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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240814BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/00 310
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021055925
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152956
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 良樹
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-064819(JP,A)
【文献】特開平07-295450(JP,A)
【文献】特開平06-278894(JP,A)
【文献】特開2005-242121(JP,A)
【文献】特開2007-156173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なベルト部材と、
前記ベルト部材の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材を張架する張架部と、
前記直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング部と、
を備え
前記張架部は、第1及び第2張架部を有し、前記第1及び第2張架部は、前記ベルト部材の前記直交方向への移動を規制するよう、前記直交方向に対する傾斜方向が互いに異なる側を向くように前記ベルト部材の内側に配置されている、
画像形成装置。
【請求項2】
前記第1及び第2張架部は、前記直交方向を中心として前記傾斜方向が互いに線対称となるように配置されている、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項3】
回転可能なベルト部材と、
前記ベルト部材の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材を張架する張架部と、
前記直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング部と、
を備え、
前記張架部は、前記直交方向に対する傾斜方向が同じ側を向くように前記ベルト部材の内側及び外側にそれぞれ配置された第1及び第2張架部を有する、
像形成装置。
【請求項4】
前記第1及び第2張架部は、前記傾斜方向が平行となるように配置されている、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記クリーニング部の傾斜方向は、前記第1及び第2張架部のうちの1つの傾斜方向と平行である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記クリーニング部は、前記ベルト部材を介して、前記張架部に対向する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記張架部は、回転せずに前記ベルト部材を張架する、
請求項1からのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ベルト部材は、前記直交方向の移動を規制する規制部を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記直交方向に対する前記張架部の傾斜角は、5°以上、45°以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、用紙などの記録媒体に画像形成処理を行う画像形成部を有している。画像形成部には、トナー像が形成される像担持体として、ベルト状のベルト部材を用いているものがあり、ベルト部材の表面にトナー像が形成される。トナー像が形成されたベルト部材を用いて、用紙などの記録媒体へトナー像を転写することにより、画像形成処理を行った後、ベルト部材の表面には不要となるトナーが残ることがある。そのため、ベルト部材の表面にクリーニングブレードを接触させて、ベルト部材の表面に残ったトナーを除去して、ベルト部材をクリーニングするようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術には、ローラー形状の複数の支持部材に巻回されるベルト部材と、1つの支持部材に対してベルト部材を間にして押し当てられるクリーニングブレードとを有する画像形成装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-017316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像形成装置においては、画像形成部の交換周期を長くすることで、画像形成装置を停止させるダウンタイムを減らすことが望まれている。画像形成部の交換周期を長くするためには、画像形成部の構成部品の摩耗を低減することが重要である。画像形成部の構成部品が摩耗すると、画像形成部により形成される画像の品質が低下して、交換する必要が生じるからである。
【0006】
例えば、ベルト部材(例えば、中間転写ベルト)に接触するクリーニングブレードが摩耗すると、クリーニング不良が発生し、ベルト部材にトナー付着を起こすフィルミングという現象が起こり、形成される画像にノイズが生じて、画像の品質が低下する。そのため、画像形成部の交換周期を長くするためには、クリーニングブレードの摩耗を低減することが必要である。
【0007】
なお、特許文献1に記載の技術では、クリーニングブレードが押し当てられる支持部材の両端部に、端部に向かって細くなるテーパー部を設け、支持部材に対するクリーニングブレードの接触圧を、支持部材の中央部より両端部の方が小さくなるようにしている。しかしながら、この技術では、クリーニングブレードの両端部の捲れを防止するに過ぎない。
【0008】
本発明の目的は、クリーニング部の摩耗を低減可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、
回転可能なベルト部材と、
前記ベルト部材の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材を張架する張架部と、
前記直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング部と、
を備え
前記張架部は、第1及び第2張架部を有し、前記第1及び第2張架部は、前記ベルト部材の前記直交方向への移動を規制するよう、前記直交方向に対する傾斜方向が互いに異なる側を向くように前記ベルト部材の内側に配置されている
また、本発明に係る画像形成装置は、
回転可能なベルト部材と、
前記ベルト部材の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材を張架する張架部と、
前記直交方向に対して傾斜して配置され、前記ベルト部材上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング部と、
を備え、
前記張架部は、前記直交方向に対する傾斜方向が同じ側を向くように前記ベルト部材の内側及び外側にそれぞれ配置された第1及び第2張架部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリーニング部の摩耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2図1に示した画像形成装置の制御系の主要部を示す図である。
図3A図1に示した画像形成装置の中間転写ユニットを示す図であって、画像形成装置の正面側から見た図である。
図3B図1に示した画像形成装置の中間転写ユニットを示す図であって、画像形成装置の側面側から見た図である。
図4A】中間転写ユニットの変形例を示す図であって、画像形成装置の正面側から見た図である。
図4B】中間転写ユニットの変形例を示す図であって、画像形成装置の側面側から見た図である。
図5A】比較例1~3において、クリーニング部の長手方向における当接圧を示すグラフである。
図5B】実施例1と比較例2とにおいて、クリーニング部の長手方向における当接圧を示すグラフである。
図6A】実施例1~6と比較例1~3とにおいて、クリーニング不良、フィルミングを評価した結果を説明する図である。
図6B図6Aにおける摩耗幅を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置100の全体構成を概略的に示す図である。図2は、図1に示した画像形成装置100の制御系の主要部を示す図である。なお、下記の画像形成装置100の構成や仕様などは、本実施の形態の一例であり、以下の説明に限定されず、同様の周知の技術を任意に選択して、適宜に変更可能である。
【0014】
画像形成装置100は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。即ち、画像形成装置100は、感光体上に形成されたCMYKの各色トナー像を中間転写体に一次転写し、中間転写体上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙(記録媒体)に二次転写することにより、画像を形成する。なお、CMYKは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のことである。
【0015】
また、画像形成装置100には、CMYKの4色に対応する感光体を中間転写体の走行方向に直列配置し、中間転写体に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0016】
画像形成装置100は、図1に示すように、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60などを備える。
【0017】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11及び原稿画像走査装置12(スキャナー)などを備える。
【0018】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿の画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0019】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサーに結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0020】
操作表示部20は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部70(図2を参照)から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況などの表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキーなどの各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部70に出力する。
【0021】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じた画像処理を行う回路などを備える。画像処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0022】
画像形成部40は、画像処理部30からの画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42などを備える。
【0023】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。そのため、図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号を付し、他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号を省略する。
【0024】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、ドラムクリーニングユニット415などを備える。
【0025】
露光装置411は、例えば、半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。レーザー光の照射により感光体ドラム413の電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されると、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)が中和される。その結果、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0026】
現像装置412は、例えば、現像スリーブなどを有する二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、現像スリーブから感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより、静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0027】
感光体ドラム413は、例えば、アルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)などを備える。感光体ドラム413は、導電性円筒体の周面にアンダーコート層、電荷発生層、電荷輸送層を順次積層することで構成された光導電性を有する感光体である。感光体ドラム413は、例えば、負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。感光体ドラム413は、その駆動モーター(図示省略)に供給される駆動電流を制御部70(図2を参照)が制御することにより、一定の周速度(線速度)で回転される。
【0028】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
【0029】
ドラムクリーニングユニット415は、感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをドラムクリーニングブレードによりクリーニングする。なお、ドラムクリーニングユニット415は、感光体ドラム413に対するトナーの付着力を低減させる潤滑剤(滑剤)を、感光体ドラム413上に供給する滑剤供給装置を備えていてもよい。
【0030】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、支持ローラー423a~423c、二次転写ローラー424、バックアップローラー425、ベルトクリーニング装置426などを備える。なお、図1では、Y成分用の一次転写ローラー422にのみ符号を付しているが、M成分、C成分、K成分用の一次転写ローラーについては、図示及び説明の便宜のため、符号を省略する。
【0031】
また、本実施の形態において、中間転写ユニット42は、傾斜ローラー427、428を備えるが、傾斜ローラー427、428については、図3A及び図3Bを参照して後述する。
【0032】
中間転写ベルト421は、外周面の表面にトナー像を担持可能な無端状ベルトで構成され、支持ローラー423a~423cなどにループ状に張架される。支持ローラー423a~423cのうちの少なくとも1つは、中間転写ベルト421を駆動する駆動ローラーで構成され、その他は、従動する従動ローラーや中間転写ベルト421にテンション(張力)を付与するテンションローラーで構成される。後述する制御部70(図2を参照)の制御信号に基づいて、駆動ローラーが駆動されて、回転することにより、中間転写ベルト421はベルト走行方向Aに一定速度で走行する。
【0033】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内側(内周面側)に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、一次転写ニップが形成され、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像が転写される。
【0034】
ベルト走行方向Aにおいて、一次転写ローラー422よりも下流側には、二次転写ローラー424と対をなすバックアップローラー425が配置される。二次転写ローラー424は、バックアップローラー425に対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー425に圧接されることにより、二次転写ニップが形成され、中間転写ベルト421から用紙へトナー像を転写する。トナー像が転写された用紙は、定着部60に向けて搬送される。なお、二次転写ローラー424に代えて、複数の支持ローラーに二次転写ベルトがループ状に張架されたベルト式の二次転写ユニットを採用してもよい。
【0035】
ベルト走行方向Aにおいて、バックアップローラー425よりも下流側には、ベルトクリーニング装置426が配置される。ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の外周面表面に摺接するベルトクリーニングブレード426a(後述する図3Aなどを参照)を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0036】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、搬送経路部53などを備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対などの複数の搬送ローラー対を有する。
【0037】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙は、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対が配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙の傾きが補正されると共に搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40、定着部60を経て画像形成された用紙は、排紙部52により機外に排紙される。
【0038】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着ローラー61、加圧ローラー62などを備える。定着ローラー61及び加圧ローラー62は、それらの間で用紙を挟持して搬送する定着ニップを形成している。なお、定着ローラー61に代えて、複数の支持ローラーに定着ベルトがループ状に張架されたベルト式の定着ユニットを採用してもよい。
【0039】
画像形成装置100は、図2に示すように、制御部70を備える。
【0040】
制御部70は、コンピューターとして機能し、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72及びRAM(Random Access Memory)73などを備えている。CPU71は、ROM72から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM73に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置100の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部82に格納されているLUT(Look Up Table)などの各種データが参照される。記憶部82は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(所謂、フラッシュメモリ)又はハードディスクドライブで構成される。
【0041】
制御部70は、通信部81を介して、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)などの通信ネットワークに接続された外部の装置(例えば、パーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部70は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙に画像を形成する。通信部81は、例えば、LANカードなどの通信制御カードで構成される。
【0042】
制御部70には、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60が、それぞれ接続されている。これらは、制御部70の指示に基づいて所定の処理を実行する。
【0043】
ところで、画像形成装置においては、画像形成部の交換周期を長くすることで、画像形成装置を停止させるダウンタイムを減らすことが望まれている。画像形成部の交換周期を長くするためには、画像形成部の構成部品の摩耗を低減することが重要である。画像形成部の交換周期を長くするためには、例えば、ベルト部材(例えば、中間転写ベルト)に接触するベルトクリーニングブレードの摩耗を低減することが必要である。
【0044】
そこで、本実施の形態において、画像形成装置100は、以下に説明する構成の中間転写ベルト421、複数の傾斜ローラー427、428、ベルトクリーニングブレード426aを備える。
【0045】
中間転写ベルト421(本発明の「ベルト部材」に対応)は、回転可能である。傾斜ローラー427及び傾斜ローラー、428(本発明の「第1及び第2張架部」に対応)は、中間転写ベルト421の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、中間転写ベルト421を張架する。ベルトクリーニングブレード426a(本発明の「クリーニング部」に対応)は、中間転写ベルト421の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、中間転写ベルト421上に残留する転写残トナーをクリーニングする。
【0046】
このような構成の中間転写ベルト421、傾斜ローラー427、428、ベルトクリーニングブレード426aを有する中間転写ユニット42を、図3A及び図3Bを参照して説明する。図3Aは、画像形成装置100の中間転写ユニット42を示す図であって、画像形成装置100の正面側から見た図である。また、図3Bは、画像形成装置100の中間転写ユニット42を示す図であって、画像形成装置100の側面側から見た図である。
【0047】
図3A及び図3Bに示す中間転写ユニット42において、中間転写ベルト421、支持ローラー423a~423c、バックアップローラー425の構成は、上述した通りである。なお、図3A及び図3Bにおいては、図示を省略しているが、一次転写ローラー422、二次転写ローラー424の構成も上述した通りである。
【0048】
中間転写ベルト421は、トナー像が転写されるものである。中間転写ベルト421は、基材を構成する材料として、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等)、ポリカーボネート、ポリウレタンなどを使用可能である。また、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、シクロオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンなども使用可能である。また、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトンなども使用可能である。その中でも、耐熱性の観点から、ポリイミド又はポリアミドイミドが好ましく、特に、ポリイミドであることが好ましい。
【0049】
中間転写ベルト421は、支持ローラー423a~423c、バックアップローラー425に加えて、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428にも張架されて、一定のベルトテンションが付与されている。支持ローラー423a~423c、バックアップローラー425、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、ベルト走行方向Aにおいて、この順で配置されている。なお、ベルト走行方向Aは、本発明の「回転方向」に対応する。
【0050】
上述したように、支持ローラー423a~423cのうちの少なくとも1つは駆動ローラーであり、その他は従動ローラー、テンションローラーである。本実施の形態では、支持ローラー423aを駆動ローラーとすることが望ましい。
【0051】
ベルトクリーニングブレード426aと傾斜ローラー428との間の中間転写ベルト421の撓みが大きくなると、ベルトクリーニングブレード426aの当接圧が長手方向で不均一になり、クリーニング不良が発生しやすくなる。つまり、ベルトクリーニングブレード426aと傾斜ローラー428との間の中間転写ベルト421の撓みが小さくなるようにすることが必要である。ここで、駆動ローラーの上流側では、その駆動力が中間転写ベルト421にかかることによって、中間転写ベルト421に発生するテンションが高くなる。そのため、ベルト走行方向Aにおいて、駆動ローラーである支持ローラー423aの上流側に、ベルトクリーニングブレード426aと傾斜ローラー428とを配置すれば、上述した当接圧の不均一によるクリーニング不良を抑制することができる。
【0052】
また、中間転写ベルト421では、駆動ローラーの下流側が最もたるみやすくなる。このことから、駆動ローラーである支持ローラー423aの下流側である支持ローラー423bを、中間転写ベルト421にテンションを付与するテンションローラーとすることが望ましい。支持ローラー423bをテンションローラーとすることにより、中間転写ベルト421の撓みを抑制することができる。テンションローラーは、中間転写ベルト421が張る方向にバネで引っ張られている。
【0053】
支持ローラー423a~423c及びバックアップローラー425は、中間転写ベルト421の回転方向(ベルト走行方向A)に直交する直交方向Dに配置されている。例えば、支持ローラー423a~423c及びバックアップローラー425の軸方向が、直交方向Dに配置されている。
【0054】
一方、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。例えば、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428の軸方向が、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。
【0055】
加えて、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、中間転写ベルト421の直交方向Dへの移動を規制するように配置されている。具体的には、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dに対する傾斜方向が互いに異なる側を向くように、中間転写ベルト421の内側に配置されている。傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dを中心として、傾斜方向が互いに線対称となるように配置されていることが望ましい。また、詳細は後述の図6Aを参照して説明するが、直交方向Dに対する傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428の傾斜角は、5°以上、45°以下であることが望ましい。
【0056】
このような傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428の配置の一例について、図3A及び図3Bを参照して説明する。なお、図3Bにおいて、符号Cは、中間転写ベルト421の幅方向における中心線を示す。
【0057】
傾斜ローラー428は、直交方向Dに対して、装置奥側より装置正面側が高くなるように傾斜して、言い換えると、傾斜ローラー428の傾斜方向が装置奥側を向くように、中間転写ベルト421の内側に配置されている。この場合、傾斜ローラー428に張架される中間転写ベルト421には、傾斜ローラー428からの駆動力F1が作用する。駆動力F1は、傾斜ローラー428の軸方向に垂直な方向の力であり、直交方向Dに沿う方向の分力Fx1と直交方向Dに垂直な方向の分力Fy1とを有する。
【0058】
一方、傾斜ローラー427は、直交方向Dに対して、装置正面側より装置奥側が高くなるように傾斜して、言い換えると、傾斜ローラー427の傾斜方向が装置正面側を向くように、中間転写ベルト421の内側に配置されている。この場合、傾斜ローラー427に張架される中間転写ベルト421には、傾斜ローラー427からの駆動力F2が作用する。駆動力F2は、傾斜ローラー427の軸方向に垂直な方向の力であり、直交方向Dに沿う方向の分力Fx2と直交方向Dに垂直な方向の分力Fy2とを有する。
【0059】
傾斜ローラー428においては、装置奥側から装置正面側に向かう分力Fx1が中間転写ベルト421に作用する。そのため、傾斜ローラー428のみを配置する場合には、中間転写ベルト421が装置正面側に片寄る可能性がある。
【0060】
傾斜ローラー427においては、装置正面側から装置奥側に向かう分力Fx2が中間転写ベルト421に作用する。そのため、傾斜ローラー428と傾斜ローラー427とを対にして配置する場合には、分力Fx1から分力Fx2を差し引くよう作用して、中間転写ベルト421の装置正面側又は装置奥側への片寄りを抑制することができる。
【0061】
このように、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dに対する傾斜方向が互いに異なる側を向くように、中間転写ベルト421の内側に配置されている。このような配置により、中間転写ベルト421の装置正面側又は装置奥側への片寄りを抑制することができる。
【0062】
この場合、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dを中心として、傾斜方向が互いに線対称となるように配置されていれば、上述した分力Fx1と分力Fx2が等しくなる。これにより、分力Fx1と分力Fx2とを互いに相殺することになり、中間転写ベルト421の装置正面側又は装置奥側への片寄りを防止することができる。
【0063】
本実施の形態では、中間転写ベルト421の直交方向Dへの移動を規制するため、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428、つまり、複数の張架部を備える。2より大きい数の張架部を備えるようにする場合には、偶数、例えば、4つ、6つ、8つなどの張架部を備えることが望ましい。
【0064】
一方で、中間転写ベルト421の直交方向Dの移動を規制できれば、張架部は1つでもよい。例えば、中間転写ベルト421自体が直交方向の移動を規制する規制部を有していれば、張架部は1つでもよい。例えば、中間転写ベルト421の直交方向の移動を規制するための規制部として、中間転写ベルト421の端部にリブを設けてもよく、この場合、張架部は傾斜ローラー428の1つでもよい。また、1つの張架部となる傾斜ローラー428側にリブなどの規制部を設けてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、中間転写ベルト421のベルト走行方向Aへの回転に伴い、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428も回転するが、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は回転せずに、中間転写ベルト421を張架してもよい。この場合、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、ローラーではなく、例えば、円柱状の棒のような構成でもよく、中間転写ベルト421が接触する接触部分を低摩擦係数の材料で形成して、接触部分を中間転写ベルト421が滑るようにする。
【0066】
ベルトクリーニング装置426は、短冊状の弾性体からなるベルトクリーニングブレード426aと、ベルトクリーニングブレード426aを保持する保持板金426bとを有する。
【0067】
ベルトクリーニングブレード426aは、中間転写ベルト421上に残留する転写残トナーをクリーニングするものであり、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。例えば、中間転写ベルト421の幅方向に渡ってベルトクリーニングブレード426aが中間転写ベルト421に当接する当接方向が、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。
【0068】
ベルトクリーニングブレード426aは、直交方向Dに対する傾斜方向が、最も近い傾斜ローラー428と同じ側を向くように配置されている。ベルトクリーニングブレード426aは、直交方向Dに対する傾斜方向が、最も近い傾斜ローラー428と平行になるように配置することが望ましい。
【0069】
また、ベルトクリーニングブレード426aは、図3A及び図3Bに示すように、中間転写ベルト421を介して、傾斜ローラー428に対向するように配置することが望ましいが、傾斜ローラー428に近接する位置に配置してもよい。この場合、中間転写ベルト421と傾斜ローラー428との接触位置からベルトクリーニングブレード426aの当接位置が離れるほど、当接圧は小さくなってしまう。そのため、ベルトクリーニングブレード426aの当接位置が、中間転写ベルト421の平面に垂直に投影した傾斜ローラー428の投影面P内になるように、ベルトクリーニングブレード426aを配置する。
【0070】
後述の図5Bに示すように、ベルトクリーニングブレード426aと傾斜ローラー428とを対向するように配置することにより、ベルトクリーニングブレード426aの長手方向における当接圧を均一にすることができる。
【0071】
直交方向Dに対して、ベルトクリーニングブレード426aを傾斜して配置することは、中間転写ベルト421の回転方向(ベルト走行方向A)に対して、ベルトクリーニングブレード426aを傾斜して配置することになる。
【0072】
このような配置とすることにより、ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動が低減される(ミスアライメント制振)。そして、ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動が低減することにより、ベルトクリーニングブレード426aの疲労摩耗を減少させることができる。
【0073】
ベルトクリーニングブレード426aは、傾斜ローラー428と同じ方向に傾斜していれば、応力振動を低減する効果を得ることができる。さらに、ベルトクリーニングブレード426aを傾斜ローラー428と平行になるように配置すると、ベルトクリーニングブレード426aの長手方向における当接圧を均一にすることができるので、応力振動をより低減することができる。
【0074】
なお、ベルトクリーニングブレード426aの材料としては、耐摩耗性、耐オゾン性に優れている弾性体であるウレタンゴムが使用可能である。ベルトクリーニングブレード426aの厚みとしては、0.5~2.0mm程度に設定するのが望ましい。また、ベルトクリーニングブレード426aの短手方向(中間転写ベルト421に向かう方向)への長さとしては、弾性体の製造方法にもよるが、5~12mm程度が望ましいが、より長くても構わない。また、金型で成型するタイプであれば、弾性体の厚み、長さをさらに小さくすることも可能である。
【0075】
また、保持板金426bの材料としては、SECC(Steel Electrolytic Cold Commercial)などの鋼板が使用可能である。保持板金426bの厚みとしては、1.6~2.0mmに設定するのが望ましい。これは、ベルトクリーニングブレード426aにかかる圧力や外力などによる変形を抑制し、ベルトクリーニングブレード426aのエッジ真直度を所望の仕様とすることが可能な強度を確保するためである。
【0076】
ベルトクリーニングブレード426aは、接着剤を用いて、保持板金426bに貼り付ける。接着剤としては、熱可塑性のホットメルト系接着剤を用いる。接着剤に代えて、両面テープを用いることも可能である。また、ベルトクリーニングブレード426aの成型時に、金型による一体成型により、保持板金426bにベルトクリーニングブレード426aを貼りつけてもよい。この場合、接着剤なしの構成となる。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態において、画像形成装置100は、中間転写ベルト421、複数の傾斜ローラー427、428、ベルトクリーニングブレード426aを備える。中間転写ベルト421は、回転可能である。傾斜ローラー427及び傾斜ローラー、428は、中間転写ベルト421の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、中間転写ベルト421を張架する。ベルトクリーニングブレード426aは、中間転写ベルト421の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、中間転写ベルト421上に残留する転写残トナーをクリーニングする。
【0078】
このように構成した本実施の形態によれば、ベルトクリーニングブレード426aの長手方向における当接圧を均一にすることができるので、ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動をより低減することができる。ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動が低減することにより、ベルトクリーニングブレード426aの疲労摩耗を減少させることができ、ベルトクリーニングブレード426aの交換周期を長くすることができる。この結果、画像形成部40(特に、中間転写ユニット42)の交換周期も長くなり、画像形成装置100のダウンタイムを低減することができる。
【0079】
<変形例>
図4Aは、中間転写ユニット42の変形例を示す図であって、画像形成装置100の正面側から見た図である。また、図4Bは、中間転写ユニット42の変形例を示す図であって、画像形成装置100の側面側から見た図である。
【0080】
図4A及び図4Bに示す中間転写ユニット42は、図3A及び図3Bに示した中間転写ユニット42の変形例である。傾斜ローラー427、傾斜ローラー428及びベルトクリーニング装置426の配置を除き、図4A及び図4Bに示す中間転写ユニット42は、図3A及び図3Bに示した中間転写ユニット42と同じ構成である。そのため、図4A及び図4Bにおいては、同じ符号を用い、重複する説明は省略する。
【0081】
本変形例においても、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、中間転写ベルト421の回転方向(ベルト走行方向A)に直交する直交方向Dに対して傾斜して配置されている。例えば、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428の軸方向が、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。
【0082】
加えて、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dに対する傾斜方向が同じ側を向くように、中間転写ベルト421の内側及び外側にそれぞれ配置されている。傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、傾斜方向が平行になるように配置されていることが望ましい。また、詳細は後述の図6Aを参照して説明するが、直交方向Dに対する傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428の傾斜角は、5°以上、45°以下であることが望ましい。
【0083】
このような傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428の配置の一例について、図4A及び図4Bを参照して説明する。なお、図4Bにおいて、符号Cは、中間転写ベルト421の幅方向における中心線を示す。
【0084】
傾斜ローラー428は、直交方向Dに対して、装置奥側より装置正面側が高くなるように傾斜して、言い換えると、傾斜ローラー428の傾斜方向が装置奥側を向くように、中間転写ベルト421の外側に配置されている。傾斜ローラー428は、中間転写ベルト421の外側に配置するので、ベルト走行方向Aにおいて、ベルトクリーニングブレード426aより下流側に配置する。
【0085】
一方、傾斜ローラー427は、直交方向Dに対して、装置奥側より装置正面側が高くなるように傾斜して、言い換えると、傾斜ローラー427の傾斜方向が装置奥側を向くように、中間転写ベルト421の内側に配置されている。
【0086】
このように、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、直交方向Dに対する傾斜方向が同じ側を向くように、中間転写ベルト421の内側及び外側にそれぞれ配置されている。さらに、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、図4Bに示すように、傾斜方向が平行になるように配置されていることが望ましい。
【0087】
本変形例でも、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428、つまり、複数の張架部を備えるが、張架部は1つでもよい。例えば、中間転写ベルト421自体が直交方向の移動を規制する規制部を有していれば、張架部は1つでもよい。例えば、中間転写ベルト421の直交方向の移動を規制するための規制部として、中間転写ベルト421の端部にリブを設けてもよく、この場合、張架部は傾斜ローラー427の1つでもよい。また、1つの張架部となる傾斜ローラー427側にリブなどの規制部を設けてもよい。
【0088】
また、本変形例でも、中間転写ベルト421のベルト走行方向Aへの回転に伴い、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428も回転するが、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は回転せずに、中間転写ベルト421を張架してもよい。この場合、傾斜ローラー427及び傾斜ローラー428は、ローラーではなく、例えば、円柱状の棒のような構成でもよく、中間転写ベルト421が接触する接触部分を低摩擦係数の材料で形成して、接触部分を中間転写ベルト421が滑るようにする。
【0089】
ベルトクリーニングブレード426aは、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。例えば、中間転写ベルト421の幅方向に渡ってベルトクリーニングブレード426aが中間転写ベルト421に当接する当接方向が、直交方向Dに対して傾斜して配置されている。
【0090】
ベルトクリーニングブレード426aは、直交方向Dに対する傾斜方向が、最も近い傾斜ローラー427と同じ側を向くように配置されている。ベルトクリーニングブレード426aは、直交方向Dに対する傾斜方向が、最も近い傾斜ローラー427と平行になるように配置することが望ましい。
【0091】
また、ベルトクリーニングブレード426aは、図4A及び図4Bに示すように、中間転写ベルト421を介して、傾斜ローラー427に対向するように配置することが望ましいが、傾斜ローラー427に近接する位置に配置してもよい。この場合、中間転写ベルト421と傾斜ローラー427との接触位置からベルトクリーニングブレード426aの当接位置が離れるほど、当接圧は小さくなってしまう。そのため、ベルトクリーニングブレード426aの当接位置が、中間転写ベルト421の平面に垂直に投影した傾斜ローラー427の投影面P内になるように、ベルトクリーニングブレード426aを配置する。
【0092】
後述の図5Bに示すように、ベルトクリーニングブレード426aと傾斜ローラー427とを対向するように配置することにより、ベルトクリーニングブレード426aの長手方向における当接圧を均一にすることができる。
【0093】
直交方向Dに対して、ベルトクリーニングブレード426aを傾斜して配置することは、中間転写ベルト421の回転方向(ベルト走行方向A)に対して、ベルトクリーニングブレード426aを傾斜して配置することになる。
【0094】
このような配置とすることにより、ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動が低減される(ミスアライメント制振)。そして、ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動が低減することにより、ベルトクリーニングブレード426aの疲労摩耗を減少させることができる。
【0095】
ベルトクリーニングブレード426aは、傾斜ローラー427と同じ方向に傾斜していれば、応力振動を低減する効果を得ることができる。さらに、ベルトクリーニングブレード426aを傾斜ローラー427と平行になるように配置すると、ベルトクリーニングブレード426aの長手方向における当接圧を均一にすることができるので、応力振動をより低減することができる。
【0096】
以上説明したように、本変形例において、画像形成装置100は、中間転写ベルト421、複数の傾斜ローラー427、428、ベルトクリーニングブレード426aを備える。中間転写ベルト421は、回転可能である。傾斜ローラー427及び傾斜ローラー、428は、中間転写ベルト421の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、中間転写ベルト421を張架する。ベルトクリーニングブレード426aは、中間転写ベルト421の回転方向に直交する直交方向に対して傾斜して配置され、中間転写ベルト421上に残留する転写残トナーをクリーニングする。
【0097】
このように構成した本変形例によれば、ベルトクリーニングブレード426aの長手方向における当接圧を均一にすることができるので、ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動をより低減することができる。ベルトクリーニングブレード426a内部の応力振動が低減することにより、ベルトクリーニングブレード426aの疲労摩耗が減少することができ、ベルトクリーニングブレード426aの交換周期を長くすることができる。この結果、画像形成部40(特に、中間転写ユニット42)の交換周期も長くなり、画像形成装置100のダウンタイムを低減することができる。
【0098】
また、本変形例では、傾斜ローラー428が中間転写ベルト421の外側に配置されているので、図3A及び図3Bに示す中間転写ユニット42の場合と比較して、中間転写ベルト421が占有する容積を小さくすることができる。画像形成装置100の小型化を優先する必要がある場合には、本変形例の構成が有効になる。
【0099】
[比較例1~3及び実施例1における当接圧の評価]
以下に、比較例1~3及び実施例1における当接圧を評価した結果を説明する。比較例1~3及び実施例1の評価条件は、以下の通りである。図5Aは、比較例1~3において、ベルトクリーニングブレードの長手方向における当接圧を示すグラフである。図5Bは、実施例1と比較例2とにおいて、ベルトクリーニングブレードの長手方向における当接圧を示すグラフである。
【0100】
(比較例1)
比較例1においては、中間転写ベルトの幅方向(上記の直交方向Dに該当)に渡って配置されるベルトクリーニングブレードが所定の押圧力で中間転写ベルトに当接されるが、ベルトクリーニングブレードに対向する部分にローラーがない場合である。
【0101】
比較例1の場合、図5Aに示すように、ベルトクリーニングブレードの当接圧は長手方向において均一である。しかしながら、ベルトクリーニングブレードに対向する部分にローラーがないので、ベルトクリーニングブレードが当接することにより、中間転写ベルトが撓む。このため、図5Aに示すように、下記の比較例2より当接圧が小さくなってしまい、十分な清掃性が得られなくなってしまう。
【0102】
(比較例2)
比較例2においては、中間転写ベルトの幅方向(上記の直交方向Dに該当)に渡って配置されるベルトクリーニングブレードが所定の押圧力で中間転写ベルトに当接され、ベルトクリーニングブレードに対向する部分にローラーがある場合である。
【0103】
比較例2の場合、図5Aに示すように、ベルトクリーニングブレードの当接圧は長手方向において均一である。また、ベルトクリーニングブレードに対向する部分にローラーがあるので、ベルトクリーニングブレードが当接しても、中間転写ベルトに撓みは発生しない。このため、図5Aに示すように、上記の比較例1より当接圧が大きくなり、必要な清掃性を確保することができる。
【0104】
(比較例3)
比較例3においては、中間転写ベルトの幅方向(上記の直交方向Dに該当)に傾斜して配置されるベルトクリーニングブレードが所定の押圧力で中間転写ベルトに当接される。ローラーは中間転写ベルトの幅方向(上記の直交方向Dに該当)に渡って配置され、ベルトクリーニングブレードの中央部分において、ローラーが対向するよう配置されている。
【0105】
比較例3の場合、図5Aに示すように、ベルトクリーニングブレードの当接圧は長手方向において不均一となる。ローラーが対向するベルトクリーニングブレードの中央部分では、比較例2と同程度の当接圧が確保されている。一方、ローラーが対向しないベルトクリーニングブレードの両端部分では、ベルトクリーニングブレードが当接することにより、中間転写ベルトが撓むため、比較例2より当接圧が小さくなる。
【0106】
(実施例1)
実施例1は、中間転写ベルト421の直交方向Dに傾斜して配置されるベルトクリーニングブレード426aが所定の押圧力で中間転写ベルト421に当接され、ベルトクリーニングブレード426aに対向する部分に傾斜ローラー428がある場合である。つまり、実施例1は、本実施の形態において図3A及び図3Bで説明した構成であり、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aは、中間転写ベルト421の直交方向Dに傾斜して配置され、互いに対向している。また、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を5°としている。
【0107】
実施例1の場合、ベルトクリーニングブレード426aに対向する部分に傾斜ローラー428があるので、図5Bに示すように、ベルトクリーニングブレード426aの当接圧は長手方向において均一である。また、ベルトクリーニングブレード426aが当接しても、中間転写ベルト421に撓みは発生しない。このため、図5Bに示すように、比較例2と略同等の当接圧を確保するができ、必要な清掃性を確保することができる。
【0108】
[実施例1~6及び比較例1~3におけるクリーニング不良、フィルミングの評価]
以下に、実施例1~6及び比較例1~3におけるクリーニング不良、フィルミングを評価した結果を説明する。図6Aは、実施例1~6と比較例1~3とにおいて、クリーニング不良、フィルミングを評価した結果を説明する図である。図6Bは、図6Aにおける摩耗幅を説明する図である。なお、図6Aにおいて、〇は使用に問題がないレベルであり、△は使用上問題ないレベル(軽微な不良)であるが、〇より劣るレベルであり、×は使用に問題があるレベルであることを示す。
【0109】
実施例1~6及び比較例1~3の評価においては、KonicaMinolta製AccurioPressC6100を使用した。評価環境は23℃、50%RHとした。原稿はA3サイズで、中央に幅20mmの縦帯ベタ画像を印刷した。
【0110】
評価項目のうち、クリーニング不良は、ベルトクリーニングブレードをすり抜けたトナーがブラシに付着した幅を評価した。具体的には、ブラシに付着した幅が20mm以上である場合を×、ブラシに付着した幅が20mm以下である場合を△、ブラシ付着しなかったものを○とした。
【0111】
クリーニング不良の評価のタイミングは、初期として、新品のベルトクリーニングブレードで画像出力した10枚後と、耐久として、画像出力を開始してから1000k枚後の評価を行った。また、画像出力を開始してから1000k枚後のベルトクリーニングブレードの摩耗幅を測定した。図6Bにおいて、点線はベルトクリーニングブレードのエッジが新品の状態の側面を示し、実線はベルトクリーニングブレードのエッジが摩耗した状態の側面を示す。ベルトクリーニングブレードの摩耗幅は、図6Bに示すように、ベルトクリーニングブレードの厚さ方向において摩耗した幅を測定した。
【0112】
フィルミングは、画像出力を開始してから1000k枚後に全面ハーフトーン画像を取得し、縦帯ベタ部と非ベタ部の境界で濃度差が視認されたものを×、軽微な濃度差が視認されたものを△、濃度差が視認されなかったものを○とした。但し、クリーニング不良が発生しなかった場合のみ評価している。
【0113】
実施例1~6及び比較例1~3の評価条件及び評価結果は、以下の通りである。
【0114】
(比較例1)
比較例1の評価条件は、上述した通りである。
【0115】
比較例1では、図6Aに示すように、耐久において、クリーニング不良が発生している。また、摩耗幅も大きく、フィルミングにおいても、不良が発生している。これは、上述したように、ベルトクリーニングブレードの当接圧が十分に確保できないことが原因と考えられる。
【0116】
(比較例2)
比較例2の評価条件は、上述した通りである。
【0117】
比較例2では、図6Aに示すように、耐久において、軽微なクリーニング不良が発生している。また、摩耗幅も、問題ないと判断する基準値(20μm台)より大きく、フィルミングにおいても、軽微な不良が発生している。これは、ベルトクリーニングブレードの摩耗幅が比較的大きいため、トナーの阻止力が低下したためと考えられる。
【0118】
(比較例3)
比較例3の評価条件は、上述した通りである。
【0119】
比較例3では、ベルトクリーニングブレードの長手方向において、当接圧が不均一であるため、初期において、クリーニング不良が発生している。そのため、これ以外の評価は行わなかった。
【0120】
(実施例1)
実施例1の評価条件は、上述した通りであり、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を5°としている。
【0121】
実施例1では、図6Aに示すように、クリーニング不良、フィルミングともに発生せず、良好な結果を得ることができた。
【0122】
(実施例2)
実施例2の評価条件は、本実施の形態において図4A及び図4Bで説明した構成であり、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を5°としている。
【0123】
実施例2では、図6Aに示すように、クリーニング不良は発生しなかったが、軽微なフィルミングが発生した。中間転写ベルト421上に接触する傾斜ローラー428がフィルミングの発生に影響した可能性が考えられる。
【0124】
(実施例3)
実施例3の評価条件は、基本的には実施例1と同じであるが、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を3°としている。
【0125】
実施例3では、図6Aに示すように、初期において、クリーニング不良は発生せず、フィルミングも発生しなかったが、耐久において、軽微なクリーニング不良が発生し、摩耗幅も、上記の基準値より大きくなった。これは、ベルトクリーニングブレード426aの傾斜角が比較的小さく、ベルトクリーニングブレード426aの応力振動を低減する効果も小さいものに留まった可能性が考えられる。
【0126】
(実施例4)
実施例4の評価条件は、基本的には実施例1と同じであるが、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を20°としている。
【0127】
実施例4では、図6Aに示すように、クリーニング不良、フィルミングともに発生せず、良好な結果を得ることができた。
【0128】
(実施例5)
実施例5の評価条件は、基本的には実施例1と同じであるが、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を45°としている。
【0129】
実施例5では、図6Aに示すように、クリーニング不良、フィルミングともに発生せず、良好な結果を得ることができた。
【0130】
(実施例6)
実施例6の評価条件は、基本的には実施例1と同じであるが、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの傾斜角を50°としている。
【0131】
実施例6では、図6Aに示すように、初期において、クリーニング不良は発生せず、フィルミングも発生せず、摩耗幅も、上記の基準値より小さかったが、耐久において、軽微なクリーニング不良が発生した。これは、図3Bに示すFx1、Fx2が大きくなることで、中間転写ベルト421上に微小なヨレが発生して、ベルトクリーニングブレード426aの当接圧が不均一になり、耐久において、軽微なクリーニング不良が発生した可能性が考えられる。
【0132】
実施例3~6の結果から分かるように、ベルトクリーニングブレード426aが傾斜していれば、クリーニング不良、フィルミングを改善する効果は得られる。そして、傾斜ローラー428及びベルトクリーニングブレード426aの5°から45°の範囲では、クリーニング不良、フィルミングともに発生しないという良好な結果を得ることができた。
【0133】
上記実施の形態においては、ベルト部材として、中間転写ベルト421を例示したが、回転可能なベルト部材であって、残留するトナーをクリーニングする必要があるベルト部材であれば、他の部材、例えば、二次転写ベルトでもよい。
【0134】
上記実施の形態では、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0135】
10 画像読取部
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
41 画像形成ユニット
42 中間転写ユニット
50 用紙搬送部
60 定着部
70 制御部
100 画像形成装置
411 露光装置
412 現像装置
413 感光体ドラム
414 帯電装置
415 ドラムクリーニングユニット
421 中間転写ベルト
422 一次転写ローラー
423a、423b、423c 支持ローラー
424 二次転写ローラー
425 バックアップローラー
426 ベルトクリーニング装置
426a ベルトクリーニングブレード
426b 保持板金
427、428 傾斜ローラー
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B