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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20240814BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240814BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20240814BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20240814BHJP
   F02M 31/20 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F02D19/08 B
F02M21/02 G
F02M21/02 K
F02M25/00 F
F02M25/00 G
F02M27/02 U
F02M31/20 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021094141
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186094
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】中谷 規之介
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-122369(JP,A)
【文献】特開2013-029039(JP,A)
【文献】特開2013-185542(JP,A)
【文献】特開2014-211155(JP,A)
【文献】特開2015-135067(JP,A)
【文献】特開2016-210924(JP,A)
【文献】特開2020-172906(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/08
F02M 21/02
F02M 25/00
F02M 27/02
F02M 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が燃焼する燃焼室を有するエンジンと、
燃料を改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器により生成された前記改質ガスが前記燃焼室に向けて流れる改質ガス流路と、
前記燃焼室に燃料を供給する第1燃料供給部と、
前記燃焼室に空気を供給する第1空気供給部と、
前記改質器に燃料を供給する第2燃料供給部と、
前記改質器に空気を供給する第2空気供給部と、
前記エンジンを冷却するエンジン冷却水が循環する冷却水循環流路と、
前記改質ガス流路に配設され、前記エンジン冷却水を利用して前記改質ガスを冷却するクーラとを備え、
前記第1燃料供給部は、前記燃焼室に向けて液体燃料を噴射する第1燃料噴射弁を有し、
前記第2燃料供給部は、前記改質器の上流側に配置され、液体燃料を噴射する第2燃料噴射弁と、前記第2燃料噴射弁と前記改質器との間に配置され、前記エンジンに関する熱媒体を利用して、前記第2燃料噴射弁から噴射された液体燃料を加熱して気化させる熱交換器とを有し、
前記第2燃料噴射弁は、前記熱交換器に向けて液体燃料を噴射し、
前記冷却水循環流路は、前記エンジン冷却水が前記エンジン、前記クーラ及び前記熱交換器を前記エンジン、前記クーラ及び前記熱交換器の順に通るように循環し、
前記熱媒体は、前記エンジン冷却水であり、
前記熱交換器は、前記クーラにおいて暖められた前記エンジン冷却水の熱を利用して液体燃料を加熱するエンジンシステム。
【請求項2】
燃料が燃焼する燃焼室を有するエンジンと、
燃料を改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器により生成された前記改質ガスが前記燃焼室に向けて流れる改質ガス流路と、
前記燃焼室に燃料を供給する第1燃料供給部と、
前記燃焼室に空気を供給する第1空気供給部と、
前記改質器に燃料を供給する第2燃料供給部と、
前記改質器に空気を供給する第2空気供給部とを備え、
前記第1燃料供給部は、前記燃焼室に向けて液体燃料を噴射する第1燃料噴射弁を有し、
前記第2燃料供給部は、前記改質器の上流側に配置され、液体燃料を噴射する第2燃料噴射弁と、前記第2燃料噴射弁と前記改質器との間に配置され、前記エンジンに関する熱媒体を利用して、前記第2燃料噴射弁から噴射された液体燃料を加熱して気化させる熱交換器とを有し、
前記第2空気供給部は、前記改質器に供給される空気が流れる空気流路を有し、
前記熱交換器は、前記空気流路に配設されており、
前記第2燃料噴射弁は、前記熱交換器における空気が導入される空気導入部に向けて液体燃料を噴射する液体燃料を噴射するエンジンシステム。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記改質器の上流側の手前位置に配置されている請求項1又は2記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記第1燃料供給部は、前記第1燃料噴射弁に供給される液体燃料が流れる燃料流路と、前記燃料流路に配設され、液体燃料にバブルを発生させるバブル発生器とを有する請求項1~の何れか一項記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンシステムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載のエンジンシステムは、機関本体と、この機関本体の各気筒の吸気ポートに接続された吸気枝管と、機関本体の各機関吸気通路に向かってアンモニアを噴射するアンモニア噴射弁と、液体のアンモニアから水素を生成する水素発生装置と、機関本体の各機関吸気通路に向かって水素を噴射する水素噴射弁とを備えている。水素発生装置は、液体のアンモニアが貯留されたタンクと、液体のアンモニアを加熱して気化させる蒸発器と、この蒸発器で生成された気体のアンモニアの一部がアンモニア噴射弁に向けて流れる供給管と、蒸発器で生成された気体のアンモニアを分解する分解器と、この分解器に供給される空気が流れる流入管と、分解器により生成された水素が水素噴射弁に向けて流れる供給管とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-211155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、アンモニアの気化潜熱が大きいため、蒸発器の体格が大型になってしまう。また、液体のアンモニアが気化されると、アンモニアの体積が大きくなるため、アンモニア噴射弁及び分解器に気体のアンモニアを供給するための配管の径または数を増加せざるを得ない。その結果、エンジンシステムの大型化につながる。
【0005】
本発明の目的は、小型化を図ることができるエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るエンジンシステムは、燃料が燃焼する燃焼室を有するエンジンと、燃料を改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、改質器により生成された改質ガスが燃焼室に向けて流れる改質ガス流路と、燃焼室に燃料を供給する第1燃料供給部と、燃焼室に空気を供給する第1空気供給部と、改質器に燃料を供給する第2燃料供給部と、改質器に空気を供給する第2空気供給部とを備え、第1燃料供給部は、燃焼室に向けて液体燃料を噴射する第1燃料噴射弁を有し、第2燃料供給部は、改質器の上流側に配置され、液体燃料を噴射する第2燃料噴射弁と、第2燃料噴射弁と改質器との間に配置され、エンジンに関する熱媒体を利用して、第2燃料噴射弁から噴射された液体燃料を加熱して気化させる熱交換器とを有し、第2燃料噴射弁は、熱交換器に向けて液体燃料を噴射する。
【0007】
このようなエンジンシステムにおいては、第1燃料供給部の第1燃料噴射弁からエンジンの燃焼室に向けて液体燃料が噴射されることで、燃焼室に液体燃料が供給されると共に、第1空気供給部により燃焼室に空気が供給される。すると、燃焼室において液体燃料が燃焼し、エンジンの熱容量及び燃焼熱によって液体燃料が加熱されて気化する。一方、第2燃料供給部の第2燃料噴射弁から熱交換器に向けて液体燃料が噴射されることで、熱交換器に液体燃料が供給される。すると、熱交換器において、エンジンに関する熱媒体を利用して、液体燃料が加熱されて気化する。そして、燃料ガス(気体燃料)が改質器に供給される。また、第2空気供給部により改質器に空気が供給される。そして、改質器において、燃料ガスが改質されることにより、水素を含有した改質ガスが生成される。改質ガスは、改質ガス流路を流れてエンジンの燃焼室に供給される。そして、燃焼室において、燃料ガスが改質ガス中の水素と共に燃焼する。
【0008】
このように第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁は、燃料ガスではなく液体燃料を噴射する。このため、第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁に供給される燃料を気化させる気化器が不要となる。また、燃料が液体状態で第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁に供給されるため、第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁に供給される燃料の体積が小さくなる。従って、燃料が流れる配管の径を小さくしたり、燃料が流れる配管の数を減少させることができる。以上により、エンジンシステムの小型化を図ることができる。
【0009】
熱交換器は、改質器の上流側の手前位置に配置されていてもよい。このような構成では、熱交換器から改質器までの距離が短くなるため、熱交換器により気化された燃料が改質器に達するまでの間で冷えにくくなる。
【0010】
エンジンシステムは、エンジンを冷却するエンジン冷却水が循環する冷却水循環流路と、改質ガス流路に配設され、エンジン冷却水を利用して改質ガスを冷却するクーラとを更に備え、冷却水循環流路は、エンジン冷却水がエンジン、クーラ及び熱交換器をエンジン、クーラ及び熱交換器の順に通るように循環し、熱媒体は、エンジン冷却水であり、熱交換器は、クーラにおいて暖められたエンジン冷却水の熱を利用して液体燃料を加熱してもよい。このような構成では、エンジン冷却水がクーラを流れることで、改質ガスとエンジン冷却水との熱交換が行われ、改質ガスが冷却される。そして、クーラにより暖められたエンジン冷却水が熱交換器を流れることで、第2燃料噴射弁から噴射された液体燃料とエンジン冷却水との熱交換が行われ、液体燃料が加熱されて気化する。このように既存のエンジン冷却水を熱媒体として利用することにより、液体燃料を簡素かつ安価な構成で気化させることができる。
【0011】
第2空気供給部は、改質器に供給される空気が流れる空気流路を有し、熱交換器は、空気流路に配設されており、第2燃料噴射弁は、熱交換器における空気が導入される空気導入部に向けて液体燃料を噴射してもよい。このような構成では、第2燃料噴射弁から熱交換器の空気導入部に向けて液体燃料が噴射されることで、燃料ガスが空気と混合して改質器に供給される。従って、改質器のガス導入部の数が必要最小限で済むため、改質器の構造を簡単化することができる。
【0012】
第1燃料供給部は、第1燃料噴射弁に供給される液体燃料が流れる燃料流路と、燃料流路に配設され、液体燃料にバブルを発生させるバブル発生器とを有してもよい。このような構成では、第1燃料噴射弁に供給される液体燃料に空気が混合されるため、液体燃料が気化されやすくなる。また、液体燃料に空気が含まれるため、液体燃料の燃焼性が良くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エンジンシステムの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。
図2図1に示されたアンモニアエンジンの断面図である。
図3図1に示されたマイクロバブル発生器の断面図である。
図4図1に示された熱交換器の断面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】比較例としてのエンジンシステムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジンシステムを示す概略構成図である。図1において、本実施形態のエンジンシステム1は、車両に搭載されている。エンジンシステム1は、アンモニアエンジン2と、吸気流路3と、排気流路4と、メインインジェクタ5と、メインスロットルバルブ6とを備えている。
【0017】
アンモニアエンジン2は、アンモニア(NH)を燃料として使用するエンジンである。アンモニアエンジン2では、難燃性のアンモニアの燃焼を促進させるため、アンモニアに水素(H)が混合される。アンモニアエンジン2は、例えば4気筒エンジンである。
【0018】
アンモニアエンジン2は、図2に示されるように、シリンダブロック7と、このシリンダブロック7の上面に固定されたシリンダヘッド8と、シリンダブロック7の内部に往復昇降可能に配置されたピストン9とを有している。また、アンモニアエンジン2は、アンモニアが水素と共に燃焼して排気ガスが発生する4つの燃焼室10を有している。これらの燃焼室10は、シリンダブロック7とシリンダヘッド8とピストン9とで囲まれる空間によって画成されている。なお、図2では、1気筒のみ示されている。
【0019】
シリンダヘッド8には、燃焼室10と連通された吸気ポート11及び排気ポート12が設けられている。吸気ポート11は、吸気弁(図示せず)により開閉される。排気ポート12は、排気弁(図示せず)により開閉される。
【0020】
吸気流路3は、アンモニアエンジン2の吸気ポート11と接続されている。吸気流路3は、アンモニアエンジン2の燃焼室10に供給される空気が流れる配管である。吸気流路3には、空気に含まれる塵や埃等の異物を除去するエアクリーナ13が配設されている。
【0021】
排気流路4は、アンモニアエンジン2の排気ポート12と接続されている。排気流路4は、アンモニアエンジン2の燃焼室10で発生した排気ガスが流れる流路である。排気流路4には、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)等の有害物質を除去する排気触媒14が配設されている。排気触媒14としては、例えば三元触媒及びSCR(SelectiveCatalytic Reduction)触媒等が用いられる。
【0022】
メインインジェクタ5は、図2に示されるように、アンモニアエンジン2の吸気ポート11または燃焼室10に液体アンモニアを噴射する。メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の各気筒毎に配置されている。メインインジェクタ5は、シリンダヘッド8に取り付けられている。メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の燃焼室10に向けて液体アンモニア(液体燃料)を噴射する第1燃料噴射弁である。
【0023】
メインスロットルバルブ6は、吸気流路3におけるエアクリーナ13とアンモニアエンジン2との間に配設されている。メインスロットルバルブ6は、アンモニアエンジン2の燃焼室10に供給される空気の流量を制御する流量制御弁である。
【0024】
吸気流路3及びメインスロットルバルブ6は、アンモニアエンジン2の燃焼室10に空気を供給する第1空気供給部15を構成している。
【0025】
また、エンジンシステム1は、アンモニアボンベ16と、液ポンプ17と、アンモニア流路18と、デリバリパイプ19と、マイクロバブル発生器20とを備えている。
【0026】
アンモニアボンベ16は、アンモニアを液体状態で貯蔵する。つまり、アンモニアボンベは、液体アンモニアを貯蔵する。液ポンプ17は、アンモニアボンベ16に貯蔵された液体アンモニアをメインインジェクタ5及び改質インジェクタ32(後述)に向けて圧送する。
【0027】
アンモニア流路18は、液ポンプ17の吐出口と各メインインジェクタ5とをデリバリパイプ19を介して接続する。アンモニア流路18は、液ポンプ17により圧送された液体アンモニアがメインインジェクタ5に向けて流れる燃料流路である。デリバリパイプ19は、アンモニア流路18を流れてきた液体アンモニアを各メインインジェクタ5に分配して供給する。
【0028】
マイクロバブル発生器20は、アンモニア流路18に配設されている。マイクロバブル発生器20は、アンモニア流路18を流れる液体アンモニアにマイクロバブルを発生させる。マイクロバブルは、例えば直径が100μm以下の微細な気泡である。
【0029】
マイクロバブル発生器20は、図3に示されるように、略円筒状の筐体21を有している。筐体21は、アンモニアに対して耐腐食性を有するステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0030】
筐体21には、液体アンモニアが流れるアンモニア通路22が設けられている。アンモニア通路22は、筐体21の軸方向に延びている。筐体21の上流側端部には、アンモニア通路22と連通する導入部23が設けられている。導入部23は、上流側から下流側に向かって徐々に径が小さくなるようなテーパ状を呈している。筐体21の下流側端部には、アンモニア通路22と連通する導出部24が設けられている。導出部24は、上流側から下流側に向かって徐々に径が大きくなるようなテーパ状を呈している。
【0031】
また、筐体21には、大気と連通された吸気部25と、この吸気部25により吸入された空気をアンモニア通路22に導く空気通路26とが設けられている。吸気部25は、筐体21の側面に開口し、筐体21の径方向に空気を吸入する。空気通路26は、アンモニア通路22の周囲に円環状に配置されている。また、空気通路26は、筐体21の軸方向の複数箇所において空気をアンモニア通路22に導くように形成されている。
【0032】
このようなマイクロバブル発生器20において、アンモニア流路18を流れてきた液体アンモニアが導入部23から導入されてアンモニア通路22に供給されると共に、吸気部25から吸入された空気が空気通路26を通ってアンモニア通路22に供給されることで、液体アンモニアに空気が混入する。そして、空気が含有された液体アンモニアは、導出部24から導出されて、アンモニア流路18を各メインインジェクタ5に向かって流れる。
【0033】
アンモニアボンベ16、液ポンプ17、アンモニア流路18、デリバリパイプ19、マイクロバブル発生器20及びメインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の燃焼室10に燃料であるアンモニアを供給する第1燃料供給部27を構成している。
【0034】
また、エンジンシステム1は、改質器28と、空気流路29と、改質スロットルバルブ30と、アンモニア流路31と、改質インジェクタ32と、熱交換器33と、改質ガス流路34と、クーラ35と、ストップバルブ36とを備えている。
【0035】
改質器28は、円筒状の筐体37と、この筐体37内に収容された改質部38及び電気ヒータ39とを有している。筐体37は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0036】
改質部38は、アンモニアを燃焼させて発生した熱を利用してアンモニアを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する。改質部38は、例えばハニカム構造の改質触媒38aを有している。改質触媒38aは、アンモニアを燃焼させると共に、アンモニアを水素に分解する触媒である。改質触媒38aは、例えばATR(Autothermal Reformer)式アンモニア改質触媒である。改質触媒38aとしては、例えばコバルト系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒またはパラジウム系触媒等が使用される。
【0037】
電気ヒータ39は、筐体37内における改質部38よりも上流側に配置されている。電気ヒータ39は、改質部38を加熱する。電気ヒータ39は、電力が与えられると発熱し、その熱により改質部38を加熱する。このとき、電気ヒータ39で発生する熱は、筐体37内を流れるガスを通じて改質部38に伝わると共に筐体37自体を通じて改質部38に伝わる。
【0038】
空気流路29は、吸気流路3と改質器28とを接続している。空気流路29の一端は、吸気流路3におけるエアクリーナ13とメインスロットルバルブ6との間に接続されている。空気流路29の他端は、改質器28の筐体37のガス導入部に接続されている。空気流路29は、改質器28に供給される空気が流れる流路である。改質スロットルバルブ30は、空気流路29に配設されている。改質スロットルバルブ30は、改質器28に供給される空気の流量を制御する流量制御弁である。
【0039】
空気流路29及び改質スロットルバルブ30は、改質器28に空気を供給する第2空気供給部40を構成している。
【0040】
アンモニア流路31は、液ポンプ17の吐出口と改質インジェクタ32とを接続している。アンモニア流路31は、液ポンプ17により圧送された液体アンモニアが改質インジェクタ32に向けて流れる燃料流路である。
【0041】
改質インジェクタ32は、改質器28の上流側に配置されている。改質インジェクタ32は、熱交換器33に向けて液体燃料である液体アンモニアを噴射する第2燃料噴射弁である。改質インジェクタ32は、熱交換器33に取り付けられている(図4参照)。
【0042】
熱交換器33は、空気流路29における改質スロットルバルブ30と改質器28との間に配設されている。また、熱交換器33は、改質インジェクタ32と改質器28との間に配置されている。具体的には、熱交換器33は、改質器28の上流側の手前位置に配置されている。改質器28の上流側の手前位置とは、改質スロットルバルブ30と改質器28とをつなぐ経路(ここでは空気流路29)のうち改質スロットルバルブ30よりも改質器28に近い位置を指している。熱交換器33と改質器28との間の距離は、例えば200mm以下である。
【0043】
熱交換器33は、アンモニアエンジン2に関する熱媒体を利用して、改質インジェクタ32から噴射された液体アンモニアを加熱して気化させる。アンモニアエンジン2に関する熱媒体としては、アンモニアエンジン2を冷却するエンジン冷却水が使用される。
【0044】
熱交換器33は、図4及び図5に示されるように、筐体41と、この筐体41内に配置された複数本のガス供給管42と、これらのガス供給管42を筐体41に支持する2枚の支持板43と、筐体41に取り付けられた冷却水導入管44及び冷却水導出管45とを有している。熱交換器33は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。筐体41の上流側端部には、空気が導入される空気導入部46が設けられている。筐体41の下流側端部には、空気が導出される空気導出部47が設けられている。
【0045】
筐体41は、本体部48と、この本体部48の上流端に連結された連結体49と、本体部48の下流端に連結された連結体50とを有している。本体部48は、円筒状を有している。連結体49は、上記の空気導入部46と、本体部48側から空気導入部46側に向かって先細りとなるように形成されたテーパ部51とを有している。連結体50は、上記の空気導出部47と、本体部48側から空気導出部47側に向かって先細りとなるように形成されたテーパ部52とを有している。
【0046】
各ガス供給管42は、筐体41の軸方向に延びるように本体部48内に収容されている。ガス供給管42は、気化されたアンモニア(アンモニアガス)と空気とが流れる配管である。
【0047】
支持板43は、ガス供給管42と嵌合する複数の円孔部43aを有している。各ガス供給管42の両端部は、支持板43の円孔部43aにそれぞれ嵌入・固定されている。そして、各支持板43は、連結体49,50を介して本体部48の両端部にそれぞれ固定されている。本体部48の両端部は、支持板43によって各ガス供給管42を除いて閉塞された状態となっている。従って、本体部48内における各ガス供給管42の外側の空間にアンモニアガス及び空気が流れ込むことが抑制される。
【0048】
冷却水導入管44は、本体部48の上流側端部の近傍に取り付けられている。冷却水導入管44は、熱媒体であるエンジン冷却水を本体部48内に導入する管路である。冷却水導出管45は、本体部48の下流側端部の近傍に取り付けられている。冷却水導出管45は、エンジン冷却水を本体部48内から導出する管路である。
【0049】
本体部48内における各ガス供給管42の外側の空間は、冷却水導入管44から導入されたエンジン冷却水が冷却水導出管45に向かって流れるエンジン冷却水通路53を形成している。エンジン冷却水通路53は、本体部48、各支持板43及び各ガス供給管42によって画成されている。
【0050】
改質インジェクタ32は、熱交換器33の筐体41に取り付けられている。改質インジェクタ32は、筐体41の連結体49に直接または支持部材(図示せず)を介して固定されている。改質インジェクタ32は、熱交換器33の空気導入部46に向けて液体アンモニアを噴射するように配置されている。
【0051】
このような熱交換器33において、冷却水導入管44から筐体41の本体部48内にエンジン冷却水が導入されると、エンジン冷却水がエンジン冷却水通路53を流れて冷却水導出管45から導出される。その状態で、改質インジェクタ32から空気導入部46に液体アンモニアが噴射されると、液体アンモニアが各ガス供給管42内を空気導出部47に向かって流れる。このとき、各ガス供給管42内を流れる液体アンモニアとエンジン冷却水通路53を流れるエンジン冷却水との熱交換が行われることで、液体アンモニアが加熱されて気化し、アンモニアガスが生成される。そして、アンモニアガスは、空気導入部46から熱交換器33の外部に導出され、空気流路29を改質器28に向かって流れる。
【0052】
図1に戻り、アンモニアボンベ16、液ポンプ17、アンモニア流路31、改質インジェクタ32及び熱交換器33は、改質器28に燃料であるアンモニアを供給する第2燃料供給部54を構成している。
【0053】
改質ガス流路34は、改質器28と吸気流路3とを接続している。改質ガス流路34の一端は、改質器28の筐体37のガス導出部に接続されている。改質ガス流路34の他端は、吸気流路3におけるメインスロットルバルブ6とアンモニアエンジン2との間に接続されている。改質ガス流路34は、改質部38により生成された改質ガスがアンモニアエンジン2の燃焼室10に向けて流れる流路である。
【0054】
クーラ35は、改質ガス流路34に配設されている。クーラ35は、エンジン冷却水を利用して、改質ガス流路34を流れる改質ガスを冷却する。クーラ35は、改質ガスとエンジン冷却水との熱交換によって、改質ガスを冷却する。このようなクーラ35を備えることにより、メインスロットルバルブ6等の吸気系部品が熱により損傷することが防止される。また、改質ガスの体積膨張が抑制されるため、空気がアンモニアエンジン2の燃焼室10に吸入されやすくなる。
【0055】
ストップバルブ36は、改質ガス流路34におけるクーラ35よりも下流側に配設されている。ストップバルブ36は、改質ガス流路34を開閉する開閉弁である。
【0056】
また、エンジンシステム1は、エンジン冷却水が循環する冷却水循環流路55を備えている。冷却水循環流路55は、エンジン冷却水がアンモニアエンジン2、クーラ35及び熱交換器33をアンモニアエンジン2、クーラ35及び熱交換器33の順に通るように循環する。つまり、エンジン冷却水は、アンモニアエンジン2からクーラ35及び熱交換器33の順に流れてアンモニアエンジン2に戻る。
【0057】
このとき、アンモニアエンジン2から導出されたエンジン冷却水は、クーラ35により改質ガスと熱交換されて暖められる。そして、暖められたエンジン冷却水は、熱交換器33により液体アンモニアと熱交換されて冷やされる。そして、冷やされたエンジン冷却水によってアンモニアエンジン2が冷却される。
【0058】
ここで、アンモニアの気化に必要な熱量は、388W/mol-NH3である。一方、下記の計算条件において、改質器28により生成された改質ガスをクーラ35で冷却する際に回収される熱量は、507W/mol-NH3である。このため、熱交換器33によるアンモニアの気化条件が成立する。
クーラ35の入口におけるエンジン冷却水の温度=80℃
クーラ35の入口における改質ガスの温度=500℃
クーラ35の出口における改質ガスの温度=100℃
クーラ35及び熱交換器33のエンジン冷却水の流量=10L/min
アンモニアの気化潜熱=1372kJ/kg-NH3=23.3kJ/mol-NH3
【0059】
以上のようなエンジンシステム1において、イグニッションスイッチ(図示せず)がONされると、アンモニアエンジン2の始動が開始され、エンジン冷却水が冷却水循環流路55を循環する。また、改質器28の電気ヒータ39が通電されると共に、ストップバルブ36が開弁する。
【0060】
そして、メインスロットルバルブ6が開弁することで、空気がアンモニアエンジン2の燃焼室10に供給されると共に、メインインジェクタ5が開弁することで、液体アンモニアがアンモニアエンジン2の燃焼室10に向けて噴射される。このとき、マイクロバブル発生器20によって、メインインジェクタ5に供給される液体アンモニアにマイクロバブルが発生する。このため、メインインジェクタ5からは、空気が含有された液体アンモニアが噴射される。
【0061】
すると、アンモニアエンジン2の燃焼室10において、液体アンモニアの燃焼が開始される。そして、アンモニアエンジン2の熱容量及び燃焼熱によって、メインインジェクタ5から噴射された液体アンモニアが加熱されて気化するようになる。このとき、液体アンモニアには空気が含まれているため、液体アンモニアが気化しやすい。
【0062】
また、改質スロットルバルブ30が開弁することで、空気が熱交換器33を通って改質器28に供給されると共に、改質インジェクタ32が開弁することで、液体アンモニアが熱交換器33に噴射される。すると、熱交換器33において、液体アンモニアとアンモニアエンジン2により暖められたエンジン冷却水との熱交換が行われることで、液体アンモニアが加熱されて気化する。
【0063】
そして、気化されたアンモニア(アンモニアガス)と空気との混合ガスが電気ヒータ39を通って改質部38に供給される。このとき、電気ヒータ39により改質部38が加熱されるため、改質部38の温度が上昇する。
【0064】
そして、改質部38の温度が活性化温度(燃焼可能温度)に達すると、改質触媒38aによりアンモニアガスが燃焼する。具体的には、下記式のように、アンモニアと空気中の酸素とが化学反応し、燃焼熱が発生する(発熱反応)。
NH+3/4O→1/2N+3/2HO …(A)
【0065】
すると、燃焼熱によって改質部38の温度が更に上昇する。そして、改質部38の温度が改質可能温度に達すると、改質触媒38aによりアンモニアガスが改質される。具体的には、下記式のように、アンモニアの分解反応が起こり(吸熱反応)、水素を含む改質ガスが生成される。
NH→3/2H+1/2N …(B)
【0066】
改質ガスは、改質ガス流路34をアンモニアエンジン2に向かって流れる。このとき、クーラ35において、改質ガスとエンジン冷却水との熱交換が行われることで、改質ガスが冷却される。このため、冷やされた改質ガスが改質ガス流路34及び吸気流路3を流れてアンモニアエンジン2の燃焼室10に供給される。そして、燃焼室10において、アンモニアガスが改質ガス中の水素と共に燃焼するようになる。
【0067】
熱交換器33では、改質インジェクタ32から噴射された液体アンモニアとクーラ35により暖められたエンジン冷却水との熱交換が行われることで、液体アンモニアが気化する。そして、上述したように、改質器28においてアンモニアガスの燃焼及び改質が行われる。
【0068】
図6は、比較例としてのエンジンシステムを示す概略構成図である。図6において、本比較例のエンジンシステム100は、4つのメインインジェクタ101と、4つの改質インジェクタ102とを備えている。メインインジェクタ101は、アンモニアエンジン2の燃焼室10(図2参照)に向けてアンモニアガス(気体アンモニア)を噴射する。改質インジェクタ102は、改質器28に向けてアンモニアガスを噴射する。
【0069】
また、エンジンシステム100は、2つの気化器103と、2つの気化器104と、冷却水循環流路105とを備えている。気化器103,104は、液ポンプ17により圧送された液体アンモニアを気化する。気化器103により生成されたアンモニアガスは、アンモニア流路106及びデリバリパイプ107を流れてメインインジェクタ101に供給される。気化器104により生成されたアンモニアガスは、アンモニア流路108を流れて改質インジェクタ102に供給される。
【0070】
冷却水循環流路105は、エンジン冷却水がアンモニアエンジン2、クーラ35、各気化器103.104をアンモニアエンジン2、クーラ35、各気化器103.104の順に通るように循環する。各気化器103,104は、冷却水循環流路105を流れるエンジン冷却水によって液体アンモニアを加熱して気化させる。
【0071】
このようなエンジンシステム100においては、アンモニアの気化潜熱が大きいため、その分だけ気化器103,104の体格が大型になる。また、液体のアンモニアが気化されると膨張し、アンモニアの体積が大きくなるため、気化器103,104の数及びアンモニア流路106,108を構成する配管の数を増やしたり、気化器103,104の体格及びアンモニア流路106,108を構成する配管の径を大きくする必要がある。配管の数を増やすと、改質インジェクタ102の数の増加につながる。配管の径を大きくすると、改質インジェクタ102の大型化につながる。その結果、エンジンシステム100が全体的に大型化してしまう。
【0072】
さらに、アンモニア流路108が長くなると、アンモニア流路108を流れるアンモニアガスが冷えて液化してしまう虞がある。この場合には、改質器28においてアンモニアが改質されなくなる。
【0073】
そのような課題に対し、本実施形態では、第1燃料供給部27のメインインジェクタ5からアンモニアエンジン2の燃焼室10に向けて液体アンモニアが噴射されることで、燃焼室10に液体アンモニアが供給されると共に、第1空気供給部15により燃焼室10に空気が供給される。すると、燃焼室10において液体アンモニアが燃焼し、アンモニアエンジン2の熱容量及び燃焼熱によって液体アンモニアが加熱されて気化する。一方、第2燃料供給部54の改質インジェクタ32から熱交換器33に向けて液体アンモニアが噴射されることで、熱交換器33に液体アンモニアが供給される。すると、熱交換器33において、エンジン冷却水を利用して、液体アンモニアが加熱されて気化する。そして、アンモニアガス(気体アンモニア)が改質器28に供給される。また、第2空気供給部40により改質器28に空気が供給される。そして、改質器28において、アンモニアガスが改質されることにより、水素を含有した改質ガスが生成される。改質ガスは、改質ガス流路34を流れてアンモニアエンジン2の燃焼室10に供給される。そして、燃焼室10において、アンモニアガスが改質ガス中の水素と共に燃焼する。
【0074】
このようにメインインジェクタ5及び改質インジェクタ32は、アンモニアガスではなく液体アンモニアを噴射する。このため、メインインジェクタ5及び改質インジェクタ32に供給されるアンモニアを気化させる気化器が不要となる。また、アンモニアが液体状態でメインインジェクタ5及び改質インジェクタ32に供給されるため、メインインジェクタ5及び改質インジェクタ32に供給されるアンモニアの体積が小さくなる。従って、アンモニアが流れる配管の径を小さくしたり、アンモニアが流れる配管の数を減少させることができる。以上により、エンジンシステム1の小型化を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、熱交換器33は、改質器28の上流側の手前位置に配置されている。従って、熱交換器33から改質器28までの距離が短くなるため、熱交換器33により気化されたアンモニアが改質器28に達するまでの間で冷えにくくなる。これにより、アンモニアガスが液化して改質できなくなる等といった不具合の発生が防止される。
【0076】
また、本実施形態では、エンジン冷却水がクーラ35を流れることで、改質ガスとエンジン冷却水との熱交換が行われ、改質ガスが冷却される。そして、クーラ35により暖められたエンジン冷却水が熱交換器33を流れることで、改質インジェクタ32から噴射された液体アンモニアとエンジン冷却水との熱交換が行われ、液体アンモニアが加熱されて気化する。このように既存のエンジン冷却水を熱媒体として利用することで、液体アンモニアを簡素かつ安価な構成で気化させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、改質インジェクタ32から熱交換器33の空気導入部46に向けて液体アンモニアが噴射されることで、アンモニアガスが空気と混合して改質器28に供給される。従って、改質器28のガス導入部の数が必要最小限(ここでは1つ)で済むため、改質器28の構造を簡単化することができる。
【0078】
また、本実施形態では、液体アンモニアにバブルを発生させるマイクロバブル発生器20がアンモニア流路18に配設されている。従って、メインインジェクタ5に供給される液体アンモニアに空気が混合されるため、液体アンモニアが気化されやすくなる。また、液体アンモニアに空気が含まれるため、液体アンモニアの燃焼性が良くなる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、熱交換器33は、アンモニアエンジン2を冷却するためのエンジン冷却水を利用して、改質インジェクタ32から噴射された液体アンモニアを加熱して気化させているが、アンモニアエンジン2に関する熱媒体としては、特にエンジン冷却水には限られず、例えばアンモニアエンジン2の燃焼室10で発生した排気ガス等を利用してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、改質インジェクタ32が熱交換器33に取り付けられているが、特にその形態には限られず、改質インジェクタ32が熱交換器33に向けて液体アンモニアを噴射するのであれば、改質インジェクタ32が熱交換器33から離れた位置に配置されていてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、熱交換器33は、改質器28に供給される空気が流れる空気流路29に配設されており、改質インジェクタ32は、熱交換器33の空気導入部46に向けて液体アンモニアを噴射しているが、特にそのような形態には限られない。例えば、熱交換器33を空気流路29とは別のルートに配置し、熱交換器33により生成されたアンモニアガスを改質器28または空気流路29に導入することで、アンモニアガスと空気とを混合させてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、メインインジェクタ5に供給される液体アンモニアにマイクロバブルを発生させるマイクロバブル発生器20が使用されているが、特にその形態には限られず、例えば直径が100μmよりも大きな気泡を発生させるバブル発生器を使用してもよい。
【0083】
また、改質インジェクタ32に供給される液体アンモニアが流れるアンモニア流路31にマイクロバブル発生器20等のバブル発生器を配設することで、改質インジェクタ32に供給される液体アンモニアにもバブルを発生させてもよい。この場合には、改質インジェクタ32から噴射された液体アンモニアが気化されやすくなる。
【0084】
また、上記実施形態では、改質部38は、アンモニアガスを燃焼させる機能とアンモニアガスを水素に分解する機能とを併せ持った改質触媒38aを有しているが、特にそのような形態には限られない。改質部38は、アンモニアガスを燃焼させる燃焼触媒と、アンモニアガスを水素に分解する改質触媒とを別々に有していてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、燃料としてアンモニアが使用されているが、本発明は、気化潜熱が大きい燃料を使用するエンジンを備えたエンジンシステムであれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…エンジンシステム、2…アンモニアエンジン(エンジン)、5…メインインジェクタ(第1燃料噴射弁)、10…燃焼室、15…第1空気供給部、18…アンモニア流路(燃料流路)、20…マイクロバブル発生器(バブル発生器)、27…第1燃料供給部、28…改質器、29…空気流路、32…改質インジェクタ(第2燃料噴射弁)、33…熱交換器、34…改質ガス流路、35…クーラ、40…第2空気供給部、46…空気導入部、54…第2燃料供給部、55…冷却水循環流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6