(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】音声レコーダ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/06 20060101AFI20240814BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H04R1/06 320
H04R3/00 320
(21)【出願番号】P 2021038209
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003676
【氏名又は名称】ティアック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】豊野 泰士
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-507978(JP,A)
【文献】特開2018-148518(JP,A)
【文献】特開2017-085253(JP,A)
【文献】特開2017-069919(JP,A)
【文献】実開昭56-147678(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に着脱自在に設けられたマイクロフォンと、
前記マイクロフォンを着脱自在に保持するホルダであって、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差する内向き姿勢のX-Y方式と、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差しない外向き姿勢のA-B方式との間で切り替え可能に保持するホルダと、
を備え、
前記ホルダは、
前記マイクロフォンに代えて、別のマイクロフォンが装着された場合に、前記別のマイクロフォンが自社製のマイクロフォンである場合にのみ接点がオンするスイッチ構造
を備え、前記本体部は、
前記スイッチ構造の接点がオンとなった場合に、前記別のマイクロフォンのプラグの特定端子の電圧値に基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する識別回路を備える音声レコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の音声レコーダにおいて、
前記ホルダは、
前記別のマイクロフォンのうちの一方のマイクロフォンが第1の向きで装着された場合のみ前記一方のマイクロフォンのボスと係合可能な穴を備え、前記別のマイクロフォンのうちの他方のマイクロフォンが前記第1の向きと異なる第2の向きで装着された場合のみ前記他方のマイクロフォンのボスと係合可能な穴を備える、
音声レコーダ。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の音声レコーダにおいて、
前記別のマイクロフォンは、一定の方向に向いたマイクプレートを備える、
音声レコーダ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の音声レコーダにおいて、
前記別のマイクロフォンのプラグのいずれか一方のS極は0Vに設定され、
前記識別回路は、前記スイッチ構造の接点がオンとなった場合に、前記S極が0Vであることに基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する、
音声レコーダ。
【請求項5】
請求項4に記載の音声レコーダにおいて、
前記識別回路は、X-Y方式を自動識別した場合に、ステレオのRチャンネル音声信号とLチャンネル音声信号とを自動反転する、
音声レコーダ。
【請求項6】
着脱自在なマイクロフォンと、
プロセッサと、
を備え、前記プロセッサは、プログラムを読み出して実行することで、
前記マイクロフォンが装着されたことを検知し、
装着された前記マイクロフォンが自社製か他社製かを識別し、
装着された前記マイクロフォンが自社製である場合に、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差する内向き姿勢のX-Y方式と、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差しない外向き姿勢のA-B方式を自動識別する、
音声レコーダ。
【請求項7】
請求項6に記載の音声レコーダにおいて、
前記プロセッサは、前記マイクロフォンのプラグの特定端子の電圧値に基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する、
音声レコーダ。
【請求項8】
請求項7に記載の音声レコーダにおいて、
前記マイクロフォンのプラグのいずれか一方のS極は0Vに設定され、
前記プロセッサは、前記S極が0Vであることに基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する、
音声レコーダ。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の音声レコーダにおいて、
前記プロセッサは、X-Y方式を自動識別した場合に、ステレオのRチャンネル音声信号とLチャンネル音声信号とを自動反転する、
音声レコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音声レコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアPCMレコーダ等の音声レコーダでは、内蔵マイクロフォンにより音声信号を入力して録音するが、当該内蔵マイクロフォンは通常、内蔵されているため装置本体に固定されており、着脱することはできない構成である。
【0003】
他方で、内蔵マイクロフォンを着脱自在とし、内蔵マイクロフォンに代えて他の種類のマイク、例えばショットガンマイクロフォンやピンマイクロフォン(ラべリアマイク)等を装置本体に装着して多様な録音を行うニーズも増大している。
【0004】
特許文献1には、接続された外部収音装置の種別を判別可能な音声記録装置が記載されている。外部収音装置を接続可能であり複数端子を備えた接続部と、接続部に外部収音装置が接続されたときに、複数端子のうちの特定の端子の信号間の相関に基づいて接続された外部収音装置の種別を判断する判別部を備える。また、複数端子は第1端子、第2端子、第3端子を含み、判別部は、第1端子の電圧および第2端子の電圧の相関が第1しきい値より高く、かつ、第1端子の電圧および第3端子の電圧の相関が第2しきい値より高いときに、接続された外部収音装置が特定の外部収音装置であると判断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内蔵マイクロフォンを着脱自在とし、内蔵マイクロフォンに代えて他の種類のマイクロフォンを装置本体に装着する場合、他の種類のマイクロフォン用に装置本体に装着用ジャックを別途用意するのではその分だけ装置本体が増大してしまう。これを回避するためには、内蔵マイクロフォンを着脱自在とするとともに、同じジャックに他の種類(自社製マイクロフォンあるいは他社製マイクロフォン)を装着できる構成とするのが望ましい。
【0007】
但し、自社製マイクロフォンと他社製マイクロフォンとではマイクロフォンに供給すべき電圧が異なる場合が少なくないため、自社製マイクロフォンと他社製マイクロフォンのいずれが装着されたかを判別する必要がある。
【0008】
また、自社製マイクロフォンが装着された場合において、内向き姿勢のX-Y方式と外向き姿勢のA-B方式とではマイクロフォンの向きが異なっているので、X-Y方式の場合にはステレオのLチャンネルとRチャンネルが反転してしまう問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、内蔵マイクロフォンを着脱自在として別のマイクロフォンを同一ジャックに装着した場合に、当該別のマイクロフォンが自社製マイクロフォンであるか否かを判別すること、及び、X-Y方式とA-B方式のいずれの装着方式であるかを自動識別すること、さらにはX-Y方式とA-B方式のいずれの装着方式の場合にもステレオのLチャンネルとRチャンネルを正しく設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、本体部と、 前記本体部に着脱自在に設けられたマイクロフォンと、前記マイクロフォンを着脱自在に保持するホルダであって、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差する内向き姿勢のX-Y方式と、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差しない外向き姿勢のA-B方式との間で切り替え可能に保持するホルダと、を備え、前記ホルダは、前記マイクロフォンに代えて、別のマイクロフォンが装着された場合に、前記別のマイクロフォンが自社製のマイクロフォンである場合にのみ接点がオンするスイッチ構造を備え、前記本体部は、前記スイッチ構造の接点がオンとなった場合に、前記別のマイクロフォンのプラグの特定端子の電圧値に基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する識別回路を備える音声レコーダである。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、前記ホルダは、前記別のマイクロフォンのうちの一方のマイクロフォンが第1の向きで装着された場合のみ前記一方のマイクロフォンのボスと係合可能な穴を備え、前記別のマイクロフォンのうちの他方のマイクロフォンが前記第1の向きと異なる第2の向きで装着された場合のみ前記他方のマイクロフォンのボスと係合可能な穴を備える。
【0012】
本発明の他の実施形態では、前記別のマイクロフォンは、一定の方向に向いたマイクプレートを備える。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、前記別のマイクロフォンのプラグのいずれか一方のS極は0Vに設定され、前記識別回路は、前記スイッチ構造の接点がオンとなった場合に、前記S極が0Vであることに基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態では、前記識別回路は、X-Y方式を自動識別した場合に、ステレオのRチャンネル音声信号とLチャンネル音声信号とを自動反転する。
【0015】
また、本発明は、着脱自在なマイクロフォンと、プロセッサとを備え、前記プロセッサは、プログラムを読み出して実行することで、前記マイクロフォンが装着されたことを検知し、装着された前記マイクロフォンが自社製か他社製かを識別し、装着された前記マイクロフォンが自社製である場合に、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差する内向き姿勢のX-Y方式と、前記マイクロフォンの集音軸が互いに交差しない外向き姿勢のA-B方式を自動識別する、音声レコーダである。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、前記プロセッサは、前記マイクロフォンのプラグの特定端子の電圧値に基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する。
【0017】
本発明の他の実施形態では、前記マイクロフォンのプラグのいずれか一方のS極は0Vに設定され、前記プロセッサは、前記S極が0Vであることに基づいてX-Y方式かA-B方式かを自動識別する。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態では、前記プロセッサは、X-Y方式を自動識別した場合に、ステレオのRチャンネル音声信号とLチャンネル音声信号とを自動反転する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内蔵マイクロフォンを着脱自在として別のマイクロフォンを同一ジャックに装着した場合に、当該別のマイクロフォンが自社製マイクロフォンであるか否かを判別できる。
【0020】
また、X-Y方式とA-B方式のいずれの装着方式であるかを自動識別することができる。
【0021】
さらに、X-Y方式とA-B方式のいずれの装着方式の場合にもステレオのLチャンネルとRチャンネルを正しく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】音声レコーダの内蔵マイクロフォンを取り外した状態の外観斜視図である。
【
図3】音声レコーダのホルダの断面図(マイクロフォンの装着前)である。
【
図4】音声レコーダのホルダの断面図(マイクロフォンの装着後)である。
【
図5】音声レコーダに装着される自社製マイクロフォンの外観斜視図である。
【
図7】音声レコーダの自社製マイクロフォン装着時(X-Y方式)の外観斜視図である。
【
図8】音声レコーダの自社製マイクロフォン装着時(A-B方式)の外観斜視図である。
【
図9】自社製マイクロフォンのプラグ端子と本体側回路基板の模式図である。
【
図10】音声レコーダのプロセッサの処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1Aおよび
図1Bに、音声レコーダ10の外観斜視図を示す。
図1Aは、内蔵マイクロフォンを装置本体から取り外した状態の外観斜視図であり、
図1Bは装置本体の前面部の一部拡大図である。
【0025】
音声レコーダ10は、携帯型の小型のレコーダであり、本体部と、左右一対のマイクロフォンを備える。音声レコーダ10は、一対のマイクロフォンから入力された音声を録音する録音機能と、録音した音声を再生する再生機能を備える。本体部は、6つの面を備えた略直方体形状をなし、左右一対のマイクロフォンは、本体部の長手方向において対向する一方の面に設けられる。
【0026】
音声レコーダ10がかかる形状の場合、一般的に、正姿勢は、本体部の長手方向を横向きにして、左右一対のマイクロフォンを音源に向けた姿勢となる。本体部を正姿勢にした状態において、高さ方向において対向する上面と下面は、上面が本体部の天面と、下面が底面と規定される。また、左右一対のマイクロフォンが装着される側面は前面と規定される。
図1Aでは、前面に装着された左右一対の内蔵マイクロフォンが取り外された状態が示されており、内蔵マイクロフォンを支持するホルダ12R、12Lが示されている。
【0027】
本体部の天面には、操作部および表示部が設けられる。操作部には、例えば、録音ボタン、再生ボタン、停止ボタン、選曲ボタン、カーソル移動ボタンなどが含まれる。カーソル移動ボタンは、表示部に表示される操作画面のカーソルを移動して、各種のメニュー項目の選択や、音声データが格納されるフォルダの選択などに使用される。
【0028】
表示部は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)であり、録音や再生を行っている音声のファイル名やフォルダ名、再生時の音量レベルを表示する他、各種設定を行うための操作画面などを表示する。左右の側面には、音量を調整するためのダイヤル、イヤホンを取り付けるためのジャック、データを記憶するメモリカードを装填するカードスロット等が設けられる。
【0029】
図1Bに示すように、本体部の前面には、一対のマイクロフォンを着脱自在に保持する一対のホルダ12R,12Lが設けられる。ホルダ12R,12Lに装着されるマイクロフォンは、自社製であると他社製であるとを問わず、また、ショットガンマイクロフォンであるとラべリアマイクロフォンであるとを問わない。従って、音声レコーダのユーザは、購入時に装着されている内蔵マイクロフォンを取り外し、代わりに他社製のラベリアマイクロフォンをホルダ12R,12Lに装着することもできる。
【0030】
一対のホルダ12R,12Lは、それぞれ外観形状が円形状をなし、一対のホルダ12R,12Lのそれぞれの中心位置には、一対のマイクロフォンのそれぞれのプラグが挿入されるジャック13R,13Lが形成される。各ホルダ12R,12Lは、装着される一対のマイクロフォンを、それぞれの集音軸が前面の垂直方向から傾斜した状態で支持する。また、各ホルダ12R,12Lは、前面の高さ方向において互いに離間する方向にオフセットして配置される。このようなオフセット配置により、一対のマイクロフォンを内向き姿勢のX-Y方式で装着した場合でも、一対のマイクロフォンの互いのケースを干渉させることなくケース同士を交差させることができる。
【0031】
また、各ホルダ12R,12Lのそれぞれの所定位置、具体的には自社製マイクロフォンのプラグがジャックに挿入されて自社製マイクロフォンが装着される際に自社製マイクロフォンの少なくとも一部位が当接する位置に、後述するように圧縮ばねでホルダ12R,12Lの開口方向に付勢されホルダ12R、12Lの面から突出する検出スイッチ14が設けられる。図では、ホルダ12Rのホルダ12Lと対向する側の位置、及びホルダ12Lのホルダ12Rと対向する側の位置にそれぞれ検出スイッチ14が設けられているが、その位置、形状、及び数は任意に設定し得る。要するに、自社製マイクロフォンが装着された場合のみ当該自社製マイクロフォンの一部位と係合する位置に設ければよい。あるいは、これとは逆に、他社製マイクロフォンが装着された場合のみ当該他社製マイクロフォンの一部位と係合する位置に設けてもよい。
【0032】
図2に、ホルダ12Rを裏面側から見た斜視図を示す。ホルダ12Lについても同様な構成であるためその説明は省略する。
【0033】
ホルダ12Rの所定位置には、検出スイッチ14が設けられており、検出スイッチ14の近傍、具体的には検出スイッチ14の本体部側直下には、自社製マイクロフォンを感知する感知スイッチ16が配置される。感知スイッチ16は、本体部及び凸部を備えており、凸部は本体部から検出スイッチ14の方向に延在して検出スイッチ14に当接する。
【0034】
自社製マイクロフォンが装着される際、当該自社製マイクロフォンの一部位、例えばプラグが設けられる底面部が検出スイッチ14に当接して検出スイッチ14を本体部側に押し込む。検出スイッチ14の押し込み動作により感知スイッチ16の凸部が押し込まれて感知スイッチ16をオフからオン動作させる。
【0035】
図3及び
図4に、ホルダ12Rの断面図を示す。ホルダ12Rの検出スイッチ14を通る断面図である。
図3に示すように、検出スイッチ14は、ホルダ12Rの中心側から外周部にかけて横設され、外周側の一端が揺動自在に軸支され、中心側の他端にはホルダ12Rの開口側に向けて凸部が形成される。揺動自在に軸支される一端側は、圧縮ばね18によりホルダ12Rの開口側と反対側に向けて付勢されており、その反力により中心側の他端に設けられた凸部を開口側に向けて付勢することで検出スイッチ14の姿勢を維持する。検出スイッチ14の凸部が開口側に向けて付勢された状態(マイクロフォンの装着前の状態)では感知スイッチ16はオフ状態にある。
【0036】
そして、
図4に示すように、
図3の状態から自社製マイクロフォンのプラグがジャック13R(
図3及び
図4ではジャック13Rは紙面の垂直方向手前に位置)に挿入されて自社製マイクロフォンが装着されると、自社製マイクロフォンの一部20が検出スイッチ14の凸部に当接し、凸部を押し込んで検出スイッチ14をその一端を軸として本体側に向けて回動させる。この検出スイッチ14の回動により検出スイッチ14が感知スイッチ16を本体側に押し込み、感知スイッチ16をオフからオン動作させる。本体部に設けられた図示しないプロセッサは、予め組み込まれたプログラムを読み出して実行することで識別回路として機能し、プラグがジャック13Rに挿入され、かつ感知スイッチ16がオフからオンに変化したことを検知すると、ホルダ12Rに自社製マイクロフォンが装着されたことを検知する。
【0037】
他方、他社製マイクロフォンのプラグがジャック13Rに挿入されて他社製マイクロフォンが装着されても、他社製マイクロフォンと検出スイッチ14の凸部は当接せず、検出スイッチ14が本体側に押し込まれることもなく、感知スイッチ16はオフ状態のまま維持される。本体部に設けられたプロセッサは、プラグがジャック13Rに挿入され、かつ感知スイッチ16がオフ状態のままであることを検知すると、ホルダ12Rに他社製マイクロフォンが装着されたことを検知する。
【0038】
本体側のプロセッサは、自社製マイクロフォンの装着を検知すると、プラグの特定端子、例えば4極(S極、R1極、R2極、T極)のR1極に5Vを供給する。また、他社製マイクロフォンの装着を検知すると、T極に2.7Vを供給する。ここで、プラグの先端から根本に向けて、T(チップ)極、R1,R2極(リング)極、S(スリーブ)極が順次配置される。一般に、プラグの先端から順にRチャンネル(逆相)、Rチャンネル(正相)、Lチャンネル(正相)、Lチャンネル(逆相)である。本体側のプロセッサは、自社製マイクロフォンがホルダ12R、12Lのジャック13R,13Lの両方にプラグが挿入された場合に電圧を供給し、他社製マイクロフォンがホルダ12R,12Lのジャック13R,13Lの少なくともいずれかにプラグが挿入された場合に電圧を供給する。
【0039】
このように、本実施形態では、感知スイッチ16のオン/オフによって装着されたマイクロフォンが自社製マイクロフォンであるか他社製マイクロフォンであるかを識別し、自社製マイクロフォンには自社製専用の電圧を供給し、他社製マイクロフォンには他社製専用の電圧を供給することで、例えば他社製マイクロフォンに誤った電圧を供給してマイクロフォンを破損してしまう事態を確実に防止する。
【0040】
次に、装着されたマイクロフォンが自社製マイクロフォンである場合に、内向き姿勢のX-Y方式と外向き姿勢のA-B方式のいずれの方式で装着されたかを自動識別する構成について説明する。
【0041】
図5に、本体部前面のホルダ12R、12Lに装着される一対の自社製マイクロフォン22,24の斜視図を示す。一対のマイクロフォン22,24のそれぞれは、振動板(ダイヤフラム)と振動板を収容するケースを備え、振動板によって音声を集音する。ケースは略円筒形状をなし、振動板は、振動板の振動を電気信号に変換する変換部等と一体的にユニット化されて構成される。ケースの開放端側には、例えば、金属製のメッシュ板等で構成され、内部の振動板を保護するヘッドカバーが設けられる。
【0042】
また、一対のマイクロフォン22,24のそれぞれは、マイクプレート28を備える。マイクプレート28は、略円形状をなし、一対のマイクロフォンのそれぞれにおいて一方向に向いて設けられる。具体的には、マイクロフォン22については、マイクロフォン22を平面視において「>」状となるように配置した場合に上面側を向くようにマイクプレート28が設けられ、マイクロフォン24については、マイクロフォン24を平面視において「<」状となるように配置した場合に上面側を向くようにマイクプレート28が設けられる。言い換えれば、マイクロフォン22を右側、マイクロフォン24を左側に配置し、マイクロフォン22,24が内向き姿勢のX-Y方式で装着された場合に、本体部の天面側を向くようにマイクプレート28が設けられる。あるいは、マイクロフォン22を左側、マイクロフォン24を右側に配置し、マイクロフォン22,24が外向き姿勢のA-B方式で装着された場合に、本体部の天面側を向くようにマイクプレート28が設けられる。
【0043】
さらに、一対のマイクロフォン22,24のそれぞれの装着部の所定位置には、ボス26が設けられる。本体部への装着時には、これらのボス26をホルダ12R,12Lの対応する位置に設けられたマイク向き決定用穴に位置決めしつつ挿入して装着する。
【0044】
図6に、ホルダ12R,12Lの所定位置に設けられたマイク向き決定用穴30の一例を示す。装着時には、マイクプレート28が本体部の天面側に向くように一対のマイクロフォン22,24を把持し、マイクロフォン22,24それぞれのボス26をマイク向き決定用穴30に位置決めし、ボス26をマイク向き決定用穴30内に挿入しつつそれぞれのプラグをジャック13R,13Lに挿入することで装着する。マイクプレート28が本体部の天面側とは反対側の裏面側に向くように一対のマイクロフォン22,24を把持してホルダ12R,12Lに装着しようとしても、ボス26がマイク向き決定用穴30に挿入しないため、装着不可となる。
【0045】
また、マイクロフォン22,24に設けられたボス26はそれぞれ同一位置に設けられ、ホルダ12R,12Lに設けられたマイク向き決定用穴30もそれぞれ同一位置に設けられているので、マイクロフォン22をホルダ12Rに装着するとともに、これに代えてマイクロフォン22を同じ向きのままホルダ12Lに装着できる。同様に、マイクロフォン24をホルダ12Lに装着するとともに、これに代えてマイクロフォン24を同じ向きのままホルダ12Rに装着できる。
【0046】
図7に、一対のマイクロフォン22,24のうち、マイクロフォン22をホルダ12Rに装着し、マイクロフォン24をホルダ12Lに装着した状態を示す。一対のマイクロフォン22,24それぞれのマイクプレート28が本体部の天面33側に向き、かつ集音軸が互いに交差する内向き姿勢のX-Y方式である。
【0047】
また、
図8に、一対のマイクロフォン22,24のうち、マイクロフォン22をホルダ12Lに装着し、マイクロフォン24をホルダ12Rに装着した場合を示す。一対のマイクロフォン22,24それぞれのマイクプレート28が本体部の天面33側に向き、かつ集音軸が互いに交差しない外向き姿勢のA-B方式である。
【0048】
本体部のプロセッサは、一対のマイクロフォンが
図7に示すX-Y方式であるか、
図8に示すA-B方式であるかを、マイクロフォン22,24の端子電圧値に基づいて自動識別する。
【0049】
具体的には、以下の通りである。すなわち、一対のマイクロフォン22,24のうちのいずれか一方、例えばマイクロフォン22のプラグに形成された4つの端子(S極、R1極、R2極、T極)のうちのS極をオープンに設定し、一対のマイクロフォン22,24のうちのいずれか他方、例えばマイクロフォン24のプラグに形成された4つの端子(S極、R1極、R2極、T極)のうちのS極を0Vに設定する。そして、プロセッサは、マイクロフォン22,24のプラグがジャック13R,13Lに挿入されて装着されたときのS極の電圧値を読み取る。ホルダ12Lに装着されたマイクロフォンのS極の電圧を読み取り、読み取った電圧値が0Vであれば、マイクロフォン24がホルダ12Lに装着されたことになるので、
図7に示す内向きのX-Y方式であると識別する。他方で、ホルダ12Rに装着されたマイクロフォンのS極の電圧値を読み取り、読み取った電圧値が0Vであればマイクロフォン24がホルダ12Rに装着されたことになり、
図8に示す外向きのA-B方式であると識別する。
【0050】
勿論、マイクロフォン24に代えて、マイクロフォン22のS極を0Vに設定してもよい。この場合、ホルダ12Rに装着されたマイクロフォンのS極の電圧を読み取り、読み取った電圧値が0Vであれば、マイクロフォン22がホルダ12Rに装着されたことになるので、
図7に示す内向きのX-Y方式であると識別する。また、ホルダ12Lに装着されたマイクロフォンのS極の電圧を読み取り、読み取った電圧値が0Vであれば、マイクロフォン22がホルダ12Lに装着されたことになるので、
図8に示す外向きのA-B方式であると識別する。
【0051】
要するに、マイクロフォン22,24のいずれかのS極のみを0Vに設定し、ジャック13R,13LのいずれのS極の電圧値が0Vであるかに基づいて、X-Y方式であるかA-B方式であるかを自動識別する。
【0052】
図9に、マイクロフォン22,24のプラグ32の4つの端子(S極、R1,R2極、T極)と、ホルダ12R,12L側のジャック13R,13Lを模式的に示す。マイクロフォン22,24のプラグ32のS極の電圧値をジャック13R,13L側の電圧検出回路(図示せず)で読み取ってプロセッサに出力し、プロセッサで電圧値が0Vであるか否かを検知する。マイクロフォン22,24のいずれか一方、例えばマイクロフォン24のS極が0Vに設定されている場合、ジャック13R、13LのいずれのS極の電圧値が0Vかにより、マイクロフォン24がいずれのジャック(ホルダ)に装着されているかを識別でき、内向き姿勢のX-Y方式であるか、外向き姿勢のA-B方式であるかを一義的に識別できる。
【0053】
次に、プロセッサは、X-Y方式とA-B方式とで、RチャンネルとLチャンネルの音声信号を自動的に切り替えて設定する。具体的には、
図8に示すA-B方式においてホルダ12LをLチャンネル用としてマイクロフォン22で集音した音声信号をLチャンネル音声信号、ホルダ12RをRチャンネル用としてマイクロフォン24で集音した音声信号をRチャンネル音声信号としてステレオ録音する。そして、ユーザがマイクロフォン22,24を入れ替えて、
図7に示すX-Y方式とした場合、プロセッサは、A-B方式からX-Y方式に切り替わったことを自動識別して、Rチャンネル音声信号とLチャンネル音声信号を録音データ上で反転させる。すなわち、ホルダ12Rからの音声信号をLチャンネル音声信号に反転し、ホルダ12Lからの音声信号をRチャンネル音声信号に反転する。
【0054】
仮に、このようなRチャンネル音声信号とLチャンネル音声信号の反転処理を実行しない場合には、ホルダ12Rからの音声信号をRチャンネル音声信号とし、ホルダ12Lからの音声信号をLチャンネル音声信号として録音する結果、マイクロフォン22で集音した音声信号がRチャンネル音声信号、マイクロフォン24で集音した音声信号がLチャンネル音声信号となってしまう。
【0055】
これに対し、ホルダ12Rからの音声信号をLチャンネル音声信号に自動反転し、ホルダ12Lからの音声信号をRチャンネル音声信号に自動反転することで、
図8のA-B方式から
図7のX-Y方式に切り替えても、マイクロフォン22で集音した音声信号をLチャンネル音声信号、マイクロフォン24で集音した音声信号をRチャンネル音声信号としたまま録音を行うことができる。
【0056】
図10に、本体部のプロセッサの処理フローチャートを示す。マイクロフォン22,24のうち、マイクロフォン24のS極が0Vに設定される場合の処理である。プロセッサは、プログラムを読み出して実行することで
図10に示す処理を実行する。プロセッサは、1個または複数個のCPUで構成され得る。
【0057】
まず、プロセッサは、ホルダ12R,12Lのジャック13R,13Lにプラグが挿入されたか否かを判定する(S101)。プロセッサは、任意の構成によりプラグがジャックに挿入されたことを検知できるが、例えばジャック側のスイッチ接点をノーマリクローズとし、プラグが挿入された場合に当該接点がオープンになるようなスイッチ構造としてもよい。
【0058】
プラグが挿入された場合(S101でYES)、内蔵マイクロフォンに代えて別のマイクロフォンが装着されたことを検知して、次に感知スイッチ16がオンされたか否かを判定する(S102)。
【0059】
感知スイッチ16がオンされた場合(S102でYES)、プロセッサは自社製マイクロフォンが装着されたことを検知する。また、感知スイッチ16がオフのままである場合(S102でNO)、他社製マイクロフォンが装着されたことを検知する。
【0060】
自社製マイクロフォンであることを検知した場合、プロセッサはホルダ12Lのジャック13LのS極の電圧値が0Vであるか否かを判定する(S105)。ジャック13LのS極の電圧値が0Vであれば(S105でYES)、マイクロフォン24がジャック13Lに挿入されたことを意味するから、プロセッサはX-Y方式であると検知する(S106)。他方で、ジャック13LのS極の電圧値が0Vでない、つまりジャック13RのS極の電圧値が0Vであれば(S105でNO)、マイクロフォン24がジャック13Rに挿入されたことを意味するから、プロセッサはA-B方式であると検知する(S107)。
【0061】
プロセッサは、X-Y方式であることを検知した場合、ジャック13Rからの音声信号をLチャンネル音声信号に反転し、ジャック13Lからの音声信号をRチャンネル音声信号に反転して録音処理を実行する(S108)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、本体部に装着されたマイクロフォンが自社製であるか他社製であるかを識別できるので、自社製マイクロフォンと他社製マイクロフォンとでマイクロフォンに与える電圧が異なっていても、誤った電圧を供給する事態を防止できる。
【0063】
また、自社製マイクロフォンが装着された場合に、内向き姿勢のX-Y方式であるか外向き姿勢のA-B方式であるかを自動的に識別できる。
【0064】
さらに、内向き姿勢のX-Y方式であるか外向き姿勢のA-B方式であるかを自動的に識別しつつ、ステレオのRチャンネルとLチャンネルを正しく設定できる。
【0065】
なお、本実施形態では、ホルダ12R,12Lに装着されたマイクロフォンが他社製マイクロフォンである場合には、X-Y方式であるかA-B方式であるかを自動識別しないが、この場合、プロセッサは操作部にメニューを表示してX-Y方式であるかA-B方式であるかをユーザが手動で設定できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 音声レコーダ、12R,12L ホルダ、13R,13L ジャック、14 検出スイッチ、16 感知スイッチ、20 マイクロフォンの一部、22,24 自社製マイクロフォン、26 ボス、28 マイクプレート、30 マイク向き決定用穴、32 プラグ、33 天面。