(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】工程管理システム及び工程管理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240814BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240814BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2021046757
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】佐野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大野 暁
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大耀
(72)【発明者】
【氏名】西吉 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026070(JP,A)
【文献】特開2020-052663(JP,A)
【文献】特開2013-156800(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0046953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業が行われる既存の複数の工程を含む生産ラインを管理する工程管理システムであって、
前記生産ラインにおいて追加で実施される追加作業に必要な作業時間である追加作業時間と、前記工程内の1つ以上の要素作業それぞれに必要な作業時間である要素作業時間とを取得する取得部と、
取得された前記追加作業時間及び前記要素作業時間に基づいて、前記追加作業を前記工程の少なくとも1つに追加して工程間で前記要素作業を再配置したときの複数の前記工程それぞれの作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、前記複数の工程についての前記追加作業及び複数の前記要素作業の組み合わせを算出する算出部と、
を有する工程管理システム。
【請求項2】
前記複数の工程のうちの、前記要素作業が再配置される工程である再配置工程を決定する決定部、
をさらに有する請求項1に記載の工程管理システム。
【請求項3】
前記算出部によって算出された前記最大作業時間が予め定められた時間を超える場合に、
前記決定部は、前記再配置工程を変更し、
前記算出部は、変更された前記再配置工程について、前記組み合わせを算出する、
請求項2に記載の工程管理システム。
【請求項4】
前記取得部は、さらに、前記工程における作業を行う作業者に関する作業者情報を取得し、
前記算出部は、前記作業者情報に基づいて、前記組み合わせを算出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の工程管理システム。
【請求項5】
前記取得部は、さらに、前記要素作業に関する制限を示す制限情報を取得し、
前記算出部は、前記制限情報に基づいて、前記組み合わせを算出する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の工程管理システム。
【請求項6】
所定の作業が行われる既存の複数の工程を含む生産ラインを管理する工程管理方法であって、
前記生産ラインにおいて追加で実施される追加作業に必要な作業時間である追加作業時間と、前記工程内の1つ以上の要素作業それぞれに必要な作業時間である要素作業時間とを取得し、
取得された前記追加作業時間及び前記要素作業時間に基づいて、前記追加作業を前記工程の少なくとも1つに追加して工程間で前記要素作業を再配置したときの複数の前記工程それぞれの作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、前記複数の工程についての前記追加作業及び複数の前記要素作業の組み合わせを算出する、
工程管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程管理システム及び工程管理方法に関し、特に、複数の工程を含む生産ラインを管理する工程管理システム及び工程管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインにおいて、不具合処置などの追加作業が発生した場合、生産性を高く保つためには、その追加作業をインラインで実施することが好ましい。このような技術に関連し、特許文献1は、複数の人的作業エリアと、複数の機械作業エリアと、ワークの外観画像を取得する画像取得エリアとを具備し、作業内容の正誤をワークの外観画像に基づいて判定する検査を実施可能とする製造ラインを開示する。特許文献1にかかる製造ラインは、画像取得エリアに搬入されたワークを撮像する撮像手段と、撮像手段で撮像して得た画像を表示する表示手段とをさらに具備する。そして、表示手段が、複数の人的作業エリアのうち、タクトタイムから人的作業に必要な時間を差し引いた際に、検査に必要な時間が余るタクト余剰エリアに配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にかかる技術では、生産ラインにおいてタクトタイムからの余剰がある工程に、検査工程を設けている。しかしながら、特許文献1にかかる技術では、タクトタイムからの余剰がある程度大きくないと、検査工程を設けることができないおそれがある。言い換えると、検査工程に要する時間よりも余剰が大きな工程がないと、検査工程を適切に設けることができないおそれがある。したがって、特許文献1にかかる技術では、追加作業が発生した場合に生産ラインの生産性が適正化されないおそれがある。
【0005】
本発明は、追加作業が発生した場合であっても生産ラインの生産性を適正化することが可能な工程管理システム及び工程管理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる工程管理システムは、所定の作業が行われる既存の複数の工程を含む生産ラインを管理する工程管理システムであって、前記生産ラインにおいて追加で実施される追加作業に必要な作業時間である追加作業時間と、前記工程内の1つ以上の要素作業それぞれに必要な作業時間である要素作業時間とを取得する取得部と、取得された前記追加作業時間及び前記要素作業時間に基づいて、前記追加作業を前記工程の少なくとも1つに追加して工程間で前記要素作業を再配置したときの複数の前記工程それぞれの作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、前記複数の工程についての前記追加作業及び複数の前記要素作業の組み合わせを算出する算出部と、を有する。
【0007】
また、本発明にかかる工程管理方法は、所定の作業が行われる既存の複数の工程を含む生産ラインを管理する工程管理方法であって、前記生産ラインにおいて追加で実施される追加作業に必要な作業時間である追加作業時間と、前記工程内の1つ以上の要素作業それぞれに必要な作業時間である要素作業時間とを取得し、取得された前記追加作業時間及び前記要素作業時間に基づいて、前記追加作業を前記工程の少なくとも1つに追加して工程間で前記要素作業を再配置したときの複数の前記工程それぞれの作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、前記複数の工程についての前記追加作業及び複数の前記要素作業の組み合わせを算出する。
【0008】
本発明は、このような構成により、要素作業及び追加作業が再配置された各工程の作業時間が、より平滑化されるようになる。そして、各工程の作業時間がより平滑化されることによって、生産ラインの生産性が良好となり得る。したがって、本発明は、追加作業が発生した場合であっても、生産ラインの生産性を適正化することが可能となる。
【0009】
また、好ましくは、前記複数の工程のうちの、前記要素作業が再配置される工程である再配置工程を決定する決定部、をさらに有する。
このような構成により、要素作業の再配置を適切に行うことが可能となる。
【0010】
また、好ましくは、前記算出部によって算出された前記最大作業時間が予め定められた時間を超える場合に、前記決定部は、前記再配置工程を変更し、前記算出部は、変更された前記再配置工程について、前記組み合わせを算出する。
このような構成により、要素作業が再配置される再配置工程を限定しつつ、最大作業時間が予め定められた時間以下となるような、要素作業の組み合わせを算出することが可能となる。これにより、追加作業が生産ラインに追加された場合であっても、生産計画に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記取得部は、さらに、前記工程における作業を行う作業者に関する作業者情報を取得し、前記算出部は、前記作業者情報に基づいて、前記組み合わせを算出する。
このような構成により、作業者のスキルに応じた要素作業の組み合わせが算出されるので、要素作業の組み合わせの算出をより適切に行うことが可能となる。
【0012】
また、好ましくは、前記取得部は、さらに、前記要素作業に関する制限を示す制限情報を取得し、前記算出部は、前記制限情報に基づいて、前記組み合わせを算出する。
このような構成により、要素作業の制限に応じた要素作業の組み合わせが算出されるので、要素作業の組み合わせの算出をより適切に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、追加作業が発生した場合であっても生産ラインの生産性を適正化することが可能な工程管理システム及び工程管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態の概要を説明するための図である。
【
図2】実施の形態1にかかる工程管理システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる工程管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】実施の形態1にかかる工程情報格納部によって格納される工程情報を例示する図である。
【
図5】実施の形態1にかかる各要素作業の標準作業時間を例示する図である。
【
図6】
図5の例において、工程ごとに要素作業時間を積み上げて各工程の作業時間を示した図である。
【
図7】実施の形態1にかかる作業者情報格納部によって格納される作業者情報を例示する図である。
【
図8】実施の形態1にかかる工程決定部の処理を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1にかかる工程管理システムによって実行される工程管理方法を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1にかかる工程管理システムが、追加作業が発生した場合に再配置処理を行う方法を説明するための図である。
【
図11】実施の形態1にかかる工程管理システムが、追加作業が発生した場合に再配置処理を行う方法を説明するための図である。
【
図12】実施の形態1にかかる工程管理システムが、追加作業が発生した場合に再配置処理を行う方法を説明するための図である。
【
図13】実施の形態1にかかる工程管理システムが、追加作業が発生した場合に再配置処理を行う方法を説明するための図である。
【
図14】実施の形態1にかかる工程管理システムが、追加作業が発生した場合に再配置処理を行う方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0016】
<概要>
実施の形態1について説明する前に、実施の形態の概要について説明する。
図1は、本実施の形態の概要を説明するための図である。
図1は、工場における生産ライン50を示す図である。生産ライン50は、複数の工程を含んでいる。
図1の例では、生産ライン50は、工程A、工程B、工程C、工程D、工程E、工程F及び工程Gを含んでいる。生産ライン50では、通常、工程Aから順に、工程B、工程C、工程D、・・・の順で、作業が進められる。したがって、
図1の例では、工程Aから工程Gに向かって生産ライン50のフローが流れている。
【0017】
生産ライン50における各工程において、ライン作業が実行されている。ここで、各工程A~Gでは、同時に、それぞれの工程について所定の作業が実行されている。つまり、工程Aの作業が終了するまで工程B~工程Gの作業が実行されないわけでなく、工程Aで作業が実行されている間、工程B~工程Gそれぞれについて定められた作業が実行される。工程A~工程Gでは、それぞれ、生産計画によって予め定められた時間であるタクトタイムを超えないような作業時間で作業が実行されるように、作業計画がなされている。タクトタイムは、生産計画に応じて定められ得る。
【0018】
ここで、生産ライン50において、突発的に、品質不具合に対する処置などの追加作業が発生した場合、工場の稼働を止めないように追加作業を実行することが求められる。ここで、追加作業を生産ライン50の外で実行すると、生産ライン50の外にワークを運び出して追加作業を行い、追加作業が終わったらワークを生産ライン50に戻すといった作業が必要となるので、工場稼働率が低下してしまうおそれがある。したがって、インラインで追加作業を行うことが望まれる。すなわち、生産ライン50に追加作業を組み込むことが望まれる。
【0019】
しかしながら、単に、ある工程に追加作業を追加してその工程で追加作業を実行するようにすると、その工程の作業時間が他の工程の作業時間と比較して大きくなってしまい、その工程がボトルネックとなるおそれがある。例えば、生産ライン50において、工程Cで不具合が発生したとすると、工程Cで追加作業を行うことが効率的である。しかしながら、単純に工程Cに追加作業を追加するのみであると、工程Cの作業時間が、他の工程の作業時間と比較してかなり大きくなる可能性がある。その場合、工程Cの作業時間と他の工程の作業時間との差があまりにも大きくなると、工程Cがボトルネックとなるため、生産ライン50の全体の生産効率が低下するおそれがある。さらに、この場合、工程Cの作業時間がタクトタイムを超えてしまうと、生産計画に影響を及ぼすおそれがある。
【0020】
ここで、各工程には、その工程で実行される複数の要素作業がある。つまり、各工程は、複数の要素作業で構成される。本実施の形態では、以下に説明するように、追加作業を工程に追加して、各工程における要素作業を工程間で再配置する(組み換える)ように構成されている。つまり、本実施の形態では、各工程における1つ以上の要素作業を、他の工程に再配置するように構成されている。そして、本実施の形態では、その際に、要素作業が再配置された各工程の作業時間が、できるだけ平滑化されるように構成されている。すなわち、本実施の形態では、再配置後の各工程の作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、要素作業及び追加作業を再配置するように構成されている。これにより、追加作業が発生した場合であっても、生産ラインの生産性を適正化することが可能となる。つまり、追加作業が発生した場合であっても、生産ラインの生産性の低下を抑制することができる。したがって、生産ラインに追加作業を組み込んでも、工場の稼働に対する影響を少なくすることが可能となる。
【0021】
<工程管理システム>
次に、実施の形態1にかかる工程管理システムについて説明する。
図2は、実施の形態1にかかる工程管理システム1のハードウェア構成を示す図である。ここで、工程管理システム1は、1つ又は複数のコンピュータ等の情報処理装置によって実現され得る。工程管理システム1は、例えばクラウドシステムによって実現されてもよい。また、工程管理システム1は、複数の装置(例えばサーバ)によって実現されてもよい。この場合、複数の装置それぞれが、
図2に示したハードウェア構成を有し得る。
【0022】
工程管理システム1は、主要なハードウェア構成として、CPU12(Central Processing Unit)と、ROM14(Read Only Memory)と、RAM16(Random Access Memory)と、インタフェース部18(IF;Interface)とを有する。CPU12、ROM14、RAM16及びインタフェース部18は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0023】
CPU12は、制御処理及び演算処理等を行う演算装置(処理デバイスまたはプロセッサ)としての機能を有する。ROM14は、CPU12によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するストレージとしての機能を有する。ROM14は、データベースを含み得る。RAM16は、処理データ等を一時的に記憶するメモリとしての機能を有する。
【0024】
インタフェース部18は、有線又は無線を介して外部と信号の入出力を行う。したがって、インタフェース部18は、通信装置としての機能を有する。また、インタフェース部18は、ユーザによるデータの入力の操作を受け付け、ユーザに対して情報を表示するための処理を行う。インタフェース部18は、例えばキーボード等の入力デバイスと、例えばディスプレイ等の出力デバイスとを有してもよい。また、インタフェース部18は、入力デバイスと出力デバイスとが一体となったタッチパネルを有してもよい。また、インタフェース部18は、マイク及びスピーカを有してもよい。例えば、インタフェース部18は、再配置された要素作業を示す情報を表示してもよい。また、インタフェース部18は、カメラ等の撮像装置を有してもよい。また、インタフェース部18は、上述した情報処理装置とは物理的に別個の装置として実現されてもよい。
【0025】
図3は、実施の形態1にかかる工程管理システム1の構成を示す機能ブロック図である。工程管理システム1は、構成要素として、情報格納部100と、取得部120と、工程決定部130と、算出部140と、判定部150と、表示制御部160とを有する。情報格納部100は、工程情報格納部102と、作業者情報格納部104と、追加作業情報格納部106とを有する。取得部120は、追加作業情報取得部122と、既存作業情報取得部124とを有する。
【0026】
ここで、上述した工程管理システム1の各構成要素は、物理的に1つの装置によって実現されることに限定されず、例えばクラウドコンピューティング等により複数の装置によって実現されてもよい。つまり、工程管理システム1は、物理的に複数の装置で構成されてもよい。例えば、情報格納部100は、他の構成要素とは別の装置で実現されてもよい。
【0027】
なお、これらの構成要素は、例えば、CPU12がROM14に記憶されたプログラムを実行することによって実現可能である。また、各構成要素は、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてインストールするようにして、実現されるようにしてもよい。なお、各構成要素は、上記のようにソフトウェアによって実現されることに限定されず、何らかの回路素子等のハードウェアによって実現されてもよい。また、各構成要素は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。また、上記構成要素の1つ以上は、物理的に別個のハードウェアによってそれぞれ実現されてもよい。
【0028】
情報格納部100は、生産ラインに関する情報を格納する。なお、情報格納部100は、1つのデータベースで実現されてもよい。あるいは、情報格納部100は、複数のデータベースで実現されてもよい。その場合、情報格納部100の各構成要素は、互いに別のデータベースで実現されてもよい。
【0029】
さらに、情報格納部100の各構成要素は、互いに別の装置で実現されてもよい。例えば、工程情報格納部102は、生産管理部門等によって管理されるデータベース又はサーバ等によって実現されてもよい。また、作業者情報格納部104は、人事管理部門等によって管理されるデータベース又はサーバ等によって実現されてもよい。また、追加作業情報格納部106は、品質管理部門等によって管理されるデータベース又はサーバ等によって実現されてもよい。
【0030】
工程情報格納部102及び作業者情報格納部104は、追加作業が発生しているか否かに関わらず、既存の作業に関する情報である既存作業情報を格納し得る。一方、追加作業情報格納部106は、追加作業が発生した場合に、追加作業に関する情報を格納してもよい。
【0031】
工程情報格納部102は、既存作業情報である工程情報を格納する。工程情報は、既存の各工程に関する情報である。工程情報は、各工程の要素作業に関する情報を含む。工程情報は、予め格納されていてもよい。工程情報は、予め、管理者によってインタフェース部18を用いて入力されてもよい。
【0032】
図4は、実施の形態1にかかる工程情報格納部102によって格納される工程情報を例示する図である。工程情報は、タクトタイムと、工程設備情報と、作業種別情報と、標準作業時間と、前後作業制限情報とを示す。タクトタイムは、各工程に共通して要求される時間である。上述したように、タクトタイムは、生産計画に応じて予め定められ得る。なお、上述したように、通常、各工程の作業時間は、タクトタイム以下とする必要がある。
【0033】
工程設備情報は、各工程で使用可能な設備の種類を示す。なお、工程設備情報は、その設備の識別情報を示してもよい。また、各工程の要素作業によって使用可能な設備が異なる場合、工程設備情報は、要素作業ごとに、使用可能な設備に関する情報を示してもよい。なお、工程設備情報は、要素作業を実行可能な設備を示しているので、要素作業に関する制限を示す制限情報であるといえる。
【0034】
作業種別情報は、要素作業ごとの作業種別を示す。作業種別は、例えば、「締め付け作業」、「組付け作業」、及び「部品入れ替え作業」等を含む。なお、1つの工程の複数の要素作業において、作業種別は互いに異なっていてもよい。つまり、1つの工程は、互いに異なる作業種別の複数の要素作業を含み得る。
【0035】
標準作業時間は、要素作業ごとの標準的な作業時間を示す。ここで、標準作業時間は、タクトタイムに応じて予め定められた、要素作業の作業時間である。ここで、要素作業に必要な作業時間を「要素作業時間」と称することがある。なお、標準作業時間は、各要素作業の作業内容(作業種別)に応じて定められてもよい。つまり、標準作業時間は、各要素作業の作業内容(作業種別)に応じて定められてもよい。また、標準作業時間は、例えば、ある作業者が代表してその要素作業を行ったときの作業時間であってもよい。あるいは、標準作業時間は、その要素作業の過去の実績から、管理者等によって定められてもよい。
【0036】
図5は、実施の形態1にかかる各要素作業の標準作業時間を例示する図である。また、
図6は、
図5の例において、工程ごとに要素作業時間を積み上げて各工程の作業時間を示した図である。
図5及び
図6には、
図1に例示した複数の工程のうち、工程A~工程Dの各要素作業の標準作業時間(標準となる要素作業時間)が例示されている。ここで、
図5及び
図6には、各工程が5つの要素作業で構成されている例が示されている。しかしながら、各工程の要素作業の数は、5つでなくてもよい。また、各工程の要素作業の数は、互いに同じである必要はない。なお、
図5及び
図6の例では、タクトタイムが32秒であるとする。また、
図6において、各工程の各要素作業の長さは、その要素作業の要素作業時間(標準作業時間)に対応する。
【0037】
工程Aの1つ目の要素作業A1の標準作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Aの2つ目の要素作業A2の標準作業時間(要素作業時間)は、7秒である。また、工程Aの3つ目の要素作業A3の標準作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Aの4つ目の要素作業A4の標準作業時間(要素作業時間)は、8秒である。また、工程Aの5つ目の要素作業A5の標準作業時間(要素作業時間)は、7秒である。そして、要素作業A1~要素作業A5の標準作業時間の合計、つまり工程Aの作業時間は、タクトタイムに対応する32秒である。
【0038】
工程Bの1つ目の要素作業B1の標準作業時間(要素作業時間)は、2秒である。また、工程Bの2つ目の要素作業B2の標準作業時間(要素作業時間)は、10秒である。また、工程Bの3つ目の要素作業B3の標準作業時間(要素作業時間)は、8秒である。また、工程Bの4つ目の要素作業B4の標準作業時間(要素作業時間)は、6秒である。また、工程Bの5つ目の要素作業B5の標準作業時間(要素作業時間)は、6秒である。そして、要素作業B1~要素作業B5の標準作業時間の合計、つまり工程Bの作業時間は、タクトタイムに対応する32秒である。
【0039】
工程Cの1つ目の要素作業C1の標準作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Cの2つ目の要素作業C2の標準作業時間(要素作業時間)は、8秒である。また、工程Cの3つ目の要素作業C3の標準作業時間(要素作業時間)は、3秒である。また、工程Cの4つ目の要素作業C4の標準作業時間(要素作業時間)は、11秒である。また、工程Cの5つ目の要素作業C5の標準作業時間(要素作業時間)は、5秒である。そして、要素作業C1~要素作業C5の標準作業時間の合計、つまり工程Cの作業時間は、タクトタイムに対応する32秒である。
【0040】
工程Dの1つ目の要素作業D1の標準作業時間(要素作業時間)は、6秒である。また、工程Dの2つ目の要素作業D2の標準作業時間(要素作業時間)は、6秒である。また、工程Dの3つ目の要素作業D3の標準作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Dの4つ目の要素作業D4の標準作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Dの5つ目の要素作業D5の標準作業時間(要素作業時間)は、10秒である。そして、要素作業D1~要素作業D5の標準作業時間の合計、つまり工程Dの作業時間は、タクトタイムに対応する32秒である。なお、他の工程についても同様に、要素作業の標準作業時間(要素作業時間)の合計、つまり各工程の作業時間は、タクトタイムに対応する32秒となる。
【0041】
図4の説明に戻る。前後作業制限情報は、各工程の複数の要素作業それぞれの、作業順序の制限(前後作業制限)を示す。例えば、前後作業制限は、各工程の複数の要素作業それぞれについて、その要素作業の前に実行されていなければならない作業(要素作業又は工程)を示してもよい。また、例えば、前後作業制限は、各工程の複数の要素作業それぞれについて、その要素作業の後に実行されなければならない作業(要素作業又は工程)を示してもよい。例えば、
図5及び
図6の例において、前後作業制限は、要素作業C2の前に、要素作業A1が実行されていなければならないことを示してもよい。なお、前後作業制限情報は、要素作業を実行する順序の制限を示しているので、要素作業に関する制限を示す制限情報であるといえる。
【0042】
図3の説明に戻る。作業者情報格納部104は、既存作業情報である作業者情報を格納する。作業者情報は、各工程における作業を行う作業者に関する情報である。作業者情報は、各作業者の要素作業に関する情報を含む。作業者情報は、予め格納されていてもよい。その場合、作業者情報は、予め、管理者によってインタフェース部18を用いて入力されてもよい。あるいは、作業者情報は、後述するように、各作業者が要素作業を実際に行う様子を撮影することによって、取得されてもよい。
【0043】
図7は、実施の形態1にかかる作業者情報格納部104によって格納される作業者情報を例示する図である。
図7には、作業者#1、作業者#2、作業者#3及び作業者#4に関する作業者情報が例示されている。作業者情報は、作業者ごとに、例えば、作業可能工程と、工程スキルレベルと、実作業時間と、作業種別スキルレベルと、を示すデータを含む。
【0044】
作業可能工程は、対応する作業者が作業を行うことが可能な工程を示す。例えば、
図5及び
図6の例において、作業者#1に関する作業可能工程は、作業者#1が作業を行うことが可能な工程として、「工程A」、「工程C」及び「工程D」を示してもよい。また、作業者#2に関する作業可能工程は、作業者#2が作業を行うことが可能な工程として、「工程B」、「工程C」及び「工程D」を示してもよい。また、作業者#3に関する作業可能工程は、作業者#3が作業を行うことが可能な工程として、「工程A」、「工程B」及び「工程C」を示してもよい。また、作業者#4に関する作業可能工程は、作業者#4が作業を行うことが可能な工程として、「工程A」、「工程C」及び「工程D」を示してもよい。
【0045】
工程スキルレベルは、対応する作業者の、各工程の作業を行うスキルのレベルを示す。なお、工程スキルレベルは、対応する作業者が作業を行うことが可能な工程についてのスキルレベルを示してもよい。工程スキルレベルは、例えば、10段階の数値で示されてもよいし、「レベル高」、「レベル中」及び「レベル低」といったように、3段階で示されてもよい。
【0046】
例えば、上述の例において、作業者#1に関する工程スキルレベルは、「工程A:高」、「工程C:低」及び「工程D:中」を示してもよい。また、作業者#2に関する工程スキルレベルは、「工程B:高」、「工程C:低」及び「工程D:中」を示してもよい。また、作業者#3に関する工程スキルレベルは、「工程A:高」、「工程B:高」及び「工程C:低」を示してもよい。また、作業者#4に関する工程スキルレベルは、「工程A:高」、「工程C:中」及び「工程D:中」を示してもよい。
【0047】
実作業時間は、対応する作業者が各工程の要素作業を実行する際に実際に要する作業時間である。したがって、実作業時間は、要素作業の作業時間であるから、要素作業時間である。一方、上述した標準作業時間がタクトタイムから定まる作業時間であるのに対し、実作業時間は、作業者のスキルレベル等に応じて定まり得る。したがって、例えば、各作業者に関する工程Aの各要素作業の実作業時間は、対応する作業者の工程Aについての工程スキルレベルが高ければ短く、対応する作業者の工程Aについての工程スキルレベルが低ければ長くなり得る。また、実作業時間は、標準作業時間以下であり得る。そして、ある作業者について、ある工程の工程スキルレベルが「低」である場合、その工程の要素作業の実作業時間は、それぞれ、対応する要素作業の標準作業時間と略同じであってもよい。なお、実作業時間は、対応する作業者が作業を行うことが可能な工程の要素作業についての作業時間を示してもよい。
【0048】
作業種別スキルレベルは、対応する作業者の作業種別ごとのスキルレベルを示す。作業種別スキルレベルは、例えば、10段階の数値で示されてもよいし、「レベル高」、「レベル中」及び「レベル低」といったように、3段階で示されてもよい。例えば、作業者#1に関する作業種別スキルレベルは、「締め付け作業:高」、「組付け作業:中」、及び「部品入れ替え作業:中」を示してもよい。他の作業者についても同様である。
【0049】
なお、作業者情報は、例えば、モーションキャプチャによって、要素作業を実行している作業者の動作を捉えることによって、生成されてもよい。その際に、捉えられた動作を示す情報を入力として、例えばニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムにより、作業可能工程、工程スキルレベル、実作業時間、及び作業種別スキルレベルを取得してもよい。また、例えば、上述したように、作業者情報は、作業者が要素作業を実際に行う様子を撮影することによって、生成されてもよい。例えば、各工程の作業場所に設置されたカメラにより、実際に各要素作業を実行している作業者の骨格情報を取得してもよい。そして、骨格情報を分析して得られた要素作業ごとの作業時間、作業姿勢及び作業動線から、各作業者について、作業可能工程、工程スキルレベル、実作業時間、及び作業種別スキルレベルを取得してもよい。
【0050】
追加作業情報格納部106は、追加作業に関する追加作業情報を格納する。追加作業情報は、追加作業時間と、作業種別とを示す。追加作業時間は、追加作業に必要な作業時間である。ここで、追加作業情報格納部106に格納される追加作業で示される追加作業時間は、標準的な作業時間、つまり標準作業時間であってもよい。作業種別は、追加作業に対応する作業(要素作業)の種別を示す。追加作業の作業種別は、例えば、「締め付け作業」、「組付け作業」、及び「部品入れ替え作業」等を含む。なお、追加作業情報において、ある追加作業について、複数の作業種別が対応付けられていてもよい。つまり、追加作業は、複数の要素作業を含んでもよい。
【0051】
追加作業情報は、追加作業が発生したときに生成され得る。例えば、追加作業情報は、追加作業が発生したときに、ある作業者が代表して追加作業を実行することによって、生成されてもよい。具体的には、代表作業者が実際に追加作業を実行し、その追加作業に要した時間を計測することによって、追加作業時間が取得されてもよい。ここで、追加作業時間が標準作業時間である場合、追加作業の標準作業時間は、計測された時間を代表作業者のスキルレベルに応じて補正することによって、取得されてもよい。例えば、代表作業者のスキルレベルが高いほど計測された時間から増加するようにして、追加作業の標準作業時間を取得してもよい。また、追加作業の作業種別は、管理者が作業種別を判断してインタフェース部18によって入力されることによって、取得されてもよい。
【0052】
あるいは、追加作業情報は、作業者情報と同様の方法によって、生成されてもよい。すなわち、追加作業情報は、例えば、モーションキャプチャによって、追加作業を実行している代表作業者の動作を捉えることによって、取得されてもよい。その際に、捉えられた動作を示す情報を入力として、例えばニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムにより、追加作業時間及び作業種別を取得してもよい。また、例えば、追加作業情報は、代表作業者が追加作業を実際に行う様子を撮影することによって、取得されてもよい。例えば、カメラにより、実際に追加作業を実行している代表作業者の骨格情報を取得してもよい。そして、骨格情報を分析することによって、追加作業の作業時間及び作業種別を取得してもよい。
【0053】
取得部120は、情報格納部100に格納される情報を取得する。追加作業情報取得部122は、追加作業情報を取得する。したがって、追加作業情報取得部122を有する取得部120は、追加作業時間を取得する。具体的には、追加作業情報取得部122は、上述した方法によって生成された追加作業情報を、インタフェース部18によって取得する。また、追加作業情報取得部122は、取得された追加作業情報を、追加作業情報格納部106に格納する。そして、追加作業情報取得部122は、後述する算出部140による処理が行われる際に、追加作業情報格納部106に格納された追加作業情報を抽出(取得)する。なお、追加作業情報取得部122は、上述したモーションキャプチャ及び機械学習アルゴリズム等を実行することによって、追加作業情報を生成してもよい。
【0054】
既存作業情報取得部124は、既存作業情報を取得する。つまり、既存作業情報取得部124は、既存作業情報である工程情報及び作業者情報を取得する。したがって、既存作業情報取得部124を有する取得部120は、要素作業時間を取得する。また、既存作業情報取得部124を有する取得部120は、作業者情報及び制限情報を取得する。
【0055】
具体的には、既存作業情報取得部124は、上述した方法によって生成された工程情報及び作業者情報を、インタフェース部18によって取得する。また、既存作業情報取得部124は、取得された工程情報及び作業者情報を、それぞれ、工程情報格納部102及び作業者情報格納部104に格納する。そして、既存作業情報取得部124は、後述する工程決定部130及び算出部140による処理が行われる際に、工程情報格納部102及び作業者情報格納部104にそれぞれ格納された工程情報及び作業者情報を抽出(取得)する。なお、既存作業情報取得部124は、上述したモーションキャプチャ及び機械学習アルゴリズム等を実行することによって、作業者情報を生成してもよい。
【0056】
工程決定部130は、複数の工程のうちの、要素作業が再配置される工程である再配置工程を決定する。算出部140は、追加作業時間及び要素作業時間に基づいて、追加作業を複数の工程の少なくとも1つの工程に追加して工程間で要素作業を再配置して、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出する。その際に、算出部140は、複数の工程それぞれの作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出する。なお、好ましくは、算出部140は、最大作業時間が最小となるように、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出する。
【0057】
判定部150は、算出された組み合わせが適切であるか否かを判定する。具体的には、判定部150は、算出部140によって算出された組み合わせにおける最大作業時間がタクトタイム以下であるか否かを判定する。そして、判定部150は、最大作業時間がタクトタイム以下である場合に、その組み合わせが適切であると判定する。一方、判定部150は、最大作業時間がタクトタイムを超える場合に、その組み合わせが適切でないと判定する。その場合、工程決定部130は、再配置工程を変更する。そして、算出部140は、変更された再配置工程について、上述したように、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出する。詳しくは後述する。
【0058】
表示制御部160は、算出された各工程の要素作業が表示されるように、制御を行う。具体的には、表示制御部160は、インタフェース部18を制御して、工程ごとに、算出された組み合わせの要素作業を提示する。これにより、出力デバイスであるインタフェース部18に、各工程の要素作業が表示(出力)される。
【0059】
ここで、工程決定部130及び算出部140について、具体的に説明する。
工程決定部130は、複数の工程のうち、要素作業が再配置される工程である再配置工程を決定する。つまり、工程決定部130は、再配置がなされる工程の範囲を決定する。ここで、複数の工程が、再配置工程となり得る。そして、再配置工程は、後述する算出部140における処理の対象となる工程となる。つまり、複数の工程の間で、要素作業が再配置される。詳しくは後述する。
【0060】
工程決定部130は、まず、基準工程を決定する。基準工程は、追加作業が配置される工程に対応する。基準工程は、例えば、不具合が発生した工程に対応してもよい。つまり、例えば
図1等の例において工程Cで不具合が発生して追加作業が必要となった場合、工程決定部130は、工程Cを基準工程と決定してもよい。
【0061】
工程決定部130は、次に、基準工程を含む再配置工程を決定する。具体的には、工程決定部130は、基準工程を含む連続する2つ以上の数(Nとする)の工程を、再配置工程と決定する。例えば、工程数Nの初期値を3とすると、工程決定部130は、
図1等の例において工程Cが基準工程である場合に、工程B、工程C及び工程Dを、再配置工程と決定してもよいし、工程A、工程B及び工程Cを、再配置工程と決定してもよい。なお、Nの初期値は、2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0062】
そして、決定された再配置工程について、後述する算出部140によって、要素作業の再配置が行われて、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせが算出される。そして、判定部150によって、算出された組み合わせが適切でないと判定された場合に、工程決定部130は、再配置工程を変更する。この場合、工程決定部130は、まずは、以前の決定処理で決定された再配置工程における工程数(N)を変えないで、基準工程を含む再配置工程を変更する。例えば、上記の例において、工程決定部130は、工程C、工程D及び工程Eを、再配置工程と決定してもよい。
【0063】
そして、基準工程を含む連続するN個の工程からなる再配置工程の全ての取り得るパターンについて、算出部140によって算出された組み合わせが、判定部150によって適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、再配置工程の工程数Nを1つインクリメントする。つまり、工程決定部130は、基準工程を含む連続するN+1個の工程を、再配置工程と決定する。例えば、上記の例において、工程決定部130は、4個の工程A、工程B、工程C及び工程Dを、再配置工程と決定してもよい。以後、判定部150によって組み合わせが適切でないと判定されるごとに、工程決定部130は、同様の処理を繰り返すことによって、再配置工程を変更する。
【0064】
図8は、実施の形態1にかかる工程決定部130の処理を説明するための図である。
図8の例において、工程決定部130は、工程Cを基準工程と決定する。そして、再配置工程の工程数Nの初期値を3とする。この場合、まず、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその前の2つの工程とを含む、N=3個の工程A、工程B及び工程Cを、パターン#1-1の再配置工程と決定する。
【0065】
そして、このパターン#1-1の再配置工程について算出された要素作業の組み合わせが適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその前の1つの工程及び工程Cの後の1つの工程とを含む、N=3個の工程B、工程C及び工程Dを、パターン#1-2の再配置工程と決定する。つまり、工程決定部130は、パターン#1-1の再配置工程から後工程に工程範囲を1つシフトした、3個の工程B、工程C及び工程Dを、パターン#1-2の再配置工程と決定する。
【0066】
そして、このパターン#1-2の再配置工程について算出された要素作業の組み合わせが適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその後の2つの工程とを含む、N=3個の工程C、工程D及び工程Eを、パターン#1-3の再配置工程と決定する。つまり、工程決定部130は、パターン#1-2の再配置工程から後工程に工程範囲を1つシフトした、3個の工程C、工程D及び工程Eを、パターン#1-3の再配置工程と決定する。
【0067】
そして、このパターン#1-3の再配置工程について算出された要素作業の組み合わせが適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、工程数N=3の取り得る全てのパターンの再配置工程について、要素作業の組み合わせが適切とはならなかったと判定する。この場合、工程決定部130は、工程数Nを1つインクリメントして、工程数N=4とする。そして、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその前の2つの工程及び工程Cの後の1つの工程とを含む、N=4個の工程A、工程B、工程C及び工程Dを、パターン#2-1の再配置工程と決定する。
【0068】
そして、このパターン#2-1の再配置工程について算出された要素作業の組み合わせが適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその前の1つの工程及び工程Cの後の2つの工程とを含む、N=4個の工程B、工程C、工程D及び工程Eを、パターン#2-2の再配置工程と決定する。つまり、工程決定部130は、パターン#2-1の再配置工程から後工程に工程範囲を1つシフトした、4個の工程B、工程C、工程D及び工程Eを、パターン#2-2の再配置工程と決定する。なお、工程Aが最初の工程なので、パターン#2-1から前工程に工程範囲をシフトすることはできない。
【0069】
そして、このパターン#2-2の再配置工程について算出された要素作業の組み合わせが適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその後の3つの工程とを含む、N=4個の工程C、工程D、工程E及び工程Fを、パターン#2-3の再配置工程と決定する。つまり、工程決定部130は、パターン#2-2の再配置工程から後工程に工程範囲を1つシフトした、4個の工程C、工程D、工程E及び工程Fを、パターン#2-3の再配置工程と決定する。
【0070】
そして、このパターン#2-3の再配置工程について算出された要素作業の組み合わせが適切でないと判定されたとする。この場合、工程決定部130は、工程数N=4の取り得る全てのパターンの再配置工程について、要素作業の組み合わせが適切とはならなかったと判定する。この場合、工程決定部130は、工程数Nを1つインクリメントして、工程数N=5とする。そして、工程決定部130は、基準工程である工程Cとその前の2つの工程及び工程Cの後の2つの工程とを含む、N=5個の工程A、工程B、工程C、工程D及び工程Eを、パターン#3-1の再配置工程と決定する。以後同様にして、工程決定部130は、判定部150によって組み合わせが適切でないと判定されるごとに、再配置工程を変更する。
【0071】
なお、工程決定部130が再配置工程のパターンを決定する順序は、
図8の例に限られない。例えば、工程数が同じ再配置工程のパターンであれば、これらのパターンの順序は、任意であってもよい。また、
図8の例では、工程決定部130は、再配置工程の工程範囲を後工程に1つずつシフトしているが、再配置工程の工程範囲を前工程に1つずつシフトしてもよい。
【0072】
算出部140(
図3)は、上述したように、追加作業が基準工程に追加された再配置工程において工程間で要素作業を再配置して、各工程の作業時間の最大作業時間がより小さくなるような要素作業の組み合わせを算出する。つまり、算出部140は、再配置工程において工程間で要素作業を再配置して、各工程の作業時間が平滑化されるような要素作業の組み合わせを算出する。以下、算出部140が、各工程の作業時間のうちの最大作業時間が最小となるような要素作業の組み合わせを算出する具体的な方法について、説明する。
【0073】
算出部140は、再配置工程における各工程に割り当てられた作業者の、対応する工程の各要素作業の実作業時間(要素作業時間)から、再配置工程における各工程の作業時間を算出する。具体的には、算出部140は、割り当てられた作業者について対応する工程の各要素作業の実作業時間を合計することにより、各工程の作業時間を算出する。例えば、再配置工程が工程A~工程Cであり、工程Aに作業者#1が割り当てられたとすると、算出部140は、作業者#1の工程Aの各要素作業A1~A5に関する実作業時間を合計することによって、工程Aの作業時間を算出する。なお、算出部140は、各工程に割り当てられた作業者のスキルに合わせて、各工程の各要素作業の標準作業時間を変更することによって、各工程の作業時間を算出してもよい。
【0074】
そして、算出部140は、追加作業が配置された基準工程の作業時間を算出する。具体的には、算出部140は、上記の方法により算出された、追加作業の配置前の基準工程の作業時間に、追加作業時間を加算することによって、追加作業が配置された基準工程の作業時間を算出する。例えば、算出部140は、工程Cが基準工程である場合、工程Cの作業時間に追加作業時間を加算して、追加作業が配置された工程Cの作業時間を算出する。
【0075】
なお、追加作業が配置された基準工程の作業時間がタクトタイム以下である場合、算出部140は、再配置処理を行わなくてもよい。つまり、追加作業が配置されていない各工程の作業時間はタクトタイム以下であるので、追加作業が配置された基準工程の作業時間がタクトタイム以下であれば、各工程の作業時間は、全て、タクトタイム以下となる。したがって、この場合、算出部140は、単に基準工程に追加作業を配置するだけで、要素作業の組み合わせが適切であるとして、処理を終了してもよい。この場合、算出部140が再配置処理を行う前に、判定部150が、追加作業が配置された基準工程の作業時間がタクトタイム以下であるか否かを判定してもよい。
【0076】
一方、各工程の作業時間がタクトタイムよりもかなり短い、つまり、作業時間とタクトタイムとの間に余裕があると、その工程ではアイドル時間が発生してしまう。したがって、工程における実際の作業時間とタクトタイムとの差があまりない方が、生産性は向上することが多い。したがって、既存の生産ラインでは、ある工程に余裕があるようには計画されていないことが多い。したがって、追加作業が基準工程に配置された場合の基準工程の作業時間は、追加作業時間があまりにも小さくない限り、タクトタイムを超える可能性が高い。
【0077】
そして、算出部140は、再配置工程において工程間で要素作業を再配置して、要素作業の組み合わせを算出する。このとき、算出部140は、後述する制約条件(制限)の下で、再配置工程の要素作業の再配置処理(組み合わせの算出)を行う。その際に、算出部140は、制約条件の下で取り得る全ての組み合わせについて、再配置工程の要素作業の再配置処理を行ってもよい。再配置処理は、例えば、工程間で2つ以上の要素作業を互いに入れ替える(交換する)処理と、ある工程の要素作業を他の工程に移動させる(移転する)処理とを含む。
【0078】
ここで、算出部140は、制限情報に示される制約条件に反するような再配置を行わないようにする。つまり、算出部140は、以下のように、制限情報(工程設備情報及び前後作業制限情報)に基づいて、要素作業の組み合わせを算出する。
【0079】
算出部140は、工程設備情報を用いて、各要素作業を実行可能な設備を判定する。そして、算出部140は、再配置処理(組み合わせの算出)において、ある要素作業を実行可能な設備が使用されていない工程に、その要素作業を再配置(移転)しないようにする。例えば、
図5及び
図6の例において、要素作業C5が工程Bで使用されている設備で実行できない場合、算出部140は、要素作業C5を工程Bに移転しないようにし、要素作業C5を工程Bの要素作業と交換しないようにする。
【0080】
また、算出部140は、前後作業制限情報を用いて、各要素作業に前後作業制限が設定されているか否かを判定する。そして、算出部140は、再配置処理(組み合わせの算出)において、前後作業制限が設定されている要素作業については、前後作業制限に反するような要素作業の配置となるように再配置を行わないようにする。例えば、ある要素作業について、その要素作業よりも前に実行されていなければならない要素作業又は工程(前作業)が設定されている場合、算出部140は、その要素作業を、前作業よりも前に再配置(移転)しないようにする。例えば、
図5及び
図6の例において、要素作業C4よりも前に要素作業A4が実行されていなければならない場合、算出部140は、要素作業C4を、前作業である要素作業A4よりも前に再配置しないようにする。
【0081】
また、例えば、ある要素作業について、その要素作業よりも後に実行されなければならない要素作業又は工程(後作業)が設定されている場合、算出部140は、その要素作業を、後作業よりも後に再配置(移転)しないようにする。例えば、
図5及び
図6の例において、要素作業B3よりも後に要素作業C2が実行されなければならない場合、算出部140は、要素作業B3を要素作業C2よりも後に再配置しないようにする。なお、算出部140は、前後作業制限が設定されている要素作業を、再配置の対象としないようにしてもよい。つまり、上記の例では、算出部140は、要素作業C4及び要素作業A4、並びに、要素作業B3及び要素作業C2を、再配置の対象としない、つまり移転しないようにしてもよい。
【0082】
また、制約条件として、再配置される要素作業の数に制限を設けてもよい。つまり、算出部140は、設定された数よりも多い数の要素作業を、再配置の対象としないようにしてもよい。例えば、再配置される要素作業の数の制限が「6」である場合、算出部140は、7個以上の要素作業を再配置(移転)しないようにしてもよい。このような構成により、なるべく要素作業を再配置しないで、適切な組み合わせを算出することが可能となる。ここで、再配置される要素作業の数が多いと、作業者が要素作業を行うにあたり困惑するおそれがある。したがって、なるべく要素作業を再配置しないようにすることにより、作業者の困惑を抑制することが可能となる。
【0083】
そして、算出部140は、1つの組み合わせが算出されると、その組み合わせについて、要素作業が再配置された各工程の作業時間のうちの最大作業時間を算出する。具体的には、算出部140は、要素作業が再配置された各工程について、その工程に含まれる要素作業(及び追加作業)の実作業時間(要素作業時間)の合計を算出することによって、その工程の作業時間を算出する。
【0084】
なお、各工程の作業時間を算出する際に、算出部140は、要素作業が再配置された工程の作業を行う作業者のスキルに合わせて、再配置された要素作業の要素作業時間(実作業時間)を変更してもよい。つまり、算出部140は、要素作業が再配置された工程の作業時間を算出する際に、その工程の作業を行う作業者の、再配置された要素作業に関する実作業時間を加算してもよい。例えば、
図5及び
図6の例において、要素作業A5と要素作業C5とが交換された場合、算出部140は、工程Aの作業時間を算出する際に、工程Aに割り当てられた作業者の、要素作業C5の実作業時間を用いてもよい。同様に、算出部140は、工程Cの作業時間を算出する際に、工程Cに割り当てられた作業者の、要素作業A5の実作業時間を用いてもよい。
【0085】
そして、算出部140は、上述した方法と同様にして、次の組み合わせを算出して、その組み合わせについての最大作業時間を算出する。そして、取り得る全ての組み合わせが算出されると、算出部140は、算出された全ての組み合わせのうち、最大作業時間が最小となる組み合わせを決定する。このようにして、算出部140は、各工程の作業時間のうちの最大作業時間が最小となるような要素作業の組み合わせを算出する。
【0086】
なお、上述した方法では、算出部140は、各工程の作業時間のうちの最大作業時間が最小となるような要素作業の組み合わせを算出するとしたが、このような構成に限られない。算出部140は、ある組み合わせについて、その組み合わせにおける最大作業時間がタクトタイム以下である場合に、組み合わせ算出処理(再配置処理)を終了してもよい。そして、算出部140は、その、最大作業時間がタクトタイム以下である組み合わせを、表示制御部160によって表示される要素作業の組み合わせと決定してもよい。この場合、判定部150は、処理を行わなくてもよい。
【0087】
また、算出部140は、ある組み合わせについて、その組み合わせにおける最大作業時間と各工程の作業時間の平均値との差が予め定められた閾値以下である場合に、組み合わせ算出処理(再配置処理)を終了してもよい。そして、算出部140は、その、最大作業時間と平均値との差が閾値以下である組み合わせを、判定部150による判定対象の組み合わせと決定してもよい。この場合、閾値は、例えば、数秒(1~2秒等)であってもよい。
【0088】
上述したように、最大作業時間が最小となるような要素作業の組み合わせを算出するためには、制約条件の下で算出可能な全ての組み合わせを算出する必要がある。その場合、全ての組み合わせを算出するために、多くの時間及び多くの処理負荷を要する可能性がある。これに対し、最大作業時間がタクトタイム以下である組み合わせ、又は、最大作業時間と平均値との差が閾値以下である組み合わせが算出された時点で処理を終了することによって、処理負荷を低減することが可能となる。すなわち、なるべく少ない再配置回数で、適切な組み合わせを算出することが可能となる。一方、最大作業時間が最小となるような要素作業の組み合わせを算出することによって、最適な組み合わせが算出され得る。すなわち、各工程の作業時間がより平滑化された組み合わせが算出され得る。
【0089】
なお、算出部140は、要素作業の組み合わせを算出する際に、組み合わせ最適化を実現可能な人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いてもよい。例えば、算出部140は、強化学習アルゴリズムを用いて、要素作業の組み合わせを算出してもよい。また、算出部140は、遺伝的アルゴリズム又は貪欲法等のアルゴリズムを用いて、要素作業の組み合わせを算出してもよい。
【0090】
なお、再配置工程の各工程の作業時間の合計が、タクトタイムを再配置工程の工程数Nで乗算して得られた値(タクトタイム×N)を超える場合、どのような要素作業の組み合わせであっても、最大作業時間がタクトタイム以下となることはない。したがって、この場合、算出部140は、再配置処理を行わないで、工程決定部130は、工程を変更してもよい。
【0091】
図9は、実施の形態1にかかる工程管理システム1によって実行される工程管理方法を示すフローチャートである。取得部120は、追加作業情報及び既存作業情報を取得する。つまり、追加作業情報取得部122は、追加作業の作業時間及び作業種別を取得する(ステップS102)。また、既存作業情報取得部124は、工程情報及び作業者情報を取得する(ステップS104)。
【0092】
工程決定部130は、上述したように、再配置工程を決定する(ステップS106)。算出部140は、上述したように、追加作業時間及び要素作業時間に基づいて、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出する(ステップS108)。その際に、上述したように、算出部140は、各工程の作業時間のうちの最大作業時間が最小となるように、要素作業の組み合わせを算出する。つまり、算出部140は、各工程の作業時間のうちの最大作業時間が最小となるように、要素作業の組み合わせの算出を繰り返す。
【0093】
判定部150は、上述したように、算出された組み合わせについての最大作業時間がタクトタイム以下であるか否かを判定する(ステップS110)。最大作業時間がタクトタイム以下である場合(S110のYES)、表示制御部160は、S108で算出された組み合わせに関する各工程の要素作業を表示するように、制御を行う(ステップS112)。一方、最大作業時間がタクトタイム以下でない、つまり最大作業時間がタクトタイムを超える場合(S110のNO)、処理フローはS106に戻る。そして、工程決定部130は、上述したように、再配置工程を変更する、つまり、他の再配置工程を決定する(S106)。そして、算出部140は、変更された再配置工程について、追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出する(S108)。そして、判定部150は、再度、算出された組み合わせについての最大作業時間がタクトタイム以下であるか否かを判定する(S110)。以下、同様の処理が繰り返される。
【0094】
<具体例>
次に、具体例を用いて、実施の形態1にかかる工程管理システム1の処理について説明する。
図10~
図14は、実施の形態1にかかる工程管理システム1が、追加作業が発生した場合に再配置処理を行う方法を説明するための図である。
図10~
図14は、
図5及び
図6の例における生産ラインにおいて、工程Cに追加作業が発生した場合の例について示している。この場合、工程決定部130は、工程Cを基準工程と決定する。
【0095】
図10は、各工程に作業者が割り当てられた場合の各要素作業の実作業時間を例示する図である。また、
図11は、
図10の例において、工程ごとに要素作業時間を積み上げて各工程の作業時間を示した図である。なお、
図5及び
図6の例と同様に、タクトタイムは32秒である。また、
図6の場合と同様に、
図11において、各工程の各要素作業の長さは、その要素作業の要素作業時間(実作業時間)に対応する。
【0096】
図11に示すように、工程Aには、工程Aの工程スキルレベルが「高」である作業者#1が割り当てられる。また、工程Bには、工程Bの工程スキルレベルが「高」である作業者#2が割り当てられる。また、工程Cには、工程Cの工程スキルレベルが「低」である作業者#3が割り当てられる。また、工程Dには、工程Dの工程スキルレベルが「中」である作業者#4が割り当てられる。
【0097】
図10に示すように、作業者#1が割り当てられた工程Aの要素作業A1の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Aの要素作業A2の実作業時間(要素作業時間)は、6秒である。また、工程Aの要素作業A3の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Aの要素作業A4の実作業時間(要素作業時間)は、6秒である。また、工程Aの要素作業A5の実作業時間(要素作業時間)は、7秒である。そして、要素作業A1~要素作業A5の実作業時間の合計、つまり工程Aの作業時間は、29秒である。つまり、工程Aの作業時間は、タクトタイム(32秒)よりも3秒短い。工程Aには、工程Aの工程スキルレベルが「高」である作業者#1が割り当てられたので、工程Aの作業時間は、タクトタイムよりも短くなっている。
【0098】
作業者#2が割り当てられた工程Bの要素作業B1の実作業時間(要素作業時間)は、2秒である。また、工程Bの要素作業B2の実作業時間(要素作業時間)は、8秒である。また、工程Bの要素作業B3の実作業時間(要素作業時間)は、8秒である。また、工程Bの要素作業B4の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Bの要素作業B5の実作業時間(要素作業時間)は、6秒である。そして、要素作業B1~要素作業B5の実作業時間の合計、つまり工程Bの作業時間は、29秒である。つまり、工程Bの作業時間は、タクトタイム(32秒)よりも3秒短い。工程Bには、工程Bの工程スキルレベルが「高」である作業者#2が割り当てられたので、工程Bの作業時間は、タクトタイムよりも短くなっている。
【0099】
作業者#3が割り当てられた工程Cの要素作業C1の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Cの要素作業C2の実作業時間(要素作業時間)は、8秒である。また、工程Cの要素作業C3の実作業時間(要素作業時間)は、3秒である。また、工程Cの要素作業C4の実作業時間(要素作業時間)は、11秒である。また、工程Cの要素作業C5の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、追加作業時間が5秒である追加作業が、工程Cに配置されている。
【0100】
なお、この追加作業時間は、実作業時間であってもよい。その場合、追加作業時間は、追加作業の標準作業時間と、追加作業の作業種別と、追加作業を実行する作業者の作業種別スキルレベルとに応じて決定されてもよい。例えば、追加作業を行う作業者の、追加作業の作業種別に対応する作業種別スキルレベルが「低」であれば、追加作業時間(実作業時間)は、追加作業の標準作業時間と同じであってもよい。また、追加作業を行う作業者の、追加作業の作業種別に対応する作業種別スキルレベルが「中」であれば、追加作業時間(実作業時間)は、追加作業の標準作業時間よりも少し(例えば1秒)短くてもよい。また、追加作業を行う作業者の、追加作業の作業種別に対応する作業種別スキルレベルが「高」であれば、追加作業時間(実作業時間)は、追加作業の標準作業時間よりもさらに(例えば3秒)短くてもよい。
【0101】
そして、要素作業C1~要素作業C5の実作業時間及び追加作業時間の合計、つまり工程Cの作業時間は、37秒である。つまり、工程Cの作業時間は、タクトタイム(32秒)よりも5秒長い。工程Cには、工程Cの工程スキルレベルが「低」である作業者#3が割り当てられたので、追加作業時間を除く工程Cの作業時間は、タクトタイムと同じである。そして、工程Cにはさらに追加作業が配置されたので、工程Cの作業時間は、タクトタイムを超えてしまっている。
【0102】
作業者#4が割り当てられた工程Dの要素作業D1の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Dの要素作業D2の実作業時間(要素作業時間)は、6秒である。また、工程Dの要素作業D3の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Dの要素作業D4の実作業時間(要素作業時間)は、5秒である。また、工程Dの要素作業D5の実作業時間(要素作業時間)は、10秒である。そして、要素作業D1~要素作業D5の実作業時間の合計、つまり工程Dの作業時間は、31秒である。つまり、工程Dの作業時間は、タクトタイム(32秒)よりも1秒短い。工程Dには、工程Dの工程スキルレベルが「中」である作業者#4が割り当てられたので、工程Dの作業時間は、タクトタイムよりも少し短くなっている。
【0103】
この例において、基準工程(工程C)を含む再配置工程の工程数をN=2とする。この場合、再配置工程を工程B及び工程Cとすると、再配置工程の各工程の作業時間の合計は、29+37=66となり、タクトタイムを再配置工程の工程数Nで乗算した値(32×2=64)を超える。また、再配置工程を工程C及び工程Dとすると、再配置工程の各工程の作業時間の合計は、37+31=68となり、タクトタイムを再配置工程の工程数Nで乗算した値(32×2=64)を超える。したがって、再配置工程の工程数がN=2の場合、どの要素作業の組み合わせでも最大作業時間がタクトタイム以下となることはないので、適切な組み合わせは算出されない。
【0104】
したがって、工程決定部130は、再配置工程の工程数をN=3とする。そして、工程決定部130は、
図8に例示した、パターン#1-1に対応する工程A、工程B及び工程Cを、再配置工程と決定する(S106)。なお、この場合、再配置工程の各工程の作業時間の合計は、29+29+37=95となり、タクトタイムを再配置工程の工程数Nで乗算した値(32×3=96)以下である。したがって、この場合、要素作業の組み合わせによっては再配置工程の最大作業時間がタクトタイム以下となる可能性がある。
【0105】
図12~
図14は、
図10及び
図11の例における要素作業の再配置を例示する図である。
図12に例示するように、算出部140は、再配置処理において、再配置工程である工程Cと工程Bとの間で、要素作業C1を要素作業B1と交換する。また、算出部140は、再配置処理において、再配置工程である工程Cと工程Aとの間で、要素作業C3を、工程Aの先頭に移動する。これにより、
図13に例示するように、要素作業C1が工程Bに再配置され、要素作業C3が工程Aに再配置され、要素作業B1が工程Cに再配置される。このように、算出部140は、再配置工程である工程A、工程B及び工程Cの間で、要素作業を再配置する。なお、工程Aにおいて、要素作業C3は、前後作業制限を満たす限り、任意のタイミングで実行されてもよい。つまり、要素作業C3は、工程Aの最初に実行されてもよいし、工程Aの途中(例えば要素作業A2の後など)で実行されてもよいし、工程Aの最後に実行されてもよい。
【0106】
ここで、
図14に例示するように、再配置後の工程Aについては、実作業時間が3秒である要素作業C3が追加作業として追加されている。したがって、再配置後の工程Aの作業時間は、再配置前から3秒増加して、32秒となる。なお、工程Aに割り当てられた作業者#1の工程Cに関する工程スキルレベルは、工程Cに割り当てられた作業者#3の工程Cに関する工程スキルレベルと同じ「低」であるとする。したがって、要素作業C3の実作業時間は、変更されない。一方、作業者#1の工程Cに関する工程スキルレベルが「高」又は「中」である場合、工程Aに再配置された要素作業C3の実作業時間を、3秒から短くしてもよい。
【0107】
また、再配置後の工程Bについては、実作業時間が2秒である要素作業B1が、実作業時間が5秒である要素作業C1に置き換えられている。したがって、再配置後の工程Bの作業時間は、再配置前から3秒増加して、32秒となる。なお、工程Bに割り当てられた作業者#2の工程Cに関する工程スキルレベルは、工程Cに割り当てられた作業者#3の工程Cに関する工程スキルレベルと同じ「低」であるとする。したがって、要素作業C1の実作業時間は、変更されない。一方、作業者#2の工程Cに関する工程スキルレベルが「高」又は「中」である場合、工程Bに再配置された要素作業C1の実作業時間を、3秒から短くしてもよい。
【0108】
また、再配置後の工程Cについては、実作業時間が5秒である要素作業C1が、実作業時間が2秒である要素作業B1に置き換えられている。さらに、実作業時間が3秒である要素作業C3が、工程Cからなくなっている。したがって、再配置後の工程Cの作業時間は、再配置前から6秒減少して、31秒となる。なお、工程Cに割り当てられた作業者#3の工程Bに関する工程スキルレベルは、工程Bに割り当てられた作業者#2の工程Cに関する工程スキルレベルと同じ「高」であるとする。したがって、要素作業B1の実作業時間は、変更されない。一方、作業者#3の工程Bに関する工程スキルレベルが「低」又は「中」である場合、工程Cに再配置された要素作業B1の実作業時間を、2秒から長くしてもよい。
【0109】
算出部140は、
図12~
図14の例における要素作業の組み合わせについて、各工程の作業時間のうちの最大作業時間が、32秒であると判定する。そして、算出部140は、他の組み合わせにおける最大作業時間と比較して、この例における最大作業時間(32秒)が、最小であると判定する。したがって、算出部140は、
図12~
図14に例示するような、最大作業時間が最小となるような、要素作業の組み合わせを算出する(S108)。
【0110】
そして、判定部150は、最大作業時間がタクトタイム以下であるか否かを判定する(S110)。ここで、最大作業時間は32秒であるので、判定部150は、最大作業時間がタクトタイム以下であると判定する(S110のYES)。したがって、表示制御部160は、
図13に例示したような、各工程の要素作業を、インタフェース部18に表示させる(S112)。
【0111】
上述したように、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、追加作業時間及び要素作業時間に基づいて、追加作業を工程の少なくとも1つに追加して工程間で要素作業を再配置するように構成されている。そして、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、複数の工程それぞれの作業時間のうちの最大作業時間がより小さくなるように、複数の工程についての追加作業及び複数の要素作業の組み合わせを算出するように構成されている。このような構成により、要素作業及び追加作業が再配置された各工程の作業時間が、より平滑化されるようになる。そして、各工程の作業時間がより平滑化されることによって、生産ラインの生産性が良好となり得る。したがって、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、追加作業が発生した場合であっても、生産ラインの生産性を適正化することが可能となる。
【0112】
また、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、要素作業が再配置される再配置工程を決定するように構成されている。このような構成により、要素作業が再配置される工程を限定することができる。ここで、要素作業が再配置される工程が限定されないと、ある要素作業が、作業効率の悪い工程に再配置されてしまう可能性がある。例えば、ある要素作業が、元々配置されていた工程から離れた工程に再配置されると、その要素作業によるワークの移動が煩雑となる可能性がある。これに対し、要素作業が再配置される工程を限定することにより、作業効率の悪い工程に要素作業が再配置されることを、抑制することができる。例えば、上述した実施の形態1のように、基準工程を含む連続する2つ以上の工程を再配置工程とすることによって、ある要素作業が、元々配置されていた工程から離れた工程に再配置されることを、抑制することができる。したがって、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、要素作業の再配置を適切に行うことが可能となる。
【0113】
また、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、最大作業時間が予め定められた時間(タクトタイム等)を超える場合に、再配置工程を変更し、変更された再配置工程について、要素作業の組み合わせを算出するように構成されている。このような構成により、要素作業が再配置される再配置工程を限定しつつ、最大作業時間が予め定められた時間以下となるような、要素作業の組み合わせを算出することが可能となる。これにより、追加作業が生産ラインに追加された場合であっても、生産計画に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0114】
また、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、作業者情報に基づいて組み合わせを算出するように構成されている。このような構成により、作業者のスキルに応じた要素作業の組み合わせが算出されるので、要素作業の組み合わせの算出をより適切に行うことが可能となる。
【0115】
また、実施の形態1にかかる工程管理システム1は、制限情報(前後作業制限情報等)に基づいて組み合わせを算出するように構成されている。このような構成により、要素作業の制限に応じた要素作業の組み合わせが算出されるので、要素作業の組み合わせの算出をより適切に行うことが可能となる。
【0116】
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述したフローチャートの各ステップの順序は、適宜、変更可能である。また、フローチャートの各ステップの1つ以上は、省略されてもよい。例えば、
図9に示したフローチャートにおいて、S102の処理及びS104の処理の順序は、逆であってもよい。また、S112の処理は、省略されてもよい。
【0117】
また、
図9に示したフローチャートにおいて、S106及びS110の処理は、省略されてもよい。つまり、本実施の形態にかかる工程管理システム1は、再配置工程が決定されていない状態で、最大作業時間が小さくなるように要素作業の組み合わせを算出してもよい。一方、S106及びS110の処理を行うことによって、上述したように、要素作業の再配置を適切に行うことが可能となり、生産計画に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0118】
また、上述した実施の形態では、追加作業時間及び追加作業の作業種別を、代表作業者が追加作業を行うことによって取得するとしているが、このような構成に限られない。追加作業時間及び追加作業の作業種別を推定してもよい。例えば、追加作業に近い既存の要素作業に関する情報を用いて、追加作業時間及び追加作業の作業種別を推定してもよい。
【0119】
また、上述した実施の形態では、追加作業が配置される基準工程は1つであるとしたが、このような構成に限られない。追加作業の内容によっては、追加作業は、複数の工程に追加されてもよい。つまり、基準工程は、複数であってもよい。言い換えると、基準工程は、少なくとも1つであってもよい。
【0120】
また、上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0121】
1 工程管理システム
50 生産ライン
100 情報格納部
102 工程情報格納部
104 作業者情報格納部
106 追加作業情報格納部
120 取得部
122 追加作業情報取得部
124 既存作業情報取得部
130 工程決定部
140 算出部
150 判定部
160 表示制御部