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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】フローセル
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/74 20060101AFI20240814BHJP
   G01N 21/05 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01N30/74 E
G01N21/05
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021128486
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023023200
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】藤次 陽平
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0043672(US,A1)
【文献】特開2002-156326(JP,A)
【文献】実開昭53-008285(JP,U)
【文献】特表2002-536673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
G01N 21/03-21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフに用いられる検出器のフローセルであって、
流体および光が通過する流路を形成する樹脂チューブと、
第1および第2の端部を有しかつ前記第1の端部と前記第2の端部との間の中間位置を有するとともに、前記第2の端部から前記第1の端部へ第1の方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に前記樹脂チューブが挿入された状態で前記貫通孔の内周面で前記樹脂チューブの外周面を保持するように構成された保持部材と、
前記保持部材の外周面のうち前記第1の端部から前記中間位置に至る第1の外周面に接触する第1の内周面を有する第1のハウジングと、
前記保持部材の前記外周面のうち前記第2の端部から前記中間位置に至る第2の外周面に接触する第2の内周面を有する第2のハウジングとを備え、
前記保持部材には、前記第1の方向において前記第1の端部へ漸次減少する外径を有する第1のテーパ突部と、前記第1の方向と逆の第2の方向において前記第2の端部へ漸次減少する外径を有する第2のテーパ突部とが設けられ、
前記第1のハウジングには、前記第1の方向において漸次減少する内径を有する第1のテーパ孔部が形成され、前記第2のハウジングには、前記第2の方向において漸次減少する内径を有する第2のテーパ孔部が形成され、
前記第1および前記第2のテーパ孔部は、前記第1および第2のハウジングが前記保持部材に嵌め合わされた状態で、それぞれ前記第1および第2のテーパ突部を半径方向の中心へ向かって押圧するように形成された、フローセル。
【請求項2】
前記第1および第2のハウジングが前記保持部材に嵌め合わされる前の状態で、前記第1の方向に対する前記第1のテーパ突部の外周面の角度は、前記第1の方向に対する前記第1のテーパ孔部の内周面の角度よりも小さく、前記第2の方向に対する前記第2のテーパ突部の外周面の角度は、前記第2の方向に対する前記第2のテーパ孔部の角度よりも小さい、請求項1記載のフローセル。
【請求項3】
前記第1および第2のハウジングが前記保持部材に嵌め合わされる前の状態で、前記保持部材の前記第1のテーパ突部の前記第1の端部の外径は、前記第1のハウジングの前記第1のテーパ孔部の対応する部分の内径よりも大きく、前記保持部材の前記第2のテーパ突部の前記第2の端部の外径は、前記第2のハウジングの前記第2のテーパ孔部の対応する部分の内径よりも大き
い、請求項1または2に記載のフローセル。
【請求項4】
前記保持部材は、前記第1のテーパ突部と前記中間位置との間に形成された第1の中央部分と、前記第2のテーパ突部と前記中間位置との間に形成された第2の中央部分とを有し、
前記第1のハウジングは、前記第1の方向において前記第1のテーパ孔部に連通しかつ前記第1の中央部分に嵌め合わされる第1の開口部を有し、
前記第2のハウジングは、前記第2の方向において前記第2のテーパ孔部に連通しかつ前記第2の中央部分に嵌め合わされる第2の開口部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフローセル。
【請求項5】
前記第1および第2のハウジングが前記保持部材に嵌め合わされる前の状態で、前記第1の中央部分の外径は、前記第1の開口部の内径よりも大きく、前記第2の中央部分の外径は、前記第2の開口部の内径よりも大きい、請求項4記載のフローセル。
【請求項6】
前記第1および第2のハウジングが前記保持部材に嵌め合わされる前の状態で、前記第1の中央部分の前記第1の方向の長さと前記第2の中央部分の前記第2の方向の長さとの合計は、前記第1の開口部の前記第1の方向の長さと前記第2の方向の長さとの合計よりも大きい、請求項4または5記載のフローセル。
【請求項7】
前記第1および第2の開口部のそれぞれの縁部には、傾斜面が形成される、請求項5または6記載のフローセル。
【請求項8】
前記第1および第2のハウジングを前記樹脂チューブの軸方向において互いに締結する締結具をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のフローセル。
【請求項9】
前記樹脂チューブの屈折率は水の屈折率よりも小さい、請求項1~8のいずれか一項に記載のフローセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフにおいて用いられる検出器のフローセルに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフの検出器においては、光を用いて液体試料の成分を検出するためにフローセルが用いられる。検出器では、フローセルのチューブ内を流れる液体試料を透過する光の強度を検出することにより液体試料に含まれる成分が検出される。
【0003】
特許文献1には、ガラス製のキャピラリを用いたフローセルが記載されている。キャピラリ内を流れる試料液にキャピラリの一端から光が入射し、キャピラリの一端から光が出射する。キャピラリの外壁の両端部分は樹脂製の保持部材に接触し、他の部分は空気に接触している。この場合、キャピラリ内の試料液を透過する光の一部がキャピラリの外壁で全反射する。そのため、キャピラリを透過する光の強度が低下する。一方、特許文献2には、樹脂により形成される光案内材料を用いたフローセルが記載されている。特許文献2に記載されたフローセルのように、光案内部材として樹脂により形成されたチューブを用いることにより、チューブ内を透過する光をチューブの内面で反射させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-041024号公報
【文献】特開2002-536673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂により形成されたチューブは可撓性を有する。チューブが曲がると、光学的な損失が生じる。そのため、チューブを直線状に保持する機構が必要となる。特許文献2に記載されたフローセルでは、樹脂により形成された光案内部材が樹脂により形成された内側層内に配置されている。内側層は、ステンレス鋼により形成されたハウジングの通路内に配置されている。このような構成では、光案内部材が内側層により保持される。
【0006】
しかしながら、光案内部材の外径および内側層の内径の誤差により光案内部材の外周面を内側層の内周面で確実に保持することが難しい。
【0007】
本発明の目的は、樹脂チューブが直線状に確実に保持されたフローセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従うフローセルは、液体クロマトグラフに用いられる検出器のフローセルであって、流体および光が通過する流路を形成する樹脂チューブと、第1および第2の端部を有しかつ第1の端部と第2の端部との間の中間位置を有するとともに、第2の端部から第1の端部へ第1の方向に貫通する貫通孔を有し、貫通孔に樹脂チューブが挿入された状態で貫通孔の内周面で樹脂チューブの外周面を保持するように構成された保持部材と、保持部材の外周面のうち第1の端部から中間位置に至る第1の外周面に接触する第1の内周面を有する第1のハウジングと、保持部材の外周面のうち第2の端部から中間位置に至る第2の外周面に接触する第2の内周面を有する第2のハウジングとを備え、保持部材には、第1の方向において第1の端部へ漸次減少する外径を有する第1のテーパ突部と、第1の方向と逆の第2の方向において第2の端部へ漸次減少する外径を有する第2のテーパ突部とが設けられ、第1のハウジングには、第1の方向において漸次減少する内径を有する第1のテーパ孔部が形成され、第2のハウジングには、第2の方向において漸次減少する内径を有する第2のテーパ孔部が形成され、第1および第2のテーパ孔部は、第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされた状態で、それぞれ第1および第2のテーパ突部を半径方向の中心へ向かって押圧するように形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂チューブが直線状に確実に保持されたフローセルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態に係るフローセルの断面図である。
図2図1のフローセルの一部の拡大図である。
図3図1のフローセルの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係るフローセルについて図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態に係るフローセルは、液体クロマトグラフの検出器において用いられる。検出器は、例えば吸光度検出器である。
【0012】
(1)フローセルの構成
図1は、一実施の形態に係るフローセルの断面図である。図2は、図1のフローセルの一部の拡大図である。図3は、図1のフローセルの分解図である。図1には、一方向Lおよび他方向Rがそれぞれ矢印で示される。一方向Lと他方向Rとは互いに180°をなす。また、一方向Lおよび他方向Rに平行な方向を軸方向と呼ぶ。図1に示すように、フローセル100は、樹脂チューブ10、フェルール20、および一対のハウジング30,40を備える。
【0013】
本実施の形態において、樹脂チューブ10は、円筒形状を有する。樹脂チューブ10は、水の屈折率(約1.33)よりも小さい屈折率を有する樹脂により形成される。これにより、光が樹脂チューブと樹脂チューブ内を流れる試料液の境界で全反射するため、光が欠損しなくなる。本実施の形態において、樹脂チューブ10は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により形成される。多くの液体試料の屈折率は水の屈折率よりも大きい。なお、PTFEの屈折率は、約1.20~1.31である。樹脂チューブ10の材料として、例えば、屈折率1.2を有するテフロン(登録商標)AF等の非晶質フッ素樹脂が用いられてもよい。また、樹脂チューブ10がETFE(テトラフルオロエチレン・共重合体)等の他のフッ素樹脂により形成されてもよい。
【0014】
フェルール20は、樹脂により形成され、樹脂チューブ10を保持するための保持部材として用いられる。本実施の形態において、フェルール20は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)により形成される。フェルール20は、一対のテーパ突部21,22および中央円筒部23,24を含む。このフェルール20は、一方向Lにおける一端部21a、および他方向Rにおける他端部22aを有する。フェルール20の一端部21aと他端部22aとの間の位置を中間位置Pと呼ぶ。本実施の形態では、中間位置Pは、一端部21aと他端部22aとの間の中心の位置である。
【0015】
本実施の形態では、中央円筒部23,24は、等しい外径を有する円筒形状を有し、中間位置Pで互いに一体化されている。中央円筒部23は一方向Lに平行な外周面23aを有し、中央円筒部24は一方向Lに平行な外周面24aを有する。また、中央円筒部23は一方向Lを向く端面23bを有し、中央円筒部24は他方向Rを向く端面24bを有する。
【0016】
テーパ突部21は、中央円筒部23の端面23bから一方向Lに突出するように設けられ、テーパ突部22は、中央円筒部24の端面24bから他方向Rに突出するように設けられる。本実施の形態において、テーパ突部21,22は、円錐台形状を有する。テーパ突部21には、端面23bから一端部21aへ漸次減少する外径を有する外周面21bが形成される。テーパ突部22には、端面24bから他端部22aへ漸次減少する外径を有する外周面22bが形成される。
【0017】
中央円筒部23の外径は、テーパ突部21の最大外径以上であり、中央円筒部24の外径は、テーパ突部22の最大外径以上である。本実施の形態において、中央円筒部23の外径は、テーパ突部21の最大外径よりも大きい。中央円筒部24の外径は、テーパ突部22の最大外径よりも大きい。
【0018】
フェルール20には、一端部21aから他端部22aまで軸方向にかつ直線状に延びる貫通孔25が形成されている。樹脂チューブ10は、貫通孔25内に挿入される。それにより、樹脂チューブ10の外周面の全体がフェルール20により保持される。
【0019】
図1および図2において、ハウジング30,40への嵌め込み前のフェルール20の外形を点線で表す。詳細は後述する。
【0020】
ハウジング30,40は、フェルール20よりも硬質の材料により形成される。本実施の形態において、ハウジング30,40は、ステンレス鋼により形成される。なお、ハウジング30,40がアルミニウム等の他の金属または硬質の合成樹脂により形成されてもよい。
【0021】
図3に示すように、ハウジング30は、一方向Lを向く端面30a、他方向Rを向く端面30bおよび外周面30cを有する。ハウジング30には、開口部31、テーパ孔部32、円筒孔部33、液導入部34および光導入部35が一方向Lにおいてこの順に連通するように形成されている。
【0022】
開口部31は、フェルール20の中央円筒部23に対応する円筒形状を有する。それにより、開口部31は、中央円筒部23の外周面23aに対応する内周面31aおよび中央円筒部23の端面23bに対応する内周面31bを有する。開口部31の内周面31aは、一方向Lに平行に延びる。開口部31の縁部には、環状の傾斜面30dが形成されている。
【0023】
テーパ孔部32は、テーパ突部21に対応する円錐台形状を有する。それにより、テーパ孔部32には、一方向Lにおいて漸次減少する内径を有する。
【0024】
円筒孔部33は、円筒形状を有する。光導入部35は、端面30aで開口している。光導入部35の開口は、例えばガラス等により閉塞される。本実施の形態では、光導入部35は、液導入部34よりも大きい内径を有する。ハウジング30には、外周面30cから液導入部34まで延びる試料導入路36が形成されている。
【0025】
ハウジング40は、他方向Rを向く端面40a、一方向Lを向く端面40bおよび外周面40cを有する。ハウジング40には、開口部41、テーパ孔部42、円筒孔部43、液導出部44および光導出部45が他方向Rにおいてこの順に連通するように形成されている。
【0026】
開口部41は、フェルール20の中央円筒部24に対応する円筒形状を有する。それにより、開口部41は、中央円筒部24の外周面24aに対応する内周面41aおよび中央円筒部24の端面24bに対応する内周面41bを有する。開口部41の内周面41aは、一方向Lに平行に延びる。開口部41の縁部には、環状の傾斜面40dが形成されている。
【0027】
テーパ孔部42は、テーパ突部22に対応する円錐台形状を有する。それにより、テーパ孔部42は、他方向Rにおいて漸次減少する内径を有する内周面42aが形成される。
【0028】
円筒孔部43は、円筒形状を有する。円筒孔部43には、テーパ孔部42の最小内径と等しい内周面43aが形成される。光導出部45は、端面40aで開口している。光導出部45の開口は、例えばガラス等により閉塞される。本実施の形態では、光導出部45は、液導出部44よりも大きい内径を有する。ハウジング40には、外周面40cから液導出部44まで延びる試料導出路46が形成されている。
【0029】
ハウジング30の円筒孔部33内には、環状シール材12aが配置され、ハウジング40の円筒孔部33内には、環状シール材12bが配置される。この状態で、ハウジング30,40がフェルール20の両側に嵌め合わされる。詳細については後述する。環状シール材12a,12bは、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂により形成される。
【0030】
図1に示すように、ハウジング30の端面30bとハウジング40の端面40bとが当接した状態で、軸方向に延びるボルト50によりハウジング30とハウジング40とが互いに締結される。本実施の形態に係るフローセル100においては、光導入部35、液導入部34、樹脂チューブ10、液導出部44および光導出部45が軸方向に並ぶ。
【0031】
試料導入路36には、試料および移動相が導入される。試料導入路36に導入された試料および移動相は、液導入部34、樹脂チューブ10および液導出部44を通過して、試料導出路46から導出される。この状態で、光導入部35には、図示しない光源により光L1が導入される。光導入部35に導入された光は、液導入部34、樹脂チューブ10および液導出部44内を流れる試料および移動相を透過して、光導出部45から外部に光L2として導出される。光導出部45から導出された光L2は、図示しない光検出部に導かれる。
【0032】
本実施の形態に係るフローセル100においては、樹脂チューブ10が水等の液体の屈折率よりも小さな屈折率を有する樹脂により形成されるので、樹脂チューブ10内を通過する光が樹脂チューブ10内周面で全反射することができる。それにより、石英等のガラス製のチューブを用いた場合に比べて、樹脂チューブの光の利用効率が高い。
【0033】
ここで、フェルール20のテーパ突部21およびハウジング30のテーパ孔部32について図2を参照しながら説明する。図2に点線で示すように、嵌め込み前のフェルール20の外形は、ハウジング30の内形と互いに異なる。具体的には、テーパ突部21の外周面21bは、樹脂チューブ10の一方向Lに対して角度A1を有する。テーパ孔部32の内周面32aは、一方向Lに対して角度A1よりも大きい角度A2を有する。図3に示されるフェルール20のテーパ突部22の外周面22bの角度とハウジング40のテーパ孔部42の内周面42aとの関係についても、向きが逆である点を除いて図2の関係と同様である。
【0034】
続いて、フェルール20およびハウジング30,40の寸法について図3を参照しながら説明する。図3に示すように、フェルール20とハウジング30,40とが嵌め込まれる前には、フェルール20の中央円筒部23,24の外周面23a,24aの外径R1は、開口部31の内周面31aの内径R2よりも大きく、開口部41の内周面41aの内径R3よりも大きい。
【0035】
軸方向におけるフェルール20の中央円筒部23の外周面23aの長さD1aと中央円筒部24の外周面24aの長さD1bとの合計は、軸方向における開口部31の端面30bから内周面31bまでの長さD2と端面40bから内周面41bまでの長さD3との合計よりも大きい。
【0036】
フェルール20のテーパ突部21の最小外径R11(一端部21aの外径R11)は、ハウジング30のテーパ孔部32の最小内径R12(円筒孔部33の内径R12)よりも大きい。フェルール20のテーパ突部21の最小外径R21(他端部22aの外径R21)は、ハウジング40のテーパ孔部42の最小内径R22(円筒孔部43の内径R22)よりも大きい。
【0037】
(2)実施の形態の効果
フローセル100の組み立ての際には、フェルール20の貫通孔25に樹脂チューブ10が挿入される。次に、ハウジング30,40がフェルール20に嵌め込まれる。この場合、円筒孔部33,43内には、環状シール材12a,12bが配置される。ハウジング30はフェルール20を他方向Rに押し込み、ハウジング40はフェルール20を一方向Lに押し込む。それにより、ハウジング30のテーパ孔部32にフェルール20のテーパ突部21が嵌め込まれ、ハウジング40のテーパ孔部42にフェルール20のテーパ突部22が嵌め込まれる。
【0038】
この場合、ハウジング30のテーパ孔部32の内周面32aがフェルール20のテーパ突部21の外周面21bを半径方向の中心へ押圧する。また、ハウジング40のテーパ孔部42の内周面42aがフェルール20のテーパ突部22の外周面22bを半径方向の中心へ押圧する。それにより、樹脂チューブ10の外周面がフェルール20の貫通孔25の内周面で押圧される。したがって、樹脂チューブ10が直線状に確実に保持される。
【0039】
このとき、フェルール20の中央円筒部23の外径R1がハウジング30の開口部31の内径R2よりも大きいので、中央円筒部23が半径方向の中心に向かう方向に圧縮される。同様に、フェルール20の中央円筒部24の外径R1がハウジング40の開口部41の内径R3よりも大きいので、中央円筒部24が半径方向の中心に向かう方向に圧縮される。それにより、中央円筒部23の外周面23aが開口部31の内周面31aにより半径方向の中心に向かって押圧され、中央円筒部24の外周面24aが開口部41の内周面41aにより半径方向の中心に向かって押圧される。この場合、樹脂チューブ10の外周面がフェルール20の貫通孔25の内周面により樹脂チューブ10の半径方向の中心に向かって押圧される。その結果、フェルール20の中央円筒部23,24により樹脂チューブ10の中央部の領域が保持される。
【0040】
図2に示したように、テーパ孔部32の内周面32aの角度A2がテーパ突部21の外周面21bの角度A1より大きいので、テーパ突部21の一端部21a近傍の領域が半径方向の中心に向かう方向に圧縮される。同様に、テーパ孔部42の内周面42aの角度A2がテーパ突部22の外周面22bの角度A1より大きいので、テーパ突部22の他端部22a近傍の領域が半径方向の中心に向かう方向に圧縮される。それにより、テーパ突部21の外周面21bがテーパ孔部32の内周面32aにより押圧され、テーパ突部22の外周面22bがテーパ孔部42の内周面42aにより押圧される。この場合、樹脂チューブ10の外周面がテーパ突部21,22の貫通孔25の内周面により樹脂チューブ10の半径方向の中心に向かって押圧される。その結果、フェルール20のテーパ突部21,22により樹脂チューブ10の両端の領域が保持される。
【0041】
また、フェルール20のテーパ突部21の最小外径R11(一端部21aの外径R11)がハウジング30のテーパ孔部32の最小内径R12(円筒孔部33の内径R12)よりも大きいので、テーパ突部21の一端部21a近傍の領域が半径方向の中心に向かう方向に圧縮される。同様に、フェルール20のテーパ突部22の最小外径R21(他端部22aの外径R21)がハウジング40のテーパ孔部42の最小内径R22(円筒孔部43の内径R22)よりも大きいので、テーパ突部22の他端部22a近傍の領域が半径方向の中心に向かう方向に圧縮される。それにより、テーパ突部21の外周面21bがテーパ孔部32の内周面32aにより押圧され、テーパ突部22の外周面22bがテーパ孔部42の内周面42aにより押圧される。この場合、樹脂チューブ10の外周面がテーパ突部21,22の貫通孔25の内周面により樹脂チューブ10の半径方向の中心に向かって押圧される。その結果、フェルール20のテーパ突部21,22により樹脂チューブ10の両端の領域が保持される。
【0042】
さらに、ハウジング30の端面30bとハウジング40の端面40bとが当接するように、ハウジング30,40がフェルール20に押し込まれる。この状態で、ボルト50を用いてハウジング30,40が軸方向に締結される。
【0043】
上記のように、軸方向におけるフェルール20の中央円筒部23,24の長さD1a,D1bの合計が軸方向におけるハウジング30,40の開口部31,41の長さの合計よりも大きいのでフェルール20の中央円筒部23,24が中間位置Pに向かって圧縮される。それにより、フェルール20の貫通孔25が半径方向の中心に向かって拡張するように変形する。その結果、樹脂チューブ10の中央部分の外周面がフェルール20の中央円筒部23,24により強固に保持される。
【0044】
これらの結果、樹脂チューブ10の外周面が全長にわたってフェルール20により保持される。したがって、フローセル100における樹脂チューブ10を直線状に確実に保持することが可能になる。
【0045】
(3)他の実施の形態
上記実施の形態において、中間位置Pは、フェルール20の一端部21aと他端部22aとの間の中心の位置であるが、中間位置Pは、フェルール20の一端部21aと他端部22aとの間の任意の位置であってもよい。この場合、軸方向におけるフェルール20の中央円筒部23の長さと中央円筒部24の長さが異なり、軸方向におけるハウジング30の長さとハウジング40の長さとが異なる。
【0046】
また、中間位置Pに関して、フェルール20の中央円筒部23の形状と中央円筒部24の形状とが非対称であってもよく、ハウジング30の形状とハウジング40の形状とが非対称であってもよい。
【0047】
上記実施の形態においては、フェルール20の中央円筒部23,24の最大外径は、テーパ突部21,22の最大外径よりも大きいが、中央円筒部23,24の最大外径がテーパ突部21,22の最大外径と等しくてもよい。この場合、中央円筒部23,24の端面23b,24bは存在しない。
【0048】
また、上記実施の形態では、フェルール20の中央円筒部23の外周面23aおよび中央円筒部24の外周面24aは軸方向に平行に延びるが、フェルール20の中央円筒部23の外周面23aおよび中央円筒部24の外周面24aが他の形状であってもよい。例えば、フェルール20の中央円筒部23の外周面23aが中間位置Pから一端部21aに向かって漸次減少する形状を有してもよく、フェルール20の中央円筒部24の外周面24aが中間位置Pから他端部22aに向かって漸次減少する形状を有してもよい。
【0049】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、フェルール20が保持部材の例であり、テーパ突部21が第1のテーパ突部の例であり、一端部21aが第1の端部の例であり、テーパ突部22が第2のテーパ突部の例であり、他端部22aが第2の端部の例であり、中央円筒部23が第1の中央部分の例であり、中央円筒部24が第2の中央部分の例である。また、ハウジング30が第1のハウジングの例であり、開口部31が第1の開口部の例であり、テーパ孔部32が第1のテーパ孔部の例である。さらに、ハウジング40が第2のハウジングの例であり、開口部41が第2の開口部の例であり、テーパ孔部42が第2のテーパ孔部の例である。また、ボルト50が締結具の例であり、一方向Lが第1の方向の例であり、他方向Rが第2の方向の例である。
【0050】
(5)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0051】
(第1項)一態様に係るフローセルは、
液体クロマトグラフに用いられる検出器のフローセルであって、
流体および光が通過する流路を形成する樹脂チューブと、
第1および第2の端部を有しかつ第1の端部と第2の端部との間の中間位置を有するとともに、第2の端部から第1の端部へ第1の方向に貫通する貫通孔を有し、貫通孔に樹脂チューブが挿入された状態で貫通孔の内周面で樹脂チューブの外周面を保持するように構成された保持部材と、
保持部材の外周面のうち第1の端部から中間位置に至る第1の外周面に接触する第1の内周面を有する第1のハウジングと、
保持部材の外周面のうち第2の端部から中間位置に至る第2の外周面に接触する第2の内周面を有する第2のハウジングとを備え、
保持部材には、第1の方向において第1の端部へ漸次減少する外径を有する第1のテーパ突部と、第1の方向と逆の第2の方向において第2の端部へ漸次減少する外径を有する第2のテーパ突部とが設けられ、
第1のハウジングには、第1の方向において漸次減少する内径を有する第1のテーパ孔部が形成され、第2のハウジングには、第2の方向において漸次減少する内径を有する第2のテーパ孔部が形成され、
第1および第2のテーパ孔部は、第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされた状態で、それぞれ第1および第2のテーパ突部を半径方向の中心へ向かって押圧するように形成される。
【0052】
一態様に係るフローセルにおいて、保持部材は、第2の端部から第1の端部へ第1の方向に貫通する貫通孔を有する。樹脂チューブは、保持部材の貫通孔に挿入されている。第1および第2のハウジングは、保持部材に第1および第2のハウジングが嵌め合わされている。この場合、保持部材の第1のテーパ突部が第1のハウジングの第1のテーパ孔部に嵌め合わされ、保持部材の第2のテーパ突出部が第2のハウジングの第2のテーパ孔部に嵌め合わされる。このような構成により、第1のハウジングの第1のテーパ孔部への保持部材の第1のテーパ突部の嵌め込みの際に、第1のハウジングの第1のテーパ孔部の内周面が保持部材の第1のテーパ突部の外周面を半径方向の中心へ押圧する。また、第2のハウジングの第2のテーパ孔部への保持部材の第2のテーパ突部の嵌め込みの際に、第2のハウジングの第2のテーパ孔部の内周面が保持部材の第2のテーパ突部の外周面を半径方向の中心へ押圧する。それにより、樹脂チューブの外周面が保持部材の貫通孔の内周面で押圧される。したがって、樹脂チューブが直線状に確実に保持される。
【0053】
(第2項)第1項に記載のフローセルにおいて、
第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされる前の状態で、第1の方向に対する第1のテーパ突部の外周面の角度は、第1の方向に対する第1のテーパ孔部の内周面の角度よりも小さく、第2の方向に対する第2のテーパ突部の外周面の角度は、第2の方向に対する第2のテーパ孔部の内周面の角度よりも小さくてもよい。
【0054】
第2項に記載のフローセルによれば、第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされたときに、第1および第2のテーパ突部の先端領域がそれぞれ第1および第2のテーパ孔部の内周面で半径方向の中心へ圧縮される。それにより、保持部材の貫通孔の内周面のうち第1および第2の端部近傍の領域で樹脂チューブが強固に押圧される。
【0055】
(第3項)第1項または第2項に記載のフローセルにおいて、
第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされる前の状態で、保持部材の第1のテーパ突部の第1の端部の外径は、第1のハウジングの第1のテーパ孔部の対応する部分の内径よりも大きく、保持部材の第2のテーパ突部の第2の端部の外径は、第2のハウジングの第2のテーパ孔部の対応する部分の内径よりも大きくてもよい。
【0056】
第3項に記載のフローセルによれば、第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされたときに、第1のテーパ突部の第1の端部が第1のテーパ孔部の内周面で半径方向の中心へ圧縮され、第2のテーパ突部の第2の端部が第1のテーパ孔部の内周面で半径方向の中心へ圧縮される。それにより、保持部材の貫通孔の内周面の両端部で樹脂チューブが強固に押圧される。
【0057】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載のフローセルにおいて、
保持部材は、第1のテーパ突部と中間位置との間に形成された第1の中央部分と、第2のテーパ突部と中間位置との間に形成された第2の中央部分とを有し、
第1のハウジングは、第1の方向において第1のテーパ孔部に連通しかつ第1の中央部分に嵌め合わされる第1の開口部を有し、
第2のハウジングは、第2の方向において第2のテーパ孔部に連通しかつ第2の中央部分に嵌め合わされる第2の開口部を有してもよい。
【0058】
第4項に記載のフローセルによれば、第1のハウジングの第1の開口部に保持部材の第1の中央部分が嵌め合わされ、第2のハウジングの第2の開口部に保持部材の第2の中央部分が嵌め合わされる。それにより、保持部材の第1および第2の中央部分が第1および第2のハウジングにより保持され、樹脂チューブの中央部分が保持部材の貫通孔の内周面の中央部により保持される。その結果、樹脂チューブが長い場合であっても、樹脂チューブが直線状に確実に保持される。
【0059】
(第5項)第4項に記載のフローセルにおいて、
第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされる前の状態で、第1の中央部分の外径は、第1の開口部の内径よりも大きく、第2の中央部分の外径は、第2の開口部の内径よりも大きくてもよい。
【0060】
第5項に記載のフローセルによれば、第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされたときに、第1および第2の中央部分がそれぞれ第1および第2の開口部の内周面で半径方向の中心へ圧縮される。それにより、保持部材の貫通孔の内周面の中央部で樹脂チューブが強固に押圧される。
【0061】
(第6項)第4項または第5項に記載のフローセルにおいて、
第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされる前の状態で、第1の中央部分の第1の方向の長さと第2の中央部分の第2の方向の長さとの合計は、第1の開口部の第1の方向の長さと第2の方向の長さとの合計よりも大きくてもよい。
【0062】
第6項に記載のフローセルによれば、第1および第2のハウジングが保持部材に嵌め合わされたときに、第1の中央部分が第2の方向に圧縮され、第2の中央部分が第1の方向に圧縮される。この場合、第1の中央部分は第1の開口部の内周面で保持され、第2の開口部の内周面で保持されている。そのため、第1および第2の中央部分は、半径方向の中心へ拡張するように変形する。それにより、保持部材の貫通孔の内周面の中央部で樹脂チューブが強固に押圧される。
【0063】
(第7項)第5項または第6項に記載のフローセルにおいて、
第1および第2の開口部のそれぞれの縁部には、傾斜面が形成されてもよい。
【0064】
第7項に記載のフローセルによれば、第1および第2のハウジングを保持部材に容易に嵌め合わせることができる。
【0065】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に記載のフローセルは、
第1および第2のハウジングを樹脂チューブの軸方向において互いに締結する締結具をさらに備えてもよい。
【0066】
第8項に記載のフローセルによれば、保持部材への第1および第2のハウジングの嵌め合わせを確実かつ容易に保つことができる。
【0067】
(第9項)第1項~第8項のいずれか一項に記載のフローセルにおいて、
樹脂チューブの屈折率は水の屈折率よりも小さくてもよい。
【0068】
第9項に記載のフローセルによれば、ほとんどの液体は水の屈折率よりも大きい屈折率を有するので、樹脂チューブ内を流れる液体中を通過する光を樹脂チューブの内周面で全反射させることができる。それにより、フローセルの樹脂チューブ内を通過する光の利用効率が高い。
【符号の説明】
【0069】
10…樹脂チューブ,12a,12b…環状シール材,20…フェルール,21,22…テーパ突部,23,24…中央円筒部,25…貫通孔,30,40…ハウジング,31,41…開口部,32,42…テーパ孔部,33,43…円筒孔部,34…液導入部,35…光導入部,36…試料導入路,44…液導出部,45…光導出部,46…試料導出路,50…ボルト
図1
図2
図3