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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ファーサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20240814BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240814BHJP
   B60N 2/427 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/2338
B60N2/427
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021057377
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154365
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
(72)【発明者】
【氏名】市村 岳志
(72)【発明者】
【氏名】八田 太伺
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0326938(US,A1)
【文献】特開2019-034710(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0283700(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061676(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061675(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0130765(KR,A)
【文献】国際公開第2020/141737(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/2338
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストを有したシートの上端部内に折り畳まれた状態で固定されるエアバッグを備え、前記シートが搭載された乗物の側壁部に対して衝撃が加わったときに膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを前記乗物の幅方向に並ぶ複数の前記シート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側の前記シートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置(但し、前記エアバッグが、前記シートに着座している乗員の体全体を囲んで拘束するように、乗員の両側方及び前方に向けて展開及び膨張させるエアバッグであるものを除く。)であって、
前記エアバッグは、展開及び膨張時に、前記乗員の胸部から頭部にかけての部位と対応するエアバッグ本体部と、前記エアバッグ本体部の上部における前端部から前方に向かって突出するエアバッグ突出部と、前記エアバッグ突出部における先端部と前記乗員側の後方部位とを連結するテザーとを備え、
前記エアバッグ本体部の少なくとも一部は、展開及び膨張時に、前記ヘッドレストの上端よりも上方に位置し、
前記テザーの長さは、前記エアバッグにおける前記乗員側の面に沿った前記テザーの前後の両端部の連結部間の長さよりも短くなっており、
前記テザーの後端部は、前記ヘッドレストにおける前記乗員の頭部と接触する接触面よりも後方であって衝撃が加わった前記側壁部側の位置で、前記シートの上端部内のフレームに固定されていることを特徴とするファーサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグにおける前記エアバッグ本体部と前記エアバッグ突出部との境界部分には、前記エアバッグの膨張を抑制する膨張抑制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物の側壁部に対して衝撃が加わった場合に、隣り合う乗物用シート間でエアバッグを展開及び膨張させることで、側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の側壁部に対して衝撃が加わった場合に、シートに着座する乗員と車両の側壁部との間で展開及び膨張するエアバッグを有したサイドエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、シートバック内に一部が固定された状態で配置され、エアバッグ本体部とエアバッグ突出部とを備えている。エアバッグ本体部は、乗員と車両の側壁部との間で展開及び膨張するように構成されている。エアバッグ突出部は、エアバッグ本体部の前端から突出し、乗員の頭部前方にて展開及び膨張するように構成されている。
【0003】
エアバッグ本体部は、乗員の頭部から首部にかけての部位に対応する上膨張部と、乗員の首部から胸部にかけての部位に対応する下膨張部とを備えている。エアバッグ突出部は、エアバッグ本体部の上膨張部の前端において、当該上膨張部と一体に形成されている。さらに、エアバッグには、エアバッグ突出部の先端部の外面と上膨張部の乗員側の外面とを連結する面状テザーが縫着されている。
【0004】
面状テザーは、エアバッグの展開及び膨張時に、エアバッグ突出部の先端部を車両後方へ引っ張るように構成されている。このため、エアバッグ突出部は、エアバッグの展開及び膨張時に、エアバッグ本体部に対し、乗員側へほぼ直角に屈曲された状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-8105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなサイドエアバッグ装置におけるエアバッグを、車幅方向で隣り合うシート間でエアバッグを展開及び膨張させるファーサイドエアバッグ装置のエアバッグとして適用すると、次のようになる。すなわち、エアバッグが展開及び膨張時に車両の側壁部によって乗員の反対側から支持されなくなる。
【0007】
このため、車両の側壁部に加わった衝撃によって移動される乗員の頭部がエアバッグ本体部の上膨張部が当たると、エアバッグ全体がシートバック内のエアバッグの固定部分を回転中心として乗員の頭部から逃げるように回転してしまう。したがって、エアバッグによる乗員の特に頭部に対する拘束性をより向上させることができるファーサイドエアバッグ装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、ヘッドレストを有したシート内に折り畳まれた状態で固定されるエアバッグを備え、前記シートが搭載された乗物の側壁部に対して衝撃が加わったときに膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを前記乗物の幅方向に並ぶ複数の前記シート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側の前記シートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、展開及び膨張時に、前記乗員の胸部から頭部にかけての部位と対応するエアバッグ本体部と、前記エアバッグ本体部の上部における前端部から前方に向かって突出するエアバッグ突出部と、前記エアバッグ突出部における先端部と前記エアバッグ本体部における前記乗員側の部位とを連結するテザーとを備え、前記テザーの長さは、前記エアバッグにおける前記乗員側の面に沿った前記エアバッグにおける前記テザーの前後の両端部との連結部間の長さよりも短くなっており、前記テザーの後端部は、前記ヘッドレストにおける前記乗員の頭部と接触する接触面よりも後方に位置していることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、エアバッグの展開及び膨張時には、エアバッグ突出部がテザーによって乗員側に引っ張られてエアバッグ突出部がエアバッグ本体部に対して乗員側に屈曲する。このとき、テザーの後端部がヘッドレストにおける乗員の頭部と接触する接触面よりも後方に位置しているため、乗物の側壁部に加わった衝撃によって移動される乗員の頭部を、張った状態のテザーによって受け止めることができる。さらに、テザーが乗員の頭部を受け止めたときの衝撃によってエアバッグが回転した場合でも、乗員の頭部の移動方向にエアバッグ突出部が位置するようになるため、乗員の頭部をエアバッグ突出部によって受け止めることができる。したがって、エアバッグによる乗員の特に頭部に対する拘束性をより向上させることができる。
【0010】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグにおける前記エアバッグ本体部と前記エアバッグ突出部との境界部分には、前記エアバッグの膨張を抑制する膨張抑制部が設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、エアバッグの展開及び膨張時に、エアバッグ突出部がテザーによって乗員側に引っ張られた際に、エアバッグ突出部が膨張抑制部においてエアバッグ本体部に対して乗員側に屈曲し易くなる。したがって、エアバッグの展開及び膨張時に、エアバッグ突出部をエアバッグ本体部に対して乗員側により確実に屈曲させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エアバッグによる乗員の特に頭部に対する拘束性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態のファーサイドエアバッグ装置が搭載される車両の平面図。
図2】同車両における側壁部及びシートを示す断面図。
図3】シートのシートバックのフレームに対するファーサイドエアバッグ装置の取り付け状態を示す要部拡大断面図。
図4】エアバッグの展開及び膨張時のシート及び乗員を側方から見た状態を示す模式図。
図5】車両における展開及び膨張時のエアバッグとシートに着座した乗員との位置関係を示す断面図。
図6】展開及び膨張時のエアバッグとシートに着座した乗員の頭部との位置関係を示す平面模式図。
図7】展開及び膨張時のエアバッグのテザーによってシートに着座した乗員の頭部を拘束するときの状態を示す平面模式図。
図8】展開及び膨張時のエアバッグのエアバッグ突出部によってシートに着座した乗員の頭部を拘束するときの状態を示す平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ファーサイドエアバッグ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、乗物の一例としての車両10においては、その幅方向(図1及び図2では左右方向)の両側にドア及びピラー等からなる側壁部11,12が設けられている。側壁部11,12間には、車両10の幅方向に並ぶ複数(本例では2つ)のシート13,14が設けられている。シート13,14は、それぞれ、シートクッション16と、シートバック17と、ヘッドレスト18とを備えている。
【0015】
シートクッション16は、乗員P1,P2の下半身を載せることが可能に構成されている。シートバック17は、シートクッション16の後端部から起立して乗員P1,P2の上半身を支えることが可能に構成されている。ヘッドレスト18は、シートバック17の上端部に設けられて乗員P1,P2の頭部Tを支えることが可能に構成されている。
【0016】
こうした車両10の側壁部11または側壁部12に対して側方から衝撃が加わると、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、衝撃が加わった方の側壁部11,12側に倒れ込もうとする。このため、車両10には、側壁部11,12に対して側方から衝撃が加わったときに、その衝撃が加わった方の側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置19が設けられている。
【0017】
図2及び図3に示すように、ファーサイドエアバッグ装置19は、車両10におけるシート13,14のシートバック17内のフレーム20における幅方向(左右方向)の内側にそれぞれ固定されている。シート13のシートバック17内のフレーム20に固定されたファーサイドエアバッグ装置19は、シート14に最も近い部分に位置している。シート14のシートバック17内のフレーム20に固定されたファーサイドエアバッグ装置19は、シート13に最も近い部分に位置している。
【0018】
ファーサイドエアバッグ装置19は、折り畳まれた状態で車両10におけるシート13,14のシートバック17内のフレーム20に固定されたエアバッグ21及びインフレータ22を備えている。インフレータ22は、エアバッグ21に対して膨張用ガスを供給する装置である。インフレータ22は、リテーナ23によって覆われた状態で支持されている。リテーナ23は、インフレータ22を支持した状態でフレーム20に対してエアバッグ21と一緒にボルト30及びナット31によって固定されている。
【0019】
なお、シート13とシート14とにおけるファーサイドエアバッグ装置19周りの構造は、車両10の幅方向について対称(左右対称)であること以外は同一の構造となっている。このため、以下ではシート14におけるファーサイドエアバッグ装置19周りの構造についてのみ詳しく説明する。
【0020】
図4に示すように、ファーサイドエアバッグ装置19は、インフレータ22によるエアバッグ21への膨張用ガスの供給を制御する制御装置24を備えている。制御装置24には、側壁部11,12(図1及び図2参照)等に設けられた加速度センサ等からなる衝撃センサ25が電気的に接続されている。衝撃センサ25は、車両10(図1及び図2参照)の側方から側壁部11,12に対して加えられた衝撃を検出する。制御装置24は、衝撃センサ25からの検出信号に基づきインフレータ22を作動させてエアバッグ21に対して膨張用ガスを供給する。
【0021】
図3及び図4に示すように、エアバッグ21に対してインフレータ22から膨張用ガスが供給されると、エアバッグ21が展開及び膨張してインフレータ22付近の部分をシートバック17内に残しつつシートバック17から前方に飛び出す。シートバック17から飛び出したエアバッグ21は、シート13とシート14(図1及び図2参照)との間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。
【0022】
側壁部11,12に対して衝撃が加えられたとき、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、衝撃が加わった方の側壁部11,12側に倒れ込もうとすることは、上述したとおりである。しかし、そのときの乗員P1,P2の胸部から頭部Tにかけての部位は、シート13とシート14との間で後方から前方に展開及び膨張するエアバッグ21によって拘束されて保護される。
【0023】
すなわち、衝撃が加わった方の側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2は、エアバッグ21により、衝撃が加わった方の側壁部11,12に近い側のシート13,14に着座している他の乗員P1,P2や車両10の内装品などと干渉しないようにされる。
【0024】
次に、エアバッグ21の構成について説明する。
図4図6に示すように、エアバッグ21は、一枚の基布を二つ折りにして厚さ方向に重ね、その重ねられた部分の周縁部同士を縫製することによって袋状に形成されている。エアバッグ21は、エアバッグ本体部26と、エアバッグ突出部27と、帯状のテザー28とを備えている。エアバッグ本体部26は、エアバッグ21の展開及び膨張時に、乗員P2の胸部から頭部Tにかけての部位と対応する。
【0025】
エアバッグ本体部26の後端部は、インフレータ22と一緒にフレーム20に固定されている。エアバッグ突出部27は、エアバッグ21の展開及び膨張時に、エアバッグ本体部26の上部における前端部から前方に向かって突出する。テザー28は、エアバッグ21の展開及び膨張時に、エアバッグ21の外側において、エアバッグ突出部27における先端部とエアバッグ本体部26の後端部における乗員P2側の部位とを連結する。
【0026】
テザー28の前端部は、エアバッグ突出部27の先端部に縫い付けられている。テザー28の後端部は、エアバッグ本体部26の後端部における乗員P2側の基布に縫い付けられている。テザー28の後端部は、ヘッドレスト18における乗員P2の頭部Tと接触する接触面18aよりも後方に位置している。テザー28の後端部は、エアバッグ本体部26の後端部及びインフレータ22と一緒にフレーム20に固定されている。
【0027】
エアバッグ21におけるエアバッグ本体部26とエアバッグ突出部27との境界部分には、エアバッグ21の膨張を抑制する膨張抑制部の一例としてのシーム29が設けられている。シーム29は、エアバッグ21を構成する基布における乗員P2側の部分と乗員P2側とは反対側の部分とを縫い合わせることによって形成される。エアバッグ21におけるエアバッグ本体部26とエアバッグ突出部27との境界部分の一部にはシーム29が設けられていない部分があり、当該部分を通じてエアバッグ本体部26内とエアバッグ突出部27内とが連通している。
【0028】
テザー28の長さは、エアバッグ21における乗員P2側の面に沿ったエアバッグ21におけるテザー28の前後の両端部との連結部間の長さよりも短くなっている。すなわち、エアバッグ21を構成する乗員P2側の基布におけるテザー28の前端部が縫い付けられた位置からテザー28の後端部が縫い付けられた位置までの長さは、テザー28の前端部からテザー28の後端部までの長さよりも長くなっている。
【0029】
したがって、エアバッグ21の展開及び膨張時には、エアバッグ突出部27の先端部がテザー28によって乗員P2側(後方)に引っ張られるため、エアバッグ突出部27がシーム29においてエアバッグ本体部26に対して乗員P2側に屈曲する。本実施形態のファーサイドエアバッグ装置19では、エアバッグ21の展開及び膨張時におけるエアバッグ本体部26に対するエアバッグ突出部27の乗員P2側への屈曲角度が90°程度になるように設定されている。
【0030】
次に、ファーサイドエアバッグ装置19の作用について説明する。
図2図4及び図5に示すように、車両10の側壁部11,12のうち、例えば側壁部11に対して側方から衝撃が加わると、側壁部11から遠い側のシート14に着座している乗員P2が、側壁部11側に倒れ込もうとする。このとき、シート14におけるシートバック17の内部で折り畳まれているエアバッグ21がインフレータ22からの膨張用ガスの供給を通じて車両10の幅方向に並ぶ2つのシート13,14間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。
【0031】
さらにこのとき、図5及び図6に示すように、エアバッグ突出部27の先端部がテザー28によって乗員P2側(後方)に引っ張られるため、エアバッグ突出部27がシーム29においてエアバッグ本体部26に対して乗員P2側に屈曲する。この場合、テザー28の後端部がヘッドレスト18における乗員P2の頭部Tと接触する接触面18aよりも後方に位置している。
【0032】
このため、図7に示すように、車両10の側壁部11に加わった衝撃によって移動される乗員P2の頭部Tが、張った状態のテザー28によって受け止められる。すなわち、テザー28における乗員P2側の面が乗員P2の頭部Tを拘束する拘束面として機能する。さらに、テザー28が乗員P2の頭部Tを受け止めたときの衝撃によってエアバッグ21がフレーム20に対する固定部分を回転中心として回転した場合には、図8に示すように、乗員P2の頭部Tの移動方向にエアバッグ突出部27が位置するようになる。
【0033】
このため、乗員P2の頭部Tをエアバッグ突出部27によって受け止めることができるようになる。すなわち、シーム29においてエアバッグ本体部26に対して乗員P2側に屈曲した状態のエアバッグ突出部27の乗員P2側の面が乗員P2の頭部Tを拘束する拘束面として機能するようになる。
【0034】
このように、ファーサイドエアバッグ装置19のエアバッグ21では、車両10の側壁部11に加わった衝撃によって移動される乗員P2の頭部Tを、テザー28及びエアバッグ突出部27によって2段階で拘束することができる。このため、エアバッグ21による乗員P2の特に頭部Tに対する拘束性をより向上させることができる。したがって、エアバッグ21により乗員P2の頭部Tを特に効果的に拘束して保護することができる。
【0035】
なお、車両10の側壁部12に対して側方から衝撃が加わったときには、上述と同様に、側壁部12から遠い側のシート13に着座している乗員P1が側壁部12側に倒れ込もうとする。そして、この倒れ込もうとする乗員P1は、上述と同様に、シート13のシートバック17から展開及び膨張するエアバッグ21によって効果的に拘束されて保護される。
【0036】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ファーサイドエアバッグ装置19は、ヘッドレスト18を有したシート13,14内に折り畳まれた状態で固定されるエアバッグ21を備える。ファーサイドエアバッグ装置19は、シート13,14が搭載された車両10の側壁部11,12に対して衝撃が加わった際に膨張用ガスの供給によりエアバッグ21を車両10の幅方向に並ぶ複数のシート13,14間で後方から前方に向けて展開及び膨張させる。これにより、衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2の胸部から頭部Tにかけての部位を拘束して保護する。エアバッグ21は、展開及び膨張時に、乗員P1,P2の胸部から頭部Tにかけての部位と対応するエアバッグ本体部26と、エアバッグ本体部26の上部における前端部から前方に向かって突出するエアバッグ突出部27とを備える。さらに、エアバッグ21は、展開及び膨張時に、エアバッグ突出部27における先端部とエアバッグ本体部26における乗員P1,P2側の部位とを連結するテザー28を備える。テザー28の長さは、エアバッグ21における乗員P1,P2側の面に沿ったエアバッグ21におけるテザー28の前後の両端部との連結部間の長さよりも短くなっている。テザー28の後端部は、ヘッドレスト18における乗員P1,P2の頭部Tと接触する接触面18aよりも後方に位置している。
【0037】
この構成によれば、エアバッグ21の展開及び膨張時には、エアバッグ突出部27がテザー28によって乗員P1,P2側(後方)に引っ張られてエアバッグ突出部27がエアバッグ本体部26に対して乗員P1,P2側に屈曲する。このとき、テザー28の後端部がヘッドレスト18における乗員P1,P2の頭部Tと接触する接触面18aよりも後方に位置している。このため、車両10の側壁部11,12に加わった衝撃によって移動される乗員P1,P2の頭部Tを、張った状態のテザー28によって受け止めることができる。さらに、テザー28が乗員P1,P2の頭部Tを受け止めたときの衝撃によってエアバッグ21がフレーム20に対する固定部分を回転中心として回転した場合でも、乗員P1,P2の頭部Tの移動方向にエアバッグ突出部27が位置するようになる。このため、乗員P1,P2の頭部Tをエアバッグ突出部27によって受け止めることができる。したがって、乗員P1,P2の頭部Tを特に効果的に拘束して保護することができる。すなわち、エアバッグ21による乗員P1,P2の特に頭部Tに対する拘束性をより向上させることができる。
【0038】
(2)ファーサイドエアバッグ装置19において、エアバッグ21におけるエアバッグ本体部26とエアバッグ突出部27との境界部分には、エアバッグ21の膨張を抑制するシーム29が設けられている。
【0039】
この構成によれば、エアバッグ21の展開及び膨張時に、エアバッグ突出部27の先端部がテザー28によって乗員P1,P2側(後方)に引っ張られる。この際に、エアバッグ突出部27がシーム29においてエアバッグ本体部26に対して乗員P1,P2側に屈曲し易くなる。したがって、エアバッグ21の展開及び膨張時に、エアバッグ突出部27をエアバッグ本体部26に対して乗員P1,P2側により確実に屈曲させることができる。
【0040】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・エアバッグ21において、シーム29は省略してもよい。
・エアバッグ21において、シーム29の代わりに膨張抑制部として内部テザーを採用してもよい。この場合、内部テザーは、エアバッグ21を構成する幅方向で対向する基布同士をエアバッグ21内で連結する。
【0042】
・ファーサイドエアバッグ装置19を幅方向に3つ以上のシートが並ぶ車両に適用してもよい。
・ファーサイドエアバッグ装置19を車両以外の乗物、例えば航空機や船舶に適用してもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…車両
11,12…側壁部
13,14…シート
16…シートクッション
17…シートバック
18…ヘッドレスト
18a…接触面
19…ファーサイドエアバッグ装置
20…フレーム
21…エアバッグ
22…インフレータ
23…リテーナ
24…制御装置
25…衝撃センサ
26…エアバッグ本体部
27…エアバッグ突出部
28…テザー
29…膨張抑制部の一例としてのシーム
30…ボルト
31…ナット
P1,P2…乗員
T…頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8