(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】相補部分を含む修飾オリゴヌクレオチドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240814BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240814BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2021502052
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020006366
(87)【国際公開番号】W WO2020171092
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2019026868
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019174557
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】萩原 佑介
(72)【発明者】
【氏名】梶本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】小西 美和
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】Bioconjugate Chem., 2014, Vol. 25, pp. 433-441,2014年,Vol. 25,pp. 433-441
【文献】Biochem. J.,2006年,Vol. 398,pp. 135-144
【文献】Mol. Cell,2004年,Vol. 16,pp. 211-221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
11~27塩基長の相補部分を含む修飾オリゴヌクレオチドの製造方法であって、
該方法は、合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片をオリゴヌクレオチドリガーゼの存在下で処理して該修飾オリゴヌクレオチドを生成することを含み、
合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片は、該修飾オリゴヌクレオチドを、下記条件(i)~(v)を満たす断片連結部で分けた場合に得られるオリゴヌクレオチド原料断片に相当する、方法:
(i)断片連結部は、相補部分の各鎖側中のそれぞれに1以上存在し、かつ断片連結部は、該修飾オリゴヌクレオチド中に合計2つ以上存在し;
(ii)該修飾オリゴヌクレオチドを断片連結部で分けた場合に、突出末端が相補部分中に形成され、かつ該突出末端が1~10塩基長であり;
(iii)少なくとも1本のオリゴヌクレオチド原料断片が、修飾ヌクレオチドを含み、
(iv)該合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片のうち4本のオリゴヌクレオチド原料断片が、5~
17塩基長の相補部分を含み、かつ
(v)オリゴヌクレオチド原料断片の相補部分の各鎖側に相当する塩基長の合計が、いずれも11~27塩基長である。
【請求項2】
(ii)における突出末端が、2~6塩基長である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(iv)で規定される4本のオリゴヌクレオチド原料断片の相補部分における突出末端以外の部分が、4~16塩基長である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
オリゴヌクレオチドリガーゼが、RNAリガーゼである、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドリガーゼが、二本鎖RNAリガーゼである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
二本鎖RNAリガーゼが、Rnl2ファミリーまたはRnl5ファミリーのRNAリガーゼである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
修飾オリゴヌクレオチドが、修飾型ヌクレオチド残基を含む、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
修飾型ヌクレオチド残基が、1’、2’、3’、もしくは4’化学修飾型ヌクレオチド残基、5’-または3’-リン酸基修飾型ヌクレオチド残基、架橋型修飾型ヌクレオチド残基、キャリア付加修飾型ヌクレオチド残基、または糖骨格置換型ヌクレオチド残基である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
修飾型ヌクレオチド残基が、
i)1’、2’、3’、もしくは4’部位が、C
1~6アルキルオキシC
1~6アルキレン、-O-C
1~6アルキル、-O-C
6~14アリール、-C-アリール、ハロゲン原子、-O-C
1~6アルキルN-アミドC
1~6アルキレン、-O-C
1~6アルキル-(C
1~6アルキル-)アミノ-C
1~6アルキレン、または-O-アミノC
1~6アルキル(例、-O-アミノプロピル、-O-AP)で置換された、1’、2’、3’、もしくは4’化学修飾型ヌクレオチド残基;
ii)水酸基が、保護基で置換されていてもよい、-O-Ρ(S)(OH)
2、-NH-Ρ(O)(OH)
2、もしくは-NH-Ρ(S)(OH)
2で置換された、5’-もしくは3’-リン酸基修飾型ヌクレオチド残基;
iii)2’部位と4’部位が、2’-O-C
1~6アルキレン-4’、2’-O-エチレン-4’、2’-O-メチル置換メチレン-4’、2’-O-C
1~6アルキレン-O-C
1~6アルキレン-4’、2’-O-N(R)-C
1~6アルキレン-4’(ここで、Rはメチル、水素原子またはベンジルを示す)、2’-N(R)-C(O)-4’、2’-NH-C
1~6アルキレン-4’、もしくは、2’-C
1~6アルキレン-4’に置換された、または、3’部位と5’部位が、3’-C
1~6アルキレン-5’に置換された、架橋型修飾型ヌクレオチド残基;または
iv)ヘキシトール核酸(HNA)残基、シクロヘキセニル核酸(CeNA)残基、もしくはモルフォリノ核酸(PMO)残基
である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
オリゴヌクレオチド原料断片より選ばれる任意の2本のオリゴヌクレオチド原料断片の全モル比が、0.5~2である、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
オリゴヌクレオチド原料断片が、10mM以下の一価カチオン塩濃度下で処理される、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記処理することの前に、オリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を
65℃以上の高温に置きその後クールダウンすることが行われない、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記修飾オリゴヌクレオチド
以外の核酸夾雑物の生成が抑制される、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記修飾オリゴヌクレオチドを精製することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相補部分を含む修飾オリゴヌクレオチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
siRNA、アンチセンス等のオリゴヌクレオチドは、核酸医薬としての有用性が示され、近年、開発が活発化している。オリゴヌクレオチドは、主に合成法にて製造されており、例えば、ホスホロアミダイト法など固相合成にてヌクレオチド残基を1塩基ずつ順次直列的に伸長合成することにより製造することができる。しかしながら、この手法は、オリゴヌクレオチドの鎖長が長くなるにつれて産物の純度および収量が低下したり、製造効率が低いなどの課題を有している。そこで、オリゴヌクレオチドを各短鎖断片として合成し、それらを縮合して目的のオリゴヌクレオチドを得る並列的合成手法が求められている。
【0003】
特許文献1には、目的のオリゴヌクレオチドを分割した断片に相当する複数のオリゴヌクレオチド原料断片を、目的のオリゴヌクレオチドに相補的な鋳型オリゴヌクレオチドとアニールさせ、アニールしたオリゴヌクレオチド原料断片同士を酵素的に縮合させ、得られた目的のオリゴヌクレオチド鎖を鋳型オリゴヌクレオチドから分離することにより、一本鎖オリゴヌクレオチドを製造することが記載されている。
非特許文献1には、オリゴDNA断片とPEG化オリゴDNA断片を、付着性末端においてDNAリガーゼで連結させることによる、オリゴDNAのPEG化が記載されている。しかし、非特許文献1では天然型オリゴDNA断片でしか実施していないため、アニーリング能の低下が示唆される短鎖かつ修飾型塩基を含むオリゴヌクレオチドを原料として用いた、相補部分を含むオリゴヌクレオチドの酵素的縮合が可能であるかどうかは不明である。
非特許文献2および3には、1本のオリゴヌクレオチド鎖とこれに相補的な2本のオリゴヌクレオチド原料断片をアニールさせることにより形成されるニックを、リガーゼで連結させることが記載されている。
非特許文献4には、付着性末端を有する24mer二本鎖オリゴRNAをRNAリガーゼで連結させて、48mer以上の大きさを有する二本鎖RNAを形成させることが記載されている。しかしながら、非特許文献4では、基質は24塩基長、生成物も48塩基長といずれも長いことから、基質のアニーリング能が高い条件でしか実施していないため、アニーリング能が著しく低下することが示唆される短鎖かつ修飾型塩基の導入による酵素の連結活性の低下が予想されるオリゴヌクレオチド基質を用いた場合に2箇所以上の縮合点を有する酵素反応が進行するかは知られていなかった。
非特許文献5には、siRNAを合成的に作成したことが記載されている。
非特許文献6には、RNAリガーゼDraRnlがRnl5ファミリーに含まれることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0023122号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sosic A, Pasqualin M, Pasut G, Gatto B. 2014. Enzymatic formation of PEGylated oligonucleotides. Bioconjug Chem 25:433-441.
【文献】Bullard, D. R., & Bowater, R. P. (2006). Direct comparison of nick-joining activity of the nucleic acid ligases from bacteriophage T4. Biochem. J, 398, 135-144.
【文献】Nandakumar, J., & Shuman, S. (2004). How an RNA Ligase Discriminates RNA versus DNA Damage. Molecular Cell, 16(2), 211-221.
【文献】Nandakumar J, Ho CK, Lima CD, Shuman S. 2004. RNA substrate specificity and structure-guided mutational analysis of bacteriophage T4 RNA ligase 2. J Biol Chem 279:31337-31347.
【文献】Jayaprakash K. Nair, et al. (2014), Multivalent N-Acetylgalactosamine-Conjugated siRNA Localizes in Hepatocytes and Elicits Robust RNAi-Mediated Gene Silencing. J. Am. Chem. Soc., 136, 16958-16961.
【文献】MIHAELA-CARMEN UNCIULEAC and STEWART SHUMAN (2019),RNA 21:824-832
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、siRNAやヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド等の相補部分を含むオリゴヌクレオチドの効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、目的の相補部分を含むオリゴヌクレオチドの両相補部分を分割した断片に相当する4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片をオリゴヌクレオチドリガーゼで処理することにより、二本鎖などの相補部分を含むオリゴヌクレオチドを直接構築することを見出し、固相合成などの直列合成法に比し高い製造効率、高い純度で製造できることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
従来、siRNAなど、比較的短い二本鎖オリゴヌクレオチドは、化学合成が容易かつ簡便であったことから、化学合成により製造されていた。具体的には、構成する2本のオリゴヌクレオチド鎖をそれぞれ化学合成(例、固相合成)し、それらを精製後、両鎖をアニーリングさせることによって製造されていた。そのため、酵素的縮合を用いる方法はさほど報告されておらず、その中でも、4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片から酵素的合成する方法は、28塩基長以上の比較的長鎖の二本鎖オリゴヌクレオチドを製造する方法しか報告されていなかった。短いオリゴヌクレオチドは、その製造に用いられるオリゴヌクレオチド原料断片の塩基長も自ずと短くなるが、短い塩基長のオリゴヌクレオチド原料断片は、アニーリング能も低下すると考えられる。構成するヌクレオチドが修飾されているとさらにアニーリング能が低下してしまうことも考えられた。したがって、リガーゼを用いる酵素的なオリゴヌクレオチド合成手法では、オリゴヌクレオチド原料断片のアニーリング能が重要と考えられていたことから、リガーゼを用いて4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片とした28塩基長未満などのより短鎖のオリゴヌクレオチドを製造する方法は試みられていなかった。
しかし、本発明者らは、鋭意検討した結果、予想に反して、リガーゼおよび4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片を用いた場合、アニーリング能に影響されることなく、28塩基長未満の二本鎖オリゴヌクレオチドを首尾よく製造できることを見出した。また、短鎖のオリゴヌクレオチドの場合、製造されるオリゴヌクレオチドの純度も向上することなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕11~27塩基長の相補部分を含む修飾オリゴヌクレオチドの製造方法であって、
該方法は、合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片をオリゴヌクレオチドリガーゼの存在下で処理することを含み、
該合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片は、該修飾オリゴヌクレオチドを、下記条件(i)~(v)を満たす断片連結部で分けた場合に得られるオリゴヌクレオチド原料断片に相当する、方法:
(i)断片連結部は、相補部分の各鎖側中のそれぞれに1以上存在し、かつ断片連結部は、該修飾オリゴヌクレオチド中に合計2つ以上存在し;
(ii)該修飾オリゴヌクレオチドを断片連結部で分けた場合に、突出末端が相補部分中に形成され、かつ該突出末端が1~10塩基長であり;
(iii)少なくとも1本のオリゴヌクレオチド原料断片が、修飾ヌクレオチドを含み、
(iv)該合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片のうち4本のオリゴヌクレオチド原料断片が、5~25塩基長の相補部分を含み、かつ
(v)オリゴヌクレオチド原料断片の相補部分の各鎖側に相当する塩基長の合計が、いずれも11~27塩基長である。
〔2〕(ii)における突出末端が、2~6塩基長である、〔1〕の方法。
〔3〕(iv)で規定される4本のオリゴヌクレオチド原料断片の相補部分における突出末端以外の部分が、4~16塩基長である、〔1〕または〔2〕の方法。
〔4〕オリゴヌクレオチドリガーゼが、RNAリガーゼである、〔1〕~〔3〕のいずれかの方法。
〔5〕オリゴヌクレオチドリガーゼが、二本鎖RNAリガーゼである、〔4〕の方法。
〔6〕二本鎖RNAリガーゼが、Rnl2ファミリーまたはRnl5ファミリーのRNAリガーゼである、〔5〕の方法。
〔7〕修飾オリゴヌクレオチドが、修飾型ヌクレオチド残基を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかの方法。
〔8〕修飾型ヌクレオチド残基が、1’、2’、3’、もしくは4’化学修飾型ヌクレオチド残基、5’-または3’-リン酸基修飾型ヌクレオチド残基、架橋型修飾型ヌクレオチド残基、キャリア付加修飾型ヌクレオチド残基、または糖骨格置換型ヌクレオチド残基である、〔7〕の方法。
〔9〕修飾型ヌクレオチド残基が、
i)1’、2’、3’、もしくは4’部位が、C1~6アルキルオキシC1~6アルキレン、-O-C1~6アルキル、-O-C6~14アリール、-C-アリール、ハロゲン原子、-O-C1~6アルキルN-アミドC1~6アルキレン、-O-C1~6アルキル-(C1~6アルキル-)アミノ-C1~6アルキレン、または-O-アミノC1~6アルキル(例、-O-アミノプロピル、-O-AP)で置換された、1’、2’、3’、もしくは4’化学修飾型ヌクレオチド残基;
ii)水酸基が、保護基で置換されていてもよい、-O-Ρ(S)(OH)2、-NH-Ρ(O)(OH)2、もしくは-NH-Ρ(S)(OH)2で置換された、5’-もしくは3’-リン酸基修飾型ヌクレオチド残基;
iii)2’部位と4’部位が、2’-O-C1~6アルキレン-4’、2’-O-エチレン-4’、2’-O-メチル置換メチレン-4’、2’-O-C1~6アルキレン-O-C1~6アルキレン-4’、2’-O-N(R)-C1~6アルキレン-4’(ここで、Rはメチル、水素原子またはベンジルを示す)、2’-N(R)-C(O)-4’、2’-NH-C1~6アルキレン-4’、もしくは、2’-C1~6アルキレン-4’に置換された、または、3’部位と5’部位が、3’-C1~6アルキレン-5’に置換された、架橋型修飾型ヌクレオチド残基;または
iv)ヘキシトール核酸(HNA)残基、シクロヘキセニル核酸(CeNA)残基、もしくはモルフォリノ核酸(PMO)残基
である、〔8〕の方法。
〔10〕合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片より選ばれる任意の2本のオリゴヌクレオチド原料断片の全モル比が、0.5~2である、〔1〕~〔9〕のいずれかの方法。
〔11〕オリゴヌクレオチド原料断片が、10mM以下の一価カチオン塩濃度下で処理される、〔1〕~〔10〕のいずれかの方法。
〔12〕前記処理することの前に、オリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を高温に置きその後クールダウンすることが行われない、〔1〕~〔11〕のいずれかの方法。
〔13〕前記修飾オリゴヌクレオチドの不純物の生成が抑制される、〔1〕~〔12〕のいずれかの方法。
〔14〕前記修飾オリゴヌクレオチドを精製することをさらに含む、〔1〕~〔13〕のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、siRNAやヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド等の修飾オリゴヌクレオチドを効率的に高純度で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の機構の一例を示す模式図である。
【
図2-1】
図2-1~
図2-6は、実施例1において、同じsiRNAを生成するための6パターン(組合せ番号1~6)の4断片の短鎖天然型RNAの組合せをT4 RNAリガーゼ2により反応させた場合のT4 RNAリガーゼ2濃度に応じたsiRNAの生成量を示すグラフである。
【
図3-1】
図3-1~
図3-4は、実施例2において、4断片の短鎖天然型RNAの組合せをT4 RNAリガーゼ2により反応させた場合の各反応温度でのsiRNAの生成量の経時変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例3において、各T4 RNAリガーゼ2濃度における修飾型RNAから生成したsiRNAおよびオリゴヌクレオチド標品のHPLC分析による確認を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例5における、酵素なし、およびDeinococcus radiodurans由来RNAリガーゼ(DraRnl)存在下での反応生成物、ならびに、RNA標品(センス鎖およびアンチセンス鎖)のHPLCによる分析チャートを示す図である。
【
図6】
図6は、実施例6における、反応生成物の模式図、ならびに、酵素なし、およびT4 RNAリガーゼ2存在下での反応生成物のHPLCによる分析チャートを示す図である。
【
図7】
図7は、4本のオリゴヌクレオチド原料断片(ミスマッチ塩基対を含むオリゴヌクレオチド原料断片を含む)と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図8】
図8は、5本または6本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図9】
図9は、5本又は6本のオリゴヌクレオチド原料断片を用いた反応における二本鎖修飾オリゴヌクレオチドの生成について、HPLC分析による確認を示す図である。
【
図10】
図10は、5’末端にDMTr基が付加されたオリゴヌクレオチド原料断片を含む4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図11】
図11は、5’末端にキャリアが付加されたオリゴヌクレオチド原料断片を含む4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図12】
図12は、ヌクレオチド残基の連結部のリン酸基をチオリン酸基に置き換えた4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図13】
図13は、4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成したヘアピン型修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図14】
図14は、オリゴヌクレオチド原料断片における突出末端の塩基長による反応性への影響の比較のために用いられた、4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図15】
図15は、生成物の塩基長による反応性への影響の比較のために用いられた、4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図16】
図16は、高濃度基質での反応初速度の検討のために用いられた、4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【
図17】
図17は、生成物の塩基長の比較のために用いられた、4本のオリゴヌクレオチド原料断片と、それから生成した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の概要)
以下、本発明を説明する。本発明の説明を容易にするため、本発明の機構の一例を
図1の模式図に示す。ただし、この模式図は、本発明を説明するための例示にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0013】
本発明は、11~27塩基長の相補部分を含む修飾オリゴヌクレオチド(以下、「目的の修飾オリゴヌクレオチド」等と呼ぶこともある)の製造方法を提供する。本発明の方法は、原料である合計4以上のオリゴヌクレオチド原料断片を、オリゴヌクレオチドリガーゼの存在下で処理して、目的の修飾オリゴヌクレオチドを生成することを含む。以下、本発明の方法で製造される目的の修飾オリゴヌクレオチド、本発明の方法に用いるオリゴヌクレオチド原料断片およびオリゴヌクレオチドリガーゼ、ならびに、本発明の方法を行なうための処理の各条件等の詳細を説明する。
【0014】
(目的の修飾オリゴヌクレオチド)
本発明の方法で製造される目的の修飾オリゴヌクレオチドは、11~27塩基長の相補部分を含む修飾オリゴヌクレオチドである。
【0015】
「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチド残基をモノマー単位として含むオリゴマーをいう。「オリゴヌクレオチド」としては、例えば、オリゴRNA、オリゴDNA、およびRNA-DNA混成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0016】
オリゴヌクレオチドは、「天然型オリゴヌクレオチド」および「修飾オリゴヌクレオチド」に分類することができる。「天然型オリゴヌクレオチド」とは、細胞に含まれるポリヌクレオチド(RNAおよびDNA)を構成するヌクレオチド残基(アデノシン(A)、グアノシン(G)、シチジン(C)、ウリジン(U)、デオキシアデノシン(dA)、デオキシグアノシン(dG)、デオキシシチジン(dC)、チミジン(dT)。以下、「天然型ヌクレオチド残基」と呼ぶ。)から構成されるオリゴヌクレオチドをいう。「修飾オリゴヌクレオチド」とは、「天然型オリゴヌクレオチド」以外のオリゴヌクレオチドをいい、天然型ヌクレオチド残基以外の構成要素(以下、「修飾残基」と呼ぶ。)を含むオリゴヌクレオチドである。修飾残基としては、例えば、修飾型ヌクレオチド残基、アミノ酸残基、リンカーが挙げられる。修飾型ヌクレオチド残基としては、例えば、後述する修飾を含むヌクレオチド残基が挙げられる。アミノ酸には、アミノ酸の誘導体を含む。アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、アルギニン、およびこれらの誘導体が挙げられる。アミノ酸の誘導体とは、アミノ酸中の任意の原子または基が、別の原子または基で置換されたアミノ酸をいい、例えば、アミノ基中の水素原子、カルボキシル基中の水素原子、酸素原子、水酸基、側鎖中の任意の原子もしくは基、または骨格炭素原子(例、α-、β-、γ-、δ-炭素原子)に結合した水素原子が、別の原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子)または基(例、後述する化学修飾における置換後の置換基)で置換されたアミノ酸が挙げられる。
【0017】
「修飾型ヌクレオチド残基」における「修飾」には、ヌクレオチド残基の糖部分(リボースまたはデオキシリボース)の置換基の置換、ヌクレオチド残基の糖部分自体(糖骨格)の置換、およびヌクレオチド残基の核酸塩基部分の修飾(例、核酸塩基部分の置換基の置換)が含まれる。
【0018】
「ヌクレオチド残基の糖部分の置換基の置換」としては、例えば、1’-H、2’-OH(リボースのみ)、2’-H、3’-OH、3’-NH2、3’-H、3’-リン酸基、4’-H、5’-リン酸基、またはこれらの組合せの置換が挙げられる。ここで、「リン酸基」は、-O-P(O)(OH)2だけでなく、酸素原子が硫黄原子またはΝHに置き換わった基(例えば、-O-Ρ(S)(OH)2、-NH-Ρ(O)(OH)2、-NH-Ρ(S)(OH)2)も包含する。また、リン酸基中の水酸基(-OH)がOR*(式中、R*は、リン酸基の保護基などの有機基を示す)に置き換わった基(例えば、保護されたリン酸基)も、上記「リン酸基」に包含される。このような置換としては、例えば、1’、2’、3’、もしくは4’-化学修飾(1’、2’、3’、または4’部位における他の置換基への置換)、5’-または3’-リン酸基修飾(5’-または3’-リン酸基の他の置換基への置換)、架橋型修飾(1’、2’、3’、または4’部位の2つ同士を架橋する置換)、およびキャリア付加修飾(1’、2’、3’、4’、または5’部位におけるキャリアへの置換)が挙げられる。
【0019】
化学修飾は、例えば、オリゴヌクレオチドの分解耐性を向上させるために導入されてもよい。化学修飾における置換後の置換基としては、例えば、C1~6アルキルオキシC1~6アルキレン(例、メトキシエチル:MOE)、-O-C1~6アルキル(例、-O-Me)、-O-C6~14アリール(例、-O-フェニル)、-C-アリール(例、-C-フェニル)、ハロゲン原子(例、フッ素原子)、-O-C1~6アルキルN-アミドC1~6アルキレン(例、-O-N-メチルアセトアミド、-O-NMA)、-O-C1~6アルキル-(C1~6アルキル-)アミノ-C1~6アルキレン(例、-O-ジメチルアミノエトキシエチル、-O-DMAEOE)、および-O-アミノC1~6アルキル(例、-O-アミノプロピル、-O-AP)が挙げられる。化学修飾は、2’-化学修飾(2’部位の置換)、3’-化学修飾(3’部位の置換)が好ましく、中でも、2’-化学修飾(2’部位の置換)がより好ましい。2’-化学修飾における置換後の置換基としては、例えば、2’-C1~6アルキルオキシC1~6アルキレン(例、2’-メトキシエチル)、2’-O-C1~6アルキル(例、2’-O-Me)、2’-O-C6~14アリール(例、2’-O-フェニル)、2’-C-アリール(例、2’-C-フェニル)、2’-ハロゲン原子(例、2’-F)、2’-O-C1~6アルキルN-アミドC1~6アルキレン(例、2’-O-N-メチルアセトアミド、2’-O-NMA)、2’-O-C1~6アルキル-(C1~6アルキル-)アミノ-C1~6アルキレン(例、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル、2’-O-DMAEOE)、および2’-O-アミノC1~6アルキル(例、2’-O-アミノプロピル、2’-O-AP)が挙げられる。3’-化学修飾における置換後の置換基としては、例えば、3’-O-P(O)(OH)2、3’-O-Ρ(S)(OH)2、3’-NH-Ρ(O)(OH)2、3’-NH-Ρ(S)(OH)2)、および、リン酸基中の水酸基(-OH)がOR*(式中、R*は、後述するリン酸基の保護基などの有機基を示す)に置き換わった基が挙げられる。
【0020】
5’-または3’-リン酸基修飾は、例えば、オリゴヌクレオチドの分解耐性を向上させるために導入されてもよい。5’-または3’-リン酸基修飾としては、例えば、リン酸基(-O-P(O)(OH)2)から、リン酸基において酸素原子が硫黄原子またはΝHに置き換わった基への置換が挙げられる。このような基としては、例えば、-O-Ρ(S)(OH)2(チオリン酸基:ホスホロチオエート型修飾)、-NH-Ρ(O)(OH)2、-NH-Ρ(S)(OH)2が挙げられる。また、5’-または3’-リン酸基修飾には、リン酸基中の水酸基(-OH)がOR*(式中、R*は、リン酸基の保護基などの有機基、を示す)に置き換わった基(例えば、保護されたリン酸基)も含まれる。リン酸基の保護基としては、例えば、トリチル(Tr)基、p-メトキシフェニルジフェニルメチル(MMTr)基、ジ(p-メトキシフェニル)フェニルメチル(DMTr)基、シアノエチル基(CN-C2H4-)が挙げられる。
【0021】
架橋型修飾は、例えば、ヌクレオチド残基の立体構造安定性を向上させるために導入されてもよい。架橋型修飾としては、例えば、2’4’-架橋型修飾(2’-OHと4’-Hを架橋する置換)、3’5’-架橋型修飾(3’-Hと5’-Hを架橋する置換)等が挙げられる。2’4’-架橋型修飾としては、例えば、2’-OHと4’-Hの2’-O-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-O-メチレン-4’(ロック核酸:LNA)、2’-O-エチレン-4’(エチレン架橋核酸:ENA)、2’-O-メチル置換メチレン-4’への置換(コンストレインドエチル架橋化核酸:BNAの一種(cEt-BNA))、2’-OHと4’-Hの2’-O-C1~6アルキレン-O-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-O-メチレン-O-メチレン-4’(架橋化核酸:BNAの一種(BNACOC))、2’-OHと4’-Hの2’-O-N(R)-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-O-N(R)-メチレン-4’(架橋化核酸:BNAの一種(BNANC)、ここで、Rはメチル、水素原子またはベンジルを示す)、2’-NH2と4’-Hの2’-N(R)-C(O)-4’への置換(例、2’-N(メチル)-C(O)-4’(アミド架橋核酸:AmNA))、2’-NH2と4’-Hの2’-NH-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-NH-メチレン-4’)、2’-Hと4’-Hの2’-C1~6アルキレン-4’への置換(例、2’-メチル置換エチレン-4’)が挙げられる。また、3’5’-架橋型修飾としては、例えば、3’-Hと5’-Hの3’ -C1~6アルキレン-5’への置換(例、3’-エチレン-5’(ビシクロ核酸:Bc核酸)、Bc核酸の一種:tc核酸等))が挙げられる。
【0022】
キャリア付加修飾におけるキャリアは、目的の修飾オリゴヌクレオチドに安定性、標的指向性、薬効等の性能を向上または付与するためのキャリアであってもよい。このようなキャリアは、使用目的に応じて、公知のキャリアから適宜選択することができる。キャリアとしては、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ペプチド、リン酸、コレステロール、トコフェロール、脂肪鎖、葉酸が挙げられる。キャリア付加修飾における付加部位は、目的の修飾オリゴヌクレオチドの末端に相当する3’または5’部位が好ましい。
【0023】
「ヌクレオチド残基の糖部分自体の置換」を含む修飾型ヌクレオチド残基(糖骨格置換型ヌクレオチド残基)としては、例えば、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)等のオリゴヌクレオチド中の5員環の糖から6員環の擬似糖への置換を含むヌクレオチド残基が挙げられる。また、「ヌクレオチド残基の糖部分自体の置換」を含む修飾型ヌクレオチド残基としてはさらに、生体内の酵素(例、RNase等のヌクレアーゼ)により分解を受けずかつ免疫応答を誘導しないモルフォリノ環構造を持つヌクレオチド類似人工化合物であるモルフォリノ核酸(PMO)残基も挙げられる。
【0024】
「ヌクレオチド残基の核酸塩基部分の修飾」としては、例えば、ヌクレオチド残基の核酸塩基部分がアルキル置換したもの(例えば、シトシル基の5位にメチル基が置換したもの)が挙げられる。
【0025】
「相補部分を含むオリゴヌクレオチド」とは、相補的ヌクレオチド配列同士が対合した構造を含むオリゴヌクレオチドをいう。「相補部分を含むオリゴヌクレオチド」としては、例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖様構造含有一本鎖オリゴヌクレオチド(例、ヘアピン型オリゴヌクレオチド、ダンベル型オリゴヌクレオチド等のループ型オリゴヌクレオチド)が挙げられる。二本鎖オリゴヌクレオチドは、各鎖が上述したオリゴヌクレオチドである二本鎖オリゴヌクレオチドであってもよく、例えば、二本鎖オリゴRNA、二本鎖オリゴDNA、オリゴRNAおよびオリゴDNAからなるヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド、オリゴRNAおよびRNA-DNA混成オリゴヌクレオチドからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、オリゴDNAおよびRNA-DNA混成オリゴヌクレオチドからなる二本鎖オリゴヌクレオチド、およびRNA-DNA混成オリゴヌクレオチド同士からなる二本鎖オリゴヌクレオチドが挙げられる。二本鎖オリゴヌクレオチドとしては、例えば、siRNAやヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチドが挙げられる。相補部分を含むオリゴヌクレオチドにおいて、相補的ヌクレオチド配列同士が対合した部分を「相補部分」と呼ぶ。用語「相補部分」とは、相補部分を含むオリゴヌクレオチド中の相補部分のみならず、相補部分を含むオリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチド原料断片に分けた場合における、相補部分を含むオリゴヌクレオチド中の相補部分に相当するオリゴヌクレオチド原料断片中の部分も指す。便宜上、相補部分における任意の片方の相補的ヌクレオチド配列を「センス鎖」と呼び、他方の相補的ヌクレオチド配列を「アンチセンス鎖」と呼ぶことがある。本発明において、用語「センス」および「アンチセンス」は、相補部分の任意の一方および他方を指す便宜上の呼称にすぎず、生物学的意義(特に、RNAiにおける意義)を意図するものではない。相補部分を含むオリゴヌクレオチドは、ループ部分を含んでも含まなくてもよい。「ループ部分」とは、相補部分のセンス側とアンチセンス側とを同一末端側で(例えば、5’末端と3’末端とを)連結するリンカーをいう。相補部分を含むオリゴヌクレオチドは、特に、転写後遺伝子サイレンシング(例、RNA干渉(RNAi))作用のために用いられる。
【0026】
目的の修飾オリゴヌクレオチドは、上述した修飾残基を相補部分に含む。目的の修飾オリゴヌクレオチドとしては、例えば、修飾型ヌクレオチド残基を含む二本鎖オリゴヌクレオチドまたはループ型オリゴヌクレオチド(例、相補部分に修飾型ヌクレオチド残基を含む二本鎖オリゴヌクレオチドまたはループ型オリゴヌクレオチド)、ループ部分に修飾型ヌクレオチド残基またはヌクレオチド残基以外の残基(例、アミノ酸残基やリンカー等)を含むループ型オリゴヌクレオチドが挙げられる(例、国際公開第2012/005368号)。目的の修飾オリゴヌクレオチドにおいて、一部のヌクレオチド残基が修飾型ヌクレオチド残基であってもよく、全てのヌクレオチド残基が修飾型ヌクレオチド残基であってもよいが、「修飾型ヌクレオチド残基」がモルフォリノ核酸(PMO)残基の場合には、目的の修飾オリゴヌクレオチドにおいて、一部のヌクレオチド残基がモルフォリノ核酸(PMO)残基であるのが好ましい。また、目的の修飾オリゴヌクレオチドには、その配列の両端に修飾型ヌクレオチド残基を有し、その配列の中央部にRNaseの認識を受けるギャップ領域を有するオリゴヌクレオチドであるギャップマーが含まれ、さらに、その配列中に修飾型ヌクレオチド残基が混在しているオリゴヌクレオチドであるミックスマー、その配列中の全てのヌクレオチド残基が修飾型ヌクレオチド残基であるオリゴヌクレオチドである全修飾型オリゴヌクレオチド等のRNase活性を誘導しないオリゴヌクレオチドも含まれる。
【0027】
本発明では、目的の修飾オリゴヌクレオチド中の相補部分は、11~27塩基長(例、12~27塩基長、15~27塩基長、または18~27塩基長)である。例えば、目的の修飾オリゴヌクレオチドは、相補部分のみからなる二本鎖修飾オリゴヌクレオチドである場合、11~27塩基長であってもよい。あるいは、目的の修飾オリゴヌクレオチドは、相補部分に加えて非相補部分を有していてもよい。この場合、非相補部分は、1~16塩基長、例えば1~10塩基長、好ましくは1~5塩基長、より好ましくは1、2または3塩基長であってもよい。11~27塩基長の相補部分に加えて非相補部分を有する目的の修飾オリゴヌクレオチドにおいて、11~27塩基長の相補部分は、連続形態であってもよいが、非相補部分としてのミスマッチ塩基対により分断された非連続形態であってもよい。
【0028】
目的の修飾オリゴヌクレオチドの合計残基数は、目的の修飾オリゴヌクレオチドの機能、本発明の方法における各条件から適宜選択してもよい。目的の修飾オリゴヌクレオチドの合計残基数は、例えば、24~74であってもよい。
【0029】
(オリゴヌクレオチド原料断片)
本発明の方法で原料として用いられる合計4以上のオリゴヌクレオチド原料断片は、目的の修飾オリゴヌクレオチドを、下記条件(i)~(v)を満たす断片連結部(「切断部位」とも呼ぶ)で分けた場合に得られるオリゴヌクレオチド原料断片に相当するように設計することができる:
(i)断片連結部は、相補部分の各鎖側中のそれぞれに1以上存在し、かつ断片連結部は、該修飾オリゴヌクレオチド中に合計2つ以上存在し;
(ii)該修飾オリゴヌクレオチドを断片連結部で分けた場合に、突出末端(「付着性末端」とも呼ぶ)が相補部分中に形成され、かつ該突出末端が1~10塩基長であり;
(iii)少なくとも1本のオリゴヌクレオチド原料断片が、修飾ヌクレオチドを含み、
(iv)該合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片のうち4本のオリゴヌクレオチド原料断片が、5~25塩基長の相補部分を含み、かつ
(v)オリゴヌクレオチド原料断片の相補部分の各鎖側に相当する塩基長の合計が、いずれも11~27塩基長である。
【0030】
オリゴヌクレオチド原料断片の数は、4本以上であり、4~6本(4、5、6本)が好ましい。オリゴヌクレオチド原料断片の数は、目的の修飾オリゴヌクレオチド(主に2本鎖核酸)を構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖に主に対応する数の観点から特徴付けることもできる。上記条件(i)より、このようなセンス鎖及びアンチセンス鎖に主に対応するオリゴヌクレオチド原料断片の数は、それぞれ、2本以上であることが理解される。このようなセンス鎖及びアンチセンス鎖に対応するオリゴヌクレオチド原料断片の数は、それぞれ、3断片または4断片であってもよく、2断片又は3断片が好ましい。上記条件(ii)における突出末端は、5’突出末端または3’突出末端のいずれであってもよい。上記条件(iv)における「相補部分」とは、目的の修飾オリゴヌクレオチド中の相補部分に相当するオリゴヌクレオチド原料断片中の部分を指す。本発明において、用語「断片連結部」と「切断部位」は同じ意味を有する。「断片連結部」(「切断部位」)は、オリゴヌクレオチド原料断片の組合せを設計するために便宜上設定される部位を意味し、本発明の方法において実際に切断される部位を意味しない。上記(iv)における4本のオリゴヌクレオチド原料断片は、好ましくは5~25塩基長、より好ましくは5~20塩基長、さらにより好ましくは5~17塩基長の相補部分を目的の修飾オリゴヌクレオチドが含むように設計されたものであってもよい。
【0031】
上記条件(iv)における「相補部分」の塩基長は、対合を形成することができる塩基長であればよく、1塩基長以上であればよい。また、オリゴヌクレオチド合成において塩基長が長くなるにつれて産物の純度、収量、製造効率が低下し得るため、全オリゴヌクレオチド原料断片のうち4本のオリゴヌクレオチド原料断片は、相補部分が17塩基長以下となるように設計されるのが好ましい。相補部分を構成する2本の鎖が、5~25塩基長(例、5~22塩基長、5~20塩基長、5~17塩基長、8~25塩基長、8~22塩基長、8~20塩基長、8~17塩基長)であることが好ましい。
【0032】
突出末端は、例えば1~10塩基長であり、好ましくは1~8塩基長であり、より好ましくは1~6塩基長であり、さらにより好ましくは2~6塩基長、3~6塩基長または4~6塩基長である。
【0033】
上記条件(iv)における「相補部分」の塩基長の数値と、突出末端の塩基長の数値は、上述した範囲を満たしかつ互いに整合する値が設定される。例えば、突出末端が5塩基長である場合、相補部分は、突出末端を形成するために6~25塩基長であってもよく、例えば、突出末端が6塩基長である場合、相補部分は、突出末端を形成するために7~25塩基長であってもよい。
【0034】
上記条件(iv)で規定される4本のオリゴヌクレオチド原料断片の「相補部分」における突出末端以外の部分は、4~24塩基長、4~21塩基長、4~19塩基長、または4~16塩基長であることが好ましい。
【0035】
特定の実施形態では、上記条件(iv)で規定される4本のオリゴヌクレオチド原料断片は、それぞれ、5塩基長以上、好ましくは6塩基長以上、より好ましくは7塩基長以上、さらにより好ましくは8塩基長以上、特に好ましくは9塩基長以上であってもよい。このような4本のオリゴヌクレオチド原料断片はまた、19塩基長以下、好ましくは18塩基長以下、より好ましくは17塩基長以下、さらにより好ましくは16塩基長以下、特に好ましくは15塩基長以下であってもよい。このような4本のオリゴヌクレオチド原料断片はまた、5~19塩基長、好ましくは6~18塩基長、より好ましくは7~17塩基長、さらにより好ましくは8~16塩基長、特に好ましくは9~15塩基長であってもよい。
【0036】
目的の修飾オリゴヌクレオチドの5’末端に相当するオリゴヌクレオチド原料断片の5’末端は、5’-リン酸基のままであってもよく、5’-OHに置換されていてもよく、5’-リン酸基修飾が導入されていてもよく、あるいは目的の修飾オリゴヌクレオチドの5’末端と同じ構造を有していてもよい。5’-リン酸基修飾としては、例えば上述のものが挙げられる。それ以外のオリゴヌクレオチド原料断片の5’末端は、オリゴヌクレオチドリガーゼによる連結反応の観点から、5’-リン酸基のままであることが好ましい。目的の修飾オリゴヌクレオチドの3’末端に相当するオリゴヌクレオチド原料断片の3’末端は、3’-OHのままであってもよく、3’-リン酸基修飾が導入されていてもよく、あるいは目的の修飾オリゴヌクレオチドの3’末端と同じ構造を有していてもよい。3’-リン酸基修飾としては、例えば上述のものが挙げられる。それ以外のオリゴヌクレオチド原料断片の3’末端は、オリゴヌクレオチドリガーゼによる連結反応の観点から、3’-OHのままであることが好ましい。
【0037】
オリゴヌクレオチド原料断片は、遊離の形態であっても、複合体化されていても、固定化されていてもよい。
【0038】
オリゴヌクレオチド原料断片は、公知の化学合成法または酵素的合成法で製造されてもよい。公知の化学合成法としては、固相合成法や液相合成法、例えば、国際公開第2012/157723号、国際公開第2005/070859号に記載の方法などが挙げられる。
【0039】
目的の修飾オリゴヌクレオチドへの機能性部分の付加が所望される場合、オリゴヌクレオチド原料断片は、その対応部分において機能性部分が付加されていてもよい。
【0040】
(リガーゼ処理)
オリゴヌクレオチドリガーゼは、オリゴヌクレオチド原料断片同士を連結させる酵素である。本発明の方法において、オリゴヌクレオチドリガーゼの触媒作用により、オリゴヌクレオチド原料断片同士が「切断部位」(「連結部位」とも呼ぶ)において連結されて、目的の修飾オリゴヌクレオチドが生成される。オリゴヌクレオチドリガーゼとしては、例えば、RNAリガーゼおよびDNAリガーゼが挙げられる。RNAリガーゼは、一本鎖RNAリガーゼまたは二本鎖RNAリガーゼのいずれであってもよく、二本鎖RNAリガーゼが好ましい。二本鎖RNAリガーゼとしては、例えばRnl2ファミリーのRNAリガーゼ(「RNAリガーゼ2」と呼ぶこともある)、Rnl5ファミリーのRNAリガーゼが挙げられる。RNAリガーゼとしては、本発明の目的を達成する限りにおいて如何なる生物種またはウイルス種に由来するRNAリガーゼを用いてもよく、例えば、T4ファージ由来RNAリガーゼ(T4RNAリガーゼ1、T4RNAリガーゼ2)を用いてもよい。DNAリガーゼとしては、本発明の目的を達成する限りにおいて如何なる生物種またはウイルス種に由来するDNAリガーゼを用いてもよく、例えば、T4ファージ由来DNAリガーゼを用いてもよい。
【0041】
オリゴヌクレオチドリガーゼの存在下での処理(以下、「リガーゼ処理」と呼ぶ)は、オリゴヌクレオチドリガーゼの触媒作用によりオリゴヌクレオチド原料断片を連結させる反応である。リガーゼ処理の操作は、オリゴヌクレオチド原料断片とオリゴヌクレオチドリガーゼを混合することである。リガーゼ処理においては、全てのオリゴヌクレオチド原料断片とオリゴヌクレオチドリガーゼを混合して、連結反応を一段階で行なってもよい。また、リガーゼ処理においては、多段階連結反応として、一部のオリゴヌクレオチド原料断片とオリゴヌクレオチドリガーゼを混合して連結反応を行なった後で残りのオリゴヌクレオチド原料断片と反応物を混合して次なる連結反応を行なってもよい。混合は、オリゴヌクレオチドリガーゼをオリゴヌクレオチド原料断片に添加すること、オリゴヌクレオチド原料断片をオリゴヌクレオチドリガーゼを含む系に添加すること、またはオリゴヌクレオチド原料断片およびオリゴヌクレオチドリガーゼを反応のための系に添加することであってもよい。
【0042】
リガーゼ処理を行う系としては、水溶液を用いることができる。水溶液としては、緩衝液が好ましい。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、炭酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液が挙げられる。pHは、例えば約5~9であってもよい。例えば、リガーゼ処理におけるオリゴヌクレオチド原料断片の濃度が高い場合、pHは、7.5~9.0(例えば、8.0~8.5)であってもよい。
【0043】
リガーゼ処理における各オリゴヌクレオチド原料断片の濃度は、オリゴヌクレオチド原料断片が溶解し、かつ目的の修飾オリゴヌクレオチドを生成するために十分な濃度であればよい。各オリゴヌクレオチド原料断片の濃度は、例えば1μM以上、10μM以上、50μM以上、100μM以上、300μM以上、500μM以上または1000μM以上であってもよい。各オリゴヌクレオチド原料断片の濃度はまた、例えば1M、100mM、または10mM以下であってもよい。目的の修飾オリゴヌクレオチドの効率的な大量生産が特に所望される場合には、上記濃度のうち100μM以上の濃度および上記pH範囲のうち7.5~9.0のpH範囲で各オリゴヌクレオチド原料断片を用いることが好ましい。
【0044】
リガーゼ処理における全オリゴヌクレオチド原料断片のモル数は、未反応のオリゴヌクレオチド原料断片量の低減により製造効率を向上させる観点から、ほぼ等量であることが好ましい。全オリゴヌクレオチド原料断片のモル数がほぼ等量であるためには、合計4本以上のオリゴヌクレオチド原料断片より選ばれる任意の2本のオリゴヌクレオチド原料断片の全モル比が、例えば0.5~2、好ましくは1/1.8~1.8、より好ましくは1/1.5~1.5、さらにより好ましくは1/1.2~1.2、特に好ましくは1/1.1~1.1の範囲内であってもよい。
【0045】
リガーゼ処理におけるオリゴヌクレオチドリガーゼの濃度は、目的の修飾オリゴヌクレオチドを生成するために十分な濃度であればよい。オリゴヌクレオチドリガーゼの濃度は、例えば0.01U/μL以上、好ましくは0.02U/μL以上、より好ましくは0.03U/μL以上、さらにより好ましくは0.04U/μL以上であってもよい。オリゴヌクレオチドリガーゼの濃度は、例えば1U/μL以下、好ましくは0.5U/μL以下、より好ましくは0.2U/μL以下、さらにより好ましくは0.1U/μL以下であってもよい。より具体的には、オリゴヌクレオチドリガーゼの濃度は、例えば0.01~1U/μL、好ましくは0.02~0.5U/μL、より好ましくは0.03~0.2U/μL、さらにより好ましくは0.04~0.1U/μLであってもよい。
【0046】
リガーゼ処理を行う系は、オリゴヌクレオチドリガーゼの補因子を含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドリガーゼの補因子としては、例えば、ATP、二価金属塩(例、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩)が挙げられる。処理を行う系は、オリゴヌクレオチドリガーゼの安定化剤を含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドリガーゼの安定化剤としては、例えば、酸化防止剤(例、ジチオスレイトール、メルカプトエタノール等の還元剤)が挙げられる。リガーゼ処理を行う系は、酵素の安定保持および反応速度向上のため、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤(例、Triton X-100等のTritonシリーズの界面活性剤)、およびイオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤)が挙げられる。また、リガーゼ処理を行う系は、反応速度向上のため、ポリエチレングリコールを含んでいてもよい。
【0047】
リガーゼ処理を行う系は、低濃度の一価カチオン塩濃度を有するか、または一価カチオン塩を実質的に含まなくてもよい。処理を行う系の一価カチオン塩濃度は、例えば10mM以下、好ましくは1mM以下、より好ましくは0.1mM以下、さらにより好ましくは0.01mM以下であってもよい。特に好ましくは、処理を行う系は、一価カチオン塩を実質的に含まなくてよい。一価カチオン塩としては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン等の一価カチオンと、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のアニオンとの塩が挙げられる。
【0048】
リガーゼ処理における温度は、オリゴヌクレオチドリガーゼを活性化するために十分な温度であればよい。このような温度は、例えば2~50℃、好ましくは16~50℃、より好ましくは25~50℃であってもよい。
【0049】
リガーゼ処理が行われる時間は、目的の修飾オリゴヌクレオチドを生成するために十分な時間であればよい。このような時間は、例えば1~72時間であってもよい。
【0050】
本発明によれば、目的の修飾オリゴヌクレオチドについて、N-1merやN+1merなどの目的塩基長以外の塩基長を有する不純物の生成および混入を抑制することができる。例えば、本発明では、目的の修飾オリゴヌクレオチドが、単一の二本鎖核酸(例、siRNA、ヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド)として製造される。このような単一の二本鎖核酸を構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ、N個及びM個の塩基長である。N個及びM個の塩基長は、それぞれ独立して、11~30塩基長(例、18~30塩基長)である。N個及びM個の塩基長はまた、それぞれ独立して、11~27塩基長(例、18~27塩基長)であってもよい。本発明において、目的の修飾オリゴヌクレオチドの不純物は、上記目的の修飾オリゴヌクレオチド)以外の核酸夾雑物が意図される。このような核酸夾雑物を構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ、N個及びM個の塩基長ではなく、(N±α)個及びM個の塩基長、N個及び(M±β)個の塩基長、又は(N±α)個及び(M±β)個の塩基長からなる。ここで、N個及びM個は上記と同様であり、α個及びβ個は、例えば1個、2個又は3個である。
【0051】
(その他の任意工程)
本発明の方法は、オリゴヌクレオチド原料断片を合成する工程(例、固相合成等の化学合成)を含んでいてもよい。本発明の方法は、目的の修飾オリゴヌクレオチド以外の核酸夾雑物の生成を抑制できることから、合成されたオリゴヌクレオチド原料断片の試料からの目的の修飾オリゴヌクレオチドの精製を省略することができる。しかし、本発明の方法は、目的の修飾オリゴヌクレオチドの精製が行われた場合であっても、当該精製後に残存し得る少量の目的外のオリゴヌクレオチド原料断片に起因する二本鎖核酸夾雑物(不純物)の生成を抑制できるため、目的の修飾オリゴヌクレオチドの精製が行われてもよい。このような精製は、例えば、クロマトグラフィ(例、HPLC、IEX)、ゲル濾過等の方法により行うことができる。
【0052】
本発明の方法は、リガーゼ処理工程の後に反応停止工程を含んでもよい。反応停止工程としては、例えば、高温処理(例、80℃)や酸・アルカリ、有機溶剤の添加によるオリゴヌクレオチドリガーゼ失活処理、EDTAなどのキレート剤の添加による補因子の金属イオンの除去、が挙げられる。また、担体に酵素を固定化して反応を行い、膜分離によって酵素を反応液から除去する方法も挙げられる。
【0053】
本発明の方法は、リガーゼ処理工程の後に目的の修飾オリゴヌクレオチドを精製する工程を含んでもよい。例えば、本工程は、クロマトグラフィ(例、HPLC)、ゲル濾過等の任意の適切な方法により行うことができる。
【0054】
オリゴヌクレオチド原料断片をアニールさせる場合において、一般に、オリゴヌクレオチド原料断片を変性状態(非対合状態)にするために、オリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を高温に加熱し、その後、相補的ヌクレオチド配列同士の対合を形成させるために、高温のオリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を空冷等により徐々に冷却する操作が行われることが多い。しかし、本発明の方法では、リガーゼ処理工程の前に、そのような変性のために高温に加熱する操作および対合形成のために冷却する処理(加熱-冷却処理)を行わずに、簡略化された操作で、目的の修飾オリゴヌクレオチドを製造することができる。高温に置くこととしては、例えば、オリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上、または100℃以上で保持(例、5分以上、または10分以上)することが挙げられる。冷却することとしては、例えば、オリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を室温(例、15~25℃、または20~25℃)または所定の温度(例、37℃)下で静置(例、5時間以上)すること、オリゴヌクレオチド原料断片混合溶液を所定の温度(例、37℃)に保持(例、15分以上)することが挙げられる。
【0055】
加熱-冷却処理を省略するために、リガーゼ処理工程の前にオリゴヌクレオチド原料断片混合溶液が高温に置かれる時間は、例えば、5分未満、4.5分以下、4分以下、3.5分以下、3分以下、2.5分以下、2分以下、1.5分以下、1分以下、または0.5分以下となるように制御されてもよい。
【0056】
加熱-冷却処理を省略するために、本発明の方法において、オリゴヌクレオチド原料断片同士を溶液中で混合してからリガーゼ処理工程を行なうまで、オリゴヌクレオチド原料断片を含む溶液は、2~50℃に保持されていてもよい。すなわち、本発明の方法において、上記組合せに含まれる全てのオリゴヌクレオチド原料断片およびオリゴヌクレオチドリガーゼのいかなる混合およびいかなる混合間のインターバル、ならびにリガーゼ反応は、2~50℃の条件下で行なわれてもよい。このような実施形態において、本発明の方法は、以下を含む:
(1)別個の系に存在する上記組合せに含まれる全てのオリゴヌクレオチド原料断片、およびオリゴヌクレオチドリガーゼを、全ての混合が2~50℃で行なわれかつ全ての混合間のインターバルにおいて混合物が2~50℃に保持される条件下で混合して、混合溶液を得ること;および
(2)混合溶液を2~50℃で保持したままで反応させて、目的の修飾オリゴヌクレオチドを含む溶液を得ること。
【0057】
この実施形態において、上記組合せに含まれる全てのオリゴヌクレオチド原料断片は、別個の系で得られる。この実施形態において、本発明は、例えば、当該オリゴヌクレオチド原料断片を2~50℃で混合してオリゴヌクレオチド原料断片混合物を得て、当該オリゴヌクレオチド原料断片混合物とオリゴヌクレオチドリガーゼを2~50℃で混合することにより行われてもよい。この実施形態において、本発明は、例えば、オリゴヌクレオチドリガーゼを含む溶液に当該オリゴヌクレオチド原料断片を順次2~50℃で添加することにより行われてもよい。
【0058】
本発明の方法は、例えばラージスケールでの目的の修飾オリゴヌクレオチドの工業的製造に用いることができる。
【実施例】
【0059】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
〔実施例1〕天然型RNAを用いた断片の組み合わせのパターンの比較
1)基質および生成物標品の合成
4断片の短鎖天然型RNAからsiRNAを酵素的に合成する反応において、当該断片の塩基長の影響を評価した。目的とするsiRNAを表1のRNA1-S(21mer)およびRNA1-A(23mer)からなる二本鎖とした(以下、それぞれをセンス鎖、アンチセンス鎖と呼ぶ)。表1に示す18種のRNA断片を合成し、これらを用いて表2に示す6パターンの断片の組合せを評価した。
【0061】
【0062】
【0063】
2)T4 RNAリガーゼ2によるライゲーション反応
4断片のオリゴヌクレオチドを用いてT4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)により反応した。反応液の組成は50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5、RNA断片をそれぞれ10μMとし、反応液量は10μLとした。酵素の添加濃度を0.025、0.05、0.1、0.2U/μLとして生成物の濃度を比較した。サーマルサイクラーを用いて25℃で1時間反応した後、80℃で5分間加熱することにより反応を停止した。
【0064】
3)HPLCによる分析
反応液をXbridge Oligonucleotide BEH C18 column(Waters、2.5μm,4.6mm×50mm)を用いたHPLCにより分析した。分析条件は、カラム温度60℃、検出波長254nm、インジェクション量10μL、流速0.4mL/minとした。移動相は溶離液A(ヘキサフルオロイソプロパノール-トリエチルアミン)および溶離液B(メタノール)を用いたリニアグラジエントにより分析した。センス鎖およびアンチセンス鎖の標品も同様に分析することにより、ライゲーション産物の濃度を定量した。
【0065】
4)結果
各断片の塩基長の組み合わせにおけるセンス鎖およびアンチセンス鎖の蓄積を
図2に示す。組み合わせ3ではライゲーション産物がほとんど蓄積しなかったが、それ以外の組合せでは酵素濃度の増加に応じてライゲーション産物の蓄積が増大することが観察された。
【0066】
〔実施例2〕天然型RNAのライゲーション反応における反応温度の影響の評価
短鎖のライゲーション反応における反応温度による影響を検討した。基質として表2の1のオリゴヌクレオチドを用い、T4 RNAリガーゼ2により反応した。反応液の組成は50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5、酵素濃度0.2U/μL、RNA断片をそれぞれ10μMとし、反応液量は10μLとした。反応温度を16℃、25℃、30℃および37℃として、それぞれ1、2、および4時間反応後に、80℃で5分間加熱することにより反応を停止した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例1に記載の条件にてHPLCにより分析した。
【0067】
結果を
図3に示す。反応温度25℃以上では反応1時間後にセンス鎖、アンチセンス鎖ともに約10μMのライゲーション産物が蓄積した。一方、25℃以上に比べ16℃では特にセンス鎖のライゲーション差物の生成速度が低かった。
【0068】
〔実施例3〕修飾型RNAを用いた反応進行の確認
1)基質および生成物標品の合成
修飾型オリゴヌクレオチドにおける4断片からのsiRNAの酵素的ライゲーション反応の進行を評価した。目的のsiRNAを表3に示す、センス鎖(MOD1-S)およびアンチセンス鎖(MOD1-A)からなる二本鎖とした。このsiRNAは実施例1および2で用いた天然型RNAと塩基配列は同一であるが、すべての残基が2’-Fまたは2’-O-メチルにより修飾されており、一部のリン酸基がチオリン酸基に置換されている。また、それぞれの断片として表3に示す4断片を合成した。これら4断片の塩基配列は表2の番号1の組合せと同一である。
【0069】
【0070】
2)T4RNAリガーゼ2によるライゲーション反応
4断片の修飾型RNAを用いてT4 RNAリガーゼ2により反応した。反応液の組成は50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mM ジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5、修飾型RNA断片をそれぞれ10μMとし、反応液量は50μLとした。酵素の添加濃度を0.2または1.0U/μLとし、陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で1時間反応した後、80℃で5分間加熱することにより反応を停止した。
【0071】
3)HPLCおよびLC-TOF/MSによる分析
反応液をACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18 Column (Waters、2.1×100mm、1.7μm)を用いたHPLCにより分析した。分析条件は、カラム温度80℃、検出波長260nm、インジェクション量10μL、流速0.4mL/minとした。移動相はA液(ヘキサフルオロイソプロパノール-トリエチルアミン)およびB液(メタノール)を用いたリニアグラジエントにより分析した。センス鎖およびアンチセンス鎖の標品も同様に分析することにより、ライゲーション産物の生成を確認した。また、Agilent 6230 TOF LC/MSシステム(Agilent technologies)によりライゲーション産物の質量分析を行った。
【0072】
4)結果
HPLCによる分析の結果を
図4に示す。HPLCによる分析では酵素の添加により、標品と一致する保持時間にライゲーション産物のピークが得られるとともに、陰性対照と比較して基質の修飾型RNAのピーク面積が減少した。また、酵素添加量の増加に伴いライゲーション産物のピーク面積も増加した。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では酵素添加条件においてセンス鎖およびアンチセンス鎖の生成が観察された。
センス鎖LC/MS m/z: calcd 2266.13, found 2265.9703[M-3H]
3-
アンチセンス鎖LC/MS m/z: calcd 2531.04, found 2531.0199[M-3H]
3-
【0073】
以上から、T4 RNAリガーゼ2による修飾型RNAの4断片からのsiRNAの生成が可能であることが示された。
【0074】
〔実施例4〕DNAリガーゼによる反応進行の確認
修飾型オリゴヌクレオチドにおける4断片からのsiRNAの酵素的ライゲーション反応の進行を、DNAリガーゼを用いて評価した。DNAリガーゼとしてT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を用いた。
【0075】
反応液の組成は、DNAリガーゼ50mM Tris-HCl、10mM MgCl2、10mMジチオスレイトール、1mM ATP、pH7.5とした。酵素濃度は470nM、オリゴヌクレオチド断片をそれぞれ10μMとし、反応液量は30μLとした。オリゴヌクレオチド断片は表3に示す組み合わせを用いた。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に10μLを採取し、80℃で5分間加熱することにより反応を停止した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例3に記載の条件にてHPLCにより分析した。標品も同様に分析することにより、ライゲーション産物の濃度を定量した。
【0076】
HPLCによる分析の結果、ライゲーション産物の蓄積が確認され、反応4時間後の蓄積はセンス鎖が0.58μM、アンチセンス鎖が5.1μMであった。以上のように、DNAリガーゼにおいても4断片の修飾型RNAからのsiRNAの生成反応が進行した。
【0077】
〔実施例5〕デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)RNAリガーゼの調製とライゲーション反応
(1)E. coliによる組換え発現株の構築
Deinococcus radiodurans由来のRnl5ファミリーに属するRNAリガーゼDraRnlをE. coliで発現する株を構築し、精製酵素を調製した。まず、DraRnlのアミノ酸配列(配列番号17)をE. coliコドンに最適化した塩基配列を有するプラスミドを遺伝子全合成により作成し、次にこの配列をpET16bベクターのNdeI/BamHIサイトにサブクローニングした。本発現プラスミドをE. coli BL21(DE3)を形質転換し、DraRnlの発現株を得た。この発現株では、N末端にHis-tagが付与されたDraRnlが発現される。
【0078】
(2)組換え酵素の調製
各発現株をアンピシリン100mg/Lを含むLB寒天培地で37℃、一晩生育させた。得られたコロニーをアンピシリン100mg/Lを含むLB培地100mLに植菌し、坂口フラスコを用いて振とう培養を行った。37℃で2時間培養後、終濃度でそれぞれ0.1mMまたは2%になるようにIPTGおよびエタノールを添加した。さらに17℃で16時間培養した。
【0079】
培養終了後、得られた培養液より菌体を遠心分離により集め、50mM Tris-HCl(pH7.6)、250mM NaCl、10% sucrose、15mM imidazole、1% Lysozyme、0.1% Triton-X100からなる緩衝液に懸濁し、超音波破砕を行った。遠心分離により破砕液から菌体残渣を除き、得られた上清を可溶性画分とした。
【0080】
得られた可溶性画分を、前記緩衝液で平衡化したHis-tagタンパク質精製カラムHisTALON Superflow Cartridge(タカラバイオ)に供して、担体に吸着させた。担体に吸着しなかったタンパク質(非吸着タンパク質)を50mM Tris-HCl(pH7.6)、250mM NaCl、10% sucrose、15mM imidazoleからなる緩衝液を用いて洗い流した後、50mM Tris-HCl(pH8.0)、250mM NaCl、10% glycerol、200mM imidazoleからなる緩衝液で吸着したタンパク質の溶出を行った。
【0081】
酵素が含まれる溶出画分を集めて、Amicon Ultra-15 10kDa(メルクミリポア)を用いて、50mM Tris-HCl(pH8.0)、200mM NaCl、2mM DTT、2mM EDTA、10% glycerol、0.1% Triton X-10からなる緩衝液にバッファー交換し、精製酵素溶液とした。
【0082】
(3)DraRnlによるライゲーション反応
4断片の修飾型RNAを用いてDraRnlにより反応した。反応液の組成は50mM Tris-HCl(pH7.5)、10mM MnSO4、1mM ジチオスレイトール、400μM ATP、修飾型RNA断片をそれぞれ10μMとし、反応液量は25μLとした。修飾型RNA断片は表3の組み合わせを用いた。酵素の添加濃度を72μg/mLとし、陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で3時間反応した後、終濃度1mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。
【0083】
(4)HPLCによる分析
反応液をACQUITY HPLC Oligonucleotide BEH C18 Column (Waters、2.1×100mm、1.7μm)を用いたHPLCにより分析した。分析条件は、カラム温度60℃、検出波長260nm、インジェクション量10μL、流速0.4mL/minとした。移動相はA液ヘキサフルオロイソプロパノール-トリエチルアミンおよびB液(メタノール)を用いたリニアグラジエントにより分析した。センス鎖およびアンチセンス鎖の標品も同様に分析することにより、ライゲーション産物の生成を確認した。
【0084】
HPLCによる分析の結果を
図5に示す。HPLCによる分析では酵素の添加により、標品と一致する保持時間にライゲーション産物のピークが得られるとともに、陰性対照と比較して基質の修飾型RNAのピーク面積が減少した。以上から、DraRnlによる修飾型RNAの4断片からの目的の修飾オリゴヌクレオチドの生成が可能であることが示された。
【0085】
〔実施例6〕ループ構造を持つ修飾オリゴヌクレオチドの生成
4断片のオリゴヌクレオチドから酵素的ライゲーションにより、ループ構造を持つ修飾オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物および合成した基質断片の配列を表4に示す。
【0086】
【0087】
表4の4断片の基質オリゴヌクレオチドを用いてT4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)により反応した。反応液の組成は50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5、オリゴヌクレオチド断片をそれぞれ10μMとし、反応液量は100μLとした。酵素の添加濃度17.8μg/μLとして生成物の濃度を比較した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で3時間反応した後、80℃で5分間加熱することにより反応を停止した。実施例5の条件でHPLCおよびLC-TOF/MSにより反応液を分析した。
【0088】
HPLCによる分析では
図6に示すように、酵素の添加により、陰性対照と比較して、基質の修飾型RNAのピーク面積が減少し、基質と比較して保持時間の長い位置にピーク(5.6分付近)を検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では酵素添加条件において目的生成物が観察された。
LC/MS m/z: calcd 2727.33, found 2727.21[M-6H]
6-
【0089】
以上から、T4 RNAリガーゼ2により、ループ構造を持つ目的の修飾オリゴヌクレオチドを4断片から生成可能であることが示された。
【0090】
〔実施例7〕DNA鎖およびRNA鎖からなるヘテロ二本鎖の生成
二本鎖RNAリガーゼにより、修飾型DNA鎖および修飾型RNA鎖からなるヘテロ二本鎖を生成した。二本鎖RNAリガーゼとしてT4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)を用いた。
【0091】
反応液の組成は、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mM ジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。酵素濃度は3.56μg/mL、基質は表5に示す4断片のオリゴヌクレオチドをそれぞれ10μMとし、反応液量は40μLとした。サーマルサイクラーを用いて37℃で反応し、18時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0092】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに2本のピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件において修飾型DNA鎖および修飾型RNA鎖の生成が観察された。
修飾型DNA鎖LC/MS m/z: calcd 2119.50, found 2119.34[M-2H]2-
修飾型RNA鎖LC/MS m/z: calcd 2126.89, found 2126.36[M-2H]2-
【0093】
以上から、T4 RNAリガーゼ2により、修飾型DNA鎖および修飾型RNA鎖からなるヘテロ二本鎖の生成が可能であることが示された。
【0094】
【0095】
〔実施例8〕ミスマッチ塩基対を含むオリゴヌクレオチド断片を用いた反応
4断片のオリゴヌクレオチドから酵素的ライゲーションにより、塩基対にミスマッチ部分を持った二本鎖修飾オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表6に、4断片の組み合わせを
図7に示す。
【0096】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0097】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに2本のピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件においてA鎖およびB鎖の生成を確認できた。
A鎖 LC/MS m/z: calcd 1361.77, found 1361.75[M-5H]5-
B鎖 LC/MS m/z: calcd 1517.41, found 1517.35[M-5H]5-
【0098】
以上から、T4 RNAリガーゼ2により、ミスマッチ配列を有する二本鎖修飾オリゴヌクレオチドが生成可能であることが示された。
【0099】
【0100】
〔実施例9〕5断片および6断片のオリゴヌクレオチドを用いた反応
5断片および6断片のオリゴヌクレオチドから酵素的ライゲーションにより、二本鎖修飾オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表7に、4断片の組み合わせを
図8に示す。
【0101】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質としてオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、30μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて37℃で反応し、16時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例5に記載の条件にてHPLCにより分析した。
【0102】
HPLCによる分析では、
図9に示すように酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに2本のピークを検出することができた。これらのピークの保持時間は生成物の標品と一致した。
【0103】
以上から、T4 RNAリガーゼ2により、5断片および6断片の基質オリゴヌクレオチドから二本鎖修飾オリゴヌクレオチドが生成可能であることが示された。
【0104】
【0105】
〔実施例10〕5’末端にDMTr基が付加されたオリゴヌクレオチドを用いた反応
5’末端にジメトキシトリチル(DMTr)基が付加された2断片を含む4断片のオリゴヌクレオチドから酵素的ライゲーションにより二本鎖修飾オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表8に、4断片の組み合わせを
図10に示す。
【0106】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物の濃度を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0107】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに2本のピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件においてA鎖およびB鎖の生成を確認できた。
A鎖 LC/MS m/z: calcd 1764.80, found 1764.79[M-4H]4-
B鎖 LC/MS m/z: calcd 1738.76, found 1738.75[M-4H]4-
【0108】
以上から、T4 RNAリガーゼ2により、DMTr基を有する基質断片から二本鎖修飾オリゴヌクレオチドが生成可能であることが示された。
【0109】
【0110】
〔実施例11〕キャリア付加型オリゴヌクレオチド断片を用いた反応
5’末端にN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)が付加された1断片を含む4断片のオリゴヌクレオチドから、酵素的ライゲーションにより二本鎖修飾オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表9に、4断片の組み合わせを
図11に示す。GalNAcで修飾した断片は、Trivalent β-D-GalNAc with carboxyl-functionalized PEG5 Linker (Sussex社製)をアミノC6リンカーを介してオリゴヌクレオチドの5’末端に連結して合成した。
【0111】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0112】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに2本のピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件においてA鎖およびB鎖が検出され、生成を確認できた。
A鎖 LC/MS m/z: calcd 1730.40, found 1730.37[M-5H]5-
B鎖 LC/MS m/z: calcd 1330.38 found 1330.36[M-5H]5-
【0113】
以上から、T4 RNAリガーゼ2を用いた4断片からの反応により、末端をN-アセチルガラクトサミンで修飾した二本鎖修飾オリゴヌクレオチドが生成可能であることが示された。
【0114】
【0115】
〔実施例12〕連結部にチオリン酸ジエステル結合を有する二本鎖修飾オリゴヌクレオチドの生成反応
リン酸基をチオリン酸基に置き換えた4断片のオリゴヌクレオチドから、酵素的ライゲーションにより二本鎖修飾オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表10に、4断片の組み合わせを
図12に示す。
【0116】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0117】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに2本のピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件においてA鎖およびB鎖が検出され、生成を確認できた。
A鎖 LC/MS m/z: calcd 1769.15, found 1769.13[M-4H]4-
B鎖 LC/MS m/z: calcd 1743.11 found 1743.10[M-4H]4-
【0118】
以上から、T4 RNAリガーゼ2を用いた4断片からの反応により、連結部にチオリン酸結合を有する二本鎖修飾オリゴヌクレオチドが生成可能であることが示された。
【0119】
【0120】
〔実施例13〕ヘアピン型オリゴヌクレオチドの生成反応
4断片のオリゴヌクレオチドから、酵素的ライゲーションによりヘアピン型オリゴヌクレオチドを生成する反応の進行を評価した。目的生成物および合成した基質断片の配列を表11に、4断片の組み合わせを
図13に示す。リンカーとして文献(Hamasaki T, Suzuki H, Shirohzu H, et al. Efficacy of a novel class of RNA interference therapeutic agents. PLoS ONE. 2012;7(8):e42655.)に記載のプロリン誘導体を用いた。
【0121】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0122】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、新たに1本のピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件において目的生成物が検出され、生成を確認できた。
LC/MS m/z: calcd 1891.61 found 1891.60[M-9H]9-
【0123】
以上から、T4 RNAリガーゼ2を用いた4断片からの反応により、ヘアピン型オリゴヌクレオチドが生成可能であることが示された。
【0124】
【0125】
〔実施例14〕突出末端の塩基長の反応性への影響
生成物は同一で、1~6塩基長の突出末端を形成するように基質のオリゴ核酸を設計し、突出末端の塩基長の差による反応性の違いを比較した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。それぞれの組み合わせにおいて、B鎖を構成する基質は共通する配列とし、A鎖の切断位置を異なる位置とした。合成した目的生成物標品および基質断片の配列を表12に、4断片の組み合わせを
図14に示す。
【0126】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、15分、30分、1時間、2時間および4時間後に5μLを回収し終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物および生成物標品の濃度を実施例5に記載の条件にてHPLCにより分析し、ライゲーション産物の濃度を算出した。
【0127】
HPLC分析により確認した結果、いずれの塩基長の突出末端においても、A鎖およびB鎖の生成が観察された。1塩基長の突出末端では反応速度が低い傾向があった。
【0128】
【0129】
〔実施例15〕生成物の塩基長の反応性への影響
11~14塩基長の相補部分からなる短い目的生成物を製造した場合の反応性の違いを比較した。目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表13に、4断片の組み合わせを
図15に示す。
【0130】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後に終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。陰性対照として酵素非添加の条件でも反応した。反応液に含まれるライゲーション産物を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析した。
【0131】
HPLCによる分析では、酵素の添加により、陰性対照と比較して、各基質のピーク面積が減少し、保持時間の遅い位置に新たなピークを検出することができた。さらに反応液のLC-TOF/MSによる分析では、酵素添加条件において表14に示すように、いずれの塩基長の生成物においてもA鎖およびB鎖の2価または3価のイオンが検出され、反応の進行が確認された。
【0132】
HPLCにより各反応条件における基質のピーク面積値を算出し、基質の残存率を以下の式で算出した。
残存率(%)=(酵素添加条件における基質のピーク面積の合計)
/陰性対照における基質のピーク面積の合計)×100
【0133】
11塩基長の相補部分からなる生成物では、12塩基長以上の相補部分からなる生成物と比べて、基質の残存率が高い傾向があった。
【0134】
【0135】
【0136】
〔実施例16〕高濃度基質での反応
より高濃度の基質存在下での修飾オリゴヌクレオチドの生成反応速度を、各pHで比較した。反応の目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表15に、4断片の組み合わせを
図16に示す。
【0137】
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATPとし、バッファーとして50mM Tris-HCl(pH7.0~9.0)を用いた。基質としてオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度10μM、300μM、500μMまたは1000μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、15分または1時間後にサンプリングし終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。反応液に含まれるライゲーション産物を実施例5に記載の条件にてHPLCにより分析し、A鎖およびB鎖の合計の濃度から生成速度を算出した。基質濃度300μM以上においても反応進行が確認され、これらの濃度ではpH8.0および8.5で高い反応速度を示した。
【0138】
【0139】
〔実施例17〕界面活性剤添加の効果
界面活性剤の添加による修飾オリゴヌクレオチドの生成反応速度を評価した。目的生成物および合成した基質断片の配列を表15に、4断片の組み合わせを
図16に示す。
反応液の組成は、1.78μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、2mM MgCl
2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、50mM Tris-HCl(pH7.5)とし、界面活性剤として終濃度0.1%のTritonX-100を使用した。基質としてオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度20μMとなるように添加し、40μLの液量で反応した。
評価では、酵素溶液を保存バッファー(10 mM Tris-HCl、50 mM KCl、35 mM 硫酸アンモニウム、0.1mMジチオスレイトール、0.1mM EDTA、50% グリセロール、pH7.5)で17.8μg/mLに希釈したのちに反応液中に1/10量添加する条件(対照条件)、酵素溶液を保存バッファーで17.8μg/mLに希釈したのちに終濃度0.1%の TritonX-100を含む反応液中に1/10量添加する条件(試験条件1)、酵素溶液を0.1% TritonX-100を含む保存バッファーで17.8μg/mLに希釈したのちに0.09%のTritonX-100を含む反応液中に1/10量添加する条件(試験条件2、TritonX-100終濃度0.1%)、の3条件を比較した。
サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、4時間後にサンプリングし終濃度10mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。反応液に含まれるライゲーション産物を実施例5に記載の条件にてHPLCにより分析し、A鎖およびB鎖の濃度を算出した。
試験条件1および試験条件2では、対照条件に比べて、より高濃度のA鎖およびB鎖の生成物が観察された。
【0140】
〔実施例18〕生成物の塩基長の違いによる不純物の淘汰性の比較
基質および生成物について塩基長の異なる反応を実施し、基質オリゴ核酸断片および酵素反応後の溶液に含まれる不純物を分析した。反応の目的生成物のそれぞれの鎖をA鎖及びB鎖とした。目的生成物および合成した基質断片の配列を表16に、4断片の組み合わせを
図17に示す。
【0141】
反応液の組成は、修飾オリゴヌクレオチドを用いた反応では8.9μg/mL T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。DNAを用いた反応では22.0μg/mL T7 DNAリガーゼ(New England Biolabs)、50mM Tris-HCl、2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール、400μM ATP、pH7.5とした。基質として4断片のオリゴヌクレオチド断片をそれぞれ終濃度50μMとなるように添加し、30μLの液量で反応した。サーマルサイクラーを用いて25℃で反応し、8時間後に終濃度12.5mMになるようにEDTAを加えることで反応を停止した。反応液を実施例5に記載の条件にてHPLCおよびLC-TOF/MSにより分析し、目的の反応進行を確認した。
【0142】
得られた質量分析結果から先行文献(Roussis et al., Journal of Chromatogr A. 2019;1584:106-114.)の方法に基づき、目的の構造の生成物に対する不純物(N±1mer)の含有率を算出した。また、反応に供した基質オリゴヌクレオチド溶液も同様にLC-TOF/MSにより分析し、基質に対する不純物(N±1mer)の含有率を算出した。
【0143】
上記で算出した値から、各反応のA鎖およびB鎖のそれぞれについて、以下の式で不純物の残存率(%)を算出した。
不純物の残存率(%)=(反応液中の目的生成物に対するN±1merの比率)/(基質溶液中の基質に対するN±1merの比率)×100
【0144】
結果を表17に示す。28塩基長のオリゴ核酸を生成する反応では、不純物(N±1mer)の残存率は86%以上であるのに対し、25塩基長以下のオリゴ核酸を生成する反応では、23~59%であった。
【0145】
【0146】
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、核酸医薬等の製品に利用可能な修飾オリゴヌクレオチド(例、siRNAやヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド等)の製造のために有用である。
【配列表】