥離シート付き粘着シートの軽剥離側の剥離シートを剥がして100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)と貼合した後、オートクレーブ内で100℃0.5MPa(ゲージ圧)の条件で30分処理することにより片面にPET基材を有する粘着シートを得た。この片面にPET基材を有する粘着シートの重剥離側の剥離シートを剥がして、ソーダガラス(平岡特殊硝子制作(株) 圧着面は錫フロートの反対面)に貼合した。この際、試験板にソーダガラスを用いること以外はJIS Z 0237に記載の180°引きはがし粘着力の測定方法に準じて、測定用サンプルを作製した。そして、圧着1分後に300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定し、この粘着力を物性(1)における対ガラス粘着力とした。
【0131】
[物性2;対ガラス粘着力]
試験板への圧着までは前記物性1の方法と同様にして、測定用サンプルを作製した。その後、この測定用サンプルを、オートクレーブを用いて100℃、0.5MPa(ゲージ圧)の条件で30分間処理したのち23℃相対湿度50%の環境下に2時間静置した。そして、物性(1)と同様の方法で300mm/分の引き剥がし速度で粘着力を測定し、この粘着力を物性(2)における対ガラス粘着力とした。
【0132】
[物性3;ヘーズ]
粘着シートのヘーズはJIS K 7136に準じて測定した。具体的に、空気等が混入しないように厚さ1.2mmである一対の透明ガラス板(松浪硝子工業社製、S9112)を粘着シートによって貼合して積層サンプルを作製し、当該積層サンプルを用いて、JIS K7136(2000)に準拠して、ヘーズを測定した。測定には日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いた。積層サンプルは、以下のように作製した。まず、剥離シート付き粘着シートの軽剥離側の剥離シートを剥がし、一方の透明ガラス板に貼合した後、重剥離側の剥離シート(重剥離セパレーター)を剥がした面に、他方の透明ガラス板を、空気などが混入しないように貼合した。これをオートクレーブ内にて100℃、0.5MPa(ゲージ圧)の条件で30分間処理した後、23℃相対湿度50%の環境下に2時間静置して、積層サンプルを得た。
【0133】
[重量平均分子量]
架橋性(メタ)アクリル共重合体(A)の重量平均分子量は以下の方法でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。GPCの測定条件は以下のとおりである。
・溶媒:テトラヒドロフラン
・カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
・カラム温度:40℃
・試料濃度:0.5質量%
・検出器:RI-2031plus(JASCO製)
・ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
・流量(流速):0.8ml/min
・注入量:10μl
・校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320~2,500,000迄の10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0134】
[屈折率の測定]
架橋性(メタ)アクリル共重合体(A)の屈折率はJIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のA法に準じて測定した。また、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)の屈折率はJIS K 7142(2014)「プラスチック-屈折率の求め方」に記載のB法に準じて測定した。
【0135】
(粘着シートの評価)
各実施例で及び比較例で得られた粘着シートの各評価は、以下の手順で行った。
【0136】
[位置調整能(リワーク性)]
物性(1)の測定サンプルを作製する過程で得た、片面にPET基材を有する粘着シートを50mm×60mmの大きさに切り出して試験片を得た。この試験片を、ハンドローラーを用いて30mm×40mm(厚み10mm)のフロート板ガラス(日本板硝子社製)に、当該フロート板ガラスの中心点と、粘着シートの中心点とが互いに重なるように圧着して積層体を作製した。この積層体を23℃相対湿度50%の環境下にて、水平台上に粘着シート側が台に面するように載置し、圧着させた。圧着から1分以内に、ガラス板からはみ出た部分の粘着シートを片手で軽く抑えつつ、もう一方の手でガラス板をつまみ上げて粘着シートからガラス板を上方向に剥離した。この際の剥離性を下記基準にて評価した。
○:簡単に剥がれ、リワーク性に優れる。
×:剥がれないか、剥がれにくく(例えば、粘着シート側を上にして粘着シートを端部から引き上げるように剥離しないと剥がれない)、リワーク性に劣る。
【0137】
[経時による剥がれ有無]
前記位置調整能(リワーク性)の評価をする過程で作製した積層体を、65℃(相対湿度95%)の恒温恒湿層を用いて240時間処理した後、23℃相対湿度50%の環境下に60分静置した。その後、目視にて下記基準にて評価した。
○:剥がれ浮きが生じていない
×:エッジ部などに剥がれや浮きが生じている
【0138】
[画像の意匠性及び視認性]
剥離シート付き粘着シートの軽剥離側の剥離シートを剥がして100μmPET(東洋紡社製/品番:コスモシャインA4300)と貼合した粘着シートを、150mm×70mmの大きさに切り出して試験片を得た。次いで、この試験片の重剥離側の剥離シートを剥がして、露出した面の全面と、黒印刷面を有する150mm×70mm(厚さ6mm)のフロート板ガラス(日本板硝子社製)の黒印刷面とは逆側の面とを、ハンドローラーを用いて貼合して、積層サンプルを得た。得られた積層体をオートクレーブで100℃、0.5MPa(ゲージ圧)の条件で30分間処理した後、23℃で相対湿度50%の環境下に2時間静置して、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルとは別に、評価用サンプル製作に使用したフロート板ガラスと同様のフロート板ガラスをブランク品として用意した。そして、前記評価用サンプルのPET面側と、前記ブランク品の黒印刷面と逆側のガラス面とを目視で見比べて、下記の基準に基づいて画像の意匠性及び視認性を評価した。
○:ブランク品と同様の黒さ、光沢感ある。
△:ブランク品に比べるとやや黒さや光沢感に欠ける。
×:ブランク品に比べて黒さや光沢感が劣る。
【0139】
【表1】
【0140】
表1は、前述の各実施例及び比較例の粘着シートの作製条件に加えて、各粘着シートの物性及び評価結果を示している。なお、表1中、「(A)-(C)屈折率差」は、架橋性(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル系樹脂粒子(C)との屈折率差(絶対値)を意味する
【0141】
表1から、実施例で得られた粘着シートは、優れたリワーク性を有しつつ、低いヘーズ、つまり、優れた透明性を有していることがわかった。しかも、実施例で得られた粘着シートは、貼りあわせ後、時間が経過しても剥がれがみられず、経時安定性にも優れていた。さらに、実施例で得られた粘着シートを用いて作製した積層体は、画像の意匠性及び視認性も優れることから、画像表示装置等の用途にも適していることがわかった。
【符号の説明】
【0142】
10 剥離シート付き粘着シート
11 粘着剤層
12a 剥離シート
12b 剥離シート
50 被着体
100 積層体
図1
図2