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特許7537450車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20240814BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20240814BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240814BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60W40/08
B60W30/09
G08G1/16 F
G01C21/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022016613
(22)【出願日】2022-02-04
(65)【公開番号】P2023114310
(43)【公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】杉本 聡太
(72)【発明者】
【氏名】桐木 純平
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-115973(JP,A)
【文献】特開2018-062237(JP,A)
【文献】特開2020-032963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0135291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/08
B60W 30/09
G08G 1/16
G01C 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に設けられた車内センサにより生成された前記車両のドライバの状況を表す車内センサ信号に基づいて、前記ドライバに生じた異常を検出する異常検出部と、
前記ドライバの異常が検出されたときの前記車両の位置から所定の区間において、地図情報を参照して他の車両の走行を妨害せずに前記車両を停車可能な第1の退避スペースを探索する探索部と、
前記車両に設けられた車外センサにより生成された前記車両の周囲の状況を表す車外センサ信号に基づいて、前記第1の退避スペースに存在する障害物を検出する障害物検出部と、
前記障害物が検出された場合、前記地図情報を参照して、前記区間において他の車両の走行を妨害せずに前記車両を停車可能な第2の退避スペースを探索する再探索部と、
前記第2の退避スペースが検出された場合、前記車両を前記第2の退避スペースに停車させるよう前記車両を制御し、一方、前記第2の退避スペースが検出されない場合、前記区間の途中において前記車両が走行中の車道にて前記車両を停車させるよう前記車両を制御する車両制御部と、
を有し、
前記障害物検出部は、前記障害物の種類が移動可能な物体か静止物体かを判定し、
前記再探索部は、前記障害物の種類が移動可能な物体である場合における、前記第1の退避スペースと前記第2の退避スペース間の間隔の下限値を、前記障害物の種類が静止物体である場合における前記下限値よりも大きな値に設定する車両制御装置。
【請求項2】
前記車両制御部は、前記ドライバの異常が検出されると前記車両を所定の速度まで減速し、
前記再探索部は、前記車両が前記所定の速度で走行している間に前記第2の退避スペースを探索する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
車両の車室内に設けられた車内センサにより生成された前記車両のドライバの状況を表す車内センサ信号に基づいて、前記ドライバに生じた異常を検出し、
前記ドライバの異常が検出されたときの前記車両の位置から所定の区間において、地図情報を参照して他の車両の走行を妨害せずに前記車両を停車可能な第1の退避スペースを探索し、
前記車両に設けられた車外センサにより生成された前記車両の周囲の状況を表す車外センサ信号に基づいて、前記第1の退避スペースに存在する障害物を検出し、
前記障害物が検出された場合、前記地図情報を参照して、前記区間において他の車両の走行を妨害せずに前記車両を停車可能な第2の退避スペースを探索し、
前記第2の退避スペースが検出された場合、前記車両を前記第2の退避スペースに停車させるよう前記車両を制御し、一方、前記第2の退避スペースが検出されない場合、前記区間の途中において前記車両が走行中の車道にて前記車両を停車させるよう前記車両を制御する、
ことを含み、
前記第1の退避スペースに存在する障害物を検出することは、前記障害物の種類が移動可能な物体か静止物体かを判定することを含み、
前記第2の退避スペースを探索することは、前記障害物の種類が移動可能な物体である場合における、前記第1の退避スペースと前記第2の退避スペース間の間隔の下限値を、前記障害物の種類が静止物体である場合における前記下限値よりも大きな値に設定することを含む車両制御方法。
【請求項4】
車両の車室内に設けられた車内センサにより生成された前記車両のドライバの状況を表す車内センサ信号に基づいて、前記ドライバに生じた異常を検出し、
前記ドライバの異常が検出されたときの前記車両の位置から所定の区間において、地図情報を参照して他の車両の走行を妨害せずに前記車両を停車可能な第1の退避スペースを探索し、
前記車両に設けられた車外センサにより生成された前記車両の周囲の状況を表す車外センサ信号に基づいて、前記第1の退避スペースに存在する障害物を検出し、
前記障害物が検出された場合、前記地図情報を参照して、前記区間において他の車両の走行を妨害せずに前記車両を停車可能な第2の退避スペースを探索し、
前記第2の退避スペースが検出された場合、前記車両を前記第2の退避スペースに停車させるよう前記車両を制御し、一方、前記第2の退避スペースが検出されない場合、前記区間の途中において前記車両が走行中の車道にて前記車両を停車させるよう前記車両を制御する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させ、
前記第1の退避スペースに存在する障害物を検出することは、前記障害物の種類が移動可能な物体か静止物体かを判定することを含み、
前記第2の退避スペースを探索することは、前記障害物の種類が移動可能な物体である場合における、前記第1の退避スペースと前記第2の退避スペース間の間隔の下限値を、前記障害物の種類が静止物体である場合における前記下限値よりも大きな値に設定することを含む車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバが車両の運転中においてその運転を継続することが困難となったことを検知したときに、車両を緊急停車させる技術が研究されている(特許文献1~2を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された緊急退避システムは、運転者の意識レベルの低下を検出して自車両を退避させる。このシステムは、運転者の意識レベルが所定以下に低下したと判定された場合、自車両の前方の所定距離内に交差点があるか否か判定する。前方の所定距離内に交差点がある場合、このシステムは、交差点が通行可能か否かを判定し、交差点が通行可能な場合、交差点内に設定した目標停止位置に自車両を停止させる。一方、交差点が通行可能でない場合、このシステムは、目標停止位置を交差点手前に決定する。さらに、このシステムは、交差点がない場合、自車両を路肩に退避させる。
【0004】
また、特許文献2に開示された車両制御装置は、自車両の緊急停車が必要な運転者の緊急異常状態を検出すると、地図情報と自車両の現在位置情報とに基づいて自車両を走行道路の道路端縁側に移動走行させて、この道路端縁側に停車させるように自車両を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-163434号公報
【文献】特開2008-37218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両を緊急停車させるための目標位置に障害物が存在するなどの理由により、設定した目標位置に車両を停車できないことがある。
【0007】
そこで、本発明は、ドライバの異常が検知されたときに車両を適切に停車させることが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、車両の車室内に設けられた車内センサにより生成された車両のドライバの状況を表す車内センサ信号に基づいて、ドライバに生じた異常を検出する異常検出部と、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間において、地図情報を参照して他の車両の走行を妨害せずに車両を停車可能な第1の退避スペースを探索する探索部と、車両に設けられた車外センサにより生成された車両の周囲の状況を表す車外センサ信号に基づいて、第1の退避スペースに存在する障害物を検出する障害物検出部と、障害物が検出された場合、地図情報を参照して、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間において他の車両の走行を妨害せずに車両を停車可能な第2の退避スペースを探索する再探索部と、第2の退避スペースが検出された場合、車両を第2の退避スペースに停車させるよう車両を制御し、一方、第2の退避スペースが検出されない場合、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間の途中において車両が走行中の車道にて車両を停車させるよう車両を制御する車両制御部とを有する。
【0009】
この車両制御装置において、車両制御部は、ドライバの異常が検出されると車両を所定の速度まで減速し、再探索部は、車両が所定の速度で走行している間に第2の退避スペースを探索することが好ましい。
【0010】
また、この車両制御装置において、障害物検出部は、障害物の種類が移動可能な物体か静止物体かを判定し、再探索部は、障害物の種類が移動可能な物体である場合における、第1の退避スペースと第2の退避スペース間の間隔の下限値を、その障害物の種類が静止物体である場合におけるその下限値よりも大きな値に設定することが好ましい。
【0011】
他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両の車室内に設けられた車内センサにより生成された車両のドライバの状況を表す車内センサ信号に基づいて、ドライバに生じた異常を検出し、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間において、地図情報を参照して他の車両の走行を妨害せずに車両を停車可能な第1の退避スペースを探索し、車両に設けられた車外センサにより生成された車両の周囲の状況を表す車外センサ信号に基づいて、第1の退避スペースに存在する障害物を検出し、障害物が検出された場合、地図情報を参照して、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間において他の車両の走行を妨害せずに車両を停車可能な第2の退避スペースを探索し、第2の退避スペースが検出された場合、車両を第2の退避スペースに停車させるよう車両を制御し、一方、第2の退避スペースが検出されない場合、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間の途中において車両が走行中の車道にて車両を停車させるよう車両を制御する、ことを含む。
【0012】
さらに他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、車両の車室内に設けられた車内センサにより生成された車両のドライバの状況を表す車内センサ信号に基づいて、ドライバに生じた異常を検出し、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間において、地図情報を参照して他の車両の走行を妨害せずに車両を停車可能な第1の退避スペースを探索し、車両に設けられた車外センサにより生成された車両の周囲の状況を表す車外センサ信号に基づいて、第1の退避スペースに存在する障害物を検出し、障害物が検出された場合、地図情報を参照して、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間において他の車両の走行を妨害せずに車両を停車可能な第2の退避スペースを探索し、第2の退避スペースが検出された場合、車両を第2の退避スペースに停車させるよう車両を制御し、一方、第2の退避スペースが検出されない場合、ドライバの異常が検出されたときの車両の位置から所定の区間の途中において車両が走行中の車道にて車両を停車させるよう車両を制御する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る車両制御装置は、ドライバの異常が検知されたときに車両を適切に停車させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】(a)~(c)は、それぞれ、本実施形態による車両制御処理における、車両の目標停車位置の説明図である。
図5】車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置、及び、車両制御装置上で実行される車両制御方法ならびに車両制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、いわゆるドライバ異常時停車支援システム(Emergency Driving Stop System, EDSS)の機能を有しており、ドライバが車両の運転を継続することが困難となるような異常を検出した場合に、車両を自動的に停車させる。その際、この車両制御装置は、地図情報に基づいて、車両の進行方向における所定距離以内に、他の車両の走行を妨害しない第1の退避スペースが有るか否か判定し、そのような第1の退避スペースがあれば、その第1の退避スペースに車両を停車させる。一方、そのような第1の退避スペースがなければ、車両制御装置は、車両が走行中の道路(以下、単に走行道路と呼ぶことがある)において車両を停車させる。さらに、第1の退避スペースがある場合でも、第1の退避スペースに何らかの障害物が存在して車両を停車させることが困難な場合、車両制御装置は、第1の退避スペースと異なる第2の退避スペースを再探索する。そして第2の退避スペースが見つかった場合、車両制御装置は、第2の退避スペースに車両を停車させる。しかし、第2の退避スペースが見つからなければ、車両制御装置は、走行道路上において車両を直ちに停車させる。
【0016】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、GPS受信機2と、カメラ3と、ドライバモニタカメラ4と、ストレージ装置5と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)6とを有する。GPS受信機2、カメラ3、ドライバモニタカメラ4及びストレージ装置5とECU6とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。さらに、車両制御システム1は、他の機器と無線通信するための無線通信端末(図示せず)及び目的地までの走行予定ルートを検索するナビゲーション装置(図示せず)の何れかを有していてもよい。
【0017】
GPS受信機2は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機2は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。なお、車両制御システム1は、GPS受信機2の代わりに、他の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。
【0018】
カメラ3は、車外センサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ3は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。そしてカメラ3は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ3により得られた画像は、車両の周囲の状況を表す車外センサ信号の一例である。カメラ3により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。例えば、車両10の後方へ向けられたカメラが設けられてもよい。
【0019】
カメラ3は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。
【0020】
ドライバモニタカメラ4は、車内センサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光または赤外光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。ドライバモニタカメラ4は、赤外LEDといったドライバを照明するための光源をさらに有していてもよい。そしてドライバモニタカメラ4は、車両10の運転席に着座したドライバの頭部がその撮影対象領域に含まれるように、すなわち、ドライバの頭部を撮影可能なように、例えば、インストルメントパネルまたはその近傍にドライバへ向けて取り付けられる。そしてドライバモニタカメラ4は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにドライバの頭部を撮影し、ドライバの頭部が写った画像(以下、カメラ3により得られた画像と区別するために、説明の便宜上、頭部画像と呼ぶ)を生成する。ドライバモニタカメラ4により得られた頭部画像は、車内センサ信号の一例である。頭部画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。ドライバモニタカメラ4は、頭部画像を生成する度に、その生成した頭部画像を、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。
【0021】
ストレージ装置5は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または、不揮発性の半導体メモリを有する。そしてストレージ装置5は、車両の自動運転制御において利用される高精度地図を記憶する。なお、高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての車線区画線または停止線といった道路標示を表す情報及び道路標識を表す情報が含まれる。高精度地図は、地図情報の一例である。
【0022】
さらに、ストレージ装置5は、高精度地図の更新処理、及び、ECU6からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置5は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信端末(図示せず)を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信してもよい。また、ストレージ装置5は、地図サーバから無線通信端末を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置5は、ECU6からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を切り出して、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。
【0023】
ECU6は、ドライバによる車両10の運転を支援する。本実施形態では、ECU6は、頭部画像に基づいて、ドライバに車両10の運転を継続することができないような異常が生じた場合にその異常を検出する。そしてドライバの異常が検出された場合、ECU6は、EDSS機能を動作させて車両10を緊急停車させるよう、車両10を制御する。
【0024】
図2に示されるように、ECU6は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0025】
通信インターフェース21は、ECU6を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、GPS受信機2から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、カメラ3から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。同様に、通信インターフェース21は、ドライバモニタカメラ4から頭部画像を受信する度に、受信した頭部画像をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ストレージ装置5から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。
【0026】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU6のプロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のアルゴリズム及び各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、カメラ3の取り付け位置、撮影方向、焦点距離といったパラメータを記憶する。また、メモリ22は、障害物などの検出に利用される、物体検出用の識別器を特定するための各種パラメータ、及び、頭部画像からドライバの顔の各部の検出、顔の向きの判定、及び、ドライバの眠気レベルの判定などに利用される各種のパラメータなどを記憶する。さらに、メモリ22は、車両10の周囲の画像、頭部画像、測位情報、高精度地図及び車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0027】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0028】
図3は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、異常検出部31と、探索部32と、障害物検出部33と、再探索部34と、車両制御部35とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0029】
異常検出部31は、頭部画像に基づいて、ドライバに車両10の運転を継続することができないような異常が生じた場合にその異常を検出する。なお、以下では、説明の便宜上、ドライバに車両10の運転を継続することができないような異常が生じたことを、単にドライバに異常が生じたということがある。例えば、異常検出部31は、所定の周期ごとに、直近の一定期間に得られた一連の頭部画像に基づいて、ドライバの眠気レベルを判定する。そして、ドライバの眠気レベルが車両10の前方の監視を行えないレベルである場合、異常検出部31はドライバに車両10の運転を継続することができないような異常が生じたと判定する。そのために、異常検出部31は、直近の一定期間内に得られた一連の頭部画像のそれぞれから、ドライバの視線方向、眼の開き度合い(以下、開眼度と呼ぶ)及び口の開き度合いを検出する。そして異常検出部31は、検出した視線方向、開眼度及び眠気レベルに基づいて、ドライバの眠気レベルを判定する。
【0030】
この場合、異常検出部31は、例えば、頭部画像を、画像からドライバの顔を検出するように予め学習された識別器に入力することで、その頭部画像上でドライバの顔が写っている領域(以下、顔領域と呼ぶ)を検出する。異常検出部31は、そのような識別器として、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)またはFaster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を利用することができる。あるいは、異常検出部31は、Vision transformerといった、Self-attention network(SAN)型のアーキテクチャを持つDNNを利用することができる。あるいは、異常検出部31は、そのような識別器として、AdaBoost識別器といった他の機械学習手法に基づく識別器を利用してもよい。このような識別器は、人の顔が表された多数の教師画像を用いて、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。異常検出部31は、頭部画像の顔領域から、ドライバの眼及び口を検出する。その際、異常検出部31は、例えば、Sobelフィルタなどのエッジ検出フィルタを適用して顔領域内のエッジ画素を検出する。そして異常検出部31は、エッジ画素が略水平方向に連続する線を検出し、左右それぞれの眼について、顔領域内でその眼が位置すると想定される範囲内で、上下方向に並んだそのような二つの線を、その眼の上瞼及び下瞼として検出すればよい。同様に、異常検出部31は、顔領域内で口が位置すると想定される範囲内で、上下方向に並んだそのような二つの線で囲まれた領域を、ドライバの口として検出すればよい。なお、異常検出部31は、画像から眼の上瞼及び下瞼を検出する他の手法に従って、頭部画像からドライバの左右それぞれの眼の上瞼及び下瞼を検出してもよい。同様に、異常検出部31は、画像から口を検出する他の手法に従って、頭部画像からドライバの口を検出してもよい。
【0031】
異常検出部31は、各頭部画像において、左右それぞれの眼の上瞼と下瞼間の距離に基づいて、ドライバの開眼度を推定する。例えば、異常検出部31は、左右それぞれの眼の上瞼と下瞼間の距離の平均値を開眼度とすればよい。なお、異常検出部31は、画像上の上瞼と下瞼から開眼度を算出する他の手法に従って開眼度を推定してもよい。そして異常検出部31は、一連の頭部画像のそれぞれにおける開眼度の時系列の変化から、開眼度が一旦極大値となってから次に極大値となるまでの時間を、ドライバの1回の瞬きの時間として算出する。そして異常検出部31は、直近の一定期間における、瞬きの回数をカウントするとともに、瞬き間の間隔の平均時間を瞬きの周期として算出する。さらに、異常検出部31は、例えば、直近の一定期間内の各頭部画像において、口の水平方向の長さに対する垂直方向の長さの比を算出し、その平均値を、ドライバの口の開き度合いとして算出する。なお、異常検出部31は、画像上において口が表された領域から、口の開き度合いを算出する他の手法に従ってドライバの口の開き度合いを算出してもよい。
【0032】
さらに、異常検出部31は、各頭部画像から、ドライバの視線方向を検出する。例えば、異常検出部31は、頭部画像上に表されたドライバの左右それぞれの眼の少なくとも一方について、上瞼と下瞼とで囲まれた領域(以下、眼領域と呼ぶ)から光源の角膜反射像及び瞳孔の重心(以下、単に瞳孔重心と呼ぶ)を検出する。なお、光源の角膜反射像はプルキンエ像とも呼ばれる。その際、異常検出部31は、例えば、プルキンエ像のテンプレートと眼領域とのテンプレートマッチングによりプルキンエ像を検出する。同様に、異常検出部31は、瞳孔のテンプレートと眼領域とのテンプレートマッチングにより瞳孔を検出し、検出した瞳孔が表された領域の重心を瞳孔重心とすればよい。なお、異常検出部31は、眼領域からプルキンエ像及び瞳孔重心を検出する他の手法に従ってプルキンエ像及び瞳孔重心を検出してもよい。そして異常検出部31は、プルキンエ像と瞳孔重心間の距離を算出し、その距離とドライバの視線方向との関係を表すテーブルを参照することで、ドライバの視線方向を検出する。なお、そのようなテーブルは、メモリ22に予め記憶されていればよい。そして異常検出部31は、直近の一定期間内の連続する二つの頭部画像の組ごとに、視線方向の移動量を求め、その移動量の平均値を、頭部画像の取得間隔で除することで、視線方向の移動速度として算出する。
【0033】
異常検出部31は、瞬きの周期及び頻度、口の開き度合い及び視線方向の移動速度の少なくとも一つに基づいて、ドライバの眠気レベルを判定し、その眠気レベルが、車両10の前方の監視を行えないレベルである場合、ドライバに異常が生じたと判定する。例えば、異常検出部31は、直近の一定期間における瞬きの回数が所定回数以上であり、瞬きの周期が所定の時間閾値よりも長く、かつ、口の開き度合いが所定の開き度合いよりも大きい場合、ドライバに異常が生じたと判定する。
【0034】
なお、異常検出部31は、ドライバの状態を表す他の指標に従って、ドライバに異常が生じたか否かを判定してもよい。例えば、異常検出部31は、所定期間にわたって連続して頭部画像からドライバの顔または眼を検出できない場合、ドライバに異常が生じたと判定してもよい。あるいは、異常検出部31は、所定期間にわたって連続してドライバが眼を閉じている場合、ドライバに異常が生じたと判定してもよい。この場合、異常検出部31は、開眼度が、眼が閉じられている場合に相当する閉眼判定閾値以下である場合に、ドライバが眼を閉じていると判定すればよい。また、車室内にマイクロホン(図示せず)が設けられている場合、異常検出部31は、マイクロホンにより生成された、車室内の音声を表す音声信号から、ドライバが発した特定の異常音(例えば、鼾の音)を検出してもよい。そして異常検出部31は、ドライバが発した特定の異常音を検出できた場合に、ドライバに異常が生じたと判定してもよい。なお、異常検出部31は、音声信号から特定の異常音を検出する何れかの手法に従って、ドライバの発したその異常音を検出すればよい。また、マイクロホンは車内センサの他の一例である。また、マイクロホンにより生成された音声信号は、車内センサ信号の他の一例である。
【0035】
異常検出部31は、ドライバに異常が生じたと判定した場合、EDSS機能を動作させることを車両制御部35へ指示するとともに、その判定結果を探索部32へ通知する。一方、異常検出部31は、ドライバに異常が生じていないと判定した場合には、EDSS機能を動作させなくてよい。
【0036】
探索部32は、ドライバの異常が検出されたことが通知されると、異常が検出されたときの車両10の位置から所定の区間において、高精度地図を参照して他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車可能な第1の退避スペースを探索する。なお、以下では、ドライバの異常が検出されたときの車両10の位置を、異常検出地点と呼ぶことがある。また、異常が検出されたときの車両10の位置から所定の区間を、探索区間と呼ぶことがある。
【0037】
探索部32は、ドライバの異常が検出されたときの最新の測位情報に表される車両10の位置を、異常検出地点として推定する。そして探索部32は、車両10の進行方向において異常検出地点から所定の走行距離(例えば、数100m~1km程度)の区間を、第1の退避スペースの探索区間として特定する。あるいは、探索部32は、異常検出地点から、ドライバの異常が検出されてから所定の走行時間(例えば、数10秒間~2分間程度)だけ車両10が走行したときに到達可能な区間を、第1の退避スペースの探索区間として特定してもよい。その際、探索部32は、車両10に搭載された車速センサ(図示せず)により測定された、車両10の現在の車速でその所定の走行時間だけ車両10が走行するとして、探索区間を特定する。あるいは、探索部32は、車両10が予め設定された所定の徐行速度まで減速し、減速後にその徐行速度で所定の走行時間だけ車両10が走行するとして、探索区間を特定してもよい。徐行速度は、車両10が停車するまでに車両10が事故を生じる危険を抑制できるような低速度(例えば、10km/h)に設定される。
【0038】
探索部32は、高精度地図を参照して、特定した探索区間内で、他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペースを、候補スペースとして探索する。他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペースは、例えば、路肩あるいは駐車スペースといった、車道外に位置し、かつ、車両10よりも大きいサイズを有するスペースとすることができる。そして探索部32は、そのような候補スペースのうち、異常検出地点から車両10が到達可能な最短距離以上離れ、かつ、車両10に最も近い候補スペースを、第1の退避スペースとする。具体的に、車両10が到達可能な最短距離(以下、最短到達距離と呼ぶ)は、車両10が走行中の車線(以下、自車線と呼ぶことがある)から候補スペースまで移動するのに必要な車線変更の回数が多いほど、長く設定される。例えば、探索部32は、予め設定された、1回の車線変更に要する距離に、車両10が自車線から候補スペースまで移動するのに必要な車線変更の回数を乗じることで、最短到達距離を算出すればよい。なお、1回の車線変更に要する距離は、メモリ22に予め記憶される。また、探索部32は、最新の測位情報に表された車両10の位置と高精度地図とを参照して、自車線を特定する。
【0039】
あるいは、探索部32は、カメラ3により得られた画像に表された車線区画線などの地物と、高精度地図に表された対応する地物とを照合することで、自車線を特定してもよい。この場合、探索部32は、最新の画像を、検出対象となる地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、その画像に表された地物を検出する。探索部32は、そのような識別器として、CNN型またはSAN型のアーキテクチャを持つDNNを用いることができる。あるいは、探索部32は、AdaBoost識別器といった、他の機械学習手法に基づく識別器を用いてもよい。このような識別器は、画像から、検出対象となる地物を検出するように、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。識別器は、入力された画像上で検出した地物を含む物体領域を特定する情報を出力する。
【0040】
探索部32は、画像から地物を検出すると、車両10の位置及び姿勢を仮定して、画像から検出された地物を高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図に表された車両10の周囲の地物を画像上に投影する。そして探索部32は、対応する地物同士の位置の差に基づいて一致度合を算出する。探索部32は、仮定された車両10の位置及び姿勢を変化させながら、対応する地物同士の一致度合の算出を繰り返す。そして探索部32は、画像から検出された地物と高精度地図上に表された対応する地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の実際の位置及び姿勢として推定する。探索部32は、高精度地図を参照して、特定した車両10の実際の位置を含む車線を、自車線とする。
【0041】
探索部32は、自車線を特定すると、高精度地図を参照して、候補スペースごとに、自車線とその候補スペースとの間の車線数をカウントする。そして探索部32は、自車線とその候補スペース間の車線数に1加えた数を、その候補スペースについての必要な車線変更回数とする。
【0042】
探索部32は、第1の退避スペースを検出できた場合、第1の退避スペースの位置を表す情報及び異常検出地点を表す情報を障害物検出部33、再探索部34及び車両制御部35へ通知する。また、探索部32は、第1の退避スペースが見つからなかった場合、第1の退避スペースが見つからなかったことを車両制御部35へ通知する。
【0043】
障害物検出部33は、第1の退避スペースが検出されると、それ以降にカメラ3により生成された時系列の一連の画像のそれぞれに基づいて、第1の退避スペースに存在する障害物を検出する。なお、障害物検出部33は、各画像に対して同じ処理を実行すればよいので、以下では、一つの画像に対する処理について説明する。
【0044】
障害物検出部33は、探索部32における自車線の検出に関して説明したように、画像に表された地物と高精度地図に表された対応する地物とを照合することで、車両10の位置及び姿勢を特定する。なお、探索部32が車両10の位置及び姿勢を特定している場合、障害物検出部33は、探索部32から、車両10の位置及び姿勢を表す情報を取得してもよい。さらに、障害物検出部33は、車両10の位置及び姿勢と、第1の退避スペースの位置と、カメラ3の撮影方向、設置位置及び焦点距離といったパラメータとに基づいて、画像上での第1の退避スペースに相当する領域(以下、退避領域と呼ぶ)を特定する。そして障害物検出部33は、画像上の退避領域に何らかの立体的な構造物が存在するか否か判定する。立体的な構造物は、例えば、人、バイク、車両、看板、ブロック、ポールあるいはパイロンである。障害物検出部33は、探索部32において地物の検出に関して説明した識別器と同様の構成を有し、かつ、立体的な構造物を検出し、かつ、その構造物の種類を判定するように予め学習された識別器する。障害物検出部33は、そのような識別器に画像を入力することで、画像上でそのような立体的な構造物が表された物体領域を検出する。さらに、識別器は、その立体的な構造物の種類を出力する。識別器は、その立体的な構造物の種類として、移動可能な物体または静止物体の何れかを出力してもよい。障害物検出部33は、立体的な構造物が表された物体領域が退避領域に含まれる場合、車両10からその構造物までの距離を推定する。そして障害物検出部33は、車両10からその構造物までの距離と、車両10から第1の退避スペースまでの距離との差が所定の誤差範囲に含まれる場合、その構造物は、第1の退避スペースに存在する障害物であると判定する。
【0045】
障害物が路面上に位置している場合、画像上で障害物が表された物体領域の下端の位置は、カメラ3から見たその障害物の下端への方位と1対1に対応する。また、カメラ3の撮影方向及び取り付け位置は既知である。そのため、障害物検出部33は、路面からのカメラ3の設置高さと、画像上で障害物が表された物体領域の下端の位置に対応するカメラ3から障害物の下端への方位とに基づいて、車両10から障害物までの距離を推定することができる。あるいは、車両10に測距センサ(図示せず)が搭載されている場合、障害物検出部33は、測距センサから取得した測距信号に基づいて、障害物までの距離を推定してもよい。この場合、障害物検出部33は、測距信号に表される、画像上での障害物が表された物体領域の位置に対応する方位に存在する物体までの距離の測定値を、車両10からその障害物までの距離とすればよい。
【0046】
障害物検出部33は、第1の退避スペースに存在する障害物が検出されるか、あるいは、車両10が第1の退避スペースに到達するまで、所定の周期ごとに、最新の画像に対して上記の処理を実行すればよい。そして障害物検出部33は、第1の退避スペースに存在する障害物を検出した場合、その旨を再探索部34及び車両制御部35へ通知する。
【0047】
さらに、障害物検出部33は、再探索部34により第2の退避スペースが検出されている場合、上記の処理と同様の処理を実行することで、第2の退避スペースに存在する障害物を検出してもよい。そして第2の退避スペースに存在する障害物を検出すると、障害物検出部33は、その旨を再探索部34及び車両制御部35へ通知する。
【0048】
再探索部34は、第1の退避スペースに存在する障害物が検出されたことが障害物検出部33から通知されると、高精度地図を参照して、異常検出地点から上記の探索区間内において第2の退避スペースを探索する。その際、再探索部34は、探索部32と同様の処理を行って1以上の候補スペースを探索する。そして1以上の候補スペースが見つかった場合、再探索部34は、探索部32と同様に、各候補スペースのうち、車両10の現在位置から最短到達距離以上離れ、かつ、車両10に最も近い候補スペースを、第2の退避スペースとして検出する。
【0049】
再探索部34は、第2の退避スペースを検出すると、第2の退避スペースが検出できたこと、及び、検出した第2の退避スペースの位置を障害物検出部33及び車両制御部35へ通知する。一方、第2の退避スペースを検出できなかった場合、再探索部34は、第2の退避スペースが見つからなかったことを車両制御部35へ通知する。
【0050】
さらに、一旦検出した第2の退避スペースに存在する障害物が存在することが障害物検出部33から通知されると、再探索部34は、上記と同様の処理を行って、第2の退避スペースの再探索をさらに実施してもよい。そして再探索部34は、再探索の結果として検出した第2の退避スペースの位置を障害物検出部33及び車両制御部35へ通知してもよい。このように、再探索部34は、障害物が存在しない第2の退避スペースが見つかるまで、上記と同様の処理を実行して繰返し第2の退避スペースを探索してもよい。
【0051】
車両制御部35は、ドライバの異常が検出されたことが通知されると、EDSS機能を動作させる。すなわち、車両制御部35は、ドライバの異常が検出されたことが通知されると、車両10を所定の徐行速度まで減速し、その後、車両10を目標停車位置に停車させるよう制御する。
【0052】
本実施形態では、第1の退避スペースが検出されており、かつ、第1の退避スペースに存在する障害物が検出されていない場合、車両制御部35は、第1の退避スペースを目標停車位置に設定する。また、第2の退避スペースが検出されている場合、車両制御部35は、第2の退避スペースを目標停車位置に設定する。さらに、何れの退避スペースも検出されていないか、検出された全ての退避スペースに障害物が検出された場合、車両制御部35は、車両10を所定の減速度で直ちに停車させるよう、車両10が走行中の車道上、例えば、自車線上に目標停車位置を設定する。なお、自車線が追い越し車線である場合、車両制御部35は、目標停車位置を走行車線上に設定してもよい。すなわち、第1の退避スペース及び第2の退避スペースの何れも検出されていないか、検出された全ての退避スペースに障害物が検出された場合、車両制御部35は、上記の探索区間の途中でも車両10を停車させる。そして車両制御部35は、目標停車位置に車両10を停車させるように車両10を制御する。
【0053】
そのために、車両制御部35は、車両10の現在位置から目標停車位置までの車両10の走行予定経路(トラジェクトリ)を生成する。走行予定経路は、例えば、走行予定経路を車両10が走行する際の各時刻における、車両10の目標位置の集合として表される。そして車両制御部35は、その走行予定経路に沿って車両10が走行するように車両10の各部を制御する。
【0054】
車両制御部35は、車両10を徐行速度になるまで減速させ、その徐行速度で目標停車位置へ向かうように車両10を制御する。また、車両制御部35は、車両10の減速を開始するとともに、ハザードランプの点滅を開始させる。さらに、車両制御部35は、カメラ3により得られた時系列の一連の画像のそれぞれから、車両10の周囲に存在する物体を検出する。なお、車両制御部35は、例えば、障害物検出部33に関して説明したのと同様に、画像を識別器に入力することで、車両10の周囲に存在する物体を検出してもよい。あるいは、車両10がLiDARセンサといった距離センサを有している場合には、車両制御部35は、その距離センサにより得られる測距信号に基づいて車両10の周囲に存在する物体を検出してもよい。
【0055】
車両制御部35は、車両10の周囲に存在する物体と車両10とが衝突しないように走行予定経路を生成する。そのために、車両制御部35は、時系列の一連の画像等から検出された車両10の周囲に存在する物体を追跡し、その追跡結果により得られた軌跡から、物体のそれぞれの所定時間先までの予測軌跡を推定する。その際、車両制御部35は、Lucas-Kanade法といったオプティカルフローに基づく追跡処理を、カメラ3により得られた最新の画像上で着目する物体が表された物体領域及び過去の画像での物体領域に対して適用することでその物体領域に表された物体を追跡する。そのため、車両制御部35は、例えば、着目する物体領域に対してSIFTあるいはHarrisオペレータといった特徴点抽出用のフィルタを適用することで、その物体領域から複数の特徴点を抽出する。そして車両制御部35は、複数の特徴点のそれぞれについて、過去の画像における物体領域における対応する点を、適用される追跡手法に従って特定することで、オプティカルフローを算出すればよい。あるいは、車両制御部35は、画像から検出された移動物体の追跡に適用される他の追跡手法を、最新の画像における、着目する物体領域及び過去の画像における物体領域に対して適用することで、その物体領域に表された物体を追跡してもよい。
【0056】
車両制御部35は、追跡中の物体のそれぞれについて、カメラ3についての車両10への取り付け位置などの情報を用いて視点変換処理を実行することで、その物体の画像内座標を鳥瞰画像上の座標(鳥瞰座標)に変換する。その際、車両制御部35は、各画像の取得時における、車両10の位置及び姿勢と、検出された物体までの推定距離と、車両10からその物体へ向かう方向とにより、各画像の取得時における、検出された物体の位置を推定できる。なお、車両制御部35は、車両10の位置及び姿勢を、探索部32において説明したのと同様の方法により推定すればよい。また、車両制御部35は、車両10から検出された物体までの推定距離及び方位を、障害物検出部33において障害物までの距離を推定するのと同様の方法により推定すればよい。そして車両制御部35は、追跡中の物体のそれぞれについて、時間順に推定した位置を並べることで、その物体の軌跡を推定できる。そして車両制御部35は、直近の所定期間における追跡中の物体の走行軌跡に基づいてKalman FilterまたはParticle filterなどを用いた予測処理を実行することで、その物体の所定時間先までの予測軌跡を推定することができる。
【0057】
車両制御部35は、追跡中の各物体の予測軌跡に基づいて、所定時間先までの追跡中の各物体と車両10間の距離の予測値が所定距離以上となり、かつ、必要に応じて、目標停車位置までの車線変更が完了するように、走行予定軌跡を生成する。
【0058】
車両制御部35は、走行予定経路を設定すると、車両10がその走行予定経路に沿って走行するように車両10の各部を制御する。例えば、車両制御部35は、走行予定経路、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速に従って、車両10の減速度を求め、その減速度となるようにアクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして車両制御部35は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、車両制御部35は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。さらに、車両制御部35は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。
【0059】
さらに、車両制御部35は、車両10が走行予定経路に沿って走行するために車両10の進路を変更する場合には、その走行予定経路に従って車両10の操舵角を求める。そして車両制御部35は、その操舵角に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ出力する。
【0060】
なお、第1の退避スペースまたは第2の退避スペースへ向けて車両10を停車させるよう、車両10を制御している途中でその退避スペースに存在する障害物が検出された場合のように、途中で目標停車位置が変更されることがある。このような場合、車両制御部35は、変更後の目標停車位置にしたがって走行予定経路を再設定する。
【0061】
図4(a)~図4(c)は、それぞれ、本実施形態による車両制御処理における、車両10の目標停車位置の説明図である。図4(a)に示される例では、異常検出地点401から車両10が所定距離走行するまでの区間410内に、他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペース402が存在する。そのため、このスペース402が第1の退避スペースとして設定される。そして図4(a)に示される例では、第1の退避スペースに402に障害物が存在しないため、第1の退避スペース402が目標停車位置となる。
【0062】
図4(b)に示される例では、図4(a)に示される例と同様に、異常検出地点401から車両10が所定距離走行するまでの区間410内に、他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペース402が存在する。そのため、このスペース402が第1の退避スペースとして設定される。しかしこの例では、第1の退避スペース402に障害物403が存在する。そのため、区間410内で他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペースが再探索される。この例では、区間410内において、第1の退避スペース402よりも車両10から離れた位置に、他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペース404が存在する。そのため、このスペース404が第2の退避スペースとして設定される。したがって、第2の退避スペース404が目標停車位置となる。
【0063】
図4(c)に示される例では、図4(b)に示される例と同様に、異常検出地点401から車両10が所定距離走行するまでの区間410内において、第1の退避スペース402が設定されているものの、第1の退避スペース402に障害物403が存在する。ただし、この例では、区間410内で他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車させることが可能なスペースが再探索されても、第1の退避スペース402以外にそのようなスペースが存在しない。そのため、第2の退避スペースが見つからなかった時点で、ECU6は、車両10が走行中の車道405上において、区間410の最遠部に到達する前に車両10を停車させる。
【0064】
図5は、プロセッサ23により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、所定の周期ごと、例えば、頭部画像が得られる度に、以下の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行すればよい。
【0065】
プロセッサ23の異常検出部31は、ドライバに異常が検出されたか否か判定する(ステップS101)。ドライバの異常が検出されていない場合(ステップS101-No)、プロセッサ23は、車両制御処理を終了する。
【0066】
一方、ドライバの異常が検出された場合(ステップS101-Yes)、プロセッサ23の車両制御部35は、所定の徐行速度まで車両10を減速する(ステップS102)。また、プロセッサ23の探索部32は、異常検出地点から所定の区間内において、他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車できる第1の退避スペースが有るか否か判定する(ステップS103)。第1の退避スペースが見つからない場合(ステップS103-No)、プロセッサ23の車両制御部35は、車両10が走行中の車道上に車両10を直ちに停車させるよう、車両10を制御する(ステップS104)。
【0067】
一方、第1の退避スペースが検出された場合(ステップS103-Yes)、プロセッサ23の障害物検出部33は、検出された退避スペース上に存在する障害物を検出できたか否か判定する(ステップS105)。その退避スペース上に存在する障害物が検出されない場合(ステップS105-No)、車両制御部35は、その退避スペースに車両10を停車させるように車両10の制御を開始する(ステップS106)。
【0068】
一方、退避スペース上に存在する障害物が検出された場合(ステップS105-Yes)、プロセッサ23の再探索部34は、異常検出地点から所定の区間内において、検出済みの退避スペース以外で退避スペースの再探索を実施する。そして再探索部34は、他の車両の走行を妨害せずに車両10を停車できる第2の退避スペースが有るか否か判定する(ステップS107)。第2の退避スペースが検出された場合(ステップS107-Yes)、プロセッサ23は、ステップS105以降の処理を繰り返す。
【0069】
一方、第2の退避スペースが見つからない場合(ステップS107-No)、車両制御部35は、走行中の車道上に車両10を直ちに停車させるよう、車両10の制御を開始する(ステップS104)。
【0070】
ステップS104またはステップS106の後、プロセッサ23は、車両制御処理を終了する。なお、プロセッサ23は、ステップS102の処理とステップS103以降の処理を並列に実行してもよい。
【0071】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、ドライバの異常が検出されると、異常検出地点から所定の範囲内において第1の退避スペースを探索し、第1の退避スペースに車両を停車させるよう、車両を制御する。しかし、第1の退避スペースに障害物が存在する場合には、この車両制御装置は、異常検出地点から所定の範囲内において第1の退避スペースと異なる第2の退避スペースを再探索する。そしてこの車両制御装置は、第2の退避スペースに車両を停車させるよう、車両を制御する。しかし、第2の退避スペースが見つからない場合には、この車両制御装置は、車両を自車線上に直ちに停車させる。このように、この車両盛業装置は、一旦設定した退避スペースに障害物が存在する場合でも、退避スペースを再探索するので、ドライバに異常が生じたときに車両を車道外へ緊急停車させる可能性を向上できる。さらにこの車両制御装置は、再探索時に退避スペースが見つからないと直ちに車両を停車させるので、車両が停車するまでの時間を短縮できる。そのため、この車両制御装置は、ドライバの異常が検知されたときに車両を適切に停車させることができる。さらに、この車両制御装置は、減速した状態で障害物検出時における退避スペースの再探索を実行するので、最初に設定した第1の退避スペースに障害物が存在する場合でも、車両が停車するまでの走行距離を短縮できる。
【0072】
変形例によれば、再探索部34は、第2の退避スペースに存在する障害物が検出された場合、第2の退避スペースの再探索を行わなくてもよい。この場合、車両制御部35は、第2の退避スペースに存在する障害物が検出されたことが通知されると、車両10を自車線上に直ちに停車させるように制御してもよい。
【0073】
他の変形例によれば、再探索部34は、第1の退避スペースに存在する障害物が検出された場合、その障害物の種類に応じて、第1の退避スペースと第2の退避スペース間の間隔の下限値を変更してもよい。この場合、障害物検出部33は、検出した障害物の種類を再探索部34へ通知する。そして再探索部34は、障害物の種類が移動可能な物体である場合における、第1の退避スペースと第2の退避スペースの間隔の下限値を、障害物の種類が静止物体である場合におけるその下限値よりも大きい値に設定する。なお、移動可能な物体とされる障害物の種類には、例えば、人、バイクまたは車両が含まれる。一方、静止物体とされる障害物の種類には、例えば、ポール、パイロンまたはブロックが含まれる。そして再探索部34は、第1の退避スペースと第2の退避スペース間の間隔が設定した下限値以上離れるように、第2の退避スペースを探索する。さらに、再探索部34は、第2の退避スペースを再探索する際にも、上記と同様に、先に検出された第2の退避スペースと再探索する第2の退避スペース間の間隔の下限値を、その障害物の種類に応じて設定してもよい。これにより、車両制御装置は、障害物が移動可能な物体である場合に、その障害物が先に検出された退避スペースから再探索された退避スペースへ移動することで、再探索後の退避スペースにも車両10を停車させることができなくなる事態を避けることができる。
【0074】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 車両制御システム
10 車両
2 GPS受信機
3 カメラ
4 ドライバモニタカメラ
5 ストレージ装置
6 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 異常検出部
32 探索部
33 障害物検出部
34 再探索部
35 車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5