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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240814BHJP
   F02B 37/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F02B39/00 E
F02B37/02 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022036093
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131376
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】井上(杉浦) 靖子
(72)【発明者】
【氏名】築山 宜司
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-84578(JP,A)
【文献】特開2016-205141(JP,A)
【文献】特開昭62-78434(JP,A)
【文献】特開平2-42136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の過給機であって、
前記内燃機関は、
第1気筒及び前記第1気筒と燃焼行程の時期が異なる第2気筒と、
前記第1気筒に接続される第1排気ポート及び前記第2気筒に接続される第2排気ポートとを備え、
前記過給機は、
タービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、
前記タービンハウジングと前記内燃機関とを接続する接続管とを備え、
前記接続管は、
前記第1排気ポートと連通する第1通路と、
前記第2排気ポートと連通する第2通路と、
当該接続管における前記内燃機関との接触面から延びて当該接続管の内部を前記第1通路と前記第2通路とに隔てる隔壁とを有し、
前記タービンハウジングは、当該タービンハウジングの内壁と前記タービンホイールの外周面との間で前記タービンホイールの周方向に沿って延びるスクロール通路を備え、
前記スクロール通路は、前記第1通路及び前記第2通路に連通して前記第1通路の排気及び前記第2通路の排気が合流する通路であり、
前記タービンホイールの回転軸線と直交する断面であって前記スクロール通路の流路断面積が最も大きい断面を規定断面とし、当該規定断面を視たとき、
前記タービンホイールの回転中心と前記スクロール通路内の排気の流れ方向における前記内壁の下流端とを結ぶ線分と直交して当該下流端から前記スクロール通路における排気の流れ方向に沿って延びる直線を第1仮想線とし、
前記隔壁において前記接触面側の端部である基端を通過して前記内燃機関から前記接続管への排気の流入方向と直交する方向に延びる直線を第2仮想線とすると、
前記隔壁において前記基端とは反対側の端部である先端は、前記接続管の内部において前記第1仮想線と前記第2仮想線との間に位置しており、
前記規定断面を視たとき、前記隔壁の前記先端は、前記第1仮想線上に位置している
過給機。
【請求項2】
内燃機関の過給機であって、
前記内燃機関は、
第1気筒及び前記第1気筒と燃焼行程の時期が異なる第2気筒と、
前記第1気筒に接続される第1排気ポート及び前記第2気筒に接続される第2排気ポートとを備え、
前記過給機は、
タービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、
前記タービンハウジングと前記内燃機関とを接続する接続管とを備え、
前記接続管は、
前記第1排気ポートと連通する第1通路と、
前記第2排気ポートと連通する第2通路と、
当該接続管における前記内燃機関との接触面から延びて当該接続管の内部を前記第1通路と前記第2通路とに隔てる隔壁とを有し、
前記タービンハウジングは、当該タービンハウジングの内壁と前記タービンホイールの外周面との間で前記タービンホイールの周方向に沿って延びるスクロール通路を備え、
前記スクロール通路は、前記第1通路及び前記第2通路に連通して前記第1通路の排気及び前記第2通路の排気が合流する通路であり、
前記タービンホイールの回転軸線と直交する断面であって前記スクロール通路の流路断面積が最も大きい断面を規定断面とし、当該規定断面を視たとき、
前記タービンホイールの回転中心と前記スクロール通路内の排気の流れ方向における前記内壁の下流端とを結ぶ線分と直交して当該下流端から前記スクロール通路における排気の流れ方向に沿って延びる直線を第1仮想線とし、
前記隔壁において前記接触面側の端部である基端を通過して前記内燃機関から前記接続管への排気の流入方向と直交する方向に延びる直線を第2仮想線とすると、
前記隔壁において前記基端とは反対側の端部である先端は、前記接続管の内部において前記第1仮想線と前記第2仮想線との間に位置しており、
前記第1通路の内面は、前記隔壁の外形を規定する第1内面を含み、当該第1内面は、前記隔壁の前記先端と接続される第1下流側内面を含み、
前記第2通路の内面は、前記隔壁の外形を規定する第2内面を含み、当該第2内面は、前記隔壁の前記先端と接続される第2下流側内面を含み、
前記規定断面を視たときに、
前記隔壁において前記第1下流側内面及び前記第2下流側内面によって外形が規定される部分を下流部分とすると、
前記第1通路及び前記第2通路において前記下流部分を挟んで隣り合う部分の流路断面積は互いに等しく、
前記第1内面は、前記第1下流側内面と接続され、前記接続管の前記接触面に向かって延びる第1上流側内面を含み、
前記第2内面は、前記第2下流側内面と接続され、前記接続管の前記接触面に向かって延びる第2上流側内面を含み、
前記規定断面を視たときに、
前記第1下流側内面及び前記第2下流側内面は、互いに平行であり、
前記第1上流側内面と前記第2上流側内面との間の距離が前記接触面に近いほど広くなるように、前記第1上流側内面は前記第2上流側内面に対して傾斜している
過給機。
【請求項3】
前記内燃機関は、N1気筒、N2気筒、N3気筒、及びN4気筒の順で燃焼行程が到来する、前記N1気筒、前記N2気筒、前記N3気筒、及び前記N4気筒を有し、
前記第1気筒は、前記N1気筒及び前記N3気筒であり、
前記第2気筒は、前記N2気筒及び前記N4気筒である
請求項1又は請求項2に記載の過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、過給機のタービンハウジングが開示されている。タービンハウジングは、タービンスクロール室を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-134719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービンハウジングにおいては、排気がタービンスクロール室内をスムーズに流れることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための過給機は、内燃機関の過給機であって、前記内燃機関は、第1気筒及び前記第1気筒と燃焼行程の時期が異なる第2気筒と、前記第1気筒に接続される第1排気ポート及び前記第2気筒に接続される第2排気ポートとを備え、前記過給機は、タービンホイールと、前記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、前記タービンハウジングと前記内燃機関とを接続する接続管とを備え、前記接続管は、前記第1排気ポートと連通する第1通路と、前記第2排気ポートと連通する第2通路と、当該接続管における前記内燃機関との接触面から延びて当該接続管の内部を前記第1通路と前記第2通路とに隔てる隔壁とを有し、前記タービンハウジングは、当該タービンハウジングの内壁と前記タービンホイールの外周面との間で前記タービンホイールの周方向に沿って延びるスクロール通路を備え、前記スクロール通路は、前記第1通路及び前記第2通路に連通して前記第1通路の排気及び前記第2通路の排気が合流する通路であり、前記タービンホイールの回転軸線と直交する断面であって前記スクロール通路の流路断面積が最も大きい断面を規定断面とし、当該規定断面を視たとき、前記タービンホイールの回転中心と前記スクロール通路内の排気の流れ方向における前記内壁の下流端とを結ぶ線分と直交して当該下流端から前記スクロール通路における排気の流れ方向に沿って延びる直線を第1仮想線とし、前記隔壁において前記接触面側の端部である基端を通過して前記内燃機関から前記接続管への排気の流入方向と直交する方向に延びる直線を第2仮想線とすると、前記隔壁において前記基端とは反対側の端部である先端は、前記接続管の内部において前記第1仮想線と前記第2仮想線との間に位置している。
【0006】
内燃機関から第1排気ポート及び第2排気ポートに断続的に排気が排出されるため、第1排気ポートの圧力及び第2排気ポートの圧力が変化して圧力脈動が発生する。さらに、内燃機関から第1排気ポート及び第2排気ポートに排気が排出されるタイミングが異なるため、同じタイミングにおける第1排気ポート内の圧力と第2排気ポート内の圧力とに差が生じる。したがって、第2排気ポート内の圧力よりも第1排気ポート内の圧力が高い場合は、第1排気ポートから接続管に排出された排気が第2排気ポートに逆流するおそれがある。また、第1排気ポート内の圧力よりも第2排気ポート内の圧力が高い場合は、第2排気ポートから接続管に排出された排気が第1排気ポートに逆流するおそれがある。
【0007】
上記構成によれば、接続管は、当該接続管の内部を、第1排気ポートに連通する第1通路と第2排気ポートに連通する第2通路とに隔てる隔壁を備えているため、第1排気ポートから第2排気ポートへの排気の逆流及び第2排気ポートから第1排気ポートへの排気の逆流が生じにくい。
【0008】
隔壁の先端の位置がスクロール通路に近いほど、第1通路及び第2通路を流れる排気がスクロール通路まで到達しやすいため、上述した逆流を抑制する効果が高い。しかし、先端が第1仮想線を越えてスクロール通路まで突出している場合は、スクロール通路を周回する排気が隔壁に衝突することによって排気の圧力や流速が低下するおそれがある。上記構成によれば、隔壁の先端が第1仮想線と第2仮想線との間に位置するように、当該先端の位置を規定しているため、スクロール通路を流れる排気が隔壁に衝突しにくい。
【0009】
上記過給機において、前記規定断面を視たとき、前記隔壁の前記先端は、前記第1仮想線上に位置していてもよい。
上記構成によれば、第1排気ポートから第2排気ポートへの排気の逆流及び第2排気ポートから第1排気ポートへの排気の逆流が一層生じにくい。
【0010】
上記過給機において、前記規定断面を視たときに、前記隔壁の前記先端を通り、前記第1仮想線上の第1交点及び前記第2仮想線上の第2交点において前記第1仮想線及び前記第2仮想線と直交する円弧のうち長さが最も短い円弧を最短円弧とすると、当該最短円弧に沿った、前記第1交点と前記隔壁の前記先端との間の距離は、当該最短円弧に沿った、前記第2交点と前記隔壁の前記先端との間の距離よりも短いことが好ましい。
【0011】
隔壁の先端が第1仮想線と第2仮想線との間に位置する場合において、隔壁の長さが短いと、第1通路及び第2通路から排出された排気がスクロール通路まで流れにくいため、上述した逆流が生じやすくなる。
【0012】
その点、上記構成によれば、隔壁の先端が第1仮想線よりも接続管側に位置しながら、隔壁の先端がスクロール通路に近い構成が実現できる。したがって、隔壁にスクロール通路を流れる排気が衝突することを抑制する機能と、第1通路から第2通路への排気の逆流及び第2通路から第1通路への排気の逆流を抑制する機能とを効果的に発揮できる。
【0013】
上記過給機において、前記内燃機関は、N1気筒、N2気筒、N3気筒、及びN4気筒の順で燃焼行程が到来する、前記N1気筒、前記N2気筒、前記N3気筒、及び前記N4気筒を有し、前記第1気筒は、前記N1気筒及び前記N3気筒であり、前記第2気筒は、前記N2気筒及び前記N4気筒であることが好ましい。
【0014】
上記構成とは異なり、例えば第1気筒をN1気筒及びN2気筒とし、第2気筒をN3気筒及びN4気筒とした構成では、以下のような問題が生じる。すなわち、N1気筒及びN2気筒から第1排気ポートに排気が連続して導入されるため、第1通路の排気の圧力が第2通路の排気の圧力よりも高くなり、両圧力の差も大きくなる。同様に、N3気筒及びN4気筒から第2排気ポートに排気が連続して導入されるため、第2通路の排気の圧力が第1通路の排気の圧力よりも高くなり、両圧力の差も大きくなる。したがって、上述した排気の逆流が生じやすい。
【0015】
その点、上記構成によれば、第1通路及び第2通路内に交互に排気が流れるため、上述した排気の干渉を抑制できる。このため、第1通路及び第2通路からスクロール通路に排気が流れやすい。
【0016】
上記過給機において、前記第1通路の内面は、前記隔壁の外形を規定する第1内面を含み、当該第1内面は、前記隔壁の前記先端と接続される第1下流側内面を含み、前記第2通路の内面は、前記隔壁の外形を規定する第2内面を含み、当該第2内面は、前記隔壁の前記先端と接続される第2下流側内面を含み、前記規定断面を視たときに、前記隔壁において前記第1下流側内面及び前記第2下流側内面によって外形が規定される部分を下流部分とすると、前記第1通路及び前記第2通路において前記下流部分を挟んで隣り合う部分の流路断面積は互いに等しいことが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、第1通路の流路断面積と第2通路の流路断面積とが等しいので、第1通路からスクロール通路に流れ込む排気がタービンホイールの回転に寄与する力と、第2通路からスクロール通路に流れ込む排気がタービンホイールの回転に寄与する力とに差が生じにくい。したがって、タービンホイールが回転する際の速度が一定になりやすい。このため、過給圧の脈動が生じにくい。
【0018】
上記過給機において、前記第1内面は、前記第1下流側内面と接続され、前記接続管の前記接触面に向かって延びる第1上流側内面を含み、前記第2内面は、前記第2下流側内面と接続され、前記接続管の前記接触面に向かって延びる第2上流側内面を含み、前記規定断面を視たときに、前記第1下流側内面及び前記第2下流側内面は、互いに平行であり、前記第1上流側内面と前記第2上流側内面との間の距離が前記接触面に近いほど広くなるように、前記第1上流側内面は前記第2上流側内面に対して傾斜していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る過給機を含む内燃機関の吸排気系統を示す概略図である。
図2図2は、同実施形態に係る過給機の側面図である。
図3図3は、図2の3-3線に沿った断面図である。
図4図4は、同実施形態に係る過給機の接続管付近を拡大した断面図である。
図5図5は、同実施形態に係る過給機の接続管付近を拡大した断面図である。
図6図6は、図4の6-6線に沿った断面図である。
図7図7は、過給機の隔壁を長くした場合における接続管付近を拡大した断面図である。
図8図8は、過給機の隔壁を短くした場合における接続管付近を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、過給機10の一実施形態について説明する。
<内燃機関30>
図1に示すように、内燃機関30は、インテークマニホールド33と、4つの気筒C1、気筒C2、気筒C3、気筒C4と、第1排気ポート31及び第2排気ポート32とを備える。
【0021】
インテークマニホールド33は、下流側が4つの流路に分岐しており、それぞれの流路は気筒C1~C4と連通している。インテークマニホールド33が4つに分岐する部分よりも上流側には、スロットルバルブ34が設けられている。
【0022】
気筒C1、気筒C2、気筒C3、気筒C4は、この順に一列に並んでいる。気筒C1、気筒C2、気筒C3、気筒C4は、それぞれ吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、及び排気行程が、この順で到来する。また、気筒C1が吸気行程であるとき、気筒C2、気筒C3、気筒C4は、それぞれ圧縮行程、排気行程、燃焼行程である。気筒C1が圧縮行程であるとき、気筒C2、気筒C3、気筒C4は、それぞれ燃焼行程、吸気行程、排気行程である。気筒C1が燃焼行程であるとき、気筒C2、気筒C3、気筒C4は、それぞれ排気行程、圧縮行程、吸気行程である。気筒C1が排気行程であるとき、気筒C2、気筒C3、気筒C4は、それぞれ吸気行程、燃焼行程、圧縮行程である。
【0023】
<内燃機関30の吸排気系統>
図1及び図2を参照して内燃機関30の吸排気系統の概略を説明する。
図1に示すように、内燃機関30の吸排気系統は、エアクリーナ40、第1吸気通路41、過給機10、第2吸気通路42、インタークーラ43、排気通路45、及び三元触媒46を備える。
【0024】
エアクリーナ40は、第1吸気通路41によって過給機10に接続されている。過給機10は、第2吸気通路42によってインタークーラ43に接続されている。インタークーラ43は、内燃機関30のインテークマニホールド33に接続されている。第1排気ポート31及び第2排気ポート32は、過給機10に接続されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、過給機10は、排気通路45に接続されている。排気通路45の下流には、三元触媒46が接続されている。
吸気はエアクリーナ40及び第1吸気通路41を通過して過給機10のコンプレッサハウジング12へ流入する。吸気は、コンプレッサハウジング12の中に設けられているコンプレッサホイール11で圧縮されて第2吸気通路42及びインタークーラ43を通過してインテークマニホールド33へ流入する。
【0026】
内燃機関30から排出された排気は、第1排気ポート31または第2排気ポート32を通過して過給機10のタービンハウジング15へ流入する。タービンハウジング15へ流入した排気は、タービンハウジング15の中に設けられているタービンホイール14を回転させながら排気通路45及び三元触媒46を通過して外部へ排出される。
【0027】
<過給機10>
図1及び図2に示すように、過給機10は、コンプレッサホイール11、コンプレッサハウジング12、連結シャフト13、タービンホイール14、タービンハウジング15、及び接続管20を備える。
【0028】
コンプレッサハウジング12は、コンプレッサホイール11を収容している。コンプレッサハウジング12には、第1吸気通路41及び第2吸気通路42が接続されている。
図3に示すように、接続管20は、第1通路21と、第2通路22と、隔壁23と、接触面24とを有する。接続管20は、タービンハウジング15と内燃機関30とを接続している。接続管20は、接触面24を介して内燃機関30と接触している。接続管20は、湾曲しながら接触面24に垂直な方向に延びている。隔壁23は、接続管20の内部を第1通路21と第2通路22とに隔てている。第1通路21及び第2通路22は、それぞれ第1排気ポート31及び第2排気ポート32と連通している。なお、図3は、タービンホイール14の回転軸線と直交する断面であってスクロール通路18の流路断面積が最も大きい断面である規定断面を示している。
【0029】
図3及び図4に示すように、第1通路21における排気の流れ方向E1及び第2通路22における排気の流れ方向E2を接続管20における排気の流れ方向とすると、隔壁23は、接触面24から接続管20における排気の流れ方向の下流に向かって延びている。
【0030】
第1通路21の内面は、隔壁23の外形を規定する第1内面21aを含む。第2通路22の内面は、隔壁23の外形を規定する第2内面22aを含む。第1内面21aは、隔壁23の先端26と接続される第1下流側内面21bと、第1下流側内面21bと接続され、接触面24に向かって延びる第1上流側内面21cとを含む。第2内面22aは、隔壁23の先端26と接続される第2下流側内面22bと、第2下流側内面22bと接続され、接触面24に向かって延びる第2上流側内面22cとを含む。
【0031】
図4及び図6に示すように、第1下流側内面21b及び第2下流側内面22bは、それぞれ平面であり且つ互いに平行である。また、第1上流側内面21cと第2上流側内面22cとの間の距離が接触面24に近いほど広くなるように、第1上流側内面21cは第2上流側内面22cに対して傾斜している。
【0032】
隔壁23において第1下流側内面21b及び第2下流側内面22bによって挟まれる部分を下流部分25とすると、第1通路21及び第2通路22において下流部分25を挟んで隣り合う部分の流路断面積は互いに等しい。
【0033】
図3に示すように、タービンハウジング15は、断面視で略円形状である。タービンハウジング15は、断面視で略円形状のタービンホイール14を収容している。タービンホイール14は、回転中心19を有している。回転中心19を通って図3に示す断面に垂直な方向に延びる仮想線が回転軸線である。
【0034】
図1に示すように、コンプレッサホイール11及びタービンホイール14は、連結シャフト13によって連結されている。
図3に示すように、タービンハウジング15は、タービンハウジング15の内壁16とタービンホイール14の外周面17との間でタービンホイール14の周方向に沿って延びるスクロール通路18を備える。スクロール通路18は、接続管20の第1通路21及び第2通路22と連通する通路であり且つ第1通路21の排気及び第2通路22の排気が合流する通路である。
【0035】
図1及び図2に示すように、タービンハウジング15には、バイパス通路44が設けられている。バイパス通路44は、タービンハウジング15から排気通路45へ延びている。バイパス通路44には、ウエストゲートバルブ44aが設けられている。排気は、バイパス通路44を通じてタービンホイール14を迂回して流れる。
【0036】
図3に示すように、タービンホイール14の回転中心19とスクロール通路18内の排気の流れ方向E3における内壁16の下流端16aとを結ぶ線分Hと直交して下流端16aからスクロール通路18における排気の流れに沿って延びる直線を第1仮想線H1とする。また、隔壁23において接触面24側の端部である基端27を通過して内燃機関30から接続管20への排気の流入方向e1,e2と直交する方向に延びる直線を第2仮想線H2とする。
【0037】
図3図5に示すように、隔壁23の先端26は、接続管20の内部において第1仮想線H1と第2仮想線H2との間に位置している。また、隔壁23の先端26を通り、第1仮想線H1上の第1交点h1及び第2仮想線H2上の第2交点h2において第1仮想線H1及び第2仮想線H2と直交する円弧のうち長さが最も短い円弧を最短円弧Aとする。この場合、最短円弧Aに沿った、第1交点h1と隔壁23の先端26との間の距離A1は、最短円弧Aに沿った、第2交点h2と隔壁23の先端26との間の距離A2よりも短い。
【0038】
なお、本実施形態における気筒C1、気筒C3、気筒C4、及び気筒C2が、それぞれ「課題を解決するための手段」の欄に記載したN1気筒、N2気筒、N3気筒、及びN4気筒に対応する。また、気筒C1及び気筒C4は、「課題を解決するための手段」の欄に記載した第1気筒であり、気筒C2及び気筒C3は、「課題を解決するための手段」の欄に記載した第2気筒である。第1気筒は、第1排気ポート31と連通している。第2気筒は、第2排気ポート32と連通している。
【0039】
本実施形態の作用について説明する。
内燃機関30から第1排気ポート31及び第2排気ポート32に断続的に排気が排出されるため、第1排気ポート31の圧力及び第2排気ポート32の圧力が変化して圧力脈動が発生する。さらに、内燃機関30から第1排気ポート31及び第2排気ポート32に排気が排出されるタイミングが異なるため、同じタイミングにおける第1排気ポート31内の圧力と第2排気ポート32内の圧力とに差が生じる。したがって、第2排気ポート32内の圧力よりも第1排気ポート31内の圧力が高い場合は、第1排気ポート31から接続管20に排出された排気が第2排気ポート32に逆流するおそれがある。また、第1排気ポート31内の圧力よりも第2排気ポート32内の圧力が高い場合は、第2排気ポート32から接続管20に排出された排気が第1排気ポート31に逆流するおそれがある。
【0040】
上記構成によれば、接続管20は、接続管20の内部を、第1排気ポート31に連通する第1通路21と第2排気ポート32に連通する第2通路22とに隔てる隔壁23を備えているため、第1排気ポート31から第2排気ポート32への排気の逆流及び第2排気ポート32から第1排気ポート31への排気の逆流が生じにくい。
【0041】
図7に示すように、隔壁23の先端26の位置がスクロール通路18に近いほど、第1通路21及び第2通路22を流れる排気がスクロール通路18まで到達しやすいため、上述した逆流を抑制する効果が高い。しかし、先端26が第1仮想線H1を越えてスクロール通路18まで突出している場合は、スクロール通路18を周回する排気が隔壁23に衝突することによって排気の圧力や流速が低下するおそれがある。
【0042】
上記構成によれば、隔壁23の先端26が第1仮想線H1と第2仮想線H2との間に位置するように、先端26の位置を規定しているため、スクロール通路18を流れる排気が隔壁23に衝突しにくい。
【0043】
本実施形態の効果について説明する。
(1)隔壁23の先端26は、接続管20の内部において第1仮想線H1と第2仮想線H2との間に位置している。
【0044】
こうした構成によれば、過給機10は隔壁23を有するため、排気がスクロール通路18内をスムーズに流れることができるだけでなく、圧力脈動に起因する排気の逆流が生じにくい。また、隔壁23の先端26が、接続管20の内部において第1仮想線H1と第2仮想線H2との間に位置するため、排気と隔壁23との衝突が生じにい。したがって、排気がスクロール通路18内をスムーズに流れやすい。
【0045】
(2)最短円弧Aに沿った第1交点h1と隔壁23の先端26との間の距離A1は、最短円弧Aに沿った第2交点h2と隔壁23の先端26との間の距離A2よりも短い。
図8に示すように、隔壁23の長さが短いと、第1通路21及び第2通路22から排出された排気がスクロール通路18まで流れにくいため、上述した逆流が生じやすくなる。
【0046】
その点、上記構成によれば、隔壁23の先端26が第1仮想線H1よりも接続管20側に位置しながら、隔壁23の先端26がスクロール通路18に近い構成が実現できる。したがって、隔壁23にスクロール通路18を流れる排気が衝突することを抑制する機能と、第1通路21から第2通路22への排気の逆流及び第2通路22から第1通路21への排気の逆流を抑制する機能とを効果的に発揮できる。
【0047】
(3)内燃機関30は、気筒C1、気筒C3、気筒C4、及び気筒C2の順で燃焼行程が到来する、気筒C1、気筒C2、気筒C3、及び気筒C4を有する。第1気筒は、気筒C1及び気筒C4である。第2気筒は、気筒C2及び気筒C3である。
【0048】
上記構成とは異なり、例えば第1気筒を気筒C1及び気筒C3とし、第2気筒を気筒C4及び気筒C2とした構成では、以下のような問題が生じる。すなわち、気筒C1及び気筒C3から第1排気ポート31に排気が連続して導入されるため、第1通路21の排気の圧力が第2通路22の排気の圧力よりも高くなり、両圧力の差も大きくなる。同様に、気筒C4及び気筒C2から第2排気ポート32に排気が連続して導入されるため、第2通路22の排気の圧力が第1通路21の排気の圧力よりも高くなり、両圧力の差も大きくなる。したがって、上述した排気の逆流が生じやすい。
【0049】
その点、上記構成によれば、第1通路21及び第2通路22内に交互に排気が流れるため、上述した排気の干渉を抑制できる。このため、第1通路21及び第2通路22からスクロール通路18に排気が流れやすい。
【0050】
(4)第1通路21及び第2通路22において下流部分25を挟んで隣り合う部分の流路断面積は互いに等しい。
上記構成によれば、第1通路21からスクロール通路18に流れ込む排気がタービンホイール14の回転に寄与する力と、第2通路22からスクロール通路18に流れ込む排気がタービンホイール14の回転に寄与する力とに差が生じにくい。したがって、タービンホイール14が回転する際の速度が一定になりやすい。このため、過給圧の脈動が生じにくい。
【0051】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・下流部分25を挟んで隣り合う、第1通路21の流路断面積及び第2通路22の流路断面積は互いに異なっていてもよい。
・本明細書において、第1通路21の流路断面積をS1とし、第2通路22の流路断面積をS2とすると、S1とS2とが等しい場合とは、以下の場合を含む。すなわち、S1及びS2が完全に一致する場合の他、0.9≦S1/S2≦1.1を満たす場合が含まれる。
【0053】
・第1上流側内面21c及び第2上流側内面22cは、互いに平行であってもよい。
・本明細書において、「平行」は、厳密な意味での平行に限定されない。すなわち、第1通路21からスクロール通路18に流れ込む排気と第2通路22からスクロール通路18に流れ込む排気とが平行と見做せる範囲で第1下流側内面21bに対して第2下流側内面22bが傾いている場合も本明細書の「平行」に含まれる。
【0054】
・最短円弧A上における第1交点h1と隔壁23の先端26との間の距離A1は、最短円弧A上における第2交点h2と隔壁23の先端26との間の距離A2と等しくてもよい。また、最短円弧A上における第1交点h1と隔壁23の先端26との間の距離A1は、最短円弧A上における第2交点h2と隔壁23の先端26との間の距離A2よりも長くてもよい。
【0055】
・隔壁23の先端26は、第1仮想線H1上に位置していてもよい。こうした構成によれば、第1排気ポート31から第2排気ポート32への排気の逆流及び第2排気ポート32から第1排気ポート31への排気の逆流が一層生じにくい。
【0056】
・本明細書において、「隔壁23の先端26」とは、厳密な意味での先端のみならず、先端26と先端26の周囲部分を含んだある程度の大きさを有する部分である。
【符号の説明】
【0057】
10…過給機
11…コンプレッサホイール
12…コンプレッサハウジング
13…連結シャフト
14…タービンホイール
15…タービンハウジング
16…内壁
16a…下流端
17…外周面
18…スクロール通路
19…回転中心
20…接続管
21…第1通路
21a…第1内面
21b…第1下流側内面
21c…第1上流側内面
22…第2通路
22a…第2内面
22b…第2下流側内面
22c…第2上流側内面
23…隔壁
24…接触面
25…下流部分
26…先端
27…基端
30…内燃機関
31…第1排気ポート
32…第2排気ポート
33…インテークマニホールド
34…スロットルバルブ
40…エアクリーナ
41…第1吸気通路
42…第2吸気通路
43…インタークーラ
44…バイパス通路
44a…ウエストゲートバルブ
45…排気通路
46…三元触媒
A…最短円弧
C1,C2,C3,C4…気筒
E1,E2,E3…排気の流れ方向
e1,e2…排気の流入方向
H…線分
H1…第1仮想線
h1…第1交点
H2…第2仮想線
h2…第2交点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8