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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】クレーン制御方法、クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/20 20060101AFI20240814BHJP
   B66C 23/40 20060101ALI20240814BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20240814BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B66C13/20
B66C23/40
F01N3/033 Z
F01N3/023 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022054773
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147336
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100141298
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 文典
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 仁士
(72)【発明者】
【氏名】笹井 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】君谷 司
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150228(JP,A)
【文献】特開2017-096033(JP,A)
【文献】特開2019-138183(JP,A)
【文献】特開2012-097670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0067384(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102116185(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;
23/00-23/94
F01N 3/023;
3/033
E02F 9/00;
9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン制御方法であって、
クレーンが、
エンジンと、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから油圧アクチュエータへ流れる作動油の量を調節するアクチュエータ制御弁と、
前記油圧ポンプから前記アクチュエータ制御弁に至る前記作動油の経路に設けられたアンロード弁と、
前記エンジンの回転速度を指示する操作を受け付ける第1操作部と、
前記アクチュエータ制御弁の制御量を指示する操作を受け付ける第2操作部と、を備え、
前記クレーンにおいて、前記第1操作部および前記第2操作部に対する操作と前記エンジンの排気ガスが通過するフィルターに蓄積された微粒子を燃焼させる再生処理の実行とを許容する制御モードが選択されている場合に、
プロセッサーが、前記エンジンの回転速度を速度制御範囲の下限よりも大きな基準速度以上に保持する回転速度保持制御を実行することと、
前記プロセッサーが、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で前記第2操作部への操作が行われていないときに負荷保持制御を実行することと、
前記プロセッサーが、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で前記第2操作部への操作が行われているときに操作対応制御を実行することと、を含み、
前記プロセッサーは、前記回転速度保持制御において、前記第1操作部への操作量に対応する指示速度と前記基準速度とのうちの速い方の速度を目標速度として前記エンジンの回転速度を制御し、
前記プロセッサーは、前記負荷保持制御において、前記アクチュエータ制御弁を、前記油圧アクチュエータへの前記作動油の供給を停止する状態に保持しつつ、前記アンロード弁を既定状態に保持し、
前記プロセッサーは、前記操作対応制御において、前記第2操作部への操作量に応じて前記アクチュエータ制御弁および前記アンロード弁を動作させる、クレーン制御方法。
【請求項2】
前記油圧ポンプがピストンポンプである場合に、
前記プロセッサーは、前記負荷保持制御において、前記油圧ポンプの傾転角を傾転制御範囲の下限よりも大きな基準傾転角に保持し、
さらに前記プロセッサーは、前記操作対応制御において、前記第2操作部への操作量に応じて前記油圧ポンプの傾転角を制御する、請求項1に記載のクレーン制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサーは、前記エンジンが動作しているときに前記第2操作部への操作が行われていないという条件を含む再生開始条件が成立したときに、前記回転速度保持制御および前記負荷保持制御を開始し、
さらに前記プロセッサーは、前記負荷保持制御を開始した後、前記第2操作部への操作の状態に応じて前記アンロード弁および前記アクチュエータ制御弁に対する制御を前記負荷保持制御および前記操作対応制御の一方から他方へ切り替える、請求項1または請求項2に記載のクレーン制御方法。
【請求項4】
前記再生開始条件は、前記エンジンの始動からの経過時間の条件および前記フィルターにおける前記微粒子の蓄積量に関する条件の一方または両方をさらに含む、請求項3に記載のクレーン制御方法。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから油圧アクチュエータへ流れる作動油の量を調節するアクチュエータ制御弁と、
前記油圧ポンプから前記アクチュエータ制御弁に至る前記作動油の経路に設けられたアンロード弁と、
前記エンジンの回転速度を指示する操作を受け付ける第1操作部と、
前記アクチュエータ制御弁の制御量を指示する操作を受け付ける第2操作部と、
制御装置と、を備え、
前記第1操作部および前記第2操作部に対する操作と前記エンジンの排気ガスが通過するフィルターに蓄積された微粒子を燃焼させる再生処理の実行とを許容する制御モードが選択されている場合に、
前記制御装置は、前記エンジンの回転速度を速度制御範囲の下限よりも大きな基準速度以上に保持する回転速度保持制御を実行し、
さらに前記制御装置は、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で前記第2操作部への操作が行われていないときに負荷保持制御を実行し、
さらに前記制御装置は、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で前記第2操作部への操作が行われているときに操作対応制御を実行し、
前記制御装置は、前記回転速度保持制御において、前記第1操作部への操作量に対応する指示速度と前記基準速度とのうちの速い方の速度を目標速度として前記エンジンの回転速度を制御し、
さらに前記制御装置は、前記負荷保持制御において、前記アクチュエータ制御弁を、前記油圧アクチュエータへの前記作動油の供給を停止する状態に保持しつつ、前記アンロード弁を既定状態に保持し、
さらに前記制御装置は、前記操作対応制御において、前記第2操作部への操作量に応じて前記アクチュエータ制御弁および前記アンロード弁を動作させる、クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスが通過するフィルターに蓄積された微粒子を燃焼させる再生処理を実行するクレーン制御方法およびクレーンに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、ディーゼルエンジン、油圧ポンプおよび油圧アクチュエータを備える。前記油圧ポンプは、前記ディーゼルエンジンにより駆動される。
【0003】
前記油圧ポンプから吐出される作動油は、制御弁を通じて前記油圧アクチュエータへ供給される。前記油圧アクチュエータは、油圧モーターまたは油圧シリンダーなどである。前記油圧モーターは、ブームまたは吊荷に接続されたロープを巻き取るウインチを駆動する。
【0004】
前記クレーンは、DPF(Diesel Particulate Filter)をさらに備える。前記DPFは、前記ディーゼルエンジンの排気ガスから微粒子を捕集する。前記DPFにおける前記微粒子の蓄積量が増えると、前記ディーゼルエンジンの作動に支障が生じる。
【0005】
前記クレーンにおいて、前記ディーゼルエンジンは比較的低負荷の状態で動作することが多い。前記ディーゼルエンジンの負荷が小さい場合、前記排気ガスの温度が前記微粒子の燃焼に必要な温度まで上昇しない。
【0006】
そこで、前記DPFにおける前記微粒子の蓄積量が増えたときに、前記DPFの再生処理が実行される。前記再生処理は、前記ディーゼルエンジンの負荷を増大させる制御を行うことによって前記DPFに蓄積されている前記微粒子を燃焼させる処理である。
【0007】
例えば、前記クレーンが油圧ポンプの吐出圧を上昇させる負荷掛け弁を備える場合がある(例えば、特許文献1参照)。前記負荷掛け弁がON状態に制御されることにより、前記ディーゼルエンジンの負荷が増大し、前記再生処理が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-096033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記クレーンにおいて、前記再生処理が前記負荷掛け弁の制御により実行されているときに、操作レバーの操作に応じた前記油圧アクチュエータの制御は実行されない。
【0010】
即ち、前記再生処理が開始すると、前記再生処理が終了するまで前記油圧アクチュエータを動作させることができない。そのため、前記再生処理に要する時間が、前記クレーンの作業工程に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
一方、前記クレーンの作業が行われているときに、前記油圧アクチュエータが動作していない時間は長い。そのため、前記再生処理が、前記油圧アクチュエータの動作の合間に実行されれば、前記クレーンの作業効率が向上する。
【0012】
本発明の目的は、油圧アクチュエータの動作の合間にDPFの再生処理を実行することによりクレーンの作業効率を高めることができるクレーン制御方法およびクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の局面に係るクレーン制御方法は、クレーンを制御する方法である。前記クレーンは、エンジンと、油圧ポンプと、アクチュエータ制御弁と、アンロード弁と、第1操作部と、第2操作部と、を備える。前記油圧ポンプは、前記エンジンにより駆動される。前記アクチュエータ制御弁は、前記油圧ポンプから油圧アクチュエータへ流れる作動油の量を調節する。前記アンロード弁は、前記油圧ポンプから前記アクチュエータ制御弁に至る前記作動油の経路に設けられている。前記第1操作部は、前記エンジンの回転速度を指示する操作を受け付ける。前記第2操作部は、前記アクチュエータ制御弁の制御量を指示する操作を受け付ける。前記クレーン制御方法は、前記クレーンにおいて、前記第1操作部および前記第2操作部に対する操作と前記エンジンの排気ガスが通過するフィルターに蓄積された微粒子を燃焼させる再生処理の実行とを許容する制御モードが選択されている場合に適用される。前記クレーン制御方法は、プロセッサーが、前記エンジンの回転速度を速度制御範囲の下限よりも大きな基準速度以上に保持する回転速度保持制御を実行することを含む。さらに前記クレーン制御方法は、前記プロセッサーが、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で前記第2操作部への操作が行われていないときに負荷保持制御を実行することを含む。さらに前記クレーン制御方法は、前記プロセッサーが、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で前記第2操作部への操作が行われているときに操作対応制御を実行することを含む。前記プロセッサーは、前記回転速度保持制御において、前記第1操作部への操作量に対応する指示速度と前記基準速度とのうちの速い方の速度を目標速度として前記エンジンの回転速度を制御する。前記プロセッサーは、前記負荷保持制御において、前記アクチュエータ制御弁を、前記油圧アクチュエータへの前記作動油の供給を停止する状態に保持しつつ、前記アンロード弁を既定状態に保持する。前記プロセッサーは、前記操作対応制御において、前記第2操作部への操作量に応じて前記アクチュエータ制御弁および前記アンロード弁を動作させる。
【0014】
本発明の他の局面に係るクレーンは、前記エンジンと、前記油圧ポンプと、前記アクチュエータ制御弁と、前記アンロード弁と、前記第1操作部と、前記第2操作部と、前記プロセッサーと、を備える。前記プロセッサーは、前記クレーン制御方法を実現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、油圧アクチュエータの動作の合間にDPFの再生処理を実行することによりクレーンの作業効率を高めることができるクレーン制御方法およびクレーンを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係るクレーンの構成図である。
図2図2は、実施形態に係るクレーンにおける制御関連機器の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係るクレーンにおける油圧システムの構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係るクレーンにおける主制御部の構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係るクレーンにおける油圧システム制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
[クレーン10の構成]
実施形態に係るクレーン10は、吊り荷を吊り上げつつ移動させる作業機械である。
【0019】
図1に示されるように、クレーン10は、下部走行体11、上部旋回体12、キャブ13、マスト15、ウインチ装置16、カウンターウェイト17、ブーム21、フック30、起伏ロープ31および吊りロープ32などを備える。
【0020】
ウインチ装置16は、起伏ウインチ161および吊りウインチ162を含む。
【0021】
上部旋回体12は、下部走行体11によって旋回可能に支持された旋回体である。下部走行体11は、上部旋回体12を旋回可能に支持する台座部分である。上部旋回体12は、キャブ13と一体に構成されている。
【0022】
マスト15は、上部旋回体12によって起伏可能に支持されている。さらに、上部旋回体12は、ウインチ装置16、カウンターウェイト17およびブーム21を支持している。なお、吊りウインチ162が、ブーム21の根元部に配置される場合もある。
【0023】
上部旋回体12は、下部走行体11に設けられた不図示の旋回モーターによって旋回駆動される。前記旋回モーターは油圧モーターである。
【0024】
図1に示されるクレーン10は移動式クレーンである。そのため、クレーン10は、走行装置14をさらに備える。走行装置14は、下部走行体11を支持し、走行可能である。図1は、走行装置14がクローラー式の装置である例を示す。
【0025】
キャブ13は、操縦室である。ブーム21は、上部旋回体12と連結された根元部を中心にして起伏可能である。なお、不図示のジブが、ブーム21の先端部に回動可能に連結される場合もある。
【0026】
起伏ロープ31は、上部スプレッダ18aおよび下部スプレッダ18bを介してマスト15および起伏ウインチ161に接続されている。マスト15は、ガイライン33によってブーム21と接続されている。なお、起伏ウインチ161が、マスト15に取り付けられる場合もある。
【0027】
また、不図示のガントリがマスト15の代わりに採用される場合もある。また、起伏ウインチ161が、前記ガントリに取り付けられる場合もある。
【0028】
起伏ウインチ161は、起伏ロープ31、マスト15およびブームロープ33を介してブーム21を支える。起伏ウインチ161は、起伏ロープ31の巻き取り、または、起伏ロープ31の繰り出しを行うことにより、マスト15の角度を変化させる。マスト15の角度の変化に応じて、ブーム21の角度が変化する。
【0029】
即ち、起伏ウインチ161は、起伏ロープ31の巻き取り、または、起伏ロープ31の繰り出しを行うことにより、ブーム21の角度を変化させる。
【0030】
なお、ウインチ装置16が、前記ジブを起伏させるウインチを備える場合もある。また、ブーム21が、伸縮ブームであってもよい。
【0031】
吊りロープ32は、ブーム21の先端部のシーブに掛けられている。吊りロープ32は、フック30に接続され、ブーム21の先端部から垂下される。
【0032】
吊りウインチ162は、吊りロープ32の巻き取り、または、吊りロープ32の繰り出しを行うことにより、フック30を昇降させる。前記吊り荷は、フック30に吊される。
【0033】
カウンターウェイト17は、ブーム21および前記吊り荷の荷重とのバランスをとる。
【0034】
図2に示されるように、クレーン10は、エンジン100、DPF101、油圧システム4、状態検出装置40、制御装置8および表示装置9などをさらに備える。
【0035】
エンジン100はディーゼルエンジンである。エンジン100は、油圧システム4の駆動源である。エンジン100の排気ガスは、DPF101を通過し、不図示のマフラーから排出される。DPF14は、エンジン100の前記排気ガス中の微粒子を捕集するフィルターである。
【0036】
制御装置8は、操作装置5、主制御ユニット6およびECU(Engine Control Unit)7などを含む。操作装置5は、操縦者の操作を受け付ける装置である。表示装置9は情報を表示する装置である。
【0037】
例えば、表示装置9は、液晶表示ユニットなどのパネル表示装置を含む。操作装置5および表示装置9などのヒューマンインターフェースのための装置は、キャブ13内に設けられている。
【0038】
操作装置5は、可変操作装置51、操作ボタン52および入力装置53などを含む。
【0039】
本実施形態において、可変操作装置51は、起伏操作レバー511、吊り操作レバー512およびアクセルグリップ513を含む。起伏操作レバー511、吊り操作レバー512およびアクセルグリップ513は、それぞれ操作されることにより変位する可変操作部の一例である。前記可変操作部の変位は、例えば前記可変操作部のスライド、傾倒および回転などを含む。
【0040】
起伏操作レバー511は、起伏ウインチ161の動作を指示する操作を受け付ける。吊り操作レバー512は、吊りウインチ162の動作を指示する操作を受け付ける。
【0041】
アクセルグリップ513は、エンジン100の回転速度を指示する操作を受け付ける。アクセルグリップ513は、第1操作部の一例である。アクセルペダルまたはアクセルトリマなどが、アクセルグリップ513の代わりに採用されてもよい。
【0042】
可変操作装置51は、変位検出部510をさらに備える。変位検出部510は、起伏操作レバー511、吊り操作レバー512およびアクセルグリップ513それぞれの変位量を検出し、検出された前記変位量を表す操作信号を出力する。前記変位量は、起伏操作レバー511、吊り操作レバー512およびアクセルグリップ513それぞれに対する操作量である。
【0043】
起伏操作レバー511または吊り操作レバー512に対応する前記操作信号は、複数の起伏操作レバー511または吊り操作レバー512のホームポジションからの変位方向および前記ホームポジションからの変位量を表す。
【0044】
アクセルグリップ513に対応する前記操作信号は、アクセルグリップ513のホームポジションからの変位量を表す。
【0045】
入力装置53は、前記操縦者による情報入力を受け付ける。例えば、入力装置53は、表示装置9と一体に構成されたタッチパネルなどである。また、入力装置53が、前記操縦者の音声操作による情報入力を受け付ける装置であってもよい。
【0046】
主制御ユニット6は、油圧システム4を制御する。さらに、主制御ユニット6は、エンジン100の制御のための制御指令をECU7へ出力する。ECU7は、前記制御指令に従ってエンジン100を制御する。
【0047】
例えば、主制御ユニット6、ECU7および表示装置9は、CAN(Controller Area Network)などのネットワークを通じて相互に通信可能である。
【0048】
状態検出装置40は、クレーン10の各種の状態を検出する。状態検出装置40の検出結果は、主制御ユニット6およびECU7へ伝送される。
【0049】
状態検出装置40は、回転速度計401、荷重計402、張力センサー403、角度計404および差圧計405などを含む。
【0050】
回転速度計401は、エンジン100の回転速度を検出する。主制御ユニット6は、アクセルグリップ513に対応する前記操作信号に応じて、エンジン100の目標速度を設定する。前記目標速度は、前記制御指令の一部としてECU7へ出力される。
【0051】
ECU7は、前記目標速度と回転速度計401の検出結果とに基づくフィードバック制御により、エンジン100を制御する。ECU7は、前記フィードバック制御において、エンジン100への燃料供給量などを制御する。
【0052】
荷重計402は、フック30に吊された前記吊り荷の重さを検出する。張力センサー403は、起伏ロープ31に作用する張力を検出する。
【0053】
角度計404は、ブーム21の起伏角度を検出する。差圧計405は、DPF101の差圧を検出する。DPF101の差圧は、DPF101の前段における前記排気ガスの圧力とDPF101の後段における前記排気ガスの圧力との差である。差圧計405の検出結果は、DPF14における前記微粒子の蓄積量を表す。
【0054】
図3に示されるように、油圧システム4は、油圧ポンプ41、アンロード弁42、複数のアクチュエータ制御弁43、複数のアクチュエータ44およびタンク45などを備える。複数のアクチュエータ44は、それぞれ油圧アクチュエータである。
【0055】
油圧ポンプ41は、エンジン100によって駆動される。本実施形態において、油圧ポンプ41は、傾転角を変更可能なピストンポンプである。油圧ポンプ41の1回転あたりの作動油の吐出量は、前記傾転角に応じて変化する。油圧ポンプ41の前記傾転角は、主制御ユニット6によって制御される。
【0056】
アンロード弁42およびアクチュエータ制御弁43は、主制御ユニット6の制御に従って作動油の流れを調節する制御弁である。
【0057】
アクチュエータ制御弁43は、油圧ポンプ41からアクチュエータ44へ流れる作動油の量を調節する。アクチュエータ44は、油圧ポンプ41からアクチュエータ制御弁43を通じて供給される作動油によって動作する。
【0058】
アクチュエータ44は、油圧アクチュエータである。本実施形態において、アクチュエータ44は、起伏モーター441および吊りモーター442を含む。起伏モーター441および吊りモーター442各々は、油圧モーターである。
【0059】
起伏モーター441は、起伏ウインチ161を駆動する。吊りモーター442は、吊りウインチ162を駆動する。
【0060】
なお、アクチュエータ44は、不図示の前記旋回モーターも備える。また、ブーム21が前記伸縮ブームである場合、アクチュエータ44は、ブーム21を伸縮させる油圧シリンダーを含む。
【0061】
アクチュエータ制御弁43は、起伏制御弁431および吊り制御弁432を含む。起伏制御弁431は、起伏モーター441に供給される作動油の量を調節する。吊り制御弁432は、吊りモーター442に供給される作動油の量を調節する。
【0062】
起伏操作レバー511は、起伏制御弁431の制御量を指示する操作を受け付ける。MPU601は、起伏操作レバー511に対する操作量に応じて起伏制御弁431を制御する。
【0063】
吊り操作レバー512は、吊り制御弁432の制御量を指示する操作を受け付ける。MPU601は、吊り操作レバー512に対する操作量に応じて吊り制御弁432を制御する。
【0064】
以下の説明において、起伏操作レバー511および吊り操作レバー512のことを操作レバー511,512と称する。なお、起伏操作レバー511および吊り操作レバー512の各々は、第2操作部の一例である。
【0065】
アンロード弁42は、油圧ポンプ41からアクチュエータ制御弁43に至る作動油の経路に設けられている。アンロード弁42は、油圧ポンプ41からタンク45とアクチュエータ制御弁43とに流れる作動油の量のバランスを調節する。
【0066】
アンロード弁42が、油圧ポンプ41からタンク45へ流れる作動油の量を増やすことにより、油圧ポンプ41に加わる負荷が低下する。
【0067】
主制御ユニット6は、アクチュエータ制御弁43を制御することにより、アクチュエータ44の動作を制御する。
【0068】
主制御ユニット6は、操作装置5に対して始動操作が行われることにより、ECU7を通じてエンジン100を始動させる。さらに主制御ユニット6は、操作装置5に対する操作または各種の状態検出装置40の検出結果に応じて、アクチュエータ制御弁43などの制御対象へ制御信号を出力する。さらに主制御ユニット6は、表示装置9を制御する。
【0069】
図4に示されるように、主制御ユニット6は、MPU(Miro Processing Unit)601、RAM(Random Access Memory)602、二次記憶装置603および信号インターフェイス604などを備える。
【0070】
RAM602は、コンピューター読み取り可能な揮発性の記憶装置である。二次記憶装置603は、コンピューター読み取り可能な不揮発性の記憶装置である。
【0071】
MPU601は、コンピュータープログラムを実行することにより、各種のデータ処理および制御を実行する。MPU601は、エンジン100および油圧システム4を制御するプロセッサーの一例である。
【0072】
RAM602は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が導出もしくは参照するデータを一時記憶する揮発性のメモリーである。
【0073】
二次記憶装置603は、MPU601によって実行される前記プログラムおよびMPU601が参照するデータを予め記憶する。例えば、二次記憶装置603がEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)またはフラッシュメモリーなどであることが考えられる。
【0074】
信号インターフェイス604は、状態検出装置40の検出信号をデジタルデータへ変換してMPU601へ伝送する。さらに、信号インターフェイス604は、MPU601が出力する制御指令を電流信号または電圧信号などの制御信号へ変換し、制御対象の機器へ出力する。
【0075】
例えば、MPU601は、状態検出装置40の検出結果に応じてクレーン10の状態を判定する。さらに、MPU601は、クレーン10の状態の判定結果に応じて、油圧ポンプ41、アンロード弁42およびアクチュエータ制御弁43を制御する。
【0076】
クレーン10において、DPF101における前記微粒子の蓄積量が増えると、エンジン100の作動に支障が生じる。
【0077】
また、クレーン10において、エンジン100は比較的低負荷の状態で動作することが多い。エンジン100の負荷が小さい場合、前記排気ガスの温度が前記微粒子の燃焼に必要な温度まで上昇しない。
【0078】
そこで、MPU601は、DPF101における前記微粒子の蓄積量が増えたときに、再生処理を実行する。前記再生処理は、エンジン100の負荷を増大させる制御を行うことによって前記DPFに蓄積されている前記微粒子を燃焼させる処理である。
【0079】
例えば、クレーン10が、不図示の負荷掛け弁を備える場合がある。前記負荷掛け弁は、油圧ポンプ41の吐出圧を上昇させる弁である。前記負荷掛け弁がON状態に制御されることにより、エンジン100の負荷が増大し、前記再生処理が実現される。
【0080】
ところで、クレーン10において、前記再生処理が前記負荷掛け弁の制御により実行されているときに、起伏操作レバー511または吊り操作レバー512の操作に応じたアクチュエータ44の制御は実行されない。
【0081】
即ち、前記再生処理が開始すると、前記再生処理が終了するまでアクチュエータ44を動作させることができない。そのため、前記再生処理に要する時間が、クレーン10の作業工程に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0082】
一方、クレーン10の作業が行われているときに、アクチュエータ44が動作していない時間は長い。そのため、前記再生処理が、アクチュエータ44の動作の合間に実行されれば、クレーン10の作業効率が向上する。
【0083】
クレーン10において、MPU601は、後述する油圧システム制御を実行する(図5参照)。これにより、アクチュエータ44の動作の合間にDPF101の前記再生処理が実行される。
【0084】
[油圧システム制御]
以下、図5に示されるフローチャートを参照しつつ、前記油圧システム制御の手順の一例について説明する。
【0085】
前記油圧システム制御の手順は、クレーン制御方法を実現する手順の一例である。MPU601は、エンジン100が始動したときに、前記油圧システム制御を開始する。MPU601は、前記クレーン制御方法を実現するプロセッサーの一例である。
【0086】
以下の説明において、S1,S2,…は、前記油圧システム制御における複数の工程の識別符号を表す。MPU601は、前記油圧システム制御において、まず工程S1の処理を実行する。
【0087】
<工程S1>
工程S1において、MPU601は、自動再生モードおよび通常モードのいずれの制御モードが選択されているかを判別する。
【0088】
例えば、前記制御モードは、モード選択用の操作ボタン52に対する操作によって選択される。
【0089】
前記自動再生モードは、アクセルグリップ513、起伏操作レバー511および吊り操作レバー512に対する操作と前記再生処理の実行とを許容する前記制御モードである。一方、前記通常モードは、前記再生処理の実行が許容されない前記制御モードである。
【0090】
MPU601は、前記自動再生モードが選択されていると判別する場合に、処理を工程S2へ移行させる。一方、MPU601は、前記通常モードが選択されていると判別する場合に、処理を工程S3へ移行させる。
【0091】
<工程S2>
工程S2において、MPU601は、予め定められた再生開始条件が成立しているか前記再生開始条件が成立していないかを判定する。
【0092】
前記再生開始条件は、レバー無操作条件を含む。前記レバー無操作条件は、エンジン100が動作しているときに操作レバー511,512への操作が行われていないという条件である。
【0093】
前記再生開始条件が、エンジン条件およびフィルター条件の一方または両方をさらに含んでいてもよい。例えば、前記再生開始条件は、前記レバー無操作条件と前記エンジン条件と前記フィルター条件の論理積である。
【0094】
前記エンジン条件は、エンジン100の始動からの経過時間が予め定められた時間を超えているという条件である。前記エンジン条件は、エンジン100の動作が安定していることを表す条件である。
【0095】
前記フィルター条件は、DPF101における前記微粒子の蓄積量の指標値が予め定められた基準範囲内であるという条件である。前記基準範囲は、前記微粒子がDPF101に一定程度蓄積されていることを表す。
【0096】
例えば、前記指標値は、差圧計405の検出値である。また、差圧計405の検出値が複数の候補ランクのいずれかに区分される場合に、区分されたランクが、前記指標値であってもよい。
【0097】
具体的には、前記指標値が、0~10までの11個の前記候補ランクのいずれかに区分される場合に、3から4までの範囲が前記基準範囲として設定される。
【0098】
また、前記再生開始条件が、前記再生処理に関連する全ての機器が正常であるという正常条件をさらに含んでいてもよい。例えば、前記再生開始条件は、前記レバー無操作条件と前記エンジン条件と前記フィルター条件と前記正常条件との論理積である。
【0099】
なお、MPU601は、状態検出装置40の検出結果に基づいて、前記再生処理に関連する機器が正常であるか異常であるかを判定する。
【0100】
MPU601は、前記再生開始条件が成立していると判定する場合に処理を工程S4へ移行させる。一方、MPU601は、前記再生開始条件が成立していないと判定する場合に処理を工程S3へ移行させる。
【0101】
<工程S3>
工程S3において、MPU601は、油圧ポンプ41、アンロード弁42およびアクチュエータ制御弁43に関して通常制御を実行する。
【0102】
MPU601は、前記通常制御において、アクセル操作対応制御およびレバー操作対応制御を並行して実行する。
【0103】
前記アクセル操作対応制御は、アクセルグリップ513への操作量に対応する指示速度を目標速度としてエンジン100の回転速度を制御する処理である。
【0104】
MPU601は、前記アクセル操作対応制御において、アクセルグリップ513への操作量に対応する前記指示速度を前記目標速度として設定する。さらにMPU601は、前記目標速度を前記制御指令の一部としてECU7へ出力する。
【0105】
前述したように、ECU7は、前記目標速度と回転速度計401の検出結果とに基づくフィードバック制御により、エンジン100を制御する。即ち、MPU601は、ECU7を通じて、エンジン100の回転速度を前記目標速度に保持する制御を実行する。
【0106】
前記レバー操作対応制御は、操作レバー511,512への操作量に応じてアクチュエータ制御弁43およびアンロード弁42を動作させる制御を含む。さらに前記レバー操作対応制御は、操作レバー511,512への操作量に応じて、油圧ポンプ41の傾転角を変更する制御を含む。
【0107】
具体的には、MPU601は、起伏操作レバー511への操作量が大きいほど起伏モーター441への作動油の供給量が増えるように、アンロード弁42および起伏制御弁431を制御する。
【0108】
同様に、MPU601は、吊り操作レバー512への操作量が大きいほど吊りモーター442への作動油の供給量が増えるように、アンロード弁42および吊り制御弁432を制御する。
【0109】
MPU601は、前記通常制御を実行しつつ、処理を工程S1へ移行させる。これにより、MPU601は、前記制御モードが前記通常モードである場合、または、前記再生開始条件が成立しない場合に、前記通常制御を継続する。
【0110】
<工程S4>
工程S4において、MPU601は、表示装置9に予め定められた再生制御メッセージを表示させる。前記再生制御メッセージは、前記再生処理が実行されることを示す。
【0111】
MPU601は、工程S4の処理を実行した後、処理を工程S5へ移行させる。
【0112】
<工程S5>
工程S5において、MPU601は、回転速度保持制御を実行する。前記回転速度保持制御は、エンジン100の回転速度をアイドリング速度よりも大きな基準速度以上に保持する制御である。前記アイドリング速度は、エンジン100の速度制御範囲の下限速度である。
【0113】
MPU601は、前記回転速度保持制御において、アクセルグリップ513への操作の有無に関わらず、エンジン100の回転速度を前記基準速度以上に保持する。例えば、前記基準速度は、エンジン100の定格速度の70%以上の速度である。
【0114】
なお、前記基準速度は、排気ガスの温度が前記生成処理に適した温度になるように、エンジン100およびその他の機器の仕様に応じて適宜設定される。そのため、前記基準速度が、エンジン100の定格速度の50%から70%程度の速度に設定されることもあり得る。
【0115】
工程S5において、MPU601は、アクセルグリップ513への操作量に対応する前記指示速度と前記基準速度とのうちの速い方の速度を前記目標速度としてエンジン100の回転速度を制御する。
MPU601は、ECU7を通じてエンジン100の回転速度を前記基準速度以上に保持しつつ、処理を工程S6へ移行させる。
【0116】
<工程S6>
工程S6において、MPU601は、負荷保持制御を実行する。前記負荷保持制御は、アクチュエータ制御弁43を供給停止状態に保持しつつアンロード弁42を既定状態に保持する制御である。以下、前記既定状態のことを負荷掛け状態と称する。
【0117】
前記供給停止状態は、アクチュエータ制御弁43がアクチュエータ44への前記作動油の供給を停止する状態である。アンロード弁42が前記負荷掛け状態に保持されることにより、油圧ポンプ41に所定の負荷が掛かる。その結果、エンジン100に負荷が掛かり、前記排気ガスの温度が高い温度に保持される。
【0118】
例えば、アンロード弁42のポートの開口面積が、油圧ポンプ41に適度な負荷が掛かるように設計されている場合、前記負荷掛け状態が、アンロード弁42の全開状態であってもよい。
【0119】
前記負荷掛け状態がアンロード弁42の全開状態である場合、アクチュエータ44が油圧シリンダーを含む場合でも、前記油圧シリンダーが意図せず伸長することが回避される。
【0120】
さらにMPU601は、前記負荷保持制御において、油圧ポンプ41の傾転角を基準傾転角に保持する。本実施形態において、前記基準傾転角は、油圧ポンプ41における傾転制御範囲の下限よりも大きな角度である。
【0121】
例えば、前記基準傾転角は、前記傾転制御範囲の上限である。油圧ポンプ41の傾転角が前記基準傾転角に保持されることにより、油圧ポンプ41にさらに大きな負荷が掛かる。その結果、エンジン100にさらに大きな負荷が掛かり、前記排気ガスの温度がさらに高い温度に保持される。
【0122】
なお、前記基準傾転角は、排気ガスの温度が前記生成処理に適した温度になるように、エンジン100およびその他の機器の仕様に応じて適宜設定される。そのため、前記基準傾転角が、前記傾転制御範囲の下限に設定されることもあり得る。
【0123】
工程S6の制御は、工程S5の前記回転速度保持制御が実行されている状況下で操作レバー511,512への操作が行われていないときに実行される。MPU601は、工程S6の制御を実行しつつ、処理を工程S7へ移行させる。
【0124】
<工程S7>
工程S7において、MPU601は、再生終了条件が成立するか前記再生終了条件が成立しないかを判定する。
【0125】
前記再生終了条件は、第1終了条件を含む。前記第1終了条件は、前記通常モードが前記制御モードとして選択されたとい条件である。
【0126】
前記再生終了条件が、第2終了条件、第3終了条件、第4終了条件および第5終了条件のうちの1つまたは複数をさらに含んでいてもよい。
【0127】
前記第2終了条件は、DPF101における前記微粒子の蓄積量の前記指標値が前記基準範囲を下回るという条件である。
【0128】
前記第3終了条件は、DPF101における前記微粒子の蓄積量の前記指標値が前記基準範囲内であり、かつ、再生継続時間が予め定められた上限時間に達したという条件である。
【0129】
前記再生継続時間は、前記回転速度保持制御および前記負荷保持制御の両方が継続して実行される時間である。前記再生継続時間は、操作レバー511,512への操作が行われたときにリセットされる。
【0130】
前記第4終了条件は、DPF101における前記微粒子の蓄積量の前記指標値が前記基準範囲を上回るという条件である。
【0131】
前記第5終了条件は、前記再生処理に関連する機器のいずれかにおいて異常が検出されたという条件である。
【0132】
例えば、前記再生終了条件は、前記第1終了条件、前記第2終了条件、前記第3終了条件、前記第4終了条件および前記第5終了条件の論理和である。
【0133】
MPU601は、前記再生終了条件が成立すると判定する場合に処理を工程S8へ移行させる。一方、MPU601は、前記再生終了条件が成立しないと判定する場合に処理を工程S9へ移行させる。
【0134】
<工程S8>
工程S8において、MPU601は、工程S4で表示装置9に表示された前記再生制御メッセージを消去する。
【0135】
また、前記第3終了条件、前記第4終了条件または前記第5終了条件が成立していると判定された場合、MPU601は、工程S8において、成立した条件に対応するエラーメッセージを表示装置9に表示させる。
【0136】
また、前記第4終了条件が成立していると判定された場合、MPU601は、手動再生処理の実行を促すメッセージを表示装置9に表示させる。前記手動再生処理は、操作レバー511,512への操作が受け付けられない状態での前記再生処理である。
【0137】
MPU601は、工程S8の処理を実行した後、処理を工程S3へ移行させる。これにより、前記通常制御が実行される。
【0138】
<工程S9>
工程S9において、MPU601は、操作レバー511,512への操作が行われているか、操作レバー511,512への操作が行われてないかに応じて、続いて実行する制御内容を選択する。
【0139】
MPU601は、操作レバー511,512への操作が行われていない場合に、処理を工程S5へ移行させる。これにより、前記回転速度保持制御および前記負荷保持制御が実行される。
【0140】
一方、MPU601は、操作レバー511,512への操作が行われている場合に、処理を工程S10へ移行させる。
【0141】
<工程S10>
工程S10において、MPU601は、工程S5と同様に、前記回転速度保持制御を実行する。
【0142】
MPU601は、工程S10の制御を実行しつつ、処理を工程S11へ移行させる。
【0143】
<工程S11>
工程S11において、MPU601は、工程S3と同様に前記レバー操作対応制御を実行する。なお、前記レバー操作対応制御が実行される場合、前記負荷保持制御は実行されない。
【0144】
但し、MPU601は、前記負荷保持制御から前記レバー操作対応制御への切り替えの際に、まずはアンロード弁42を全開状態に制御する。即ち、MPU601は、アンロード弁42を全開状態に制御した上で、前記負荷保持制御から前記レバー操作対応制御への切り替えを実行する。
【0145】
MPU601は、工程S11の制御を実行しつつ、処理を工程S7へ移行させる。
【0146】
以上に示されるように、MPU601は、クレーン10において前記自動再生モードが選択されている場合に、前記回転速度保持制御を実行しつつ、前記負荷保持制御または前記レバー操作対応制御を実行する(工程S2,工程S5~S11参照)。
【0147】
本実施形態において、MPU601は、エンジン100が動作しているときに前記再生開始条件が成立したときに、前記回転速度保持制御および前記負荷保持制御を開始する(工程S2,S5,S6参照)。
【0148】
また、MPU601は、前記再生開始条件が成立してから前記再生終了条件が成立するまで、操作レバー511,512への操作の有無に関わらず前記回転速度保持制御を実行する(工程S2~S11参照)。
【0149】
MPU601は、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で操作レバー511,512への操作が行われていないときに前記負荷保持制御を実行する(工程S2,工程S5~S6参照)。
【0150】
一方、MPU601は、前記回転速度保持制御が実行されている状況下で操作レバー511,512への操作が行われているときに前記レバー操作対応制御を実行する(工程S9~S11参照)。
【0151】
即ち、MPU601は、工程S6で前記負荷保持制御を開始した後、操作レバー511,512への操作の状態に応じてアンロード弁42およびアクチュエータ制御弁43に対する制御を2種類の制御の一方から他方へ切り替える(工程S5~S7および工程S9~S11参照)。
【0152】
前記2種類の制御は、前記負荷保持制御および前記操作対応制御である。本実施形態において、前記負荷保持制御および前記操作対応制御は、油圧ポンプ41の傾転角の制御も含む。
【0153】
前記油圧システム制御における工程S5,S6の処理は、前記再生処理の一例である。前記油圧システム制御が実行されることにより、前記再生処理が、工程S11におけるアクチュエータ44の動作の合間に実行される。その結果、クレーン10の作業効率が向上する。
【0154】
また、アンロード弁42およびアクチュエータ制御弁43に対する制御が、前記負荷保持制御から前記レバー操作対応制御へ切り替わった場合でも、前記回転速度保持制御が継続される。
【0155】
従って、DPF101に蓄積した前記微粒子が、前記排気ガスの温度が急激に下がることによってDPF101に固着することが回避される。
【0156】
また、前記負荷保持制御から前記レバー操作対応制御への切り替えが行われても、操作レバー511,512への操作の状況により、前記再生処理が継続されることもある。
【0157】
[応用例]
前記油圧システム制御の工程S4において、MPU601は、待機処理および確認処理の一方または両方を実行してもよい。
【0158】
前記待機処理は、予め設定された時間が経過するまで待機する処理である。MPU601は、前記待機処理において、待機時間をカウントダウンするメッセージを表示装置9に表示さる。
【0159】
前記待機処理が実行されることにより、操縦者は、前記再生処理が開始される前に各種の準備を行うことができる。
【0160】
前記確認処理は、操作装置5に対する確認操作に応じて処理を工程S3および工程S5のいずれに移行させるかを選択する処理である。
【0161】
例えば、MPU601は、前記確認処理において、操作装置5に対する許可操作が検出されたときに処理を工程S5へ移行させる。或いは、MPU601は、操作装置5に対する不許可操作が所定時間以内に検出されないときに、処理を工程S5へ移行させてもよい。
【0162】
例えば、前記許可操作および前記不許可操作は、それぞれ操作ボタン52または入力装置53に対する操作である。
【0163】
また、MPU601は、前記確認処理において、前記不許可操作が検出されたときに処理を工程S3へ移行させる。或いは、MPU601は、前記許可操作が所定時間以内に検出されないときに処理を工程S3へ移行させてもよい。
【0164】
前記確認処理が実行されることにより、クレーン10による作業の都合に応じて前記再生処理をキャンセルすることが可能である。
【符号の説明】
【0165】
4 :油圧システム
5 :操作装置
6 :主制御ユニット
7 :ECU
8 :制御装置
10 :クレーン
21 :ブーム
30 :フック
31 :起伏ロープ
32 :吊りロープ
40 :状態検出装置
51 :可変操作装置
511 :起伏操作レバー(第2操作部)
512 :吊り操作レバー(第2操作部)
513 :アクセルグリップ(第1操作部)
601 :MPU(プロセッサー)
図1
図2
図3
図4
図5