(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】高圧流体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B05B 1/32 20060101AFI20240814BHJP
B05B 9/03 20060101ALI20240814BHJP
F16K 7/17 20060101ALI20240814BHJP
F16K 31/126 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B05B1/32
B05B9/03
F16K7/17 Z
F16K31/126 Z
(21)【出願番号】P 2021514808
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020005987
(87)【国際公開番号】W WO2020213248
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019079011
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019198077
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】土居 義忠
(72)【発明者】
【氏名】大島 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博章
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-034429(JP,A)
【文献】特開2016-075377(JP,A)
【文献】特開平10-165844(JP,A)
【文献】特開平04-327083(JP,A)
【文献】実開昭61-186875(JP,U)
【文献】特開2005-291493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18,
7/00- 9/08
F16K 7/00- 7/20,
31/12-31/165
F16B 21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体が供給される入力ポート
(32、94a)と、前記高圧流体を貯留するタンク室
(12、92)と、前記高圧流体を吐出する吐出ポート
(60)とを有する高圧流体吐出装置
(10、90)であって、
前記タンク室と連通する弁室
(56)とパイロット室
(58)とを区画するダイヤフラム弁
(16)が設けられ、前記パイロット室はパイロット通路
(16c)を介して前記弁室と連通しており、前記ダイヤフラム弁が開いた状態において前記弁室は吐出通路
(62)を介して前記吐出ポートに連通し、前記パイロット室を前記吐出通路に開放する開放流路
(64a~64d)に開閉制御弁
(20)が設けられ、前記開閉制御弁は前記タンク室から供給される流体の圧力によって開閉作動し、前記パイロット通路は前記ダイヤフラム弁の内部に設けられ、
前記開閉制御弁を開閉作動するための流体の流路にスピードコントローラ(74)が設けられ、前記タンク室のエアの一部が前記弁室に導入され、前記タンク室のエアの他の一部が前記スピードコントローラに向かう高圧流体吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の高圧流体吐出装置において、
内部に前記タンク室が形成されたタンクハウジング
(14)と、前記ダイヤフラム弁を内蔵するダイヤフラムハウジング
(18)と、前記開閉制御弁を内蔵するコントロールハウジング
(22)とを有する高圧流体吐出装置。
【請求項3】
請求項
2記載の高圧流体吐出装置において、
前記タンクハウジングを構成するシリンダチューブ
(24)の上に、前記ダイヤフラムハウジングと前記コントロールハウジングを設置するための連結プレート
(42)が設けられる高圧流体吐出装置。
【請求項4】
請求項1記載の高圧流体吐出装置において、
内部に前記タンク室が形成されたツールホルダ
(94)と、前記ダイヤフラム弁を内蔵するダイヤフラムハウジングと、前記開閉制御弁を内蔵するコントロールハウジングとを有する高圧流体吐出装置。
【請求項5】
請求項
4記載の高圧流体吐出装置において、
前記ツールホルダはその軸心方向一端側に
前記入力ポート
(94a)を備え、前記ツールホルダの軸心方向他端側にはカバープレート
(96)が設けられ、前記ダイヤフラムハウジングおよび前記コントロールハウジングは前記カバープレートに取り付けられる高圧流体吐出装置。
【請求項6】
請求項1記載の高圧流体吐出装置において、
前記高圧流体は高圧エアである高圧流体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧流体を吐出する高圧流体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、切削加工においてワークの表面に付着した金属の切粉を除去してワークの表面を清浄化するため、高圧エア等の高圧流体を吹き付ける装置が使われている。
【0003】
特開2014-83518号公報には、このような用途に使われる間欠エアブローガンが記載されている。この間欠エアブローガンは、作業者がスイッチレバーを握るとエア噴出流路の開閉弁が開となり、圧気源からのエアが吐出口から噴出する。これと同時に、エア噴出流路を流れるエアの一部がパイロット弁に供給され、パイロット弁が開になると、圧気源からのエアの一部がバイパス流路を通って開閉弁の二次側に送られ、開閉弁が閉となる。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、このようなエアブローガンでエアの吐出を行うには、作業場で作業者がレバーを握って操作する必要があり、例えば、水飛沫が飛散する場所でエアブローガンを操作しなければならない場合、作業者が濡れてしまうという不具合がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、作業者の直接的な手作業によらなくても高圧流体を間欠的に吐出することが可能な高圧流体吐出装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明に係る高圧流体吐出装置は、高圧流体が供給される入力ポートと、高圧流体を貯留するタンク室と、高圧流体を吐出する吐出ポートとを有する。この高圧流体吐出装置は、タンク室と連通する弁室とパイロット室とを区画するダイヤフラム弁が設けられ、パイロット室はパイロット通路を介して弁室と連通しており、ダイヤフラム弁が開いた状態において弁室は吐出通路を介して吐出ポートに連通する。そして、パイロット室を吐出通路に開放する開放流路に開閉制御弁が設けられ、開閉制御弁はタンク室から供給される流体の圧力によって開閉作動する。
【0007】
上記の高圧流体吐出装置によれば入力ポートから高圧流体を供給するだけで、高いピーク圧を有する流体を吐出ポートから周期的に吐出することができる。
【0008】
本発明に係る高圧流体吐出装置は、タンク室と連通する弁室を区画するとともにパイロット室を区画するダイヤフラム弁を備え、パイロット室を吐出通路に開放する開閉制御弁がタンク室から供給される流体の圧力によって開閉作動する構成となっているので、入力ポートから高圧流体を供給するだけで、高いピーク圧を有する流体を周期的に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る高圧流体吐出装置の斜視図である。
【
図2】
図1の高圧流体吐出装置のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1の高圧流体吐出装置のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図1の高圧流体吐出装置を所定の部品または部品群に展開した図である。
【
図5】
図1の高圧流体吐出装置が別の動作状態にあるときの
図2に対応する図である。
【
図6】
図1の高圧流体吐出装置が別の動作状態にあるときの
図3に対応する図である。
【
図7】
図1の高圧流体吐出装置のタンク室および吐出ポートにおける流体の圧力が変化する様子を示した図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る高圧流体吐出装置の断面図である。
【
図9】
図8の高圧流体吐出装置が取り付けられるマシニングセンタの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る高圧流体吐出装置について、複数の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面上での方向をいうものであって、装置等の実際の配置を限定するものではない。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る高圧流体吐出装置10について、
図1~
図7を参照しながら説明する。
図2および
図3に示されるように、高圧流体吐出装置10は、内部にタンク室12が形成されたタンクハウジング14と、ダイヤフラム弁16を内蔵するダイヤフラムハウジング18と、開閉制御弁20を内蔵するコントロールハウジング22とを有する。高圧流体吐出装置10は、切粉の除去等のために使用される。
【0012】
タンクハウジング14は、四角筒状のシリンダチューブ24と、円筒状の入口カバー26と、円板状のエンドカバー28とから構成される。入口カバー26は、シリンダチューブ24の一端側にCリング30aを介して取り付けられ、軸心方向に貫通する入力ポート32を備えている。エンドカバー28は、シリンダチューブ24の他端側にCリング30bを介して取り付けられ、シリンダチューブ24の他端側を閉塞する。
【0013】
シリンダチューブ24の内側には、入力ポート32から供給される高圧エア(高圧流体)を貯留するタンク室12が形成されている。入口カバー26の外周面には、入口カバー26とシリンダチューブ24との間をシールするシール材34aが装着され、エンドカバー28の外周面には、エンドカバー28とシリンダチューブ24との間をシールするシール材34bが装着されている。
【0014】
図4に示されるように、シリンダチューブ24の上部側壁には、上方に突出する台座部36がシリンダチューブ24の軸線と平行に延びるように形成されている。このシリンダチューブ24の上部側壁には、台座部36の頂部において開口する吐出エア供給ポート38が貫通して設けられている。また、シリンダチューブ24の上部側壁には、後述する開閉制御弁20に向けてエアを供給するための作動エア供給ポート40が貫通して設けられており、作動エア供給ポート40は、台座部36の頂部に形成された円形凹部36aに開口する。
【0015】
シリンダチューブ24の上方にダイヤフラムハウジング18とコントロールハウジング22を設置するための連結プレート42が設けられている。連結プレート42の下面には、シリンダチューブ24の台座部36の断面形状と整合する凹溝44が設けられている。シリンダチューブ24の台座部36が連結プレート42の凹溝44に嵌合した状態で、連結プレート42は、複数の第1ボルト46によって台座部36に固定される。
【0016】
連結プレート42には、タンクハウジング14の吐出エア供給ポート38と対応する位置において、上下方向に貫通する第1孔部48が設けられている。第1孔部48は、吐出エア供給ポート38の径と一致する下方側の通路形成部48aと、通路形成部48aよりも径が大きい上方側の嵌合部48bとを有する。また、連結プレート42には、作動エア供給ポート40と対応する位置において、上下方向に貫通する第2孔部50が設けられている。
【0017】
図2に示されるように、ダイヤフラムハウジング18は、第1ボデイ52と第2ボデイ54を組み合わせて構成される。第1ボデイ52の右側面の外周側に設けられた環状凸部52aが第2ボデイ54の左側面の外周側に設けられた環状凹部54aに嵌合することで、第1ボデイ52と第2ボデイ54が互いに突き合わされる。
【0018】
ダイヤフラム弁16は、円柱形状をなす厚肉の本体部16aと、本体部16aに比べて薄肉で屈曲自在のフランジ16bとを有する。フランジ16bの外周縁部は、第1ボデイ52と第2ボデイ54との間で挟持される。
【0019】
第1ボデイ52には、ダイヤフラム弁16によって区画される環状の弁室56が設けられ、第2ボデイ54には、ダイヤフラム弁16によって区画されるパイロット室58が設けられている。ダイヤフラム弁16の本体部16aの内部には、パイロット室58を弁室56に連通せしめるパイロット通路16cが設けられている。パイロット通路16cの一端は弁室56に臨む本体部16aの側面に開口し、パイロット通路16cの他端はパイロット室58に臨む本体部16aの端面に開口する。
【0020】
第1ボデイ52の底面には、タンクハウジング14の吐出エア供給ポート38と対応する位置に、下方に突出する環状の突出部52bが形成されている。突出部52bを含む第1ボデイ52の底部には、吐出エア供給ポート38を弁室56に接続するための接続通路59が設けられている。第1ボデイ52の突出部52bは、連結プレート42の第1孔部48の嵌合部48bに嵌合する。吐出エア供給ポート38は、連結プレート42の第1孔部48の通路形成部48aと第1ボデイ52の接続通路59を介して、弁室56と連通している。なお、参照符号34cで示されるのは、突出部52bと嵌合部48bとの間をシールするシール材である。
【0021】
第1ボデイ52には、第2ボデイ54と突き合わされる側面と反対側の側面に開口する吐出ポート60と、吐出ポート60に連通しダイヤフラム弁16の近傍まで延びる吐出通路62が設けられている。第1ボデイ52の内部には、弁室56と吐出通路62との間を仕切る筒状壁部52cが設けられており、筒状壁部52cの先端が弁座52dを構成している。ダイヤフラム弁16の本体部16aが弁座52dに当接していないときは、吐出通路62が弁室56と連通し、ダイヤフラム弁16の本体部16aが弁座52dに当接しているときは、吐出通路62と弁室56との連通が遮断される。
【0022】
コントロールハウジング22には、パイロット室58のエアを吐出通路62に向けて開放するための流路の一部である第1開放流路64aと第2開放流路64bが設けられている。第1開放流路64aの一端は、ダイヤフラムハウジング18と対向するコントロールハウジング22の側面に開口して、パイロット室58から延びる延長通路58aに接続され、第1開放流路64aの他端は開閉制御弁20に接続される。なお、参照符号34dで示されるのは、第1開放流路64aと延長通路58aとの接続部分を外部からシールするシール材である。
【0023】
ダイヤフラムハウジング18には、パイロット室58のエアを吐出通路62に向けて開放するための流路の残部である第3開放流路64cと第4開放流路64dが設けられている。第3開放流路64cは第2ボデイ54に形成され、第4開放流路64dは第1ボデイ52に形成されている。第4開放流路64dは、一端が第3開放流路64cに接続され、他端が吐出通路62に接続される。
【0024】
コントロールハウジング22に形成された前記第2開放流路64bの一端は、開閉制御弁20に接続され、第2開放流路64bの他端は、ダイヤフラムハウジング18と対向するコントロールハウジング22の側面に開口して、第2ボデイ54に形成された前記第3開放流路64cに接続される。
【0025】
開閉制御弁20は、第2開放流路64bを第1開放流路64aに接続する位置と、第2開放流路64bを第1開放流路64aから遮断する位置との間で摺動可能なスプール66を備える。スプール66は、ばね68の付勢力を一方向に受けるとともに、後述する第2作動エア流路70bのエア圧による付勢力をその逆方向に受ける。第1開放流路64aは、スプール66の外周面に形成された凹部66aと常に繋がっている。
【0026】
第2作動エア流路70bのエア圧が所定値未満であるとき、スプール66は、ばね68の付勢力により、第2開放流路64bを第1開放流路64aから遮断した位置に移動する(
図3参照)。このとき、パイロット室58のエアは閉じ込められる。一方、第2作動エア流路70bのエア圧が所定値以上であるとき、スプール66は、ばね68の付勢力に抗して、第2開放流路64bを第1開放流路64aに接続した位置に移動する(
図6参照)。このとき、パイロット室58のエアは吐出通路62に向けて開放される。
【0027】
コントロールハウジング22は、スピードコントローラ74が介設された作動エア流路を有する。この作動エア流路は、スピードコントローラ74の上流側に位置する第1作動エア流路70aと、スピードコントローラ74の下流側に位置する第2作動エア流路70bとからなる。第1作動エア流路70aは、コントロールハウジング22の底部に形成された円形凹部22aに開口しており、第2作動エア流路70bは、開閉制御弁20に接続されている。
【0028】
円筒状のスリーブ72が連結プレート42の第2孔部50に挿通され、コントロールハウジング22に形成された円形凹部22aとシリンダチューブ24の台座部36に形成された円形凹部36aとの間で支持される。シリンダチューブ24の作動エア供給ポート40は、スリーブ72の内側に形成された流路を介して第1作動エア流路70aに連通する。スリーブ72の外周には、コントロールハウジング22の円形凹部22a壁面に当接するシール材34eと、シリンダチューブ24の台座部36の円形凹部36a壁面に当接するシール材34fとが装着されている。
【0029】
スピードコントローラ74は、作動エア流路を流れるエアの流量を調整可能な可変流量制御弁である。スピードコントローラ74の摘み74aを操作して、スピードコントローラ74の内部に配設されたニードル74bの位置を所望の位置にセットすることで、スピードコントローラ74を通過するエアの流量を調整することができる。スピードコントローラ74を通過するエアの流量によって、タンク室12のエアの圧力が上昇する際に開閉制御弁20のスプール66に作用する第2作動エア流路70bのエアの圧力の上昇速度が決まる。
【0030】
第1ボデイ52と第2ボデイ54とコントロールハウジング22の三者は、複数の第2ボルト76によって直列に連結され、第1ボデイ52は、複数の第3ボルト78によって連結プレート42に連結される。これにより、第1ボデイ52と第2ボデイ54とで構成されるダイヤフラムハウジング18とコントロールハウジング22は、連結プレート42に対して一体的に連結される。なお、参照符号80で示されるのは、ダイヤフラムハウジング18を覆うカバー体である。
【0031】
本発明の第1実施形態に係る高圧流体吐出装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、
図2~
図7を参照しながら、その作用について説明する。
【0032】
図2および
図3に示されるように、ダイヤフラム弁16の本体部16aが弁座52dに当接し、かつ、開閉制御弁20のスプール66が第2開放流路64bを第1開放流路64aから遮断した位置にある状態を初期状態とする。すなわち、ダイヤフラム弁16と開閉制御弁20がいずれも閉じている状態を初期状態とする。このとき、タンク室12には高圧エアが十分に貯留されていないが、パイロット通路16cを介して連通する弁室56とパイロット室58のエアの圧力は、吐出通路62のエアの圧力よりも大きくなっているものとする。
【0033】
上記初期状態から、高圧エアが入力ポート32を通じてタンク室12に供給されると、タンク室12のエアの圧力が上昇し、そのエアの一部が吐出エア供給ポート38と連結プレート42の第1孔部48の通路形成部48aと第1ボデイ52の接続通路59を通って弁室56に入った後、パイロット通路16cを通ってパイロット室58に入る。したがって、弁室56とパイロット室58のエアの圧力が吐出通路62のエアの圧力よりも大きい状態が継続し、ダイヤフラム弁16が閉じた状態が維持される。
【0034】
また、タンク室12のエアの他の一部は、作動エア供給ポート40とスリーブ72の内部と第1作動エア流路70aとを通ってスピードコントローラ74に向かう。ここで、スピードコントローラ74を通過するエアの流量、すなわち、第2作動エア流路70bに流れ込むエアの流量は、スピードコントローラ74のニードル74bの位置に応じたものに制限されている。したがって、開閉制御弁20に作用する第2作動エア流路70bのエアの圧力は、この制限された流量に見合った速度で上昇する。
【0035】
そして、第2作動エア流路70bのエアの圧力が所定値以上になると、開閉制御弁20のスプール66がばね68の付勢力に抗して移動し、第2開放流路64bが第1開放流路64aに接続される。すなわち、開閉制御弁20が開く(
図6参照)。これにより、パイロット室58のエアは、第1開放流路64aから第4開放流路64dまでを順に通って吐出通路62に至る。
【0036】
パイロット室58のエアが開放されると、パイロット室58のエアの圧力が下がり、ダイヤフラム弁16の本体部16aが弁座52dから離れる。すなわち、ダイヤフラム弁16が開く(
図5参照)。すると、入力ポート32を通じてタンク室12に供給され貯留されたエアは、吐出エア供給ポート38と連結プレート42の第1孔部48の通路形成部48aと第1ボデイ52の接続通路59を通って弁室56に入った後、吐出通路62に一気に流れ込み、吐出ポート60から外部に吐出される。
【0037】
タンク室12に貯留されたエアが外部に吐出されると、タンク室12のエアの圧力が下がり、開閉制御弁20のスプール66に作用する第2作動エア流路70bのエアの圧力も下がる。そして、タンク室12に貯留されたエアが所定量吐出されると、第2作動エア流路70bのエアの圧力が所定値未満となり、スプール66がばね68の付勢力によって移動し、第2開放流路64bが第1開放流路64aから遮断される。すなわち、開閉制御弁20が閉じる。
【0038】
開閉制御弁20が閉じると、パイロット室58のエアの開放が止まる。また、パイロット通路16cを介して弁室56からのエアがパイロット室58に充填されるので、パイロット室58のエアの圧力が上昇する。一方、互いに連通している弁室56と吐出通路62のエアは、吐出ポート60から外部に吐出されているため、パイロット室58のエアの圧力が弁室56と吐出通路62のエアの圧力よりも大きくなる。これにより、ダイヤフラム弁16の本体部16aが弁座52dに当接し、ダイヤフラム弁16が閉じる。したがって、吐出ポート60からのエアの吐出が止まり、初期状態に戻る。
【0039】
高圧エアが入力ポート32を通じてタンク室12に供給されている間は、上記動作が繰り返し行われる。すなわち、「開閉制御弁20が開く」→「ダイヤフラム弁16が開く」→「タンク室12に貯留されたエアが吐出ポート60から外部に吐出される」→「開閉制御弁20が閉じる」→「ダイヤフラム弁16が閉じる」→「吐出ポート60からのエアの吐出が止まる」という一連の動作が周期的に繰り返される。
【0040】
上記一連の動作が周期的に繰り返されるときのタンク室12のエアの圧力および吐出ポート60におけるエアの圧力が変化する様子を
図7に示す。タンク室12のエアの圧力は一点鎖線で示され、吐出ポート60におけるエアの圧力は実線で示されている。なお、通常の連続的なエアブローを行う場合と比較するため、連続的なエアブローにおける吐出圧力を点線で示す。
【0041】
タンク室12のエアの圧力が上昇して所定値P1に達すると、吐出ポート60におけるエアの圧力が瞬間的に高いピーク値(ピーク圧)P2まで上昇し、その後、吐出ポート60におけるエアの圧力およびタンク室12のエアの圧力が下降するという現象が周期的に繰り返されている。
【0042】
この場合の周期は、スピードコントローラ74によって設定されるエアの流量に依存する。具体的には、スピードコントローラ74の摘み74aを操作してニードル74bの位置を変更し、ニードル74bの周りの流路面積を小さくすると、周期が長くなる。また、吐出ポート60におけるピーク圧P2は、開閉制御弁20のばね68の強さに依存する。ばね68が強いほど(ばね定数が大きいほど)ピーク圧P2が大きくなる。
【0043】
高いピーク圧P2を有する間欠的なエアブローによって、切粉をワークの表面から効果的に除去することができる上に、連続的なエアブローに比べてエアの消費量が格段に少ない。
【0044】
本実施形態の高圧流体吐出装置10によれば、入力ポート32から高圧流体を連続的に供給するだけで、高いピーク圧P2を有するエアを吐出ポート60から周期的に吐出することができる。
【0045】
本実施形態では、高圧流体として高圧エアを用いたが、使用する流体は、エアに限られるものではなく、圧縮性流体であれば他の流体でもよい。また、本実施形態では、スピードコントローラを設けたが、周期を調整する必要がない場合は、スピードコントローラを設けなくてもよい。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る高圧流体吐出装置90について、
図8および
図9を参照しながら説明する。なお、第2実施形態に係る高圧流体吐出装置90において、上述した高圧流体吐出装置10と同一または同等の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
高圧流体吐出装置90は、マシニングセンタの主軸82に取り付けられ、ワークの表面に付着した切粉を除去するために使用される。参考までに、ツールホルダ94を介してマシニングセンタの主軸82にエンドミル(ツール)84が装着された状態を
図9に示す。
【0048】
図8に示されるように、高圧流体吐出装置90は、内部にタンク室92が形成された中空円錐状のツールホルダ94と、ダイヤフラム弁16を内蔵するダイヤフラムハウジング18と、開閉制御弁20を内蔵するコントロールハウジング22とを有する。
【0049】
ツールホルダ94は、マシニングセンタの主軸82に設けられる複数のツールホルダの1つである。換言すれば、高圧流体吐出装置90は、マシニングセンタにおいてエンドミル等のツールを装着するために用いられる複数のツールホルダのうち、空いているツールホルダを構成の一部として取り込み、その内部空間をタンク室92として利用するものである。
【0050】
図8に示されるように、ツールホルダ94は、その軸心方向一端側に入力ポート94aを備えている。ツールホルダ94の軸心方向他端側には、ツールホルダ94の内壁面とともにタンク室92の壁面を構成する板状のカバープレート96が設けられている。カバープレート96に当接するツールホルダ94の端面には、タンク室92を外部からシールするシール材34gが装着されている。
【0051】
カバープレート96には、その壁面を貫通して、吐出エア供給ポート96aおよび作動エア供給ポート96bが設けられている。ダイヤフラムハウジング18およびコントロールハウジング22は、ツールホルダ94が当接する面とは反対側のカバープレート96の面に取り付けられる。
【0052】
ダイヤフラムハウジング18の一部を構成する第1ボデイ52の右側面には、カバープレート96の吐出エア供給ポート96aに対応する位置において、右方に突出する環状の突出部52bが形成されている。この突出部52bは、カバープレート96に嵌合する。吐出エア供給ポート96aは、突出部52bを含む第1ボデイ52の右側面部に設けられた接続通路59を介して、弁室56と連通している。
【0053】
コントロールハウジング22とカバープレート96との間には、カバープレート96の作動エア供給ポート96bに対応する位置において、スリーブ72が配置されている。カバープレート96の作動エア供給ポート96bは、スリーブ72の内側に形成された流路を介して、コントロールハウジング22の第1作動エア流路70aに連通する。
【0054】
第1ボデイ52には、第1ボデイ52の左側面に開口する吐出ポート60と、吐出ポート60に連通しダイヤフラム弁16の近傍まで延びる吐出通路62とが設けられている。これら吐出ポート60と吐出通路62は、ツールホルダ94の軸心方向と平行に延びている。
【0055】
パイロット室58のエアを吐出通路62に向けて開放するための流路として、コントロールハウジング22に第1開放流路64aと第2開放流路64bとが設けられ、ダイヤフラムハウジング18に第3開放流路64cと第4開放流路64dとが設けられている。第3開放流路64cと第4開放流路64dは、一直線上に並び、吐出通路62に直交する方向に延びている。
【0056】
本実施形態の高圧流体吐出装置90においても、前述した高圧流体吐出装置10と同様に、高圧エアが入力ポート94aを通じてタンク室92に供給されている間、「開閉制御弁20が開く」→「ダイヤフラム弁16が開く」→「タンク室92に貯留されたエアが吐出ポート60から外部に吐出される」→「開閉制御弁20が閉じる」→「ダイヤフラム弁16が閉じる」→「吐出ポート60からのエアの吐出が止まる」という一連の動作が周期的に繰り返される。高い圧力ピーク値を有するエアが吐出ポート60から周期的に吐出されることによって、吐出ポート60の前方に位置する図示しないワークの表面に付着した切粉が効果的に除去される。
【0057】
本実施形態の高圧流体吐出装置90によれば、マシニングセンタの主軸82に設けられるツールホルダ94を構成の一部として取り込み、その内部空間をタンク室92として利用するものであるから、マシニングセンタへの取り付けが容易であり、かつ、構成が可及的に簡素化される。しかも、ツールホルダは規格化されている部材であり、同一仕様の高圧流体吐出装置90を種々のマシニングセンタに適用できる。
【0058】
本発明に係る高圧流体吐出装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。