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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】回転電機のステータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/16 20060101AFI20240814BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02K1/16 Z
H02K15/02 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021063120
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158327
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木村 友祐
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207785(JP,A)
【文献】特開2014-161210(JP,A)
【文献】特開2000-23394(JP,A)
【文献】特開2009-124863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/16
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状又は円柱状のバックヨーク(31)を備えると共に、前記バックヨークからその径方向(R)に突出する複数のティース(34)が前記バックヨークの周方向に間隔をおいて並設されているステータコア(30a)と、前記ティースに巻回されているコイル(30b)と、を有し、
前記ステータコアは、複数枚の磁性体のコアシート(40)が、前記径方向に直交する軸線方向(Z)に積層されているコアシート積層体(40L)と、前記コアシート積層体の前記軸線方向の端面に取り付けられている磁性体の端面シート(50)と、を有し、
各前記コアシート及び前記端面シートの各シート(40,50)は、それぞれ前記バックヨークを構成するバックヨーク部(41,51)と、前記バックヨーク部から前記径方向に突出して前記ティースを構成するティース部(44,54)とを有し、
前記端面シートは、自身の前記バックヨーク部が自身に隣接する前記コアシートの前記バックヨーク部に取り付けられることにより、前記コアシート積層体の前記端面に取り付けられている、回転電機(91)のステータ(30)において、
前記端面シートは、自身の各前記ティース部の先端から前記軸線方向における前記コアシート積層体側とは反対側に突出する磁性体の突出部(57)を有し、
前記突出部どうしを前記周方向に接続する環状で非磁性体の接続リング(60)が設けられており、
前記端面シートは、前記ティース部の先端部であるティース部先端部(56)の方が、前記ティース部における前記ティース部先端部よりも前記バックヨーク側の部分であるティース部延出部(55)よりも、周方向に大きく、
前記接続リングは、前記端面シートにおける前記ティース部延出部及び前記バックヨーク部のいずれにも当接していない、回転電機のステータ。
【請求項2】
前記接続リングは、前記端面シートにおける全ての前記突出部の全体と、前記端面シートにおける全ての前記ティース部先端部の少なくとも一部ずつとを覆っている請求項に記載の回転電機のステータ。
【請求項3】
前記接続リングは、前記端面シートとは別体で設けられて、前記端面シートに取り付けられている、請求項に記載の回転電機のステータ。
【請求項4】
円筒状又は円柱状のバックヨーク(31)を備えると共に、前記バックヨークからその径方向(R)に突出する複数のティース(34)が前記バックヨークの周方向に間隔をおいて並設されているステータコア(30a)と、前記ティースに巻回されているコイル(30b)と、を有し、
前記ステータコアは、複数枚の磁性体のコアシート(40)が、前記径方向に直交する軸線方向(Z)に積層されているコアシート積層体(40L)と、前記コアシート積層体の前記軸線方向の端面に取り付けられている磁性体の端面シート(50)と、を有し、
各前記コアシート及び前記端面シートの各シート(40,50)は、それぞれ前記バックヨークを構成するバックヨーク部(41,51)と、前記バックヨーク部から前記径方向に突出して前記ティースを構成するティース部(44,54)とを有し、
前記端面シートは、自身の前記バックヨーク部が自身に隣接する前記コアシートの前記バックヨーク部に取り付けられることにより、前記コアシート積層体の前記端面に取り付けられている、回転電機(91)のステータ(30)において、
前記端面シートは、自身の各前記ティース部の先端から前記軸線方向における前記コアシート積層体側とは反対側に突出する磁性体の突出部(57)を有し、
前記突出部どうしを前記周方向に接続する環状で非磁性体の接続リング(60)が設けられており、
前記接続リングは、前記端面シート全体を周囲から覆っている、回転電機のステータ。
【請求項5】
円筒状又は円柱状のバックヨーク(31)を備えると共に、前記バックヨークからその径方向(R)に突出する複数のティース(34)が前記バックヨークの周方向に間隔をおいて並設されているステータコア(30a)と、前記ティースに巻回されているコイル(30b)と、を有し、
前記ステータコアは、複数枚の磁性体のコアシート(40)が、前記径方向に直交する軸線方向(Z)に積層されているコアシート積層体(40L)と、前記コアシート積層体の前記軸線方向の端面に取り付けられている磁性体の端面シート(50)と、を有し、
各前記コアシート及び前記端面シートの各シート(40,50)は、それぞれ前記バックヨークを構成するバックヨーク部(41,51)と、前記バックヨーク部から前記径方向に突出して前記ティースを構成するティース部(44,54)とを有し、
前記端面シートは、自身の前記バックヨーク部が自身に隣接する前記コアシートの前記バックヨーク部に取り付けられることにより、前記コアシート積層体の前記端面に取り付けられている、回転電機(91)のステータ(30)において、
前記端面シートは、自身の各前記ティース部の先端から前記軸線方向における前記コアシート積層体側とは反対側に突出する磁性体の突出部(57)を有し、
前記突出部どうしを前記周方向に接続する環状で非磁性体の接続リング(60)が設けられている、回転電機のステータの製造方法であって、
前記端面シートにおける全ての前記突出部の少なくとも一部ずつを覆うように、型(100)を設置する第1工程と、
前記接続リングの材料となる流動体状態の接続リング材料(P)を前記型の内側に注入する第2工程と、
前記接続リング材料を硬化させて前記接続リングを成型してから、前記接続リングを前記型から離型する第3工程と、
を有する、回転電機のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータ等の回転電機のステータの中には、ステータコアと3相コイルとを有するものがある。ステータコアは、円筒状のバックヨークを備えると共に、バックヨークから径方向内方に突出する複数のティースが周方向に間隔をおいて並設されている。それらティースに3相コイルが巻回されている。ステータコアは、複数枚のコアシートが、径方向に直交する軸線方向に積層されているコアシート積層体と、コアシート積層体の軸線方向の両端面に取り付けられている各端面シートと、を有する。
【0003】
各コアシート及び各端面シートの各シートは、それぞれバックヨークを構成するバックヨーク部と、バックヨーク部から径方向内方に突出してティースを構成するティース部とを有する。各端面シートは、自身のバックヨーク部が自身に隣接するコアシートのバックヨーク部に取り付けられることにより、コアシート積層体の端面に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-147176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなステータの中には、例えば上記の特許文献1のように、各端面シートが、自身の各ティース部の先端から軸線方向におけるコアシート積層体側とは反対側に突出する磁性体の突出部を有するものがある。この場合においては、次に示す問題が発生し得ることに、本発明者は着目した。
【0006】
すなわち、寸法精度等によっては、端面シートやそれに隣接するコアシートに、例えば、周方向に進むに従い軸線方向にずれるうねりが形成されることがある。その状態において、端面シートのバックヨーク部を、それに隣接するコアシートのバックヨーク部に取り付けると、端面シートにおける一部のティース部と、それに隣接するコアシートのティース部との間に、隙間が生じる。このような状態において回転電機のロータが回転すると、ロータの界磁磁束により、当該隙間をなくす方向への力が断続的に大きく発生することがある。
【0007】
具体的には、例えばロータが回転する際には、ロータとティースとの間に磁気引力と磁気斥力とが交互に発生する。そのうちの磁気引力が発生する時には、突出部を流れる磁束により、端面シートのティース部に、当該隙間をなくす方向への力が大きく加わる。その力により、端面シートのティース部が、それに隣接するコアシートのティース部に衝突して異音が発生する。その後の磁気斥力が発生する時には、当該隙間をなくす方向への力が小さくなることにより、当該隙間が再び発生する。その後の再び磁気引力が発生する時には、端面シートのティース部が、それに隣接するコアシートのティース部に再び衝突する。その繰り返しにより、異音の発生が継続する。
【0008】
なお、以上では、円筒状のバックヨークからティースが径方向内方に突出している、インナロータのステータの場合を例に説明したが、円筒状又は円柱状のバックヨークからティースが径方向外方に突出している、アウタロータのステータの場合においても、同様の課題は発生し得る。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、端面シートのティース部と、それに隣接するコアシートのティース部との衝突による異音の発生を抑制することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転電機のステータは、ステータコアとコイルとを有する。前記ステータコアは、円筒状又は円柱状のバックヨークを備えると共に、前記バックヨークからその径方向に突出する複数のティースが前記バックヨークの周方向に間隔をおいて並設されている。前記コイルは、前記ティースに巻回されている。前記ステータコアは、複数枚の磁性体のコアシートが、前記径方向に直交する軸線方向に積層されているコアシート積層体と、前記コアシート積層体の前記軸線方向の端面に取り付けられる磁性体の端面シートと、を有する。
【0011】
各前記コアシート及び前記端面シートの各シートは、それぞれ前記バックヨークを構成するバックヨーク部と、前記バックヨーク部から前記径方向に突出して前記ティースを構成するティース部とを有する。前記端面シートは、自身の前記バックヨーク部が自身に隣接する前記コアシートの前記バックヨーク部に取り付けられることにより、前記コアシート積層体の前記端面に取り付けられている。
【0012】
以上の回転電機のステータにおいて、前記端面シートは、自身の各前記ティース部の先端から前記軸線方向における前記コアシート積層体側とは反対側に突出する磁性体の突出部を有する。そして、前記突出部どうしを前記周方向に接続する環状で非磁性体の接続リングが設けられている。
【0013】
本発明によれば、前述のうねり等により、端面シートにおける一部のティース部と、それに隣接するコアシートのティース部との間に隙間が生じた場合においても、接続リングにより、当該隙間ができているティース部の各突出部と、当該隙間ができていないティース部の各突出部とが接続される。それにより、端面シートにおける当該隙間ができている各ティース部は、軸線方向の動きが抑制されて、隣接するコアシートのティース部への衝突が抑制される。そのため、異音の発生が抑制される。
【0014】
しかも、接続リングは、非磁性体であるため、ステータコアにおける磁束の流れに悪影響を及ぼす心配もない。そのため、本発明によれば、ステータコアにおける磁束の流れに悪影響を及ぼすことなく、端面シートのティース部と、それに隣接するコアシートのティース部との衝突を抑制して、異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の回転電機を示す断面図
図2図1のII-II線の断面を示す断面図
図3】軸線方向一方の端面シートとそれに隣接するコアシートとを示す斜視図
図4図3の端面シートに接続リングを設けた状態を示す斜視図
図5】接続リングの製造における各工程を示す断面図
図6図1の右寄りの一部を拡大して示す図
図7】仮に接続リングを設けなかった場合の比較例のステータを示す断面図
図8】接続リングを設けている本実施形態のステータを示す断面図
図9】他の実施形態のステータコアを示す断面図
図10】さらに別の実施形態のステータコアを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0017】
図1は、本実施形態の回転電機91を示す断面図であり、詳しくは、次に参照する図2のI-I線の断面を示す図である。回転電機91は、接続対象を回転させる力行を行うものであってもよいし、接続対象の回転力により発電を行うものであってもよいし、それら力行及び発電の両方を適宜行うものであってもよい。回転電機91は、ロータ70とステータ30と筐体10とを有する。
【0018】
以下では、ロータ70の中心線を「軸線A」といい、その軸線Aの長さ方向に直交する方向であって軸線Aに向かう方向を「径方向内方Ri」といい、その反対方向を「径方向外方Ro」といい、径方向内方Riと径方向外方Roとをまとめて「径方向R」という。また以下では、便宜上、図に合わせて、軸線Aの長さ方向を「上下Z」といい、その上下Zの一方を「上Z+」といい、その反対方向を「下Z-」という。ただし、回転電機91は、以下で言う「上下Z」を、鉛直方向のみならず、水平方向や斜め方向など、任意の方向にして設置できる。また以下では、以下でいう上下Zに見た平面視を、単に「平面視」といい、軸線Aを中心線とする周方向を単に「周方向」という。
【0019】
ロータ70は、回転軸78とロータコア75と複数の界磁磁石71とを有する。回転軸78は、上下Zに延びる軸材であって、軸線A上に設置されている。ロータコア75は、円筒状の部材であって、回転軸78に相対回転不能に外嵌されている。複数の各界磁磁石71は、永久磁石であって、ロータコア75の外周部に周方向に間隔をおいて取り付けられている。よって、回転軸78とロータコア75と複数の界磁磁石71とは、一体で回転する。
【0020】
ステータ30は、ステータコア30aと3相コイル30bとを有する。ステータコア30aは、円筒状の部材であって、自身の内周面とロータ70の外周面との間に隙間をおいて、ロータ70に外嵌されている。ステータコア30aは、複数枚のコアシート40と、上下2枚の端面シート50とを有する。各コアシート40は、円盤状の形状をしており、それらのコアシート40が上下Zに複数枚積層されることにより、コアシート積層体40Lが形成されている。そのコアシート積層体40Lの上下両側の端面に、それぞれ円盤状の端面シート50が取り付けられている。その上下の各端面シート50に対して、接続リング60が取り付けられている。3相コイル30bは、ステータコア30aに装着されている。
【0021】
筐体10は、当該筐体10における上Z+寄りの部分を構成する上側部分11と、当該筐体10における下Z-寄りの部分を構成する下側部分12とを有する。上側部分11は、下Z-に開口した有底筒状の形状をしており、下側部分12は、上Z+に開口した有底筒状の形状をしている。上側部分11と下側部分12とは、それらの間にステータコア30aの外周縁部を挟み込んだ状態で、周方向に並設されている複数本の上下Zに延びるボルト20により結合されている。それにより、ステータコア30aの外周縁部が筐体10に取り付けられている。
【0022】
筐体10には、回転軸78がベアリング17を介して取り付けられている。その回転軸78の上端部は、筐体10の外方に突出しており、その外方に突出した部分に回転電機91に対する接続対象が接続される。
【0023】
図2は、図1のII-II線の断面を示す図である。この図2においては、3相コイル30bの図示を省略している。複数の各界磁磁石71は、N極が径方向内方RiになりS極が径方向外方Roになるものと、N極が径方向外方RoになりS極が径方向内方Riになるものとが、周方向に交互に並ぶように設置されている。
【0024】
ステータコア30aは、円筒状のバックヨーク31を備えると共に、そのバックヨーク31から径方向内方Riに突出する複数のティース34が周方向に間隔をおいて並設されている。そして、周方向に隣り合う各2つのティース34どうしの間は、スロットSを構成している。
【0025】
各ティース34は、ティース延出部35とティース先端部36とを有する。ティース先端部36は、ティース34におけるロータ70側の端部、すなわち径方向内方Riの端部である。他方、ティース延出部35は、ティース34におけるティース先端部36よりもバックヨーク31側の部分、すなわちティース先端部36よりも径方向外方Roの部分である。各ティース34は、ティース延出部35よりもティース先端部36の方が、周方向に幅広になっている。ティース先端部36における上端部及び下端部、すなわち、ティース先端部36における端面シート50により構成されている部分には、環状の接続リング60が設置されている。
【0026】
この図2では図示を省略している3相コイル30bは、3相の各コイルが、電気角で120°ずつ互いにずれるように、ティース34に巻回されている。具体的には、それら3相の各コイルは、例えば平面視で周方向に30°ずつ互いにずれるように、ティース34に分布巻きされている。回転電機91が力行を行う場合、3相コイル30bに流れる電流による磁束が界磁磁石71に作用することにより、ロータ70が回転する。また、回転電機91が発電を行う場合、界磁磁石71の磁束が3相コイル30bに作用することにより、発電が行われる。
【0027】
図3は、上Z+側の端面シート50と、それに隣接する最も上Z+側のコアシート40とを示す斜視図である。
【0028】
上Z+側の端面シート50は、バックヨーク31を構成するバックヨーク部51と、ティース34を構成するティース部54と、ティース部54の先端から上Z+に突出する突出部57とを有する。バックヨーク部51は、円盤状の形状をしている。複数のティース部54は、バックヨーク部51からそれぞれ径方向内方Riに突出する形で周方向に間隔をおいて並設されている。
【0029】
ティース部54は、ティース延出部35を構成するティース部延出部55と、ティース先端部36を構成するティース部先端部56とを有する。ティース部延出部55よりもティース部先端部56の方が、周方向に幅広になっている。突出部57は、各ティース部先端部56の先端から上Z+に突出している。
【0030】
以上に示した上Z+側の端面シート50についての説明は、下Z-側の端面シート50の場合においても、「上Z+」をそれぞれ「下Z-」に読み替えて同様である。
【0031】
また、以上に示した上Z+側の端面シート50についての説明は、各コアシート40の場合においても、「上Z+側の端面シート50」「バックヨーク部51」「ティース部54」「ティース部延出部55」「ティース部先端部56」を、それぞれ「コアシート40」「バックヨーク部41」「ティース部44」「ティース部延出部45」「ティース部先端部46」に読み替えると共に、突出部57に関する説明を省いて同様である。つまり、各コアシート40の構成は、端面シート50の構成と略同様であるが、突出部57がない点で端面シート50と相違している。
【0032】
これら各端面シート50及び各コアシート40の各シート50,40におけるバックヨーク部51,41の上面には、上Z+に突出する複数の加締め用の凸部52が周方向に間隔をおいて並設されている。そして、各シート50,40のバックヨーク部51,41における各凸部52,42の裏側、すなわち下面には、図3には図示しない加締め用の凹部53,43が形成されている。
【0033】
上Z+側の端面シート50は、例えば鋼板等の磁性体の板がプレス加工により打ち抜かれると共に、曲げ加工されることにより形成される。具体的には、プレス加工により、バックヨーク部51と、そのバックヨーク部51から径方向内方Riに突出する複数のティース部54と、各ティース部54の先端から更に径方向内方Riに突出する突出部57とが形成されると共に、バックヨーク部51に、凸部52及び凹部53が形成される。その状態から、各ティース部54に対して突出部57が、直角に上Z+側に折り曲げられることにより、上Z+側の端面シート50が形成される。
【0034】
以上に示した上Z+側の端面シート50の製造方法についての説明は、下Z-側の端面シート50の場合においても、「上Z+」を「下Z-」に読み替えて同様である。
【0035】
各コアシート40は、例えば鋼板等の磁性体の板がプレス加工により打ち抜かれることにより形成される。具体的には、プレス加工により、バックヨーク部41と複数のティース部44とが形成されると共に、バックヨーク部41に、凸部42及び凹部43が形成される。
【0036】
図4は、上Z+側の端面シート50におけるティース部先端部56に接続リング60を設けた状態を示す斜視図である。接続リング60は、その全体が樹脂等の非磁性体であって、突出部57どうしを周方向に接続している。
【0037】
図5は、接続リング60の製造における各工程を示す断面図である。まず、図5(a)に示す第1工程において、端面シート50における全ての突出部57の全体と、全てのティース部先端部56の先端寄り部分とを覆うように、金型100を設置する。なお、金型100は、上型101と下型102とを有する。
【0038】
次に、図5(b)に示す第2工程において、接続リング60の材料となる樹脂等の接続リング材料Pを、加熱等により流動体状態にしてから金型100の内側に注入する。次に、図5(c)に示す第3工程において、冷却等により接続リング材料Pを硬化させて接続リング60を成型してから、金型100を開くことにより、接続リング60を金型100から離型する。
【0039】
以上により、端面シート50に接続リング60が設けられる。よって、接続リング60は、自身に対応する端面シート50における全ての突出部57の全体と、当該端面シート50における全てのティース部先端部56の先端寄り部分とを覆っている。その一方、接続リング60は、自身に対応する端面シート50におけるティース部延出部55及びバックヨーク部51のいずれにも当接していない。
【0040】
図6は、図1に示すステータ30における右寄りの一部を拡大した図である。各コアシート40は、自身の下面の凹部43に、自身よりも1つ下Z-側のコアシート40の上面の凸部42が圧入されて加締められることにより、当該1つ下Z-側のコアシート40の上面に取り付けられている。それにより、複数のコアシート40が一体化されてコアシート積層体40Lが形成されている。
【0041】
上Z+側の端面シート50は、自身の下面の凹部53に、最も上Z+側のコアシート40の上面の凸部42が圧入されて加締められることにより、コアシート積層体40Lの上端面に取り付けられている。他方、下Z-側の端面シート50は、自身の上面の凸部52が、最も下Z-側のコアシート40の下面の凹部43に圧入されて加締められることにより、コアシート積層体40Lの下端面に取り付けられている。
【0042】
このように、各シート50,40は、自身の凹部53,43に、自身よりも1つ下Z-側のシート40,50の凸部42,52が圧入されて加締められることにより、自身のバックヨーク部51,41が、自身よりも1つ下Z-側のシート40,50のバックヨーク部41,51に取り付けられている。他方、各シート50,40のティース部54,44どうしについては、互いに結合されていない。
【0043】
各界磁磁石71は、コアシート積層体40Lの内周面と、接続リング60の内周面とに対峙している。
【0044】
図7は、仮に端面シート50に接続リング60を設けなかった場合の比較例を示す断面図である。以下、この比較例を参照しつつ、本実施形態の効果について説明する。
【0045】
寸法精度等によっては、上Z+側の端面シート50や、最も上Z+側のコアシート40に、例えば、周方向に進むに従い上下Zにずれるうねりが形成されることがある。その状態において、上Z+側の端面シート50のバックヨーク部51を、最も上Z+側のコアシート40のバックヨーク部41に取り付けると、上Z+側の端面シート50における一部のティース部先端部56と、最も上Z+側のコアシート40のティース部先端部46との間に、隙間Gが生じる。このような状態において回転電機91のロータ70が回転すると、ロータ70の界磁磁石71の磁束により、当該隙間Gをなくす方向への力が断続的に大きく発生することがある。
【0046】
具体的には、例えばロータ70が回転する際には、ロータ70とティース先端部36との間に磁気引力と磁気斥力とが交互に発生する。そのうちの磁気引力が発生する時には、突出部57を流れる磁束により、上Z+側の端面シート50のティース部先端部56に、当該隙間Gをなくす方向への力が大きく加わる。その力により、上Z+側の端面シート50のティース部先端部56が下降して、最も上Z+側のコアシート40のティース部先端部46に衝突して異音が発生する。その後の磁気斥力が発生する時には、当該隙間Gをなくす方向への力が小さくなることにより、ティース部先端部56が上昇して、当該隙間Gが再び発生する。その後の再び磁気引力が発生する時には、上Z+側の端面シート50のティース部先端部56が、再び下降して、最も上Z+側のコアシート40のティース部先端部46に再び衝突する。その繰り返しにより、異音の発生が継続する。
【0047】
その点、本実施形態では、図8に示すように、接続リング60を有する。その接続リング60により、当該隙間Gができているティース部先端部56の各突出部57と、当該隙間Gができていないティース部先端部56の各突出部57とが接続される。それにより、上Z+側の端面シート50における当該隙間Gができている各ティース部先端部56は、上下Zの動きが抑制されて、最も上Z+側のコアシート40のティース部先端部46への衝突が抑制される。そのため、異音の発生が抑制される。
【0048】
以上の上Z+側の端面シート50についての説明は、下Z-側の端面シート50の場合においても、「上Z+側」を「下Z-側」に読み替ると共に、「下降」「上昇」の各方を他方に読み替え、且つ「図8に示すように、」の記載を省いて同様である。
【0049】
以上より、上下の各端面シート50のティース部先端部56と、それに隣接するコアシート40のティース部先端部46との衝突を抑制して、異音の発生を抑制できる。
【0050】
しかも、上下の各接続リング60は、非磁性体であるため、ステータコア30aにおける磁束の流れに悪影響を及ぼす心配もない。そのため、本実施形態によれば、ステータコア30aにおける磁束の流れに悪影響を及ぼすことなく、異音の発生を抑制できる。
【0051】
また、上下の各接続リング60は、自身に対応する端面シート50における全ての突出部57の全体を覆っている。そのため、自身に対応する端面シート50の突出部57どうしを強固に接続することができる。しかも、その一方、上下の各接続リング60は、自身に対応する端面シート50におけるティース部延出部55及びバックヨーク部51のいずれにも当接していない。そのため、接続リング60を極力無駄なくコンパクトに設けることができる。
【0052】
また、本実施形態では、図5に示すように、端面シート50における全ての突出部57を覆うように、金型100を設置してから、その内側に接続リング材料Pを注入して硬化させることにより接続リング60を成型している。そのため、端面シート50に接続リング60を簡単に成型できる。
【0053】
[他の実施形態]
以上に示した各実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
【0054】
第1実施形態では、図8に示すように、接続リング60は、自身に対応する端面シート50における各ティース部延出部55やバックヨーク部51は覆っていない。これに代えて、例えば、図9に示すように、接続リング60は、自身に対応する端面シート50全体を周囲から覆うようにしてもよい。ただし、この場合においても、スロットSが埋まらないように、ティース部延出部55どうしは、周方向に接続しない。
【0055】
第1実施形態では、図5に示すように、端面シート50における全ての突出部57を覆うように、金型100を設置してから、その内側に接続リング材料Pを注入して硬化させることにより接続リング60を成型している。これに代えて、接続リング60を、端面シート50から分離した状態で、端面シート50とは別体で成型等により設けてもよい。そして、図10に示すように、当該分離して設けた端面シート50を、端面シート50の各突出部57に、係合等により取り付けてもよい。
【0056】
第1実施形態では、図5に示すように、金型100及びそれにより成型される接続リング60は、突出部57の全体を覆っている。これに代えて、金型100及び接続リング60は、全ての突出部57の一部ずつを覆うようにしてもよい。
【0057】
第1実施形態では、図5に示すように、金型100及びそれにより成型される接続リング60は、ティース部先端部56については、先端寄り部分のみを覆っている。これに代えて、金型100及び接続リング60は、ティース部先端部56の全体を覆うようにしてもよい。
【0058】
第1実施形態では、図6に示すように、各シート50,40は、自身の凹部53,43に、自身よりも1つ下Z-側のシート40,50の凸部42,52が圧入されて加締められることにより、自身よりも1つ下Z-側のシート40,50に取り付けられている。これに代えて、各シート50,40に、それぞれ上下Zに貫通する貫通孔を設けて、当該貫通孔に上下Zに延びる軸材を圧入して加締めることにより、各シート50,40を一体化してもよい。
【0059】
第1実施形態では、図2に示すように、ティース部延出部45,55よりもティース部先端部46,56の方が周方向に大きいが、これに代えて、ティース部延出部45,55の周方向の大きさと、ティース部先端部46,56の周方向の大きさとを、同じにしてもよい。
【0060】
第1実施形態では、図1に示すように、回転電機91は、円筒状のステータ30の径方向内方Riにロータ70が設置されるインナロータ型であるが、これに代えて、円筒状又は円柱状のステータの径方向外方に円筒状のロータが設置されるアウタロータ型にしてもよい。この場合、各シート50,40のティース部54,44は、径方向内方Riではなく、径方向外方Roに突出する。
【0061】
第1実施形態では、コアシート積層体40Lの上下両側の端面にそれぞれ各端面シート50が取り付けられているが、これに代えて、コアシート積層体40Lの上下片方の端面にのみ端面シート50を取り付けてもよい。
【0062】
第1実施形態では、ティース34には、3相コイル30bが巻回されているが、これに代えて2相のコイルや4相以上のコイルを巻回してもよい。
【符号の説明】
【0063】
30…ステータ、30a…ステータコア、30b…3相コイル、31…バックヨーク、34…ティース、40L…コアシート積層体、40…コアシート、41…バックヨーク部、44…ティース部、50…端面シート、51…バックヨーク部、54…ティース部、57…突出部、60…接続リング、91…回転電機、R…径方向、Z…上下。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10