(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01D5/20 K
G01D5/20 Q
(21)【出願番号】P 2021553482
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2020039505
(87)【国際公開番号】W WO2021079899
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2019193174
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】市村 政稔
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135243(JP,A)
【文献】特開2016-114424(JP,A)
【文献】特開2000-352501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0117980(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0227379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12- 5/252
G01B 7/00- 7/34
G01F 23/00-23/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の位置を検出する位置検出装置であって、
基板に形成され、電圧の印加により励磁される励磁部と、
前記基板における軸線を中心とした環状の領域に形成された複数の検出コイルを有し、前記励磁部によって誘導起電力が発生する検出部と、
前記位置の変動に伴い前記軸線を中心に回転し、前記検出部に発生する誘導起電力を前記位置に応じて変化させる非磁性金属部と、
前記検出部に発生した誘導起電力に基づいて前記位置を算出する制御部と、を備え、
前記検出部は、複数あり、前記軸線を中心とした径方向において互いに異なる箇所に設けられた第1検出部及び第2検出部を含み、
前記第1検出部は、2つの第1検出コイルを含み、
前記第2検出部は、2つの第2検出コイルを含み、
前記制御部は、
前記励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた前記2つの第1検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する第1出力電圧を取得するとともに、前記2つの第1検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって前記第1出力電圧と所定の位相差がある第2出力電圧を取得し、
前記励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた前記2つの第2検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、前記第1出力電圧と特定の位相差がある第3出力電圧を取得するとともに、前記2つの第2検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、前記第3出力電圧と前記所定の位相差があり、且つ、前記第2出力電圧と前記特定の位相差がある第4出力電圧を取得し、
前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧と、前記第3出力電圧及び前記第4出力電圧との少なくともいずれかに基づいて前記位置を算出し
、
前記特定の位相差は、90°以上270°以下である、
位置検出装置。
【請求項2】
対象物の位置を検出する位置検出装置であって、
基板に形成され、電圧の印加により励磁される励磁部と、
前記基板における軸線を中心とした環状の領域に形成された複数の検出コイルを有し、前記励磁部によって誘導起電力が発生する検出部と、
前記位置の変動に伴い前記軸線を中心に回転し、前記検出部に発生する誘導起電力を前記位置に応じて変化させる非磁性金属部と、
前記検出部に発生した誘導起電力に基づいて前記位置を算出する制御部と、を備え、
前記検出部は、複数あり、前記軸線を中心とした径方向において互いに異なる箇所に設けられた第1検出部及び第2検出部を含み、
前記第1検出部は、2つの第1検出コイルを含み、
前記第2検出部は、2つの第2検出コイルを含み、
前記制御部は、
前記励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた前記2つの第1検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する第1出力電圧を取得するとともに、前記2つの第1検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって前記第1出力電圧と所定の位相差がある第2出力電圧を取得し、
前記励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた前記2つの第2検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、前記第1出力電圧と特定の位相差がある第3出力電圧を取得するとともに、前記2つの第2検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、前記第3出力電圧と前記所定の位相差があり、且つ、前記第2出力電圧と前記特定の位相差がある第4出力電圧を取得し、
前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧と、前記第3出力電圧及び前記第4出力電圧との少なくともいずれかに基づいて前記位置を算出し
、
前記励磁部は、前記環状の領域に形成された励磁コイルを含むとともに、複数の前記検出部の各々に対応して複数設けられている、
位置検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、特定の範囲内における前記位置を求める際には、前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧と、前記第3出力電圧及び前記第4出力電圧との一方に基づいて前記位置を算出する、
請求項1
又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記所定の位相差は、90°である、
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記非磁性金属部は、前記軸線を中心として円弧状に形成された円弧部を有し、
前記円弧部は、前記径方向において間隔を空けて複数設けられ、
複数の前記円弧部は、複数の前記検出部の各々と対向する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の位置を検出する位置検出装置として、例えば特許文献1には、渦電流を利用したものが開示されている。特許文献1に開示された位置検出装置は、磁場を形成する励振巻線と、励振巻線が形成した磁場により誘導起電力が発生する感知巻線と、感知巻線に対して相対的に回転移動し、感知巻線を遮蔽する程度を変える電導性のスクリーン(非磁性金属部)と、を備える(同文献のFIG.53等参照)。特許文献1に開示された位置検出装置は、スクリーンの回転移動に応じて変化する誘導起電力に基づいて対象物の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような位置検出装置では、対象物の位置の変動に伴い回転する非磁性金属部の回転位置(例えば、一回転する直前や直後の位置)によっては、発生した誘導起電力に応じて検出コイル(感知巻線)から出力される電圧に基づいて算出される対象物の位置を示す値が不安定になる場合があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な精度で対象物の位置を検出することができる位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る位置検出装置は、
対象物の位置を検出する位置検出装置であって、
基板に形成され、電圧の印加により励磁される励磁部と、
前記基板における軸線を中心とした環状の領域に形成された複数の検出コイルを有し、前記励磁部によって誘導起電力が発生する検出部と、
前記位置の変動に伴い前記軸線を中心に回転し、前記検出部に発生する誘導起電力を前記位置に応じて変化させる非磁性金属部と、
前記検出部に発生した誘導起電力に基づいて前記位置を算出する制御部と、を備え、
前記検出部は、複数あり、前記軸線を中心とした径方向において互いに異なる箇所に設けられた第1検出部及び第2検出部を含み、
前記第1検出部は、2つの第1検出コイルを含み、
前記第2検出部は、2つの第2検出コイルを含み、
前記制御部は、
前記励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた前記2つの第1検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する第1出力電圧を取得するとともに、前記2つの第1検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって前記第1出力電圧と所定の位相差がある第2出力電圧を取得し、
前記励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた前記2つの第2検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、前記第1出力電圧と特定の位相差がある第3出力電圧を取得するとともに、前記2つの第2検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、前記第3出力電圧と前記所定の位相差があり、且つ、前記第2出力電圧と前記特定の位相差がある第4出力電圧を取得し、
前記第1出力電圧及び前記第2出力電圧と、前記第3出力電圧及び前記第4出力電圧との少なくともいずれかに基づいて前記位置を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な精度で対象物の位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】上図は、本発明の一実施形態に係る位置検出装置の概略側面図であり、下図は、回路基板の概略平面図であって、回路基板における各環状領域を説明するための図である。
【
図3】回路基板の第1環状領域を平面視で表した図であり、第1環状領域に形成される第1励磁部及び第1検出部のパターンを説明するための図である。
【
図4】上図及び下図は、互いに等価関係にある配線パターン等を説明するための模式図である。
【
図5】第1励磁部、第1検出部、第2励磁部、及び第2検出部の配置を平面視で表した模式図である。
【
図6A】連動部の底面図であり、非磁性金属部の一形成例を示す図である。
【
図6B】連動部の底面図であり、非磁性金属部の他の形成例を示す図である。
【
図7A】第1検出部からの出力電圧と対象物の回転位置との関係を示す図である。
【
図7B】第2検出部からの出力電圧と対象物の回転位置との関係を示す図である。
【
図8A】回転位置の演算手法の一例を説明するための図である。
【
図8B】回転位置の演算手法の一例を説明するための図である。
【
図9】上図は、変形例に係る回路基板を備える位置検出装置の概略側面図であり、下図は、変形例に係る回路基板の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る位置検出装置1は、
図1上図に示すように、軸線AXを中心に回転する対象物2の回転位置を検出するものであり、回路基板100と、対象物2と共に軸線AXを中心に回転する連動部200と、を備える。
【0011】
回路基板100は、例えばプリント回路板(printed circuit board)からなり、絶縁性を有する板状の基材(基板)3に、各種の回路や電子部品が設けられて構成されている。基材3には、対象物2と連結されるシャフト4を通す貫通孔H1が形成されている。シャフト4は、図示しない軸受によって軸線AXを中心に回転可能に支持されている。回路基板100は、
図1上図及び下図に示すように、軸線AXを中心に形成された円環状の領域として、第1環状領域R1と、第2環状領域R2と、他の環状領域Roと、を有する。また、回路基板100は、他の環状領域Roの外周側に外周領域Rxを有する。
図1下図に示すように、回路基板100には、軸線AXの中心側から順に、貫通孔H1、第1環状領域R1、第2環状領域R2、他の環状領域Roの各々が、軸線AXを中心とした同心円状に形成されている。なお、
図1上図及び下図では、図面の見やすさを考慮して、回路基板100に設けられた各種の回路や電子部品を省略している。
【0012】
図2に示すように、回路基板100は、第1励磁部10と、第1検出部20と、第2励磁部30と、第2検出部40と、制御部50と、を備える。
【0013】
第1励磁部10は、制御部50の制御により電圧が印加され、励磁されるものであり、
図3に示すように、第1環状領域R1内に形成された2つの励磁コイル11,12を有する。
【0014】
励磁コイル11は、第1環状領域R1の中心側に円状に形成され、励磁コイル12は、第1環状領域R1の外周側端部に円状に形成されている。励磁コイル11,12の各々は、複数の巻線数のコイルであり、例えば、基材3の上面(
図1上図における連動部200側の面)に、アルミニウム(Al)、銀パラジウム(Ag/Pd)、金(Au)等の導電体を印刷することによって形成されている。励磁コイル11,12の各々には、図示しない端子から電圧が印加される。
【0015】
なお、第1励磁部10は、励磁コイル11,12の一方から構成されてもよい。また、回路基板100を構成する基材3は、積層基板であってもよく、積層基板の各々が有する面に励磁コイル11,12を構成する導電パターンを設けることで、強い磁場を形成すべく巻線数を稼いでもよい。
【0016】
第1検出部20は、励磁された第1励磁部10が形成する磁場によって誘導起電力が発生する部分であり、
図3に示すように、第1環状領域R1内に形成された2つの検出コイル21,22を有する。
【0017】
検出コイル21,22の各々の主要部分は、基材3の上面に、アルミニウム(Al)、銀パラジウム(Ag/Pd)、金(Au)等の導電体を印刷することによって形成されている。
【0018】
検出コイル21は、
図3に示すように、制御部50と電気的に接続される一対の端部T1s,T1eを有するとともに、一方の端部T1sから他方の端部T1eまでを電気的に接続する部分として、第1部分21aと、第2部分21bと、第3部分21cとを有する。第1部分21aは、その一端が端部T1sと接続されるとともに、端部T1s側から時計回りに、励磁コイル11の外周側を通って延びる円弧状に形成され、その他端が第2部分21bと接続されている。第2部分21bは、第1部分21aの他端から折り返されて形成される部分である。第2部分21bは、その一端が第1部分21aと接続されるとともに、当該一端側から反時計回りに、励磁コイル11の外周側を通って延びる円弧状に形成され、その他端が第3部分21cと接続されている。第3部分21cは、第2部分21bの他端から折り返されて形成される部分である。第3部分21cは、その一端が第2部分21bと接続されるとともに、当該一端側から時計回りに延びる円弧状に形成され、その他端が端部T1eと接続されている。これにより、検出コイル21は、
図3に示すように略8の字状をなしている。
【0019】
検出コイル22は、
図3に示すように、制御部50と電気的に接続される一対の端部T2s,T2eを有するとともに、一方の端部T2sから他方の端部T2eまでを電気的に接続する部分として、第1部分22aと、第2部分22bと、第3部分22cとを有する。第1部分22aは、その一端が端部T2sと接続されるとともに、端部T2s側から時計回りに、励磁コイル11の外周側を通って延びる円弧状に形成され、その他端が第2部分22bと接続されている。第2部分22bは、第1部分22aの他端から折り返されて形成される部分である。第2部分22bは、その一端が第1部分22aと接続されるとともに、当該一端側から反時計回りに、励磁コイル11の外周側を通って延びる円弧状に形成され、その他端が第3部分22cと接続されている。第3部分22cは、第2部分22bの他端から折り返されて形成される部分である。第3部分22cは、その一端が第2部分22bと接続されるとともに、当該一端側から時計回りに延びる円弧状に形成され、その他端が端部T2eと接続されている。これにより、検出コイル22は、
図3に示すように略8の字状をなしている。
【0020】
検出コイル21における一部と他の一部とが交差する箇所、検出コイル22における一部と他の一部とが交差する箇所、検出コイル21と検出コイル22とが交差する箇所においては、交差する一方の配線と他方の配線とが、図示しない絶縁層、スルーホール、ビア(VIA)ホール等を利用して絶縁されている。絶縁層としては、例えば、基材3の材質である二酸化ケイ素(SiO
2)や五酸化タンタル(Ta
2O
5)等を用いることができる。このように一方の配線と他方の配線とが交差する箇所は、具体的に、(A)検出コイル21のうちの第1部分21aと第2部分21bとが交差する箇所、(B)検出コイル22のうちの第1部分22aと第2部分22bとが交差する箇所、(C)検出コイル21の第1部分21aと、検出コイル22の第2部分22b及び第1部分22aの各々とが交差する箇所、(D)検出コイル21の第2部分21bと、検出コイル22の第3部分22c、第2部分22b及び第1部分22aの各々とが交差する箇所、(E)検出コイル21の第3部分21cと、検出コイル22の第1部分22aとが交差する箇所、である。
図3においては、このように交差する箇所における一方の配線を点線で表している。
【0021】
検出コイル21と検出コイル22とは、軸線AXを中心とした角度を考えた場合、互いに90°の位相差を有するように、回路基板100に形成されている。ここで、以上に説明した第1励磁部10及び第1検出部20の円環状の態様(
図4下図では模式的に示した。)は、軸線AXを中心とした円周方向を直線方向に置換して帯状に展開した、
図4上図に示す態様と等価と見做すことができる。つまり、
図4上図と
図4下図に示す態様は等価関係にある。
図4上図に示す態様は、矩形の第1励磁部10(この実施形態では励磁コイル12)の内側に、互いに90°の位相差を有する正弦波又は余弦波状の検出コイル21及び検出コイル22を配置した態様である。ここで、検出コイル21をsin曲線に基づく形状と考えれば、検出コイル22は、cos曲線に基づく形状となる。上記の等価関係を考えると、円環状の第1検出部20においても、検出コイル21は、sin曲線に基づく形状を有し、検出コイル22は、cos曲線に基づく形状を有することになる。
【0022】
第2励磁部30及び第2検出部40は、
図5に示すように、第2環状領域R2内に形成される。第2励磁部30及び第2検出部40の具体的形状や組成については、
図3を参照して説明した第1励磁部10及び第1検出部20と同様であるため、説明を省略する。
【0023】
第2励磁部30は、制御部50の制御により電圧が印加され、励磁されるものであり、
図5に示すように、第2環状領域R2内に形成された2つの励磁コイル31,32を有する。励磁コイル31は、第2環状領域R2の中心側に円状に形成され、励磁コイル32は、第2環状領域R2の外周側端部に円状に形成されている。励磁コイル31,32の各々には、図示しない端子から電圧が印加される。なお、第2励磁部30は、励磁コイル31,32の一方から構成されてもよい。また、回路基板100を構成する基材3は、積層基板であってもよく、積層基板の各々が有する面に励磁コイル31,32を構成する導電パターンを設けることで、強い磁場を形成すべく巻線数を稼いでもよい。
【0024】
第2検出部40は、励磁された第2励磁部30が形成する磁場によって誘導起電力が発生する部分であり、
図5に示すように、第2環状領域R2内に形成された2つの検出コイル41,42を有する。検出コイル41と検出コイル42とは、軸線AXを中心とした角度を考えた場合、互いに90°の位相差を有するように、回路基板100に形成されている。第2検出部40の検出コイル41,42は、第1検出部20の検出コイル21,22と同様に、互いに90°の位相差を有する正弦波又は余弦波に基づく形状を有する。
【0025】
続いて、制御部50の説明の前に、連動部200について説明する。連動部200は、
図1上図に示すように、シャフト4に取り付けられた板状部210と、板状部210の下面(回路基板100側に向く面)に設けられた非磁性金属部220と、を有する。板状部210は、例えば樹脂からなり、
図6Aに示すように円形に形成されている。板状部210の中心には、シャフト4を固定するための貫通孔H2が設けられている。非磁性金属部220は、板状部210の下面に設けられ、
図6Aに示すように半円状に形成されている。非磁性金属部220は、第1検出部20及び第2検出部40(第1環状領域R1及び第2環状領域R2)を覆う位置に設けられ、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の第1励磁部10及び第2励磁部30が形成する磁場によって磁化しない非磁性金属材料から形成されている。
【0026】
以上のように構成される連動部200は、回路基板100に形成された第1検出部20及び第2検出部40に対して、軸線AXを中心に対象物2と共に回転移動する。第1励磁部10及び第2励磁部30の励磁により非磁性金属部220内には渦電流が発生し、発生した渦電流は、第1励磁部10及び第1検出部20の間と、第2励磁部30及び第2検出部40の間との電磁カップリング作用を減少させるように作用する。対象物2の回転に伴い、第1検出部20及び第2検出部40における非磁性金属部220によって覆われる部分が変化すると、第1検出部20に誘起される電圧(誘導起電力)及び第2検出部40に誘起される電圧(誘導起電力)の各々が変化する。このように生じる誘導起電力の変化に基づき、制御部50は対象物2の回転位置を算出する。
【0027】
なお、非磁性金属部220を、シャフト4と共に回転移動できる態様で構成することができれば、連動部200から板状部210を省略してもよい。また、非磁性金属部220は、半円状以外の扇形であってもよく、任意の中心角(例えば70°~90°程度)を有する扇形に形成されていてもよい。
【0028】
また、非磁性金属部220は、
図6Bに示すように、軸線AXを中心として円弧状に形成された第1円弧部221及び第2円弧部222を有していてもよい。
図6Bに示す第1円弧部221と第2円弧部222とは、軸線AXを中心とした径方向において互いに間隔を空けて設けられている。第1円弧部221は、第1検出部20と軸線AXに沿う方向(
図1上図での上下方向)において対向する位置に設けられている。また、第2円弧部222は、第2検出部40と軸線AXに沿う方向(
図1上図での上下方向)において対向する位置に設けられている。このように非磁性金属部220を分割して、第1励磁部10及び第1検出部20に対応した第1円弧部221と、第2励磁部30及び第2検出部40に対応した第2円弧部222とを設けることで、第1励磁部10及び第1検出部20による渦電流作用が第2円弧部222に生じることを抑制することができ、第2励磁部30及び第2検出部40による渦電流作用が第1円弧部221に生じることを抑制することができる。結果として、第1励磁部10及び第1検出部20の電磁作用と、第2励磁部30及び第2検出部40の電磁作用とが相互に干渉して検出精度が低下することを抑制することができる。
【0029】
制御部50は、DSP(Digital Signal Processor)と、DSPの制御により図示しない電源からの直流電圧を交流電圧に変換して、第1励磁部10及び第2励磁部30の各々に印加する発振器(Oscillator)と、第1検出部20の検出コイル21,22の各々に誘導起電力が生じることで出力される電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換してDSPに供給するADC(Analog to Digital Converter)と、を有する。なお、検出コイル21,22とADCとの間に増幅器を設けてもよい。
【0030】
制御部50のDSPは、発振器を介して第1励磁部10を構成する励磁コイル11,12に交流電圧を印加し、第1励磁部10を励磁する。励磁した第1励磁部10により形成された磁場により、第1検出部20を構成する検出コイル21,22の各々に誘導起電力が生じる。DSPは、検出コイル21,22の各々に生じた誘導起電力を、ADCを介してデジタル信号とされた出力電圧V1a,V1bとして取得する。ここで、対象物2と共に軸線AXを中心に回転する非磁性金属部220によって変化する誘導起電力に応じた出力電圧V1a,V1bは、
図7Aに示すようになる。
【0031】
図7Aは、対象物2が任意の初期位置にあるとともに、検出コイル21に基づく出力電圧V1aの値が0となる際の角度θを0°とした場合の、角度θに対する出力電圧V1a,V1bの変化を示している。この場合、検出コイル21に基づく出力電圧V1aの角度θに対する変化は、V1a=αsin(θ)(αは定数)で表すことができる。一方、検出コイル22に基づく出力電圧V1bの角度θに対する変化は、V1b=αcos(θ)で表すことができる。制御部50のDSPは、出力電圧V1aの値と出力電圧V1bの値とに基づき、角度θ、つまり、対象物2の回転位置を算出する。
【0032】
制御部50のDSPは、取得した出力電圧V1a,V1bに基づき、例えば以下のように角度θを算出する。DSPは、まず、V1a/V1b=V1cを演算し、検出コイル21及び検出コイル22の双方からの出力電圧と角度θの関係を算出する。V1c=V1a/V1b=αsin(θ)/αcos(θ)=tan(θ)により、V1cは角度θに依存することが分かる。
【0033】
ここで、DSPのメモリ(ROM(Read Only Memory))には、V1c=tan(θ)の逆関数Fi(
図8A参照)である、θ=arctan(V1c)に基づいて作成された関数F1(
図8B参照)として、V1=F1(θ)のデータが予め記憶されている。
図8Bに示す関数F1は、
図8Aに示す逆関数Fiにおいて角度θが90°、270°の際に生じる不連続の箇所を連続化したものであり、逆関数Fiの90°~270°の範囲を+vだけ平行移動するとともに、逆関数Fiの270°~360°の範囲を+2vだけ平行移動することで得られる。なお、vは、逆関数Fiに基づき予め算出することができる定数である。また、DSPのメモリに記憶される関数F1のデータは、当該関数F1を規定する数式のデータであることが好ましいが、出力電圧V1と角度θとが対応付けられて構成されたテーブルのデータであってもよい。
【0034】
DSPは、上記のように演算したV1cと、メモリ内に予め格納された関数F1のデータとに基づき、対象物2の回転位置を示す角度θを演算する。具体的には、
図7Aに示すように、V1a(=αsin(θ))が正、V1b(=αcos(θ))が正の場合は、角度θが0°~90°であるため、DSPは、算出したV1cをそのまま出力電圧V1とし、このV1を関数F1に代入して角度θ(対象物2の回転位置)を算出可能である。また、V1b(=αcos(θ))が負の場合は、角度θが90°~270°であるため、DSPは、算出したV1cにvを加算した値を出力電圧V1とし、このV1を関数F1に代入して角度θ(対象物2の回転位置)を算出可能である。また、V1a(=αsin(θ))が負、V1b(=αcos(θ))が正の場合は、角度θが270°~360°であるため、DSPは、算出したV1cに2vを加算した値を出力電圧V1とし、このV1を関数F1に代入して角度θ(対象物2の回転位置)を算出可能である。
【0035】
ここで、以上のように説明した関数F1は、
図8Bに示すように、角度θが360°の箇所においてはV1が不連続となっている。このため、対象物2が角度θ=360°の位置を跨いで移動した場合、DSPが第1検出部20から取得した出力電圧V1a,V1bに基づいて算出したV1のみから角度θを求めようとすると(つまり、関数F1のみから角度θを求めようとすると)、正確に対象物2の回転位置を算出できない虞がある。この問題を解決すべく、制御部50は下記のように制御を行う。
【0036】
制御部50のDSPは、発振器を介して第2励磁部30を構成する励磁コイル31,32に交流電圧を印加し、第2励磁部30を励磁する。励磁した第2励磁部30により形成された磁場により、第2検出部40を構成する検出コイル41,42の各々に誘導起電力が生じる。DSPは、検出コイル41,42の各々に生じた誘導起電力を、ADCを介してデジタル信号とされた出力電圧V2a,V2bとして取得する。ここで、DSPは、第2励磁部30に電圧を印加するタイミングと、出力電圧V2a,V2bの取得タイミングとの少なくともいずれかを制御することにより、
図7Bに示すように角度θに対して変化する出力電圧V2a,V2bを取得する。
図7Aと
図7Bとを比較して分かるように、検出コイル41に基づく出力電圧V2aは、検出コイル21に基づく出力電圧V1aに対し、90°の位相差(特定の位相差の一例)を有している。また、
図7Aと
図7Bとを比較して分かるように、検出コイル42に基づく出力電圧V2bは、検出コイル22に基づく出力電圧V1bに対し、90°の位相差(特定の位相差の一例)を有している。つまり、前述のように、V1a=αsin(θ)、V1b=αcos(θ)と表した場合、第2検出部40に発生した誘導起電力に基づく出力電圧V2a,V2bは、V2a=αsin(θ-90°)、V1b=αcos(θ-90°)と表すことができる。
【0037】
制御部50のDSPは、取得した出力電圧V2a,V2bに基づき、まず、V2a/V2b=V2c(なお、V2cは不図示。)を演算し、検出コイル41及び検出コイル42の双方からの出力電圧と角度θの関係を算出する。V2c=V2a/V2b=tan(θ-90°)となる。
【0038】
DSPのメモリ(ROM)には、V2c=tan(θ-90°)の逆関数である、θ-90°=arctan(V2c)に基づいて作成された関数F2(
図8B参照)として、θ=F2(V2)のデータが予め記憶されている。
図8Bに示す関数F2は、図示しない逆関数「θ-90°=arctan(V2c)」における任意の不連続の箇所を連続化したものであって、関数F1の位相を90°ずらしたものである。DSPのメモリに記憶される関数F2のデータは、当該関数F2を規定する数式のデータであることが好ましいが、V2とθとが対応付けられて構成されたテーブルのデータであってもよい。
【0039】
DSPは、上記のように演算したV2cと、メモリ内に予め格納された関数F2のデータとに基づき、対象物2の回転位置を示すθを演算する。具体的には、関数F2が関数F1の位相を90°ずらしたものであることを考慮すると、下記のようにθを演算する。
図7Bに示すように、V2a(=αsin(θ-90°))が負、V2b(=αcos(θ-90°))が正の場合は、角度θが0°~90°であるため、DSPは、算出したV2cに2vを加算した値をV2とし、このV2を関数F2に代入して角度θ(対象物2の回転位置)を算出可能である。また、V2aとV2bが共に正の場合は、角度θが90°~180°であるため、DSPは、算出したV2cをそのまま出力電圧V2とし、このV2を関数F2に代入して角度θ(対象物2の回転位置)を算出可能である。また、V2bが負の場合は、角度θが180°~360°であるため、DSPは、算出したV2cにvを加算した値を出力電圧V2とし、このV2を関数F2に代入して角度θ(対象物2の回転位置)を算出可能である。
【0040】
図8Bの関数F1と関数F2とを参照すると分かるように、関数F1における出力電圧V1の不連続箇所(θ=360°)においては関数F2が線形を保っている一方、関数F2における出力電圧V2の不連続箇所(θ=90°)において関数F1が線形を保っている。これを考慮して、制御部50のDSPは、
図7A,
図7Bを参照して分かるように、出力電圧V1a,V1b及び出力電圧V2a,V2bの各々の正負に基づいて特定される角度範囲に応じて、出力電圧V1a,V1bと出力電圧V2a,V2bとのいずれを用いて角度θを算出するかを切り替える。例えば、DSPは、θが360°を跨ぐ任意の角度範囲以外であると特定した場合は、出力電圧V1a,V1bに基づいて角度θを算出し、θが360°を跨ぐ任意の角度範囲であると特定した場合は、出力電圧V2a,V2bに基づいて角度θを算出する。当該任意の角度範囲は、例えば、角度θが315°~405°(なお、405°は、1回転した後の45°に相当する。)の範囲である。DSPは、各出力電圧の正負と、V2aとV2bの値が負の値で等しくなった場合はθが315°であり、V1aとV1bの値が正の値で等しくなった場合は角度θが405°であることに基づき、この角度範囲を特定することが可能である。
【0041】
なお、出力電圧V1a,V1bと出力電圧V2a,V2bとのいずれを用いて角度θを算出するかを切り替える角度範囲の設定は、線形を保っている関数F1又はF2を用いて、安定して角度θを算出することができれば任意である。また、制御部50のDSPは、あらゆる角度範囲において関数F1及び関数F2を用いて角度θを算出し、エラー値を示さなかった方を対象物2の回転位置として決定することも可能である。例えば、DSPは、今回算出した角度θと、過去に算出した角度θ(例えば、算出した角度θの前回値)との差が予めメモリに記憶した値よりも大きくなった場合に、角度θがエラー値であると判別することができる。また、制御部50のDSPは、関数F1や関数F2に基づいて角度θを算出する前段階の値(各出力電圧の値や、V1c=V1a/V1b等の出力電圧の比)に異常が生じているか否かを判別してもよい。また、制御部50のDSPは、算出した角度θに異常がないと判別した場合は、出力電圧V1a,V1bに基づいて算出した角度θと、出力電圧V2a,V2bに基づいて算出した角度θとの平均値を算出し、算出した平均値を対象物2の回転位置としてもよい
【0042】
以上のように対象物2の回転位置(角度θ)を算出したDSPは、算出した角度θのデジタルデータをそのまま、あるいは、ADC(Analog to Digital Converter)を介してアナログ信号に変換した後に外部装置に出力する。
【0043】
制御部50が有するDSPのIC等の各種構成や、セラミックコンデンサやグランドパターン等の図示しないEMC(Electro Magnetic Compatibility)対策部品は、回路基板100における他の環状領域Roの上面及び下面の少なくともいずれかに実装される。なお、制御部50やEMC対策部品の少なくとも一部の構成は、回路基板100における他の環状領域Roの外周側に位置する外周領域Rxや、回路基板100と電気的に接続された他の回路基板に実装されていてもよい。
【0044】
以上に説明した各部を備える位置検出装置1は、例えば、図示しない筐体内に収容される。そして、当該筐体によって、連動部200の非磁性金属部220と、回路基板100の上面との間隔が所望の値に設定される。非磁性金属部220と回路基板100との間隔は、小さい方が誘起される電圧が大きくなり好ましく、例えば、1.0~1.5mm程度に設定される。
【0045】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0046】
(変形例)
回路基板100において、他の環状領域Roと外周領域Rxとが区別なく一体に形成されていてもよい。また、回路基板100は、他の環状領域Roの外縁に沿った形状で、円盤状に形成されていてもよい。また、外周領域Rxは、他の環状領域Roの外側の全周に亘ってではなく、他の環状領域Roの外側の一部に形成されていてもよい。例えば、
図9上図及び下図に示すように、位置検出装置1は、変形例に係る回路基板100Mを備えていてもよい。変形例に係る回路基板100Mは、
図9下図に示すように、半円形状と四角形状を合わせた形状の基材3Mに、前述の各種回路や電子部品が設けられて構成される。変形例に係る回路基板100Mにおいては、貫通孔H1、第1環状領域R1、第2環状領域R2、他の環状領域Roの各々が、軸線AXを中心とした同心円状に形成されている。そして、外周領域Rxは、他の環状領域Roの外周側の一部、具体的には、
図9下図における外周右側に形成されている。
【0047】
また、以上の説明では、複数の検出部に対し制御部50が1つの場合を例示したが、各検出部に対しそれぞれ制御部を設ける構造であってもよい。また、以上では、基材3の上面にコイルを形成する場合を例示したが、基材3の下面や上下面に形成することも可能である。また、以上では、制御部50にDSPを用いる場合を例示したが、DSPの代わりにマイコンと周辺IC等を用いることも可能である。
【0048】
以上では、位置検出装置1が軸線AXを中心に回転する対象物2の回転位置を検出する例を示したが、これに限られない。位置検出装置1は、対象物2の位置の変動に伴い非磁性金属部220が軸線AXを中心に回転する構成であればよく、回転移動以外の移動(直線移動や曲線移動など)を行う対象物2の位置を検出するものであってもよい。例えば、位置検出装置1を対象物2の直線移動に応じて非磁性金属部220が軸線AXを中心に回転する構成とすれば、制御部50は、前記のように算出可能な角度θに応じて、直線移動する対象物2の位置を検出することができる。
【0049】
図においては、回路基板100において互いに隣り合う環状領域(例えば、第1環状領域R1と第2環状領域R2)の間に間隔を設けた例を示したが、一方の環状領域内に形成される回路と他方の環状領域内に形成される回路とが干渉しない限りにおいては、双方の環状領域は隣接していてもよい。
【0050】
第1検出部20に基づく出力電圧V1aと出力電圧V1bとは、互いに所定の位相差を有していればよい。例えば、所定の位相差は、45°や135°等であってもよい。但し、tan(θ)に応じたV1a/V1bを求める観点においては、当該所定の位相差は、前記の実施形態で述べたように90°であることが好ましい。処理の複雑化を抑制することができるためである。これは、第2検出部40に基づく出力電圧V2a,V2bについても同様である。
【0051】
以上では、関数F1と関数F2との間の特定の位相差が90°である例、つまり、出力電圧V1a及び出力電圧V2aの間と、出力電圧V1b及び出力電圧V2bの間との特定の位相差が90°である例を示したが、これに限られない。関数F1と関数F2との間に少しでも位相差が生じれば、関数F1及び関数F2のいずれかは任意の角度θにおいて線形を保つことができるため、特定の位相差は任意である。ただし、関数F1及び関数F2の各々における不連続箇所の近傍で、対象物2の検出精度の低下を抑制するに当たっては、特定の位相差は、90°以上270°以下であることが好ましい。また、制御部50のDSPは、前述した逆関数である、θ=arctan(V1c)や、θ-90°=arctan(V2c)をそのまま用いて角度θを算出してもよい。
【0052】
励磁部は、対応する検出部に誘導起電力を生じさせる磁場を形成することができれば、その形状や配置は以上の例に限られず任意である。
【0053】
以上では、回路基板100の基材3にシャフト4を挿入可能な貫通孔H1を設けた例を示したが、非磁性金属部220が対象物2と共に軸線AXを中心に回転可能であり、且つ、非磁性金属部220と回路基板100との間隔を適切に保つことができれば、基材3に貫通孔H1を設けなくともよい。
【0054】
また、位置検出装置1の検出対象である対象物2は、変動するものであれば任意であり、目的に応じて選択することができる。例えば、対象物2は、車両に搭載された種々の回転体(回転移動するアクセルペダル、ブレーキペダル、回転灯など)や、シフトレバーなどの直線移動体であってもよい。以上の位置検出装置1によれば、あらゆる回転範囲における非磁性金属部220の角度θを精度よく算出することができ、算出した角度θに応じた対象物2の位置(回転位置であっても直線位置であってもよい。)を算出することができる。例えば、対象物2の回転位置を検出する場合、あらゆる回転範囲における対象物2の回転位置を精度よく検出することができるため、複数回転する(360°以上回転する)対象物2に好適である。
【0055】
(1)以上に説明した位置検出装置1は、対象物2の位置を検出するものであり、励磁部(例えば、第1励磁部10、第2励磁部30)と、検出部(例えば、第1検出部20、第2検出部40)と、非磁性金属部220と、制御部50と、を備える。励磁部は、基板(例えば回路基板100)に形成され、電圧の印加により励磁される。検出部は、基板における軸線AXを中心とした環状の領域に形成された複数の検出コイル(例えば、第1環状領域R1、第2環状領域R2)を有し、励磁部によって誘導起電力が発生する。非磁性金属部220は、対象物2の位置の変動に伴い軸線AXを中心に回転し、検出部に発生する誘導起電力を対象物2の位置に応じて変化させる。制御部50は、検出部に発生した誘導起電力に基づいて対象物2の位置を算出する。検出部は、複数あり、軸線AXを中心とした径方向において互いに異なる箇所に設けられた第1検出部20及び第2検出部40を含む。第1検出部20は、2つの第1検出コイル(検出コイル21,22)を含み、第2検出部40は、2つの第2検出コイル(検出コイル41,42)を含む。
制御部50は、励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた2つの第1検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する第1出力電圧(例えば、出力電圧V1a)を取得するとともに、2つの第1検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって第1出力電圧と所定の位相差がある第2出力電圧(例えば、出力電圧V1b)を取得する。また、制御部50は、励磁部が励磁されて誘導起電力が生じた2つの第2検出コイルの一方から、前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、第1出力電圧と特定の位相差がある第3出力電圧(例えば、出力電圧V2a)を取得するとともに、2つの第2検出コイルの他方から前記位置に応じて正弦波状又は余弦波状に変化する電圧であって、第3出力電圧と所定の位相差があり、且つ、第2出力電圧と特定の位相差がある第4出力電圧(例えば、出力電圧V2b)を取得する。そして、制御部50は、第1出力電圧及び第2出力電圧と、第3出力電圧及び第4出力電圧との少なくともいずれかに基づいて前記位置を算出する。
この構成によれば、対象物2の位置の変動に伴い回転する非磁性金属部220がいずれの位置であっても良好に角度θを算出することができ、算出した角度θに応じて対象物2の位置を検出することができる。したがって、良好な精度で対象物2の位置を検出することができる。
【0056】
(2)具体的に、制御部50は、特定の範囲内(例えば、関数F1が不連続となる360°を跨ぐ任意の角度範囲や、関数F2が不連続となる90°を跨ぐ任意の角度範囲に対応した対象物2の変動範囲)における前記位置を求める際には、第1出力電圧及び第2出力電圧と、第3出力電圧及び第4出力電圧との一方に基づいて前記位置を算出する。
【0057】
(3)前記所定の位相差は、90°であることが好ましい。
【0058】
(4)前記特定の位相差は、90°以上270°以下であることが好ましい。
【0059】
(5)非磁性金属部220は、軸線AXを中心として円弧状に形成された円弧部を有し、円弧部は、軸線AXを中心とした径方向において間隔を空けて複数設けられ、複数の円弧部(例えば、第1円弧部221、第2円弧部222)は、複数の検出部(例えば、第1検出部20、第2検出部40)の各々と対向する。
この構成によれば、前述の通り、所定の検出部の電磁作用と他の検出部とが相互に干渉して検出精度が低下することを抑制することができる。
【0060】
(6)具体的に、励磁部は、環状の領域に形成された励磁コイルを含むとともに、複数の検出部の各々に対応して複数設けられている(例えば、第1検出部20に対応して設けられた第1励磁部10や、第2検出部40に対応して設けられた第2励磁部30)。
【0061】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0062】
1…位置検出装置
2…対象物、AX…軸線
100…回路基板、3…基材
R1~R3…第1~第3環状領域、Ro…他の環状領域、Rx…外周領域
10…第1励磁部(11,12…励磁コイル)
20…第1検出部(21,22…検出コイル)
30…第2励磁部(31,32…励磁コイル)
40…第2検出部(41,42…検出コイル)
50…制御部
200…連動部、210…板状部
220…非磁性金属部、221…第1円弧部、222…第2円弧部
Fi…逆関数、F1,F2…関数