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特許7537409電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー及び電磁波透過カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20240814BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240814BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20240814BHJP
   H05B 3/34 20060101ALI20240814BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S13/931
B60R13/00
H05B3/34
H05B3/20 345
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021177926
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067011
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松井 達也
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】特開2020-187032(JP,A)
【文献】特開2021-169993(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110635240(CN,A)
【文献】特開2022-032674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 1/42
B60R 13/00
H05B 3/34
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信及び受信するレーダ装置が搭載された乗物に適用され、且つ前記電磁波の送信方向における前記レーダ装置の前方に配置されるカバー本体部を有した電磁波透過カバーであって、
前記カバー本体部は、電磁波透過性を持つ樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接するヒータフィルムと、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接し、且つ前記ヒータフィルムと電気的に接合される端子部とを備え、
前記ヒータフィルムは、電磁波透過性を持つフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の前面に設けられ、且つ通電により発熱する発熱部とを備え、
前記発熱部の一部は、前記フィルム基材から突出しており、
前記端子部は、前記発熱部における前記フィルム基材から突出した部分に接合され、
前記端子部と前記発熱部との接合部分は、前記カバー基材に覆われていることを特徴とする電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記端子部は、前記発熱部における前記フィルム基材から突出した部分における前記送信方向の後側の位置に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
前記端子部は、基部と、前記基部から延出する延出部とを備え、
前記延出部は、前記発熱部における前記フィルム基材から突出した部分における前記送信方向の前側の位置に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項4】
前記カバー本体部は、前記端子部を支持するコネクタハウジングを備えており、
前記延出部は、前記ヒータフィルム側の方向に延びるとともに先端部が前記コネクタハウジングから突出していることを特徴とする請求項3に記載の電磁波透過カバー。
【請求項5】
電磁波を送信及び受信するレーダ装置が搭載された乗物に適用され、且つ前記電磁波の送信方向における前記レーダ装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、
前記カバー本体部は、電磁波透過性を持つ樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接するヒータフィルムと、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接し、且つ前記ヒータフィルムと電気的に接合される端子部とを備え、
前記ヒータフィルムは、電磁波透過性を持つフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の前面に設けられ、且つ通電により発熱する発熱部とを備えた電磁波透過カバーの製造方法であって、
前記発熱部と前記端子部とを接合することと、
前記ヒータフィルム及び前記端子部をインサート部材とした前記カバー基材のインサート成形を行うことにより前記発熱部と前記端子部との接合部分を前記カバー基材で覆うことと、
を備えたことを特徴とする電磁波透過カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波透過カバー及び当該電磁波透過カバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ミリ波レーダ装置が組込まれた車両では、当該装置からミリ波が車外へ向けて送信される。ミリ波レーダ装置から送信されて先行車両及び歩行者などの車外の物体に当たって反射されたミリ波は、当該ミリ波レーダ装置によって受信される。
【0003】
そして、ミリ波レーダ装置では、送信及び受信されたミリ波により、上記物体の認識、及び自車両と上記物体との距離や相対速度の検出などが行なわれる。なお、上記車両では、通常、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置の前方に、ミリ波が透過する電磁波透過カバーが配置される。
【0004】
ここで、上記電磁波透過カバーに氷雪が付着するとミリ波が減衰されるので、ミリ波レーダ装置の検出性能が低下するという問題がある。このため、従来は、ヒータフィルムを付加した電磁波透過カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
こうしたヒータフィルムは、フィルム基材の一方の面に、銅等の導電性発熱材料からなる発熱部とカバー層とが積層されるとともに、フィルム基材の他方の面に接着層が積層されることにより形成される。発熱部は、帯状をなし、且つ一定のパターンで配線されるように、フィルム基材上に形成される。
【0006】
上記電磁波透過カバーでは、発熱部が通電により発熱する。このため、上記電磁波透過カバーは、氷雪が付着しても、当該氷雪を発熱部が発する熱によって融解させることができるので、氷雪の付着に起因するミリ波の減衰を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6719506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記電磁波透過カバーでは、外部の機器から発熱部に電力を供給するために、ヒータフィルムの発熱部と外部の機器の端子部とを電気的に接続する必要がある。しかしながら、上記特許文献1には、外部の機器の端子部を発熱部に接合する構造についての記載がない。
【0009】
したがって、例えば、ヒータフィルムをカバー基材に接着した後に、端子部を発熱部に接合すると、端子部と発熱部との接合部分を後工程でポッティングなどを行うことによって覆う必要がある。すなわち、電磁波透過カバーの製造に、ポッティングなどの複雑な作業が必要となる。このため、電磁波透過カバーを容易に製造できないので、容易に製造できる電磁波透過カバー及びその製造方法が望まれている。
【0010】
こうした要望は、ミリ波とは異なる電磁波(例えば、近赤外線など)を送信及び受信するレーダ装置を用いた場合に、電磁波の送信方向における当該レーダ装置の前方に配置される電磁波透過カバーに対しても同様にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信するレーダ装置が搭載された乗物に適用され、且つ前記電磁波の送信方向における前記レーダ装置の前方に配置されるカバー本体部を有した電磁波透過カバーであって、前記カバー本体部は、電磁波透過性を持つ樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接するヒータフィルムと、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接し、且つ前記ヒータフィルムと電気的に接合される端子部とを備え、前記ヒータフィルムは、電磁波透過性を持つフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の前面に設けられ、且つ通電により発熱する発熱部とを備え、前記発熱部の一部は、前記フィルム基材から突出しており、前記端子部は、前記発熱部における前記フィルム基材から突出した部分に接合され、前記端子部と前記発熱部との接合部分は、前記カバー基材に覆われていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、端子部と発熱部との接合部分がカバー基材に覆われるので、後工程で当該接合部分を例えばポッティングなどを行うことによって覆う必要がなくなる。このため、電磁波透過カバーを容易に製造することができる。
【0013】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記端子部は、前記発熱部における前記フィルム基材から突出した部分における前記送信方向の後側の位置に接合されていることが好ましい。
この構成によれば、発熱部をより前側の位置に配置できる。すなわち、ヒータフィルムをよりカバー基材の前面(意匠面)に近い位置に配置できる。
【0014】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記端子部は、基部と、前記基部から延出する延出部とを備え、前記延出部は、前記発熱部における前記フィルム基材から突出した部分における前記送信方向の前側の位置に接合されていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、例えば延出部をはんだ付けによって発熱部に接合する場合に、はんだが延出部におけるカバー基材の前面(意匠面)とは反対側に配置される。このため、カバー基材を成形する際に、延出部と発熱部とを接合するはんだの凹凸の影響によってカバー基材の前面(意匠面)にヒケが生じることを抑制できる。
【0016】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記カバー本体部は、前記端子部を支持するコネクタハウジングを備えており、前記延出部は、前記ヒータフィルム側の方向に延びるとともに先端部が前記コネクタハウジングから突出していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、端子部がコネクタハウジングに支持された状態でも、発熱部におけるフィルム基材から突出した部分における送信方向の前側の位置に対して延出部を容易に接合できる。
【0018】
上記課題を解決する電磁波透過カバーの製造方法は、電磁波を送信及び受信するレーダ装置が搭載された乗物に適用され、且つ前記電磁波の送信方向における前記レーダ装置の前方に配置されるカバー本体部を有し、前記カバー本体部は、電磁波透過性を持つ樹脂材料により形成されたカバー基材と、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接するヒータフィルムと、前記送信方向における前記カバー基材の後部に隣接し、且つ前記ヒータフィルムと電気的に接合される端子部とを備え、前記ヒータフィルムは、電磁波透過性を持つフィルム基材と、前記送信方向における前記フィルム基材の前面に設けられ、且つ通電により発熱する発熱部とを備えた電磁波透過カバーの製造方法であって、前記発熱部と前記端子部とを接合することと、前記ヒータフィルム及び前記端子部をインサート部材とした前記カバー基材のインサート成形を行うことにより前記発熱部と前記端子部との接合部分を前記カバー基材で覆うことと、を備えたことを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、端子部と発熱部との接合部分がカバー基材に覆われるので、後工程で当該接合部分を例えばポッティングなどを行うことによって覆う必要がなくなる。このため、電磁波透過カバーを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電磁波透過カバーを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態のミリ波透過カバーの断面模式図である。
図2】ヒータフィルムの斜視図である。
図3図2の要部拡大断面図である。
図4】端子部の斜視図である。
図5】コネクタハウジングの断面図である。
図6】コネクタハウジングに端子部を組み付けたときの断面図である。
図7】発熱部の断面模式図である。
図8】ヒータフィルムの発熱部を端子部の延出部に接触させたときの断面模式図である。
図9】ヒータフィルムの発熱部を端子部の延出部にはんだ付けしたときの断面模式図である。
図10】互いに接合された状態のヒータフィルム及びコネクタをインサート部材としてカバー基材をインサート成形したときの断面模式図である。
図11】第2実施形態のミリ波透過カバーの断面模式図である。
図12】端子部をインサート部材としてコネクタハウジングをインサート成形することによって形成したコネクタの断面図である。
図13】発熱部の断面模式図である。
図14】ヒータフィルムの発熱部を端子部の延出部に接触させたときの断面模式図である。
図15】ヒータフィルムの発熱部を端子部の延出部にはんだ付けしたときの断面模式図である。
図16】互いに接合された状態のヒータフィルム及びコネクタをインサート部材としてカバー基材をインサート成形したときの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。以下の記載に関しては、車両の前進方向を前方とするとともに後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味するとともに、車幅方向は車両の左右方向を意味するものとする。
【0023】
図1に示すように、乗物の一例としての車両11の前端部の車幅方向における中央部分には、電磁波を送信及び受信するレーダ装置の一例としての前方監視用のミリ波レーダ装置12が搭載されている。ミリ波レーダ装置12は、電磁波におけるミリ波を車外のうち前方へ向けて送信するとともに、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有している。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであって周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0024】
上述したように、ミリ波レーダ装置12が車両11の前方に向けてミリ波を送信することから、ミリ波レーダ装置12によるミリ波の送信方向は、車両11の後方から前方へ向かう方向である。ミリ波の送信方向における前方は車両11の前方と概ね合致するとともに、ミリ波の送信方向における後方は車両11の後方と概ね合致する。このため、以下の記載では、ミリ波の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等と言うとともに、ミリ波の送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0025】
<ミリ波透過カバー13>
図1に示すように、ミリ波レーダ装置12の前方には、電磁波透過カバーの一例としての板状のミリ波透過カバー13が配置されている。ミリ波透過カバー13は、前面が車両11の前方を向くとともに後面が車両11の後方を向くように、起立した状態で配置される。ミリ波透過カバー13の前面は、ミリ波透過カバー13の意匠面14を構成している。ミリ波透過カバー13は、ミリ波透過カバー13の主要部を構成するカバー本体部15を備えている。カバー本体部15は、カバー基材16と、ヒータフィルム17と、コネクタ18とを備えている。
【0026】
<カバー基材16>
図1に示すように、カバー基材16は、電磁波透過性としてのミリ波透過性を持つ樹脂材料を用いて樹脂成形を行うことによって形成されている。カバー基材16の前面は、ミリ波透過カバー13の前面、すなわちミリ波透過カバー13の意匠面14を構成している。カバー基材16の形成に用いられる樹脂材料は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。
【0027】
カバー基材16の形成に用いられる樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)樹脂、ASA樹脂を含むPMMA樹脂などが挙げられる。本実施形態のカバー基材16は、一例としてABS樹脂によって形成されている。
【0028】
<ヒータフィルム17>
図1及び図2に示すように、ヒータフィルム17は、カバー基材16の後部に隣接して配置されている。ヒータフィルム17は、電磁波透過性を持つ四角板状のフィルム基材19と、フィルム基材19の前面に設けられるとともに通電により発熱する発熱部20とを備えている。フィルム基材19は、ヒータフィルム17の骨格部分をなしている。
【0029】
フィルム基材19の周縁部には、周縁(外縁)に向かうほど厚さが徐々に薄くなるように、斜面が形成されている。フィルム基材19は、前面の面積よりも後面の面積の方が広くなるように、周縁部に斜面が形成されている。つまり、フィルム基材19は、断面視で台形状をなしている。
【0030】
フィルム基材19の形成に用いられる樹脂材料には、カバー基材16の形成に用いられる樹脂材料と同様のものを採用できる。フィルム基材19の形成に用いられる樹脂材料を、カバー基材16の形成に用いられる樹脂材料と同様のものにすることで、フィルム基材19とカバー基材16との密着性を確保できる。
【0031】
本実施形態のフィルム基材19は、カバー基材16を形成する樹脂材料と同じミリ波透過性を持つABS樹脂によって形成されている。フィルム基材19をABS樹脂によって形成することで、飽和吸水量を少なくすることができる。このため、フィルム基材19に含まれる水分によるフィルム基材19の厚さ方向の膨張を抑制できるので、フィルム基材19のミリ波透過性を維持することができる。なお、フィルム基材19の厚さは、1.2mm以下であることが好ましい。
【0032】
発熱部20は、抵抗線、すなわち一般的に電気抵抗の大きいとされるニクロム線などの導線によって形成されている。発熱部20は、所定の配線パターン、例えば、互いに平行に延びる複数の直線部と、隣り合う当該直線部の端部同士を連結する複数の連結部とを有する配線パターンで配線されるように、フィルム基材19の前面に形成されている。
【0033】
この場合、所定の配線パターンを形成した発熱部20を加熱しながらフィルム基材19の前面に押し当ててめり込ませることで、フィルム基材19の前面に発熱部20が形成される。さらにこの場合、図3に示すように、発熱部20を構成する抵抗線は、半分程度がフィルム基材19にめり込んだ状態になっている。なお、図2に示すように、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aは、フィルム基材19から突出している。すなわち、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aは、発熱部20におけるフィルム基材19上からフィルム基材19の外側に突出した部分を構成している。
【0034】
<コネクタ18>
図1に示すように、コネクタ18は、発熱部20に対して電力を供給するための機器100のコネクタ101が着脱可能に接続される部材である。コネクタ18は、コネクタハウジング21と、コネクタハウジング21に組み付けられた一対(図1では一方のみを図示)の端子部22とを備えている。
【0035】
コネクタハウジング21は、電気絶縁性を持つ樹脂材料によって略筒状に形成されている。コネクタハウジング21は、一対の端子部22を支持する。コネクタハウジング21の前端部は、カバー基材16における後部に埋設されている。コネクタハウジング21における前端部以外の部分は、カバー基材16から後方へ突出している。コネクタハウジング21内には、端子部22を挟持する一対の挟持部23が設けられている。
【0036】
図1及び図4に示すように、端子部22は、金属などの導電性材料によって構成されている。端子部22は、前後方向に延びる四角棒状の基部24と、基部24の前端から下方に延出する板状の延出部25とを備えている。すなわち、端子部22は、略L字状をなしている。延出部25の先端部は、延出部25における先端部以外の部分よりも幅広になっている。
【0037】
各端子部22は、基部24がコネクタハウジング21内に挿入されて一対の挟持部23によって挟持されるとともに、延出部25がコネクタハウジング21の前面に形成された段差部26に収容されている。この場合、延出部25の前面とコネクタハウジング21の前面とは、面一になっている。
【0038】
一対の端子部22の延出部25の前面は、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aの後側の位置にはんだ付けによってそれぞれ接合されている。延出部25と発熱部20との接合部分27は、はんだ28と共にカバー基材16に覆われている。したがって、端子部22は、カバー基材16の後部に隣接して配置されるとともにヒータフィルム17と電気的に接合されている。
【0039】
<ミリ波透過カバー13の製造方法>
次に、上記のように構成されたミリ波透過カバー13の製造方法について説明する。
ミリ波透過カバー13は、コネクタ作成工程、ヒータフィルム作成工程、端子部接合工程、及びカバー基材成形工程を順次に経ることによって形成される。
【0040】
<コネクタ作成工程>
図5に示すように、コネクタ作成工程では、まず、コネクタハウジング21を樹脂成形により形成する。続いて、図6に示すように、導電性を持つ金属材料を加工して一対の端子部22を形成した後、当該一対の端子部22をコネクタハウジング21に挿入して組み付ける。この場合、各端子部22の基部24は一対の挟持部23間に圧入されるとともに、各端子部22の延出部25の前面とコネクタハウジング21の前面とは面一になる。これにより、一対の端子部22がコネクタハウジング21に組み付けられたコネクタ18が得られる。
【0041】
<ヒータフィルム作成工程>
図7に示すように、ヒータフィルム作成工程では、まず、抵抗線を所定の配線パターンとなるように曲げ加工して発熱部20を形成する。続いて、図2に示すように、樹脂成形によって板状のフィルム基材19を形成した後、フィルム基材19の前面に発熱部20を加熱しながら押し当てる。これにより、フィルム基材19の前面に発熱部20がめり込んだ状態で固定されてヒータフィルム17が得られる。このとき、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aは、フィルム基材19から突出した状態となる。
【0042】
<端子部接合工程>
図8に示すように、端子部接合工程では、まず、ヒータフィルム17の発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aを一対の端子部22の延出部25の前面にそれぞれ接触させた状態で維持する。続いて、この状態で、図9に示すように、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aを一対の端子部22の延出部25の前面にそれぞれはんだ付けによって接合する。これにより、ヒータフィルム17とコネクタ18とが接合される。このとき、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aと一対の端子部22の延出部25の前面とを接合したはんだ28は、前側に膨らむように突出する。
【0043】
<カバー基材成形工程>
図10に示すように、カバー基材成形工程では、互いに接合された状態のヒータフィルム17及びコネクタ18をインサート部材としてカバー基材16をインサート成形する。このとき、ヒータフィルム17のフィルム基材19の周縁部には斜面が形成されているので、当該斜面に沿って樹脂が流れ易くなる。このため、カバー基材16の成形性が向上する。
【0044】
これにより、ヒータフィルム17及びコネクタ18と、カバー基材16とが一体となったカバー本体部15を有した、目的とするミリ波透過カバー13が得られる。この場合、ヒータフィルム17の発熱部20とコネクタ18の一対の端子部22との接合部分27は、はんだ28と共にカバー基材16で覆われる。
【0045】
このように、カバー基材16を成形することにより、ヒータフィルム17の発熱部20とコネクタ18の一対の端子部22との接合部分27がカバー基材16によって覆われる。このため、上記接合部分27を後工程でポッティングなどを行うことによって覆う必要がない。したがって、ミリ波透過カバー13を容易に製造できる。
【0046】
<ミリ波透過カバー13の作用>
次に、ミリ波透過カバー13の作用について説明する。
ミリ波透過カバー13は、車両11に取付けられる。車両11に取付けられたミリ波透過カバーのコネクタ18には、機器100のコネクタ101が接続される。これにより、発熱部20が各端子部22を介して機器100に対して電気的に接続される。
【0047】
ところで、ミリ波透過カバー13の意匠面14に氷雪が付着した場合には、機器100のコネクタ101と、ミリ波透過カバー13のコネクタ18における各端子部22とを介して機器100からの電力が発熱部20に供給される。これにより、発熱部20は、通電されて発熱する。発熱部20が発した熱の一部は、ミリ波透過カバー13の意匠面14に伝達される。そして、この意匠面14に伝達された熱により、意匠面14に付着した氷雪が融解されるので、氷雪によるミリ波の減衰が抑制される。
【0048】
また、図1に示すミリ波レーダ装置12からミリ波が送信されると、当該ミリ波はミリ波透過カバー13におけるカバー本体部15の各部を透過する。この透過したミリ波は、先行車両及び歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びカバー本体部15を透過してミリ波レーダ装置12によって受信される。ミリ波レーダ装置12では、送信及び受信された上記ミリ波に基づいて、物体の認識や、当該物体と車両11との距離及び相対速度等の検出が行われる。
【0049】
以上詳述した第1実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1-1)ミリ波透過カバー13において、発熱部20の一部は、フィルム基材19から突出している。端子部22は、発熱部20におけるフィルム基材19から突出した部分に接合される。端子部22と発熱部20との接合部分27は、カバー基材16に覆われている。
【0050】
この構成によれば、端子部22と発熱部20との接合部分27がカバー基材16に覆われるので、後工程で当該接合部分27を例えばポッティングなどを行うことによって覆う必要がなくなる。このため、ミリ波透過カバー13を容易に製造することができる。
【0051】
(1-2)ミリ波透過カバー13において、端子部22は、発熱部20におけるフィルム基材19から突出した部分における後側の位置に接合されている。
この構成によれば、発熱部20をより前側の位置に配置できる。すなわち、ヒータフィルム17をよりカバー基材16の前面(意匠面14)に近い位置に配置できる。このため、発熱部20の熱によって意匠面14に付着した氷雪を効果的に融解させることができる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。図11に示すように、この第2実施形態のミリ波透過カバー31は、上記第1実施形態のミリ波透過カバー13においてコネクタ18をコネクタ32に変更したものである。したがって、第2実施形態では、上記第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。また、この第2実施形態では、第1実施形態と同一の部材については同一の符号を付すものとする。
【0053】
<ミリ波透過カバー31>
図11に示すように、ミリ波透過カバー31は、ミリ波透過カバー31の主要部を構成するカバー本体部33を備えている。カバー本体部33は、カバー基材16と、ヒータフィルム17と、コネクタ32とを備えている。
【0054】
<コネクタ32>
図11に示すように、コネクタ32は、発熱部20に対して電力を供給するための機器100のコネクタ101が着脱可能に接続される部材である。コネクタ32は、コネクタハウジング34と、コネクタハウジング34にインサート成形により一体に形成された一対(図11では一方のみを図示)の端子部35とを備えている。
【0055】
コネクタハウジング34は、電気絶縁性を持つ樹脂材料により、後側が開口するとともに前壁36を底壁とした略有底箱状に形成されている。コネクタハウジング34の前壁36は、カバー基材16における後部に埋設されるとともに、一対の端子部35を支持している。コネクタハウジング34における前壁36以外の部分は、カバー基材16から後方へ突出している。
【0056】
端子部35は、金属などの導電性材料によって構成されている。端子部35は、前後方向に延びる四角棒状の基部37と、基部37の前端から下方に延出する板状の延出部38とを備えている。すなわち、端子部35は、略L字状をなしている。延出部38の先端部は、延出部38における先端部以外の部分よりも幅広になっている。
【0057】
各端子部35は、基部37がコネクタハウジング34内に挿入されるとともに、延出部38がコネクタハウジング34の前壁36の前面に形成された溝39に収容されている。この場合、延出部38の前面とコネクタハウジング34の前壁36の前面とは、面一になっている。さらにこの場合、延出部38は、ヒータフィルム17側の方向である下方に延びるとともに先端部がコネクタハウジング34の前壁36から下方に突出している。
【0058】
一対の端子部35の延出部38の後面は、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aの前側の位置にはんだ付けによってそれぞれ接合されている。延出部38と発熱部20との接合部分40は、はんだ28と共にカバー基材16に覆われている。したがって、端子部35は、カバー基材16の後部に隣接して配置されるとともにヒータフィルム17と電気的に接合されている。
【0059】
<ミリ波透過カバー31の製造方法>
次に、上記のように構成されたミリ波透過カバー31の製造方法について説明する。
ミリ波透過カバー31は、コネクタ作成工程、ヒータフィルム作成工程、端子部接合工程、及びカバー基材成形工程を順次に経ることによって形成される。
【0060】
<コネクタ作成工程>
コネクタ作成工程では、まず、導電性を持つ金属材料を用いて一対の端子部35を加工する。続いて、加工した一対の端子部35をインサート部材としてコネクタハウジング34をインサート成形する。すると、図12に示すように、各端子部35の一部がコネクタハウジング34によって被覆されたコネクタ32が得られる。
【0061】
<ヒータフィルム作成工程>
図13に示すように、ヒータフィルム作成工程では、まず、抵抗線を所定の配線パターンとなるように曲げ加工して発熱部20を形成する。続いて、図2に示すように、樹脂成形によって板状のフィルム基材19を形成した後、フィルム基材19の前面に発熱部20を加熱しながら押し当てる。これにより、フィルム基材19の前面に発熱部20がめり込んだ状態で固定されてヒータフィルム17が得られる。このとき、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aは、フィルム基材19から突出した状態となる。
【0062】
<端子部接合工程>
図14に示すように、端子部接合工程では、まず、ヒータフィルム17の発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aを、一対の端子部35の延出部38におけるコネクタハウジング34から突出した部分である先端部の後面にそれぞれ接触させた状態で維持する。続いて、この状態で、図15に示すように、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aを一対の端子部35の延出部38の先端部の後面にそれぞれはんだ付けによって接合する。これにより、ヒータフィルム17とコネクタ32とが接合される。このとき、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aと一対の端子部35の延出部38の先端部の後面とを接合したはんだ28は、後側に膨らむように突出する。
【0063】
<カバー基材成形工程>
図16に示すように、カバー基材成形工程では、互いに接合された状態のヒータフィルム17及びコネクタ32をインサート部材としてカバー基材16をインサート成形する。これにより、ヒータフィルム17及びコネクタ32と、カバー基材16とが一体となったカバー本体部33を有した、目的とするミリ波透過カバー31が得られる。この場合、ヒータフィルム17の発熱部20とコネクタ32の一対の端子部35との接合部分40は、はんだ28と共にカバー基材16で覆われる。
【0064】
さらにこの場合、発熱部20を構成する抵抗線の両端部20aと一対の端子部35の延出部38の先端部の後面とを接合したはんだ28は、意匠面14側とは反対側である後側に膨らむように突出する。このため、カバー基材16のインサート成形を行う際に、はんだ28の凹凸による影響を受けて意匠面14にヒケが生じることが抑制される。
【0065】
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1-1)の効果に加えて、次のような効果が発揮される。
(2-1)ミリ波透過カバー31において、延出部38は、発熱部20におけるフィルム基材19から突出した部分における前側の位置に接合されている。
【0066】
この構成によれば、延出部38をはんだ付けによって発熱部20に接合する場合に、はんだ28が延出部38におけるカバー基材16の前面(意匠面14)とは反対側に配置される。このため、カバー基材16を成形する際に、延出部38と発熱部20とを接合するはんだ28の凹凸の影響によってカバー基材16の前面(意匠面14)にヒケが生じることを抑制できる。
【0067】
(2-2)ミリ波透過カバー31において、カバー本体部33は、端子部35を支持するコネクタハウジング34を備えている。延出部38は、ヒータフィルム17側の方向に延びるとともに先端部がコネクタハウジング34から突出している。
【0068】
この構成によれば、端子部35がコネクタハウジング34に支持された状態でも、発熱部20におけるフィルム基材19から突出した部分における前側の位置に対して延出部38を容易に接合できる。
【0069】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・第1実施形態において、端子部22は、必ずしも発熱部20におけるフィルム基材19から突出した部分における後側の位置に接合されている必要はない。
・第1実施形態において、一対の端子部22をインサート部材としてコネクタハウジング21をインサート成形することによって、コネクタ18を形成してもよい。
【0071】
・第1実施形態において、発熱部20と一対の端子部22の延出部25との接合は、ヒュージングやかしめなどによって行うようにしてもよい。
・第1実施形態において、発熱部20と一対の端子部22の延出部25とを接合した後に、一対の端子部22をコネクタハウジング21に組み付けるようにしてもよい。
【0072】
・第1実施形態において、コネクタハウジング21は省略してもよい。
・第2実施形態において、コネクタハウジング34を樹脂成形により形成するとともに導電性を持つ金属材料を加工して一対の端子部35を形成した後に、一対の端子部35をコネクタハウジング34に組み付けることによってコネクタ32を形成してもよい。
【0073】
・第2実施形態において、発熱部20と一対の端子部35の延出部38との接合は、ヒュージングやかしめなどによって行うようにしてもよい。
・第2実施形態において、コネクタハウジング34は省略してもよい。
【0074】
・ヒータフィルム17において、発熱部20を構成する抵抗線は、半分以上をフィルム基材19にめり込ませるようにしてもよい。
・レーダ装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波の他に、赤外線等が含まれていてもよい。
【0075】
・電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信するレーダ装置が、車両11とは異なる種類の乗物、例えば、電車、航空機、船舶等の乗物に搭載された場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
11…乗物の一例としての車両
12…レーダ装置の一例としてのミリ波レーダ装置
13,31…電磁波透過カバーの一例としてのミリ波透過カバー
14…意匠面
15,33…カバー本体部
16…カバー基材
17…ヒータフィルム
18,32…コネクタ
19…フィルム基材
20…発熱部
20a…両端部
21,34…コネクタハウジング
22,35…端子部
23…挟持部
24,37…基部
25,38…延出部
26…段差部
27,40…接合部分
36…前壁
39…溝
100…機器
101…コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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図15
図16