(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A01C11/02 303D
A01C11/02 Z
(21)【出願番号】P 2021106977
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116529(JP,A)
【文献】特開2005-080620(JP,A)
【文献】特開2020-054259(JP,A)
【文献】特開2016-093208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗搬送部(5)で送られる苗を苗植付け装置(6)の苗植付け挟持具(31)で挟持して畝の土壌中に差し込んで移植する移植機(1)において、苗植付け挟持具(31)は先端の開閉する左右の把持部(31b)と該把持部(31b)に向かって伸びる左右一対の軸部(31a)で構成し、一対の軸部(31a)は取付部から把持部(31b)に向かって外へ湾曲して互いに離間しており、
苗搬送ベルト(48)の底部を土避けシート(55)で覆うことを特徴とする
移植機。
【請求項2】
苗搬送部(5)で送られる苗を苗植付け装置(6)の苗植付け挟持具(31)で挟持して畝の土壌中に差し込んで移植する移植機(1)において、苗植付け挟持具(31)は先端の開閉する左右の把持部(31b)と該把持部(31b)に向かって伸びる左右一対の軸部(31a)で構成し、一対の軸部(31a)は取付部から把持部(31b)に向かって外へ湾曲して互いに離間しており、
苗搬送ベルト(48)にテンションを付与するテンションローラ(111)を軸支するテンションアーム(57)に苗搬送ベルト(48)の周面とテンションローラ(111)周面に接触するスクレパーブラシ(58)を設けたことを特徴とする
移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が苗供給装置に供給した甘藷苗を移植装置で自動的に畝に植え付ける移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
甘藷苗の移植機が、特許文献1に記載されている。
【0003】
この移植機は、作業者が苗供給装置の搬送ベルト上に供給した甘藷苗を苗保持具で保持して下方に送り、苗移植装置の細長い苗植付け挟持具で甘藷苗を挟持して畝の土壌中に差し込んで移植する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の移植機では、蔓状の甘藷苗が苗供給装置の搬送ベルト上で蔓状の茎位置が乱れて苗移植装置の苗植付け挟持具の苗挟持位置が定まらず、畝への甘藷苗の移植姿勢が悪くなり、甘藷の生育に悪影響が生じる場合があった。
【0006】
本発明は、苗供給装置に供給する甘藷苗が苗移植装置の苗植付け挟持具で適正な位置を挟持されて良好な姿勢で移植して生育を良くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
第1の本発明は、苗搬送部(5)で送られる苗を苗植付け装置(6)の苗植付け挟持具(31)で挟持して畝の土壌中に差し込んで移植する移植機(1)において、苗植付け挟持具(31)は先端の開閉する左右の把持部(31b)と該把持部(31b)に向かって伸びる左右一対の軸部(31a)で構成し、一対の軸部(31a)は取付部から把持部(31b)に向かって外へ湾曲して互いに離間しており、
苗搬送ベルト(48)の底部を土避けシート(55)で覆うことを特徴とする移植機である。
第2の本発明は、苗搬送部(5)で送られる苗を苗植付け装置(6)の苗植付け挟持具(31)で挟持して畝の土壌中に差し込んで移植する移植機(1)において、苗植付け挟持具(31)は先端の開閉する左右の把持部(31b)と該把持部(31b)に向かって伸びる左右一対の軸部(31a)で構成し、一対の軸部(31a)は取付部から把持部(31b)に向かって外へ湾曲して互いに離間しており、
苗搬送ベルト(48)にテンションを付与するテンションローラ(111)を軸支するテンションアーム(57)に苗搬送ベルト(48)の周面とテンションローラ(111)周面に接触するスクレパーブラシ(58)を設けたことを特徴とする移植機である。
本発明に関連する第1の発明は、苗搬送部(5)で送られる苗を苗植付け装置(6)の苗植付け挟持具(31)で挟持して畝の土壌中に差し込んで移植する移植機(1)において、苗植付け挟持具(31)は先端の開閉する左右の把持部(31b)と該把持部(31b)に向かって伸びる左右一対の軸部(31a)で構成し、一対の軸部(31a)は取付部から把持部(31b)に向かって外へ湾曲して互いに離間していることを特徴とする移植機とする。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、挟持具(31)の軸部(31a)に液剤吐出口(129)を形成したことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の移植機とする。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、苗搬送部(5)が苗を伸ばして載置する苗搬送ベルト(48)で、該苗搬送ベルト(48)に所定間隔で仕切った仕切りプレート(50)と該仕切りプレート(50)の間に設けるクリップ(49)で構成し、該クリップ(49)を苗搬送ベルト(48)の中間部を除いて両端に設けたことを特徴とする本発明に関連する第1または第2の発明の移植機とする。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、クリップ(49)をクリッププレート(49a)とブラシクリップ(49b)で構成し、ブラシクリップ(49b)の苗植付け挟持具(31)の侵入側は他端側よりも柔らかくし、クリッププレート(49a)の差し込み側を曲面ガイド面としたことを特徴とする本発明に関連する第1から第3の何れかの発明の移植機とする。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、苗搬送ベルト(48)の底部を土避けシート(55)で覆うことを特徴とする本発明に関連する第1から第4の何れかの発明の移植機とする。
【0013】
本発明に関連する第6の発明は、苗搬送ベルト(48)にテンションを付与するテンションローラ(111)を軸支するテンションアーム(57)に苗搬送ベルト(48)の周面とテンションローラ(111)周面に接触するスクレパーブラシ(58)を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1から第5の何れかの発明の移植機とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明で、苗搬送部(5)で送られる蔓状の甘藷苗は苗植付け装置(6)の挟持具(31)の把持部(31b)で蔓が挟持され軸部(31a)で受けられて取り出され、畝の土壌中に差し込まれて移植されるが、一対の軸部(31a)は把持部(31b)に向かって湾曲して離間しているので蔓を挟み込むことなく、把持部(31b)から土壌中に差し込まれるので、甘藷苗の姿勢が乱れることなく、安定した姿勢で移植されるので、移植後の生育が良好になる。
本発明に関連する第1の発明で、苗搬送部(5)で送られる蔓状の甘藷苗は苗植付け装置(6)の挟持具(31)の把持部(31b)で蔓が挟持され軸部(31a)で受けられて取り出され、畝の土壌中に差し込まれて移植されるが、一対の軸部(31a)は把持部(31b)に向かって湾曲して離間しているので蔓を挟み込むことなく、把持部(31b)から土壌中に差し込まれるので、甘藷苗の姿勢が乱れることなく、安定した姿勢で移植されるので、移植後の生育が良好になる。
【0015】
本発明に関連する第2の発明で、挟持具(31)で挟持された甘藷苗は土壌中に差し込まれる際に蔓を挟み込まない軸部(31a)に設ける液剤吐出口(129)から水が効率的に供給されるので、移植後の活着が良くなる。
【0016】
本発明に関連する第3の発明で、苗搬送部(5)の苗搬送ベルト(48)に載せられる甘藷苗は、仕切りプレート(50)で分離されクリップ(49)で蔓元と先端側が保持されることで安定して姿勢よくなり、苗植付け装置(6)の挟持具(31)による挟持が確実になる。
【0017】
本発明に関連する第4の発明で、甘藷苗を苗搬送ベルト(48)に載せる際にクリッププレート(49a)の曲面ガイド面で傷付くことが防がれ、クリッププレート(49a)とブラシクリップ(49b)に挟まれた甘藷苗が挟持具(31)で挟持される際に柔らかいブラシで取り出し抵抗が少なく姿勢が乱れることが無い。
【0018】
本発明に関連する第5の発明で、移植作業中に畝から跳ね上がる土が苗搬送ベルト(48)に付着して甘藷苗の供給を妨げることが無い。
【0019】
本発明に関連する第6の発明で、苗搬送ベルト(48)やテンションローラ(111)に付着する土を簡単な構成で掻き落とすことが出来て、移植作業を長く継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明における実施の形態の苗移植機の右側面図である。
【
図2】本発明における実施の形態の苗移植機の接地センサの平面図である。
【
図3】本発明における実施の形態の苗移植機の平面図である。
【
図4】本発明における実施の形態の苗移植機の植付け伝動ケース及び苗植付け装置等を示す一部断面平面図である。
【
図5】本発明における実施の形態の苗移植機の植付け伝動ケース及び苗植付け装置等を示す一部省略した側面図である。
【
図6】本発明における実施の形態の苗移植機の苗移植部を示す平面図である。
【
図7】本発明における実施の形態の苗移植機の苗移植部を示す断面側面図である。
【
図8】本発明における実施の形態の苗移植機の苗植付け挟持具の取付構成を示す平面図である。
【
図9】本発明における実施の形態の苗移植機の苗移植部の位置ずれ防止ガイドを示す拡大図である。
【
図10】本発明における実施の形態の苗移植機の船底植えの軌跡及び動軌跡を示す側面図((A):植付株間最大時、(B):植付株間最小時)である。
【
図11】本発明における実施の形態の苗移植機の斜め植えの軌跡及び動軌跡を示す側面図((A):植付株間最大時、(B):植付株間最小時)である。
【
図12】本発明における実施の形態の苗移植機の苗搬送部を示す背面図である。
【
図13】本発明における実施の形態の苗移植機の苗搬送ベルトのテンションローラを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
【0022】
甘薯苗を移植する苗移植機1は、走行装置4と操縦ハンドル2を備えた機体に、甘薯苗を搬送する苗搬送部5と、該苗搬送部5によって搬送されてきた苗を圃場に植付ける苗植付け装置6とを備えている。走行装置4は、エンジン3と、該エンジン3の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7と、該後輪7の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪8とを備えたものとしている。
【0023】
エンジン3の後部には、ミッションケース9を配置し、そのミッションケース9は、その左側部からエンジン3の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン3の左側部と連結している。このケース部分にエンジン3の出力軸が入り込んでミッションケース9内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース9の左右両側部に伝動ケース10を回動自在に取り付け、この伝動ケース10の回動中心にミッションケース9から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで伝動ケース10内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース10内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端の内側側方に突出する後車軸11に伝動し、後輪7が駆動回転するようになっている。
【0024】
左右の伝動ケース10のミッションケース9への取付部には、上方に延びるアーム12を左右各々一体的に取り付けていて、左右のアーム12と、ミッションケース9に固定された昇降用油圧シリンダ13のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に取り付けた天秤杆14の左右両側部とを連結部を介して連結している。右側の連結部はロッドで構成され、左側の連結部は伸縮可能な左右水平制御用油圧シリンダ16で構成されている。
【0025】
昇降用油圧シリンダ13が作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右のアーム12は後方に回動し、これに伴い伝動ケース10が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ13のピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右のアーム12は前方に回動し、これに伴い伝動ケース10が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ13は、機体に対する畝上面高さを検出する接地センサ17の検出結果に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう作動するよう構成しており、また、操縦ハンドル2近傍に配置した植付昇降レバー18の人為操作によって、機体を上昇或は下降させるよう作動する構成でもある。尚、前記植付昇降レバー18は、苗植付け装置6及び苗搬送部5の駆動の入切の操作が行える。また、植付昇降レバー18の側方には、ミッションケース9内の主クラッチを操作して走行装置4の走行の入切操作が可能な主クラッチレバー19を設けている。
【0026】
接地センサ17は、左右幅の大きい板状の主接地部分17aと、主接地部分17aから後側に延びる左右幅の小さい棒状の副接地部分17bとが圃場に接地して圃場面の高さを検出する構成となっており、主接地部分17aと副接地部分17bとが一体で上下に回動して圃場面の高さを検出する構成となっている。主接地部分17aは、苗搬送部5よりも前側に配置され、副接地部分17bは、主接地部分17aの左右中央位置及び植付供給位置Aの左右一方側(左側)に偏位する位置で且つ機体側面視で苗搬送部5の上昇送り部5cの下方位置に配置されている。
【0027】
また、左右水平制御用油圧シリンダ16が伸縮作動すると、左側の伝動ケース10が上下に回動して左側の後輪7を上下動させ、機体を左右に傾斜させる。左右水平制御用油圧シリンダ16は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出する振り子式の左右傾斜センサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0028】
左右の前輪8は、エンジン3下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム20の左右両側部の下方に延びるアーム部分21の下端部に固定した前車軸22に回転自在に取り付けられている。従って、左右の前輪8は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。また、前輪支持フレーム20のローリング回動を規制可能な規制ピンであるローリング規制具60を、機体側のフレーム部と前輪支持フレーム20とに設けた孔に挿入することにより、前輪支持フレーム20を機体を基準に左右高さの差がない状態で固定でき、傾斜地や左右で段差のある圃場での畝追従性及び直進性を向上させることができる。通常の前輪支持フレーム20をローリングさせるときは、ローリング規制具60を前輪支持フレーム20側の予備孔にのみ挿入する構成となっている。
【0029】
前輪支持フレーム20の前側には、該前輪支持フレーム20から畝案内用支持プレート61を介して左右方向に延びる畝案内支持軸62を回動可能に支持している。この畝案内支持軸62から前方に延びる左右各々の畝案内支持フレーム63を介して左右の畝案内輪64を支持している。畝案内輪64は、遊転輪であり、畝の側面に接触して機体を畝に倣って走行させるべく案内する周知の構成である。昇降用油圧シリンダ13のピストンロッドと畝案内支持軸62との間には、連動ケーブル65を連結している。尚、前記ピストンロッドと連動ケーブル65とは圧縮式の融通スプリング66等による融通機構を介して連結しており、メカロック等による連動ケーブル65等の破損を防止している。機体の旋回時等において、左右の後輪7を下動させて機体を最上昇位置へ上昇させるとき、昇降用油圧シリンダ13のピストンロッドが後側へ移動するのに伴って連動ケーブル65が連動して引かれ、畝案内支持軸62が回動して左右の畝案内支持フレーム63が上動し、機体を基準にして左右の畝案内輪64が上昇する。
【0030】
操縦ハンドル2は、ミッションケース9に前端部を固定したハンドルフレーム23の後端部に取り付けられている。ハンドルフレーム23は、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、ハンドルフレーム23の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。尚、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0031】
図6に示す如く、苗植付け装置6は、苗植付け挟持具31及びそれを開閉させる機構を有する苗移植部と、その苗移植部を動作させるリンク機構Rとから構成される。
【0032】
苗植付け装置6のリンク機構Rを駆動する駆動部は、ミッションケース9内からリンク機構R駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース32に設けている。植付け伝動ケース32は、その前部がミッションケース9の後部に連結しそこから後斜め上方に延びる第一ケース部32aと、この第一ケース部32aの上部左側部に固定され左側方に延びる第二ケース部32bと、その第二ケース部32bの左端部に固定され後斜め下方に延びる第三ケース部32cとを有する。
【0033】
ミッションケース9内からの動力が伝達される前後方向の入力軸67により、第一ケース部32a内へ伝動される。第一ケース部32a内の伝動機構について説明すると、入力軸67から一対のベベルギヤ68を介して左右方向の第一軸70へ伝動し、第一軸70から第一駆動スプロケット71、第一チェーン72及び第一従動スプロケット73を介して第二軸69へ伝動し、第二軸69から第二駆動スプロケット74、第二チェーン75及び第二従動スプロケット76を介して伝動軸となる植付クラッチ軸(第三軸)77上の植付クラッチ78へ伝動する構成となっている。植付クラッチ78は、所定の位相で伝動を断つ定位置停止クラッチである周知の構成であり、苗植付け装置6をこれから取り出す苗を挟持する前の所定の位相(位置)で停止させる。植付クラッチ78が伝動状態であれば、該植付クラッチ78と植付クラッチ軸77とが一体回転する。一方、第二軸69から伝動比の異なる複数組(3組)の等速ギヤ対を備える株間変速機構80を介してタイミング取出カム81を駆動回転させ、タイミング取出カム81がタイミング取出用アーム99に当たって該タイミング取出用アーム99が回動することにより、タイミング取出用アーム99による植付クラッチ78の非伝動位置への規制が解除され、植付クラッチ78が伝動状態となり1回転する。植付クラッチ78は、1回転すると再度タイミング取出用アーム99に規制されて非伝動状態となる。株間変速機構80は、株間変速用スライドキー83により複数組(3組)の等速ギヤ対のうちの一つを択一的に選択し、選択された等速ギヤ対の伝動によりタイミング取出カム81を駆動させる。従って、伝動比の異なる等速ギヤ対の選択によりタイミング取出カム81の駆動速度を切り替え、植付クラッチ78が伝動状態となるタイミングを切り替えることで植付株間を切り替える構成となっている。
【0034】
植付クラッチ軸77は、第一ケース部32a内から第二ケース部32b内を通って第三ケース部32c内まで延びている。第三ケース部32c内の伝動機構について説明すると、植付クラッチ軸77から一対の等速伝動ギヤ84又は一対の偏心ギヤである不等速伝動ギヤ85を介して第四軸86へ伝動する。尚、伝動するギヤを一対の等速伝動ギヤ84又は一対の不等速伝動ギヤ85に択一的に切り替える伝動切替機構87は、第四軸86上で一対の等速伝動ギヤ84と一対の不等速伝動ギヤ85との間に設けた切替クラッチにより構成されている。従って、伝動切替機構87は、苗植付け装置6への伝動経路に等速で伝動する等速伝動状態と、不等速で伝動する不等速伝動状態とに切り替える構成となっている。そして、第四軸86から第三駆動スプロケット88、第三チェーン89及び第三従動スプロケット90を介して植付駆動軸(第五軸)91へ伝動し、植付駆動軸91により苗植付け装置6のリンク機構Rの後述する駆動アーム34を駆動し、苗植付け装置6が駆動する構成となっている。
【0035】
尚、第三ケース部32cは、該第三ケース部32cの入力軸である植付クラッチ軸77を中心に上下方向に回動自在に設けられており、苗植付け装置6及び苗搬送部5は、走行装置4を基準にして第三ケース部32cと共に上下に回動自在に設けられている。
【0036】
第三ケース部32cに固着されて後方へ延びる支持フレーム38を設けており、苗植付け装置6のリンク機構Rは、第三ケース部32c内からの伝動により駆動回転する駆動アーム34、駆動アーム34に前端部が連結された支持リンク部36、並びに支持リンク部36の後端部と支持フレーム38とを連結する揺動リンク37により構成されている。駆動アーム34は、機体左側から見て右回りに回転する。支持リンク部36で支持された苗移植部が動作し、苗移植部の先端部(後端部)にある苗植付け挟持具31は、略上方から土壌内に突入して土壌中で下側へ移動しながら下死点位置まで後側へ移動し、後側へ移動した軌跡の上側で該軌跡の近くを通過するように前側へ移動しながら上側へ移動して土壌内から退出する退出動作がなされ、前後に長い軌跡Tを描いて運動することになる。尚、この軌跡Tは、機体に対して苗植付け挟持具31が描く運動軌跡(静軌跡)であり、機体が前進走行したときの圃場に対して苗植付け挟持具31が描く運動軌跡は、動軌跡T'となる。
【0037】
支持リンク部36と一体的に移動する苗移植部は、支持リンク部36で支持された連結軸40に連結される一対の挟持具ホルダ41と、該挟持具ホルダ41の先端部に固着され苗を挟持する一対の苗植付け挟持具31と、挟持具ホルダ41の前記苗植付け挟持具31とは反対側に設けたベアリング42bとから構成されている。開閉用カム43の側面に設けた突部43aがベアリング42bに接触することにより、一対の苗植付け挟持具31の互いの間隔が広くなる。つまり、一対の挟持具ホルダ41が互いに連結軸40回りに回動して、一対の苗植付け挟持具31の間隔が広がるようになっている。従って、開閉用カム43により、一対の苗植付け挟持具31が苗を挟持したり、その挟持を解除したりする構成となっている。尚、一対の挟持具ホルダ41の間には引張スプリング44を設けており、この引張スプリング44により一対の苗植付け挟持具31を互いに近づく方向へ付勢している。また、苗植付け挟持具31の対向する面にディンプルを設けて苗を挟持し易くしている。
【0038】
開閉用カム43は、駆動アーム34の先端側に固着されており、駆動アーム34と一体で回転するようになっている。従って、開閉用カム43が回動すると、植付の軌跡T(動軌跡T')の下死点付近で、開閉用カム43の突部43aがベアリング42bに接触して一対の苗植付け挟持具31の先端部が開く方向に動き、その後、苗植付け挟持具31が植付供給位置Aに到達したタイミングでベアリング42bが突部43aを過ぎ、一対の挟持具ホルダ41の間の引張スプリング44により付勢されて該先端部が閉じる方向に動き植付供給位置Aにある甘薯苗の蔓の下端部(植付供給位置Aでは甘薯苗が前後方向に向いているのでその後端部)を挟持する。そして、苗植付け挟持具31は、該苗植付け挟持具31により苗を挟持したままで駆動アーム34の回転により植付軌跡T(植付の動軌跡T')の下死点付近まで苗を土壌内に埋め込みながらその先端が後方へ移動するように前後姿勢を前倒れ側に傾けながら作動し、前記下死点付近でカム43の突部43aが再度ベアリング42bに接触して一対の苗植付け挟持具31の先端部が開き、挟持していた苗を放して土壌内に移植するようになっている。
【0039】
尚、駆動アーム34における開閉用カム43の取付位相を変更することにより、苗植付け挟持具31が苗の挟持を開放するタイミングを変更することができる。従って、植付け状態を確認しながら、苗植付け挟持具31が土壌中へ苗の蔓を挿し込む長さを適宜調節でき、植付精度の向上が図れる。開閉用カム43の取付位相を変更することで、苗植付け挟持具31が苗を挟持するタイミングも変更されるが、植付供給位置Aでの苗の挟持に支障のないタイミングに設定している。尚、開閉用カム43又は突部43aを交換する等して切り替え、苗植付け挟持具31が苗を挟持するタイミングは変更されずに苗植付け挟持具31が苗の挟持を開放するタイミングのみが変更される構成としてもよい。
【0040】
尚、後述する苗搬送部5により甘薯苗を前後方向に向いた姿勢で植付供給位置Aへ供給するので、苗植付け装置6が甘薯苗をそのまま前後方向に向いた姿勢で土壌内へ移植し、甘薯苗の蔓を土壌面に対して傾斜した姿勢で移植するようになっている。苗植付け装置6が後下方に延びる植付軌跡T上を作動して植え付けるので、苗が前側に傾いた状態で植え付けられることとなる。このように、苗の植付姿勢の前傾を大きくして船底植えにすると、苗の根が多数本伸長しやすくなり栽培される甘薯の個数が増え、加工等の甘薯を栽培するとき等、一個当たりの甘薯の大きさが小さくても多数個の甘薯を栽培したい場合に有用である。
【0041】
植付の軌跡T(動軌跡T')の下死点付近で開いて苗の挟持を解除した一対の苗植付け挟持具31は、その姿勢を更に前倒れ側に傾けながら前側に移動するが、その移動途中で転じて鉛直姿勢となる側に前後傾斜姿勢を変えながら作動し、前方へ移動しながら上昇して土壌中から抜ける退出動作を行う。従って、苗植付け挟持具31は、土壌内へ突入する突入軌跡と土壌から土壌内から退出する退出軌跡とが近くなるので、圃場の植付穴を無闇に大きくすることなく苗の植付を適正に行える。
【0042】
図例に示す軌跡T(動軌跡T’)は、伝動切替機構87により苗植付け装置6への伝動を等速伝動状態に切り替えたときのものである。伝動切替機構87により不等速伝動状態に切り替えると、駆動アーム34が不等速で回転し、土壌中で下死点位置へ向かう後側への移動時の軌跡T上の速度が若干速くなり、苗の土壌中への挿入長さが長くなる構成となっている。
【0043】
図例に示す軌跡T(動軌跡T’)上の丸印は、駆動アーム34の回転位相の15度おきの位置を示すものである。尚、図例では、株間を最小に設定したときと最大に設定したときとについて示しているが、株間の変更に拘らず静軌跡である軌跡Tは同一であり、株間の変更で変化するのは動軌跡T’である。図例からも判る通り、船底植えのとき、苗植付け挟持具31の先端の作動速度が、下死点位置を過ぎた前側への移動時よりも土壌中で下死点位置へ向かう後側への移動時の方が速くなる。これにより、土壌中で下死点位置へ向けて後側へ移動する移動量を大きくでき、船底植えができるのである。
【0044】
揺動リンク37の支持フレーム38への連結支点を後下側の位置に切り替えると、軌跡T(動軌跡T’)が多少立ち上がり気味になり(上下幅が大きめになり土壌中での前後幅が小さめになる。)、斜めに植える状態の斜め植えになる。この斜め植えは、船底植えに比べて、栽培後の甘薯の個数は少なめとなるが、甘薯1個当たりの大きさが大きめになり、通常の食用の甘薯の栽培に適している。
【0045】
苗植付け装置6の後方には、左右一対の覆土具となる覆土輪(覆土具)92を設けている。この覆土輪92は、遊転輪であり、土壌面に接地して植え付けた苗の左右側方の土壌を苗に覆土しながら鎮圧するようになっており、支持フレーム38の後端部から覆土輪取付フレーム96を介して設けられている。従って、この左右一対の覆土輪92の接地により、植付け伝動ケース32の第三ケース部32cの入力軸となる植付クラッチ軸77回りに回動する苗植付け装置6及び苗搬送部5が支持され、圃場面の凹凸に追従して苗植付け装置6及び苗搬送部5が揺動して圃場面に対して所定の高さに維持される構成となっている。支持フレーム38とハンドルフレーム23との間には、苗植付け装置6及び苗搬送部5の上下揺動を安定化させる安定用スプリング93を設け、該安定用スプリング93により苗植付け装置6及び苗搬送部5を吊り下げた構成となっている。尚、苗植付け装置6及び苗搬送部5を上下揺動しないように固定することもできる。よって、苗植付け装置6及び苗搬送部5の自重が覆土輪92に作用するので、覆土輪92により充分な鎮圧作用を得ることができる。尚、覆土輪支持フレーム94は上下方向に延びる筒状のフレームであり、覆土輪支持フレーム94の内部には、外周面に雄ねじが形成された上側の上下調節用回転軸95と、雌ねじが形成された下側の覆土輪取付フレーム96とを設けている。覆土輪取付フレーム96は、上部が覆土輪支持フレーム94に上下スライドは可能であるが角軸の構成により回転はしない構成となっており、下部が左右二又に分岐しており、分岐された左右二又部分に左右の覆土輪92を回転自在に取り付けている。そして、上下調節用回転軸95は、上下調節用回転軸95の上端の高さに配置した回転ハンドルである覆土具高さ調節操作具97の回転操作が高さ調節用ベベルギヤ98を介して伝達されることで回転する。従って、覆土具高さ調節操作具97の操作により、上下調節用回転軸95が回転すると覆土輪取付フレーム96が上下動して覆土輪92の高さを調節する構成となっている。尚、覆土輪取付フレーム96の上部には、覆土輪92の高さ位置の目安となる目盛及び表示ラベル99を設けている。覆土具高さ調節操作具97は、操縦ハンドル2がある左右一方側となる右側への斜めで後方すなわち右斜め後方へ延びており、覆土具高さ調節操作具97の操作グリップ97aは、機体平面視において操縦ハンドル2の左右のグリップ部2aの間で、操縦ハンドル2の下方又は下方近くに配置された構成となっている。また、苗植付け装置6の植付軌跡Tの上方に覆土輪92が配置されており、覆土輪92と植付けた苗との位置関係が近づくので密接となり、覆土輪92による鎮圧を適正に維持でき鎮圧効果を良好に得ることができる。
【0046】
左右の覆土輪92の間に下動して植付けた苗の上方の土壌を鎮圧する鎮圧具となる鎮圧輪100を設けている。鎮圧輪100は、覆土輪92よりも径が小さく、下動した鎮圧状態において機体側面視で左右の覆土輪92内に収まり且つ覆土具92の回転軸心を基準に後側に偏位した位置に配置される。鎮圧輪100は、支持フレーム38に設けた支点軸101aを中心に上下に回動する鎮圧フレーム101に設けられ、支点軸101aよりも前側に配置されたカムローラ103を設け、鎮圧フレーム101は、駆動アーム34と一体で回転する鎮圧用カム102に下側からカムローラ103が接触し、鎮圧用カム102の駆動により下動側への回動が規制されながらカムローラ103が接触する鎮圧用カム192の径が変化することにより上下動する。従って、鎮圧輪100及び鎮圧フレーム101の自重が、鎮圧力として圃場に作用する。この鎮圧輪100により、植え付けた苗の直後で該苗の真上の土壌を鎮圧することができる。尚、鎮圧輪100の鎮圧作用により、地上にある苗を上方へ矯正し、苗が圃場面に敷設されたマルチフィルムに接触してマルチフィルムの熱により障害を発生することを抑えている。また、鎮圧フレーム101は、2重のフレーム構造により前後に伸縮する伸縮調節部101bを備え、伸縮調節部101bによる前後の伸縮で鎮圧輪100の前後位置を調節できる。尚、伸縮調節部101bには、鎮圧輪100の前後位置の目安となる鎮圧輪用目盛及び鎮圧輪用表示ラベル104を設けている。また、支持フレーム38には、鎮圧フレーム101を上下動させずに上動位置で固定する固定具となる固定フック105を設けている。固定フック105は、前後方向の軸105aを中心に上下に回動可能に設けられ、鎮圧輪100を作動させるときは、固定フック105を斜め右上側に回動させて鎮圧フレーム101よりも右側の該鎮圧フレーム101の上下回動領域から離れた位置に配置させ、鎮圧用カム102により鎮圧フレーム101が上下に回動し得る構成とする。一方、鎮圧輪100を作動させないときは、固定フック105を下側に回動させて該固定フック105に鎮圧フレーム101を引っ掛け、回転する鎮圧用カム102にカムローラ103が接触せずに鎮圧輪100を地面から上方へ離れた位置で固定する。
【0047】
また、支持フレーム38の下側にスクレーパ支持用プレート106を固着し、スクレーパ支持用プレート106に設けたスクレーパ回動支点軸107aを中心に回動するスクレーパアーム107の下端部に、弾性体であるゴム製の板で構成されたスクレーパ108を設けている。スクレーパ108は、左右2箇所に前側から入れられた切込み部を備えており、左右の切込み部に左右各々の苗植付け挟持具31が入ることにより、左右の苗植付け挟持具31の左右各々の左右両面に付着する土を除去する。スクレーパアーム107のスクレーパ回動支点軸107aよりも上側となる上部とその後側位置となるスクレーパ支持用プレート106との間には引張スプリングである付勢装置109を設けており、付勢装置109によりスクレーパ108が前側へ付勢されている。一方、揺動リンク37にはスクレーパ作動用ローラ110を設けており、苗植付け挟持具31が土壌中に突入して軌跡T(動軌跡T’)の下死点位置へ向けて後側へ移動するときに、スクレーパ作動用ローラ110が前側からスクレーパアーム107の下部に当たって該スクレーパアーム107の下部を後側に移動させ、スクレーパ108を強制的に軌跡T(動軌跡T’)から離れる側に退避させる。そして、苗植付け挟持具31が土壌中から退出して前側へ移動する退出移動過程で、スクレーパ作動用ローラ110が前側へ移動してスクレーパアーム107の下部から離れ、付勢装置109の付勢によりスクレーパアーム107の下部が前側へ移動し、スクレーパ108を前側となる軌跡T上に移動させる。これにより、スクレーパ108は、苗植付け挟持具31が土壌中で苗を植付けるときは強制的に軌跡Tから離れる側に退避し、前記退出移動過程で付勢装置109の付勢により軌跡T上に移動し、付勢装置109は、苗植付け挟持具31が退出して移動する側(前側)にスクレーパ108を付勢する構成となっている。
【0048】
苗植付け装置6について
図8以降で詳細に説明すると、該苗植付け装置6は、蔓状の苗を挟持する一対の苗植付け挟持具31と、この苗植付け挟持具31に接続し一対の苗植付け挟持具31を開閉操作する一対の挟持具ホルダ41とを有する。そして、苗植付け挟持具31と挟持具ホルダ41が、縦接合面Vで結合している。縦接合面Vは苗植付け挟持具31の軌跡T(動軌跡T’)と平行な略鉛直面となる。上記の構成により、苗植付け挟持具31の上下の取付角度や植付け深さの調整を容易に行うことができる。また、苗植付け挟持具31の接合基部に設けた2個のボルト用孔のうち、苗植付け挟持具31の先端に近いほうの孔を長孔とする。上記の構成とすることにより、苗植付け挟持具31の先端の爪部の調整代を大きくすることができる。
【0049】
また、苗植付け挟持具31の接合基部をL字型の構造とし、このL字型構造の1辺であり、かつ挟持具ホルダ41の上方であって縦接合面Vと垂直な面に、縦接合面Vに沿って苗植付け挟持具31の位置調整を行うための位置調整ボルト151を設ける。上記の構成により苗植付け挟持具31の取付角度や植付け深さの微調整を行うことが容易となる。尚、挟持具ホルダ41の上方に位置調整ボルト151がある構成としたが、挟持具ホルダ41の下方や側方にある構成であってもよい。
【0050】
また、苗植付け挟持具31は、二本の挟持具ホルダ41の内側にある縦接合面Vへ取り付ける構成とし、その間にシム等の挟持圧調整部材154を挟み込むことで苗植付け挟持具31による挟持圧を調整できる構成とした。上記構成とすることで、苗移植部全体をコンパクトにすることができると共に、挟持圧の微調整を行うことができる。上述では挟持圧調整部材154としてシムを用いたが、スペーサなどの一定の厚みを有するものを用いる構成であってもよい。
【0051】
挟持具ホルダ41の上方には引張スプリング44を受けるスプリング取付ピン155を二本設け、対向する挟持具ホルダ41に引張スプリング44を渡し挟持力が付勢されるようにする。そして上記位置調整ボルト151は、平面視で二本のスプリング取付ピン155を避けた位置に設ける。上述では位置調整ボルト151は二本のスプリング取付ピン155の中央に設ける構成としたが、二本のスプリング取付ピン155より苗植付け挟持具31の先端に近い側に設けることも可能である。
【0052】
挟持具ホルダ41は、苗植付け挟持具31との結合基部41aと、ステイ部41bとからなる。このステイ部41bは、前記結合基部41aに溶接でその一端部を接合している。また、左右の苗植付け挟持具31に対応する結合基部41aとステイ部bとの左右の接合部Fは、上下方向に相互にずれて構成されている。挟持具ホルダ41の開閉動作支点となる連結軸40はステイ部41bの長手方向略中央部に位置し、一対の挟持具ホルダ41を、連結軸40を中心に回動可能に結合する。加えて、ステイ部41bの他端部にはグリース封入式のベアリング42bを設け、そのベアリング42bの外周が開閉用カム43に当接し、開閉用カム43の突部43aにより、ベアリング42b相互の間隔が大きくなることにより、苗植付け挟持具31の間隔を大きくする。上記のように接合部Fを、上下方向に相互にずらしたことにより、連結軸40部分においてステイ部41bを上下に重ね合わせて構成することが可能となる。即ち、挟持具ホルダ41をより簡易な構成とすることでコストダウン等を実現できる。
【0053】
連結軸40は、支持リンク部36に結合した連結軸サポータ152により固定され、この支持リンク部36は、リンク機構Rを構成すると共に、苗植付け挟持具31に苗植付け動作を生じさせる。加えて支持リンク部36には、連結軸サポータ152に隣接する位置に、挟持具ホルダ41の上下動作を拘束する位置ずれ防止ガイド153を設ける。上下方向に相互にずれた位置に挟持具ホルダ41のステイ部41bが挟み込まれることにより、ステイ部41bの上下方向の動作を拘束している。また、ステイ部41b間が上下にすきまを有するように構成する。上記のような構成により挟持具ホルダ41の先端に結合する苗植付け挟持具31の位置ずれを防止することができる。尚、位置ずれ防止ガイド153には補強プレート156を設けると共に、メンテナンス性を確保するために取り外し可能な構成としている。また、連結軸サポータ152に固定した連結軸40とステイ部41bとの間には、2本のステイ部にあわせたメタルブシュ157をそれぞれ設ける。
【0054】
苗植付け挟持具31は、
図11に示す如く、長い軸部31aと先端の把持部31bからなる一対の爪杆で、左右の軸部31aは下方へ湾曲して互いに離れていて接近する把持部31bで甘藷苗を挟持しても軸部31aでは蔓を挟まないようにしているので、甘藷苗の挟持位置が乱れて土壌中へ差し込み甘藷苗の位置が乱れることが無い。
【0055】
苗搬送部5は、甘薯苗を蔓が前後方向に向く姿勢で収容する苗収容部となる苗収容体(苗収容部)26を苗搬送方向Cに複数備えるとともに、該苗収容体26を機体上部側で右方向に搬送する上部横送り部5aと、苗収容体26を機体下方に搬送する下降送り部5bと、苗収容体26を機体上方に搬送し前記上部横送り部5aの搬送始端側に戻す上昇送り部5cとを備える苗搬送ベルト48から構成されており、苗収容体26を単一のループ状の搬送経路に沿って搬送するようになっている。また、上部横送り部5aは、左側の前輪8及び後輪7より左側にまで突出するように構成され、左端が機体の左側の最外端となっている。尚、上昇送り部5cの中間部で苗搬送ベルトを左右方向内側に撓ませるテンションローラ111を設けており、これにより上昇送り部5cが左側の後輪7と干渉しない構成となっている。
図13に示す如く、テンションローラ111を軸支するテンションアーム57には苗搬送ベルト48の周面やテンションローラ111に接触して土を掻き落とすスクレパーブラシ58を苗搬送ベルト48の搬送下手側に向けて設けている。
【0056】
また、前記上部横送り部5aの後端は、左側の前輪8及び後輪7より後側の位置に配置されている。従って、作業者は、左側の後輪7及び上部横送り部5aの後側で該上部横送り部5aへ苗を供給する。前記搬送経路は側面視で上部横送り部5aが後側に位置するように傾斜しており、苗搬送部5の後側にいる作業者の近い位置に上部横送り部5aの苗収容体26が配置され、作業者が上部横送り部5aの苗収容体26への苗供給作業を容易に行えるようにしている。尚、苗植付け装置6は、前記下降送り部5bにより苗搬送部5の搬送軌跡の最下位置の植付供給位置Aへ搬送された苗収容部26の苗を圃場に植付けるようになっている。尚、前記下降送り部5bには、
図12の如く、苗が落下しないように苗収容部26内に苗を保持する苗落下防止板45をその上部で支持部材46から支持して設けている。
【0057】
苗収容体26は、苗搬送ベルト48に立設する仕切りプレート50とクリップ49で構成している。クリップ49は上端部が円弧状の樹脂材やゴム材のクリッププレート49aとブラシクリップ49bで構成し、苗搬送ベルト48の前後端部に設けて作業者が苗を下方に押し込むことにより、蔓状苗の前後端部を保持する。また、ブラシクリップ49bは、ブラシ毛を千鳥配置としてすべての列が縦に直線状に並ぶように植えて、挟持具ホルダ41の侵入側が遠い側よりも柔らかくして苗を取り出す際の抵抗を少なくしている。
【0058】
上部横送り部5aの上方には、左右方向の苗規制ロッド112を設けている。従って、作業者が、上部横送り部5aで、苗規制ロッド112の上側に苗の蔓を載せただけで苗の蔓の曲がった側が下側となり、蔓の曲がりと同じ側に曲がる蔓の下端が下側に曲がった状態となり、後述する所望の状態で苗収容体26へ苗を供給することができる。
【0059】
苗搬送ベルト48は、上部右側に設けた前後の駆動ローラ113と、下部に設けた左右の第一従動ローラ114と、上部左側に設けた第二従動ローラ115とに巻き掛けられ、駆動ローラ113の駆動により回転する。尚、左右の第一従動ローラ114の間で苗搬送ベルトは若干左右略水平方向に苗を搬送するが、この搬送部分Aが苗を苗植付け装置6の苗植付け挟持具31が挟持して取り出す植付供給位置として設定されている。一方、苗搬送ベルトの裏面(内周面)で該苗搬送ベルトの幅方向(前後方向)の中央よりも後寄りの位置には、該苗搬送ベルトの回転方向に沿って突出する突条である案内条116を形成している。この案内条116と対応する第一従動ローラ114及び第二従動ローラ115の位置には溝117が形成され、案内条116と溝117とが噛み合うことにより苗搬送ベルトの前後方向の位置ずれを防止している。尚、上述では案内条116を突条としたが、案内条116を溝条とし、第一従動ローラ114及び第二従動ローラ115に前記溝条である案内条に噛み合う突出部を構成してもよい。
【0060】
苗搬送ベルト48の底部周回部分は、前に傾斜しているが、どの部分を下側から覆う土避けシート55を苗植付け挟持具31の移動軌跡を避けて前傾に設けて苗搬送ベルト48側に土が跳ね上がるのを防いでいる。
【0061】
揺動リンク37に下端が連結される連動ロッド66の上端を、前後の駆動ローラ113の駆動軸部に設けた一方向クラッチに連結している。従って、苗植付け装置6の作動で揺動リンク37が揺動すると、連動ロッド66が上下に往復移動し、一方向クラッチを介して前後の駆動ローラ113が苗搬送方向に苗搬送ベルトを作動させるべく間欠的に駆動する。この苗搬送ベルトの間欠的な駆動は、苗植付け装置6の苗植付け挟持具31が苗を挟持するときに停止して、それ以外のときに駆動する構成となっている。よって、苗植付け装置6の苗植付け挟持具31が苗を挟持して下降し土壌中に植付けるときには苗収容体26が停止しているので、苗が円滑に苗収容体26から取り出されて適確に苗を圃場に植付けることができる。
【0062】
苗搬送部5の前側には、植付け伝動ケース32の第一ケース部32aから苗載台支持フレーム81を介して苗載台82を設けている。この苗載台82上に収容箱等に収容した状態で甘薯苗を載置するようになっており、作業者は苗載台82上の苗を苗搬送部5の上部横送り部5aへ供給する。苗載台82の後端部は上部横送り部5aの前端部に近づけて配置され、上部横送り部5aへの苗補給の容易化を図っている。
【0063】
また、上部横送り部5aの左側方には、予備の苗を収容する籠状の予備苗収容部118を設けている。予備苗収容部118は、第二従動ローラ115の中心軸回りに回動可能な前後の予備苗収容部支持フレーム119で支持されている。予備苗収容部支持フレーム119を機体の左右方向内側(右側)へ回動させて、予備苗収容部118を上部横送り部5aの上方に位置する収納位置へ移動させると、機体幅を縮小できる。予備苗収容部118は、右側への回動で死点越えし、機体に設けた収納用ストッパ120に予備苗収容部支持フレーム119が当たって収納位置に保持される。この収納位置でも、予備苗収容部118が苗搬送部5の苗搬送ベルトやクリップ49に干渉せず、苗搬送部5を駆動することができる。
【0064】
ミッションケース9内の伝動機構を切り替えて走行装置4の走行速度を有段変速操作できる操作レバーである変速レバー83を、ミッションケース9の位置から後側に延ばして設けている。変速レバー83は、走行装置4から苗搬送部5の上部横送り部5a、下降送り部5b及び上昇送り部5cとで囲まれる空間内を通過して苗搬送部5の後側に延びている。すなわち、変速レバー83は、苗搬送部5の所定のループ状の搬送経路内を通過している。変速レバー83の把持部83aは苗搬送部5の後側に突出しているが、変速レバー83を支持すると共に変速位置を記したレバー支持部材となる変速レバーガイド121は、上部横送り部5a、下降送り部5b及び上昇送り部5cとで囲まれる空間内に配置されている。従って、変速レバー83の操作性を維持しながら、変速レバー83及び変速レバーガイド121を極力前側に配置している。尚、変速レバーガイド121は、植付け伝動ケース32の第三ケース部32cから支持されており、苗搬送部5及び苗植付け装置6と共に左右方向の植付クラッチ軸77を中心に上下に揺動する。そして、変速レバー83の前端部(苗搬送部5よりも前側でミッションケース9の直ぐ後方の部分)には、レバー軸方向に伸縮可能な伸縮部分を設けており、この伸縮部分の融通により変速レバー83の上下揺動を許容し、変速レバーガイド121と変速レバー83側の指示部とが大きく離れないようにしている。
【0065】
また、ミッションケース9部分に設けたローリング用油圧バルブを切り替えて左右水平制御用油圧シリンダ16を強制的に作動させる操作レバーである左右傾斜レバー122を、ミッションケース9部分から後側に延ばして設けている。左右傾斜レバー122は、走行装置4から苗搬送部5の上部横送り部5a、下降送り部5b及び上昇送り部5cとで囲まれる空間内まで延びている。左右傾斜レバー122の把持部122a及び左右傾斜レバーガイド123は、上部横送り部5a、下降送り部5b及び上昇送り部5cとで囲まれる空間内に配置されている。従って、左右傾斜レバー122を極力前側に配置した構成となっている。尚、変速レバー83よりも左右傾斜レバー122の操作頻度は低いため、左右傾斜レバー122を前記空間内に配置しても、さほど操作性に支障を来たさない。尚、左右傾斜レバー122は、左右に一時的に操作し、放すと中立位置に復帰するレバーであり、変速レバー83の如くの指示部がないため、変速レバー83の如く伸縮しない構成としている。
【0066】
ところで、苗搬送部5よりも前側で且つ左右方向外側(右側)の位置には、液剤となる水を貯留する液剤タンク(水タンク)124を配置している。尚、液剤タンク124は、苗載台82の右側方の位置に配置される。植付クラッチ軸77が植付け伝動ケース32の第一ケース部32aの右側方に突出しており、植付クラッチ軸77にポンプ駆動用フランジ125が取り付けられ、ポンプ駆動用フランジ125の回転中心からずれた位置に水を送るポンプ(プランジャポンプ)126を構成するポンプシリンダロッド127の先端が連結されている。尚、ポンプのシリンダ部分は、機体に連結されている。従って、液剤タンク124から供給管128を介してポンプ126に水が供給され、植付クラッチ軸77の駆動でポンプ駆動用フランジ125が回転することにより、クランク運動でポンプシリンダロッド127が往復動し、シリンダ内の水を順次送り出す構成となっている。植付け伝動ケース32内ひいては苗移植機1の伝動経路で最上位に配置された伝動軸となる植付クラッチ軸77に、ポンプ126を取り付けることにより、ポンプ126を高位に配置できて後述する液剤吐出口129までの落差を確保でき、水を円滑に送ることができ、また作業終了時等に供給管128内に残る水を排出し易くなる。ポンプ駆動用フランジ125は、植付クラッチ軸77と一体で回転する基部フランジ部125aと、基部フランジ部125aに取付ボルトにて取り付けられる調節用フランジ部125bとの2重のフランジ構成となっており、調節用フランジ部125bに備える長孔に取付ボルトを挿入した構成となっている。調節用フランジ部125bに備える連結部にポンプシリンダロッド127を連結しており、基部フランジ部125aを基準に長孔に沿って調節用フランジ部125bを移動(回転)させることにより、ポンプシリンダロッド127の往復動の作動タイミング(作動位相)が変化し、苗植付け装置6の作動位相に対する灌水タイミング(位相)を変更して調節する構成になっている。
【0067】
標準では、灌水タイミングは、苗植付け挟持具31が土壌中に突入してから下死点位置に到達する直前あたりまでの間、駆動アーム34の回転角度でいうと約90度回転する間、液剤吐出口129から水が吐出するタイミングとなる。そして、調節用フランジ部の回転により無段階に灌水タイミングを調節でき、灌水タイミングを最も遅らせたとき、苗植付け挟持具31が土壌中から退出した後で且つスクレーパ108が苗植付け挟持具31に接触する前まで灌水がなされる。一方、灌水タイミングを最も早めたとき、苗植付け挟持具31が植付供給位置Aで苗を挟持した後で土壌中に突入する前から灌水が始まる。よって、苗植付け挟持具31と共に土壌中に突入して圃場に液剤を吐出する液剤吐出口129を設け、液剤吐出口129から液剤を吐出するタイミングを、液剤吐出口129が土壌中にあるときのみ吐出するタイミングと、液剤吐出口129が土壌中に突入している状態と土壌中に突入していない状態とにわたって吐出するタイミングとに調節可能に構成している。
【0068】
ところで、苗植付け挟持具31は、挟持具ホルダ41への取付側となる軸部31aと、軸部の先端に形成された苗を把持する板状の把持部31bとで構成され、溶接により軸部31aの左右方向内端寄りの位置に把持部31bを固着している。左側の苗植付け挟持具31は、軸部31aが外側に湾曲したパイプで構成され、その湾曲部に水を吐出する液剤吐出口129を構成している。また、左側の苗植付け挟持具31の軸部31aは、挟持具ホルダ41側の端部が斜め右上側へ向けて屈曲されており、前記端部にポンプ126からの水を移送する供給管128を接続している。従って、液剤吐出口129により、植付けた苗の近くに液剤を供給(灌水)することができる。つまり、前記軸部31aの端部は他方(右側)の苗植付け挟持具31側へ向けて斜めに配置され、直ぐ左側にある位置調整ボルト151との干渉を抑えると共に、水の流れを円滑にする。そして、左側の苗植付け挟持具31のみに液剤吐出口129を設けており、右側の苗植付け挟持具31には液剤吐出口129を設けていない。
【0069】
よって、苗搬送部5が上部横送り部5aの搬送始端側となる左右一方側(左側)へ偏位して配置されているが、液剤を貯留する液剤タンク124を苗搬送部5とは左右反対側(右側)に偏位させて設け、苗植付け挟持具31又は苗植付け挟持具31の近くで圃場に液剤を吐出する液剤吐出口129を、苗搬送部5を偏位させた側(左側)の苗植付け挟持具31のみに設けている。
【0070】
ポンプ126の駆動抵抗が植付クラッチ軸77に伝わることにより、自重や慣性等により苗植付け装置6の動作が所望よりも先行することが抑えられる。灌水をしないとき、機体からポンプ126を取り外したときでも、ポンプ126の代わりに植付クラッチ軸77に制動力を伝える制動装置を装着することにより、自重や慣性等により苗植付け装置6の動作が所望よりも先行することが抑えられる。尚、ポンプ126の駆動抵抗が小さく、苗植付け装置6の先行作動の抑制が不十分なときには、苗植付け挟持具31を上側から吊り下げる補助スプリングを設け、この補助スプリングの付勢力により補助的に前記先行作動の抑制する構成としている。また、ポンプ126を覆う防護カバーを設けており、この防護カバーは、ポンプ126の代わりに制動装置を装着した状態でも機体に装着でき、安全性の向上が図れる。防護カバーには走行速度や株間変速の設定に基づく植付株間の早見表が貼付されているが、ポンプ126及び制動装置の何れを装着したときでも早見表を確認することができる。
【0071】
また、一時的に灌水しないとき等は、ポンプ126から送り出される水を液剤タンク124に戻す戻り配管により水を循環させ、ポンプ126を取り外さなくても灌水せずに作業ができる。尚、ポンプ126から送り出される水を、液剤吐出口129への供給管128へ供給する状態と前記戻り配管へ供給する状態とに切り替える切替弁を設けている。
【0072】
以上により、苗移植機1は、左右の前輪8及び後輪7により畝をまたいだ状態で走行装置4により機体は自走し、その自走する機体の苗搬送部5の上部横送り部5aに左側の前輪8及び後輪7が通る畝の谷部を歩行するべく左側の後輪7の後方にいる作業者から甘薯苗が供給される。苗搬送部5は供給された苗を搬送し、そして、苗搬送部5によって植付供給位置Aへ搬送されてきた苗を苗植付け装置6が圃場に植付ける。苗搬送部5は、苗収容体26を苗搬送方向Cに複数備え、この苗収容体26に甘薯苗がその蔓が前後方向に向く姿勢で収容される。上部横送り部5aにより機体上部側で左右一方向に搬送される苗収容体26に作業者が苗を供給する。即ち作業者は苗の蔓の下端部をクリップ49に供給し苗を苗収容体26に固定する。苗が供給された苗収容体26は、上部横送り部5aに続いて下降送り部5bにより機体下方に搬送される。該下降送り部5bにより搬送されてきた苗収容体26は、上昇送り部5cにより機体上方に搬送されて前記上部横送り部5aの搬送始端側に戻る。苗植付け装置6は、その苗植付け挟持具31が駆動部によって昇降動し、下降送り部5bにより植付供給位置Aへ搬送されてきた苗収容体26に収容された苗の後端部に該苗収容体26の後側で作用して苗を圃場に植付ける。このとき、苗が苗収容体26のクリップ49に挟持され固定されているが、このクリップ49の挟持力より苗植付け装置6の苗植付け挟持具31の挟持力の方が大きいため、苗植付け装置6が植付軌跡Tに沿って苗を後側に移動させることにより苗の蔓がクリップ49から外れるようになっている。
【0073】
この甘薯苗を移植するとき、作業者が苗の蔓の下端部を苗搬送部5の上部横送り部5aにある苗収容体26のクリップ49へ固定させて供給するが、曲がっている蔓の下端が下側へ向く状態で供給すると、その苗が苗搬送部5により搬送されて植付供給位置Aで蔓の下端が上側へ向く状態となり苗の葉が蔓に対して上側に向く。そして、苗植付け装置6によりその姿勢のままで苗を土壌内に移植する。従って、苗植付け装置6の苗の土壌内への搬送行程が単純であるため蔓が折れ曲がったりねじれたりしにくく移植精度が向上すると共に、傾斜させた蔓に対して葉が上側に集中的に向けられた状態で甘薯苗を移植できる。また、上下に延びる一対の苗植付け挟持具31が植付供給位置Aで前側に傾斜した状態で上側へ曲がった蔓の下端を挟持するので、苗植付け挟持具31の向きを曲がった蔓の下端の向きに対して垂直方向に近い状態にすることができ、植付供給位置Aで苗の位置が多少ずれても苗の挟持の確実化、安定化を図ることができ、適正な姿勢で苗を植え付けることができ、安定した苗の移植を行える。
【0074】
よって、傾斜させた蔓に対して葉が上側に集中的に向けられた状態で甘薯苗を移植できるので、移植された苗の葉は土壌の外に突出して太陽光等の光を受光することができ、根の伸長も旺盛になり良好な成育が行え、甘薯の栽培を旺盛にできる。また、蔓の特に曲がりやすい蔓の下端の向きにより蔓の軸心に対する葉の向きを判別して移植するので、この判別が容易となり、クリップ49へ苗を供給する作業を容易に行え、作業者の苗収容体26への苗供給作業の作業能率が向上し、移植作業能率を向上させるべく苗搬送部5を高速で作動させることができ、苗搬送部5の苗搬送作業の作業能率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 苗移植機
5 苗搬送部
6 苗植付け装置
31 苗植付け挟持具
31a 軸部
31b 把持部
48 苗搬送ベルト
49 クリップ
49a クリッププレート
49b ブラシクリップ
50 仕切りプレート
55 土避けシート
57 テンションアーム
58 スクレパーブラシ
111 テンションローラ
129 液剤吐出口