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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240814BHJP
   A01C 11/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01C11/02 331Z
A01C11/02 322A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022036088
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131373
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】石田 智之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】阿部 匡良
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】高橋 学
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054654(WO,A1)
【文献】特開2019-176801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0130593(US,A1)
【文献】特開2004-017912(JP,A)
【文献】特開平05-338474(JP,A)
【文献】特開2000-004612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(100)の走行を行いながら苗を植付ける作業車両であって、
複数個の操舵制御パラメーターに基づいて、操舵機構(230)の制御を行う制御機構(500)を備えており、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の組合せが、複数のセットとして用意されており、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、前記複数のセットの内から一つのセットを選択することにより一括的に設定可能であり、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の設定指示に利用可能である、前記車体(100)へ取付けられたモニターパネル(310)、および前記車体(100)へ取付けられていないリモートコントローラー(320)が、設けられており、
前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になると、前記リモートコントローラー(320)は設定指示不可能な状態になることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、個別的にも設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になっているにもかかわらず、前記モニターパネル(310)を利用する設定指示が所定の時間にわたって行われないと、設定指示可能な状態になっていた前記モニターパネル(310)は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていた前記リモートコントローラー(320)は設定指示可能な状態になることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になっていても、前記リモートコントローラー(320)を利用する所定の操作が行われると、設定指示可能な状態になっていた前記モニターパネル(310)は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていた前記リモートコントローラー(320)は設定指示可能な状態になることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え機などのような作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘作業および路上走行に必要な機能設定の簡単化を図る農用トラクターのような作業車両が、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-147347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述された従来の作業車両については、有益な動作制御機能を利用するための作業者の負担の軽減は、必ずしも十分に実現されていない。
【0005】
本発明は、上述された従来の課題を考慮し、有益な動作制御機能を利用するための作業者の負担の軽減を実現することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、車体(100)の走行を行いながら苗を植付ける作業車両であって、
複数個の操舵制御パラメーターに基づいて、操舵機構(230)の制御を行う制御機構(500)を備えており、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の組合せが、複数のセットとして用意されており、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、前記複数のセットの内から一つのセットを選択することにより一括的に設定可能であり、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の設定指示に利用可能である、前記車体(100)へ取付けられたモニターパネル(310)、および前記車体(100)へ取付けられていないリモートコントローラー(320)が、設けられており、
前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になると、前記リモートコントローラー(320)は設定指示不可能な状態になることを特徴とする作業車両である。
第2の本発明は、前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、個別的にも設定可能であることを特徴とする第1の本発明の作業車両である。
第3の本発明は、前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になっているにもかかわらず、前記モニターパネル(310)を利用する設定指示が所定の時間にわたって行われないと、設定指示可能な状態になっていた前記モニターパネル(310)は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていた前記リモートコントローラー(320)は設定指示可能な状態になることを特徴とする第1または第2の本発明の作業車両である。
第4の本発明は、前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になっていても、前記リモートコントローラー(320)を利用する所定の操作が行われると、設定指示可能な状態になっていた前記モニターパネル(310)は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていた前記リモートコントローラー(320)は設定指示可能な状態になることを特徴とする第1または第2の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、車体(100)の走行を行いながら苗を植付ける作業車両であって、
複数個の操舵制御パラメーターに基づいて、操舵機構(230)の制御を行う制御機構(500)を備えており、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の組合せが、複数のセットとして用意されており、
前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、前記複数のセットの内から一つのセットを選択することにより一括的に設定可能であることを特徴とする作業車両である。
【0007】
本発明に関連する第2の発明は、前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、個別的にも設定可能であることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0008】
本発明に関連する第3の発明は、前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の設定指示に利用可能である、前記車体(100)へ取付けられたモニターパネル(310)、および前記車体(100)へ取付けられていないリモートコントローラー(320)が、設けられており、
前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になると、前記リモートコントローラー(320)は設定指示不可能な状態になることを特徴とする本発明に関連する第1または第2の発明の作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第4の発明は、前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になっているにもかかわらず、前記モニターパネル(310)を利用する設定指示が所定の時間にわたって行われないと、設定指示可能な状態になっていた前記モニターパネル(310)は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていた前記リモートコントローラー(320)は設定指示可能な状態になることを特徴とする本発明に関連する第3の発明の作業車両である。
【0010】
本発明に関連する第5の発明は、前記モニターパネル(310)が設定指示可能な状態になっていても、前記リモートコントローラー(320)を利用する所定の操作が行われると、設定指示可能な状態になっていた前記モニターパネル(310)は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていた前記リモートコントローラー(320)は設定指示可能な状態になることを特徴とする本発明に関連する第3の発明の作業車両である。
【0011】
本発明に関連する第6の発明は、前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、前記車体(100)の走行が行われているとき、所定の条件が満足されない場合において設定不可能であることを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車両である。
【0012】
本発明に関連する第7の発明は、前記複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の設定指示は、前記車体(100)の走行が行われているとき、受付けられるが保留され、前記車体(100)の走行が停止された後、有効化されることを特徴とする本発明に関連する第6の発明の作業車両である。
【0013】
本発明に関連する第8の発明は、車体(100)の走行を行いながら苗を植付ける作業車両であって、
変速機構(270)の制御とともにエンジン機構(210)の制御を行う制御機構(500)と、
車速の検出を行う車速検出機構(280)と、
を備えており、
前記制御機構(500)は、前記車速検出機構(280)により前記行われた車速の前記検出に基づいて、前記変速機構(270)に対する変速機構目標値(VtT)に応じた車速が所定の時間(τ)以内に得られないエンジン高負荷状態が発生しているか否かを判断することを特徴とする作業車両である。
【0014】
本発明に関連する第9の発明は、前記所定の時間(τ)は、前記エンジン機構(210)に対するエンジン機構目標値(VtE)に応じて異なることを特徴とする本発明に関連する第8の発明の作業車両である。
【0015】
本発明に関連する第10の発明は、前記制御機構(500)は、前記エンジン高負荷状態が発生している場合において、前記変速機構(270)に対する変速機構設定値(VsT)を所定の変速機構設定値減少幅(wT)で減少させる制御、または前記エンジン機構(210)に対するエンジン機構設定値(VsE)を所定のエンジン機構設定値増加幅(wE)で増加させる制御を行うことにより、エンジン高負荷状態回避制御を行うことを特徴とする本発明に関連する第8の発明の作業車両である。
【0016】
本発明に関連する第11の発明は、前記制御機構(500)は、前記発生したエンジン高負荷状態が前記エンジン高負荷状態回避制御で解消された場合において、前記エンジン高負荷状態回避制御を解除することを特徴とする本発明に関連する第10の発明の作業車両である。
【0017】
本発明に関連する第12の発明は、前記制御機構(500)は、前記エンジン高負荷状態回避制御の解除の後、エンジン高負荷状態が再び発生する場合において、前記変速機構(270)に対する前記変速機構設定値(VsT)を先の前記所定の変速機構設定値減少幅(wT)より大きな所定の変速機構設定値減少幅(wT)で減少させる制御、または前記エンジン機構(210)に対する前記エンジン機構設定値(VsE)を先の前記所定のエンジン機構設定値増加幅(wE)より大きな所定のエンジン機構設定値増加幅(wE)で増加させる制御を行うことにより、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を行うことを特徴とする本発明に関連する第11の発明の作業車両である。
【0018】
本発明に関連する第13の発明は、前記制御機構(500)は、前記エンジン高負荷状態回避制御の解除の後、エンジン高負荷状態が再び発生する場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を行い、前記再び発生したエンジン高負荷状態が前記さらなるエンジン高負荷状態回避制御で解消された場合において、前記さらなるエンジン高負荷状態回避制御を解除しないことを特徴とする本発明に関連する第11の発明の作業車両である。
【0019】
本発明に関連する第14の発明は、前記制御機構(500)は、前記エンジン高負荷状態回避制御の解除の後、エンジン高負荷状態が再び発生する場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を行い、前記再び発生したエンジン高負荷状態が前記さらなるエンジン高負荷状態回避制御で解消された場合において、前記さらなるエンジン高負荷状態回避制御を解除するが、前記変速機構(270)に対する前記変速機構目標値(VtT)を減少させる制御、または前記エンジン機構(210)に対するエンジン機構目標値(VtE)を増加させる制御を行うことを特徴とする本発明に関連する第11の発明の作業車両である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、有益な動作制御機能を利用するための作業者の負担の軽減を実現することが可能である。そして、本発明により、上述された本発明の効果に加えて、安全性を向上することが可能である。
本発明に関連する第1の発明により、有益な動作制御機能を利用するための作業者の負担の軽減を実現することが可能である。
【0021】
本発明に関連する第2の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、融通性を向上することが可能である。
【0022】
本発明に関連する第3の発明により、本発明に関連する第1または第2の発明の効果に加えて、安全性を向上することが可能である。
【0023】
本発明に関連する第4の発明により、本発明に関連する第3の発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0024】
本発明に関連する第5の発明により、本発明に関連する第3の発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0025】
本発明に関連する第6の発明により、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、安全性を向上することが可能である。
【0026】
本発明に関連する第7の発明により、本発明に関連する第6の発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0027】
本発明に関連する第8の発明により、有益な動作制御機能を利用するための作業者の負担の軽減を実現することが可能である。
【0028】
本発明に関連する第9の発明により、本発明に関連する第8の発明の効果に加えて、融通性を向上することが可能である。
【0029】
本発明に関連する第10の発明により、本発明に関連する第8の発明の効果に加えて、安全性を向上することが可能である。
【0030】
本発明に関連する第11の発明により、本発明に関連する第10の発明の効果に加えて、利便性を向上することが可能である。
【0031】
本発明に関連する第12の発明により、本発明に関連する第11の発明の効果に加えて、信頼性を向上することが可能である。
【0032】
本発明に関連する第13の発明により、本発明に関連する第11の発明の効果に加えて、信頼性を向上することが可能である。
【0033】
本発明に関連する第14の発明により、本発明に関連する第11の発明の効果に加えて、信頼性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明における実施の形態の田植え機の左側面図
図2】本発明における実施の形態の田植え機のブロック図(その一)
図3】本発明における実施の形態の田植え機の操舵制御パラメーターテーブルの説明図
図4】本発明における実施の形態の田植え機のモニターパネルの画面表示の説明図(その一)
図5】本発明における実施の形態の田植え機のモニターパネルの画面表示の説明図(その二)
図6】本発明における実施の形態の田植え機のブロック図(その二)
図7】本発明における実施の形態の田植え機のリモートコントローラーの画面表示の説明図(その一)
図8】本発明における実施の形態の田植え機のリモートコントローラーの画面表示の説明図(その二)
図9】本発明における実施の形態の田植え機のブロック図(その三)
図10】本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その一)
図11】本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その二)
図12】本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その三)
図13】本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その四)
図14】本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その五)
図15】本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その六)
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
以下同様であるが、いくつかの構成要素は図面において示されていないこともあるし透視的にまたは省略的に示されていることもある。
【0037】
(1)はじめに、図1を参照しながら、本発明における実施の形態の田植え機の構成および動作について具体的に説明する。
【0038】
ここに、図1は、本発明における実施の形態の田植え機の左側面図である。
【0039】
本実施の形態の田植え機の動作について説明しながら、制御機構500などにより実現される、本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法についても説明する。
【0040】
本実施の形態の田植え機は、操舵機構230における手動操縦操作または自動操縦操作に基づいた制御機構500の制御に応じて、左右一対の前輪221および後輪222を有する走行装置220で走行しながら、整地ローター部材261および整地フロート部材262を有する整地装置260により圃場の整地を行って苗植付け具241を有する苗植付け装置240により圃場への苗植付けを行うとともに施肥装置250により圃場への施肥を行うための田植え機である。
【0041】
走行装置220ならびに苗植付け装置240、施肥装置250および整地装置260は、HSTである主変速装置および副変速装置を有する変速機構270を介して伝達されるエンジン機構210の動力により駆動される。
【0042】
本実施の形態の田植え機は、車体100の走行を行いながら苗を植付ける作業車両であって、本発明における作業車両の例である。
【0043】
(2)つぎに、本発明における実施の形態の田植え機の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0044】
(2a)はじめに、図2から5を主として参照しながら、より具体的に説明する。
【0045】
ここに、図2は本発明における実施の形態の田植え機のブロック図(その一)であり、図3は本発明における実施の形態の田植え機の操舵制御パラメーターテーブルTの説明図であり、図4および5は本発明における実施の形態の田植え機のモニターパネル310の画面表示の説明図(その一および二)である。
【0046】
制御機構500は、複数個の操舵制御パラメーターに基づいて、操舵機構230の制御を行う。
【0047】
複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の組合せが、複数のセットとして用意されている。
【0048】
このような態様は、ロボット田植え機の操舵感度調節機能に関する。
【0049】
ロボット田植え機で自動制御のハンドル操舵感度がモニターパネル310などの感度設定画面で変更可能である構成が、考えられる。第1段から第5段の感度調節段が設けられており(図3参照)、自動操舵が行われているとき、試作用プログラムにおけるように、操舵制御パラメーターテーブルTにおけるさまざまな種類のパラメーターがモニターパネル310でそのたびに個別的に変更されてもよいが、設定値を一括的に変更できる感度調節の項目がモニターパネル310に追加されており(図4参照)、さらに設定をリモートコントローラー320で変更することができるので、利便性が向上される。自動操舵の制御パラメーターは、圃場の条件に応じて簡単に変更可能である。モニターパネル310およびリモートコントローラー320のためのソフトウェアは、ソフトウェアメーカーなどでアップグレード可能である。
【0050】
複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、複数のセットの内から一つのセットを選択することにより一括的に設定可能である。
【0051】
上述された構成で、制御パラメーターを個別的に変更するのではなく、P(横ずれ)ゲイン、θ(方位)ゲイン、ω(角速度)ゲイン、I(積分)ゲインなどのような制御パラメーターを各々の感度調節段に応じて一括的に変更する構成が考えられる。制御パラメーターを個別に変更することはしばしば煩わしく、ユーザーはどのようなチューニングがよいかが分かりにくいことがあるが、あらかじめ決められた操舵制御パラメーターテーブルTからの選択を行うユーザー操作で、制御パラメーターを容易に変更することができる。
【0052】
複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、個別的にも設定可能である。
【0053】
上述された構成で、一括的な設定モードではさまざまな種類のパラメーターの値は各々の感度調節段に応じた固定値であるが、これらとは別に定義されている、各々のパラメーターがいわゆるこだわり設定のような個別的な設定モードで自由に設定可能であるマニュアル設定段のための画面(図5参照)がボタン321の押下げで起動される構成が考えられる。ユーザーは、圃場に応じて自分好みにパラメーターをカスタマイズしたいと思うこともあり、全体的に浅く弱めに操舵したいと思うこともあり、河川の近傍で石が多いので、強めに操舵したいと思うこともあり、刈取りが困難になるので、多少の横ズレが発生しても、方位を優先しながら真っすぐに植付けを行いたいと思うこともある。ユーザーの要望に応じて自由に制御パラメーターを変更することができるので、利便性が向上される。
【0054】
上述された構成で、さまざまな種類のパラメーターは、階層が深い、営業サービス担当者などのためのコントローラー設定画面における個別的な設定モードでのみ個別的に変更可能であり、コントローラーにより不揮発メモリーなどへ記憶される構成が考えられる。知識が不十分であるユーザーが制御パラメーターを自由に変更すると、制御が適切に行われず、ハンドル動作が不安定になり、制御データが発散して収束しなくなりやすいので、ハンドルが左右方向で交互に大きく切られ続けることがある。さまざまな種類の制御パラメーターは、モニターパネル310の画面で一括的に変更可能であるが、階層が深いコントローラー設定画面などにおいてのみ個別的に変更可能であるので、一般ユーザーによる安易な制御パラメーターの変更を抑制することができる態様が実現される。
【0055】
上述された構成で、個別的な設定モードでのさまざまな種類のパラメーターは、階層が深い、営業サービス担当者などのためのコントローラー設定画面においてのみではなく、階層が浅い、一般ユーザー向けの通常の機能設定画面で変更可能である構成が考えられる。さまざまな種類の制御パラメーターは、モニターパネル310で個別的に変更可能になる。操作性を重視して、設定変更が容易であるように、画面が表層に設けられている態様が実現される。
【0056】
(2b)つぎに、図6から8を主として参照しながら、より具体的に説明する。
【0057】
ここに、図6は本発明における実施の形態の田植え機のブロック図(その二)であり、図7および8は本発明における実施の形態の田植え機のリモートコントローラー320の画面表示の説明図(その一および二)である。
【0058】
複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の設定指示に利用可能である、車体100へ取付けられたモニターパネル310、および車体100へ取付けられていないリモートコントローラー320が、設けられている。
【0059】
上述された構成で、自動制御のハンドル操舵感度が、モニターパネル310による操作でのみならず、リモートコントローラー320による操作でも変更可能である構成が考えられる。ロボット田植え機の使用においては、無人走行が想定されており、作業者が搭乗していない走行状態において操舵感度変更が必要になることがあるが、たとえば、現在の操舵が圃場に適合していないとき、リモートコントローラー320による操作で設定を変更することができる。
【0060】
モニターパネル310が設定指示可能な状態になると、リモートコントローラー320は設定指示不可能な状態になる。
【0061】
上述された構成で、モニターパネル310の画面が自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面へ遷移している場合において、すなわち、モニターパネル310の設定状態がいわゆるジョグダイヤルなどで切替え可能である状態である場合において、リモートコントローラー320の自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面は操作不可能な設定画面になる構成が考えられる。モニターパネル310の状態およびリモートコントローラー320の状態の両方が同時に設定の変更を行うことができる状態であると、設定画面の状態および制御パラメーターの設定値などが競合し、制御の整合性が失われることがある。このようなモニターパネル310およびリモートコントローラー320の設定の競合は抑制され、作業者側である、モニターパネル310の側が優先される。
【0062】
モニターパネル310が設定指示可能な状態になっているにもかかわらず、モニターパネル310を利用する設定指示が所定の時間にわたって行われないと、設定指示可能な状態になっていたモニターパネル310は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていたリモートコントローラー320は設定指示可能な状態になる。
【0063】
上述された構成で、モニターパネル310の画面が自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面へ遷移している場合において、すなわち、モニターパネル310の設定状態がジョグダイヤルなどで切替え可能である状態である場合において、たとえば、10秒の所定の時間にわたって、ジョグダイヤルまたはダイヤルプッシュなどによるモニターパネル310の側での設定値を変更する操作がない場合において、モニターパネル310の側は自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面の状態を自動的に離脱する構成が考えられる。モニターパネル310の状態が自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面の状態へ遷移しているまま、無人走行が行われても、リモートコントローラー320の側は上述された規制を免除されて操作を行うことができる。
【0064】
なお、モニターパネル310が設定指示可能な状態になっていても、リモートコントローラー320を利用する所定の操作が行われると、設定指示可能な状態になっていたモニターパネル310は設定指示不可能な状態になり、設定指示不可能な状態になっていたリモートコントローラー320は設定指示可能な状態になってもよい。
【0065】
上述された構成で、モニターパネル310の画面が自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面へ遷移している場合において、すなわち、モニターパネル310の設定状態がジョグダイヤルなどで切替え可能である状態である場合において、たとえば、リモートコントローラー320の側の5秒間にわたる決定ボタン長押し操作のような、自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面への遷移操作が所定の時間にわたって行われた場合において、モニターパネル310の側は自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面の状態を自動的に離脱する構成が考えられる。モニターパネル310の状態が自動制御におけるハンドル操舵感度設定画面の状態へ遷移しているまま、無人走行が行われても、リモートコントローラー320の側は上述された規制を免除されて操作を行うことができる。このようなリモートコントローラー320の側のボタン長押し操作によるモニターパネル310の設定画面の強制解除が、考えられる。
【0066】
上述された構成で、自動制御におけるハンドル操舵感度がリモートコントローラー320の側で変更されたとき、設定値の変更を伝達するポップアップ通知表示がモニターパネル310の側で行われる構成が考えられる。搭乗作業者ではない補助者による操作がリモートコントローラー320で行われた場合において、「操舵設定を変更しました」のようなリモート操作による設定変更を通知する表示がモニターパネル310で行われるので、搭乗作業者が意図しないタイミングでの設定値変更が行われたときでも、搭乗作業者は走行操舵の調子が変わった理由などを容易に理解することができる。
【0067】
複数個の操舵制御パラメーターの各々の値は、車体100の走行が行われているとき、所定の条件が満足されない場合において設定不可能である。
【0068】
上述された構成で、走行が行われているとき、自動制御におけるハンドル操舵感度についてはモニターパネル310およびリモートコントローラー320などでの設定変更が許容されない構成が考えられる。走行が行われているとき、モニターパネル310およびリモートコントローラー320などでの設定変更が行われた場合において、操舵に関する制御計算値の整合性が失われ、蛇行などの異常な挙動が発生することがあるので、このように、走行が行われているときのパラメーター変更は禁止されてもよい。
【0069】
上述された構成で、走行が自動操舵動作で行われているときのみ、自動制御におけるハンドル操舵感度についてはモニターパネル310およびリモートコントローラー320などでの設定変更が許容されない構成が考えられる。走行が行われているとき、モニターパネル310およびリモートコントローラー320などでの設定変更が行われた場合において、操舵に関する制御計算値の整合性が失われ、蛇行などの異常な挙動が発生することがあるが、走行が自動操舵で行われていなければ、設定変更は問題になりにくいので、このように、自動操舵がパラメーター変更禁止のための加重的な条件として要求されてもよい。
【0070】
複数個の操舵制御パラメーターの各々の値の設定指示は、車体100の走行が行われているとき、受付けられるが保留され、車体100の走行が停止された後、有効化される。
【0071】
上述された構成で、走行が行われているとき、自動制御におけるハンドル操舵感度についてはモニターパネル310およびリモートコントローラー320などでの設定変更が許容されるが、実質的なパラメーターの適用は、保留され、車体100の走行が停止された後、行われる構成が考えられる。走行が行われているとき、モニターパネル310およびリモートコントローラー320などでの設定変更が行われた場合において、操舵に関する制御計算値の整合性が失われ、蛇行などの異常な挙動が発生することがあるが、このように、パラメーターの適用が保留される状態が設けられており、車体100の走行が停止された状態での自動的な切替えが行われることにより、制御計算値の誤検出が抑制される。
【0072】
(3)つぎに、図9から15を主として参照しながら、本発明における実施の形態の田植え機の構成および動作についてさらにより具体的に説明する。
【0073】
ここに、図9は本発明における実施の形態の田植え機のブロック図(その三)であり、図10から15は本発明における実施の形態の田植え機の動作制御のフロー図(その一から六)である。
【0074】
変速機構270の制御とともにエンジン機構210の制御を行う制御機構500は、車速の検出を行う車速検出機構280により行われた車速の検出に基づいて、変速機構270に対する変速機構目標値VtTに応じた車速が所定の時間τ以内に得られないエンジン高負荷状態が発生しているか否かを判断する。
【0075】
なお、所定の時間τは、エンジン機構210に対するエンジン機構目標値VtEに応じて異なってもよい。
【0076】
このような態様は、ロボット田植え機のオートアクセル機能に関する。
【0077】
ロボット田植え機で自動走行または遠隔操作が行われているとき、たとえば、前後進での走行が行われているにもかかわらず、所定時間にわたって検出された車速がHSTレバー段数に対応する現在の走行指示のための値である変速機構目標値VtTなどについての規定を満たさない場合において、エンジン負荷が湿田などで大きくなっている、エンジン高負荷状態と規定される状態が発生していると判断する構成が考えられる。ロボット作業が行われているとき、作業者は通常ロボット田植え機に搭乗しないので、エンストがエンジン高負荷状態でのいわゆるエンジンドロップなどで発生すると、作業ロスが大きくなりやすいが、エンジン高負荷状態を検出することができるこのような機能は既存のロボット田植え機の構成でも実現可能である。
【0078】
エンジン機構目標値入力部551は、メモリーなどへエンジン機構目標値VtEを入力するためのユニットであるが、アクセルペダルなどであってもよい。変速機構目標値入力部552は、メモリーなどへ変速機構目標値VtTを入力するためのユニットであるが、HSTレバーなどであってもよい。
【0079】
エンジン高負荷状態が発生しているか否かを判断するための所定の時間τはタイマー560により管理されており、エンジン高負荷状態回避制御が行われた履歴を認識するための所定の回数γはカウンター570により管理されている。
【0080】
走行開始の場合における所定の時間τの開始時点は走行が開始された時点であり、変速操作が行われた走行途中の場合における所定の時間τの開始時点は変速操作が行われた時点であるが、変速操作が行われていない走行途中の場合における所定の時間τの開始時点は変速機構目標値VtTに応じた車速が得られなくなった時点である。
【0081】
制御機構500は、エンジン高負荷状態が発生している場合において、変速機構270に対する変速機構設定値VsTを所定の変速機構設定値減少幅wTで減少させる制御、またはエンジン機構210に対するエンジン機構設定値VsEを所定のエンジン機構設定値増加幅wEで増加させる制御を行うことにより、エンジン高負荷状態回避制御を行う。
【0082】
このような態様は、ロボット田植え機のオートアクセル機能におけるエンジン高負荷状態が検出されているときの動作に関する。
【0083】
エンジン高負荷状態が検出された場合において、走行指示のための値である変速機構設定値VsTを低速側へ補正することによりエンジン負荷を低減する構成が考えられる。エンジン高負荷状態において車速を減少させてエンジン負荷を低減することができるので、エンジンドロップが発生しやすい状態を解消することができる。
【0084】
エンジン高負荷状態が検出された場合において、電動アクセル制御でのエンジン回転数指示のための値であるエンジン機構設定値VsEを高回転側へ補正する構成も、考えられる。エンジン高負荷状態においてエンジン回転数を増加させてエンストが発生しやすい状態を解消することができる。
【0085】
上述された構成の組合わせにより、エンジン高負荷状態が検出された場合において、走行指示のための値である変速機構設定値VsTを低速側へ補正して車速を減少させながら、エンジン回転数指示のための値であるエンジン機構設定値VsEを高回転側へ補正する構成も、考えられる。このような状態はエンスト回避制御が行われている状態であり、エンジン高負荷状態が検出された場合においてエンストが発生しやすい状態を回避することができる。
【0086】
エンジン高負荷状態回避制御は、変速機構設定値VsTを所定の変速機構設定値減少幅wTで減少させる制御、およびエンジン機構設定値VsEを所定のエンジン機構設定値増加幅wEで増加させる制御の内の少なくとも一方を利用して行われればよい。変速機構設定値VsTを所定の変速機構設定値減少幅wTで減少させる制御は、たとえば、HSTレバーレベルを第6変速レベルから第4変速レベルへ減少させる制御である。エンジン機構設定値VsEを所定のエンジン機構設定値増加幅wEで増加させる制御は、たとえば、エンジン回転数を基準回転数の30パーセントだけ増加させる制御である。
【0087】
制御機構500は、発生したエンジン高負荷状態がエンジン高負荷状態回避制御で解消された場合において、エンジン高負荷状態回避制御を解除する。
【0088】
このような態様は、ロボット田植え機のオートアクセル機能におけるエンスト回避制御を解除する動作に関する。
【0089】
上述された構成で、エンジン高負荷状態が検出されてエンスト回避制御が行われているとき、HST開度およびエンジン回転数が指示された所定の値へ設定された後、所定時間にわたって検出された車速がエンスト回避制御における狙いの車速に対する規定された範囲内に含まれる条件が満たされた場合において、エンジン高負荷状態からの離脱が実現されたと判断してエンスト回避制御を解除する構成が考えられる。車速が減少させられてエンジン回転数が増大させられたままであると、作業効率が悪化することがある。元の車速への復帰がエンジン高負荷状態の解消にともなって行われることにより、作業ロスが発生しにくくなる。
【0090】
制御機構500は、エンジン高負荷状態回避制御の解除の後、エンジン高負荷状態が再び発生する場合において、変速機構270に対する変速機構設定値VsTを先の所定の変速機構設定値減少幅wTより大きな所定の変速機構設定値減少幅wTで減少させる制御、またはエンジン機構210に対するエンジン機構設定値VsEを先の所定のエンジン機構設定値増加幅wEより大きな所定のエンジン機構設定値増加幅wEで増加させる制御を行うことにより、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を行う。
【0091】
このような態様は、ロボット田植え機のオートアクセル機能におけるエンスト回避制御を再び調節する動作に関する。
【0092】
具体的には、図10に示されたステップS1aからS8aを有する制御フローを利用することにより、このような制御動作は実現される。
【0093】
上述された構成で、エンスト回避制御が行われているにもかかわらず、所定時間にわたって検出された車速がエンスト回避制御における狙いの車速に対する規定された範囲内に含まれる条件が満たされない場合において、さらに走行指示のための値である変速機構設定値VsTを減少させる、またはさらにエンジン回転数指示のための値であるエンジン機構設定値VsEを増加させる構成が考えられる。その後、上述された構成を利用し、たとえば、エンスト回避制御の効果が一回目のトライで不十分である場合において調節量をさらに大きくすることにより、効果を再び確認することができる。
【0094】
このような態様は、ロボット田植え機のオートアクセル機能におけるエンジン高負荷状態が再び検出されているときの動作に関する。
【0095】
上述された構成で、エンスト回避制御が解除された後、エンジン高負荷状態が再び検出された場合において、たとえば、走行指示のための値である変速機構設定値VsTを再び低速側へ補正するが、その走行指示のための値である変速機構設定値VsTを先の変速機構設定値VsTよりさらに低速側へ補正することにより、または走行指示のための値であるエンジン回転数を再び高回転側へ補正するが、そのエンジン回転指示のための値であるエンジン機構設定値VsEを先のエンジン機構設定値VsEよりさらに高回転側へ補正することにより、エンジン高負荷状態が解消されるか否かを判断する構成が考えられる。典型的には、エンジン高負荷状態が繰返し検出されるということは圃場が全体的に深い湿田であることを意味すると考えられるので、同じ調節の繰返しは、調節および復帰が交互に繰返される、有意義でない制御動作へつながりやすい。エンスト回避制御の効果が一回目のトライで不十分である場合において調節量をさらに大きくすることにより、効果を再び確認することができる。
【0096】
なお、制御機構500は、エンジン高負荷状態回避制御の解除の後、エンジン高負荷状態が再び発生する場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を行い、再び発生したエンジン高負荷状態がさらなるエンジン高負荷状態回避制御で解消された場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を解除しなくてもよい。
【0097】
具体的には、図11に示されたステップS1bからS10bを有する制御フローを利用することにより、このような制御動作は実現される。
【0098】
また、制御機構500は、エンジン高負荷状態回避制御の解除の後、エンジン高負荷状態が再び発生する場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を行い、再び発生したエンジン高負荷状態がさらなるエンジン高負荷状態回避制御で解消された場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御を解除するが、変速機構270に対する変速機構目標値VtTを減少させる制御、またはエンジン機構210に対するエンジン機構目標値VtEを増加させる制御を行ってもよい。
【0099】
具体的には、図12に示されたステップS1cからS10cを有する制御フローを利用することにより、このような制御動作は実現される。
【0100】
上述された構成で、エンジン高負荷状態が再び検出された場合において、たとえば、エンジン高負荷状態からの離脱が実現されたと判断しても、元々の走行指示のための値である変速機構目標値VtTより低速側へ補正された値である変速機構目標値VtTで走行指示のための値を出力する、または元々のエンジン回転指示のための値であるエンジン機構目標値VtEより高回転側へ補正された値であるエンジン機構目標値VtEでエンジン回転指示のための値を出力する構成が考えられる。典型的には、エンジン高負荷状態が繰返し検出されるということは圃場が全体的に深い湿田であることを意味すると考えられるので、同じ調節の繰返しは、調節および復帰が交互に繰返される、有意義でない制御動作へつながりやすい。エンジン高負荷状態からの離脱が実現されたと判断した場合においても、元々の走行指令のための値と比べてより低速側へ補正された値、または元々のエンジン回転指令のための値と比べてより高回転側へ補正された値を出力することにより、有意義でない制御動作を抑制することができる。
【0101】
上述された構成で、エンスト回避制御による車速指令の調節幅およびエンジン回転数の調節幅はモニターパネル設定画面で変更可能である構成が考えられる。エンスト回避調節のための値と定義される、たとえば、第1段から第5段のオフ設定変更のための値が設けられており、第1段の値は5%のエンスト回避制御HSTレバー操作量に対応する値であり、第5段の値は10%のエンスト回避制御HSTレバー操作量に対応する値である。ユーザーは調節幅を任意に変更することができるので、効率が重視されて車速が大きく減少させられない設定、または、調節回数が大きくなりやすい、煩わしい小さな調節の繰返しが抑制されるように、ある程度は大きい調節が一度で行われる設定が実現される。
【0102】
上述された構成で、エンスト回避調節のための値がオフされている場合において、エンスト回避制御は行われない構成が考えられる。エンスト回避制御が不要である場合において、エンスト回避制御をモニターパネル設定画面でオフすることができる。
【0103】
上述された構成で、エンスト回避制御の調節が繰返し行われ、エンジン高負荷状態が解消されない状態の発生回数を示す、カウンター570の所定の回数γがあらかじめ規定されたエンスト回避制御回数を超えて、たとえば、5回を超えて繰返された場合において、エンジン高負荷状態はさらなるエンジン高負荷状態回避制御で解消されないと判断する構成が考えられる。エンジン高負荷状態回避制御が行われたエンスト回避制御回数でエンスト回避制御の調節が失敗したか否かを決定し、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御による調節で解消されないと判断することができる態様が実現される。
【0104】
上述された構成で、エンスト回避制御の調節が繰返し行われ、最終的なHSTレバー開度が最大開度の所定の開度より小さくなっても、たとえば、最大開度の20%の開度より小さくなっても、エンジン高負荷状態は解消されない場合において、エンジン高負荷状態はさらなるエンジン高負荷状態回避制御で解消されないと判断する構成が考えられる。HST開度設定のための値でエンスト回避制御の調節が失敗したか否かを決定し、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御による調節で解消されないと判断することができる態様が実現される。
【0105】
上述された構成で、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御による調節で解消されないと判断した場合において、「圃場条件により高負荷となっています。走行状態に十分に注意して運転してください。」のような警告メッセージでモニターパネル画面表示を行う構成が考えられる。エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御による調節で解消されない場合において、モニターパネル画面表示で注意を促すことができる態様が実現される。
【0106】
具体的には、図13に示されたステップS1dからS9dを有する制御フローを利用することにより、このような制御動作は実現される。かくの如き制御動作においては、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御で解消されないと判断した(S8d)場合において、エンジン高負荷状態回避制御なしの変速機構目標値VtTおよびエンジン機構目標値VtEでの警告をともなう走行を行う(S9d)制御が行われる。
【0107】
上述された構成で、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御による調節で解消されないと判断した場合において、さらなるエンジン高負荷状態回避制御による調節は行わず、たとえば、最も調節量が大きい、典型的には最後に行われたエンジン高負荷状態回避制御の制御データを利用して走行を継続する構成が考えられる。高負荷状態回避制御による調節トライを限界まで行った後、エンスト回避制御の調節が失敗しても、そのまま走行を継続して作業を進行させることができる態様が実現される。
【0108】
具体的には、図14に示されたステップS1eからS9eを有する制御フローを利用することにより、このような制御動作は実現される。かくの如き制御動作においては、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御で解消されないと判断した(S8e)場合において、そのまま最終的なエンジン機構設定値増加幅wEまたは変速機構設定値減少幅wTで警告をともなうエンジン高負荷状態回避制御を行う(S9e)制御が行われる。
【0109】
上述された構成で、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御による調節で解消されないと判断した場合において、さらなる自動走行および遠隔操作などがエンジン高負荷状態の検出に応じて停止される構成が考えられる。高負荷状態回避制御による調節トライを限界まで行った後、エンストおよび沈没がエンスト回避制御の調節の失敗にともない発生する恐れを想定し、走行を中断することができる態様が実現される。
【0110】
具体的には、図15に示されたステップS1fからS9fを有する制御フローを利用することにより、このような制御動作は実現される。かくの如き制御動作においては、エンジン高負荷状態はエンジン高負荷状態回避制御で解消されないと判断した(S8f)場合において、直ちに走行を停止する(S9f)制御が行われる。
【0111】
上述された構成で、さらなる自動走行および遠隔操作などがエンジン高負荷状態の検出に応じて停止された場合において、いわゆるロボットモードを解除する構成が考えられる。このような自動的な走行停止が行われた状況はしばしば車体100が安定でない状況であり、細やかな判断が困難である自動走行またはリモートコントローラー操作に起因して、車体100が沈没する可能性がある。車体100の本体などへ設けられたロボットスイッチが押されるまで自動走行および遠隔操作などが停止されることにより、沈没しそうになっている車体100を脱出させるためのマニュアル操作を作業者に促すことができ、エンスト回避制御の調節の失敗にともなう走行停止が行われたとき、マニュアル操作を推奨して機械保護を優先することができる態様が実現される。
【0112】
上述された構成で、さらなる自動走行および遠隔操作などがエンジン高負荷状態の検出に応じて停止された場合において、ロボットモードを解除しない構成が考えられる。このような自動的な走行停止が行われた状況はしばしば車体100が安定でない状況であり、車体搭乗にともなう事故が発生する可能性がある。自動走行および遠隔操作などが停止される場合においても、作業者の車体搭乗を必要としない走行機能を実装することにより、安全性を向上することができ、エンスト回避制御の調節の失敗にともなう走行停止が行われたとき、車体搭乗を推奨しないで作業者保護を優先することができる態様が実現される。
【0113】
上述された構成で、さらなる自動走行および遠隔操作などがエンジン高負荷状態の検出に応じて停止された場合において、ロボットモードを解除しないが、自動走行の開始を許容せずにリモートコントローラー操作のみを許容する構成が考えられる。このような自動的な走行停止が行われた状況はしばしば車体100が安定でない状況であり、車体搭乗にともなう事故が発生する可能性がある。操舵および車速などの細やかな調節が困難であって意図に反して行われることがある自動走行に起因して、湿田内での動作条件が悪化することがあるので、自動走行が停止される場合においても、作業者の車体搭乗を必要としない走行機能を実装することにより、安全性を向上しながら、リモートコントローラー操作で車体100を脱出させるためのマニュアル操作を作業者に促すことができ、エンスト回避制御の調節の失敗にともなう走行停止が行われたとき、車体搭乗を推奨しないで機械保護のみならず作業者保護も重視することができる態様が実現される。
【0114】
上述された構成で、さらなる自動走行および遠隔操作などがエンジン高負荷状態の検出に応じて停止された場合において、車体100の本体などへ設けられたロボットスイッチの操作で自動走行の規制を解除する構成が考えられる。自動走行が一回のエンジン高負荷状態の検出にともなって永続的に規制されると、自動走行を再び開始することができない。スイッチ操作が作業者の車体搭乗で行われた場合において、安全性が確保されたと判断して自動走行の再開を許容することができ、自動走行の規制の解除条件を明確化することができる態様が実現される。
【0115】
上述された構成で、自動走行の規制が行われているとき、ロボットスイッチランプを点滅させる構成が考えられる。自動走行の開始の禁止をロボットスイッチランプ点滅で通知することができる態様が実現される。
【0116】
上述された構成で、自動走行の規制が行われているとき、モニターパネル画面表示で「自動走行が規制されています。規制を解除する場合は周囲の安全を確認した上でロボットスイッチを押下げしてください」のようなポップアップ通知表示を行う構成が考えられる。自動走行の開始の禁止のみならず制解除の方法をモニターパネル画面表示で通知することができる態様が実現される。
【0117】
なお、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0118】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の作業車両動作制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0119】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0120】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0121】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0122】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0123】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【0124】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明における作業車両は、有益な動作制御機能を利用するための作業者の負担の軽減を実現することができ、田植え機などのような作業車両に利用する目的に有用である。
【符号の説明】
【0126】
100 車体
210 エンジン機構
220 走行装置
221 前輪
222 後輪
230 操舵機構
240 苗植付け装置
241 苗植付け具
250 施肥装置
260 整地装置
261 整地ローター部材
262 整地フロート部材
270 変速機構
280 車速検出機構
310 モニターパネル
320 リモートコントローラー
321 ボタン
500 制御機構
510 判断部
521 モニターパネル検出部
522 リモートコントローラー検出部
531 モニターパネル制御部
532 リモートコントローラー制御部
551 エンジン機構目標値入力部
552 変速機構目標値入力部
560 タイマー
570 カウンター
T 操舵制御パラメーターテーブル
VsE エンジン機構設定値
VsT 変速機構設定値
VtE エンジン機構目標値
VtT 変速機構目標値
wE エンジン機構設定値増加幅
wT 変速機構設定値減少幅
γ 所定の回数
τ 所定の時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15