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  • 特許-電動機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H02K9/04 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022012238
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110655
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕之
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-083649(JP,A)
【文献】特開2005-318685(JP,A)
【文献】米国特許第04431931(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/04
B60K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコイルを有するステータと、
前記ステータの外側に配置されたロータと、
を備えた電動機であって、
前記ロータは、車輪のホイールを構成するリム部とディスク部とを有しており、
前記ロータの内面における前記ステータコイルと空隙を介して対向する位置であって前記リム部と前記ディスク部とでなす角部分に、複数のフィンが前記ロータの周方向で所定間隔をあけて並んで設けられており、
前記角部分における前記ロータの内面は、前記ロータの径方向に対して前記ロータの軸線方向で外側から内側に向かって傾いた斜面であり、
前記ロータの径方向で前記斜面の内側の端から外側の端にわたって前記フィンが立設していることを特徴とする電動機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インホイールモータおいて、モータ軸及びロータの回転によって空気の流れを発生させる空気循環翼を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-171252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、インホイールモータにおける発熱部であるステータコイルの近傍で、空気の流れを積極的に作ることができる構造に関しては言及されていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ステータコイルの近傍で空気の流れを積極的に作ることのできる電動機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電動機は、ステータコイルを有するステータと、前記ステータの外側に配置されたロータと、を備えた電動機であって、前記ロータの内面には、前記ステータコイルと対向する位置に複数のフィンが設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
これにより、ロータの回転に伴って複数のフィンにより、ステータコイルの近傍で空気の流れを積極的に作ることができる。
【0008】
また、上記において、前記ロータは、車輪のホイールを構成するリム部とディスク部とを有しており、前記複数のフィンは、前記ロータの内面における前記リム部と前記ディスク部とでなす角部分に、前記ロータの周方向で所定間隔をあけて並んで設けられているようにしてもよい。
【0009】
これにより、ロータ内におけるデッドスペースを有効活用して、ロータの大型化、ひいては、電動機の大型化を抑制することができる。
【0010】
また、上記において、前記ロータは、車輪のホイールを構成するリム部とディスク部とを有しており、前記複数のフィンは、前記ロータの内面における前記リム部または前記ディスク部に、前記ロータの周方向で所定間隔をあけて並んで設けられているようにしてもよい。
【0011】
これにより、複数のフィンをステータコイルに、より近づけて設けることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電動機は、ステータコイルの近傍で空気の流れを積極的に作ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係るインホイールモータを備える車両の概略構成を示した図である。
図2図2は、インホイールモータの概略構成を示した断面図である。
図3図3は、モータロータを内側から見た斜視図である。
図4図4は、モータロータを軸線方向で内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電動機であるインホイールモータの実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、実施形態に係るインホイールモータ3を備える車両1の概略構成を示した図である。なお、図1は、実施形態に係るインホイールモータ3を動作させる構成以外の構成は図示を省略している。
【0016】
実施形態に係る車両1は、4つの車輪2の全てに電動機としてインホイールモータ3を装着している。インホイールモータ3の回転構造は周知のものを利用可能である。また、インホイールモータ3の車両1の内側には、摩擦ブレーキとして、例えば、ディスクブレーキ4が配置されている。ディスクブレーキ4の制動構造に関しては、従来のディスクブレーキと同じ構造を採用可能である。
【0017】
また、インホイールモータ3には、インホイールモータ3の温度、望ましくは、最も発熱量の多い後述するステータコイル312周辺のステータ31の温度を検出するモータ温度センサ5が設けられている。モータ温度センサ5からの信号線は、ECU6に接続されている。ECU6は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、マイクロコンピュータによる演算を行う演算ユニット、各種の処理プログラムを記憶するROM、一時的にデータやプログラムを記憶してデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、及び、各種信号の送受信を行うための入出力ポート等を有する。また、ECU6には、車輪2の車輪速を検出するための回転角センサ7、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ8、及び、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキストロークセンサ9からの信号も供給される。
【0018】
図2は、インホイールモータ3の概略構成を示した断面図である。なお、インホイールモータ3の一部にディスクブレーキ4のディスクロータ41及びキャリパ42が併せて図示されている。
【0019】
インホイールモータ3は、ステータ31とモータロータ32とを有している。ステータ31は、ステータコア311とステータコイル312とステータスピンドル313とを有している。また、略リング形状のステータ31の周囲には、ステータコイル312が等間隔に配置されている。ステータコイル312は、ECU6からの指令にしたがってバッテリから所定のタイミングで電力供給を受けることにより、所定速度の回転磁界を発生させることができる。ステータスピンドル313は、サスペンションアームに固定されたナックル33に、ボルト34によって固定されている。このナックル33には、ステータスピンドル313を介してボルト34によりハブベアリング35が固定され、ハブスピンドル36を回転自在に支持している。また、ステータスピンドル313には、ステータ31からの放熱を促してステータ31を冷却するための冷却ピン314が設けられている。また、ステータスピンドル313には、モータロータ32(後述するリム部321)との間の隙間をシールするシール材315が設けられている。
【0020】
ステータ31の外側には、リム部321とディスク部322とを有するモータロータ32が、ステータ31と所定間隔をあけて回転自在に配置されている。なお、実施形態に係るインホイールモータ3においては、モータロータ32が、車輪2のホイールを構成する構成要素としてのリム部321とディスク部322とを有している。リム部321は、ステータ31の径方向外側に位置している。ディスク部322は、ステータ31の軸線方向外側に位置している。リム部321の内周側には、ステータ31のステータコア(ステータヨーク)311と対向するように永久磁石などのマグネット323が配置されており、回転磁界の移動に伴いステータ31に対しモータロータ32が回転するようになっている。モータロータ32は、ハブボルト37によってハブスピンドル36に固定されているため、モータロータ32の回転によって車輪2を所定速度で回転させることができる。
【0021】
また、実施形態に係るインホイールモータ3においては、インホイールモータ3内でステータ31とモータロータ32とにより形成される空間には、潤滑油や冷却油などの液体は充填されておらず、インホイールモータ3(前記空間)内外で空気(気体)の入れ替えが可能となっている。これにより、例えば、ステータ31に設けられたステータコイル312から前記空間内の空気に放熱することによって、ステータコイル312の温度を低下させることができる。
【0022】
なお、図2に示す構造では、モータロータ32がハブスピンドル36に直接固定されたモータ直結型のインホイールモータ3を示しているが、例えば、モータロータ32とハブスピンドル36との間に減速装置を配置し、高効率で高速回転するモータロータ32の回転速度を減速装置により所望の回転速度に減速したり、所望のトルクを発生するようにしたりしてもよい。
【0023】
インホイールモータ3の場合、回生制御を行うことにより、制動力を発生することができるが、それだけでは車両全体としての制動力を十分にカバーできない場合がある。そのため、本実施形態では、摩擦ブレーキであるディスクブレーキ4が設けられている。インホイールモータ3にディスクブレーキ4を適用する場合には、モータロータ32にディスクブレーキ4のディスクロータ41を固定する。ディスクブレーキ4の制動構造も周知のものを利用可能であり、例えば、図2に示すように、ディスクロータ41の一部を跨ぐように配置されたキャリパ42に内蔵されたブレーキパッドを油圧などを利用してディスクロータ41の摺動面に押圧することにより、ディスクロータ41の回転制動を効率的に行うことができる。なお、車両1の制動を行う場合、インホイールモータ3の回生制動のみで行う場合と、ディスクブレーキ4の摩擦制動のみで行う場合と、両者の協調制御により行う場合とがある。
【0024】
図3は、モータロータ32を内側から見た斜視図である。図4は、モータロータ32を軸線方向で内側から見た図である。
【0025】
図2図3及び図4に示すように、実施形態に係るインホイールモータ3においては、モータロータ32の内面におけるステータコイル312と空隙を介して対向する位置であってステータコイル312の近傍に、複数のフィン324が設けられている。具体的には、モータロータ32の内面におけるリム部321とディスク部322とでなす角部分に、モータロータ32の周方向に所定間隔をあけて並んで複数のフィン324が設けられている。これにより、モータロータ32内におけるデッドスペースを有効活用して、モータロータ32の大型化、ひいては、インホイールモータ3の大型化を抑制することができる。
【0026】
なお、複数のフィン324を設ける位置としては、前記角部分に限定されるものではなく、例えば、モータロータ32の内面におけるリム部321またはディスク部322のステータコイル312と空隙を介して対向する位置に、モータロータ32の周方向に所定間隔をあけて並んで設けてもよい。これにより、複数のフィン324をステータコイル312に、より近づけて設けることが可能となる。
【0027】
実施形態に係るインホイールモータ3においては、モータロータ32の回転に伴って複数のフィン324により、通電することによって発熱する発熱部であるステータコイル312の近傍で空気の流れを積極的に作ることのできるため、その空気の流れによってステータコイル312の近傍の空気の入れ替えが促される。これにより、ステータコイル312から空気への熱伝達の効率が上昇し、ステータコイル312からの放熱量が増加して、その結果、複数のフィン324を設けない場合よりもステータコイル312の温度を低下させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 車両
2 車輪
3 インホイールモータ
4 ディスクブレーキ
5 モータ温度センサ
6 ECU
7 回転角センサ
8 アクセルストロークセンサ
9 ブレーキストロークセンサ
31 ステータ
32 モータロータ
33 ナックル
35 ハブベアリング
36 ハブスピンドル
37 ハブボルト
41 ディスクロータ
42 キャリパ
311 ステータコア
312 ステータコイル
313 ステータスピンドル
314 冷却ピン
315 シール材
321 リム部
322 ディスク部
323 マグネット
324 フィン
図1
図2
図3
図4