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特許7537410ブレーキシステムおよびブレーキペダル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ブレーキシステムおよびブレーキペダル装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/96 20060101AFI20240814BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20240814BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60T8/96
B60T17/18
B60T8/17 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021183589
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023071024
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 孝範
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和弘
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-29416(JP,A)
【文献】特開2017-9352(JP,A)
【文献】国際公開第2020/104277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/96
B60T 17/18
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制動するブレーキ回路(40)を駆動制御するブレーキシステムにおいて、
運転者に操作されるブレーキペダル(31)の操作量に応じたセンサ出力信号を生成し出力する4個のセンサ(11~14)と、
前記センサから出力されるセンサ出力信号に基づいて前記ブレーキ回路の駆動を制御する少なくとも2個の電子制御装置(21、22)と、を備え、
4個の前記センサを任意に第1センサ(11)、第2センサ(12)、第3センサ(13)、第4センサ(14)と呼ぶとき、
前記第1センサは、少なくとも2個の前記電子制御装置のうち所定の前記電子制御装置(21)にセンサ出力信号を送信し、
前記第2センサは、少なくとも2個の前記電子制御装置のうち所定の前記電子制御装置とは別の前記電子制御装置(22)にセンサ出力信号を送信し、
前記第3センサおよび前記第4センサは、センサ出力信号の送信機能(132、142、143)および受信機能(132、142、133)の少なくとも一方を有しており、
前記第3センサおよび前記第4センサのうち、一方のセンサから送信されたセンサ出力信号を受信した他方のセンサは、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を所定の前記電子制御装置または別の前記電子制御装置に送信するように構成されている、ブレーキシステム。
【請求項2】
前記第3センサは、自ら生成したセンサ出力信号を前記送信機能により前記第4センサに送信し、さらに前記第4センサから送信されたセンサ出力信号を前記受信機能により受信し、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を所定の前記電子制御装置に送信し、
前記第4センサは、自ら生成したセンサ出力信号を前記送信機能により前記第3センサに送信し、さらに前記第3センサから送信されたセンサ出力信号を前記受信機能により受信し、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を別の前記電子制御装置に送信するように構成されている、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記第3センサおよび前記第4センサのうち一方のセンサは、他方のセンサが送信したセンサ出力信号を前記受信機能により受信し、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を所定の前記電子制御装置に送信し、
前記第3センサおよび前記第4センサのうち他方のセンサは、自ら生成したセンサ出力信号を前記送信機能により一方のセンサに送信し、さらに自ら生成したセンサ出力信号を別の前記電子制御装置に送信するように構成されている、請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第3センサと前記第4センサとの通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、デジタルバス通信のうちいずれか1つが採用される、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記センサと前記電子制御装置との通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、光通信のうちいずれか1つが採用される、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項6】
4個の前記センサのうち少なくとも1つの前記センサは磁気センサであり、その他の前記センサはインダクティブセンサである、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項7】
車両を制動するブレーキ回路(40)を駆動制御する少なくとも2個の電子制御装置(21、22)を備えるブレーキシステムに用いられるブレーキペダル装置において、
運転者に操作されるブレーキペダル(31)と、
前記ブレーキペダルの操作量に応じたセンサ出力信号を生成し出力する4個のセンサ(11~14)と、を備え、
4個の前記センサを任意に第1センサ(11)、第2センサ(12)、第3センサ(13)、第4センサ(14)と呼ぶとき、
前記第1センサは、少なくとも2個の前記電子制御装置のうち所定の前記電子制御装置(21)にセンサ出力信号を送信し、
前記第2センサは、少なくとも2個の前記電子制御装置のうち所定の前記電子制御装置とは別の前記電子制御装置(22)にセンサ出力信号を送信し、
前記第3センサおよび前記第4センサは、センサ出力信号の送信機能(132、142、143)および受信機能(132、142、133)の少なくとも一方を有しており、
前記第3センサおよび前記第4センサのうち、一方のセンサから送信されたセンサ出力信号を受信した他方のセンサは、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を所定の前記電子制御装置または別の前記電子制御装置に送信するように構成されている、ブレーキペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるブレーキシステムおよびブレーキペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じた信号を出力するセンサの出力信号に基づいて電子制御装置がブレーキペダルの操作量を検出し、ブレーキ回路を駆動制御して車両を制動するブレーキバイワイヤシステムが知られている。なお、以下の説明では、電子制御装置を「ECU」といい、ブレーキペダルの操作量を「ペダル操作量」といい、ブレーキバイワイヤシステムを「ブレーキシステム」ということがある。ECUは、Electronic Control Unitの略である。なお、ブレーキ回路を駆動制御するECUは、BCUと呼ばれることもある。BCUは、Brake Control Unitの略である。
【0003】
特許文献1に記載のブレーキシステムは、各実施例において、ブレーキペダルの操作量を検出する6個のセンサと、2個のECUと、2個の電源装置を備えている。なお、6個のセンサの内訳は、4個の位置センサと、2個の力センサである。このブレーキシステムでは、2個の電源装置のうち一方の電源装置から3個のセンサ(具体的には、2個の位置センサと1個の力センサ)に電力が供給され、他方の電源装置から別の3個のセンサに電力が供給される構成である。また、このブレーキシステムでは、2個のECUのうち一方のECUに対し3個のセンサ(具体的には、上記と同じ2個の位置センサと1個の力センサ)からの出力信号が送信され、他方のECUに対し別の3個のセンサからの出力信号が送信される構成である。これにより、このブレーキシステムは、一方の電源装置が故障した場合でも、他方の電源装置から電力が供給される別の3個のセンサの出力信号が他方のECUに送信されるので、その他方のECUによってブレーキ回路を駆動制御することが可能である。このように、このブレーキシステムは、電源装置の故障、およびECUの故障に対し、冗長性が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2021/185611号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のブレーキシステムは、電源装置の故障およびECUの故障に対して冗長性が図られているが、6個という多数のセンサを備えている。そのため、その多数のセンサが配置されるブレーキペダル装置の体格が大型化すると共に、製造コストも増加するといった問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ブレーキバイワイヤシステムにおけるブレーキペダルのセンシングに対し、センサ個数の最適化とセンサ情報の最適なルーティング方法により、冗長性を確保できる必要十分なシステム構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明によると、車両を制動するブレーキ回路(40)を駆動制御するブレーキシステムは、4個のセンサ(11~14)と、少なくとも2個の電子制御装置(21、22)を備える。4個のセンサは、運転者に操作されるブレーキペダルの操作量に応じたセンサ出力信号を生成し出力する。少なくとも2個の電子制御装置は、センサから出力されるセンサ出力信号に基づいてブレーキ回路の駆動を制御する。ここで、4個のセンサを任意に第1センサ(11)、第2センサ(12)、第3センサ(13)、第4センサ(14)と呼ぶ。第1センサは、少なくとも2個の電子制御装置のうち所定の電子制御装置(21)にセンサ出力信号を送信する。第2センサは、少なくとも2個の電子制御装置のうち所定の電子制御装置とは別の電子制御装置(22)にセンサ出力信号を送信する。第3センサおよび第4センサは、センサ出力信号の送信機能(132、142、143)および受信機能(132、142、133)の少なくとも一方を有している。そして、第3センサおよび第4センサのうち、一方のセンサから送信されたセンサ出力信号を受信した他方のセンサは、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を所定の電子制御装置または別の電子制御装置に送信するように構成されている。
【0008】
これによれば、所定の電子制御装置または別の電子制御装置のうち少なくとも一方に、第1センサまたは第2センサのうち一方のセンサ出力信号と、第3センサと第4センサの合成信号が入力される。すなわち、所定の電子制御装置または別の電子制御装置のうち少なくとも一方には、3個のセンサのセンサ出力信号が入力される。したがって、3個のセンサのセンサ出力信号が入力される電子制御装置は、その3個のセンサのうち1個のセンサが故障した場合に、多数決判定により、その故障したセンサを特定できる。それと共に、その電子制御装置は、故障したセンサを除いた、正常なセンサ出力信号に基づいて、正確なペダル操作量を検出できる。
【0009】
また、このブレーキシステムは、所定の電子制御装置と別の電子制御装置の両方に対し、4個のセンサのうちいずれかのセンサ出力信号が入力される。そのため、所定の電子制御装置または別の電子制御装置の一方が故障した場合でも、他方の電子制御装置によりブレーキ回路を駆動制御することが可能である。したがって、このブレーキシステムは、電子制御装置の故障に対し、冗長性を確保できる。
【0010】
このように、このブレーキシステムは、多数決判定による故障したセンサの特定、及び、電子制御装置の故障に対する冗長性の確保といった機能を、4個のセンサを用いたルーティング方法により構築することが可能である。したがって、このブレーキシステムは、センサ個数の最適化により、製造コストを低減するとともに、ブレーキペダル装置の体格を小型化することができる。
【0011】
さらに、所定の電子制御装置と別の電子制御装置は、4個のセンサのセンサ出力信号に関し、所定の電子制御装置と別の電子制御装置との間の通信を必要としない。したがって、このブレーキシステムは、電子制御装置の制御処理の負荷を低減することができる。
【0012】
請求項7に係る発明はブレーキペダル装置に関するものである。ブレーキペダル装置は、車両を制動するブレーキ回路(40)を駆動制御する少なくとも2個の電子制御装置(21、22)を備えるブレーキシステムに用いられる。ブレーキペダル装置は、運転者に操作されるブレーキペダル(31)と、ブレーキペダルの操作量に応じたセンサ出力信号を生成し出力する4個のセンサ(11~14)とを備える。ここで、4個のセンサを任意に第1センサ(11)、第2センサ(12)、第3センサ(13)、第4センサ(14)と呼ぶ。第1センサは、少なくとも2個の電子制御装置のうち所定の電子制御装置(21)にセンサ出力信号を送信する。第2センサは、少なくとも2個の電子制御装置のうち所定の電子制御装置とは別の電子制御装置(22)にセンサ出力信号を送信する。第3センサおよび第4センサは、センサ出力信号の送信機能(132、142、143)および受信機能(132、142、133)の少なくとも一方を有している。そして、第3センサおよび第4センサのうち、一方のセンサから送信されたセンサ出力信号を受信した他方のセンサは、自ら生成したセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を所定の電子制御装置または別の電子制御装置に送信するように構成されている。
【0013】
これによれば、請求項7に係る発明によるブレーキペダル装置も、請求項1に係る発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るブレーキシステムが備えるブレーキペダル装置の側面図である。
図3】第2実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るブレーキシステムについて、図1および図2を参照しつつ説明する。
第1実施形態のブレーキシステムは、ブレーキペダル31の操作量に基づいて電子制御装置(以下、「ECU」という)21、22がブレーキ回路40を駆動制御して車両を制動するブレーキバイワイヤシステムである。なお、ブレーキ回路40を駆動制御するECUは、BCUと呼ばれることもある。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態のブレーキシステムは、4個のセンサ11~14と2個のECU21、22を備えている。4個のセンサ11~14は、例えば図2に示すようなブレーキペダル装置30に設けられる。
【0019】
図2では、ブレーキペダル装置30の一例として、オルガン式のものを示している。オルガン式のブレーキペダル装置30とは、ブレーキペダル31のうち運転者に踏込操作される部位32が搖動の軸心CLに対して車両搭載時の天地方向における上方に配置されるものである。なお、図2に記載した座標は、ブレーキペダル装置30が車両に搭載された状態の上下方向、前後方向を示すものである。
【0020】
ブレーキペダル装置30は、ハウジング33、ブレーキペダル31などを備えている。ハウジング33は、不図示のボルトなどにより車両のフロアまたはダッシュパネルに固定される。ブレーキペダル31は、板状に形成され、車両のフロアに対して斜めに配置されている。具体的には、ブレーキペダル31は、その上端部が車両前方となり、下端部が車両後方となるように斜めに配置されている。ブレーキペダル31のうち上側の部位には、運転者に踏込操作される部位32として厚肉部が設けられている。
【0021】
ブレーキペダル31に固定された接続部材34は、ハウジング33の内側に設けられた不図示の回転軸に固定されている。そのため、ブレーキペダル31は、ハウジング33に設けられた所定の軸心CLまわりに搖動可能に設けられる。なお、本明細書において、搖動とは、所定の軸心CLまわりに所定角度範囲で正方向および逆方向に回転動作することをいう。
【0022】
なお、図2において図示は省略するが、ハウジング33の内側には、運転者がブレーキペダル31に印加する踏力に対する反力を発生させる反力発生機構、および、4個のセンサ11~14などが設けられている。図2では、反力発生機構および4個のセンサ11~14の図示を省略している。
【0023】
図1に示す4個のセンサ11~14は、ブレーキペダル装置30に設けられ、運転者に踏込操作されるブレーキペダル31の操作量に応じたセンサ出力信号を生成し、出力する。
【0024】
4個のセンサ11~14は、全て同一の物理量を検出するセンサを採用してもよく、或いは、それぞれ異なる物理量を検出するセンサを採用してもよい。なお、第1実施形態では、冗長性の観点から、4個のセンサ11~14は、ペダル操作量として、2種の物理量(例えば、ペダル揺動角とペダルストローク量)をそれぞれ異なる検出原理で検出するセンサが採用されている。具体的には、ペダル揺動角を検出するセンサとして、例えば、ホール素子または磁気抵抗素子などを用いた磁気センサが採用される。ペダルストローク量を検出するセンサとして、例えば、インダクティブセンサが採用される。なお、4個のセンサ11~14の種類は、上記のものに限らず、例えば、圧力センサ、光電センサなど、種々のものを採用することが可能である。
【0025】
4個のセンサ11~14が生成したセンサ出力信号は、2個のECU21、22に伝送される。なお、その伝送方法については後述する。
【0026】
2個のECU21、22は、制御処理や演算処理を行うプロセッサ、プログラムやデータ等を記憶するROM、RAM等の記憶部を含むマイクロコンピュータ、およびその周辺回路で構成されている。記憶部は、非遷移的実体的記憶媒体で構成されている。ECU21、22は、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて各種制御処理および演算処理を行い、出力ポートに接続された各機器の作動を制御する。具体的には、ECU21、22は、4個のセンサ11~14で生成されたセンサ出力信号に基づいて正確なペダル操作量を検出し、ブレーキ回路40の駆動を制御する。
【0027】
ブレーキ回路40として、種々の機構を採用することができる。例えば、ブレーキ回路40として、ECU21、22からの指令により電動モータが駆動してブレーキパッドをディスクブレーキロータに押し付けることで各車輪を制動する電動ブレーキを採用してもよい。または、例えば、ブレーキ回路40として、マスターシリンダまたは液圧ポンプの動作によりブレーキ液の液圧を増加させ、各車輪に配置されたホイールシリンダを駆動し、ブレーキパッドを動作させる構成を採用してもよい。また、ブレーキ回路40は、ECU21、22からの制御信号に応じて、通常制御、ABS制御およびVSC制御などを行うことも可能である。ABSはAnti-lock Braking Systemの略であり、VSCはVehicle Stability Controlの略である。
【0028】
次に、4個のセンサ11~14から2個のECU21、22へのセンサ出力信号の伝送方法について説明する。
【0029】
なお、以下の説明では説明の便宜上、4個のセンサ11~14を、図1の紙面上側から下側へ順に、第1センサ11、第2センサ12、第3センサ13、第4センサ14と呼ぶ。また、以下の説明では説明の便宜上、2個のECU21、22のうち、図1の紙面上側のものを第1ECU21と呼び、紙面下側のものを第2ECU22と呼ぶ。第1ECU21は「所定の電子制御装置」に対応し、第2ECU22は「別の電子制御装置」に対応している。また、以下の説明では説明の便宜上、図1に記載された配線を、第1~第6配線51~56と呼ぶ。なお、第1~第4センサ11~14の呼称は、ブレーキペダル装置30への搭載位置や種類などを限定するものではない。第1ECU21、第2ECU22の呼称も、搭載位置などを限定するものではない。これらのことは、後述する第2実施形態の説明でも同じである。
【0030】
第1センサ11は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、第1センサ11の送信部111から第1配線51を経由して第1ECU21の第1受信部211に送信する。
【0031】
第2センサ12は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、第2センサ12の送信部121から第2配線52を経由して第2ECU22の第1受信部221に送信する。
【0032】
第1実施形態では、第3センサ13と第4センサ14との間の通信機能において、第3センサ13と第4センサ14はいずれも送信機能と受信機能を有している。すなわち、第1実施形態では、第3センサ13と第4センサ14はそれぞれ、センサ出力信号の送信および受信を相互に行う送受信部132、142を有している。第3センサ13と第4センサ14は、その一方のセンサから送信されたセンサ出力信号を受信した他方のセンサが、自らのセンサ出力信号と受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を第1ECU21または第2ECU22に送信するように構成されている。
【0033】
具体的には、第3センサ13は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、自身の送受信部132から第6配線56を経由して第4センサ14の送受信部142に送信する。第4センサ14は、自身の送受信部142で第3センサ13からのセンサ出力信号を受信すると、センサ内の集積回路の信号集約機能を用いて、自ら生成したセンサ出力信号と、第3センサ13から受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を生成する。なお、センサ内の集積回路として、例えばASIC(application specific integrated circuit の略)が用いられる。そして、第4センサ14は、その合成信号を、自身の送信部141から第4配線54を経由して第2ECU22の第2受信部222に送信する。さらに、第4センサ14は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、自身の送受信部142から第5配線55を経由して第3センサ13の送受信部132に送信する。
【0034】
第3センサ13は、自身の送受信部132で第4センサ14からのセンサ出力信号を受信すると、センサ内の集積回路の信号集約機能を用いて、自ら生成したセンサ出力信号と、第4センサ14から受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を生成する。そして、第3センサ13は、その合成信号を、自身の送信部131から第3配線53を経由して第1ECU21の第2受信部212に送信する。
【0035】
なお、第3センサ13と第4センサ14との通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、デジタルバス通信などを採用することができる。デジタル通信として、SPI、I2C、UART、SENTなどが例示される。SPIは、Serial Peripheral Interface の略である。I2Cは、Inter-Integrated Circuit の略である。UARTは、Universal Asynchronous Receiver/Transmitter の略である。SENTは、Single Edge Nibble Transmission の略である。
【0036】
また、各センサ11~14と各ECU21、22とのとの通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、光通信などを採用することができる。デジタル通信として、SPI、I2C、UART、SENTなどが例示される。なお、SENTが採用される場合、送信部はドライバであり、受信部はレシーバである。また、SENTが採用される場合、各配線は、供給電圧線、信号線、接地線を含んでいる。
【0037】
一方、通信方式として、アナログ通信が採用される場合、送信部および受信部は、端子、配線またはコネクタである。
【0038】
以上説明したように、第1実施形態のブレーキシステムでは、第1ECU21に対し、第1センサ11から送信されるセンサ出力信号と、第3センサ13から送信される合成信号が入力される。すなわち、第1ECU21には、第1センサ11と第3センサ13と第4センサ14のセンサ出力信号が入力される。一方、第2ECU22に対し、第2センサ12から送信されるセンサ出力信号と、第4センサ14から送信される合成信号が入力される。すなわち、第2ECU22には、第2センサ12と第3センサ13と第4センサ14のセンサ出力信号が入力される。したがって、第1ECU21と第2ECU22は、3個のセンサのうち1個のセンサが故障した場合に、多数決判定により、その故障したセンサを特定できる。それと共に、第1ECU21と第2ECU22は、故障したセンサを除いた、正常なセンサ出力信号に基づいて、正確なペダル操作量を検出できる。
【0039】
なお、ECU21、22に対して3個のセンサ出力信号が入力された場合に、多数決判定により故障したセンサを特定すると共に、正確なペダル操作量を検出する方法の具体例は、本開示と同一の出願人による日本特許出願番号2021-142749号を参照されたい。
【0040】
また、第1実施形態では、第1ECU21と第2ECU22の両方に対し4個のセンサ11~14のうちいずれかのセンサ出力信号が入力される。そのため、第1ECU21または第2ECU22の一方が故障した場合でも、他方のECUによりブレーキ回路40を駆動制御することが可能である。したがって、このブレーキシステムは、ECU21、22の故障に対し、冗長性を確保できる。
【0041】
このように、第1実施形態のブレーキシステムは、多数決判定による故障したセンサの特定、及び、ECU21、22の故障に対する冗長性の確保といった機能を、4個のセンサ11~14を用いたルーティング方法により構築することが可能である。したがって、このブレーキシステムは、センサ個数の最適化により、製造コストを低減するとともに、ブレーキペダル装置30の体格を小型化することができる。
【0042】
さらに、第1実施形態のブレーキシステムでは、第1ECU21と第2ECU22は、4個のセンサ11~14のセンサ出力信号に関し、第1ECU21と第2ECU22との間の通信を必要としない。したがって、このブレーキシステムは、ECU21、22の制御処理の負荷を低減することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、冗長性の観点から、4個のセンサ11~14のうち少なくとも1つのセンサは磁気センサが採用され、その他のセンサはインダクティブセンサが採用される。これによれば、第1実施形態のブレーキシステムは、4個のセンサ11~14について、磁気センサとインダクティブセンサといった検出原理の異なる複数の非接触センサを採用する構成である。そのため、各々のセンサが苦手とする磁性異物または導体異物の近接により、仮に、1つのセンサの出力信号が異常になったとしても、その他のセンサの出力信号は正常を保つことが可能である。したがって、このブレーキシステムは、センサの同時故障を防止することで、センサの出力信号の冗長性を確保することができる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、4個のセンサ11~14から2個のECU21、22へのセンサ出力信号の伝送方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
第2実施形態において、4個のセンサ11~14から2個のECU21、22へのセンサ出力信号の伝送方法について、図3を参照しつつ説明する。
【0046】
第1センサ11は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、第1センサ11の送信部111から第1配線51を経由して第1ECU21の第1受信部211に送信する。
【0047】
第2センサ12は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、第2センサ12の送信部121から第2配線52を経由して第2ECU22の第1受信部221に送信する。
【0048】
第2実施形態では、第3センサ13と第4センサ14との間の通信機能において、第3センサ13は、センサ出力信号の受信機能を有しており、第4センサ14は、センサ出力信号の送信機能を有している。
【0049】
第4センサ14は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、自身の送信部143から第5配線55を経由して第3センサ13の受信部133に送信する。また、第4センサ14は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を、第4センサ14の送信部141から第4配線54を経由して第2ECU22の第2受信部222に送信する。
【0050】
第3センサ13は、自身の受信部133で第4センサ14からのセンサ出力信号を受信すると、センサ内の集積回路の信号集約機能を用いて、自ら生成したセンサ出力信号と、第4センサ14から受信したセンサ出力信号とを合成した合成信号を生成する。なお、センサ内の集積回路として、例えばASICが用いられる。そして、第3センサ13は、その合成信号を、第3センサ13の送信部131から第3配線53を経由して第1ECU21の第2受信部212に送信する。
【0051】
なお、第3センサ13と第4センサ14との通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、デジタルバス通信などを採用することができる。また、各センサ11~14と各ECU21、22とのとの通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、光通信などを採用することができる。デジタル通信として、SPI、I2C、UART、SENTなどが例示される。
【0052】
以上説明したように、第2実施形態のブレーキシステムでは、第1ECU21に対し、第1センサ11から送信されるセンサ出力信号と、第3センサ13から送信される合成信号が入力される。すなわち、第1ECU21には、第1センサ11と第3センサ13と第4センサ14のセンサ出力信号が入力される。したがって、第1ECU21は、3個のセンサのうち1個のセンサが故障した場合に、多数決判定により、その故障したセンサを特定できる。それと共に、第1ECU21は、故障したセンサを除いた、正常なセンサ出力信号に基づいて、正確なペダル操作量を検出できる。
【0053】
また、第2実施形態では、第1ECU21と第2ECU22に対し4個のセンサ11~14のうち2つ以上のセンサ出力信号が入力される。そのため、第1ECU21または第2ECU22の一方が故障した場合でも、他方のECUによりブレーキ回路40を駆動制御することが可能である。したがって、このブレーキシステムは、ECU21、22の故障に対し、冗長性を確保できる。
【0054】
このように、第2実施形態の構成においても、第1ECU21による多数決判定による故障したセンサの特定、及び、ECU21、22の故障に対する冗長性の確保といった機能を、4個のセンサ11~14を用いたルーティング方法により構築することが可能である。したがって、このブレーキシステムは、センサ個数の最適化により、製造コストを低減するとともに、ブレーキペダル装置30の体格を小型化することができる。
【0055】
さらに、第2実施形態のブレーキシステムでも、第1ECU21と第2ECU22は、4個のセンサ11~14のセンサ出力信号に関し、第1ECU21と第2ECU22との間の通信を必要としない。したがって、このブレーキシステムは、ECU21、22の制御処理の負荷を低減することができる。
【0056】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、ブレーキペダル装置30の一例として、オルガン式のブレーキペダル装置30について説明したが、それに限らず、ブレーキペダル装置30は、例えばペンダント式のブレーキペダル装置であってもよい。ペンダント式のブレーキペダル装置とは、ブレーキペダル31のうち運転者に踏まれる部位が搖動の軸心CLに対して車両搭載時の天地方向における下方に配置されるものである。
【0057】
(2)上記各実施形態では、ブレーキシステムは、2個のECU21、22を備えるものとして説明したが、それに限らず、ブレーキシステムは、3個のECUを備えていてもよい。言い換えれば、ブレーキシステムは、少なくとも2個のECU21、22を備えていればよい。
【0058】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0059】
本発明に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本発明に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 第1センサ
12 第2センサ
13 第3センサ
14 第4センサ
21 第1ECU
22 第2ECU
31 ブレーキペダル
40 ブレーキ回路
図1
図2
図3