(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】溶接構造体の製造方法および電池
(51)【国際特許分類】
B23K 26/28 20140101AFI20240814BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240814BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20240814BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20240814BHJP
【FI】
B23K26/28
B23K26/21 G
H01M50/50 201Z
H01M50/557
(21)【出願番号】P 2022040421
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 清幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰生
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 正剛
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-089919(JP,A)
【文献】特開2018-012125(JP,A)
【文献】特表2020-518095(JP,A)
【文献】特開2020-179411(JP,A)
【文献】特開2010-094701(JP,A)
【文献】特開平11-239888(JP,A)
【文献】国際公開第2018/169033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/28
B23K 26/21
H01M 50/50
H01M 50/557
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属によって形成された板状の第1被溶接部材と第2の金属によって形成された板状の第2被溶接部材とが積層された積層体を準備する工程と、
中心軸が同軸となる
3つ以上である複数のループ状の溶接痕が形成されるように、前記第1被溶接部材側からレーザを照射する工程と、を備え、
前記レーザを照射する工程において、
最も内側に位置す
る溶接痕から最外周側に向かうにつれて照射エネルギーが徐々に小さくなるようにレーザを照射する
ことにより、前記最も内側に位置する溶接痕から最外周に向かうにつれて、前記溶接痕の深さが徐々に浅くなるように複数のループ状の前記溶接痕を形成する、溶接構造体の製造方法。
【請求項2】
前記レーザを照射する工程において、複数のループ状の前記溶接痕に対応して照射されるレーザの複数の軌跡が、不連続である、請求項1に記載の溶接構造体の製造方法。
【請求項3】
前記レーザを照射する工程において、前記複数の軌跡の各々が円形状である、請求項2に記載の溶接構造体の製造方法。
【請求項4】
前記レーザを照射する工程において、
前記最外周に位置する前記溶接痕に含有される前記第1被溶接部材と前記第2被溶接部材との合金量が、
前記最も内側に位置す
る溶接痕に含有される前記合金量よりも小さくなるように、レーザを照射する、請求項1から
3のいずれか1項に記載の溶接構造体の製造方法。
【請求項5】
前記レーザを照射する工程において、
前記最も内側に位置する溶接痕から最外周側に向かうにつれてスポット径が徐々に小さくなるようにレーザを照射する、請求項1から
4のいずれか1項に記載の溶接構造体の製造方法。
【請求項6】
第1の金属によって形成された板状の正極端子と第2の金属によって形成された板状の負極端子とを有する第1単電池および第2単電池を含み、前記正極端子と前記負極端子とが積層方向に並んで配置されるように、前記第1単電池および前記第2単電池が積層された電池積層体と、
前記正極端子と前記負極端子とを溶接する
3つ以上である複数のループ状の溶接痕と、を備え、
複数のループ状の前記溶接痕は、中心軸が同軸となるように設けられており、かつ、
最も内側に位置す
る溶接痕から最外周に向かうにつれて、前記溶接痕の深さが徐々に浅くなっている、電池。
【請求項7】
最外周に位置する前記溶接痕に含有される前記正極端子と前記負極端子との合金量が、
前記最も内側に位置す
る溶接痕に含有される前記合金量よりも小さくなっている、請求項
6に記載の電池。
【請求項8】
前記最も内側に位置す
る溶接痕から最外周側に向かうにつれて、前記溶接痕の幅が、徐々に小さくなっている、請求項
6または
7に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1の金属によって形成された板状の第1被溶接部材と第2の金属によって形成された板状の第2被溶接部材とを溶接する溶接構造体の製造方法、および第1の金属によって形成された板状の正極端子と第2の金属によって形成された板状の負極端子とが溶接された電池に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板状の被溶接部材を重ね合わせてレーザ光を照射してこれらを溶接するレーザ溶接方法として、国際公開第2015/186168号(特許文献1)には、予め設定された多重ループ状の溶接線に沿ってレーザ光を照射しつつ、レーザ光を移動させ、外側のループ状の溶接線に沿ったレーザ光の移動を内側のループ状の溶接線に沿ったレーザ光の移動に先行して行なう方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のレーザ溶接方法では、溶接線の内側領域を順に所定量だけ落ち込むように、溶接条件を一定にしてレーザ光を照射し、薄板同士の間に隙間があったとしても確実に薄板同士を溶接する。隙間によって溶接される部分が分からない状態で溶接するために、実際には、最外周の領域で溶接されることがある。薄板同士が異種金属である場合には、最外周に位置する溶接痕に想定以上の合金が生成される可能性がある。この場合には、応力が集中しやすい最外周部分に合金が形成されることで、接合部の強度が低下することが懸念される。
【0005】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、最外周に形成される合金を抑制し、良好な接合強度を維持できる溶接構造体の製造方法、および端子同士が良好に接合された電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく溶接構造体の製造方法は、第1の金属によって形成された板状の第1被溶接部材と第2の金属によって形成された板状の第2被溶接部材とが積層された積層体を準備する工程と、中心軸が同軸となる複数のループ状の溶接痕が形成されるように、上記第1被溶接部材側からレーザを照射する工程と、を備える。上記レーザを照射する工程において、内側に位置する所定の溶接痕から最外周側に向かうにつれて照射エネルギーが徐々に小さくなるようにレーザを照射する。
【0007】
上記構成によれば、内側に位置する所定の溶接痕から最外周側に向かうにつれて照射エネルギーが徐々に小さくなるようにレーザを照射するため、所定の溶接痕から最外周側に向けて、レーザ照射によって生成される合金層を傾斜的に減少させることができる。これにより、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。この結果、応力が集中しやすい最外周で亀裂が発生することを抑制することができ、良好な接合強度を維持することができる。
【0008】
上記本開示に基づく溶接構造体の製造方法にあっては、上記レーザを照射する工程において、複数のループ状の上記溶接痕に対応して照射されるレーザの複数の軌跡が、不連続であることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、照射されるレーザの複数の軌跡を不連続とすることにより、各軌跡ごとのレーザの照射エネルギーを変更しやすくなる。
【0010】
上記本開示に基づく溶接構造体の製造方法にあっては、上記レーザを照射する工程において、上記複数の軌跡の各々が円形状であってもよい。
【0011】
上記構成によれば、周方向に亘って均一にレーザ照射を行なうことができる。
上記本開示に基づく溶接構造体の製造方法にあっては、上記レーザを照射する工程において、内側に位置する上記所定の溶接痕から最外周に向かうにつれて、上記溶接痕の深さが徐々に浅くなるように複数のループ状の上記溶接痕を形成してもよい。
【0012】
上記構成によっても、所定の溶接痕から最外周に向かうにつれて、溶接痕の深さが徐々に浅くなることにより、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。
【0013】
上記本開示に基づく溶接構造体の製造方法にあっては、上記レーザを照射する工程において、最外周に位置する上記溶接痕に含有される上記第1被溶接部材と上記第2被溶接部材との合金量が、内側に位置する上記所定の溶接痕に含有される上記合金量よりも小さくなるように、レーザを照射してもよい。
【0014】
上記構成によっても、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。
【0015】
上記本開示に基づく溶接構造体の製造方法にあっては、上記レーザを照射する工程において、内側に位置する上記所定の溶接痕から最外周側に向かうにつれてスポット径が徐々に小さくなるようにレーザを照射してもよい。
【0016】
上記構成によっても、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。
【0017】
本開示に基づく電池は、第1の金属によって形成された板状の正極端子と第2の金属によって形成された板状の負極端子とを有する第1単電池および第2単電池を含み、上記正極端子と上記負極端子とが積層方向に並んで配置されるように、上記第1単電池および上記第2単電池が積層された電池積層体と、上記正極端子と上記負極端子とを溶接する複数のループ状の溶接痕と、を備える。複数のループ状の上記溶接痕は、中心軸が同軸となるように設けられており、かつ、内側に位置する所定の溶接痕から最外周に向かうにつれて、上記溶接痕の深さが徐々に浅くなっている。
【0018】
上記構成によれば、正極端子と負極端子とを接合する複数のループ状の溶接痕において、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。この結果、応力が集中しやすい最外周で亀裂が発生することを抑制することができ、良好な接合強度を維持しつつ、正極端子と負極端子とを接合することができる。
【0019】
上記本開示に基づく電池にあっては、最外周に位置する上記溶接痕に含有される上記正極端子と上記負極端子との合金量が、内側に位置する上記所定の溶接痕に含有される上記合金量よりも小さくなっていてもよい。
【0020】
上記構成によっても、正極端子と負極端子とを接合する複数のループ状の溶接痕において、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。
【0021】
上記本開示に基づく電池にあっては、内側に位置する上記所定の溶接痕から最外周側に向かうにつれて、上記溶接痕の幅が、徐々に小さくなっていてもよい。
【0022】
上記構成によっても、正極端子と負極端子とを接合する複数のループ状の溶接痕において、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、最外周に形成される合金を抑制し、良好な接合強度を維持できる溶接構造体の製造方法、および端子同士が良好に接合された電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1に係る電池を示す概略斜視図である。
【
図2】実施の形態1に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図2に示すIII-III線に沿った概略断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る電池の製造工程を示すフロー図である。
【
図5】実施の形態1に係る電池の製造工程において、正極端子および負極端子を溶接する工程において使用する溶接構造体の製造方法のフロー図である。
【
図6】実施の形態1に係る溶接構造体の製造方法においてレーザを照射する工程を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
【
図8】
図7に示すVIII-VIII線に沿った概略断面図である。
【
図9】実施の形態3に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
【
図10】
図9に示すX-X線に沿った概略断面図である。
【
図11】実施の形態4に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
【
図12】実施の形態5に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電池を示す概略斜視図である。
図1を参照して、実施の形態1に係る電池について説明する。実施の形態1に係る電池は、複数組み合わされてモジュールとして、ハイブリッド車両、あるいは、電動車両等の車両に搭載される。
【0027】
図1に示すように、実施の形態1に係る電池100は、第1単電池10Aおよび第2単電池10Bを含んでいる。なお、本実施の形態においては、便宜上、電池100に含まれる単電池の個数は、2つである場合を例示しているが、単電池の個数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
【0028】
第1単電池10Aおよび第2単電池10Bは、たとえば、ラミネート型電池である。第1単電池10Aおよび第2単電池10Bは、電極体11、収容体12、正極端子13、および負極端子14とを含む。
【0029】
電極体11は、正極活物質層が設けられた正極用集電箔と、負極括物質層が設けられた負極用集電箔とを含む。正極用集電箔と負極用集電箔とは、セパレータを介して複数積層されていてもよいし、正極活物質層と負極括物質層との間に固体電解質層が挟まれるように複数積層されていてもよい。
【0030】
収容体12は、電極体11を内部に収容する。収容体12は、ラミネートフィルムを周縁部において溶着することにより形成されている。このラミネートフィルムは、たとえば、表面が樹脂材料によりコーティングされたアルミニウム合金製のフィルムである。なお、ラミネートフィルムは、樹脂フィルムであってもよい。
【0031】
正極端子13は、複数の正極用集電箔が束ねれた部分に接続されており、収容体12から突出するように設けられている。正極端子13は、第1の金属によって形成された板状部材であり、第1被溶接部材に相当する。正極端子13は、たとえば、アルミニウムによって形成されている。
【0032】
負極端子14は、複数の負極用集電箔が束ねられた部分に接続されており、収容体12から突出するように設けられている。負極端子14は、第1の金属と異なる第2の金属によって形成された板状部材であり、第2被溶接部材に相当する。負極端子14は、たとえば、銅によって形成されている。
【0033】
第1単電池10Aおよび第2単電池10Bは、正極端子13と負極端子14とが積層方向に並んで配置されるように積層されている。第1単電池10Aおよび第2単電池10Bは、このように積層されることで電池積層体を構成している。
【0034】
また、電池100は、正極端子13および負極端子14を接合する接合部15を含んでいる。
【0035】
図2は、実施の形態1に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
図3は、
図2に示すIII-III線に沿った概略断面図である。
図2および
図3を参照して、接合部15の詳細について説明する。
【0036】
図2および
図3に示すように、接合部15は、複数のループ状の溶接痕L1~L6を含む。複数のループ状の溶接痕L1~L6は、中心軸が同軸となるように設けられている。複数のループ状の溶接痕L1~L6の各々は、略円形状を有する。複数のループ状の溶接痕L1~L6は、最外周側に向かうにつれて径(内径)が大きくなっている。
【0037】
複数のループ状の溶接痕L1~L6は、内側に位置する所定の溶接痕から最外周に向かうにつれて、溶接痕の深さが徐々に浅くなっている。具体的には、複数のループ状の溶接痕L1~L6は、最も内側に位置する溶接痕L1から最外周に位置する溶接痕L6に向かうにつれて溶接痕が徐々に浅くなっている。
【0038】
溶接痕L1では、正極端子13を構成するアルミニウムおよび負極端子14を構成する銅が溶融しており、かつ、溶融したアルミニウムが、銅側に侵入している。これにより、溶接痕L1では、相当量の合金層が形成されている。溶接痕L2からL5では、溶融したアルミニウムが銅側に侵入する深さが徐々に小さくなっている。
【0039】
最外周に位置する溶接痕L6では、溶融したアルミニウムは、銅に到達しておらず、また、銅が溶融していない。このため、溶接痕L6では、合金層が形成されていない。このように、溶接痕L1に含有される合金量よりも、溶接痕L6に含有される合金量が少なくなっている。なお、溶接痕L6においては、合金層が形成されないことが好ましいが、溶融したアルミニウムが、銅にわずかに到達し、少量の合金層が形成されていてもよい。
【0040】
このように、溶接痕L1~L6が設けられることにより、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金層(合金量)を少なくすることができる。この結果、応力が集中しやすい最外周で亀裂が発生することを抑制することができ、良好な接合強度を維持しつつ、正極端子と負極端子とを接合することができる。
【0041】
図4は、実施の形態1に係る電池の製造工程を示すフロー図である。
図4を参照して、実施の形態1に係る電池100の製造方法について説明する。
【0042】
図4に示すように、電池100の製造方法は、第1単電池10Aおよび第2単電池10Bを積層する工程(S10)および、正極端子および負極端子を接合する工程(S20)を備える。
【0043】
電池100を製造するに際して、まず、工程(S10)において、正極端子13と負極端子14とが積層方向に並んで配置されるように、第1単電池10Aおよび第2単電池10Bを積層する。続いて、工程(S20)において、実施の形態1に係る溶接構造体の製造方法を用いて、正極端子13と負極端子14とを接合する。工程(S20)では、後述するように工程(S21)(
図5参照)および工程(S22)(
図5参照)が実施される。
【0044】
図5は、実施の形態1に係る電池の製造工程において、正極端子および負極端子を溶接する工程において使用する溶接構造体の製造方法のフロー図である。
【0045】
図5に示すように、実施の形態1に係る溶接構造体の製造方法は、第1被溶接部材と第2被溶接部材とが積層された積層体を準備する工程(S21)と、中心軸が同軸となる複数のループ状の溶接痕が形成されるように、第1被溶接部材側にレーザを照射する工程(S22)とを含む。
【0046】
具体的には、工程(S21)において、第1の金属によって形成された板状の第1被溶接部材と第2の金属によって形成された板状の第2被溶接部材とが積層された積層体を準備する。より詳細には、上述のように、正極端子13と負極端子14とが積層方向に並んで配置された電池積層体をレーザ照射位置にセットする。
【0047】
図6は、実施の形態1に係る溶接構造体の製造方法においてレーザを照射する工程を示す図である。
【0048】
続いて、
図5および
図6に示すように、工程(S22)において、中心軸が同軸となる複数のループ状の溶接痕L1~L6が形成されるように、正極端子13にレーザを照射する。
【0049】
この際、所定の溶接痕(具体的には最も内側に位置する溶接痕L1)から最外周側に向かうにつれて照射エネルギーが徐々に小さくなるようにレーザを照射する。これにより、最も内側に位置する溶接痕L1から最外周に向かうにつれて、溶接痕の深さが徐々に浅くなるように複数のループ状の溶接痕L1~L6が形成される。
【0050】
また、最も内側に位置する溶接痕L1から最外周側に向けて、レーザ照射によって生成される合金層を傾斜的に減少させることができる。すなわち、最外周に位置する溶接痕L6に含有される合金量が、最も内側に位置する溶接痕L1に含有される合金量よりも小さくすることができる。
【0051】
このため、負荷される応力が小さい内側の部分では、合金層をある程度許容して強めに接合し、応力が集中しやすい最外周に位置する溶接痕に含有される合金量を少なくすることができる。この結果、応力が集中しやすい最外周で亀裂が発生することを抑制することができ、良好な接合強度を維持することができる。
【0052】
なお、複数のループ状の溶接痕に対応して照射されるレーザの複数の軌跡は、不連続であることが好ましい。これにより、各軌跡ごとのレーザの照射エネルギーを変更しやすくなる。さらに、各軌跡は、円形状であることが好ましい。これにより、周方向に亘って均一にレーザ照射を行なうことができる。
【0053】
なお、照射エネルギーは、最も外側を照射する際の出力比を1とした場合に、最も内側を照射する際の出力比を2として、その間で適宜調整する。
【0054】
以上のような工程を経て、第1被溶接部材および第2溶接部材を接合することができるとともに、電池100を製造することができる。
【0055】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
図8は、
図7に示すVIII-VIII線に沿った概略断面図である。
図7および
図8を参照して、実施の形態2に係る電池100Aについて説明する。
【0056】
図7および
図8に示すように、実施の形態2に係る電池100Aは、実施の形態1に係る電池100と比較した場合に、接合部15Aの構成が相違する。その他の構成についてはほぼ同様である。
【0057】
実施の形態2においても、接合部15Aは、6つの溶接痕L1~L6を含んでいるが、レーザの照射方法が異なっており、これにより、溶接痕L1~L6の深さ等も変わっている。
【0058】
実施の形態2においては、最も内側に位置する溶接痕L1から所定の溶接痕L4に向かうに徐々に溶接痕の深さが深くなっており、所定の溶接痕L4から最外周側(溶接痕L6)に向かうにつれて徐々に溶接痕の深さが浅くなっている。
【0059】
溶接痕L1では、正極端子13を構成するアルミニウムは、負極端子14を構成する銅に到達しない位置あるいは、銅にわずかに到達した位置まで溶融している。これにより、合金層は、存在しないか、わずかに存在するようになっている。溶接痕L2~L4では、徐々に深さが深くなっており、銅に侵入する深さも徐々に深くなっている。これにより、溶接痕L2~L4では、合金層が徐々に増加しており、特に溶接痕L4では、合金層をある程度許容して強めに接合されている。溶接痕L4から最外周側の溶接痕L6に向かうにつれて、溶融したアルミニウムが銅側に侵入する深さは徐々に小さくなっている。
【0060】
最外周に位置する溶接痕L6では、溶融したアルミニウムは、銅に到達しておらず、また、銅が溶融していない。このため、溶接痕L6では、合金層が形成されていない。このように、溶接痕L4に含有される合金量よりも、溶接痕L6に含有される合金量が少なくなっている。なお、溶接痕L6においては、合金層が形成されないことが好ましいが、溶融したアルミニウムが、銅にわずかに到達し、少量の合金層が形成されていてもよい。
【0061】
実施の形態2の電池100Aも、実施の形態1に係る電池の製造方法に準拠して製造される。すなわち、実施の形態1に係る溶接構造体の製造方法に準拠した溶接構造体の製造方法が実施される。
【0062】
実施の形態2においては、工程(S22)において、最も内側に位置する溶接痕L1から所定の内側に位置する溶接痕L4に向かうにつれて、照射エネルギーが徐々に大きくなるようにレーザを照射する。続いて、所定の溶接痕L4から最外周側に向かうにつれて照射エネルギーが徐々に小さくなるようにレーザを照射する。この場合においては、照射エネルギーは、最も外側を照射する際の出力比を1とした場合に、所定の内側(溶接痕L4に対応する照射領域)を照射する際の出力比を2として、その間で適宜調整する。
【0063】
このように構成される場合であっても、実施の形態2に係る電池100A、および溶接構造体の製造方法にあっては、実施の形態1に係る電池100、および溶接構造体の製造方法とほぼ同様の効果が得られる。
【0064】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
図10は、
図9に示すX-X線に沿った概略断面図である。
図9および
図10を参照して、実施の形態3に係る電池100Bについて説明する。
【0065】
図9および
図10に示すように、実施の形態3に係る電池100Bは、実施の形態1に係る電池100と比較した場合に、接合部15Bの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0066】
接合部15Bは、3つの溶接痕L1~L3を含んでおり、実施の形態1と比較して、レーザの照射方法も異なっている。
【0067】
実施の形態3では、最も内側に位置する溶接痕L1から所定の溶接痕L2に向かうに徐々に溶接痕の深さが深くなっており、所定の溶接痕L2から最外周側(溶接痕L3)に向かうにつれて徐々に溶接痕の深さが浅くなっている。
【0068】
最も内側に位置する溶接痕L1では、正極端子13を構成するアルミニウムは、負極端子14を構成する銅にやや到達する位置まで溶融している。溶接痕L2では、当該アルミニウムは、溶接痕L1よりも深く銅に到達しており、合金層をある程度許容して強めに接合されている。溶接痕L3では、当該アルミニウムは、溶接痕L2よりも浅い位置まで溶融している。これにより、溶接痕L3に含有される合金量は、所定の溶接痕L2に含有される合金量よりも小さくなっている。
【0069】
実施の形態3の電池100Bも、実施の形態1に係る電池の製造方法に準拠して製造される。この場合、実施の形態1に係る溶接構造体の製造方法に準拠した溶接構造体の製造方法が実施される。
【0070】
実施の形態3においては、工程(S22)において、最も内側に位置する溶接痕L1から所定の内側に位置する溶接痕L2に向かうにつれて、照射エネルギーが徐々に大きくなるようにレーザを照射する。続いて、所定の溶接痕L2から最外周側に向かうにつれて照射エネルギーが徐々に小さくなるようにレーザを照射する。
【0071】
このように構成される場合であっても、実施の形態3に係る電池100B、および溶接構造体の製造方法にあっては、実施の形態1に係る電池100、および溶接構造体の製造方法とほぼ同様の効果が得られる。
【0072】
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
図11を参照して、実施の形態4に係る電池100Cについて説明する。
【0073】
図11に示すように、実施の形態4に係る電池100Cは、実施の形態1に係る電池100と比較して、正極端子および負極端子の形状が相違しており、これにより、複数の溶接痕の形状も相違する。
【0074】
正極端子および負極端子は、電極体から突出する突出方向の長さが、突出方向に直交する幅方向の長さよりも短くなっている。これにより、複数の溶接痕は、円形状ではなく、角部に丸みを帯びた矩形形状となっている。この場合において、複数の溶接痕の深さは、実施の形態1のように、最も内側から外側に向かうにつれて徐々に浅くなっていてもよいし、最も内側から所定の内側に位置する溶接痕に向かうにつれて溶接痕が徐々に深くなり、所定の内側に位置する溶接痕から最外周側に向かうにつれて溶接痕が徐々に深くなっていてもよい。
【0075】
図11においては、電池の製造工程において、実施の形態1の溶接構造体の製造方法に準拠した溶接構造体の製造方法が実施されてもよいし、実施の形態2の溶接構造体の製造方法に準拠した溶接構造体の製造方法が実施されてもよい。いずれの場合においても、複数のレーザ軌跡は、角部が丸みを帯びた矩形形状となる。
【0076】
このように構成される場合であっても、実施の形態4に係る電池100C、および溶接構造体の製造方法にあっては、実施の形態1に係る電池100、および溶接構造体の製造方法とほぼ同様の効果が得られる。
【0077】
(実施の形態5)
図12は、実施の形態5に係る電池の正極端子と負極端子との接合部を拡大して示す平面図である。
図12を参照して、実施の形態5に係る電池100Dについて説明する。
【0078】
図12に示すように、実施の形態5に係る電池100Dは、実施の形態1に係る電池100と比較して、正極端子および負極端子の形状が相違しており、これにより、複数の溶接痕の形状も相違する。
【0079】
正極端子および負極端子は、略L字形状を有する。これにより、複数の溶接痕は、円形状ではなく、角部に丸みを帯びた略L字状のループ形状を有する。この場合において、複数の溶接痕の深さは、実施の形態1のように、最も内側から外側に向かうにつれて徐々に浅くなっていてもよいし、最も内側から所定の内側に位置する溶接痕に向かうにつれて溶接痕が徐々に深くなり、所定の内側に位置する溶接痕から最外周側に向かうにつれて溶接痕が徐々に深くなっていてもよい。
【0080】
図12においては、電池の製造工程において、実施の形態1の溶接構造体の製造方法に準拠した溶接構造体の製造方法が実施されてもよいし、実施の形態2の溶接構造体の製造方法に準拠した溶接構造体の製造方法が実施されてもよい。いずれの場合においても、複数のレーザ軌跡は、角部が丸みを帯びた略L字状のループ形状となる。
【0081】
このように構成される場合であっても、実施の形態5に係る電池100D、および溶接構造体の製造方法にあっては、実施の形態1に係る電池100、および溶接構造体の製造方法とほぼ同様の効果が得られる。
【0082】
(その他の変形例)
上述の実施の形態1から4においては、正極端子13が第1被溶接部材であり、負極端子14が第2被溶接部材である場合を例示して説明したが、これに限定されず、第1被溶接部材は、第1の金属によって構成された板状部材であればよく、第2被溶融部材は、第1の金属と異なる第2の金属によって構成された板状部材であってもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態1から4においては、レーザを照射する工程(S22)において、内側に位置する所定の溶接痕から最外周側に向かうにつれてスポット径が徐々に小さくなるようにレーザを照射してもよい。
【0084】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10A 第1単電池、10B 第2単電池、11 電極体、12 収容体、13 正極端子、14 負極端子、15,15A,15B 接合部、100,100A,100B,100C,100D 電池、L1,L2,L3,L4,L6 溶接痕。