(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】アクチュエータ、駆動装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20240814BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02N2/04
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021542802
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031401
(87)【国際公開番号】W WO2021039567
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019158597
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】中田 哲博
(72)【発明者】
【氏名】中丸 啓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 義夫
(72)【発明者】
【氏名】中尾 道子
(72)【発明者】
【氏名】宮原 和彦
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-021328(JP,A)
【文献】特開2008-206285(JP,A)
【文献】特開平08-335726(JP,A)
【文献】特開2014-207391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0068957(US,A1)
【文献】特開2019-068031(JP,A)
【文献】特開平04-359684(JP,A)
【文献】特開2019-004629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
H02N 11/00
H10N 30/20
H10N 30/87
H10N 30/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータ本体と、
前記第1の面に設けられ、前記第1の面の伸縮を拘束する第1の拘束部材と、
前記第2の面に設けられ、前記第2の面の伸縮を拘束する第2の拘束部材と
を備え、
前記アクチュエータ本体は、
第1の電極と、
前記第1の電極と対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に設けられたエラストマー層と
を備え、
前記第1の電極が、パターン電極であり、
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材は、前記第1の電極に対応して設けられているアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極のヤング率は、前記エラストマー層のヤング率の10倍以下である請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材のヤング率は、前記アクチュエータ本体のヤング率の3倍以上である請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記アクチュエータ本体の駆動部の幅w
1をw
1=1とした場合、前記アクチュエータ本体の非駆動部の幅w
2が0.1≦w
2≦10であり、前記アクチュエータ本体の厚みhが0.1≦h≦10である請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記アクチュエータ本体は、前記第1の拘束部材と前記第2の拘束部材で挟まれた拘束部と、隣り合う前記拘束部の間に設けられた非拘束部とを有し、
前記拘束部における前記エラストマー層の厚みが、前記非拘束部における前記エラストマー層の厚みに比べて薄い請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記第2の電極が、パターン電極である請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記第2の電極が、非パターン電極である請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項8】
前記第1の電極が、前記アクチュエータ本体の面内方向に間隙を有し、
前記アクチュエータ本体が、前記間隙に設けられたダミー電極をさらに備える請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項9】
前記第1の電極が、前記アクチュエータ本体の面内方向に間隙を有し、
前記アクチュエータ本体が、前記
間隙に設けられた第3の電極をさらに備え、
前記第1の電極および前記第3の電極と、前記第2の電極とが、前記エラストマー層を挟んで対向している請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記第1の面および前記第2の面の側から、前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材を介して前記アクチュエータ本体を挟む挟持部材をさらに備え、
前記挟持部材は、前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材を押圧している請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記エラストマー層は、ループ状を有する請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材が、前記第1の電極と同様のパターンを有している請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項13】
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータと、
前記第1の面に設けられた被駆動体と、
前記第2の面に設けられた基材と
を備え、
前記アクチュエータは、第1の電極と、前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に設けられたエラストマー層とを備え、
前記被駆動体は、前記第1の面を拘束する第1の拘束部材を備え、
前記基材は、前記第2の面を拘束する第2の拘束部材を備え、
前記第1の電極が、パターン電極であり、
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材は、前記第1の電極に対応して設けられている駆動装置。
【請求項14】
前記第1の拘束部材は、前記第1の面に設けて突出した第1の凸部であり、
前記第2の拘束部材は、前記第2の面に設けて突出した第2の凸部である請求項13に記載の駆動装置。
【請求項15】
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータ本体と、
前記第1の面に設けられ、前記第1の面の伸縮を拘束する第1の拘束部材と、
前記第2の面に設けられ、前記第2の面の伸縮を拘束する第2の拘束部材と
を備え、
前記アクチュエータ本体は、
第1の電極と、
前記第1の電極と対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に設けられたエラストマー層と
を備え、
前記第1の電極が、間隙および孔部のうちの少なくとも一方を有し、
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材は、前記第1の電極に対応して設けられているアクチュエータ。
【請求項16】
請求項1に記載のアクチュエータを備える駆動装置。
【請求項17】
請求項1に記載のアクチュエータを備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータ、駆動装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する高分子アクチュエータは、広く知られている。高分子アクチュエータの一つとして、電極とエラストマー層とが積層された積層型のアクチュエータがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/031137号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の積層型のアクチュエータを駆動装置や電子機器等に適用した場合、電圧印加時に得られるひずみが減少することがある。
【0005】
本開示の目的は、電圧印加時に得られるひずみの減少を抑制することができるアクチュエータ、それを備える駆動装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、第1の開示は、
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータ本体と、
第1の面に設けられ、第1の面の伸縮を拘束する第1の拘束部材と、
第2の面に設けられ、第2の面の伸縮を拘束する第2の拘束部材と
を備え、
アクチュエータ本体は、
第1の電極と、
第1の電極と対向する第2の電極と、
第1の電極および第2の電極の間に設けられたエラストマー層と
を備え、
第1の電極が、パターン電極であり、
第1の拘束部材および第2の拘束部材は、第1の電極に対応して設けられているアクチュエータである。
【0007】
第2の開示は、
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータと、
第1の面に設けられた被駆動体と、
第2の面に設けられた基材と
を備え、
アクチュエータは、第1の電極と、第1の電極と対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に設けられたエラストマー層とを備え、
被駆動体は、第1の面を拘束する第1の拘束部材を備え、
基材は、第2の面を拘束する第2の拘束部材を備え、
第1の電極が、パターン電極であり、
第1の拘束部材および第2の拘束部材は、第1の電極に対応して設けられている駆動装置である。
【0008】
第3の開示は、
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータ本体と、
第1の面に設けられ、第1の面の伸縮を拘束する第1の拘束部材と、
第2の面に設けられ、第2の面の伸縮を拘束する第2の拘束部材と
を備え、
アクチュエータ本体は、
第1の電極と、
第1の電極と対向する第2の電極と、
第1の電極および第2の電極の間に設けられたエラストマー層と
を備え、
第1の電極が、間隙および孔部のうちの少なくとも一方を有し、
第1の拘束部材および第2の拘束部材は、第1の電極に対応して設けられているアクチュエータである。
【0009】
第4の開示は、第1または第3の開示のアクチュエータを備える駆動装置である。
【0010】
第5の開示は、第1または第3の開示のアクチュエータを備える電子機器である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1Aは、対向する第1の面および第2の面の全体が拘束されたアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
図1Bは、
図1Aに示したアクチュエータの応力-ひずみ特性を示すグラフである。
【
図2】
図2Aは、アレイ化されたアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
図2Bは、
図2Aに示したアクチュエータの応力-ひずみ特性を示すグラフである。
【
図3】
図3Aは、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
図3Bは、
図3Aに示したアクチュエータの応力-ひずみ特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータの構成の一例を示す射視図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータの構成の一例を示す分解射視図である。
【
図6】
図6は、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータの動作の一例について説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図13】
図13は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す拡大断面図である。
【
図15】
図15は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図16】
図16は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図18】
図18は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの製造方法の一例を説明するための断面図である。
【
図19】
図19は、本開示の第1の実施形態の変形例に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、本開示の第2の実施形態に係るアクチュエータの構成の一例を示す断面図である。
【
図22】
図22は、本開示の第2の実施形態に係るアクチュエータの構成の一例を示す分解射視図である。
【
図23】
図23A、
図23Bはそれぞれ、本開示の第2の実施形態に係るアクチュエータの動作の一例について説明するための断面図である。
【
図24】
図24は、応用例としての撮影装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図25】
図25Aは、レンズおよびこのレンズを保持するホルダの構成の一例を示す平面図である。
図25Bは、
図25AのXXVB-XXVBに沿った断面図である。
【
図27】
図27は、応用例としての表示装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図28】
図28は、応用例としての多点触感ディスプレイの構成の一例を示す断面図である。
【
図29】
図29Aは、試験例1のシミュレーションのモデルを示す概略図である。
図29Bは、試験例1のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【
図30】
図30Aは、試験例2のシミュレーションのモデルを示す概略図である。
図30Bは、試験例2のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【
図31】
図31Aは、試験例3のシミュレーションのモデルを示す概略図である。
図31Bは、試験例3のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【
図32】
図32Aは、試験例4~12のシミュレーションのモデルを示す概略図である。
図32Bは、試験例4~12のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【
図33】
図33は、試験例13、14のシミュレーションのモデルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態および応用例について以下の順序で説明する。なお、以下の実施形態および応用例の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
1 第1の実施形態(アクチュエータの例)
2 第2の実施形態(アクチュエータの例)
3 応用例(撮影装置の例)
4 応用例(表示装置の例)
5 応用例(多点触感ディスプレイの例)
【0013】
<1 第1の実施形態>
[概要]
図1Aは、対向する第1の面S101および第2の面S102の全体が拘束されたアクチュエータ110の構成の一例を示す断面図である。
図1Bは、
図1Aに示したアクチュエータ110を駆動したときの応力(Stress)-ひずみ(Strain)特性(以下「S-S特性」という。)を示すグラフである。アクチュエータ110は、複数のエラストマー層111と、複数の電極112と、複数の電極113とを備える。電極112および電極113が、エラストマー層111を間に挟むようにして交互に積層されている。アクチュエータ110の周縁には、複数の電極112に接続された取り出し電極114と、複数の電極113に接続された取り出し電極115とが設けられている。
【0014】
上述のような構成を有するアクチュエータ110を駆動装置や電子機器等に適用する場合、第1の面S101が被駆動体21に貼り合わされるため、第1の面S101の全体が被駆動体21により拘束される。一方、第2の面S102に基材22が貼り合わされ、第2の面S102の全体が基材22により拘束される。このように第1の面S101および第2の面S102の全体が拘束されると、
図1Bに示すように、第1の面S101および第2の面S102が無拘束の場合に比べて、ひずみが著しく低下する。すなわちアクチュエータ110の変位量が著しく低下する。誘電エラストマーアクチュエータであるアクチュエータ110は、低剛性かつ非圧縮であるため、第1の面S101および第2の面S102の拘束による影響を受けやすい。特にアクチュエータ110を薄型化した場合に、第1の面S101および第2の面S102の拘束により、変位量が著しく低下する。
【0015】
図2Aは、アレイ化されたアクチュエータ120の構成の一例を示す断面図である。
図2Bは、
図2Aに示したアクチュエータ120を駆動したときのS-S特性を示すグラフである。本発明者らの知見によれば、
図2Aに示すように、アレイ化されたアクチュエータ120では、第1の面S101および第2の面S102の全面が拘束されたアクチュエータ110(
図1A参照)に比べて、ひずみの減少を抑制することができる。すなわち、アクチュエータ120の変位量が低下することを抑制することができる。しかしながら、アレイ化されたアクチュエータ120では、アクチュエータ120の構成および作製プロセスが複雑になる。
【0016】
そこで、本発明者らは、アクチュエータの構成および作製プロセスが複雑化することを抑制しつつ、電圧印加時に得られるひずみの減少を抑制することができるアクチュエータについて鋭意検討した。その結果、
図3Aに示すように、電極12に応じた拘束部材14、15をそれぞれアクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2に設ける構成を見出すに至った。以下では、このような構成を有するアクチュエータ10について説明する。
【0017】
[アクチュエータの構成]
図3Aは、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータ10の構成の一例を示す断面図である。
図3Bは、アクチュエータ10を駆動したときのS-S特性を示すグラフである。
図4は、アクチュエータ10の構成の一例を示す射視図である。
図5は、アクチュエータ10の構成の一例を示す分解射視図である。アクチュエータ10は、積層型の誘電エラストマーアクチュエータ(Dielectric Elastomer Actuator:DEA)である。アクチュエータ10は、矩形のフィルム状を有する。なお、本開示においては、フィルムには、シートも含まれるものと定義する。
【0018】
図3A、
図4に示すように、アクチュエータ10は、アクチュエータ本体10Aと、拘束部材(第1の拘束部材)14と、拘束部材(第2の拘束部材)15と、取り出し電極(第1の取り出し電極)16と、取り出し電極(第2の取り出し電極)17とを備える。取り出し電極16、17は、配線(図示せず)を介して電圧源(図示せず)に電気的に接続される。アクチュエータ10は、電圧の印加により、アクチュエータ10の面内方向に伸縮可能に構成されている。すなわち、アクチュエータ10は、アクチュエータ10の厚さ方向に変位可能に構成されている。
【0019】
アクチュエータ10では、
図3Bに示すように、第1の面S101および第2の面S102の全面が拘束されたアクチュエータ110(
図1A参照)に比べて、ひずみの減少を抑制することができる。すなわち、アクチュエータ10の変位量が低下することを抑制することができる。
【0020】
アクチュエータ10は、各種の駆動装置または電子機器に適用可能である。この場合、アクチュエータ10は、駆動装置または電子機器が有する基材22上に固定される。また、アクチュエータ10上には、駆動装置または電子機器が有する被駆動体21が固定される。アクチュエータ10と基材22の間は接着材(図示せず)により貼り合わされ、アクチュエータ10と被駆動体21の間は接着材(図示せず)により貼り合わされている。なお、本開示においては、粘着(pressure sensitive adhesion)は接着(adhesion)の一種と定義する。
【0021】
アクチュエータ10が適用可能な駆動装置の具体例としては、レンズ駆動装置、手ぶれ補正装置、振動デバイス(触覚ディスプレイ、バイブレータ、音響変換器(スピーカ等))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アクチュエータ10が適用可能な電子機器の具体例としては、パーソナルコンピュータ、モバイル機器、携帯電話、タブレット型コンピュータ、表示装置、撮影装置、オーディオ機器、ゲーム機器、工業用器具、ロボット等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
(アクチュエータ本体)
アクチュエータ本体10Aは、矩形のフィルム状を有する。アクチュエータ本体10Aは、対向する第1の面S1および第2の面S2を有する。アクチュエータ本体10Aは、第1、第2の面S1、S2がそれぞれ拘束部材14、15により拘束された拘束部10Bと、第1、第2の面S1、S2がそれぞれ拘束部材14、15により拘束されていない非拘束部10Cとを有している。ここで、拘束部10Bとは、アクチュエータ本体10Aのうち、拘束部材14、15で挟まれた部分をいい、非拘束部10Cとは、アクチュエータ本体10Aのうち、隣り合う拘束部10B間に設けられ、拘束部材14、15で挟まれていない部分をいう。
【0023】
アクチュエータ本体10Aは、
図3A、
図5に示すように、積層体であり、複数のエラストマー層11と、複数の電極(第1の電極)12と、複数の電極(第2の電極)13とを備える。絶縁性の観点からすると、アクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2は、エラストマー層11で覆われていることが好ましい。
【0024】
(エラストマー層)
エラストマー層11は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に伸縮性を有する。エラストマー層11は、電極12、13の間に設けられている。エラストマー層11は、矩形状を有するフィルムである。エラストマー層11は、いわゆる誘電エラストマー層である。エラストマー層11は、例えば、絶縁性伸縮材料として絶縁性エラストマーを含む。絶縁性エラストマーは、例えば、アクリルゴム、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、水素化アクリルニトリル-ブタジエン共重合ゴム(H-NBR)、ヒドリン系ゴム、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴムおよびウレタンゴム等のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
エラストマー層11は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、架橋剤、可塑剤、老化防止剤、界面活性剤、粘度調整剤、補強剤および着色剤等のうちの少なくとも1種である。
【0026】
(電極)
電極12、13は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に伸縮性を有する。これにより、電極12、13はエラストマー層11の伸縮に追従して伸縮することができる。電極12、13は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に間隙を有している。具体的には、電極12、13は、ストライプ状のパターンを有するパターン電極である。電極13は、電極12に対向している。電極12および電極13は、エラストマー層11を間に挟むようにして交互に積層されている。電極12、13は、エラストマー層11を挟んで重なる。電極12は、エラストマー層11の第1の長辺部まで延設されている。電極13は、エラストマー層11の第2の長辺部まで延設されている。これにより、アクチュエータ本体10Aの第1の長辺部側の側面から電極12の端部が露出し、アクチュエータ本体10Aの第2の長辺部側の側面から電極13の端部が露出する。
【0027】
電極12、13のヤング率は、エラストマー層11のヤング率の10倍以下であることが好ましい。電極12、13のヤング率がエラストマー層11のヤング率の10倍以下であると、電極12、13の剛性による変形量の減少を抑制することができる。上記のヤング率は、JIS K 6251:2010に準拠して測定された値である。
【0028】
電極12、13は、導電性材料を含む。導電性材料は、例えば、導電性フィラーおよび導電性高分子のうちの少なくとも1種である。導電性フィラーの形状としては、例えば、球状、楕円体状、針状、板状、鱗片状、チューブ状、ワイヤー状、棒状(ロッド状)、繊維状、不定形状等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。なお、1種の形状の導電性フィラーのみを用いてもよいし、2種以上の形状の導電性フィラーを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
導電性フィラーは、例えば、炭素系フィラー、金属系フィラー、金属酸化物系フィラーおよび金属被覆系フィラーのうちの少なくとも1種を含む。ここで、金属には、半金属が含まれるものと定義する。
【0030】
炭素系フィラーは、例えば、カーボンブラック(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、ポーラスカーボン、炭素繊維(例えばPAN系、ピッチ系等)、カーボンナノファイバー、フラーレン、グラフェン、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(例えばSWCNT、MWCNT等)、カーボンマイクロコイルおよびカーボンナノホーンのうちの少なくとも1種を含む。
【0031】
金属系フィラーは、例えば、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモンおよび鉛のうちの少なくとも1種を含む。
【0032】
金属酸化物系フィラーは、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛、酸化亜鉛-酸化錫、酸化インジウム-酸化錫または酸化亜鉛-酸化インジウム-酸化マグネシウムを含む。
【0033】
金属被覆系フィラーは、ベースフィラーを金属で被覆したものである。ベースフィラーは、例えば、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、酸化亜鉛または酸化チタンである。ベースフィラーを被覆する金属は、例えば、NiおよびAlのうちの少なくとも1種を含む。
【0034】
導電性高分子は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリアセチレンおよびポリピロールのうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
電極12、13が、必要に応じてバインダ、ゲル、懸濁液およびオイルのうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。バインダは、伸縮性を有している。バインダは、エラストマーであることが好ましい。エラストマーとしては、エラストマー層11と同様のものを例示することができる。
【0036】
電極12、13が、必要に応じて添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、エラストマー層11と同様のものを例示することができる。
【0037】
電極12、13はコンポジット材料(複合材料)を含んでいてもよい。コンポジット材料は、例えば、導電性高分子および導電性フィラーの少なくとも1種とエラストマーとのコンポジット材料、伸縮性のイオン導電性材料と電界質とのコンポジット材料、導電性高分子および導電性フィラーの少なくとも1種と高分子の懸濁液(アクリルエマルジョン等)とのコンポジット材料、導電性高分子および導電性フィラーの少なくとも1種とブロックコポリマとのコンポジット材料、および高分子ゲルとイオン導電体とのコンポジット材料のうちの少なくとも1種を含む。
【0038】
(拘束部材)
拘束部材14は、アクチュエータ本体10Aの面内方向における第1の面S1の伸縮を拘束する。拘束部材15は、アクチュエータ本体10Aの面内方向における第2の面S2の伸縮を拘束する。
【0039】
拘束部材14は、アクチュエータ本体10Aの第1の面S1に設けられている。拘束部材15は、アクチュエータ本体10Aの第2の面S2に設けられている。拘束部材14、15は、アクチュエータ本体10Aを挟んで対向している。拘束部材14、15は、電極12、13に対応して設けられている。具体的には、拘束部材14、15は、アクチュエータ本体10Aの厚さ方向に電極12、13に重なるように設けられている。
図3A、
図4、
図5では、拘束部材14、15と電極12、13の全体が重なる例が示されているが、拘束部材14、15と電極12、13の重なりは一部であってもよい。
【0040】
拘束部材14、15は、電極12、13と同様のパターン、すなわちストライプ状のパターンを有している。
【0041】
拘束部材14、15は、アクチュエータ本体10Aの拘束部10Bよりも硬いことが好ましい。拘束部材14、15が拘束部10Bよりも硬いことで、アクチュエータ10の駆動時における被駆動体21の駆動を安定化させることができる。拘束部材14、15を構成する材料は特に限定されるものではなく、有機材料により構成されていてもよいし、無機材料により構成されていてもよい。
【0042】
拘束部材14、15のヤング率は、アクチュエータ本体10Aのヤング率の3倍以上であることが好ましい。拘束部材14、15のヤング率がアクチュエータ本体10Aのヤング率の3倍以上であると、アクチュエータ10の駆動時における被駆動体21の駆動を安定化させることができる。上記のヤング率は、JIS K 6251:2010に準拠して測定された値である。
【0043】
アクチュエータ本体10Aの駆動部の幅w1をw1=1とした場合、アクチュエータ本体10Aの非駆動部の幅w2が0.1≦w2≦10であることが好ましい。アクチュエータ本体10Aの非駆動部の幅w2がw2<0.1であると、拘束部材14、15の影響で変位量が低下する。一方、アクチュエータ本体10Aの駆動部の幅w2が10<w2であると、駆動方向と直交する断面での駆動部の割合が減少するため、発生力が低下する。
【0044】
アクチュエータ本体10Aの駆動部の幅w1をw1=1とした場合、アクチュエータ本体10Aの厚さhが0.1≦h≦10であることが好ましい。アクチュエータ本体10Aの厚さhがh<0.1であると、拘束部材14、15の影響で変位量が低下する。一方、アクチュエータ本体10Aの厚さhが10<hであると、w2/hで決まるアスペクト比が小さくなり、発生力が駆動方向と直交する方向に逃げてしまうことで、発生力が低下する。
【0045】
本明細書において、駆動部の幅w
1、非駆動部の幅w
2およびアクチュエータ本体10Aの厚さhは、アクチュエータ10を駆動していない状態におけるものを意味する。本明細書において、駆動部とは、アクチュエータ本体10Aのうち、エラストマー層11および電極12、13のすべてが重なりあっている部分のことをいう。
図3Aにおいては、駆動部が拘束部10Bである例が示されている。一方、非駆動部とは、隣接する駆動部の間の部分のことをいう。
図3Aにおいては、非駆動部が非拘束部10Cである例が示されている。
【0046】
(取り出し電極)
取り出し電極16、17は、伸縮性を有していることが好ましい。これにより、取り出し電極16、17がアクチュエータ本体10Aの伸縮に追従して伸縮することができる。したがって、取り出し電極16、17がそれぞれ、アクチュエータ本体10Aの第1、第2の長辺側の側面から剥離することを抑制できる。
【0047】
取り出し電極16は、アクチュエータ本体10Aの第1の長辺部側の側面に設けられている。取り出し電極16は、アクチュエータ本体10Aの第1の長辺部側の側面から露出した電極12の端部に接触している。取り出し電極17は、アクチュエータ本体10Aの第2の長辺部側の側面に設けられている。取り出し電極17は、アクチュエータ本体10Aの第2の長辺部側の側面から露出した電極13の端部に接触している。
【0048】
取り出し電極16、17は、導電性材料を含んでいる。導電性材料としては、電極12、13と同様のものを例示することができる。取り出し電極16、17が、必要に応じて伸縮性を有するバインダを含んでいてもよい。バインダは、エラストマーであることが好ましい。エラストマーとしては、エラストマー層11と同様のものを例示することができる。
【0049】
[アクチュエータの動作]
次に、
図6を参照して、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータ10の動作の一例について説明する。
【0050】
電極12、13間に駆動電圧が印加されると、電極12、13間にクーロン力による引力が作用する。このため、エラストマー層11のうち電極12、13間に挟まれた部分は、その厚さ方向に圧縮されて、アクチュエータ本体10Aの面内方向に伸長され、薄くなる。これにより、非拘束部10Cには、両隣に位置する拘束部10Bから非拘束部10Cに向かって力F1、F2が作用し、非拘束部10Cがアクチュエータ本体10Aの面内方向に圧縮される。この圧縮に応じて拘束部材14の間隙14Aおよび拘束部材15の間隙15Aに向って非拘束部10Cが盛り上がる。
【0051】
したがって、アクチュエータ本体10Aの拘束部10Bの厚さが薄くなり、第2の面S2の位置、すなわち被駆動体21の位置が下方に変位する。本明細書において、“下方”とは、第1の面S1から第2の面S2に向かうアクチュエータ本体10Aの厚さ方向を意味するものとする。
【0052】
一方、電極12、13間に印加されていた駆動電圧が解除されると、電極12、13間にクーロン力による引力が作用しなくなる。このため、エラストマー層11のうち電極12、13間に挟まれた部分は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に収縮して元の厚さに戻る。これにより、非拘束部10Cに作用していたF1、F2が解除され、非拘束部10Cの盛り上がりが元に戻る。
【0053】
したがって、アクチュエータ本体10Aの拘束部10Bの厚さが元に戻り、第2の面S2の位置、すなわち被駆動体21の位置が上方に変位し元に戻る。本明細書において、“上方”とは、第2の面S2から第1の面S1に向かうアクチュエータ本体10Aの厚さ方向を意味するものとする。
【0054】
なお、アクチュエータ10を各種の駆動装置または電子機器に適用する場合、アクチュエータ10のデフォルトの状態(初期状態)が、アクチュエータ10に予め規定の電圧が印加されている状態であってもよいし、アクチュエータ10に電圧が印加されていない状態であってもよい。
【0055】
[アクチュエータの製造方法]
次に、本開示の第1の実施形態に係るアクチュエータ10の製造方法の一例について説明する。
【0056】
(エラストマー層形成用塗料の調製工程)
エラストマーを溶剤に加えて分散させることにより、エラストマー層形成用塗料を調製する。必要に応じて、添加剤を溶剤にさらに加えるようにしてもよい。溶剤は、エラストマー等を分散できるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0057】
(導電性塗料の調製工程)
導電性材料を溶剤に加えて分散させることにより、電極形成用塗料である導電性塗料を調製する。必要に応じて、バインダおよび添加剤のうちの少なくとも1種を溶剤にさらに加えるようにしてもよい。溶剤は、導電性材料等を分散できるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0058】
(アクチュエータ本体の作製工程)
アクチュエータ本体10Aを次のようにして作製する。まず、板状の基材を準備し、必要に応じて基材の表面に剥離処理を施す。基材としては、無機基材およびプラスチック基材のいずれであってもよい。
【0059】
次に、エラストマー層形成用塗料を基材の一方の面に塗布し、乾燥させる。これにより、基材の一方の表面にエラストマー層11が形成される。ここで、塗布には印刷も含まれるものとする。次に、必要に応じて、このエラストマー層11の一方の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0060】
次に、エラストマー層11の一方の表面に導電性塗料をストライプ状に塗布し、乾燥させる。これにより、エラストマー層11の一方の表面に電極12が形成される。次に、必要に応じて、電極12が形成されたエラストマー層11の一方の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0061】
次に、エラストマー層形成用塗料を、電極12が形成されたエラストマー層11の一方の表面に塗布し、乾燥させる。これにより、電極12上にエラストマー層11が形成される。次に、必要に応じて、このエラストマー層11の一方の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0062】
次に、エラストマー層11の一方の表面に導電性塗料をストライプ状に塗布し、乾燥させる。これにより、エラストマー層11の一方の表面に電極13が形成される。次に、必要に応じて、電極13が形成されたエラストマー層11の一方の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0063】
次に、エラストマー層形成用塗料を、電極13が形成されたエラストマー層11の一方の表面に塗布し、乾燥させる。これにより、電極13上にエラストマー層11が形成される。次に、必要に応じて、このエラストマー層11の一方の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0064】
次に、電極12の形成工程、エラストマー層11の形成工程および電極13の形成工程を繰り返すことにより、基材の一方の表面上に積層物を形成する。次に、基材から積層物の全体を剥離するか、または基材から積層物の一部を剥離する。これにより、積層体としてのアクチュエータ本体10Aが得られる。
【0065】
(拘束部材の形成工程)
続いて、拘束部材形成用塗料をそれぞれアクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2に塗布し、硬化させることにより、拘束部材14、15を形成する。なお、拘束部材14、15の形成方法はこれに限定されるものではなく、例えば、予め形成された拘束部材14、15をそれぞれアクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2に貼り合わせるようにしてもよい。あるいは、アクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2に薄膜を形成したのち、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて薄膜をパターニングすることにより、拘束部材14、15を形成するようにしてもよい。以上により、目的とするアクチュエータ10が得られる。
【0066】
[効果]
第1の実施形態に係るアクチュエータ10では、拘束部材14、15は、電極12、13に対応して設けられているので、アクチュエータ本体10Aをアレイ化(
図2A参照)せずに、電圧印加時に得られるひずみの減少を抑制することができる。したがって、アクチュエータ110の構成の複雑化を抑制しつつ、アクチュエータ10の変位量の低下を抑制することができる。
【0067】
また、拘束部材14、15は、塗布や貼り合わせ等によりアクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2に容易に形成することができるので、作製プロセスの複雑化を抑制することができる。
【0068】
[変形例]
(変形例1)
上述の第1の実施形態では、アクチュエータ10が拘束部材14、15を備える場合について説明したが、被駆動体21が拘束部材14を備えるようにしてもよい。この場合、拘束部材14は、アクチュエータ本体10Aの第1の面S1に向けて突出した凸部である。基材22が拘束部材15を備えるようにしてもよい。この場合、拘束部材15は、アクチュエータ本体10Aの第2の面S2に向けて突出した凸部である。
【0069】
(変形例2)
上述の第1の実施形態では、アクチュエータ10が、パターン電極である複数の電極13を備える場合について説明したが、アクチュエータ10が、
図7、
図8に示すように、複数の電極13に代えて、パターンを有していない非パターン電極18を備えるようにしてもよい。非パターン電極18は、複数の電極13が対向する領域全体に連続的に形成された層である。
図7、
図8では、非パターン電極18が矩形状を有する例が示されているが、非パターン電極18の形状はこれに限定されるものでなはい。
【0070】
電極13は、エラストマー層11の第1、第2の短辺部まで延設されている。これにより、アクチュエータ本体10Aの第1、第2の短辺側の側面から電極13の端部が露出する。取り出し電極17は、アクチュエータ本体10Aの第1、第2の短辺部側の側面のいずれかに設けられている。
【0071】
上述のようにアクチュエータ10が非パターン電極18を備えることで、アクチュエータ10の製造プロセスを簡略化することができる。
【0072】
(変形例3)
アクチュエータ10が、
図9、
図10に示すように、複数のダミー電極19をさらに備えるようにしてもよい。ダミー電極19は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に伸縮性を有する。ダミー電極19は、隣り合う電極12の間隙に設けられる。ダミー電極19は、ストライプ状を有しているパターン電極である。ダミー電極19は、電極12と同様の材料により構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよいが、電極12と同様の材料により構成されていることが好ましい。この場合、電極12とダミー電極19を同時に形成することができるので、アクチュエータ10の製造プロセスを簡略化することができる。
【0073】
上述のようにアクチュエータ10が複数のダミー電極19を備えることで、電極12の間隙の部分で段差が発生することを抑制することができる。したがって、エラストマー層11の平面性を保持することができるで、高品質なアクチュエータ10を提供することができる。
【0074】
(変形例4)
上述の第1の実施形態では、電極12、13がストライプ状のパターンを有する場合について説明したが、電極12、13が有するパターンは、これに限定されるものではなく、間隙および孔部のうちの少なくとも一方を有する種々のパターンを用いることがきる。例えば、メッシュ状(
図11A参照)、格子状(
図11B参照)、ドット状(
図12A参照)、ミアンダ状、放射状、幾何学模様状、ミアンダ状、同心状(例えば同心円状)、螺旋状、蜘蛛の巣状、ツリー状、魚の骨状または網目状等のパターンを用いることができる。また、電極12、13が間隙および孔部のうちの少なくとも一方を有していれば、パターンを有していなくてよい。例えば、電極12、13がリング状(
図12B参照)であってもよい。拘束部材14、15は、上述の電極12、13と同様の形状とすることができる。
【0075】
(変形例5)
図13に示すように、拘束部10Bにおけるエラストマー層11の厚さd1が、非拘束部10Cにおけるエラストマー層11の厚さd2に比べて薄くなっていてもよい。この場合、アクチュエータ10の駆動電圧を低減することができる。
【0076】
上述の構成を有するアクチュエータ10は、例えば、以下のようにして作製される。まず、上述の第1の実施形態と同様にしてアクチュエータ本体10Aを作製する。次に、
図14Aに示すように、アクチュエータ本体10Aを面内方向に伸長する。伸長方向は、例えば、矩形状を有するアクチュエータ本体10Aの長手方向および短手方向のうちの少なくも一方向である。
【0077】
次に、
図14Bに示すように、アクチュエータ本体10Aを伸長した状態を維持しつつ、アクチュエータ本体10Aの第1、第2の面S1、S2にそれぞれ、拘束部材14、15を形成する。次に、
図14Cに示すように、アクチュエータ本体10Aの伸長を解除する。これにより、拘束部10Bは拘束部材14、15により伸長された状態で維持されるのに対して、非拘束部10Cは元の状態に戻る。これにより、
図13に示した構成を有するアクチュエータ10が得られる。
【0078】
(変形例6)
アクチュエータ10が、
図15に示すように、板バネ31、32と、保持部材33、34とをさらに備えるようにしてもよい。板バネ31、32は、第1の面S1および第2の面S2の側から、拘束部材14、15を介してアクチュエータ本体10Aを挟む挟持部材である。板バネ31、32は、長尺状を有する。板バネ31は、アクチュエータ本体10Aの第1の面S1に対向して設けられている。板バネ31は、拘束部材14を押圧している。板バネ32は、アクチュエータ本体10Aの第2の面S2に対向して設けられている。板バネ32は、拘束部材15を押圧している。保持部材33、34は、板バネ31、32をそれぞれ第1、第2の面S1、S2に向けて付勢するように、板バネ31、32の両端を保持する。保持部材33、34は、リング状を有する弾性部材である。
【0079】
上述の構成を有するアクチュエータ10では、板バネ31、32がそれぞれ、拘束部材14、15を押圧しているので、アクチュエータ本体10Aの第1の面S1と第2の面S2の両方の側から拘束部10Bに対して圧縮力が加わる。これにより、拘束部10Bにおけるエラストマー層11の厚さd1が、非拘束部10Cにおけるエラストマー層11の厚さd2に比べて薄くなる(
図13参照)。したがって、アクチュエータ10の駆動電圧を低減することができる。また、エラストマー層11と、電極12、13の密着性を向上することができる。さらに、板バネ31、32によりアクチュエータ本体10Aが挟まれているので、アクチュエータ本体10Aを構成する各層の剥離を抑制することもできる。
【0080】
(変形例7)
アクチュエータ10が、
図16に示すように、磁石35、36をさらに備えるようにしてもよい。磁石35、36は、第1の面S1および第2の面S2の側から、拘束部材14、15を介してアクチュエータ本体10Aを挟む挟持部材である。磁石35、36は、引き付け合っている。磁石35は、アクチュエータ本体10Aの第1の面S1に対向して設けられている。磁石35は、拘束部材14を押圧している。磁石36は、アクチュエータ本体10Aの第2の面S2に対向して設けられている。磁石36は、拘束部材15を押圧している。
【0081】
上述の構成を有するアクチュエータ10では、磁石35、36がそれぞれ、拘束部材14、15を押圧しているので、変形例6と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(変形例8)
上述の第1の実施形態では、アクチュエータ本体10Aが、矩形状を有する複数のエラストマー層11を備える場合について説明したが、アクチュエータ本体10Aが、
図17に示すように、ループ状を有する複数のエラストマー層11Aを備えるようにしてもよい。複数のエラストマー層11Aは、同心状に積層されている。最内周側に位置するエラストマー層11Aの半周部同士が、複数の電極13を挟むようにして重ね合わされている。電極12、13は、エラストマー層11Aを間に挟むようにして交互に積層されている。最外周側に位置するエラストマー層11Aの一方の半周部の外周面に、拘束部材14が設けられ、他方の半周部の外周面に、拘束部材15が設けられている。
【0083】
以下、
図18を参照して、上述の構成を有するアクチュエータ本体10Aの製造方法の一例について説明する。まず、円柱状の基材37を準備し、必要に応じて基材37の周面(円柱面)に剥離処理を施す。次に、導電性塗料を基材37の周面に塗布し、基材37の中心軸に平行なストライプ状の塗膜を形成する。続いて、基材37の周面に形成した塗膜を乾燥させる。これにより、基材37の周面に電極13が形成される。次に、必要に応じて、この電極13の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0084】
次に、基材37の周面にエラストマー層形成用塗料を塗布し、円筒状の塗膜を形成する。続いて、基材37の周面に形成した塗膜を乾燥させる。これにより、電極13上にエラストマー層11が形成される。次に、必要に応じて、このエラストマー層11の一方の表面に、密着性改善の処理を施すようにしてもよい。
【0085】
次に、上述の電極13の形成工程と同様にして、エラストマー層11の周面に電極12を形成する。
【0086】
次に、電極13の形成工程、エラストマー層11の形成工程および電極12の形成工程を繰り返すことにより、基材37の周面上に積層物を形成したのち、基材37から積層物の全体を剥離するか、または基材37から積層物の一部を剥離する。これにより、ループ状のアクチュエータ本体10Aが得られる。
【0087】
(変形例9)
上述の第1の実施形態では、矩形状のエラストマー層11とストライプ状の電極12、13を交互に積層することにより、矩形状のアクチュエータ本体10Aを作製する場合について説明したが、アクチュエータ本体10Aの作製方法はこれに限定されるものではない。
例えば、変形例8で説明したように、ループ状の積層体(アクチュエータ本体10A)を作製したのち、この積層体を切断し広げて、矩形状のアクチュエータ本体10Aを作製するようにしてもよい。
【0088】
(変形例10)
上述の第1の実施形態では、アクチュエータ10が、複数のエラストマー層11を備える説明したが、複数のエラストマー層11に代えて、
図19に示すように、複数のエラストマー層41および複数のエラストマー層42を備えるようにしてもよい。
【0089】
エラストマー層41は、電極12、13と同一またはほぼ同一の大きさを有する以外の点では、第1の実施形態におけるエラストマー層11と同様である。拘束部10Bは、複数の電極12と、複数の電極13と、複数のエラストマー層41との積層体により構成される。
【0090】
エラストマー層42は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に隣り合う拘束部10Bの間に設けられている。エラストマー層42は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。非拘束部10Cは、エラストマー層42により構成される。
【0091】
上述の構成を有するアクチュエータ10は次のようにして作製される。まず、
図20Aに示すように、電極12と電極13の間にエラストマー層11が挟まれるようにして、同一のサイズを有するエラストマー層11と電極12と電極13とからなる積層体を形成する。
【0092】
次に、
図20Bに示すように、拘束部10Bを構成する複数の積層体を切り出し、図示しない基材上に一定の間隔で一列に載置する。次に、
図20Cに示すように、隣り合う拘束部10Bの間にエラストマー層形成用塗料に充填したのち、エラストマー層形成用塗料を硬化させる。これにより、複数の非拘束部10Cが形成される。次に、図示しない基材から、一体となった複数の拘束部10Bと複数の非拘束部10Cを剥離する。これにより、目的とするアクチュエータ本体10Aが得られる。
【0093】
<2 第2の実施形態>
[アクチュエータの構成]
図21は、本開示の第2の実施形態に係るアクチュエータ210の構成の一例を示す断面図である。
図22は、アクチュエータ210の構成の一例を示す分解射視図である。アクチュエータ210は、第1の実施形態におけるアクチュエータ本体10A(
図3A、
図5参照)に代えて、アクチュエータ本体210Aを備える。アクチュエータ本体210Aは、複数の電極(第3の電極)211をさらに備えると共に、複数の電極13(
図3A、
図5参照)に代えて電極212を備える点において、第1の実施形態におけるアクチュエータ本体10Aとは異なっている。なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
電極211は、アクチュエータ本体10Aの面内方向に伸縮性を有する。電極211は、ストライプ状のパターンを有するパターン電極である。電極211は、隣り合う電極12の間隙に設けられると共に、エラストマー層11を挟んで電極212と対向する。電極211は、エラストマー層11の第2の長辺部まで延設されている。これにより、アクチュエータ本体10Aの第2の長辺部側の側面から電極211の端部が露出する。第2の実施形態においては、取り出し電極17は、複数の電極211の取り出し電極となる。電極211を構成する材料は、第1の実施形態における電極12、13と同様である。
【0095】
電極212は、第1の実施形態の変形例2における非パターン電極18(
図7、
図8参照)と同様である。
【0096】
[アクチュエータの動作]
次に、本開示の第2の実施形態に係るアクチュエータ210の動作の一例について説明する。
【0097】
電極211、212間に駆動電圧が印加されていない状態において、電極12、212間に駆動電圧が印加されると、電極211、212間および電極12、212間のうち電極12、212間のみにクーロン力による引力が作用する。このため、エラストマー層11のうち電極12、212間に挟まれた部分は、アクチュエータ本体210Aの面内方向に伸長され、薄くなる。この伸長により、
図23Aに示すように、アクチュエータ本体210Aの非拘束部10Dには、非拘束部10Dの両隣に位置する拘束部10Bから非拘束部10Dに向かって力F1、F2が作用する。この力F1、F2の作用により、非拘束部10Dがアクチュエータ本体10Aの面内方向に圧縮され、この圧縮に応じて非拘束部10Dが間隙14A、15Aに向かって盛り上がり、非拘束部10Dの厚さが増加する。したがって、アクチュエータ本体210Aの第1の面S1の位置が初期位置よりも下方に変位し、被駆動体21が初期位置よりも下方に移動する。ここで、初期位置とは、電極211、212間および電極12、212間のいずれにも駆動電圧が印加されていないときの位置のことをいう、
【0098】
一方、電極12、212間に印加されていた駆動電圧が停止され、電極211、212間に駆動電圧が印加されると、電極12、212間および電極211、212間のうち電極211、212にのみクーロン力による引力が作用する。このため、エラストマー層11のうち電極211、212に挟まれた部分は、アクチュエータ本体210Aの面内方向に伸長され、薄くなる。この伸長により、
図23Bに示すように、アクチュエータ本体210Aの拘束部10Bには、拘束部10Bの両隣に位置する非拘束部10Dから拘束部に10Bに向かって力F3、F4が作用する。この力F3、F4の作用により、拘束部10Bがアクチュエータ本体10Aの面内方向に圧縮され、この圧縮に応じて拘束部10Bの厚さが増加する。したがって、アクチュエータ本体10Aの拘束部10Bの厚さが増加し、第1の面S1の位置が初期位置よりも上方に変位する。したがって、被駆動体21の位置が初期位置よりも上方に変位する。
【0099】
[効果]
上述したように、第2の実施形態に係るアクチュエータ210は、複数の電極211をさらに備え、電極211は、隣り合う電極12の間隙に設けられている。これにより、電極211、212間に駆動電圧が印加されていない状態において、電極12、212間に駆動電圧が印加されると、拘束部10Bの厚さが減少し、拘束部10Bが初期位置よりも下方に変位する。電極12、212間に印加されていた駆動電圧が停止され、電極211、212間に駆動電圧が印加されると、拘束部10Bの厚さが増加し、拘束部10Bが初期位置よりも上方に変位する。したがって、第1の実施形態に係るアクチュエータ10に比べて、被駆動体21の変位量を増加させることができる。
【0100】
[変形例]
非パターン電極である電極212に代えて、複数の電極12にそれぞれ対向する、ストライプ状のパターンを有する複数の第1の電極と、複数の電極211にそれぞれ対向する、ストライプ状のパターンを有する複数の第2の電極とを備えるようにしてもよい。この場合、電極12と第1の電極との間に電圧を印加することにより拘束部10Bが駆動され、電極211と第2の電極との間に電圧を印加することにより非拘束部10Dが駆動される。
【0101】
<3 応用例>
図24は、応用例としての撮影装置300の構成の一例を示す断面図である。撮影装置300は、いわゆる一眼レフカメラであり、カメラ本体310と、このカメラ本体に対して着脱自在に構成された撮影レンズ320とを備える。撮影装置300は、電子機器の一例である。
【0102】
(カメラ本体)
カメラ本体310は、撮像素子311、モニタ312および電子ビューファインダ313等を備える。撮像素子311は、撮影レンズ320を通じた入射光Lにより形成される被写体光像を光電変換して撮像画像信号を生成する。撮像素子311は、例えば、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサにより構成される。
【0103】
撮像素子311から出力される撮像画像信号は、図示を省略した画像処理部により解像度変換等の画像処理がなされて、モニタ312および電子ビューファインダ313に表示される。また、シャッターボタンが押下されたときには、撮像画像信号は、圧縮処理および記録エンコード処理がなされた後、図示を省略した記録媒体に格納される。
【0104】
モニタ312および電子ビューファインダ313は、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイまたは液晶ディスプレイ等の表示装置により構成される。
【0105】
(撮影レンズ)
撮影レンズ320は、レンズ光学系321およびレンズ制御部(図示せず)等を備える。レンズ光学系321は、複数枚のレンズ321A、321B、321C、およびこれらのレンズ321A、321B、321Cをそれぞれ支持する複数のホルダ(支持部材)322A、322B、322C等を備える。ホルダ322Aは、第1の実施形態またはその変形例に係るアクチュエータ10を複数備え、これらのアクチュエータ10を介してレンズ321Aを支持している。但し、ホルダ322Aが、第1の実施形態またはその変形例に係るアクチュエータ10に代えて、第2の実施形態またはその変形例に係るアクチュエータ110を備えるようにしてもよい。
【0106】
図25Aは、レンズ321Aおよびこのレンズ321Aを保持するホルダ322Aの構成の一例を示す平面図である。
図25Bは、
図25AのXXVB-XXVBに沿った断面図である。
図26は、
図25Bの領域Rを拡大して表す断面図である。レンズ321Aは、オートフォーカス用レンズである。ホルダ322Aは、レンズ支持部331と、複数のアクチュエータ10と、ホルダ本体332とを備える。
【0107】
レンズ支持部331は、リング状を有する。レンズ支持部331は、内周面にレンズ321Aを支持する。レンズ支持部331とレンズ321Aにより被駆動体が構成される。ホルダ本体332は、リング状を有する。ホルダ本体332は、複数のアクチュエータ10を介して、レンズ支持部331を支持する。ホルダ本体332は、レンズ支持部331とレンズ321Aにより構成される被駆動体を支持する基材の一例である。
【0108】
アクチュエータ10は、オートフォーカス用アクチュエータである。アクチュエータ10は、レンズ321Aを、入射光Lの光軸方向に移動させる。アクチュエータ10の第1の面S1が、複数の拘束部材14を介してレンズ支持部331に固定されている。アクチュエータ10の第2の面S2が、複数の拘束部材15を介してホルダ本体332に固定されている。
【0109】
レンズ321Cは、振れ補正用レンズである。ホルダ322Cは、振れ補正アクチュエータ(図示せず)を備える。振れ補正アクチュエータは、レンズ321Cを、入射光Lの光軸に垂直な面内において移動させる。
【0110】
レンズ制御部は、オートフォーカス用アクチュエータ10および振れ補正用アクチュエータを制御する。
【0111】
上述の応用例では、アクチュエータ10が、第1の面S1に拘束部材14を備える場合について説明したが、レンズ支持部331が、アクチュエータ10の第1の面S1に対向する面に拘束部材14を備えるようにしてもよい。上述の応用例では、アクチュエータ10が、第2の面S2に拘束部材15を備える場合について説明したが、ホルダ本体332が、アクチュエータ10の第2の面S2に対向する面に拘束部材15を備えるようにしてもよい。
【0112】
<4 応用例>
図27は、応用例としての表示装置400の構成の一例を示す断面図である。表示装置400は、いわゆる平面スピーカであり、バックシャーシ401、表示パネル402、第1の実施形態またはその変形例に係るアクチュエータ10、および制御部(図示せず)等を備える。
図27では、表示装置400が1つのアクチュエータ10を備える場合が示されているが、表示装置400が複数のアクチュエータ10を備えるようにしてもよい。表示装置400が、第1の実施形態またはその変形例に係るアクチュエータ10に代えて、第2の実施形態またはその変形例に係るアクチュエータ110を備えるようにしてもよい。表示装置400は、電子機器または駆動装置の一例である。
【0113】
バックシャーシ401は、アクチュエータ10を支持する基材の一例であり、表示装置400の背面を構成する。バックシャーシ401は、アクチュエータ10の第2の面S2に設けられている。バックシャーシ401は、表示パネル402と対向する支持面401Sを有する。
【0114】
表示パネル402は、アクチュエータ10により駆動される被駆動体の一例であり、例えば、有機ELパネルまたは液晶パネルである。表示パネル402は、アクチュエータ10の第1の面S1に設けられている。表示パネル402は、バックシャーシ401と対向する背面402Sを有する。
【0115】
アクチュエータ10の第2の面S2が複数の拘束部材15を介して支持面401Sに固定されている。アクチュエータ10の第1の面S1が複数の拘束部材14を介して背面402Sに固定されている。アクチュエータ10は、表示パネル402を騒動させることにより、平面波(音波)を放出する。制御部は、表示パネル402およびアクチュエータ10の駆動を制御する。
【0116】
上述の応用例では、アクチュエータ10が、第1の面S1に拘束部材14を備える場合について説明したが、表示パネル402が、アクチュエータ10の第1の面S1に対向する背面402Sに拘束部材14を備えるようにしてもよい。上述の応用例では、アクチュエータ10が、第2の面S2に拘束部材15を備える場合について説明したが、バックシャーシ401が、アクチュエータ10の第2の面S2に対向する支持面401Sに拘束部材15を備えるようにしてもよい。
【0117】
<5 応用例>
図28は、応用例としての多点触感ディスプレイ500の構成の一例を示す断面図である。多点触感ディスプレイ500は、筒状を有すること以外の点では、第1の実施形態もしくはその変形例に係るアクチュエータ10、または第2の実施形態もしくはその変形例に係るアクチュエータ110と同様である。多点触感ディスプレイ500は、駆動装置の一例である。
【0118】
多点触感ディスプレイ500は、内周面S1に複数の拘束部材14を備え、外周面S2に複数の拘束部材15を備える。多点触感ディスプレイ500では、内周面S1が複数の拘束部材14を介して身体部位501に装着される。多点触感ディスプレイ500が装着される身体部位501としては、例えば、腕、脚または指等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
[試験例]
【0119】
以下、試験例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの試験例のみに限定されるものではない。
【0120】
[試験例1]
図29Aは、試験例1の有限要素法(Finite Element Method:FEM)シミュレーションのモデルを示す概略図である。試験例1では、FEMシミュレーションのモデルとして、正方形のフィルム状を有するアクチュエータ本体10A(DEA:ヤング率0.8MPa、ポアソン比0.5)を用いた。このアクチュエータを駆動したときのS-S特性をFEMシミュレーションにより解析した。その結果を
図29Bに示す。
【0121】
[試験例2]
図30Aは、試験例2のFEMシミュレーションのモデルを示す概略図である。試験例2では、FEMシミュレーションのモデルとして、試験例1のアクチュエータの一主面に正方形の薄板状の剛体が形成されたものを用いた。このアクチュエータを駆動したときのS-S特性をFEMシミュレーションにより解析した。その結果を
図30Bに示す。
【0122】
[試験例3]
図31Aは、試験例3のFEMシミュレーションのモデルを示す概略図である。試験例3では、FEMシミュレーションのモデルとして、試験例1のアクチュエータの一主面にストライプの剛体が形成されたものを用いた。このアクチュエータを駆動したときのS-S特性をFEMシミュレーションにより解析した。その結果を
図31Bに示す。
【0123】
上記のFEMシミュレーションの結果から、一主面にストライプの剛体が形成されたアクチュエータの変位量は、アクチュエータの一主面に正方形の薄板状の剛体が形成されたアクチュエータの変位量に比べて10倍程度大きいことがわかる。
【0124】
[試験例4~12]
図32Aは、試験例4~12のFEMシミュレーションのモデルを示す概略図である。なお、このモデルにおいて、第1の実施形態と対応する箇所には同一の符号を付す。このモデルの歪み維持率および応力維持率をFEMシミュレーションにより解析した。歪み維持率は、w
2=0で、アクチュエータ10の主面を拘束しない無負荷状態での駆動時の変位量を駆動方向のデバイス長さで割った値を基準としたときの各条件での発生strain(歪み)の割合を示す。応力維持率は、w
2=0で、アクチュエータ10の主面を完全拘束した状態での駆動時の発生力をデバイスの駆動方向と直交する断面積で割った値を基準としたときの各条件での発生stress(応力)の割合を示す。試験例4~12のFEMシミュレーションでは、拘束部10Bの幅w
1をw
1=1に固定し、非拘束部10Cの幅w
2およびアクチュエータ本体10Aの厚さhを表1に示すように変化させた。その結果を表1および
図32Bに示す。
【0125】
表1は、試験例4~12のFEMシミュレーションの条件および結果を示す。
【表1】
【0126】
上記のFEMシミュレーションの結果から、拘束部10Bの幅w1=1とした場合、非拘束部10Cの幅w2が1以上1/3以下であり、アクチュエータ本体10Aの厚さhが1以上1/3であると、良好な歪み維持率および応力維持率が得られることがわかる。
また、拘束部10Bの幅w1=1とした場合、非拘束部10Cの幅w2が1程度であり、アクチュエータ本体10Aの厚さhが1程度であると、応力と歪みのバランスが良いことがわかる。
【0127】
[試験例13]
図33は、試験例13のFEMシミュレーションのモデルを示す概略図である。なお、このモデルにおいて、第2の実施形態と対応する箇所には同一の符号を付す。拘束部10Bの幅Wをw
1=1、非拘束部10Dの幅w
2=1、アクチュエータ本体210Aの厚さh=1に設定した。このモデルにおいて、拘束部10Bに電圧を印加し拘束部10Bを駆動させたときの拘束部10Bの状態および歪み維持率をFEMシミュレーションにより解析した。その結果、拘束部10Bはアクチュエータ本体210Aの厚さ方向に収縮し、拘束部10Bの歪み維持率は26.2%であった。なお、歪み維持率は、上述の試験例4~12と同様のものを意味する。
【0128】
[試験例14]
試験例13と同様のモデルにおいて、非拘束部10Cに電圧を印加し非拘束部10Cを駆動させたときの拘束部10Bの状態および歪み維持率をFEMシミュレーションにより解析した。その結果、拘束部10Bはアクチュエータ本体210Aの厚さ方向に伸長し、拘束部10Bの歪み維持率は23.3%であった。なお、歪み維持率は、上述の試験例4~12と同様のものを意味する。
【0129】
以上、本開示の実施形態および変形例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態および変形例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施形態および変形例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。上述の実施形態および変形例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。上述の実施形態および変形例で例示した材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータ本体と、
前記第1の面に設けられ、前記第1の面の伸縮を拘束する第1の拘束部材と、
前記第2の面に設けられ、前記第2の面の伸縮を拘束する第2の拘束部材と
を備え、
前記アクチュエータ本体は、
第1の電極と、
前記第1の電極と対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に設けられたエラストマー層と
を備え、
前記第1の電極が、パターン電極であり、
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材は、前記第1の電極に対応して設けられているアクチュエータ。
(2)
前記第1の電極および前記第2の電極のヤング率は、前記エラストマー層のヤング率の10倍以下である(1)に記載のアクチュエータ。
(3)
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材のヤング率は、前記アクチュエータ本体のヤング率の3倍以上である(1)または(2)に記載のアクチュエータ。
(4)
前記アクチュエータ本体の駆動部の幅w1をw1=1とした場合、前記アクチュエータ本体の非駆動部の幅w2が0.1≦w2≦10であり、前記アクチュエータ本体の厚みhが0.1≦h≦10である(1)から(3)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(5)
前記アクチュエータ本体は、前記第1の拘束部材と前記第2の拘束部材で挟まれた拘束部と、隣り合う前記拘束部の間に設けられた非拘束部とを有し、
前記拘束部における前記エラストマー層の厚みが、前記非拘束部における前記エラストマー層の厚みに比べて薄い(1)から(4)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(6)
前記第2の電極が、パターン電極である(1)から(5)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(7)
前記第2の電極が、非パターン電極である(1)から(5)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(8)
前記第1の電極が、前記アクチュエータ本体の面内方向に間隙を有し、
前記アクチュエータ本体が、前記間隙に設けられたダミー電極をさらに備える(1)から(7)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(9)
前記第1の電極が、前記アクチュエータ本体の面内方向に間隙を有し、
前記アクチュエータ本体が、前記間隙に設けられた第3の電極をさらに備え、
前記第1の電極および前記第3の電極と、前記第2の電極とが、前記エラストマー層を挟んで対向している(1)から(8)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(10)
前記第1の面および前記第2の面の側から、前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材を介して前記アクチュエータ本体を挟む挟持部材をさらに備え、
前記挟持部材は、前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材を押圧している(1)から(9)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(11)
前記エラストマー層は、ループ状を有する(1)から(10)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(12)
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材が、前記第1の電極と同様のパターンを有している(1)から(11)のいずれかに記載のアクチュエータ。
(13)
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータと、
前記第1の面に設けられた被駆動体と、
前記第2の面に設けられた基材と
を備え、
前記アクチュエータは、第1の電極と、前記第1の電極と対向する第2の電極と、前記第1の電極および前記第2の電極の間に設けられたエラストマー層とを備え、
前記被駆動体は、前記第1の面を拘束する第1の拘束部材を備え、
前記基材は、前記第2の面を拘束する第2の拘束部材を備え、
前記第1の電極が、パターン電極であり、
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材は、前記第1の電極に対応して設けられている駆動装置。
(14)
前記第1の拘束部材は、前記第1の面に設けて突出した第1の凸部であり、
前記第2の拘束部材は、前記第2の面に設けて突出した第2の凸部である(13)に記載の駆動装置。
(15)
対向する第1の面および第2の面を有するアクチュエータ本体と、
前記第1の面に設けられ、前記第1の面の伸縮を拘束する第1の拘束部材と、
前記第2の面に設けられ、前記第2の面の伸縮を拘束する第2の拘束部材と
を備え、
前記アクチュエータ本体は、
第1の電極と、
前記第1の電極と対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に設けられたエラストマー層と
を備え、
前記第1の電極が、間隙および孔部のうちの少なくとも一方を有し、
前記第1の拘束部材および前記第2の拘束部材は、前記第1の電極に対応して設けられているアクチュエータ。
(16)
(1)から(12)、(15)のいずれかに記載のアクチュエータを備える駆動装置。
(17)
(1)から(12)、(15)のいずれかに記載のアクチュエータを備える電子機器。
【符号の説明】
【0131】
10、110、210 アクチュエータ
10A、210A アクチュエータ本体
10B 拘束部
10C、10D 非拘束部
11、11A エラストマー層
12 電極(第1の電極)
13 電極(第2の電極)
14 拘束部(第1の拘束部)
15 拘束部(第2の拘束部)
14A、15A 隙間
16、17 取り出し電極
18 非パターン電極(第2の電極)
19 ダミー電極
21 被駆動体
22 基材
31、32 板バネ
33、34 保持部材
35、36 磁石
37 基材
212 電極(第3の電極)
214 電極(第2の電極)
300 撮影装置(電子機器)
400 表示装置(電子機器、駆動装置)
500 多点触感ディスプレイ(駆動装置)
S1 第1の面
S2 第2の面