(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】時計部品及び時計
(51)【国際特許分類】
G04B 45/02 20060101AFI20240814BHJP
G04B 29/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G04B45/02
G04B29/02 B
(21)【出願番号】P 2021041087
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】川西 和志
(72)【発明者】
【氏名】小川 咲
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-15454(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144081(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1837720(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
A44C 5/00
B44B 1/00 - 1/06
B44B 3/02
B44C 1/22
B23C 3/00 - 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1方向に延びる第1溝、第2溝及び平坦部が形成された基材を備え、
前記第1方向と直交する第2方向において、前記平坦部は前記第1溝及び前記第2溝の間に設けられ、
前記第1方向において、前記第1溝には第1幅広部と第1幅狭部とが交互に設けられ、
前記第1方向において、前記第2溝には第2幅広部と第2幅狭部とが交互に設けられ、
前記第2方向において、前記第1幅広部と前記第2幅狭部とが交互に設けられ、
前記第2方向において、前記第1幅狭部と前記第2幅広部とが交互に設けられ、
前記第1幅広部の幅は前記第1幅狭部の幅よりも広く、前記第2幅広部の幅は前記第2幅狭部の幅よりも広く、
前記第1幅広部の深さは前記第1幅狭部の深さよりも深く、前記第2幅広部の深さは前記第2幅狭部の深さよりも深い、ことを特徴とする時計部品。
【請求項2】
請求項1に記載の時計部品であって、
前記第1方向から見た断面視において前記第1幅広部の断面形状と前記第2幅広部の断面形状とは同じ曲率の円弧であることを特徴とする時計部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の時計部品であって、
前記第1溝及び前記第2溝の深さは0.05mm以上、且つ、0.5mm以下であることを特徴とする時計部品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の時計部品であって、
前記基材の平面視で前記平坦部の前記第2方向の幅は広い場所と狭い場所とを備えることを特徴とする時計部品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の時計部品であって、
前記第1溝及び前記第2溝の表面は梨地面であり、
前記平坦部の表面は、鏡面であることを特徴とする時計部品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の時計部品であって、
前記第1溝及び前記第2溝の表面は梨地面であり、
前記平坦部の表面は、スジ目面であることを特徴とする時計部品。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の時計部品であって、
前記基材の表面にはめっきが施されていることを特徴とする時計部品。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の時計部品を備えることを特徴とする時計。
【請求項9】
第1方向に延びる第1溝が形成された基材を備え、
前記第1方向において、前記第1溝には第1幅広部と第1幅狭部とが交互に設けられ、
前記第1幅広部の幅は前記第1幅狭部の幅よりも広く、
前記第1幅広部の深さは前記第1幅狭部の深さよりも深く、
前記第1方向から見た断面視において前記第1幅広部の断面形状と前記第1幅狭部の断面形状とは同じ曲率の円弧であることを特徴とする時計部品。
【請求項10】
請求項9に記載の時計部品を備えることを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品及び時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計部品の外観の見栄えを良くするために表面に模様を形成することがある。表面にツゲ模様を形成した時計部品が特許文献1に開示されている。ツゲ模様は、多数の円形模様を互いに一部分が重なるように形成することで、円形模様が複数並べられた外観を呈している。円形模様は切削溝により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ツゲ模様は基材の表面に浅いスジがついている形態であるので、平面的な印象を受ける。さらに、意匠性の高い時計部品にするために、立体的な印象を与えることができる模様を表面に有する時計部品が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
時計部品は、それぞれ第1方向に延びる第1溝、第2溝及び平坦部が形成された基材を備え、前記第1方向と直交する第2方向において、前記平坦部は前記第1溝及び前記第2溝の間に設けられ、前記第1方向において、前記第1溝には第1幅広部と第1幅狭部とが交互に設けられ、前記第1方向において、前記第2溝には第2幅広部と第2幅狭部とが交互に設けられ、前記第2方向において、前記第1幅広部と前記第2幅狭部とが交互に設けられ、前記第2方向において、前記第1幅狭部と前記第2幅広部とが交互に設けられ、前記第1幅広部の幅は前記第1幅狭部の幅よりも広く、前記第2幅広部の幅は前記第2幅狭部の幅よりも広く、前記第1幅広部の深さは前記第1幅狭部の深さよりも深く、前記第2幅広部の深さは前記第2幅狭部の深さよりも深い。
【0006】
時計は上記に記載の時計部品を備える。
【0007】
時計部品は、第1方向に延びる第1溝が形成された基材を備え、前記第1方向において、前記第1溝には第1幅広部と第1幅狭部とが交互に設けられ、前記第1幅広部の幅は前記第1幅狭部の幅よりも広く、前記第1幅広部の深さは前記第1幅狭部の深さよりも深く、前記第1方向から見た断面視において前記第1幅広部の断面形状と前記第1幅狭部の断面形状とは同じ曲率の円弧である。
【0008】
時計は上記に記載の時計部品を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかわるムーブメントの構成を示す模式側断面図。
【
図4】輪列受の模様を説明するための要部模式平面図。
【
図10】マシニングセンターの構成を示す模式側面図。
【
図11】溝の加工方法を説明するための要部模式側断面図。
【
図12】第2実施形態にかかわる輪列受の模様を説明するための要部模式平面図。
【
図13】第3実施形態にかかわる輪列受の外観を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1実施形態
本実施形態では、時計部品の特徴的な例について、図に従って説明する。
図1に示すように、時計1に内蔵されるムーブメント2は地板3及び時計部品としての輪列受4を備える。地板3は文字板5側に配置される。輪列受4は図示しない裏蓋側に配置される。時計1は電子時計でも機械式時計でも良い。本実施形態では、例えば、時計1は機械式時計である。裏蓋がガラス窓を備えるとき、ガラス窓を通して輪列受4を見ることができる。このため、高級時計では輪列受4に模様が加工される。
【0011】
地板3と輪列受4とは図示しない支持部材を介してねじにより固定される。地板3と輪列受4との間は所定の間隔があいている。地板3と輪列受4との間には複数の歯車6で構成される輪列7が配置される。地板3には香箱8がねじにより回転可能に設置される。香箱8はぜんまいばねを備え、輪列7の歯車6を回転させる動力を輪列7に供給する。地板3及び輪列受4は歯車6の軸受け9を備える。
【0012】
図2に示すように、輪列受4は第1溝12及び第2溝13による模様が形成された基材14を備える。基材14には多数の軸受け9及びねじ11が配置される。輪列受4は平面視で香箱8と重ならない形状になっている。なお、輪列受4は平面視で香箱8と重なる形状であってもよい。
【0013】
次に輪列受4に形成する模様について説明する。
図3には輪列受4と同じ模様が形成された円板状の基材14が示される。基材14に香箱8を配置する部分を含む外形形状が加工される。さらに、基材14に軸受け9及びねじ11が取り付けられて輪列受4になる。
【0014】
基材14にはそれぞれ第1方向15に延びる第1溝12、第2溝13及び平坦部16が形成される。第1溝12及び第2溝13は平坦部16に対して断面方向に凹んでいる。詳しくは第1溝12及び第2溝13は円弧溝である。これにより、基材14を斜めから見た状態において、基材14には線模様が形成される。
【0015】
図4に示すように、第1方向15と直交する第2方向17において、平坦部16は第1溝12及び第2溝13の間に設けられる。第1方向15において、第1溝12には第1幅広部18と第1幅狭部19とが交互に設けられる。第1幅広部18の幅は第1幅狭部19の幅よりも広い。基材14の平面視において第1幅広部18の溝の側面は、溝の中心線に対して離れる方向に突出した形状を有する。基材14の平面視において第1幅狭部19の溝の側面は、溝の中心線に対して近づく方向に凹んだ形状を有する。第1溝12が平坦部16と接する輪郭は滑らかな曲線になっている。
【0016】
図4以降において第1方向15をX軸方向とし、第2方向17をY軸方向とする。基材14の厚み方向をZ軸方向とする。第1方向15において、第2溝13には第2幅広部21と第2幅狭部22とが交互に設けられる。第2幅広部21の幅は第2幅狭部22の幅よりも広い。基材14の平面視において第2幅広部21では第2溝13が平坦部16側に突出する。基材14の平面視において第2幅狭部22では第2溝13が凹む。第2溝13が平坦部16と接する輪郭は滑らかな曲線になっている。
【0017】
第2方向17において、第1幅広部18と第2幅狭部22とが交互に設けられる。第2方向17において、第1幅狭部19と第2幅広部21とが交互に設けられる。
【0018】
基材14の平面視において第1幅広部18では平坦部16が凹む。第1幅狭部19では平坦部16が第1溝12側に突出する。第2幅広部21では平坦部16が凹む。第2幅狭部22では平坦部16が第2溝13側に突出する。
【0019】
第1溝12及び第2溝13が平坦部16と接する輪郭は連続する複数の円弧で構成される。
【0020】
基材14の平面視で平坦部16の第2方向17の幅は広い場所と狭い場所とを備える。第2方向17において第1幅広部18及び第2幅狭部22が並ぶ場所の平坦部16の幅を第1幅16aとする。第1幅広部18と第1幅狭部19との間の第2方向17の平坦部16の幅を第2幅16bとする。第1幅16aは第2幅16bより広くなっている。この構成によれば、平坦部16は第2方向17の幅が広い場所と狭い場所とがある。従って、平坦部16の形状が同じ幅の線で形成されるときに比べて、平坦部16の形状が変化に富む為、審美性を向上させることができる。
【0021】
図5は輪列受4を
図4のAA線に沿う断面側から見た図である。
図5に示すように、第1溝12における第1幅広部18の深さは第1幅狭部19の深さよりも深い。第1溝12は幅の広い第1幅広部18で深くなっており、幅の狭い第1幅狭部19で浅くなっている。
【0022】
第1幅広部18における最も深い場所の第1溝12の深さを第1深部深さ23とする。第1幅狭部19における最も浅い場所の第1溝12の深さを第2深部深さ24とする。第1深部深さ23は0.5mm以下であり、且つ、第2深部深さ24より深い。第2深部深さ24は第1深部深さ23より浅く、0.05mm以上である。従って、第1溝12の深さは0.05mm以上、且つ、0.5mm以下である。ここで、平坦部を際立たせて立体的な印象をより強くするには、第1溝12の深さは0.1mm以上、且つ、0.5mm以下で構成することが好ましい。また、時計部品を薄型化するには、第1溝12の深さは0.05mm以上、かつ、0.3mm以下で構成することが好ましい。これにより時計部品が軽量化することができ、例えば時計の落下衝撃に対する時計構成部品の変形や破損を抑制することができる。
【0023】
図6は輪列受4を
図4のBB線に沿う断面側から見た図である。
図6に示すように、第2溝13における第2幅広部21の深さは第2幅狭部22の深さよりも深い。第2溝13は幅の広い第2幅広部21で深くなっており、幅の狭い第2幅狭部22で浅くなっている。
【0024】
第2幅広部21における深い場所の第2溝13の深さを第3深部深さ25とする。第2幅狭部22における最も浅い場所の第2溝13の深さを第4深部深さ26とする。第3深部深さ25は0.5mm以下であり、且つ、第4深部深さ26より深い。第4深部深さ26は第3深部深さ25より浅く、0.05mm以上である。従って、第2溝13の深さは0.05mm以上、且つ、0.5mm以下である。ここで、平坦部を際立たせて立体的な印象をより強くするには、第2溝13の深さは0.1mm以上、且つ、0.5mm以下で構成することが好ましい。また、時計部品を薄型化するには、第2溝13の深さは0.05mm以上、かつ、0.3mm以下で構成することが好ましい。これにより時計部品が軽量化することができ、例えば時計の落下衝撃に対する時計構成部品の変形や破損を抑制することができる。
【0025】
この構成によれば、基材14には平坦な面に第1溝12及び第2溝13が形成される。第1溝12では溝幅が広く溝深さが深い第1幅広部18と、溝幅が狭く溝深さが浅い第1幅狭部19と、が交互に配置される。第2溝13では溝幅が広く溝深さが深い第2幅広部21と、溝幅が狭く溝深さが浅い第2幅狭部22と、が交互に配置される。従って、第1方向15には溝の深い場所と浅い場所とが交互に配置される。
【0026】
第2方向17においても、溝幅が広く溝深さが深い第1幅広部18と、溝幅が狭く溝深さが浅い第2幅狭部22とが交互に配置される。溝幅が広く溝深さが深い第2幅広部21と、溝幅が狭く溝深さが浅い第1幅狭部19とが交互に配置される。従って、溝深さの深い場所と溝深さが浅い場所とが縦横共に交互に配置される。
【0027】
第1溝12及び第2溝13ともに溝が浅い場所では平坦部16が溝側に突出し、溝の深い場所では溝が平坦部16側に突出する。基材14の平面視における凹凸のある形状と溝深さの変化を有する造形が基材14の表面に立体的な印象を与えることができる。
【0028】
第1溝12及び第2溝13の深さは0.05mm以上、且つ、0.5mm以下である。この構成によれば、第1溝12及び第2溝13の深さは0.05mm以上である。従って、深さが5μm程度の切削痕からなるツゲ模様に比べて、溝の深さが深いので立体的な印象を与えることができる。溝の深さが0.5mm以下であるので、基材14が厚くなることを抑制できる。
【0029】
図7は輪列受4を
図4のCC線に沿う断面側から見た図である。
図8は輪列受4を
図4のDD線に沿う断面側から見た図である。
図7に示すように、第1溝12の第1幅広部18における断面形状は半径27の円弧である。第2溝13の第2幅狭部22における断面形状も半径27の円弧である。
図8に示すように、第1溝12の第1幅狭部19における断面形状は半径27の円弧である。第2溝13の第2幅広部21における断面形状も半径27の円弧である。
【0030】
第1方向15から見た断面視において第1幅広部18の断面形状、第1幅狭部19、第2幅広部21及び第2幅狭部22の断面形状は同じ曲率の円弧である。各断面形状の曲率は半径27の20%以下に相当する誤差があっても良い。この構成によれば、同じボールエンドミルで基材14を削る深さを変えることにより、容易に第1幅広部18、第1幅狭部19、第2幅広部21及び第2幅狭部22を形成することができる。
【0031】
第1溝12及び第2溝13の表面は梨地面であり、平坦部16の表面は、鏡面であっても良い。梨地面は表面に細かい凹凸がある面である。梨地面は光を吸収し、反射する光も乱反射するので、光を照射されても梨地面は暗く見える。この構成によれば、第1溝12及び第2溝13と平坦部16との明るさにコントラスト差を生じさせることができる。従って、輪列受4は明暗の変化に富む為、審美性を向上させることができる。
【0032】
基材14の表面にはめっきが施されていても良い。めっきの種類は特に限定されない。ニッケルめっき、金めっき、銀めっき、青色や黒色等のめっきを基材14に施しても良い。この構成によれば、輪列受4は基材14の色から色調を変更できる為、輪列受4の色調のバリエーションを増やすことができる。
【0033】
時計1は輪列受4を備える。この構成によれば、上記の輪列受4は表面に立体的な印象を与えることができる。従って、時計1は表面に立体的な印象を与えることができる輪列受4を備えた時計とすることができる。
【0034】
次に上述した輪列受4の製造方法について
図9~
図11にて説明する。
図9のフローチャートにおいて、ステップS1は模様付工程に相当し、基材14上に第1溝12及び第2溝13を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2はショットブラスト工程である。この工程は、第1溝12及び第2溝13を梨地面にする工程である。基材14に粒子状のアルミナ研磨材が吹き付けられる。基材14の表面に細かな凹凸ができるので、基材14の表面が梨地面になる。次にステップS3に移行する。
【0035】
ステップS3は外形抜工程である。この工程は、輪列受4の外形形状を形成する工程である。他にも、軸受け9を設置する孔やねじ11を設置する孔が形成される。外形形状や孔を形成する機械にはブランキングプレス機械が用いられる。次にステップS4に移行する。ステップS4は研磨工程である。この工程は、平坦部16を鏡面に加工する工程である。第1溝12及び第2溝13が樹脂材料にてマスクされる。次に、基材14がバフ研磨される。バフ研磨ではバフと呼ばれる円盤状の研磨道具に研磨剤を塗布し、バフを高速回転させながら基材14の表面に押し当てる。平坦部16が鏡面になったら、樹脂のマスクを除去する。次にステップS5に移行する。
【0036】
ステップS5はめっき工程である。この工程は、基材14にめっきをする工程である。めっきには電気めっき、または、無電解めっきが行われる。以上の工程にて輪列受4の基材14への加工が終了する。この後基材14に軸受け9を組み込んで輪列受4が完成する。
【0037】
次に、
図10及び
図11を用いて、ステップS1の模様付工程を詳細に説明する。
図10に示すように、ステップS1ではマシニングセンター28が用いられる。マシニングセンター28はY軸方向に移動するY軸テーブル29、X軸方向に移動するX軸テーブル31及びZ軸方向に移動するZ軸テーブル32を備える。
【0038】
他にも、マシニングセンター28は刃具の1種であるボールエンドミル33をクランプして回転させる刃具回転部34を備える。Z軸テーブル32はボールエンドミル33をZ軸方向に移動させる。他にも、マシニングセンター28は制御部35を備える。制御部35はY軸テーブル29、X軸テーブル31、Z軸テーブル32の移動速度及び移動量を制御する。さらに、制御部35はボールエンドミル33の回転速度を制御する。X軸テーブル31は真空チャックを備え、基材14はX軸テーブル31に吸着固定される。X軸テーブル31は基材14をX軸方向に移動させる。Y軸テーブル29は基材14をY軸方向に移動させる。
【0039】
図11に示すように、ボールエンドミル33はボール状の刃を備えるエンドミルである。制御部35はX軸テーブル31、Z軸テーブル32及び刃具回転部34を同時に駆動させる。マシニングセンター28はボールエンドミル33を回転させながらボールエンドミル33をZ軸方向に上下動する。さらに、マシニングセンター28は基材14に対してボールエンドミル33をX軸方向に進行させる。
【0040】
ボールエンドミル33は基材14を切削しながら進行する。その結果、ボールエンドミル33が第1溝12を1つ形成する。次に、制御部35はY軸テーブル29を駆動する。Y軸テーブル29はボールエンドミル33に対して基材14をY軸方向に所定の距離だけ進行させる。この所定の距離はX軸方向における第1溝12の中心と第2溝13の中心との距離である。
【0041】
第1溝12を形成したときと同じ手順でボールエンドミル33は基材14を切削しながら進行する。その結果、ボールエンドミル33が第2溝13を1つ形成する。
【0042】
Y軸テーブル29によるボールエンドミル33に対する基材14の移動と溝の形成が繰り返して行われる。その結果、基材14には第1溝12と第2溝13とがY軸方向に交互に並んで複数形成される。以上でステップS1が終了する。
【0043】
第2実施形態
図12に示すように、時計部品としての輪列受38では基材14にはそれぞれ第1方向15に延びる第1溝12、第2溝13及び平坦部39が形成される。第1溝12及び第2溝13の表面は梨地面であり、平坦部39の表面は、スジ目面である。スジ目面はスジ目模様が形成された面である。スジ目模様は細かな線が所定の方向に多数配置された模様である。この構成によれば、第1溝12及び第2溝13と平坦部39との明るさにコントラスト差を生じさせることができる。従って、輪列受38は明暗の変化に富む為、審美性を向上させることができる。
【0044】
第3実施形態
前記第1実施形態では第1溝12と第2溝13とがY軸方向に交互に並んで配置された。これに限らず、基材14に第1溝12だけ形成しても良い。
【0045】
図13に示すように、時計41のムーブメント42は時計部品としての輪列受43を備える。輪列受43は第1方向15に延びる第1溝12が形成された基材14を備える。第1方向15において、第1溝12には第1幅広部18と第1幅狭部19とが交互に設けられる。第1幅広部18の幅は第1幅狭部19の幅よりも広い。第1幅広部18の深さは第1幅狭部19の深さよりも深い。第1方向15から見た断面視において第1幅広部18の断面形状と第1幅狭部19の断面形状は同じ曲率の円弧である。
【0046】
基材14の平面視において第1幅広部18では第1溝12が平坦部16側に突出する。基材14の平面視において第1幅狭部19では第1溝12が凹む。第1溝12が平坦部16と接する輪郭は滑らかな曲線になっている。
【0047】
この構成によれば、基材14には第1溝12が形成される。第1溝12では溝幅が広く溝深さが深い第1幅広部18と溝幅が狭く溝深さが浅い第1幅狭部19と、が交互に配置される。従って、第1方向15には溝の深い場所と浅い場所とが交互に配置される。
【0048】
第1方向15から見た断面視において第1幅広部18の断面形状と第1幅狭部19の断面形状は同じ曲率の円弧になっている。従って、基材14の平面視における凹凸のある形状と溝深さの変化を有する造形が基材の表面に立体的な印象を与えることができる。
【0049】
時計41は輪列受43を備える。この構成によれば、輪列受43の表面は立体的な印象を与えることができる。従って、時計41は表面に立体的な印象を与えることができる輪列受43を備えた時計とすることができる。
【0050】
第4実施形態
前記第1実施形態では輪列受4に第1溝12、第2溝13を形成した例を示した。他にも、回転錘や文字板5の上に設置される飾り板等に第1溝12、第2溝13を形成しても良い。他にも、文字板5、ケース、バンド、香箱等に第1溝12、第2溝13を形成しても良い。各部材の表面に立体的な印象を与えることができる。
【符号の説明】
【0051】
1,41…時計、4,38,43…時計部品としての輪列受、12…第1溝、13…第2溝、14…基材、15…第1方向、16…平坦部、17…第2方向、18…第1幅広部、19…第1幅狭部、21…第2幅広部、22…第2幅狭部。