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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】材料試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/32 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01N3/32 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021120498
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016281
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 修佑
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-127797(JP,A)
【文献】特開平03-200046(JP,A)
【文献】特開平01-197627(JP,A)
【文献】特開平04-301188(JP,A)
【文献】特開平10-062327(JP,A)
【文献】特開昭61-006425(JP,A)
【文献】特開昭63-037232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0016802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動する軸を有する負荷アクチュエータを備え、前記軸の直動によって試験片に負荷を与える材料試験機において、
前記負荷アクチュエータは、
前記軸を支える軸受を備え、当該軸受が空気軸受であり、
前記負荷アクチュエータの軸は、
前記軸の直動方向に対して傾斜した傾斜面を有する前記試験片の当該傾斜面に当接し、又は、
前記軸の直動方向に伸縮し、かつ当該直動方向に交差する方向に力が加えられた状態の前記試験片に負荷を与える、
材料試験機。
【請求項2】
前記負荷アクチュエータは、
前記軸の両端部のそれぞれを支える前記軸受を備え、
前記軸受のそれぞれは、
前記軸を包囲するスリーブと、
前記スリーブの軸受面に開口する複数の絞り孔と、を備え、
前記絞り孔が、自成絞り、又はオリフィス絞りである、
請求項1に記載の材料試験機。
【請求項3】
前記負荷アクチュエータは、前記軸のストロークが正弦波状に変化するように当該軸を駆動する、請求項1または2に記載の材料試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
軸を直動駆動する負荷アクチュエータと、供試体を固定する固定治具と、供試体に当接して負荷を与える負荷部材を固定する負荷治具と、を備え、負荷アクチュエータの軸を直動させて負荷部材を供試体に当接させ、当該供試体に負荷を加える材料試験機において、供試体が負荷方向に対して傾けた状態で固定治具に固定される装置がある(例えば、特許文献1参照)。
かかる材料試験機においては、供試体の傾きに起因して、負荷方向と異なる方向に分力が生じ、この分力が負荷アクチュエータに作用する。そこで、特許文献1の材料試験機は、分力の発生時に負荷方向に直交する方向に移動可能に負荷治具が構成されており、負荷アクチュエータに作用する分力が負荷治具の移動によって低減されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-224873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、軸の直動方向に交差する方向の力が負荷アクチュエータに少しでも作用すると、負荷アクチュエータの軸の直動に摩擦抵抗が生じる。高い精度を要求される試験では、この摩擦抵抗による影響が無視できない、という問題がある。
【0005】
本発明は、軸の直動方向に交差する方向の力が負荷アクチュエータに作用する場合でも、高精度な試験が可能となる材料試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、直動する軸を有する負荷アクチュエータを備え、前記軸の直動によって試験片に負荷を与える材料試験機において、前記負荷アクチュエータは、前記軸を支える軸受を備え、当該軸受が空気軸受であり、前記負荷アクチュエータの軸は、前記軸の直動方向に対して傾斜した傾斜面を有する前記試験片の当該傾斜面に当接し、又は、前記軸の直動方向に伸縮し、かつ当該直動方向に交差する方向に力が加えられた状態の前記試験片に負荷を与える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、軸の直動方向に交差する方向の力が負荷アクチュエータに作用する場合でも、高精度な試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る材料試験機の構成を示す図である。
図2】負荷アクチュエータの断面図である。
図3図2における第2支持装置のガイドユニットの拡大図である。
図4】負荷アクチュエータのロッドに横力が作用する試験態様の例を示す図である。
図5】試験態様1における試験機本体の出力波形の一例を示す図である。
図6】試験態様2における試験機本体の出力波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る材料試験機1の構成を示す図である。
材料試験機1は、試験片TP(「供試体」とも言う)に負荷(「試験力」とも言う)を与える試験機本体2と、当該試験機本体2を制御する制御装置4と、を備える。
試験機本体2は、テーブル11と、当該テーブル11に垂直に立設された2本の支柱12A、12Bと、これらの支柱12A、12Bに直交する方向に延び、これらの支柱12、13Bに両端部が支持されたクロスヘッド13と、テーブル11とクロスヘッド13との間に配置された試験片TPに負荷を与える負荷アクチュエータ14と、を備える。
テーブル11、支柱12A、12B、及びクロスヘッド13は負荷枠を構成し、負荷アクチュエータ14は、負荷枠の一部であるクロスヘッド13に配設される。また、試験機本体2は、試験片TPを固定する固定治具15と、試験片TPに与えられている負荷を検出するロードセル16と、を備え、当該固定治具15が負荷アクチュエータ14の下方の位置で、ロードセル16を介してテーブル11に固定される。
なお、ロードセル16は負荷アクチュエータ14に固定されてもよく、この場合、ロードセル16は、直動する後述する軸20と固定治具15との間に配設される。
また、試験機本体2は、負荷アクチュエータ14がテーブル11に配置され、ロードセル16がクロスヘッド13に配置されてもよい。
【0010】
テーブル11は箱型の台座17に載置された平面板であり、台座17の内部には、クロスヘッド13を支柱12A、12Bに沿って昇降駆動する昇降アクチュエータ18が収められる。
本実施形態の昇降アクチュエータ18は、駆動源であるサーボモータと、当該サーボモータの出力を支柱12A、12Bの下端部12A1、12B1に伝達し、これらの支柱12A、12Bを回転する伝達機構とを備える。これら支柱12A、12Bは、ねじ棹であり、クロスヘッド13の両端部が支柱12A、12Bに螺合している。そして、支柱12A、12Bが昇降アクチュエータ18によって回転駆動されることで、クロスヘッド13が昇降し、例えば、試験片TPの大きさなどに応じてクロスヘッド13の高さ位置が変更される。なお、昇降アクチュエータ18は、例えば、クロスヘッド13を昇降する油圧式又は空圧式のシリンダを備えた構成、又は、手動操作されるハンドルを備え、当該ハンドルの操作に応じてクロスヘッド13を昇降する構成でもよい。
【0011】
固定治具15は、負荷アクチュエータ14に取付自在に連結される上掴み具15Aと、ロードセル16を介してテーブル11に付設される下掴み具15Bと、を備え、これら一対の上掴み具15A、及び下掴み具15Bによって、試験片TPを上下から把持する。
なお、固定治具15の構成は、材料試験の目的(種類)や試験片TPの形状などに応じて変更可能である。すなわち、固定治具15は、試験片TPをテーブル11に対して固定可能であって、負荷アクチュエータ14による負荷を試験片TPに付与可能な他の構成でもよい。
【0012】
負荷アクチュエータ14は、テーブル11の平面に対して垂直方向DAに直線移動する(すなわち上下動する)軸20を備え、この軸20の先端20Aに、上記固定治具15が連結される。負荷アクチュエータ14の具体的な構成については後述する。
【0013】
制御装置4は、データの送受が可能に試験機本体2に接続されたコンピュータである。かかるコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリと、試験機本体2がデータ通信可能に接続されるインターフェース回路と、を備え、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを実行することで各種の機能を実現する。この機能には、試験機本体2の動作を制御する制御機能、及び、試験結果を演算する演算機能が少なくとも含まれる。
すなわち、制御装置4は、材料試験時に、負荷アクチュエータ14に駆動信号を出力することで、当該負荷アクチュエータ14の駆動を制御して、軸20を垂直方向DAに直線移動させ、固定治具15に固定された試験片TPに負荷を与える。この場合において、制御装置4は、材料試験の目的に応じた態様の負荷が試験片TPに与えられるように負荷アクチュエータ14を駆動する駆動信号を出力する。例えば、材料試験が試験片TPの疲労・耐久試験である場合、制御装置4は、垂直方向DAに軸20を周期的に垂直方向DAに進退駆動するための駆動信号を生成し、当該駆動信号を負荷アクチュエータ14に出力する。負荷アクチュエータ14が当該駆動信号にしたがって軸20を駆動することで、試験片TPに繰り返し負荷が与えられる。
試験片TPに負荷が与えられると、この負荷がロードセル16によって検出され、制御装置4に負荷の検出値が出力される。そして、制御装置4は、負荷の検出値、及び、軸20のストーローク(試験片TPの変形量)に基づいて試験結果を演算によって求める。
【0014】
図2は、負荷アクチュエータ14の断面図である。
本実施形態の負荷アクチュエータ14は、電磁力を用いて軸20を直動駆動する電磁アクチュエータであり、油圧シリンダなどを用いたアクチュエータに比べて高精度に負荷を制御できる。かかる負荷アクチュエータ14は、図2に示すように、略円筒状のケーシング22と、当該ケーシング22を貫通するロッド24と、ケーシング22に収容された磁気駆動部26と、を備え、ロッド24が上記軸20を構成し、磁気駆動部26が、制御装置4の駆動信号に基づいてロッド24を直動駆動する。負荷アクチュエータ14は、ロッド24が垂直方向DAに平行になる状態で試験機本体2に設けられ、垂直方向DAを負荷方向とする負荷が負荷アクチュエータ14によって試験片TPに与えられる。
【0015】
磁気駆動部26は、永久磁石、又は励磁コイルによって形成された磁気回路と、当該磁気回路に対して垂直方向DAに移動可能に設けられ、ロッド24に結合されたボビンと、当該ボビンに巻回されたコイルと、当該コイルに電流を供給するドライバ回路と、を備え、ドライバ回路が制御装置4の駆動信号に基づいて、コイルに電流を供給してボビンに推力を発生させる。この推力によってボビン、及び、当該ボビンに結合されたロッド24が直動駆動される。
【0016】
次いでロッド24(軸20)の支持構造について詳述する。
負荷アクチュエータ14は、ケーシング22の天面22A、及び底面22Bのそれぞれに、ケーシング22を貫通するロッド24の両端部を上下動可能に支持する第1支持装置41と、第2支持装置42と、を備える。
第1支持装置41、及び第2支持装置42はいずれも略同一の構成を有し、ケーシング22の天面22A、又は底面22Bに固定されるホルダー50と、当該ホルダー50の端部50Aに固定されたロッド係止具51と、当該ロッド係止具51に固定されたガイドユニット52と、を備える。なお、第1支持装置41には、ロッド24の回転を制限する回り止め機構がロッド係止具51に取り付けられており、この取付構造を有無により、第1支持装置41と第2支持装置42のロッド係止具51の形状に違いが生じている。
【0017】
ホルダー50は、ロッド24が挿通される中空筒状の部材であり、ロッド係止具51は、ロッド24の脱落を防止し、またロッド24の可動範囲を制限する部材である。具体的には、ロッド係止具51は、ホルダー50の内径よりも小さく、かつ、ロッド24の外径よりも大きな径の貫通孔51Aが形成された円板状の部材であり、当該貫通孔51Aにロッド24を貫通させてホルダー50の端部50Aに溶接によって固定される。一方、ロッド24には、フランジ状のストッパ25が軸上の2箇所に設けられており、各ストッパ25がロッド係止具51に係合することで、ロッド24が脱落不能となり、また、可動範囲が制限される。
【0018】
図3は、図2における第2支持装置42のガイドユニット52の拡大図である。
ガイドユニット52は、ロッド24の直動をガイドする装置であり、ロッド24が貫通する円筒状のケース60と、当該ケース60に内設され、ロッド24を支える軸受62と、を備える。軸受62は、流体軸受の一種である静圧式の空気軸受である。空気軸受は作動流体に空気が用いられた、すべり軸受の一種でもある。かかる軸受62は、ロッド24との間に僅かな隙間δをあけて当該ロッド24の軸周りを包囲する円筒状部材であるスリーブ65を備え、当該隙間δの空気圧によってロッド24を支える。より具体的には、ガイドユニット52は、ケース60とスリーブ65の間に、外部から空気が流入する密封の空気室66を有し、また、空気室66から給気孔67を介して隙間δに連通する複数の微細な絞り孔67Aがスリーブ65の軸受面65Bに開口している。空気室66は、スリーブ65の外側面65Aの全周に亘って、ケース60の内側に形成された空間であり、ケース60の外表面60Aに設けられたコネクタ68が空気室66に連通し、外部の圧縮機で圧縮された圧縮空気がコネクタ68から空気室66に供給される。給気孔67は、スリーブ65の径方向に延びた略円筒状を成し、スリーブ65の周方向に所定間隔で形成されており、また、周方向に並ぶ給気孔67の列が、スリーブ65の軸方向にも1列又は複数列(図示例では2列)形成されている。絞り孔67Aは、各給気孔67の隙間δ側の先端に設けられ、当該給気孔67よりも径が非常に小さな貫通孔である。空気室66から給気孔67に流れ込む圧縮空気が絞り孔67Aで絞られることで隙間δの空気圧が高められ、軸受62の剛性が高められる。
【0019】
このように、第1支持装置41、及び第2支持装置42のガイドユニット52の軸受62が空気軸受であるため、ロッド24が軸受62に非接触状態で支えられ、ロッド24と軸受62との間の摩擦抵抗の発生が抑えられる。
また、試験片TPに負荷を与えた際に、ロッド24の直動方向に交差する方向の力(以下、「横力」という)がロッド24に作用する場合でも、軸受62の隙間δの空気圧が高圧に維持されることでロッド24と軸受62との接触を防止し、非接触状態が維持される。これにより、横力がロッド24に作用する場合でも、摩擦抵抗の発生が抑えられる。
【0020】
ここで、絞り孔67Aの絞りの種類には、スリーブ65を多孔質から形成することでスリーブ65の軸受面65Bの全体に絞り孔67Aを均一に分布させた多孔質絞り、給気孔67自体を小径にすることで形成された自成絞り、給気孔67の先端にポケットを設けたオリフィス絞り、給気孔67に繋がる極めて浅い窪みをスリーブ65の軸受面65Bに掘り当該窪み内を空気が流れるときの流体抵抗が絞りの作用をする表面絞り、などがある。
【0021】
これらの絞りの中で、軸受性能は多孔質絞りが最も高い。しかしながら、多孔質絞りは隙間δが数μmオーダの大きさとなり、これらの絞りの中で最も小さい。このため、ロッド24の両端に第1支持装置41及び第2支持装置42を備える負荷アクチュエータ14において、第1支持装置41及び第2支持装置42の両者の隙間δについて、ロッド24の径方向の互いの位置を合わせることが非常に難しく、ロッド24の直動時に、第1支持装置41及び第2支持装置42のいずれかで、ロッド24が軸受62に接触し易くなる。
これに対し、自成絞り、及びオリフィス絞りは、隙間δが多孔質絞りよりも大きく、十~数十μmオーダの大きさである。したがって、これら自成絞り、又はオリフィス絞りを絞り孔67Aに用いることで、第1支持装置41及び第2支持装置42の間で隙間δの互いの位置を容易に合わせることができ、ロッド24の直動時の接触を防止できる。本実施形態の絞り孔67Aには、加工性やコストの点で優れた自成絞りが用いられている。
【0022】
図4は、負荷アクチュエータ14のロッド24に横力が作用し得る試験態様の例を示す図である。
試験態様1は、ロッド24の直動方向(垂直方向DA)に対して試験片TPが傾斜した傾斜面TPAを有し、この傾斜面TPAにロッド24の先端24A(軸20の先端)を所定周期で繰り返し当接させて負荷を与え、試験片TPの変形を測定する試験である。
試験態様2は、垂直方向DAに伸縮自在な試験片TP(例えば、ショックアブソーバー)にリング部材80を装着し、当該リング部材80を水平方向DBにワイヤ81で引張り当該試験片TPに水平方向DBの横力を加えた状態で、ロッド24の先端24A(軸20の先端)を所定周期で繰り返し当接させて負荷を与え、試験片TPの伸縮時の摺動抵抗などを測定する試験である。
これらの試験態様1,及び試験態様2のいずれにおいても、負荷アクチュエータ14のロッド24の直動によって試験片TPに負荷を与えた場合、横力の成分を含む反力がロッド24に作用する。
【0023】
図5は、試験態様1における試験機本体2の出力波形の一例を示す図である。
同図に示す出力波形は、試験機本体2が備えるロードセル16から出力される波形であり、ロッド24によって試験片TPに与えられている負荷の検出値を示す。
試験態様1では、所定周波数の正弦波形の駆動信号が負荷アクチュエータ14の磁気駆動部26に入力されることで、ロッド24の直動時のストローク(変位量)も正弦波状に変化し、かかるロッド24によって試験片TPに負荷が与えられることで、試験力の検出値も正弦波状に変化する。
しかしながら、試験態様1では横力がロッド24に作用するため、負荷アクチュエータ14の軸受62が滑り軸受けである場合には、ロッド24と滑り軸受の摩擦抵抗によってロッド24の直動が影響を受け、結果として、負荷の検出値(線A)の正弦波形に歪みが生じ、負荷が適切に与えられず、試験に影響が生じる。特に、負荷の検出値の出力波形(線A)における歪みは、負荷が弱いほど顕著になっており、負荷が弱くなるほど、出力波形における摩擦抵抗の影響が大きい。
これに対し、軸受62が空気軸受である場合には、ロッド24と軸受62とが非接触状態に維持されることで摩擦抵抗の発生が抑えられているため、負荷が弱いときであっても、負荷の検出値(線B)の波形の歪みが抑えられている。
【0024】
図6は、試験態様2における試験機本体2の出力波形の一例を示す図である。
同図に示す出力波形は、試験機本体2が備える負荷アクチュエータ14から出力される波形であり、ロッド24のストロークを検出するセンサの出力波形を示す。試験機本体2において、かかるセンサは、ロッド24の上下移動を検出可能に、負荷アクチュエータ14におけるロッド24の上端部の近傍に取り付けられている。
試験態様2では、試験態様1と同様に、所定周波数の正弦波形の駆動信号が負荷アクチュエータ14の磁気駆動部26に入力されることで、ロッド24の試験片TP側へのストロークも正弦波状に変化し、試験片TPの伸縮変形も正弦波状に変化する。
しかしながら、試験態様2でも横力がロッド24に作用するため、負荷アクチュエータ14の軸受62が滑り軸受けである場合には、ストロークの検出値(線A)の正弦波形に歪みが生じ、負荷が適切に与えられず、試験に影響が生じる。特に、ストロークの検出値の出力波形(線A)における歪みは、試験片TPを引っ張る横力が強いほど顕著になっている。
これに対し、軸受62が空気軸受である場合には、試験片TPを引っ張る横力が強いときでも、ロッド24と軸受62とが非接触状態に維持されることで摩擦抵抗の発生が抑えられ、ストロークの検出値(線B)の波形の歪みが抑えられている。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0026】
本実施形態の材料試験機1は、直動するロッド24(軸20)を有する負荷アクチュエータ14を備え、当該ロッド24の直動によって試験片TPに負荷を与える材料試験機1である。そして負荷アクチュエータ14は、ロッド24を支える軸受62を備え、当該軸受62が空気軸受である。
【0027】
この構成によれば、横力がロッド24に作用した場合でも、ロッド24が軸受62によって非接触状態で支えられるため、摩擦抵抗の発生が抑えられる。これにより、横力が発生しても材料試験機1の出力波形に乱れが生じることがなく、高精度な試験が可能となる。
これに加え、軸受62における摩擦抵抗の発生が抑えられることで、発熱も抑えられる。
さらに、軸受62が空気軸受であるため、隙間δの高圧の気体で力が釣り合う位置でロッド24が支えられる。これにより、滑り軸受や転がり軸受などの一般的な軸受の嵌め合い精度よりも軸心の位置決め精度が高められる。
【0028】
本実施形態の材料試験機1において、負荷アクチュエータ14は、ロッド24の両端部のそれぞれを支える軸受62を備え、軸受62のそれぞれは、ロッド24を包囲するスリーブ65と、スリーブ65の軸受面65Bに開口する複数の絞り孔67Aと、を備え、絞り孔67Aが自成絞りである。
この構成によれば、絞り孔67Aが多孔質絞りである場合に比べ、軸受62の隙間δが大きくなり、ロッド24の両端部の軸受62のそれぞれの隙間δの互いの位置を容易に合わせることができる。これにより、ロッド24が直動したときに軸受62との接触を防止できる。
なお、絞り孔67Aは、オリフィス絞りであってもよい。
【0029】
本実施形態の材料試験機1において、負荷アクチュエータ14は、ロッド24のストロークが正弦波状に変化するように当該ロッド24を駆動する。
この構成によれば、ロッド24によって所定周期で繰り返し試験片TPに負荷を与えて試験を行うことができる。この場合において、負荷の反力によって横力がロッド24に作用したときでも、ロッド24と軸受62とが非接触状態に維持されることで、ロッド24と軸受62の間での摩擦抵抗の発生が抑えられ、ロッド24のストロークの波形が歪みのない正弦波状となる。
【0030】
本実施形態の材料試験機1において、負荷アクチュエータ14のロッド24は、ロッド24の直動方向に対して傾斜した傾斜面TPAを有する試験片TPの当該傾斜面TPAに当接し、又は、ロッド24の直動方向に伸縮し、かつ横力が加えられた状態の試験片TPに負荷を与える。
この構成においては、試験片TPの傾斜面TPAにロッド24によって負荷が与えられ、又は、横力が加えられた状態の試験片TPにロッド24が負荷を与えることで、横力がロッド24に作用する。しかしながら、当該横力が作用した場合でも、ロッド24と軸受62とが非接触状態に維持されるため、摩擦抵抗の影響を受けることなく、試験片TPに対する試験を高精度に行うことができる。
【0031】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0032】
上述した実施形態において、材料試験機1が行う試験として、負荷アクチュエータ14がロッド24(軸20)を周期的に直動させて試験片TPに繰り返し負荷を与える試験を例示した。しかしながら、試験は、負荷アクチュエータ14がロッド24(軸20)を継続的に押し出し続けて試験片TPに負荷を継続的に与える試験でもよい。
【0033】
上述した実施形態において、軸受62が空気軸受である場合を例示したが、軸受62は流体として液体を使用した流体軸受でもよい。この場合、軸受62には液体の漏れ対策が施される。
【0034】
上述した実施形態において、材料試験機1は、クロスヘッド13の昇降(移動)によって試験片TPに負荷を与える構成でもよく、この構成においては、当該クロスヘッド13を駆動するアクチュエータの軸受に空気軸受が用いられる。ただし、この構成においては、軸受にかかる力が、上述した実施形態における軸受62にかかる力に比べて大きいため、アクチュエータの軸受としてドライベアリングを併用することで、安全性を高めることができる。
【0035】
また、上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【0036】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0037】
(第1項)一態様に係る材料試験機は、直動する軸を有する負荷アクチュエータを備え、前記軸の直動によって試験片に負荷を与える材料試験機において、前記負荷アクチュエータは、前記軸を支える軸受を備え、当該軸受が空気軸受である、材料試験機でもよい。
【0038】
第1項に記載の材料試験機によれば、軸の直動方向に交差する方向の力が負荷アクチュエータに作用する場合でも、高精度な試験が可能となる。
【0039】
(第2項)第1項に記載の材料試験機において、前記負荷アクチュエータは、前記軸の両端部のそれぞれを支える前記軸受を備え、前記軸受のそれぞれは、前記軸を包囲するスリーブと、前記スリーブの軸受面に開口する複数の絞り孔と、を備え、前記絞り孔が、自成絞り、又はオリフィス絞りであってもよい。
【0040】
第2項に記載の材料試験機によれば、前記軸の両端部の前記軸受における隙間のそれぞれの互いの位置を容易に合わせることができる。
【0041】
(第3項)第1または第2項に記載の材料試験機において、前記負荷アクチュエータは、前記軸のストロークが正弦波状に変化するように当該軸を駆動してもよい。
【0042】
第3項に記載の材料試験機によれば、直動方向に交差する力が軸に作用した場合でも、軸のストロークの波形を、歪みが無い正弦波状に維持できる。
【0043】
(第4項)第1項から第3項のいずれかに記載の材料試験機において、前記負荷アクチュエータの軸は、前記軸の直動方向に対して傾斜した傾斜面を有する前記試験片の当該傾斜面に当接し、又は、前記軸の直動方向に伸縮し、かつ当該直動方向に交差する方向に力が加えられた状態の前記試験片に負荷を与えてもよい。
【0044】
第4項に記載の材料試験機においては、試験片の傾斜面に軸によって負荷が与えられ、又は、横力が加えられた状態の試験片に軸が負荷を与えることで、横力が軸に作用する。しかしながら、当該横力が作用した場合でも、軸と軸受とが非接触状態に維持されるため、摩擦抵抗の影響を受けることなく、試験片に対する試験を高精度に行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 材料試験機
2 試験機本体
14 負荷アクチュエータ
20 軸
22 ケーシング
24 ロッド
41 第1支持装置
42 第2支持装置
52 ガイドユニット
62 軸受
65 スリーブ
65B 軸受面
67A 絞り孔
DA 垂直方向(直動方向)
DB 水平方向
TP 試験片
δ 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6