(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】吐出データ補正装置、画像形成装置および吐出データ補正方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 207
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2021032521
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 敏幸
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126111(JP,A)
【文献】特開2015-047725(JP,A)
【文献】特開2006-297919(JP,A)
【文献】特開2019-081343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第1吐出データに基づいて、インク吐出不良が生じている第1ノズルに対応し、インクが吐出される第1画素位置と、前記第1ノズルの周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない第2ノズルに対応し、インクが吐出されない第2画素位置とを特定する特定部と、
前記第1画素位置から前記第2画素位置にインクの吐出位置を変更する変更部と、
前記吐出位置の変更後、前記第2ノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第2吐出データに対して、空間フィルター処理を実行する空間フィルター処理実行部と、
前記空間フィルター処理の実行により得られた第3吐出データと前記第2吐出データとに基づいて、前記第2吐出データを補正する補正部と、
を備え
、
前記補正部は、前記第2ノズルに対応する各画素位置について、前記空間フィルター処理が実行される前の画素値と前記空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出し、インクが吐出され前記差分値が最も大きい画素位置から、インクが吐出されず前記差分値が最も大きい画素位置にインクの吐出位置を変更して前記第2吐出データを補正する、
吐出データ補正装置。
【請求項2】
前記空間フィルター処理は、前記第1吐出データに基づいて形成されるハーフトーンパターンの空間周波数成分を残すように実行される、
請求項
1に記載の吐出データ補正装置。
【請求項3】
前記空間フィルター処理は、ブルーノイズ特性の空間周波数成分を残すように実行される、
請求項
1に記載の吐出データ補正装置。
【請求項4】
前記空間フィルター処理は、低域の空間周波数成分を残すように実行される、
請求項
1に記載の吐出データ補正装置。
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1項に記載の吐出データ補正装置と、
補正された前記第2吐出データに基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
を備える画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成装置で使用されるインクは、エネルギー線を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性を有する、
請求項
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記エネルギー線は、紫外線である、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記エネルギー線は、電子線である、
請求項
6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成装置は、シングルパス方式で画像を形成する、
請求項6~
8の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記複数のノズルに対応する各画素位置は、当該複数のノズルの各々で1回に限りインクが吐出される画素位置である、
請求項
9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
インクを吐出する複数のノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第1吐出データに基づいて、インク吐出不良が生じている第1ノズルに対応し、インクが吐出される第1画素位置と、前記第1ノズルの周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない第2ノズルに対応し、インクが吐出されない第2画素位置とを特定し、
前記第1画素位置から前記第2画素位置にインクの吐出位置を変更し、
前記吐出位置の変更後、前記第2ノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第2吐出データに対して、空間フィルター処理を実行し、
前記空間フィルター処理の実行により得られた第3吐出データと前記第2吐出データとに基づいて、
前記第2ノズルに対応する各画素位置について、前記空間フィルター処理が実行される前の画素値と前記空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出し、インクが吐出され前記差分値が最も大きい画素位置から、インクが吐出されず前記差分値が最も大きい画素位置にインクの吐出位置を変更して前記第2吐出データを補正する、
吐出データ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出データ補正装置、画像形成装置および吐出データ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送装置により搬送される記録媒体に対し、複数個配列されたノズルのノズル開口部からインクを吐出することにより記録媒体上に画像を形成するインクジェット画像形成装置がある。このインクジェット画像形成装置では、ノズルの目詰まりなどにより、ノズル開口部からのインク吐出量が当初の値から減少して更には完全に吐出されなくなったり、または、吐出される方向が変化したりするといったインク吐出不良(ノズル欠とも言う)が生じ得る。
【0003】
インクジェット画像形成装置では、このようなインク吐出不良が形成画像の質の低下に繋がる。そこで、従来、インクジェット画像形成装置では、定期的にノズル開口部からのインクの吐出状態の検査が行われている。このインクの吐出状態の検査には、記録媒体上に形成されたテスト画像を撮像し、当該撮像データを解析する方法のものがある。この方法では、従来、各ノズル開口部から各々別個にインクを吐出させて当該インクの吐出有無や濃度を調べることで、各ノズル開口部からのインク吐出不良を判定している。
【0004】
また、インクジェット記録装置では、このような検査結果に基づき、インク吐出不良を生じている不良ノズルに隣接するノズル開口部からのインク吐出量を調整(補完)することにより、インク吐出不良による画像不良(白スジ)の発生を抑制する補完技術がある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インク吐出不良が生じた際に上記補完技術を適用しても、インク吐出量の調整(補完)の仕方によっては、インク吐出不良による画像不良の発生を十分に抑制できない場合があるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、インク吐出不良による画像不良の発生を十分に抑制することが可能な吐出データ補正装置、画像形成装置および吐出データ補正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る吐出データ補正装置は、
インクを吐出する複数のノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第1吐出データに基づいて、インク吐出不良が生じている第1ノズルに対応し、インクが吐出される第1画素位置と、前記第1ノズルの周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない第2ノズルに対応し、インクが吐出されない第2画素位置とを特定する特定部と、
前記第1画素位置から前記第2画素位置にインクの吐出位置を変更する変更部と、
前記吐出位置の変更後、前記第2ノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第2吐出データに対して、空間フィルター処理を実行する空間フィルター処理実行部と、
前記空間フィルター処理の実行により得られた第3吐出データと前記第2吐出データとに基づいて、前記第2吐出データを補正する補正部と、
を備え、
前記補正部は、前記第2ノズルに対応する各画素位置について、前記空間フィルター処理が実行される前の画素値と前記空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出し、インクが吐出され前記差分値が最も大きい画素位置から、インクが吐出されず前記差分値が最も大きい画素位置にインクの吐出位置を変更して前記第2吐出データを補正する。
【0009】
本発明に係る吐出データ補正方法は、
インクを吐出する複数のノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第1吐出データに基づいて、インク吐出不良が生じている第1ノズルに対応し、インクが吐出される第1画素位置と、前記第1ノズルの周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない第2ノズルに対応し、インクが吐出されない第2画素位置とを特定し、
前記第1画素位置から前記第2画素位置にインクの吐出位置を変更し、
前記吐出位置の変更後、前記第2ノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第2吐出データに対して、空間フィルター処理を実行し、
前記空間フィルター処理の実行により得られた第3吐出データと前記第2吐出データとに基づいて、前記第2ノズルに対応する各画素位置について、前記空間フィルター処理が実行される前の画素値と前記空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出し、インクが吐出され前記差分値が最も大きい画素位置から、インクが吐出されず前記差分値が最も大きい画素位置にインクの吐出位置を変更して前記第2吐出データを補正する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク吐出不良による画像不良の発生を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】インクジェット画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図3】画像読取部の構成を説明する模式断面図である。
【
図4】インクジェット画像形成装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図5】不良ノズルの検出に用いられるテストチャートの一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態における不良ノズル検出処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施の形態における吐出データ補正処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施の形態における吐出データ補正処理の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、インクジェット画像形成装置1の概略構成を示す図である。インクジェット画像形成装置1(本発明の「画像形成装置」として機能)は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40(
図4を参照)とを備える。
【0014】
インクジェット画像形成装置1は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Pを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Pを排紙部30に搬送する。記録媒体Pとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛またはシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0015】
給紙部10は、記録媒体Pを格納する給紙トレイ11と、給紙トレイ11から画像形成部20に記録媒体Pを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Pを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Pを給紙トレイ11から画像形成部20へ搬送する。
【0016】
画像形成部20は、搬送部21と、受け渡しユニット22と、加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、画像読取部26と、デリバリー部28などを有する。
【0017】
搬送部21は、円筒状の搬送ドラム211の搬送面211a(載置面)の上に載置された記録媒体Pを保持し、搬送ドラム211がX方向に延びた回転軸(円筒軸)を中心に回転して周回移動することで搬送ドラム211上の記録媒体Pを搬送方向(Y方向)に搬送する搬送動作を行う。搬送ドラム211は、その搬送面211a上で記録媒体Pを保持するための図示しない爪部および吸気部を備える。記録媒体Pは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気部により搬送面211aに吸い寄せられることで搬送面211aに保持される。搬送部21は、搬送ドラム211を回転させるための搬送ドラムモーター(図示せず)に接続されている。搬送ドラム211は、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0018】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Pを搬送部21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送部21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Pの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送部21に引き渡す。
【0019】
加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送部21により搬送される記録媒体Pが所定の温度範囲内の温度となるように記録媒体Pを加熱する。加熱部23は、例えば、赤外線ヒーター等を有し、制御部40(
図4を参照)から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電して当該赤外線ヒーターを発熱させる。
【0020】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pが保持された搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム211の搬送面211aに対向するインク吐出面に設けられたノズル開口部から記録媒体Pに対してインクを吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、インク吐出面と搬送面211aとが所定の距離だけ離隔されるように配置される。本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Pの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0021】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図である。ここでは、ヘッドユニット24のうち搬送ドラム211の搬送面211aと対向する面が示されている。
【0022】
ヘッドユニット24は、取付部材244に取り付けられた4つの記録ヘッド242を備える。記録ヘッド242の各々には、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、ノズル243とを各々有する複数の記録素子が設けられている。この記録素子は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。
【0023】
記録ヘッド242では、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向(本実施の形態では、搬送方向と直交する方向、すなわちX方向)に等間隔に配列されたノズル243からなる2つのノズル列が形成されている。これら2つのノズル列は、ノズル243の配置位置が、各ノズル列におけるノズル243の配置間隔の2分の1だけX方向について互いにずれるように設けられている。
【0024】
また、記録ヘッド242では、ノズル243の形成時の加工ばらつき、圧電素子の特性ばらつき、ノズル243の詰まり、またはノズル開口部への異物の付着による閉塞などに起因してインク吐出不良のノズル243(不良ノズル)が生じる場合がある。不良ノズルの検出方法については、後述する。
【0025】
4つの記録ヘッド242は、ノズル列のX方向についての配置範囲が切れ目なく繋がるように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズル243のX方向についての配置範囲は、搬送部21により搬送される記録媒体Pのうち画像が形成される領域のX方向の幅をカバーしており、ヘッドユニット24は、画像の形成時には搬送ドラム211の回転軸に対して位置が固定されて用いられる。すなわち、ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対するX方向についての画像形成可能幅に亘ってインクを吐出可能なラインヘッドを有しており、インクジェット画像形成装置1は、シングルパス形式のインクジェット画像形成装置である。
【0026】
なお、記録ヘッド242が有するノズル列の数は、2つではなく、1つまたは3つ以上であっても良い。また、ヘッドユニット24が有する記録ヘッド242の数は、4つでなく、3つ以下または5つ以上であっても良い。
【0027】
記録素子のノズルから吐出されるインクとしては、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性を有するものが用いられる。また、本実施の形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクが用いられる。ヘッドユニット24は、ヘッドユニット24内に貯留されるインクを加熱するインク加熱部(図示せず)を備える。インク加熱部は、制御部40による制御下で動作し、ゾル状となる温度にインクを加熱する。
【0028】
記録ヘッド242は、加熱されてゾル状となったインクを吐出する。このゾル状のインクが記録媒体Pに吐出されると、インク滴が記録媒体Pに着弾した後、自然冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体P上で凝固する。
【0029】
定着部25は、搬送部21のX方向の幅に亘って配置された発光部を有し、搬送部21に載置された記録媒体Pに対して当該発光部から紫外線等のエネルギー線を照射して記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25の発光部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部28の受け渡しドラム281の配置位置までの間において搬送面211aと対向して配置される。
【0030】
なお、記録素子のノズルから吐出されるインクとしては、温度によってゲル状またはゾル状に相変化し、電子線(エネルギー線)を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性を有するものが用いられても良い。この場合、定着部25は、搬送部21に載置された記録媒体Pに対して電子線を照射して記録媒体P上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。
【0031】
画像読取部26は、搬送方向について定着部25によるインクの定着位置から受け渡しドラム281の配置位置までの間の位置において、搬送面211a上の記録媒体Pの表面を読み取り可能に配置される。本実施の形態では、画像読取部26は、搬送部21により搬送される記録媒体Pの表面を所定の読取範囲で読み取って撮像データを制御部40に出力する。
【0032】
図3は、画像読取部26の構成を説明する模式断面図である。
図3では、X方向に垂直な断面における画像読取部26の構成が模式的に示されている。画像読取部26は、筐体261と、筐体261の内部に収容された一対の光源262、ミラー2631,2632、光学系264およびラインセンサー265とを備えている。
【0033】
筐体261は、一の面が搬送面211aに対向するように配置された直方体形状の部材である。筐体261のうち搬送面211aに対向する面は、ガラス等の光透過性を有する部材を用いて構成された光透過面261aである。以下では、光透過面261aに対向する位置での記録媒体Pの搬送方向をY方向とし、XY平面に垂直な方向をZ方向とする。
【0034】
一対の光源262の各々は、X方向についてヘッドユニット24による画像の形成可能範囲を包含する範囲に配列された複数のLED(Light Emitting Diode)を有する線光源である。一対の光源262は、搬送方向に垂直な所定の基準面Aに対して対照な位置に配置され、筐体261の光透過面261aを通して搬送面211a上の記録媒体Pに光を射出する。また、各光源262の角度は、光透過面261aと搬送面211a上の記録媒体Pとの距離が所定の標準距離dである場合に当該記録媒体Pのうち基準面Aと交差するライン上に同一の入射角で光が照射されるように調整されている。
【0035】
ミラー2631は、X方向について光源262の配置範囲に対応する長さを有し、光源262から射出され記録媒体Pにおいて反射した光のうち基準面Aを進行する光をミラー2632の方向に反射させる。ミラー2632は、ミラー2631よりも光透過面261aに近い位置に設けられ、ミラー2631において反射した光を光学系264の方向に反射させる。このようにミラー2631,2632が設けられることにより、筐体261内において適切な光路長が確保される。
【0036】
光学系264は、ミラー2632からの入射光をラインセンサー265の撮像素子の位置に集光する。光学系264は、光透過面261aと搬送面211a上の記録媒体Pとの距離が所定の標準距離dである場合に記録媒体Pの表面がラインセンサー265の撮像素子の位置に結像するように、すなわち記録媒体Pの表面に焦点が合うように、調整されている。光学系264としては、例えば、光軸に垂直な方向についての屈折率分布により入射光を所定の位置に集光する屈折率分布型レンズが多数配列されたものを用いることができる。
【0037】
ラインセンサー265は、入射光の強度に応じた信号を出力する複数の撮像素子がX方向に配列された構成を有する。具体的には、ラインセンサー265では、撮像素子がX方向に3列設けられ、各列の撮像素子により、入射光のうちR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の波長成分の強度に応じた信号がそれぞれ出力される。R,G,Bにそれぞれ対応する撮像素子は、例えば、光電変換素子としてフォトダイオードを備えるCCD(Charge Coupled Device)センサーまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサーの受光部に、R,GまたはBの波長成分の光を透過するカラーフィルターが配置されたものを用いることができる。なお、画像読取部26では、ラインセンサー265に代えてエリアセンサーが用いられても良い。
【0038】
ラインセンサー265から出力された信号は、アナログフロントエンド(図示せず)において電流電圧変換、増幅、雑音除去、アナログデジタル変換等がなされ、読取画像の輝度値を示す撮像データとして制御部40に出力される。本実施の形態では、撮像データの画素値は、撮像素子による光の検出強度を0から255までの256階調で示す。
【0039】
デリバリー部28は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ282と、記録媒体Pを搬送部21からベルトループ282に受け渡す円筒状の受け渡しドラム281とを有し、受け渡しドラム281により搬送部21からベルトループ282上に受け渡された記録媒体Pをベルトループ282により搬送して排紙部30に送出する。
【0040】
排紙部30は、デリバリー部28により画像形成部20から送り出された記録媒体Pが載置される板状の排紙トレイ31を有する。
【0041】
図4は、インクジェット画像形成装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。インクジェット画像形成装置1は、加熱部23と、記録ヘッド駆動部241および記録ヘッド242と、定着部25と、画像読取部26と、制御部40と、搬送駆動部51と、操作表示部52と、入出力インターフェース53と、バス54などを備える。
【0042】
記録ヘッド駆動部241は、記録ヘッド242の記録素子に対して適切なタイミングで画像データ(ひいては吐出データ)に応じて圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、記録ヘッド242のノズル243から画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。吐出データ(本発明の「第1吐出データ」に対応、以下「第1吐出データ」とも言う)は、画像データに対してハーフトーン処理を実行することにより得られるハーフトーンデータであり、各ノズル243に対応する各画素位置についてインクの吐出の有無(インクの吐出あり:1、インクの吐出なし:0)や吐出時の濃度階調を示す。各ノズル243に対応する各画素位置は、当該各ノズル243で1回に限りインクが吐出される画素位置である。
【0043】
制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)、RAM42(Random Access Memory)、ROM43(Read Only Memory)および記憶部44を有する。なお、制御部40は、本発明の「特定部」、「変更部」、「空間フィルター処理実行部」および「補正部」を備える「吐出データ補正装置」として機能する。
【0044】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU41は、インクジェット画像形成装置1の全体動作を統括制御する。
【0045】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0046】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0047】
記憶部44には、入出力インターフェース53を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像形成命令)および当該プリントジョブに係る画像データ、後述する不良ノズル検出処理に用いられるテストチャート(テスト画像)の画像データであるテスト画像データ、画像読取部26による撮像データ44a、吐出不良の不良ノズルを示す不良ノズルデータ44bなどが記憶される。このうちプリントジョブには、形成する画像に係る画像データを指定する情報の他、画像を形成する記録媒体Pの種別に係る情報(例えば、記録媒体Pの大きさおよび厚さ)が含まれる。記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0048】
搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム211を所定の速度およびタイミングで回転させる。
【0049】
ここで、搬送駆動部51は、制御信号に基づいて、搬送ドラム211を第1の速度、または第1の速度より大きい第2の速度で回転させる。第1の速度は、画像読取部26による読み取りを行う際の速度として予め設定された速度である。第2の速度は、ヘッドユニット24による画像の形成を行う際の速度として予め設定された速度である。
【0050】
また、搬送駆動部51は、制御部40から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22およびデリバリー部28を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Pの搬送部21への供給および搬送部21からの排出を行わせる。
【0051】
操作表示部52は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった表示装置と、操作キーや、表示装置の画面に重ねられて配置されたタッチパネルといった入力装置とを備える。操作表示部52は、表示装置において各種情報を表示させ、また入力装置に対するユーザーの入力操作を操作信号に変換して制御部40に出力する。
【0052】
入出力インターフェース53は、外部装置2と制御部40との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース53は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースの何れかまたはこれらの組み合わせで構成される。
【0053】
バス54は、制御部40と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0054】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース53を介してプリントジョブおよび画像データ等を制御部40に供給する。
【0055】
次に、インクジェット画像形成装置1における不良ノズルの検出方法について説明する。
【0056】
本実施の形態におけるインクジェット画像形成装置1では、所定のタイミングで、またはユーザーによる操作表示部52に対する所定の入力操作に基づいて不良ノズルの検出が行われる。不良ノズルの検出は、記録媒体Pに所定のテストチャートを記録し、このテストチャートを画像読取部26で撮像して得られた撮像データを解析することにより行われる。
【0057】
図5は、不良ノズルの検出に用いられるテストチャートの一例を示す図である。
図5に示されるテストチャート60は、ヘッドユニット24により記録媒体Pに形成された画像であり、搬送方向に延びる複数のライン61からなるラインパターンを含む。
【0058】
図5には、テストチャート60のうち一の記録ヘッド242により記録された部分が示されている。ヘッドユニット24の他の記録ヘッド242によっても同様のラインパターンが記録される。
【0059】
テストチャート60の各ライン61は、ヘッドユニット24の単一のノズル243から吐出されたインクにより形成されている。また、このテストチャート60では、X方向の位置が隣り合うノズル243により記録されたライン61がY方向にずらされて記録されているとともに、7つおきのノズル243により記録されたライン61のY方向の位置が互いに一致するようになっている。
【0060】
このテストチャート60における複数のライン61の各々は、複数のノズル243の何れか一つと対応するため、テストチャート60の画像読取部26による撮像データにおいて特定のライン61に異常が認められる場合に、当該特定のライン61と対応するノズル243を不良ノズルとして特定することができる。例えば、テストチャート60の撮像データにおいて
図5に示されるライン61aが欠損している場合には、当該ライン61aと対応するノズル243がインクを吐出しない不良ノズルとして同定される。
【0061】
また、テストチャート60の撮像データにおいて特定のライン61の濃度が所定の基準範囲の範囲外となっている場合には、当該特定のライン61と対応するノズル243がインクの吐出量に異常がある不良ノズルとして同定される。
【0062】
また、テストチャート60の撮像データにおいて特定のライン61がノズル243の位置と対応した所定の範囲内に形成されていない場合には、当該特定のライン61と対応するノズル243がインクの吐出方向に異常がある不良ノズルとして同定される。不良ノズルが同定されると、不良ノズルのヘッドユニット24における配列番号を示す不良ノズルデータ44bが記憶部44に記憶される。
【0063】
不良ノズルが同定された後に、プリントジョブが記憶部44に記憶され、プリントジョブに係る画像を記録媒体Pに形成する画像形成動作が行われる場合には、不良ノズルデータ44bが参照され、不良ノズルのインク吐出不良が補完されるように吐出データが補正される。そして、当該補正された吐出データに基づいて画像の形成が行われる。これにより、不良ノズルがある場合においても適正な画質で画像を形成することができる。
【0064】
次に、不良ノズルを検出する不良ノズル検出処理、および不良ノズルの検出結果を用いた吐出データ補正処理について説明する。
【0065】
図6は、不良ノズル検出処理の例を示すフローチャートである。この不良ノズル検出処理は、ユーザーにより操作表示部52に対して不良ノズル検出の実行を指示する所定の入力操作が行われた場合に実行される。また、不良ノズル検出処理は、例えばインクジェット画像形成装置1の製造時や出荷時、あるいはインクジェット画像形成装置1により所定枚数の記録媒体Pへの画像形成が行なわれたときといった所定のタイミングで実行されても良い。
【0066】
まず、制御部40は、ヘッドユニット24を制御し、記録媒体Pに対してテストチャート60を形成させる(ステップS101)。すなわち、制御部40は、搬送駆動部51から搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を出力させて、上述した第2の速度で搬送ドラム211を回転させる。そして、制御部40は、記憶部44に記憶されたテストチャート60に係るテスト画像データ(吐出データ)を記録ヘッド駆動部241から記録ヘッド242に供給させることにより、ヘッドユニット24により記録媒体Pに対してインクを吐出させて記録媒体P上にテストチャート60を形成させる。
【0067】
また、制御部40は、インクが付与された記録媒体Pが定着部25の位置に移動したタイミングで、定着部25により当該インクに所定のエネルギー線を照射させることでインクを記録媒体Pに定着させる。
【0068】
次に、制御部40は、テストチャート60が形成された記録媒体Pを画像読取部26により読み取らせる(ステップS102)。すなわち、制御部40は、搬送駆動部51から搬送ドラム211の搬送ドラムモーターに駆動信号を出力させて、第1の速度で搬送ドラム211を回転させる。また、制御部40は、搬送ドラム211の回転に応じた適切なタイミングで、画像読取部26により繰り返し記録媒体P上のテストチャート60を読み取らせ、撮像データ44aを取得して記憶部44に記憶させる。
【0069】
最後に、制御部40は、テストチャート60の撮像データに基づいて、不良ノズルを検出する(ステップS103)。すなわち、制御部40は、テストチャート60の撮像データから異常が認められるライン61を特定し、当該ライン61に対応するノズル243を不良ノズルとして同定する。制御部40は、同定された不良ノズルのヘッドユニット24における配列番号を示す不良ノズルデータ44bを生成し記憶部44に記憶させる。ステップS103の処理が終了すると、制御部40は、不良ノズル検出処理を終了させる。
【0070】
図7は、不良ノズルの検出結果を用いた吐出データ補正処理(本発明の「吐出データ補正方法」に対応)の例を示すフローチャートである。この吐出データ補正処理は、外部装置2から制御部40に入力された画像データに対してハーフトーン処理が実行された後、各ノズル243に対応する各画素位置について実行される。
【0071】
まず、制御部40は、第1吐出データおよび不良ノズルデータ44bを参照し、インク吐出不良が生じている不良ノズル(本発明の「第1ノズル」に対応、以下「不良ノズル」とも言う)に対応し、当該インクが吐出される画素位置であるか否かについて判定する(ステップS201)。
【0072】
判定の結果、インク吐出不良が生じている不良ノズルに対応しない場合、または、インク吐出不良が生じている不良ノズルに対応に対応しているもののインクが吐出される画素位置でない場合(ステップS201、NO)、制御部40は、吐出データ補正処理を終了する。
【0073】
一方、インク吐出不良が生じている不良ノズルに対応し、インクが吐出される画素位置(本発明の「第1画素位置」に対応、以下「第1画素位置」とも言う)である場合(ステップS201、YES)、制御部40は、不良ノズルの周辺に位置し、インク吐出不良が生じていないノズル(本発明の「第2ノズル」に対応、以下「周辺ノズル」とも言う)に対応し、インクが吐出されない画素位置(本発明の「第2画素位置」に対応、以下「第2画素位置」とも言う)を特定する。そして、制御部40は、第1画素位置から第2画素位置にインクの吐出位置を変更する、すなわち第1吐出データを補正する(ステップS202)。
【0074】
次に、制御部40は、第1吐出データのうち、周辺ノズルに対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す吐出データ(本発明の「第2吐出データ」に対応、以下「第2吐出データ」とも言う)に対して、空間フィルター処理を実行する(ステップS203)。本実施の形態では、空間フィルター処理は、第1吐出データに基づいて形成されるハーフトーンパターン(網点パターン)の空間周波数成分を残すように設計されたフィルターを用いて実行される。空間フィルター処理においては、注目画素位置およびフィルターのフィルターサイズに対応する周辺画素位置の画素値とフィルター係数との積和が、注目画素についての空間フィルター処理結果(画素値)として算出される。
【0075】
次に、制御部40は、空間フィルター処理の実行により得られた吐出データ(本発明の「第3吐出データ」に対応、以下「第3吐出データ」とも言う)と第2吐出データとに基づいて、第2吐出データを補正する。
【0076】
具体的には、制御部40は、周辺ノズルに対応する各画素位置について、空間フィルター処理が実行される前の画素値と、空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出する。そして、制御部40は、周辺ノズルに対応する全ての画素位置のうち、インクが吐出され差分値が最も大きい画素位置Aを特定する(ステップS204)。また、制御部40は、周辺ノズルに対応する全ての画素位置のうち、インクが吐出されず差分値が最も大きい画素位置Bを特定する(ステップS205)。
【0077】
そして、制御部40は、インクが吐出され差分値が最も大きい画素位置Aから、インクが吐出されず差分値が最も大きい画素位置Bにインクの吐出位置を変更する、すなわち第2吐出データを補正する(ステップS206)。ステップS206の処理が完了することによって、制御部40は、
図7に示す吐出データ補正処理を終了する。
【0078】
図8は、
図7に示すフローチャートの処理、特にステップS202,S203の処理の例を説明する図である。
【0079】
図8Aは、ステップS202の処理が行われる前の吐出データ(第1吐出データ)に対応する画像の一部の画像80を示す。
図8Aに示すように、画像80は、記録ヘッド242に設けられた複数のノズル243からインクが吐出されることにより記録媒体Pに形成される複数のドット(画素)で構成される。
図8Aに示す例では、記録ヘッド242に設けられた複数のノズル243のうちノズル243Aだけが、インク吐出不良を生じている不良ノズルである。第1吐出データにおいては、ノズル243Aに対応する画素領域82(ドットライン)に含まれる各画素位置についてインクの吐出の有無が設定されている。具体的には、画素領域82に含まれる画素位置82A,82B,82Cについてはインクが吐出される画素位置として設定される一方、画素位置82A,82B,82C以外の画素位置についてはインクが吐出されない画素位置として第1吐出データに設定されている。
【0080】
制御部40は、
図8Bに示すように、ノズル243A(不良ノズル)の周辺に位置し、具体的にはノズルの配置方向(図中の上下方向)において隣接配置されており、インク吐出不良が生じていないノズル243B(周辺ノズル)に対応する画素領域84に含まれる画素位置のうち、インクが吐出されない画素位置84Aを特定する。そして、制御部40は、画素領域82に含まれる画素位置82Bから画素領域84に含まれる画素位置84Aにインクの吐出位置、すなわちドットの形成位置を変更する。
【0081】
次に、制御部40は、
図8Cに示すように、ノズル243A(不良ノズル)の周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない複数のノズル243B~243G(周辺ノズル)に対応する画素領域86(ただし、ノズル243A(不良ノズル)に対応する画素領域82を除く、以下同じ)の各画素位置についてインクの吐出の有無を示す吐出データ(第2吐出データ)に対して、空間フィルター処理を実行する。本実施の形態では、ノズル243A(不良ノズル)の周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない複数のノズルとして、ノズルの配置方向(図中の上下方向)において、ノズル243A(不良ノズル)の上方向に3つのノズル243B~243D、下方向に3つのノズル243E~243Gが選択される。
【0082】
制御部40は、複数のノズル243B~243G(周辺ノズル)に対応する画素領域86の各画素位置について、空間フィルター処理が実行される前の画素値と空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出する。そして、制御部40は、周辺ノズル243B~243Gに対応する全ての画素位置のうち、インクが吐出され差分値が最も大きい画素位置Aと、インクが吐出されず差分値が最も大きい画素位置Bとを特定し、画素位置Aから画素位置Bにインクの吐出位置を変更する、すなわち第2吐出データを補正する。
図8を参照して説明した処理を、ノズル243A(不良ノズル)に対応する画素領域82に含まれる画素位置82A,82Cについても同様に行う。
【0083】
以上の処理により、ノズル243A(不良ノズル)に対応する画素領域82に含まれる画素位置82A,82B,82Cからノズル243B(周辺ノズル)に対応する画素領域84にインクの吐出位置が変更された後、複数のノズル243B~243G(周辺ノズル)に対応する画素領域86において、インクが吐出される画素位置(ドットの形成位置)が偏りなく均一な間隔で分散され、平易に言うと画像がぼかされ(濃度が均一化され)、ひいてはインクの吐出位置が変更された画素位置に対するユーザーの視認性が低下することとなる。そのため、インク吐出不良が生じた際に補完技術を適用しても、インク吐出量の調整(補完)の仕方によっては、インク吐出不良による画像不良(白スジ)の発生を十分に抑制できない場合があるという従来技術の問題を好適に解決することができる。
【0084】
以上詳しく説明したように、本実施の形態における吐出データ補正装置(制御部40)は、インクを吐出する複数のノズル243に対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第1吐出データに基づいて、インク吐出不良が生じている第1ノズル243A(不良ノズル)に対応し、インクが吐出される第1画素位置82Bと、第1ノズル243Aの周辺に位置し、インク吐出不良が生じていない第2ノズル243B(周辺ノズル)に対応し、インクが吐出されない第2画素位置84Aとを特定する特定部と、第1画素位置82Bから第2画素位置84Aにインクの吐出位置を変更する変更部と、吐出位置の変更後、第2ノズル243B~243G(周辺ノズル)に対応する各画素位置についてインクの吐出の有無を示す第2吐出データに対して、空間フィルター処理を実行する空間フィルター処理実行部と、空間フィルター処理の実行により得られた第3吐出データと第2吐出データとに基づいて、第2吐出データを補正する補正部と、を備える。
【0085】
具体的には、補正部は、第2および第3吐出データに基づいて、第2ノズル243B~243G(周辺ノズル)に対応する各画素位置について、空間フィルター処理が実行される前の画素値と空間フィルター処理が実行された後の画素値との差分値を算出する。そして、補正部は、インクが吐出され差分値が最も大きい画素位置Aから、インクが吐出されず差分値が最も大きい画素位置Bにインクの吐出位置を変更することによって第2吐出データを補正する。
【0086】
このように構成した本実施の形態によれば、複数のノズル243B~243G(周辺ノズル)に対応する画素領域86において、インクが吐出される画素位置(ドットの形成位置)が偏りなく均一な間隔で分散され、平易に言うと画像がぼかされ、ひいてはインクの吐出位置が変更された画素位置に対するユーザーの視認性が低下することとなる。そのため、インク吐出不良が生じた際に補完技術を適用しても、インク吐出量の調整(補完)の仕方によっては、インク吐出不良による画像不良(白スジ)の発生を十分に抑制できない場合があるという従来技術の問題を好適に解決することができる。
【0087】
また、本実施の形態では、空間フィルター処理は、第1吐出データに基づいて形成されるハーフトーンパターン(網点パターン)の空間周波数成分を残すように設計されたフィルターを用いて実行される。これにより、第2吐出データ(局所部分)に基づいて形成されるハーフトーンパターンと、第1吐出データ(全体部分)に基づいて形成されるハーフトーンパターンとの間で空間周波数を合わせることができ、補正された第2吐出データひいては第1吐出データに基づいて形成された画像の違和感をユーザーに確実に与えないようにすることができる。
【0088】
また、本実施の形態では、インクジェット画像形成装置1で使用されるインクは、エネルギー線(紫外線または電子線)を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性を有する。すなわち、定着部25により記録媒体Pに定着させられるインクは、定着後も堆積変化(具体的に、高さ変化)がほぼ発生しないインクである。そのため、インク吐出不良が生じた場合において、画像不良、特に立体的な光沢スジ(凹凸スジ)の発生を有効に抑制することができる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、空間フィルター処理は、第1吐出データに基づいて形成されるハーフトーンパターンの空間周波数成分を残すように設計されたフィルターを用いて実行される例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、空間フィルター処理は、ブルーノイズ特性の空間周波数成分を残すように設計されたフィルターを用いて実行されても良い。また、空間フィルター処理は、低域の空間周波数成分を残すように設計されたフィルターを用いて実行されても良い。これらにより、第2吐出データに基づいて形成される画像の空間周波数をブルーノイズ特性または低域の空間周波数に合わせる、すなわちインクが吐出される画素位置(ドットの形成位置)を偏りなく均一な間隔で分散させることができ、ひいてはインクの吐出位置が変更された画素位置に対するユーザーの視認性を低下させることができる。その結果、補正された第2吐出データひいては第1吐出データに基づいて形成された画像の違和感をユーザーに確実に与えないようにすることができる。
【0090】
なお、ヘッドユニット24がドット径(大ドットや小ドット)の異なるインクを吐出して画像を形成可能であり、インクの吐出位置の変更先が小ドットの場合、制御部40は、当該変更先のドット径を大ドットに変更して階調値を増大させても良い。
【0091】
また、上記実施の形態では、複数のライン61を含むテストチャート60を用いて不良ノズルを検出する例を用いて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、テスト画像として、各ノズル243により形成された階調パターンからなるグレーチャートを形成し、当該グレーチャートの読取結果における濃度むらから不良ノズルを検出しても良い。このようなグレーチャートによれば、ノズル243のインク吐出方向の異常を検出できるとともに、ノズル243のインク吐出量の異常を容易かつ適切に検出することができる。
【0092】
また、上記実施の形態では、搬送ドラム211の回転動作により移動している記録媒体Pを画像読取部26により読み取り、また当該移動する記録媒体Pに対してヘッドユニット24からインクを吐出する例を用いて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、画像読取部26による記録媒体Pの読み取りや、ヘッドユニット24による記録媒体Pに対するインクの吐出は、搬送ドラム211の回転動作が一時停止した状態において行われても良い。
【0093】
また、上記実施の形態では、搬送ドラム211により記録媒体Pを搬送する例を用いて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、2本のローラーに支持されローラーの回転に応じて移動する搬送ベルトにより記録媒体Pを搬送しても良い。また、同一平面上を往復移動する搬送部材により記録媒体Pを搬送しても良い。
【0094】
また、上記実施の形態では、常温でゲル状であり加熱されることによりゾル状となるインクをゾル状に加熱して吐出するインクジェット画像形成装置1を例に説明したが、本発明はこれに限らず、常温でゾル状または液体であるインクを含む種々の公知のインクを用いてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 インクジェット画像形成装置
2 外部装置
10 給紙部
11 給紙トレイ
12 媒体供給部
20 画像形成部
21 搬送部
211 搬送ドラム
211a 搬送面
22 受け渡しユニット
23 加熱部
24 ヘッドユニット
241 記録ヘッド駆動部
242 記録ヘッド
243,243A,243B,243C,243D,243E,243F,243G ノズル
244 取付部材
25 定着部
26 画像読取部
261 筐体
261a 光透過面
262 光源
2631,2632 ミラー
264 光学系
265 ラインセンサー
28 デリバリー部
30 排紙部
31 排紙トレイ
40 制御部
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
44a 撮像データ
44b 不良ノズルデータ
51 搬送駆動部
52 操作表示部
53 入出力インターフェース
54 バス
60 テストチャート
61,61a ライン
80 画像
82,84,86 画素領域
82A,82B,82C,84A 画素位置
P 記録媒体