(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】給電システム、及び給電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20240814BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20240814BHJP
B60L 53/34 20190101ALI20240814BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240814BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240814BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20240814BHJP
H02J 7/00 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
H02J50/40
B60L53/12
B60L53/34
H02J50/10
H02J50/80
H02J50/90
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2021110824
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝也
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
(72)【発明者】
【氏名】山下 龍之介
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-154538(JP,A)
【文献】特開2017-034946(JP,A)
【文献】特開2018-157686(JP,A)
【文献】特開2019-136779(JP,A)
【文献】特表2010-527226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0135468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/12
B60L 53/34
H02J 7/00
H02J 50/10
H02J 50/40
H02J 50/80
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電マットを備える給電システムであって、
前記給電マットは、複数の送電コイルを含み、
前記給電マットは、前記送電コイルを用いて、前記給電マット上の移動体に対して給電を行なうように構成され、
当該給電システムは、給電を要求する前記移動体に対する給電を許可するか否かを判断するコンピュータをさらに備え、
前記コンピュータによって給電を許可しないと判断された場合に、給電を要求する前記移動体に対する給電は実行されず、
前記コンピュータは、
給電を要求する前記移動体が前記給電マットに対応する対象移動体に該当するか否かを判断し、
給電を要求する前記移動体が前記対象移動体に該当しない場合には、給電を要求する前記移動体に給電を許可しないと判断し、
給電を要求する前記移動体が前記対象移動体に該当し、かつ、前記給電マットが給電を行なっていない場合には、給電を要求する前記移動体に給電を許可すると判断し、
給電を要求する前記移動体が前記対象移動体に該当し、かつ、前記給電マットが他の移動体に対して給電を行なっている場合には、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると前記給電マットにおける総給電電力が前記給電マットの電力容量を超えるか否かを判断し、
給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれても前記給電マットにおける総給電電力が前記給電マットの電力容量を超えない場合には、給電を要求する前記移動体に給電を許可すると判断し、
給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると前記給電マットにおける総給電電力が前記給電マットの電力容量を超える場合には、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々の優先順位を用いて、給電を要求する前記移動体に対する給電を許可するか否かを判断する
、給電システム。
【請求項2】
前記コンピュータは、蓄電残量が少ない移動体ほど優先順位が高くなるように、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々の優先順位を決定する、請求項
1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記コンピュータは、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々が配達用の移動体である場合には、荷物を運んでいる移動体の優先順位が荷物を運んでいない移動体の優先順位よりも高くなるように、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々の優先順位を決定する、請求項
1又は2に記載の給電システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々がタスクを有する場合に、前記移動体ごとのタスクを評価し、その評価
の結果に応じて、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々の優先順位を決定する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項5】
前記給電マットに含まれる前記複数の送電コイルの各々に電力を供給する電源回路と、
前記電源回路から電力の供給を受け、前記給電マットに含まれる前記複数の送電コイルの各々と前記電源回路との接続/遮断を切り替える電力制御回路とをさらに備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記電力制御回路及び前記コンピュータは、前記給電マットに設けられ、
前記電力制御回路は、前記給電マットに含まれる前記複数の送電コイルのうち前記コンピュータから指定された送電コイルに選択的に電力を供給する、請求項
5に記載の給電システム。
【請求項7】
給電マットを備える給電システムであって、
前記給電マットは、複数の送電コイルを含み、
前記給電マットは、前記送電コイルを用いて、前記給電マット上の移動体に対して給電を行なうように構成され、
当該給電システムは、給電を要求する前記移動体に対する給電を許可するか否かを判断するコンピュータをさらに備え、
前記コンピュータによって給電を許可しないと判断された場合に、給電を要求する前記移動体に対する給電は実行されず、
前記コンピュータは、複数の移動体の各々と通信するように構成され、
前記複数の移動体の各々は、
蓄電装置と、
前記送電コイルから電力を受ける受電コイルと、
前記受電コイルで受けた電力を用いて前記蓄電装置の充電を行なう充電回路と、
前記充電回路を制御する第1制御装置とを備え、
前記コンピュータは、給電を要求する前記移動体に給電を許可すると判断した場合には、給電を要求する前記移動体に対して第1許可信号を送信するように構成され、
前記第1制御装置は、給電を要求する前記移動体の前記受電コイルと前記給電マットに含まれるいずれかの前記送電コイルとの位置合わせが完了し、かつ、前記移動体が前記第1許可信号を受信した場合に、前記蓄電装置の充電を開始するための制御を実行するように構成される
、給電システム。
【請求項8】
前記複数の移動体の各々は、前記蓄電装置に蓄えられた電力を用いて無人で走行可能に構成される自動運転車両であり、
前記複数の移動体の各々は、前記給電マットに到着すると、前記給電マットに含まれる前記複数の送電コイルの中から1つの送電コイルを選び、選んだ前記送電コイルと前記受電コイルとの位置合わせを行なうように構成される、請求項
7に記載の給電システム。
【請求項9】
給電マットを備える給電システムであって、
前記給電マットは、複数の送電コイルを含み、
前記給電マットは、前記送電コイルを用いて、前記給電マット上の移動体に対して給電を行なうように構成され、
当該給電システムは、給電を要求する前記移動体に対する給電を許可するか否かを判断するコンピュータをさらに備え、
前記コンピュータによって給電を許可しないと判断された場合に、給電を要求する前記移動体に対する給電は実行されず、
当該給電システムは、前記給電マットに含まれる前記複数の送電コイルの各々に電力を供給する電源回路と、前記電源回路から電力の供給を受け、前記給電マットに含まれる前記複数の送電コイルの各々と前記電源回路との接続/遮断を切り替える電力制御回路とをさらに備え、
前記給電マットは、前記電力制御回路を制御する第2制御装置を備え、
前記コンピュータは、前記第2制御装置と通信するように構成され、
前記コンピュータは、給電を要求する前記移動体に給電を許可すると判断した場合には、前記給電マットに対して第2許可信号を送信するように構成され、
前記第2制御装置は、給電を要求する前記移動体と前記給電マットに含まれるいずれかの前記送電コイルとの位置合わせが完了し、かつ、前記給電マットが前記第2許可信号を受信した場合に、位置合わせが完了した前記送電コイルによる給電を開始するための制御を実行するように構成される
、給電システム。
【請求項10】
前記給電マットは、筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項11】
前記給電マットは、複数の板材が組み合わさって形成されており、
前記給電マットは、前記複数の板材に分解可能に構成され、
前記複数の板材の各々は、1つ以上の前記送電コイルを含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項12】
前記給電マットは、屋内の床の上に設置可能に構成される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項13】
ワイヤレス給電を行なう給電マットに対して給電を要求する移動体が前記給電マットに対応する対象移動体に該当するか否かを判断することと、
給電を要求する前記移動体が前記対象移動体に該当し、かつ、前記給電マットが他の移動体に対して給電を行なっている場合には、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると前記給電マットにおける総給電電力が前記給電マットの電力容量を超えるか否かを判断することと、
給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると前記給電マットにおける総給電電力が前記給電マットの電力容量を超える場合には、給電を要求する前記移動体と前記他の移動体との各々の優先順位を用いて、給電を要求する前記移動体に対する給電を許可するか否かを判断することと、
を含む、給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電システム及び給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2018-157686号公報(特許文献1)には、複数の給電ユニットが走行車線に沿って設けられた給電レーンを車両が走行する際に、車体前方の道路上に異物の存在を検知した場合に、異物の存在を検知した地点の前後の所定範囲に存在する給電ユニットからの給電を停止又は抑制させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される給電ユニットは道路に埋設される。そして、複数の給電ユニットの各々は1つの送電コイルを備える。これに対し、本願発明者は、複数の送電コイルを含む給電マットを提案する。1つの給電マットに含まれる複数の送電コイルは、別々の移動体に個別に給電可能に構成される。移動体は、給電マットに含まれる複数の送電コイルの中から1つの送電コイルを選んで、選んだ送電コイルから給電を受けることができる。
【0005】
複数の送電コイルにより、給電マット上の複数の移動体に対して同時に給電が行なわれてもよい。しかし、給電マットの電力容量は限られているため、給電マットに含まれる全ての送電コイルで同時に給電が行なわれると、給電マットの総給電電力(すなわち、給電マットにおいて給電で消費される電力の合計値)が給電マットの電力容量を超えてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、移動体に対して給電を行なう送電コイルを複数備える給電マットにおいて、送電コイルの使用を適切に制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点に係る給電システムは、給電マットを備える。給電マットは、複数の送電コイルを含む。給電マットは、送電コイルを用いて、給電マット上の移動体に対して給電を行なうように構成される。当該給電システムはコンピュータ(以下、「給電コンピュータ」とも称する)をさらに備える。給電コンピュータは、給電を要求する移動体に対する給電を許可するか否かを判断するように構成される。この給電システムにおいて、給電コンピュータによって給電を許可しないと判断された場合には、給電を要求する移動体に対する給電は実行されない。
【0008】
給電コンピュータは、給電を要求する移動体に対する給電を許可するか否かを判断する。そして、上記給電システムでは、給電コンピュータによって給電を許可しないと判断された場合には、給電を要求する移動体に対する給電は実行されない。上記給電システムでは、給電コンピュータによって、給電マットに含まれる送電コイルの使用を適切に制限することが可能になる。
【0009】
給電コンピュータは、定置式のサーバであってもよいし、モバイル端末に搭載されてもよい。移動体の例としては、無人の移動体(無人搬送車(AGV)、ドローン等)、乗り物(自動車、船等)が挙げられる。
【0010】
給電コンピュータは、給電を要求する移動体が給電マットに対応する対象移動体に該当するか否かを判断してもよい。そして、給電を要求する移動体が対象移動体に該当しない場合には、給電コンピュータは、給電を要求する移動体に給電を許可しないと判断してもよい。また、給電を要求する移動体が対象移動体に該当し、かつ、給電マットが給電を行なっていない場合には、給電コンピュータは、給電を要求する移動体に給電を許可すると判断してもよい。また、給電を要求する移動体が対象移動体に該当し、かつ、給電マットが他の移動体に対して給電を行なっている場合には、給電コンピュータは、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マットにおける総給電電力が給電マットの電力容量を超えるか否かを判断してもよい。そして、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれても給電マットにおける総給電電力が給電マットの電力容量を超えない場合には、給電コンピュータは、給電を要求する移動体に給電を許可すると判断してもよい。給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マットにおける総給電電力が給電マットの電力容量を超える場合には、給電コンピュータは、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を用いて、給電を要求する移動体に対する給電を許可するか否かを判断してもよい。
【0011】
上記構成によれば、給電マットに対応していない移動体から給電を要求された場合に、給電を要求する移動体に対して給電が実行されない。対象移動体(給電マットに対応する移動体)は、給電コンピュータに登録された移動体であってもよい。また、給電コンピュータは、移動体が要求する充電電力(kW)に基づいて、給電を要求する移動体が対象移動体に該当するか否かを判断してもよい。
【0012】
また、上記構成によれば、給電マットにおける総給電電力(すなわち、給電マットにおいて給電で消費される電力の合計値)が給電マットの電力容量(すなわち、給電マットが正常に給電を行なうことができる総給電電力の上限値)を超えることが抑制される。上記給電システムでは、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マットにおける総給電電力が給電マットの電力容量を超える場合には、給電コンピュータが、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を用いて、給電を要求する移動体に対する給電を許可するか否かを判断する。すなわち、給電を要求する移動体の優先順位が他の移動体の優先順位と比べて高ければ、給電を要求する移動体に対する給電が許可される。上記構成によれば、優先的に給電が行なわれる移動体を、各移動体の優先順位によって決めることができる。
【0013】
給電コンピュータは、蓄電残量と、目標蓄電量と、タスクの有無と、タスクの種類と、タスクの開始時刻と、タスクによる収益との少なくとも1つを用いて、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を決定するように構成されてもよい。給電コンピュータは、配達用の移動体のタスクの有無を、荷物の有無で判断してもよい。
【0014】
給電コンピュータは、蓄電残量が少ない移動体ほど優先順位が高くなるように、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を決定するように構成されてもよい。こうした構成によれば、蓄電残量が少ない移動体に対する給電が制限されにくくなる。これにより、移動体の電欠が抑制される。
【0015】
移動体の蓄電残量は、たとえば移動体が備える蓄電装置のSOC(State Of Charge)で表すことができる。SOCは、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0016】
給電コンピュータは、給電を要求する移動体と他の移動体との各々が配達用の移動体である場合には、荷物を運んでいる移動体の優先順位が荷物を運んでいない移動体の優先順位よりも高くなるように、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を決定するように構成されてもよい。こうした構成によれば、荷物を運んでいる移動体に対する給電が制限されにくくなる。
【0017】
給電コンピュータは、給電を要求する移動体と他の移動体との各々がタスクを有する場合に、移動体ごとのタスクを評価し、その評価結果に応じて、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を決定するように構成されてもよい。こうした構成によれば、優先度が高いと評価されたタスクを有する移動体に対して優先的に給電が実行されやすくなる。たとえば、緊急車両の優先度を高くすることで、緊急車両に対して優先的に給電が実行されやすくなる。
【0018】
給電コンピュータは、複数の移動体の各々と通信するように構成されてもよい。複数の移動体の各々は、蓄電装置と、送電コイルから電力を受ける受電コイルと、受電コイルで受けた電力を用いて蓄電装置の充電を行なう充電回路と、充電回路を制御する第1制御装置とを備えてもよい。給電コンピュータは、給電を要求する移動体に給電を許可すると判断した場合には、給電を要求する移動体に対して第1許可信号を送信するように構成されてもよい。第1制御装置は、給電を要求する移動体の受電コイルと給電マットに含まれるいずれかの送電コイルとの位置合わせが完了し、かつ、移動体が第1許可信号を受信した場合に、蓄電装置の充電を開始するための制御を実行するように構成されてもよい。
【0019】
上記構成によれば、給電コンピュータは、移動体(第1制御装置)に第1許可信号を送信しないことで、移動体に対する給電を制限することができる。
【0020】
上記複数の移動体の各々は、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて無人で走行可能に構成される自動運転車両であってもよい。複数の移動体の各々は、給電マットに到着すると、給電マットに含まれる複数の送電コイルの中から1つの送電コイルを選び、選んだ送電コイルと受電コイルとの位置合わせを行なうように構成されてもよい。
【0021】
上記構成によれば、自動運転車両が、給電マットに移動し、給電マットに含まれる送電コイルから給電を受けることが可能になる。
【0022】
上述したいずれかの給電システムは、電源回路及び電力制御回路をさらに備えてもよい。電源回路は、給電マットに含まれる複数の送電コイルの各々に電力を供給するように構成されてもよい。電力制御回路は、電源回路から電力の供給を受け、給電マットに含まれる複数の送電コイルの各々と電源回路との接続/遮断を切り替えるように構成されてもよい。
【0023】
上記給電システムでは、電源回路により、給電マットに含まれる複数の送電コイルの各々に電力を供給することができる。また、電力制御回路により、電源回路から各送電コイルへの電力供給の有無を切り替えることができる。
【0024】
電力制御回路及び給電コンピュータは、給電マットに設けられてもよい。電力制御回路は、給電マットに含まれる複数の送電コイルのうち給電コンピュータから指定された送電コイルに選択的に電力を供給するように構成されてもよい。
【0025】
上記構成によれば、給電マットにおいて、給電コンピュータが電力制御回路に制御信号(詳しくは、給電を行なう送電コイルを指定する信号)を送ることで、給電を許可する移動体(及び、その移動体に対応する送電コイル)と給電を許可しない移動体(及び、その移動体に対応する送電コイル)とを決定したり変更したりすることができる。
【0026】
給電マットは、電力制御回路を制御する第2制御装置を備えてもよい。給電コンピュータは、第2制御装置と通信するように構成されてもよい。給電コンピュータは、給電を要求する移動体に給電を許可すると判断した場合には、給電マットに対して第2許可信号を送信するように構成されてもよい。第2制御装置は、給電を要求する移動体と給電マットに含まれるいずれかの送電コイルとの位置合わせが完了し、かつ、給電マットが第2許可信号を受信した場合に、位置合わせが完了した送電コイルによる給電を開始するための制御を実行するように構成されてもよい。
【0027】
上記構成によれば、給電コンピュータは、給電マット(第2制御装置)に第2許可信号を送信しないことによって移動体に対する給電が実行されないようにすることができる。
【0028】
給電マットは、筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有してもよい。こうした給電マットは、巻いて筒状にできるため、持ち運びが容易である。
【0029】
給電マットは、複数の板材が組み合わさって形成されてもよい。給電マットは、複数の板材に分解可能に構成されてもよい。複数の板材の各々は、1つ以上の送電コイルを含んでもよい。
【0030】
上記給電マットは、複数の板材に分解可能に構成されるため、持ち運びが容易である。
給電マットは、屋内の床の上に設置可能に構成されてもよい。こうした給電マットは、屋内で使用される小型の移動体(たとえば、AGV又はロボット)の充電に適している。
【0031】
本開示の第2の観点に係る給電方法は、ワイヤレス給電を行なう給電マットに対して給電を要求する移動体が給電マットに対応する対象移動体に該当するか否かを判断することと、給電を要求する移動体が対象移動体に該当し、かつ、給電マットが他の移動体に対して給電を行なっている場合には、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マットにおける総給電電力が給電マットの電力容量を超えるか否かを判断することと、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マットにおける総給電電力が給電マットの電力容量を超える場合には、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を用いて、給電を要求する移動体に対する給電を許可するか否かを判断することとを含む。
【0032】
上記給電方法によっても、前述した給電システムと同様、給電マットにおける送電コイルの使用を適切に制限することが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、移動体に対して給電を行なう送電コイルを複数備える給電マットにおいて、送電コイルの使用を適切に制限することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る給電マットを示す図である。
【
図2】
図1に示した給電マットの使用中の状態の一例を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、移動体の構成と、給電マットの電源設備の構成とについて説明するための図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る給電システムの全体構成を示す図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、給電マットから給電を受けるために移動体が実行する走行制御及び充電制御に係る処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示したS14の処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、マットコントローラによって実行される給電制御に係る処理を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施の形態1に係る給電システムにおいて、サーバによって実行される充電許可に係る処理を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施の形態2に係る給電システムにおいて、移動体が実行する充電制御に係る処理を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の実施の形態2に係る給電システムにおいて、マットコントローラが実行する給電制御に係る処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図10に示した給電制御に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】本開示の実施の形態3に係る給電システムにおいて、マットコントローラが実行する給電制御に係る処理を示すフローチャートである。
【
図13】本開示の実施の形態3に係る給電システムにおいて、サーバによって実行される給電許可に係る処理を示すフローチャートである。
【
図14】変形例に係る優先順位の決定方法を示す図である。
【
図15】
図1に示した給電マットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0036】
[実施の形態1]
図1は、この実施の形態に係る給電マットを示す図である。
図1を参照して、給電マット100は、シート基材110と、シート基材110の内部に設けられた複数の送電コイル120とを含む。給電マット100は持ち運び可能に構成される。給電マット100の重さは、たとえば1人又は数人で持ち運び可能な程度に軽い。また、後述する給電マット100の電源設備(
図3参照)は給電マット100に対して着脱可能に構成される。給電マット100は、筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有する。
図1には、部分的に筒状に巻回された状態の給電マット100を示している。ただし、給電マット100は、全体を筒状に巻回することもできる。給電マット100を巻いて筒状にすることで、給電マット100を持ち運びやすくなる。給電マット100は、筒状に巻回された状態で保管されてもよい。給電マット100は、シート状に広げることもできる。給電マット100は広げられた状態で使用される(後述する
図2参照)。給電マット100は、敷物として扱うことができる。給電マット100は、屋内の床の上に設置可能に構成される。給電マット100は、床の上に設置された後に、取外し可能な留め具(たとえば、押さえ金具又はグリッパー)で固定されてもよい。
【0037】
この実施の形態では、広げられた状態の給電マット100が矩形状の外形(平面形状)を有する。ただし、給電マット100の外形は矩形状に限られず適宜変更可能である。給電マット100の外形は、四角形以外の多角形(三角形、五角形、六角形等)でもよいし、円形でもよい。この実施の形態では、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120がシート基材110に内蔵されている。しかしこれに限られず、送電コイル120は給電マット100の表面に露出するように設けられてもよい。シート基材110は、たとえば樹脂で形成される。ただし、シート基材110の材質は適宜変更可能である。送電コイル120は、たとえば金属で形成される。ただし、送電コイル120の材質は適宜変更可能である。たとえば、送電コイル120は導電性樹脂で形成されてもよい。
【0038】
この実施の形態では、マット面(給電マット100の主面)において、複数の送電コイル120が縦と横とに規則的に配列されている。送電コイル120は、たとえば格子状に配置されている。ただしこれに限られず、送電コイル120の配置は適宜変更可能である。送電コイル120は不規則に配置されてもよい。
図1に示す例では、送電コイル120が平面視で正六角形に形成されているが、送電コイル120の形状は適宜変更可能である。送電コイル120の平面形状は、六角形以外の多角形(たとえば、四角形)であってもよいし、円形であってもよい。送電コイル120の大きさも、給電マット100の用途(たとえば、給電マット100を使用する移動体の構造)に合わせて適宜変更してもよい。
【0039】
図2は、給電マット100の使用中の状態の一例を示す図である。
図2に示す例では、給電マット100上に移動体201~207が載っている。給電マット100に含まれる複数の送電コイル120は、別々の移動体に個別に給電可能に構成される。給電マット100に含まれるいずれかの送電コイル120と移動体201~207のいずれかとの位置合わせが完了すると、位置合わせされた送電コイル120から上記移動体(移動体201~207のいずれか)へのワイヤレス給電が可能になる。移動体201~207の各々は、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120の中から1つの送電コイル120を選んで、選んだ送電コイル120から給電を受けることができる。ワイヤレス電力伝送(WPT)の方式は任意であり、磁界共鳴方式でもよいし、電磁誘導方式でもよい。また、他の方式が採用されてもよい。
【0040】
移動体201~207の各々は、屋内を走行可能に構成される小型のBEV(電気自動車)である。移動体201~205の各々は無人搬送車(AGV)である。移動体206及び207の各々は1人乗り電気自動車である。
【0041】
移動体201~205は、同じタイプのAGVである。移動体201~205の各々は、荷物の搬送に使用される。
図2に示す例では、移動体201~203の各々が単独で荷物を運んでいる。一方、移動体204及び205は、1台では運べない大きな荷物を協働で運んでいる。移動体201~205の各々は、屋内での搬送に適している。以下では、区別して説明する場合を除いて、移動体201~205の各々を「AGV200」と称する。
【0042】
移動体206及び207の各々は、人が乗って手動で運転することも無人で自動運転で走行することも可能に構成される。移動体206はハンドルバーを備える。移動体207はハンドルバー及び座席を備える。移動体206及び207の各々は、屋内を移動する乗り物として適している。
【0043】
図3は、給電マット100から給電を受ける移動体の構成と、給電マット100の電源設備の構成とについて説明するための図である。以下では、移動体の一例として、AGV200の構成について説明する。
【0044】
図2とともに
図3を参照して、この実施の形態に係る給電システムは、給電マット100と、電源モジュール300と、カメラ350とを含む。電源モジュール300は、給電マット100の電源設備に相当する。電源モジュール300はケーブルを介して給電マット100と電気的に接続される。電源モジュール300は電源回路310を備える。電源回路310は、電力系統PGから電力の供給を受け、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120の各々に電力を供給するように構成される。電力系統PGは、図示しない発電所及び送配電設備によって構築される電力網である。電力系統PGは、交流電力(たとえば、三相交流電力)を電源モジュール300へ供給する。電源回路310は、電力変換回路を含む。電源回路310は、電力系統PGから供給される電力を、給電マット100に適した電力に変換して、変換後の電力を給電マット100へ供給する。
【0045】
カメラ350は、電源モジュール300から電力の供給を受け、給電マット100の上方から給電マット100の周辺を撮像するように構成される。電源モジュール300は、給電マット100のための電源回路310に加えて、カメラ350のための電源回路(図示せず)も含む。カメラ350は、壁に取り付けられてもよい。あるいは、カメラ350を支持する支柱が設けられてもよい。カメラ350は、撮像素子に加えて、撮像素子で取得した映像を解析するためのプロセッサ及び画像処理回路を内蔵する。カメラ350は、給電マット100の全面を撮像し、給電マット100上に存在する対象(生体又は物体)を識別する。カメラ350によって給電マット100の状態が監視される。
【0046】
給電マット100は、シート基材110(
図1)の内部に、複数の磁気マーカ121と、電力制御回路130と、無線通信機140と、電力制御回路130を制御するマットコントローラ150とをさらに備える。マットコントローラ150としては、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、及び通信I/F(インターフェース)を備えるコンピュータを採用できる。この実施の形態では、マットコントローラ150において記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、給電マット100における各種制御が実行される。ただし、給電マット100における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0047】
電力制御回路130は接続切替回路を含む。この接続切替回路は、電源回路310から電力の供給を受け、給電マット100に含まれる各送電コイル120と電源回路310との接続/遮断を切り替えるように構成される。電力制御回路130の接続切替回路は、送電コイル120ごとに設けられたスイッチを含んでもよい。この実施の形態では、接続切替回路がノーマリオフ型のスイッチ回路である。マットコントローラ150が停止状態(スリープ状態を含む)になっているときには、給電マット100に含まれる各送電コイル120と電源回路310とは遮断状態になる。
【0048】
電力制御回路130は電力変換回路をさらに含む。この電力変換回路は、電源回路310と電気的に接続された各送電コイル120に対して、ワイヤレス給電に適した電圧を印加するように構成される。具体的には、電力制御回路130の電力変換回路は、共振回路(たとえば、LC共振回路)、フィルタ回路、インバータ、及びPFC(Power Factor Correction)回路を含んでもよい。詳細は後述するが、マットコントローラ150は、電力制御回路130を制御することにより、給電マット100に含まれる任意の送電コイル120から微弱電力(位置確認用の電力)を送電することもできる。
【0049】
給電マット100において、マットコントローラ150が電力制御回路130に制御信号を送ることで、給電対象(給電マット100から給電を受ける移動体)及び制限対象(給電が制限される移動体)の各々を決定したり変更したりすることができる。
【0050】
複数の磁気マーカ121は、複数の送電コイル120に対応して設けられている。すなわち、磁気マーカ121は、給電マット100に含まれる送電コイル120ごとに設けられている。磁気マーカ121は、対応する送電コイル120の位置を示す。移動体は、磁気マーカ121が発する磁気を磁気センサで検出することにより、その磁気マーカ121に対応する送電コイル120の位置を検出できる。
【0051】
給電マット100と電源モジュール300とをつなぐケーブルの内部には電力線だけでなく通信線も設けられている。この実施の形態では、給電マット100と電源モジュール300とが通信可能に構成される。マットコントローラ150は、電源モジュール300内の電源回路310を制御するように構成される。また、カメラ350は電源モジュール300を介して給電マット100と通信可能に接続されている。カメラ350が取得した情報は電源モジュール300を経由してマットコントローラ150に入力される。
【0052】
AGV200は、バッテリ210と、送電コイル120から非接触で電力を受ける受電コイル220と、受電コイル220で受けた電力を用いてバッテリ210の充電を行なう充電回路230と、無線通信機240と、充電回路230を制御するECU(Electronic Control Unit)250とを備える。AGV200におけるバッテリ210、ECU250は、それぞれ本開示に係る「蓄電装置」、「第1制御装置」の一例に相当する。
【0053】
バッテリ210としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。充電回路230は、バッテリ210の車載充電器として機能する。ECU250としては、プロセッサ、RAM、記憶装置、及び通信I/Fを備えるコンピュータを採用できる。この実施の形態では、ECU250において記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、AGV200における各種制御が実行される。ただし、AGV200における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0054】
AGV200は、バッテリ210に蓄えられた電力を用いて無人で走行可能に構成される自動運転車両である。図示は割愛しているが、AGV200は、電動モータと、BMS(Battery Management System)と、自動運転センサと、地図情報を有するナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)とをさらに備える。AGV200は、バッテリ210から電動モータに電力を供給して、電動モータによって生成される動力によって走行する。また、BMSは、バッテリ210の状態(たとえば、電流、電圧、及び温度)を検出する各種センサを含み、その検出結果がECU250に入力される。たとえば、バッテリ210の充電電力(充電電流及び充電電圧)がBMSによって検出される。また、BMSによってバッテリ210のSOC(State Of Charge)が推定され、その推定結果がECU250に入力される。
【0055】
自動運転センサは、自動運転に使用されるセンサである。ただし、自動運転センサは、自動運転が実行されていないときに所定の制御で使用されてもよい。自動運転センサは、AGV200の外部環境を認識するための情報を取得するセンサと、AGV200の位置及び姿勢に関する情報を取得するセンサとを含む。自動運転センサは、たとえば、カメラ、ミリ波レーダ、及びライダーの少なくとも1つを含んでもよい。自動運転センサは、たとえば、IMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサの少なくとも一方を含んでもよい。
【0056】
AGV200は、所定の走行スケジュールに従って無人で自律走行可能に構成される。走行スケジュールは、たとえば目的地への出発時刻及び到達時刻を含む。走行スケジュールの設定方法は任意である。たとえば、AGV200と無線通信可能なユーザ端末(たとえば、モバイル端末)をユーザが操作して、ECU250に走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。あるいは、AGV200と有線通信可能に接続されたサービスツール、又はAGV200が備えるHMI(Human Machine Interface)をユーザが操作して、ECU250に走行スケジュール及び目的地を設定してもよい。
【0057】
ECU250は、所定の自動運転プログラムに従い、自動運転(自動駐車を含む)を実行するように構成される。ECU250は、自動運転センサによって取得される各種情報を用いて、AGV200のアクセル装置、ブレーキ装置、及び操舵装置(いずれも図示せず)を制御することにより、上記走行ルート及び走行スケジュールに従うAGV200の自動運転を実行する。自動運転プログラムは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。
【0058】
充電回路230は、バッテリ210と受電コイル220との間に位置し、ECU250によって制御される。充電回路230は、電力変換回路を含む。送電コイル120から受電コイル220に供給される電力によってバッテリ210の充電が行なわれる場合には、受電コイル220からバッテリ210に適切な電力が入力されるようにECU250が充電回路230を制御する。充電回路230は、受電コイル220から入力される交流電力を直流電力に変換してバッテリ210へ直流電力を出力する。具体的には、充電回路230は、共振回路(たとえば、LC共振回路)、フィルタ回路、整流回路を含んでもよい。
【0059】
AGV200は、マット面(給電マット100の主面)におけるAGV200の位置を検出する位置センサモジュール221をさらに備える。位置センサモジュール221は、たとえば給電マット100のいずれかの送電コイル120と受電コイル220との位置合わせに使用される。位置センサモジュール221は、たとえばAGV200の底面に設けられている。位置センサモジュール221は複数の磁気センサを含む。複数の磁気センサは格子状に配置されてもよい。位置センサモジュール221に含まれる各磁気センサは、磁気マーカ121から発せられる磁気を検出する。ECU250は、位置センサモジュール221の検出結果に基づいて、送電コイル120と受電コイル220との位置ずれ量を取得するように構成される。
【0060】
この実施の形態では、給電マット100とAGV200とが通信可能に構成される。マットコントローラ150とECU250とは、無線通信機140及び240を介して、相互に無線通信を行なってもよい。通信方式は任意である。マットコントローラ150とECU250とは、たとえばNFC(Near Field Communication)又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信(たとえば、給電マット100周辺の範囲での直接通信)を行なうように構成されてもよい。また、マットコントローラ150とECU250とは、無線LAN(Local Area Network)を利用した無線通信を行なうように構成されてもよい。AGV200は、RFID(Radio Frequency IDentification)装置を備えてもよい。そして、マットコントローラ150は、AGV200のRFID装置から発せられる信号を受信するように構成されてもよい。
【0061】
上記では、AGV200の構成について説明したが、
図2に示した移動体206及び207の各々も、
図3に示した構成に準ずる構成を内部に有する。必要に応じて、上述した回路構成を変更して同様の機能を実現してもよい。
【0062】
図4は、この実施の形態に係る給電システムの全体構成を示す図である。
図4を参照して、この実施の形態に係る給電システムは、上述した給電マット100及び電源モジュール300に加えて、サーバ500をさらに含む。サーバ500は、給電マット100に対応する複数の対象移動体の各々と無線通信するように構成される。
図2に示した移動体201~207の各々は、給電マット100の対象移動体に相当する。給電マット100の対象移動体は、給電マット100を使用可能に構成される。この実施の形態では、給電マット100の各対象移動体(移動体201~207を含む)の情報が予めサーバ500に登録されている。ただし、給電マット100の対象移動体ではない移動体も、サーバ500に登録可能である。各移動体の情報がサーバ500に登録されることで、各移動体の情報を管理しやすくなる。サーバ500は、登録されていない移動体と無線通信してもよい。サーバ500は、通信により、未登録の移動体の情報を取得してもよい。この実施の形態に係るサーバ500は、本開示に係る「コンピュータ」の一例に相当する。
【0063】
サーバ500は、プロセッサ510と、記憶装置520と、通信装置530とを備える。プロセッサ510は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶装置520は、各種情報を保存可能に構成される。通信装置530は、各種通信I/Fを含む。サーバ500は、通信装置530を通じて外部と通信するように構成される。
【0064】
記憶装置520には、プロセッサ510に実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置520に記憶されているプログラムをプロセッサ510が実行することで、サーバ500における各種処理が実行される。ただし、サーバ500における各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0065】
サーバ500には、複数の移動体(給電マット100の対象移動体を含む)と複数の給電マット(たとえば、
図1~
図3に示した給電マット100)とが登録されている。サーバ500は、登録された各移動体に関する情報(以下、「移動体情報」と称する)と、登録された各給電マットに関する情報(以下、「マット情報」と称する)とを管理する。移動体情報及びマット情報は記憶装置520に記憶されている。移動体情報及びマット情報は随時更新される。
【0066】
移動体を識別するための識別情報(移動体ID)が移動体ごとに付与されており、サーバ500は移動体情報を移動体IDで区別して管理している。移動体情報には、たとえば、移動体の仕様(たとえば、充電に関するスペック)と、移動体が対応する給電マットのマットIDと、サーバ500が移動体から受信した情報(たとえば、移動体の現在の位置及び状態)とが含まれる。移動体情報は、移動体が要求する充電電力(kW)を含んでもよい。
【0067】
給電マットを識別するための識別情報(マットID)が給電マットごとに付与されており、サーバ500はマット情報をマットIDで区別して管理している。マット情報には、給電マットの仕様(たとえば、給電に関するスペック)と、給電マットの位置(設置場所)とが含まれる。マット情報は、給電マットの電源設備の仕様と、給電マットに含まれる各送電コイルの定格出力(kW)とを含んでもよい。
【0068】
この実施の形態では、給電マット100が、n個の送電コイル120(送電コイル120-1~120-n)と、n個の磁気マーカ121(磁気マーカ121-1~121-n)とを含む。nは2以上の整数である。nは5以上100未満の範囲から選ばれた整数であってもよい。また、nは100以上であってもよい。この実施の形態に係る給電マット100が備える送電コイル120の数(n)は100程度である。
【0069】
図5は、給電マット100から給電を受けるために移動体が実行する走行制御及び充電制御に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の充電開始条件が成立したときに実行される。所定の充電開始条件は、たとえば移動体が備える蓄電装置のSOCが所定SOC値以下になると成立する。所定SOC値は、5%~30%の範囲から選ばれた値であってもよい。また、所定SOC値は、移動体と給電マット100との距離に応じて可変であってもよい。
【0070】
この実施の形態では、
図2に示した移動体201~207の各々が、当該移動体が備える蓄電装置(バッテリ210)のSOCが所定SOC値以下になると、以下に説明する
図5に示す処理を実行する。そして、各移動体は、
図5に示す処理により、給電マット100に向かって移動し、給電マット100に到着すると、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120の中から1つの送電コイル120を選び、選んだ送電コイル120と受電コイル220との位置合わせを行なう。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。また、以下では
図5に示される処理をAGV200が実行する場合について説明するが、
図5に示される処理は、他の移動体(たとえば、
図2に示した移動体206又は207)によっても実行される。
【0071】
図3及び
図4とともに
図5を参照して、S11では、AGV200が自動運転で給電マット100に向かって移動する。複数の場所に給電マット100が設置されている場合には、AGV200は、最寄りの給電マット100に向かって移動する。そして、AGV200が給電マット100に到着すると、S12の処理が実行される。
【0072】
なお、
図5に示される一連の処理を、運転者が乗っている移動体206又は207が実行する場合には、運転者が、当該移動体に搭載されたナビゲーションシステムの案内に従って運転して給電マット100まで移動してもよい。そして、当該移動体が給電マット100に到着すると、ナビゲーションシステムが、運転者に対して給電マット100から離れるように音声で促してもよい。
【0073】
S12では、ECU250が、給電マット100に含まれる未使用の送電コイル120のうち、いずれの送電コイル120を使用するかを選択する。送電コイル120の選び方は任意である。具体的には、ECU250は、AGV200に最も近い送電コイル120を選んでもよい。ECU250は、AGV200が位置合わせしやすい送電コイル120を選んでもよい。ECU250は、給電マット100の中央付近の送電コイル120を選んでもよい。ECU250は、給電中(使用中)の送電コイル120から離れた位置にある未使用の送電コイル120を選んでもよい。以下、S12で選択された送電コイル120を、「対象コイル」とも称する。
【0074】
続くS13では、ECU250が、磁気マーカ121によって示される対象コイルの位置に受電コイル220の位置を合わせるように、AGV200を自動運転で移動させる。ECU250は、たとえば、自動運転センサによって取得される情報に基づいて、AGV200を対象コイルまで移動させた後、位置センサモジュール221の検出結果に基づいて、対象コイルの基準位置(たとえば、中心)と受電コイル220の基準位置(たとえば、中心)とを一致させるようにAGV200の位置を微調整する。なお、送受電コイルの位置合わせの方法は上記に限られない。たとえば、ECU250は、マットコントローラ150と無線通信を行ない、マットコントローラ150に対象コイルを通知した後、マットコントローラ150からの誘導に従ってAGV200を動かすことにより、送受電コイルの位置合わせを行なってもよい。
【0075】
続くS14では、ECU250が充電制御を実行する。
図6は、
図5に示したS14の処理の詳細を示すフローチャートである。
【0076】
図3及び
図4とともに
図6を参照して、S21では、ECU250が、マットコントローラ150と通信して給電マット100のマットIDを取得した後、給電マット100のマットID、AGV200の移動体ID、及びAGV200の状態とともに、充電許可要求(充電許可を要求する信号)をサーバ500へ送信する。この実施の形態では、AGV200からサーバ500へ送信されるAGV200の状態に、バッテリ210のSOCが含まれる。
【0077】
続くS22では、S21の処理を実行してから所定時間以内にAGV200がサーバ500から充電許可を受けたか否かを、ECU250が判断する。この実施の形態では、後述する許可信号(
図8のS44又はS45)をAGV200がサーバ500から受信したことが、AGV200がサーバ500から充電許可を受けたことを意味する。このため、S21の処理を実行してから所定時間以内に上記許可信号をAGV200がサーバ500から受信した場合には、S22においてYESと判断され、処理がS23に進む。他方、S22においてNOと判断された場合には、
図6に示す一連の処理は終了する。
【0078】
S23では、ECU250が給電マット100へAGV200の移動体IDとともに給電開始要求を送信する。そして、ECU250は、後述する給電開始通知(
図7のS33)を給電マット100から受信すると、S24において、マットコントローラ150と通信しながらバッテリ210の充電を行なう。給電マット100の対象コイル(
図5のS12及びS13)からAGV200の受電コイル220に供給される電力によってバッテリ210の充電が行なわれる。バッテリ210の充電中は、マットコントローラ150が給電電力を調整するように電力制御回路130を制御するとともに、ECU250が充電電力を調整するように充電回路230を制御する。
【0079】
上記のように、受電コイル220と給電マット100に含まれるいずれかの送電コイル120との位置合わせ(
図5のS13参照)が完了し、かつ、サーバ500から許可信号を受信した場合(S22にてYES)には、ECU250が、バッテリ210の充電を開始するための制御を実行する(S23及びS24)。他方、サーバ500から許可信号を受信しない場合(S22にてNO)には、ECU250はバッテリ210の充電を開始しない。
【0080】
続くS25では、後述する充電停止指令をAGV200がサーバ500から受信したか否かを、ECU250が判断する。AGV200が充電停止指令を受信していなければ(S25にてNO)、処理はS26に進む。S26では、所定の充電完了条件が成立するか否かを、ECU250が判断する。この実施の形態では、バッテリ210のSOCが所定SOC値(たとえば、満充電を示すSOC値)以上になったときに充電完了条件が成立する。ただしこれに限られず、充電完了条件は任意に設定できる。たとえば、充電開始から所定時間が経過したときに充電完了条件が成立してもよい。
【0081】
S24の処理は、S25及びS26の両方でNOと判断されている間は継続して実行される。給電マット100の対象コイルからAGV200の受電コイル220への給電が継続していれば、S24の処理によりバッテリ210の充電が行なわれる。予期せず給電マット100からの給電が停止された場合には、ECU250は、送受電コイルの位置合わせ(
図5のS13)を再度実行した後、給電開始要求(
図6のS23)を給電マット100へ再度送信してもよい。他方、AGV200が充電停止指令を受信するか(S25にてYES)、又は充電完了条件が成立すると(S26にてYES)、処理はS27に進み、S24の処理は実行されなくなる。これにより、バッテリ210の充電は行なわれなくなる。
【0082】
S27では、ECU250が給電マット100へ給電停止要求を送信する。その後、ECU250は、S28において、許可された充電が終了したことを示す充電終了通知をサーバ500へ送信する。S28の処理が実行されると、
図6に示す一連の処理が終了する。これにより、
図5に示した一連の処理も終了する。AGV200に目的地が設定されている場合には、AGV200は、目的地に向かって走行を再開する。
【0083】
この実施の形態では、給電マット100の周辺の所定エリア内に移動体が存在しないときには、給電マット100のマットコントローラ150が停止状態(たとえば、スリープ状態)になっている。そして、1台目の移動体が上記所定エリア内に入ると、マットコントローラ150が起動する。たとえば、カメラ350が給電マット100の周辺に移動体を認識したときに、移動体が所定エリア内に入ったと認定されてもよい。また、移動体のRFID装置から発せられる信号を無線通信機140が受信したときに、移動体が所定エリア内に入ったと認定されてもよい。また、給電システムは、ジオフェンシング技術を利用して、移動体が所定エリア内に入ったか否かを判断するように構成されてもよい。
【0084】
図7は、マットコントローラ150によって実行される給電制御に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、マットコントローラ150が移動体から給電開始要求(
図6のS23)を受信した場合に、その移動体について実行される。マットコントローラ150が複数の移動体から給電開始要求を受信したときには、
図7に示される一連の処理は移動体ごとに並行して実行される。以下では、
図7に示される処理がAGV200に対して実行される場合について説明するが、
図7に示される処理は、他の移動体(たとえば、
図2に示した移動体206又は207)に対しても実行される。
【0085】
図3及び
図4とともに
図7を参照して、S31では、対象コイル(
図5のS12)の位置と受電コイル220の位置とが合っているか否かを、マットコントローラ150が判断する。マットコントローラ150は、カメラ350から取得した情報、又は給電マット100に搭載された各種センサ(たとえば、図示しない荷重センサ)の出力に基づいて、対象コイルを認定してもよい。あるいは、マットコントローラ150は、対象コイルを示す信号をAGV200(ECU250)から受信してもよい。
【0086】
ワイヤレス給電(後述するS33参照)がまだ開始されていない場合には、マットコントローラ150は、S31において、対象コイルから受電コイル220に向けて微弱電力を送電するように電力制御回路130を制御する。微弱電力は、位置確認用の電力であり、充電中に対象コイルから送電される給電電力よりも小さい。そして、マットコントローラ150は、ECU250からの情報(たとえば、受電コイル220で受電された電力)に基づいて、対象コイルから受電コイル220に適切に電力が伝送されたかを確認する。対象コイルから受電コイル220に適切に電力が伝送されている場合には、マットコントローラ150は、対象コイルの位置と受電コイル220の位置とが合っていると判断する。マットコントローラ150は、ワイヤレス給電の実行中においても、S31の処理を実行する。この場合、マットコントローラ150は、微弱電力ではなく給電電力(充電のために送電される電力)を対象コイルから受電コイル220に送電しながら、ECU250からの情報(たとえば、受電コイル220で受電された電力)に基づいて、対象コイルの位置と受電コイル220の位置とが合っているか否かを判断する。
【0087】
対象コイルの位置と受電コイル220の位置とが許容範囲を超えてずれている場合(S31にてNO)には、
図7に示す一連の処理は終了する。他方、対象コイルの位置と受電コイル220の位置とが合っている場合(S31にてYES)には、処理がS32に進む。S32では、ワイヤレス給電に適した環境か否かを、マットコントローラ150が判断する。マットコントローラ150は、カメラ350から取得した情報、又は給電マット100に搭載された各種センサ(たとえば、図示しない荷重センサ及び温度センサ)の出力に基づいて、ワイヤレス給電に適した環境か否かを判断してもよい。たとえば、マットコントローラ150は、移動体以外の対象(以下、「異物」と称する)の有無に基づいて、環境の適否を判断する。異物には生物(たとえば、人)も含まれる。この実施の形態では、給電マット100上に異物が存在する場合には、S32において、給電マット100の環境がワイヤレス給電に適していないと判断される。他方、給電マット100上に異物が存在しない場合には、S32において、給電マット100の環境がワイヤレス給電に適していると判断される。ただし、上記の例に限られず、マットコントローラ150は、異物の有無以外の観点で、環境の適否を判断してもよい。
【0088】
給電マット100の環境がワイヤレス給電に適している場合(S32にてYES)には、マットコントローラ150は、S33において、AGV200(ECU250)へ給電開始通知を送信した後、ECU250と通信しながらワイヤレス給電を行なう。S33の処理は、
図6のS24の処理と並行して実行される。これにより、給電マット100の送電コイル120からAGV200の受電コイル220に電力が供給され、受電コイル220が受電した電力が充電回路230を経由してバッテリ210に入力される。ワイヤレス給電中(すなわち、バッテリ210の充電中)は、マットコントローラ150が給電電力を調整するように電力制御回路130を制御する。
【0089】
続くS34では、給電マット100がAGV200から給電停止要求(
図6のS27)を受信したか否かを、マットコントローラ150が判断する。給電マット100が給電停止要求を受信していなければ(S34にてNO)、処理はS31に戻る。
【0090】
ワイヤレス給電(S33)は、S31及びS32の両方でYESかつS34でNOと判断されている間は継続して実行される。他方、S31とS32とのいずれかでNO又はS34でYESと判断されると、
図7に示す一連の処理が終了する。これにより、ワイヤレス給電(S33)は行なわれなくなる。
【0091】
図8は、サーバ500によって実行される充電許可に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、サーバ500が移動体から充電許可要求(
図6のS21)を受信した場合に、その移動体について実行される。サーバ500が複数の移動体から充電許可要求を受信したときには、
図8に示される一連の処理は移動体ごとに並行して実行される。以下では、
図8に示される処理がAGV200に対して実行される場合について説明するが、
図8に示される処理は、他の移動体(たとえば、
図2に示した移動体206又は207)に対しても実行される。
【0092】
図3及び
図4とともに
図8を参照して、S411では、給電を要求するAGV200と、AGV200が給電を受けようとする給電マット100(以下、「対象マット」とも称する)とが対応しているか否かを、サーバ500が判断する。換言すれば、サーバ500は、給電を要求するAGV200が対象移動体に該当するか否かを判断する。サーバ500は、AGV200から受信したマットID(
図6のS21)に基づいて対象マットを特定できる。サーバ500は、たとえば登録された移動体情報に基づいて、給電を要求するAGV200が対象移動体に該当するか否かを判断できる。
【0093】
給電を要求するAGV200がサーバ500に登録されていない場合には、サーバ500は、AGV200に関する所定の情報(たとえば、移動体の種類、蓄電装置の容量、及び充電電力の少なくとも1つ)を、AGV200から取得してもよい。サーバ500は、AGV200が要求する充電電力(kW)に基づいて、AGV200が対象移動体に該当するか否かを判断してもよい。サーバ500は、AGV200が要求する充電電力(kW)が対象マットの対象コイルの定格出力(kW)よりも大きい場合に、給電を要求するAGV200は対象移動体に該当しないと判断してもよい。サーバ500は、登録されたマット情報を参照して対象マットの仕様を確認できる。サーバ500は、AGV200が備える蓄電装置の容量(kWh)に基づいて、AGV200が要求する充電電力(kW)を推定してもよい。また、サーバ500は、移動体の種類(たとえば、車種)に基づいて、移動体が要求する充電電力(kW)を推定してもよい。体格が大きい移動体ほど大きな充電電力(kW)を要求する傾向がある。
【0094】
給電を要求するAGV200が対象移動体に該当しない場合には(S411にてNO)、
図8に示す一連の処理が終了する。すなわち、サーバ500は、AGV200からの充電許可要求に対して許可信号を返信しない。許可信号を受信しないAGV200では、バッテリ210の充電を開始するための制御が実行されない(
図6のS22参照)。
【0095】
他方、給電を要求するAGV200が対象移動体に該当する場合には(S411にてYES)、処理がS412に進む。S412では、対象マットが他の移動体(給電を要求するAGV200以外の移動体)に対して給電を行なっているか否かを、サーバ500が判断する。サーバ500は、充電を許可した回数(後述するS44及びS45参照)から充電終了通知を受けた回数(
図6のS28参照)を減算することにより、対象マットで給電を受けている移動体の数を取得することができる。以下では、対象マットで給電を受けている移動体と区別するために、給電を要求するAGV200(すなわち、充電許可要求を送信した移動体)を「新規移動体」とも称する。また、対象マットで給電を受けている他の移動体を「充電中の移動体」とも称する。新規移動体も充電中の移動体も、サーバ500が新規移動体から充電許可要求を受信した時点において対象マットに載っている。
【0096】
対象マットが他の移動体に対して給電を行なっている場合には(S412にてYES)、処理がS413に進む。S413では、新規移動体と充電中の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると対象マットにおける総給電電力(すなわち、対象マットにおいて給電で消費される電力の合計値)が対象マットの電力容量を超えるか否かを、サーバ500が判断する。サーバ500は、たとえば登録された移動体情報及びマット情報を用いて、S413における上記判断を行なってもよい。また、サーバ500は、登録された情報に加えて又は代えて、対象マット及び各移動体から取得した情報を用いて、S413における上記判断を行なってもよい。対象マットの電力容量は、たとえば対象マットの定格出力(kW)で表わすことができる。対象マットの定格出力(kW)は、対象マットの電源設備(電源モジュール300を含む)の仕様によって決まる。
【0097】
新規移動体と充電中の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると対象マットにおける総給電電力が対象マットの電力容量を超えない場合(S413にてNO)には、処理がS45に進む。また、対象マットが給電を行なっていない場合にも(S412にてNO)、処理がS45に進む。S45では、サーバ500が許可信号をAGV200へ送信する。許可信号は、AGV200に対して充電を許可する信号である。許可信号を受信したAGV200では、バッテリ210の充電を開始するための制御が実行される(
図6のS22~S24参照)。S45の処理が実行されると、
図8に示す一連の処理が終了する。
【0098】
他方、新規移動体と充電中の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると対象マットにおける総給電電力が対象マットの電力容量を超える場合(S413にてYES)には、サーバ500は、S42において、対象マット上の各移動体(新規移動体及び充電中の移動体)の優先順位を取得する。具体的には、サーバ500は、充電中の各移動体から蓄電残量(SOC)を取得し、新規移動体の蓄電残量(すなわち、
図6のS21の処理により送られてきたバッテリ210のSOC)と比較する。そして、蓄電残量が少ない移動体ほど優先順位が高くなるように各移動体の優先順位を決定する。
【0099】
続くS43では、サーバ500が、上記S42で決定された各移動体の優先順位に従って、給電を許可する移動体と、給電を制限する移動体とを決定する。その後、サーバ500は、S44において、S43で選択された制限対象に対して給電制限(より特定的には、給電禁止)を実行する。
【0100】
S43で選択される制限対象の数は、対象マットの上記総給電電力が対象マットの電力容量を下回るように決定される。サーバ500は、最も優先順位の低い移動体のみに給電制限を行なっても対象マットの上記総給電電力が対象マットの電力容量を下回らない場合には、優先順位が2番目に低い移動体に対しても給電制限を行なう。サーバ500が、S43において、優先順位が低い順に必要な数の移動体(対象マットの総給電電力が電力容量を下回る数の移動体)を選択することで、対象マットの上記総給電電力が対象マットの電力容量を超えることが抑制される。
【0101】
S43で選択された制限対象に新規移動体が含まれる場合には、サーバ500は、S44において、新規移動体に充電を許可しない。すなわち、サーバ500は、新規移動体からの充電許可要求に対して許可信号を返信しない。許可信号を受信しない新規移動体では、バッテリ210の充電を開始するための制御が実行されない(
図6のS22参照)。
【0102】
他方、S43で選択された制限対象に新規移動体が含まれない場合には、サーバ500は、S44において、新規移動体へ許可信号を送信する。許可信号を受信した新規移動体では、バッテリ210の充電を開始するための制御が実行される(
図6のS22~S24参照)。
【0103】
S43で選択された制限対象に充電中の移動体が含まれる場合には、サーバ500は、S44において、その移動体へ充電停止指令を送信する。充電停止指令を受信した移動体は、蓄電装置の充電を終了する(
図6のS25参照)。
【0104】
他方、S43で選択された制限対象に充電中の移動体が含まれない場合には、充電中の移動体へ充電停止指令は送信されない。充電中の移動体はそのまま蓄電装置の充電を続行できる。
【0105】
上記のように、サーバ500は、新規移動体と充電中の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると対象マットにおける総給電電力が対象マットの電力容量を超える場合には、新規移動体と充電中の移動体との各々の優先順位を用いて、新規移動体に対する給電を許可するか否かを判断する。そして、新規移動体に給電を許可すると判断された場合には、サーバ500は、S44において、新規移動体に対して許可信号を送信する。S44の処理が実行されると、
図8に示す一連の処理が終了する。S44において送信される上記許可信号は、本開示に係る「第1許可信号」の一例に相当する。
【0106】
以上説明したように、実施の形態1に係る給電システムにおいて、サーバ500は、新規移動体に対する給電を許可するか否かを判断する(
図8のS43)。そして、サーバ500によって給電を許可しないと判断された場合には、新規移動体に対する給電は実行されない(
図8のS411及びS44参照)。こうした給電システムでは、サーバ500によって、給電マット100に含まれる送電コイル120の使用を適切に制限することが可能になる。
【0107】
上記実施の形態1に係る給電方法は、ワイヤレス給電を行なう給電マット100に対して給電を要求する移動体が給電マット100に対応する対象移動体に該当するか否かを判断すること(
図8のS411)と、給電を要求する移動体が対象移動体に該当し、かつ、給電マット100が他の移動体に対して給電を行なっている場合には(
図8のS411にてYESかつS412にてYES)、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マット100における総給電電力が給電マット100の電力容量を超えるか否かを判断すること(
図8のS413)と、給電を要求する移動体と他の移動体との全てに対して同時に給電が行なわれると給電マット100における総給電電力が給電マット100の電力容量を超える場合には(
図8のS413にてYES)、給電を要求する移動体と他の移動体との各々の優先順位を用いて、給電を要求する移動体に対する給電を許可するか否かを判断すること(
図8のS42~S44)とを含む。こうした給電方法によれば、給電マット100における送電コイル120の使用を適切に制限することが可能になる。
【0108】
[実施の形態2]
本開示の実施の形態2に係る給電システムについて説明する。実施の形態2は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に相違点について説明し、共通する部分についての説明は割愛する。実施の形態2では、実施の形態1に係るサーバ500の機能が給電マット100に搭載される。実施の形態2では、
図8に示した処理は実行されない。また、
図6及び
図7に示した処理の代わりに、以下に説明する
図9及び
図10に示す処理が実行される。
【0109】
図9は、実施の形態2に係る給電システムにおいて、移動体(たとえば、AGV200)が実行する充電制御に係る処理を示すフローチャートである。移動体は、
図5に示した処理を実行し、
図5のS14において
図9に示す処理を実行する。
図9に示す処理では、
図6に示した処理に対して、S23の代わりにS23Aが採用されるとともにS23Bが追加されている。また、
図9に示す処理では、S21、S22、S25、及びS28(
図6)が割愛されている。以下、主にS23A及びS23Bについて説明する。
【0110】
図3及び
図4とともに
図9を参照して、ECU250は、S23Aにおいて、AGV200の移動体ID及び状態とともに、給電開始要求(給電開始を要求する信号)を給電マット100へ送信する。この実施の形態では、AGV200から給電マット100へ送信されるAGV200の状態に、バッテリ210のSOCが含まれる。その後、S23Bにおいて、後述する給電停止通知(
図10のS44A、S47、及び
図11のS35)をAGV200が給電マット100から受信したか否かを判断する。
【0111】
AGV200が給電停止通知を受信しない場合には(S23BにてNO)、ECU250は、S24において、マットコントローラ150と通信しながらバッテリ210の充電を行なう。そして、所定の充電完了条件が成立すると(S26にてYES)、S27においてECU250が給電マット100へ給電停止要求を送信した後、
図9に示す一連の処理が終了する。
【0112】
他方、AGV200が給電停止通知を受信した場合には(S23BにてYES)、
図9に示す一連の処理が終了する。このため、AGV200が給電停止通知を受信すると、バッテリ210の充電は実行されない。
【0113】
図10は、実施の形態2に係る給電システムにおいて、マットコントローラ150が実行する給電制御に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、マットコントローラ150が移動体から給電開始要求(
図9のS23A)を受信した場合に、その移動体について実行される。
【0114】
図3及び
図4とともに
図10を参照して、マットコントローラ150は、S411A~S413Aにおいて、
図8のS411~S413に準ずる処理を実行する。
【0115】
S411AにおいてNOと判断された場合には、マットコントローラ150は、S47において、給電を要求する移動体へ給電停止通知を送信する。給電停止通知を受信した移動体では、バッテリ210の充電が実行されなくなる(
図9参照)。
【0116】
S412A又はS413AにおいてNOと判断された場合には、処理は後述するS45Aに進む。
【0117】
S411A~S413Aの全てでYESと判断された場合には、
図8のS42~S44に準ずるS42A~S44Aが実行される。ただし、S44Aでは、マットコントローラ150が、S43Aで選択された制限対象へ給電停止通知を送信する。給電停止通知を受信した移動体では、バッテリ210の充電が実行されなくなる(
図9参照)。
【0118】
続くS46では、制限対象に新規移動体が含まれるか否かを、マットコントローラ150が判断する。制限対象に新規移動体が含まれる場合には(S46にてYES)、
図10に示す一連の処理が終了する。これにより、給電マット100から新規移動体へ給電は実行されなくなる。他方、制限対象に新規移動体が含まれない場合には(S46にてNO)、S45Aにおいて、新規移動体に対する給電制御が実行される。
【0119】
図11は、
図10に示したS45Aの処理の詳細を示すフローチャートである。
図11に示す処理では、
図7に示した処理に対して、S35が追加されている。以下、主にS35について説明する。
【0120】
図3及び
図4とともに
図11を参照して、S31とS32との両方でYESと判断されると、S33において、新規移動体に対するワイヤレス給電が実行される。具体的には、マットコントローラ150は、電力制御回路130に対して対象コイル(
図5のS12及びS13参照)を指定する。これにより、電力制御回路130は、給電マット100に含まれる複数の送電コイル120のうちマットコントローラ150から指定された送電コイル120に選択的に電力を供給する。この実施の形態に係るマットコントローラ150は、本開示に係る「コンピュータ」の一例に相当する。
【0121】
他方、S31とS32とのいずれかにおいてNOと判断されると、処理がS35に進む。S35では、マットコントローラ150が移動体(たとえば、AGV200)へ給電停止通知を送信する。給電停止通知を受信した移動体では、バッテリ210の充電が実行されなくなる(
図9参照)。S35の処理が実行されると、
図11に示す一連の処理は終了する。
【0122】
以上説明したように、実施の形態2に係る給電システムにおいて、マットコントローラ150は、新規移動体に対する給電を許可するか否かを判断する(
図10のS43A)。そして、マットコントローラ150によって給電を許可しないと判断された場合には、新規移動体に対する給電は実行されない(
図10のS44A及びS47参照)。こうした給電システムでは、マットコントローラ150によって、給電マット100に含まれる送電コイル120の使用を適切に制限することが可能になる。
【0123】
[実施の形態3]
本開示の実施の形態3に係る給電システムについて説明する。実施の形態3は実施の形態1と共通する部分が多いため、主に相違点について説明し、共通する部分についての説明は割愛する。
【0124】
実施の形態1では、サーバ500から移動体へ許可信号が送信される。これに対し、実施の形態3では、サーバ500が給電マット100のマットコントローラ150と通信するように構成され、サーバ500から給電マット100へ許可信号が送信される。この許可信号は、本開示に係る「第2許可信号」の一例に相当する。サーバ500とマットコントローラ150との通信方式は有線でも無線でもよい。実施の形態3に係るサーバ500、マットコントローラ150は、それぞれ本開示に係る「コンピュータ」、「第2制御装置」の一例に相当する。
【0125】
実施の形態3では、
図6に示した処理の代わりに
図9に示した処理が実行され、
図7及び
図8に示した処理の代わりに、以下に説明する
図12及び
図13に示す処理が実行される。移動体は、
図5に示した処理を実行し、
図5のS14において
図9に示した処理を実行する。
【0126】
図12は、実施の形態3に係る給電システムにおいて、マットコントローラ150が実行する給電制御に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、マットコントローラ150が移動体から給電開始要求(
図9のS23A)を受信した場合に、その移動体について実行される。
【0127】
図3及び
図4とともに
図12を参照して、S21Aでは、マットコントローラ150が、給電マット100のマットID、並びにAGV200の移動体ID及び状態(バッテリ210のSOCを含む)とともに、給電許可要求(給電許可を要求する信号)をサーバ500へ送信する。
【0128】
続くS22Aでは、S21Aの処理を実行してから所定時間以内に給電マット100がサーバ500から給電許可を受けたか否かを、マットコントローラ150が判断する。S21Aの処理を実行してから所定時間以内に給電マット100が許可信号(
図13のS44B又はS45B)をサーバ500から受信した場合には、S22AにおいてYESと判断され、処理がS25Aに進む。S25Aでは、給電を要求する移動体に関する給電停止指令を給電マット100がサーバ500から受信したか否かを、マットコントローラ150が判断する。給電マット100が上記給電停止指令を受信していなければ(S25AにてNO)、処理はS31に進む。S31以降の処理は、
図11に示した処理と同じである。
【0129】
S22AにてNO又はS25AにてYESと判断されると、処理はS35に進む。S35では、マットコントローラ150が、移動体(たとえば、AGV200)へ給電停止通知を送信する。給電停止通知を受信した移動体では、バッテリ210の充電が実行されなくなる(
図9参照)。S35の処理が実行されると、
図12に示す一連の処理は終了する。
【0130】
図13は、実施の形態3に係る給電システムにおいて、サーバ500によって実行される給電許可に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、サーバ500が給電マット100から給電許可要求(
図12のS21A)を受信した場合に、給電許可を要求する給電マット100について実行される。
図13に示す処理では、S44及びS45(
図8)の代わりにS44B及びS45Bが採用されている。以下、主にS44B及びS45Bについて説明する。
【0131】
図3及び
図4とともに
図13を参照して、S41においてNOと判断されると、処理がS45Bに進む。S45Bでは、サーバ500が許可信号を給電マット100へ送信する。許可信号は、給電マット100に対して給電を許可する信号である。許可信号を受信した給電マット100では、対象コイル(すなわち、給電を要求する移動体との位置合わせが完了した送電コイル120)による給電を開始するための制御が実行される(
図12参照)。S45Bの処理が実行されると、
図13に示す一連の処理が終了する。
【0132】
他方、S41においてYESと判断されると、処理はS42及びS43を経由してS44Bに進む。S44Bでは、サーバ500が、S43で選択された制限対象に対して給電制限を実行する。
【0133】
制限対象に新規移動体が含まれる場合には、サーバ500は、S44Bにおいて、給電マット100に給電を許可しない。すなわち、サーバ500は、給電マット100からの給電許可要求に対して許可信号を送信しない。許可信号を受信しない給電マット100では、新規移動体の受電コイル220と位置合わせされた送電コイル120による給電を開始するための制御が実行されない(
図12参照)。
【0134】
他方、制限対象に新規移動体が含まれない場合には、サーバ500は、S44Bにおいて、給電マット100へ許可信号を送信する。許可信号を受信した給電マット100では、新規移動体の受電コイル220と位置合わせされた送電コイル120による給電を開始するための制御が実行される(
図12参照)。
【0135】
制限対象に充電中の移動体が含まれる場合には、サーバ500は、S44Bにおいて、その移動体の移動体IDとともに給電停止指令を給電マット100へ送信する。給電停止指令を受信した給電マット100は、移動体IDが示す移動体の受電コイル220と位置合わせされた送電コイル120による給電を終了する(
図12参照)。
【0136】
以上説明したように、実施の形態3に係る給電システムにおいて、サーバ500は、給電マット100上の複数の移動体の各々の優先順位を用いて、給電を要求する新規移動体に対する給電を許可するか否かを判断し、給電を許可すると判断された場合には、給電マット100に対して許可信号(第2許可信号)を送信するように構成される(
図13のS44及びS45B)。サーバ500は、新規移動体と給電マット100に含まれるいずれかの送電コイル120との位置合わせが完了し、かつ、給電マット100が上記許可信号(第2許可信号)を受信した場合に、位置合わせが完了した送電コイルによる給電を開始するための制御を実行するように構成される(
図12のS22A及びS31~S33参照)。こうした構成によれば、サーバ500は、給電マット100に第2許可信号を送信しないことによって新規移動体に対する給電制限を行なうことができる。
【0137】
[他の実施の形態]
上記各実施の形態では、蓄電残量が少ない移動体ほど優先順位が高くなるように、給電マット100上の各移動体の優先順位が決定される(たとえば、
図8のS42)。しかし、優先順位の決め方は、上記の方法には限定されない。
【0138】
たとえば、給電マット100上に移動体201~205(いずれもAGV)が存在するときには、サーバ500は、荷物を運んでいるAGVの優先順位が荷物を運んでいないAGVの優先順位よりも高くなるように、給電マット100上の各移動体の優先順位を決定してもよい。AGVは、配達用の移動体に相当する。荷物を運んでいるAGVは、タスク(詳しくは、配達タスク)を有する移動体に相当する。
【0139】
また、給電マット100上の各移動体がタスクを有するときには、サーバ500は、移動体ごとのタスクを評価し、その評価結果に応じて、給電マット100上の各移動体の優先順位を決定してもよい。以下、こうした優先順位の決定方法が採用された変形例について説明する。
【0140】
図14は、変形例に係る優先順位の決定方法を示す図である。この変形例では、移動体にタスクが設定されると、前述の充電開始条件(すなわち、
図5に示した処理が実行される条件)が成立する。このため、たとえば実施の形態1では、
図8に示した処理において認定される新規移動体と充電中の移動体とがいずれもタスクを有する。対象マット上の各移動体(新規移動体及び充電中の移動体)は、たとえば
図14に示すタスクを有する。
図14において、移動体#1~#4は、対象マット上の移動体に相当する。
【0141】
図14を参照して、この変形例では、式「プライオリティ指標=係数a×Pa+係数b×(1/Pb)+係数c×Pc+係数d×Pd」に従い、プライオリティ指標が算出される。係数a~dは任意に設定できる。この変形例では、係数a、係数b、係数c、係数dを、それぞれ1、100、10、0.1とする。
【0142】
Paは、タスクのために要求される給電量である。Paは、タスクのための目標蓄電量から現在の蓄電残量を減算することによって得られる。サーバ500は、充電制御における目標SOCから現在のSOCを減算することによってPaを取得できる。たとえば、
図14に示す移動体#1では、現在のSOCが60(%)、目標SOCが70(%)である。このため、移動体#1における「係数a×Pa」は10(=1×(70-60))である。
【0143】
Pbは、現在時刻からタスク開始までの余裕時間である。要求されるタスク開始時刻が早いほどPbは小さくなる。たとえば、
図14に示す移動体#1では、要求されるタスク開始時刻が20分以内であり、Pbが20(分)となる。このため、移動体#1における「係数b×(1/Pb)」は5(=100×(1/20))である。
【0144】
Pcは、タスクの種類で決まるポイントである。Pcは、タスクの種類ごとに予め決められている。この変形例では、タスクが、普通郵便と急ぎ便とクール便と緊急タスクとに分類される。クール便は、荷物を保冷輸送するサービスである。急ぎ便は、普通郵便よりも早く荷物を届けるサービスである。電子商取引においては特定の契約者に限定して急ぎ便が提供されることがある。緊急タスクは、急を要するタスクである。たとえば、医療又は災害対策のためのタスクが緊急タスクに該当する。この変形例では、普通郵便、急ぎ便、クール便に対するポイントが、それぞれ1、5、10のように決められている。また、緊急タスクが最優先されるように、緊急タスクのポイントは最高値(無限大)に設定されている。たとえば、
図14に示す移動体#1では、タスクの種類が普通郵便である。このため、移動体#1における「係数c×Pc」は10(=10×1)である。
【0145】
Pdは、タスクによる収益である。タスクによる収益は、タスクの種類によって決まる収益(たとえば、契約で決められた収益)であってもよい。ただし、この変形例では、タスクによる収益が、タスクにかかる時間も考慮して算出される。サーバ500は、タスク完遂により得られる予想収益を1時間あたりの単価に換算する。こうして得られた予想収益の時間単価を、タスクによる収益として採用する。たとえば、
図14に示す移動体#1では、タスクによる収益(予想収益の時間単価)が500(円)である。このため、移動体#1における「係数d×Pd」は50(=0.1×500)である。
【0146】
この変形例では、サーバ500が、
図8のS42において、移動体ごとのタスクを評価し、その評価結果に応じて、給電マット100上の各移動体の優先順位を決定する。具体的には、サーバ500が、対象マット上の各移動体から、蓄電装置の現在のSOC(蓄電残量)と、タスクに関する情報(種類、開始時刻、目標蓄電量、及び予想収益)とを取得し、前述の式に従って、対象マット上の各移動体のプライオリティ指標を算出する。たとえば、移動体#1のプライオリティ指標は75(=10+5+10+50)になる。また、移動体#2、#3、#4のプライオリティ指標は、それぞれ340、181、最高値(無限大)になる。プライオリティ指標は、タスク評価の結果に相当する。サーバ500は、プライオリティ指標が大きい移動体ほど優先順位が高くなるように、給電マット100上の各移動体の優先順位を決定する。移動体#1~#4の優先順位は、高いほうから、#4、#2、#3、#1の順である。
【0147】
なお、複数の移動体について各々算出されたプライオリティ指標が同じになった場合には、プライオリティ指標で優先順位を決めることができないため、それら移動体間の優先順位については他の観点で決定されてもよい。たとえば、蓄電残量が少ない移動体ほど優先順位が高くなるように各移動体の優先順位が決定されてもよい。
【0148】
上記変形例に係る給電システムでは、
図8に示される処理が開始されるときには、タスクを有する移動体のみが対象マット上に存在すると考えられる。しかしこれに限られず、タスクを有する移動体とタスクを有しない移動体とが対象マット上に混在するように充電開始条件が変更されてもよい。たとえば、タスクの有無にかかわらず、移動体の蓄電残量が所定値以下になると、その移動体について充電開始条件が成立してもよい。こうした形態では、
図8のS42において、タスクを有する移動体の優先順位がタスクを有しない移動体の優先順位よりも高くなるように、対象マット上の各移動体の優先順位が決定されてもよい。
【0149】
上記各実施の形態では、給電マットが筒状に巻回可能な程度の柔軟性を有する(
図1参照)。しかし、給電マットは曲げられなくてもよい。
図15は、
図1に示した給電マット100の変形例を示す図である。
【0150】
図15を参照して、給電マット100Aは、1枚の第1板材101と複数の第2板材102とが組み合わさってシート状に形成されている。
【0151】
第1板材101はケーブルを介して電源モジュール300と電気的に接続される。第1板材101は、電源モジュール300に対して常に接続されてもよいし、着脱可能であってもよい。第1板材101は、シート基材110Aと、電力制御回路130と、無線通信機140と、マットコントローラ150とを備える。電力制御回路130、無線通信機140、及びマットコントローラ150は、シート基材110Aに内蔵されている。第1板材101は、長方形状の外形(平面形状)を有する。ただしこれに限られず、第1板材101の外形は適宜変更可能である。
【0152】
複数の第2板材102の各々は、シート基材110Bと、送電コイル120Bとを備える。送電コイル120Bはシート基材110Bの表面に設けられている。ただしこれに限られず、送電コイル120Bはシート基材110Bに内蔵されてもよい。電力系統PGから供給される電力は、電源モジュール300及び第1板材101を経由して、各第2板材102に供給される。電源モジュール300に含まれる電源回路310は、各第2板材102に含まれる送電コイル120Bに電力を供給する。
【0153】
第2板材102は1つの送電コイル120Bを備える。しかしこれに限られず、第2板材102は2以上の送電コイル120Bを備えてもよい。第2板材102は、正方形状の外形(平面形状)を有する。ただしこれに限られず、第2板材102の外形は、正方形に限られず、長方形状でもよいし、四角形以外の多角形(三角形、五角形、六角形等)でもよいし、円形でもよいし、帯状でもよい。
【0154】
第2板材102は、隣接する第2板材102の電線(たとえば、送電コイル120Bとつながる電線)を接続するためのコネクタを有してもよい。第2板材102は、接続されたコネクタを固定するロック機構をさらに有してもよい。第2板材102は、隣接する第2板材102との物理的な接続を補強するための留め具を有してもよい。第2板材102は、隣接する第2板材102との連結部(たとえば、嵌合可能な嵌合部、係合可能な係合部、又は締結可能な締結部)を有してもよい。隣り合う第2板材102は嵌合方式で連結されてもよい。隣り合う第2板材102は締結されてもよい。隣り合う第2板材102は、位置決めピンで位置決めされてもよい。
【0155】
1つの第1板材101に対して複数の第2板材102を組み合わせることで、
図1に示した給電マット100に準ずる機能を有する給電マット100Aが形成される。第1板材101と第2板材102との連結方式は、隣り合う第2板材102同士の連結方式と同じであってもよいし異なってもよい。複数の第2板材102は格子状に連結されてもよい。
【0156】
給電マット100Aは分解可能に構成される。組み合わさって給電マット100Aを形成する複数の第2板材102は、個々の小片(第2板材102)に戻すことができる。給電マット100Aは、1枚の第1板材101と複数の第2板材102とに分解可能に構成される。このため、給電マット100Aは持ち運びが容易である。また、給電マット100Aを構成する複数の第2板材102のうち一部の第2板材102が故障又は劣化した場合には、該当する第2板材102のみを交換することができる。
【0157】
給電マットは屋外に設置されてもよい。給電マットが適用される移動体は、
図2及び
図3に示した車両に限られない。移動体は、内燃機関を備えないBEVに限られず、内燃機関を備えるPHEV(プラグインハイブリッド車両)であってもよい。移動体は、農業機械、歩行ロボット、ドローン、ロボットクリーナ、又は宇宙探査機であってもよいし、鉄道車両、船、又は飛行機であってもよい。
【0158】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0159】
1 給電システム、100,100A 給電マット、101 第1板材、102 第2板材、110,110A,110B シート基材、120,120B 送電コイル、121 磁気マーカ、130 電力制御回路、140 無線通信機、150 マットコントローラ、200 AGV、201~207 移動体、210 バッテリ、220 受電コイル、221 位置センサモジュール、230 充電回路、240 無線通信機、250 ECU、300 電源モジュール、310 電源回路、350 カメラ、500 サーバ、510 プロセッサ、520 記憶装置、530 通信装置、PG 電力系統。