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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ゲート駆動回路およびパルス電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20240814BHJP
   H03K 17/10 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021083915
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177564
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-274911(JP,A)
【文献】特開2007-288999(JP,A)
【文献】特開2020-178312(JP,A)
【文献】特開2020-114142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H03K 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導通経路と第2導通経路とが並列に接続されている抵抗値可変回路と、
前記抵抗値可変回路を制御する制御部と、を備え、
前記第1導通経路と前記第2導通経路との共通接続点のうちの一方側接続点は、ゲート駆動回路の駆動対象である駆動対象素子のゲートに接続されており、
前記第1導通経路は、第1抵抗器が挿入接続されており、
前記第2導通経路は、第2抵抗器と、当該第2導通経路の電気的状態を変更可能な電気的状態可変部と、が直列に挿入接続されており、
前記制御部は、
前記駆動対象素子の温度変化を検出し、
前記温度変化の検出結果に応じて前記第2導通経路の電気的状態可変部を制御することにより、当該第2導通経路の電気的状態を変更するものであり
前記電気的状態可変部は、第2導通経路において開状態または閉状態に切り替え可能な開閉スイッチであって、
前記制御部は、
前記開閉スイッチの切り替え動作の閾値が、前記駆動対象素子の温度変化に対応して設定されており、
前記検出結果が前記閾値を超えた場合に、前記開閉スイッチを開状態に切り替える、
ことを特徴とすゲート駆動回路。
【請求項2】
前記抵抗値可変回路は、前記第2導通経路が複数個並列に接続されており、
前記制御部は、
前記各第2導通経路の開閉スイッチの切り替え動作の閾値が、前記駆動対象素子の温度変化に対応して、それぞれ異なる値で設定されており、
前記検出結果が前記各閾値のうち少なくとも一つを超えた場合に、当該超えた閾値に対応する開閉スイッチを開状態に切り替える、
ことを特徴とする請求項記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記駆動対象素子が複数個直列に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
請求項1~の何れかに記載のゲート駆動回路を備えたパルス電源であって、
負荷と、当該負荷に対して直列に接続されている直流電源と、の間に対し、前記駆動対象素子が複数個直列に挿入接続されていることを特徴とするパルス電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGBT,MOSFET,SiC等の種々の駆動対象素子に適用可能なゲート駆動回路に係るものであって、例えば電圧分担の均等化に貢献可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の分野で適用されている電力変換装置においては、例えばIGBT,MOSFET,SiC等の半導体スイッチング素子(電圧駆動型半導体素子等)を有し、当該半導体スイッチング素子(以下、単に駆動対象素子と適宜称する)をゲート駆動回路によってスイッチング(ターンオン,ターンオフ)制御する構成が普及している。
【0003】
直列接続された複数個の駆動対象素子を各々のゲート駆動回路によってスイッチング制御する構成では、例えば、当該各駆動対象素子や当該各ゲート駆動回路において特性差,個体差等(以下、単に特性差等と適宜称する)が存在すると、ターンオフ時の各駆動対象素子に印加される電圧分担が不均一になる可能性がある。すなわち、各駆動対象素子のうち一部においては比較的高い電圧が加わり、残りの他部においては比較的低い電圧が加わるという現象が生じ得る。
【0004】
そこで、例えば特許文献1の場合には、直列接続された2個の駆動対象素子(特許文献1では符号3a,3b)をそれぞれスイッチング制御する第1,第2ゲート駆動回路(特許文献1では符号11a,11b)と、遅延時間設定手段(特許文献1では符号36)等を具備し第1,第2ゲート駆動回路にスイッチング制御信号を入力する制御回路(特許文献1では符号21)と、を有した構成により、電圧分担の均等化を試みている。
【0005】
前記遅延時間設定手段は、各駆動対象素子におけるスイッチング制御時の電圧をそれぞれ検出し、その検出した各電圧の差分(特許文献1では符号vds1,vds2の差分;以下、単に検出電圧差分と適宜称する)により、第2ゲート駆動回路におけるスイッチング制御信号の遅延時間(特許文献1では符号tdoff)を算出する構成となっている。そして、第2ゲート駆動回路においては、遅延時間分だけ遅延したスイッチング制御信号が入力されることとなり、その結果、電圧分担の均等化ができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-114142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
駆動対象素子においては、スイッチング制御時にノイズが発生することがある。また、例えば駆動対象素子がSiC等の素子の場合には、ターンオフ時に比較的大きな振動も発生することがある。このため、特許文献1では、各駆動対象素子におけるスイッチング制御時の電圧をそれぞれ検出する場合に、前記ノイズや振動の影響を受け、検出精度の低下を招く可能性がある。
【0008】
このように検出精度が低下すると、検出電圧差分において誤差が生じてしまい、スイッチング制御信号を所望通りに遅延させることができず、電圧分担の均等化が困難となるおそれがある。
【0009】
また、前記遅延したスイッチング制御信号においては、制御回路からゲート駆動回路の一次側に送信(設定)することが挙げられる。しかしながら、駆動対象素子側が比較的高電圧の回路の場合(駆動対象素子に高電圧が印加される場合)には、制御回路とゲート駆動回路の一次側との両者間の電位差が大きくなってしまうことが考えられる。すなわち、前記遅延したスイッチング制御信号を送信するには、前記大きい電位差に耐え得る通信構成(例えば光ファイバーケーブル等を用いた通信構成)が必要となり、装置の高コスト化や大型化等を招くおそれもある。
【0010】
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであって、直列接続された複数個の駆動対象素子における電圧分担の均等化に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るゲート駆動回路およびパルス電源は、前記の課題を解決できる創作であり、当該ゲート駆動回路の一態様は、第1導通経路と第2導通経路とが並列に接続されている抵抗値可変回路と、前記抵抗値可変回路を制御する制御部と、を備えたものである。
【0012】
また、前記第1導通経路と前記第2導通経路との共通接続点のうちの一方側接続点は、ゲート駆動回路の駆動対象である駆動対象素子のゲートに接続されており、前記第1導通経路は、第1抵抗器が挿入接続されており、前記第2導通経路は、第2抵抗器と、当該第2導通経路の電気的状態を変更可能な電気的状態可変部と、が直列に挿入接続されているものである。
【0013】
そして、前記制御部は、前記駆動対象素子の温度変化を検出し、前記温度変化の検出結果に応じて前記第2導通経路の電気的状態可変部を制御することにより、当該第2導通経路の電気的状態を変更する、ことを特徴とする。
【0014】
前記電気的状態可変部は、第2導通経路において開状態または閉状態に切り替え可能な開閉スイッチであって、前記制御部は、前記開閉スイッチの切り替え動作の閾値が、前記駆動対象素子の温度変化に対応して設定されており、前記検出結果が前記閾値を超えた場合に、前記開閉スイッチを開状態に切り替える、ことを特徴としても良い。
【0015】
前記抵抗値可変回路は、前記第2導通経路が複数個並列に接続されており、前記制御部は、前記各第2導通経路の開閉スイッチの切り替え動作の閾値が、前記駆動対象素子の温度変化に対応して、それぞれ異なる値で設定されており、前記検出結果が前記各閾値のうち少なくとも一つを超えた場合に、当該超えた閾値に対応する開閉スイッチを開状態に切り替える、ことを特徴としても良い。
【0016】
前記電気的状態可変部は、前記第2抵抗器に対して直列に接続された半導体スイッチング素子であって、当該半導体スイッチング素子のゲートに対する印加電圧に応じてオン抵抗が変化し、前記制御部は、前記温度変化の検出結果に応じて、前記印加電圧を制御することを特徴としても良い。
【0017】
前記制御部は、前記半導体スイッチング素子の能動領域内で、前記印加電圧を制御することを特徴としても良い。
【0018】
前記駆動対象素子が複数個直列に接続されていることを特徴としても良い。
【0019】
パルス電源の一態様は、前記ゲート駆動回路を備えたものであって、負荷と、当該負荷に対して直列に接続されている直流電源と、の間に対し、前記駆動対象素子が複数個直列に挿入接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上示したように本発明によれば、直列接続された複数個の駆動対象素子における電圧分担の均等化に、貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1,2のゲート駆動回路1を説明するための概略構成図。
図2】実施例1による抵抗値可変回路4Aおよび制御部5Aを説明するための概略構成図。
図3】実施例2による抵抗値可変回路4Bおよび制御部5Bを説明するための概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態におけるゲート駆動回路は、特許文献1のように単に検出電圧差分を求めてスイッチング制御を遅延させる構成(以下、単に従来構成と適宜称する)とは全く異なるものであり、駆動対象素子のスイッチング制御に係る発生損失(スイッチング損失)がターンオフ時の印加電圧の大きさに応じて変化すること等に着目して、見出されたものである。
【0023】
すなわち、本実施形態は、第1導通経路と第2導通経路とが並列に接続されている抵抗値可変回路と、その抵抗値可変回路を制御する制御部と、を備えたものであり、前記第1導通経路と前記第2導通経路との共通接続点のうちの一方側接続点を、駆動対象素子のゲートに接続したものとなっている。
【0024】
また、前記第1導通経路は、第1抵抗器が挿入接続されており、前記第2導通経路は、第2抵抗器と、当該第2導通経路の電気的状態を変更可能な電気的状態可変部(例えば後述の実施例1では開閉スイッチ41、後述の実施例2では半導体スイッチング素子Q3)と、が直列に挿入接続されたものとなっている。
【0025】
そして、前記制御部においては、駆動対象素子の温度変化を検出し、その検出結果に応じて前記第2導通経路の電気的状態可変部を制御することにより、当該第2導通経路の電気的状態を変更できる構成となっている。
【0026】
この本実施形態の抵抗値可変回路および制御部を有した構成によれば、駆動対象素子の温度状態に応じて、当該駆動対象素子のゲート抵抗の大きさを適宜変更することができる。そして、前記駆動対象素子のゲート抵抗の変更により、当該駆動対象素子のターンオフ時間を適宜設定することが可能となる。
【0027】
例えば、複数個の駆動対象素子が直列に接続されている直列回路において、各駆動対象素子の電圧分担が不均一になっている場合には、当該各駆動対象素子はそれぞれ異なる温度状態となる。このような場合、前記各駆動対象素子それぞれに本実施形態のゲート駆動回路を適用すれば、当該各駆動対象素子のターンオフ時間を、当該各駆動対象素子それぞれの温度状態に応じて適宜設定することができ、電圧分担の均等化を図ることが可能となる。
【0028】
本実施形態の制御部においては、駆動対象素子の温度変化を検出する構成が、従来構成のようにスイッチング制御時のノイズや振動の影響を受けることがないため、良好な検出精度を得ることも可能となる。
【0029】
本実施形態の第2導通経路の電気的状態においては、たとえ駆動対象素子側が比較的高電圧の回路の場合であっても、制御部によって電気的状態可変部を適宜制御することにより、容易に変更(例えば後述の実施例1では開閉スイッチ41を切り替え制御して変更)できる。
【0030】
すなわち、本実施形態の電気的状態可変部を制御する構成は、例えば従来構成のような大きい電位差に耐え得る通信構成等を必要としない。したがって、本実施形態によれば、従来構成と比較して、装置の低コスト化や小型化等に貢献できる可能性がある。
【0031】
本実施形態のゲート駆動回路は、前述のような抵抗値可変回路および制御部を有した構成であって、駆動対象素子の温度状態に応じて第2導通経路の電気的状態を制御することにより、当該駆動対象素子のゲート抵抗を変更してターンオフ時間を適宜設定できるものであれば良い。
【0032】
例えば、種々の分野(例えばゲート駆動回路技術,半導体スイッチング素子技術,温度変化検出技術,電力変換装置技術等の分野)の技術常識を適宜適用して設計変形することも可能であり、その一例として以下に示す実施例1,2が挙げられる。なお、以下の実施例1,2においては、同様のものには同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0033】
≪実施例1≫
<ゲート駆動回路1の主な構成>
図1図2は、実施例1によるゲート駆動回路1の概略構成を説明するものである。このゲート駆動回路1は、電源V1,V2が直列に接続されているゲート駆動電源Vと、そのゲート駆動電源Vの正極側(Vcc_p側)と負極側(Vcc_n側)との間に接続されている出力段素子Qと、ゲート信号を生成して出力段素子Qを駆動可能なゲート信号生成部3と、出力段素子Qおよび双方向経路2を介して駆動対象素子SWのゲートGに接続されている抵抗値可変回路4Aと、その抵抗値可変回路4Aを制御可能な制御部5Aと、を主として備えている。電源V1,V2の直列接続点である中性点Voは、駆動対象素子SWのソースSに接続されている。
【0034】
双方向経路2は、ターンオン電流を流すことが可能な順方向経路21と、ターンオフ電流を流すことが可能な逆方向経路22と、の両者が並列に接続(共通接続点2a,2bを介して接続)されている。順方向経路21および逆方向経路22における一方の共通接続点2aは、ゲートGに接続され、他方の共通接続点2bは、後述の第1半導体スイッチQ1および第2半導体スイッチQ2の直列接続点Qaに接続されている。
【0035】
順方向経路21は、抵抗器R21およびダイオードD21が直列に挿入接続され、当該ダイオードD21がゲートGに向かって順方向となるように構成されている。逆方向経路22は、抵抗器R22およびダイオードD22が直列に挿入接続され、当該ダイオードD22がゲートGに向かって逆方向となるように構成されている。
【0036】
出力段素子Qは、第1半導体スイッチQ1および第2半導体スイッチQ2を相補的に駆動できるように接続して構成されたものである。図中の出力段素子Qの場合、npn型のMOSFETである第1半導体スイッチQ1のソースと、pnp型のMOSFETである第2半導体スイッチQ2のソースと、が直列接続点Qaを介して直列に接続されている。また、第1半導体スイッチQ1のドレインは、電源V1の正極側に接続され、第2半導体スイッチQ2のドレインは、後述の抵抗値可変回路4Aを介して電源V2の負極側に接続されている。また、第1半導体スイッチQ1および第2半導体スイッチQ2の各ゲートが、共通接続点Qbを介してゲート信号生成部3に接続されている。
【0037】
このように構成された出力段素子Qにおいては、ゲート信号生成部3からのゲート信号を介して相補的に駆動する。これにより、電源V1の正電圧と電源V2の負電圧とがパルス状のスイッチング制御信号となり、駆動対象素子SWがターンオン,ターンオフすることとなる。
【0038】
具体的に、第1半導体スイッチQ1がオン状態で第2半導体スイッチQ2がオフ状態の場合に、ターンオン電流が、第1半導体スイッチQ1→順方向経路21→駆動対象素子SWの順で流れ、当該駆動対象素子SWがターンオンすることとなる。
【0039】
また、第1半導体スイッチQ1がオフ状態で第2半導体スイッチQ2がオン状態の場合には、ターンオフ電流が、駆動対象素子SW→逆方向経路22→第2半導体スイッチQ2の順で流れ、駆動対象素子SWがターンオフすることとなる。
【0040】
抵抗値可変回路4Aは、第1導通経路4cと第2導通経路4dとを並列に接続(共通接続点4a,4bを介して接続)して構成されている。第1導通経路4cは、第1抵抗器Rcが挿入接続されている。
【0041】
第2導通経路4dにおいては、第2抵抗器Rdと、当該第2導通経路4dの電気的状態(導通状態か遮断状態)を切り替え変更可能な開閉スイッチ41と、が直列に挿入接続されている。
【0042】
また、第1導通経路4cおよび第2導通経路4dにおける一方の共通接続点4aは、第2半導体スイッチQ2のドレインに接続され、他方の共通接続点4bは、電源V2の負極側に接続されている。
【0043】
このように構成された抵抗値可変回路4Aにおいては、第2導通経路4dの電気的状態が変更されると、当該抵抗値可変回路4Aの全体の抵抗である並列合成抵抗の大きさが、変更されることとなる。また、駆動対象素子SWがターンオフする場合には、ターンオフ電流が流れるため、抵抗値可変回路4Aの並列合成抵抗がゲート抵抗として機能する。
【0044】
したがって、駆動対象素子SWのターンオフ時におけるゲート抵抗の大きさは、第2導通経路4dの電気的状態によって変更されることとなる。
【0045】
制御部5Aは、駆動対象素子SWの温度変化を検出し、その検出結果に応じて開閉スイッチ41を開状態または閉状態に切り替え制御することにより、当該第2導通経路4dの電気的状態を変更できる構成となっている。すなわち、制御部5Aは、駆動対象素子SWの温度状態に応じて、駆動対象素子SWのターンオフ時におけるゲート抵抗の大きさを変更し、当該駆動対象素子SWのターンオフ時間を適宜設定できる構成となっている。
【0046】
<抵抗値可変回路4Aの構成例>
抵抗値可変回路4Aは、前述のように第1導通経路4cと第2導通経路4dとが並列に接続されたものであって、第2導通経路4dの電気的状態の変更により、当該抵抗値可変回路4Aの並列合成抵抗の大きさを適宜変更できる構成であれば良い。
【0047】
例えば、図2に示す抵抗値可変回路4Aの場合、複数個(図中ではn-1個(nは2以上の自然数。以下同様))の第2導通経路4d(図中では第2導通経路4d1~4dn-1)が第1導通経路4cに対して並列に接続されているが、単に1個の第2導通経路4dを当該第1導通経路4cに対して並列に接続した構成であっても良い。
【0048】
図2に示す抵抗値可変回路4Aにおいて、第1抵抗器Rcと第2抵抗器Rd(第2導通経路4d1~4dn-1の各第2抵抗器Rd)の抵抗値がそれぞれr1とすると、制御部5Aにより第2導通経路4d1~4dn-1の電気的状態を適宜変更した場合、当該抵抗値可変回路4Aの並列合成抵抗値Rxは下記式(1)の範囲内で変更されることとなる。
【0049】
r1≦Rx≦(r1/n) ……(1)
したがって、図2に示す抵抗値可変回路4Aの並列合成抵抗値Rxにおいては、第2導通経路4dの個数が多くなるに連れて、式(1)の範囲内で連続的に変化することとなる。一方、第2導通経路4dの個数を少なくした場合には、抵抗値可変回路4Aを小型化できる可能性があるが、並列合成抵抗値Rxは式(1)の範囲内で比較的階段状に変化することが考えられる。
【0050】
<制御部5Aの構成例>
制御部5Aは、前述のように駆動対象素子SWの温度変化を検出し、その検出結果に応じて開閉スイッチ41を切り替え制御できる構成であれば種々の態様を適用することが可能である。
【0051】
例えば図2に示す制御部5Aは、以下に示すような構成により、駆動対象素子SWの温度変化を電圧信号に変換して検出し、その検出結果を任意の閾値とを比較した比較結果に基づいて、抵抗値固定経路5e1~5en-1の各開閉スイッチ41をそれぞれ切り替え制御することが可能となっている。
【0052】
まず、図2に示す制御部5Aは、抵抗器ReとNTC型のサーミスタ51とが直列に挿入接続されている抵抗値可変経路50と、それぞれ異なる抵抗値の抵抗器(図中では抵抗値固定経路5e1~5en-1に対し抵抗器Re1~Ren-1)が2個直列に挿入接続されている抵抗値固定経路5e1~5en-1と、が並列に接続された構成となっている。また、抵抗値可変経路50に流れる電圧と、各抵抗値固定経路5e1~5en-1に流れる電圧と、を比較した比較結果(以下、単に電圧比較結果と適宜称する)に基づいて開閉スイッチ41に切り替え制御信号を出力する比較器5f1~5fn-1が、設けられている。
【0053】
サーミスタ51は、駆動対象素子SWに近接して配置され、当該駆動対象素子SWの温度状態によって抵抗値が変化するものとする。これにより、駆動対象素子SWの温度が上昇するに連れて、抵抗値可変経路50の全体の抵抗である直列合成抵抗が小さくなり、当該抵抗値可変経路50に流れる電圧が高くなっていくこととなる。すなわち、比較器5f1~5fn-1の電圧比較結果においては、駆動対象素子SWの温度変化が反映されたものとなる。
【0054】
抵抗値固定経路5e1~5en-1および比較器5f1~5fn-1は、それぞれ第2導通経路4d1~4dn-1の各開閉スイッチ41に対応して設けられており、当該各開閉スイッチ41の切り替え動作の閾値(以下、単に閾値と適宜称する)がそれぞれ設定されているものとする。そして、比較器5f1~5fn-1においては、それぞれの電圧比較結果が閾値を超えた場合に、対応する開閉スイッチ41に切り替え制御信号を出力(図中では点線矢印で描写するように出力)して、当該開閉スイッチ41を開状態に切り替え制御する。
【0055】
すなわち、制御部5Aにおいては、駆動対象素子SWの温度状態が各開閉スイッチ41の閾値のうち少なくとも一つを超えた状態になった場合に、当該超えた閾値に対応する開閉スイッチ41を開状態に切り替え制御することとなる。
【0056】
各開閉スイッチ41の閾値は、駆動対象素子SWの温度変化(すなわち比較器5f1~5fn-1の電圧比較結果)に対応して、それぞれ異なる大きさの値で適宜設定することが可能である。具体例としては、抵抗値固定経路5e1~5en-1それぞれの抵抗器Re1~Ren-1の抵抗値の大きさを適宜調整することにより、各開閉スイッチ41において異なる大きさの閾値をそれぞれ設定(例えば後述の動作例のように設定)することが挙げられる。
【0057】
このように各開閉スイッチ41の閾値を設定することにより、比較器5f1~5fn-1の電圧比較結果においては、駆動対象素子SWの温度が上昇するに連れて、対応する閾値を順次超えていくこととなる。
【0058】
<その他>
図1に示す駆動対象素子SWは、MOSFET構造を適用した描写となっているが、これに限定されるものではなく、種々の構造を適用することが可能である。その一例として、IGBT,SiC等の半導体スイッチング素子が挙げられる。
【0059】
また、ゲート駆動回路1は、種々の電力変換装置に適用することが可能である。例えば、図外の直流電源(以下、単に図外直流電源と適宜称する)からの直流電力エネルギーをパルス状に変換して図外の負荷(以下、単に図外負荷と適宜称する)に供給する構成のパルス電源が挙げられる。
【0060】
より具体的には、図外負荷と、当該図外負荷に直列に接続されている図外直流電源と、の間に対して駆動対象素子SWを複数個直列に挿入接続し、当該各駆動対象素子SWを各々のゲート駆動回路1によりスイッチング制御する構成が挙げられる。
【0061】
<実施例1によるゲート駆動回路1の動作例>
次に、実施例1によるゲート駆動回路1の動作例を説明する。なお、第2導通経路4d1~4dn-1の各開閉スイッチ41に対応する閾値は、当該第2導通経路4d1~4dn-1の順で大きくなるように設定されているものであって、駆動対象素子SWの温度状態が所定の温度tを超えた場合に、比較器5f1~5fn-1の電圧比較結果が対応する閾値を順次超えていくように設定されているものとする。
【0062】
まず、駆動対象素子SWに対する印加電圧が比較的低く、当該駆動対象素子SWの温度状態が温度t以下の場合、比較器5f1~5fn-1の電圧比較結果は対応する閾値以下となり、第2導通経路4d1~4dn-1の各開閉スイッチ41はそれぞれ閉状態となる。この場合、式(1)の並列合成抵抗値Rxはr1/nとなる。
【0063】
次に、駆動対象素子SWに対する印加電圧が徐々に大きくなり、当該駆動対象素子SWの温度状態が温度tを超えた場合、当該温度状態が温度上昇するに連れて、比較器5f1~5fn-1の電圧比較結果は当該第2導通経路4d1~4dn-1の順で閾値を超えていくこととなる。これにより、第2導通経路4d1~4dn-1の各開閉スイッチ41は、当該第2導通経路4d1~4dn-1の順で開状態になっていく。この場合、式(1)の並列合成抵抗値Rxが徐々に大きくなり、駆動対象素子SWのターンオフ時間は徐々に遅延することとなる。
【0064】
以上示した実施例1によれば、駆動対象素子SWの温度状態に応じて、当該駆動対象素子SWのゲート抵抗の大きさを適宜変更できることが判る。そして、駆動対象素子SWのゲート抵抗の変更により、当該駆動対象素子SWのターンオフ時間を適宜設定可能であることが判る。
【0065】
例えば、駆動対象素子SWが複数個直列に接続されている直列回路において、各駆動対象素子SWの電圧分担が不均一になっている場合には、当該各駆動対象素子SWのターンオフ時間をそれぞれの温度状態に応じて適宜設定でき、電圧分担の均等化が十分可能となる。
【0066】
≪実施例2≫
実施例2は、ゲート駆動回路1において、抵抗値可変回路4Aおよび制御部5Aの替わりに、図3に示すような抵抗値可変回路4Bおよび制御部5Bを適用したものである。
【0067】
図3において、抵抗値可変回路4Bは、図2の抵抗値可変回路4Aと同様に第1導通経路4cを有したものであって、当該第1導通経路4cに対して第2導通経路4gを並列に接続した構成となっている。
【0068】
第2導通経路4gは、第2抵抗器Rdと、当該第2導通経路4gの電気的状態(直列合成抵抗)を変更可能な半導体スイッチング素子Q3と、が直列に挿入接続されている。
【0069】
半導体スイッチング素子Q3は、当該半導体スイッチング素子Q3のゲートに対して所望の印過電圧(以下、単にQ3ゲート印過電圧と適宜称する)を印加(後述の電圧調整回路52により印加)でき、当該Q3ゲート印過電圧に応じてオン抵抗が変化し、オン状態またはオフ状態に切り替わるものとする。
【0070】
このように構成された抵抗値可変回路4Bにおいては、半導体スイッチング素子Q3のオン抵抗が変化すると、第2導通経路4gの直列合成抵抗が変更、すなわち当該抵抗値可変回路4Bの並列合成抵抗の大きさが変更されることとなる。
【0071】
また、駆動対象素子SWがターンオフする場合には、ターンオフ電流が流れるため、抵抗値可変回路4Bの並列合成抵抗がゲート抵抗として機能する。
【0072】
したがって、駆動対象素子SWのターンオフ時におけるゲート抵抗の大きさは、第2導通経路4gの電気的状態によって変更されることとなる。
【0073】
制御部5Bは、図2の制御部5Aと同様に抵抗値可変経路50を有したものであって、当該抵抗値固定経路5eの替わりに電圧調整回路52を有した構成となっている。
【0074】
この電圧調整回路52は、抵抗値可変経路50に流れる電圧を検出し、その検出結果(すなわち、駆動対象素子SWの温度状態が反映された検出結果)に応じて所望のQ3ゲート印過電圧を印加できる構成となっている。
【0075】
すなわち、制御部5Bは、駆動対象素子SWの温度状態に応じて、駆動対象素子SWのターンオフ時におけるゲート抵抗の大きさを変更し、当該駆動対象素子SWのターンオフ時間を適宜設定できる構成となっている。
【0076】
<その他>
抵抗値可変回路4Bは、前述のように第1導通経路4cと第2導通経路4gとが並列に接続されたものであって、第2導通経路4gの電気的状態の変更により、当該抵抗値可変回路4Bの並列合成抵抗の大きさを適宜変更できる構成であれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0077】
例えば、図3に示す抵抗値可変回路4Bにおいて、第1抵抗器Rcと第2抵抗器Rdの抵抗値がそれぞれr1とすると、制御部5Bにより第2導通経路4gの電気的状態を適宜変更した場合、当該抵抗値可変回路4Bの並列合成抵抗値Ryは下記式(2)の範囲内で変更されることとなる。
【0078】
r1≦Ry≦(r1/2) ……(2)
また、電圧調整回路52において、Q3ゲート印過電圧を連続的に変化させながら印加できる構成とすることにより、抵抗値可変回路4Bの並列合成抵抗値Ryは式(2)の範囲内で連続的に変化することとなる。
【0079】
制御部5Bにおいては、前述のように駆動対象素子SWの温度変化を検出し、その検出結果に応じて半導体スイッチング素子Q3のオン抵抗を変更制御できる構成であれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0080】
具体例として、図3に示す制御部5Bにおいては、当該半導体スイッチング素子Q3を能動領域で動作制御可能な構成とすることが挙げられる。
【0081】
<実施例2によるゲート駆動回路1の動作例>
次に、実施例2によるゲート駆動回路1の動作例を説明する。なお、電圧調整回路52においては、抵抗値可変経路50から検出する電圧が大きくなるに連れて(すなわち、駆動対象素子SWの温度状態が高温になるに連れて)、Q3ゲート印過電圧が小さく(すなわちオン抵抗が大きく)なるものとする。また、駆動対象素子SWの温度状態が温度t以下の場合に、半導体スイッチング素子Q3がオン状態となるようにQ3ゲート印過電圧を出力し、当該駆動対象素子SWの温度状態が温度tを超えた場合に、半導体スイッチング素子Q3がオフ状態となるようにQ3ゲート印過電圧を出力するものとする。
【0082】
まず、駆動対象素子SWに対する印加電圧が比較的低く、当該駆動対象素子SWの温度状態が温度tよりも十分小さい場合、半導体スイッチング素子Q3がオン状態であり、式(2)の並列合成抵抗値Ryはr1/2となる。
【0083】
次に、駆動対象素子SWに対する印加電圧が徐々に大きくなり、当該駆動対象素子SWの温度状態が上昇して温度tに近似するに連れて、式(2)の並列合成抵抗値Ryはr1/2から徐々に大きくなっていく。
【0084】
そして、当該駆動対象素子SWの温度状態が温度tを超えた場合、半導体スイッチング素子Q3がオフ状態となり、式(2)の並列合成抵抗値Ryはr1となる。
【0085】
以上示した実施例2によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例2においては、Q3ゲート印過電圧に応じて抵抗値可変回路4Bの並列合成抵抗値Ryを連続的に変化させることができるため、例えば図2の抵抗値可変回路4Aのように複数個の第2導通経路4dを並列接続した構成と比較すると、ゲート駆動回路1の小型化や簡略化に貢献し易くなることが判る。
【0086】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0087】
1…ゲート駆動回路
2…双方向経路
3…ゲート信号生成部
4A,4B…抵抗値可変回路
4c…第1導通経路
4d,4g…第2導通経路
41…開閉スイッチ
5A,5B…制御部
SW…駆動対象素子
Rc…第1抵抗器
Rd…第2抵抗器
Q3…半導体スイッチング素子
図1
図2
図3