(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240814BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240814BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240814BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20240814BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240814BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240814BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240814BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/22
C08K3/36
C08K9/04
H01L23/30 R
H01L23/36 M
H05K1/03 610R
(21)【出願番号】P 2022187236
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2024-01-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
(72)【発明者】
【氏名】奥住 香織
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-176165(JP,A)
【文献】特開2021-167394(JP,A)
【文献】特開2016-089093(JP,A)
【文献】国際公開第2008/015999(WO,A1)
【文献】特開2004-210999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115028896(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B32B,H01L,H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機充填材と、(B)熱硬化性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、
(A)無機充填材が、
アルミナ粒子及びシリカ粒子からなる群より選ばれる粒子を含み、下記式(a-1)に示す基を含有する化合物で表面処理されて
おり、
(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及び硬化剤を含み、
(A)無機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上90質量%以下であり、
硬化したときの硬化物が絶縁性を有する、樹脂組成物。
【化1】
((式(a-1)において
、
R
1及びR
2
は、
同じであっても異なっていてもよい炭化水素基である。)
【請求項2】
(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
更に(C)ポリマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
式(a-1)に示す基を含有する化合物の分子量が、1000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備え、
前記樹脂組成物層が、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える、回路基板。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
【請求項8】
電子部品と、該電子部品上に設けられた硬化物層と、該硬化物層上に設けられた放熱部材と、を備える放熱性デバイスであって、
前記硬化物層が、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、放熱性デバイス。
【請求項9】
式(a-1)に示す基を含有する化合物で表面処理される前の無機充填材と、式(a-1)に示す基を含有する化合物とを接触させて、(A)無機充填材を得る工程と、
(A)無機充填材と(B)熱硬化性樹脂とを混合する工程と、
を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いた樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ及び放熱性デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が備える電子部品は、一般に、作動時に発熱する。この熱を効率よく放熱させるために、無機充填材を含む樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を電子機器に設けることがある。通常、無機充填材が含む無機材料は、樹脂材料に比べて高い熱伝導率を有する。よって、樹脂材料のみで形成された絶縁層に比べて、前記の硬化物で形成された絶縁層は、電子部品が生じた熱の放熱を促進することができる。このような放熱を目的とした樹脂組成物は、例えば特許文献1及び2において検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-189625号公報
【文献】特開2021-28389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂組成物の硬化物の熱伝導率を高めるためには、無機充填材の量を多くすることが求められる。しかし、無機充填材の量が多いほど、一般に、硬化物と銅箔等の導体層との密着性が低下する傾向がある。特に、前記の密着性は、高温高湿環境下での加速環境試験(HAST試験)後において、大きく低下する傾向がある。また、樹脂組成物中の無機充填材の量が多い場合、その樹脂組成物の溶融粘度は高い傾向があり、よって、樹脂組成物の最低溶融粘度も高い傾向がある。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、高い熱伝導率を有し、且つ、HAST試験後に導体層に対して高い密着性を有することができる硬化物を得ることが可能な、低い最低溶融粘度を有する樹脂組成物及びその製造方法;前記の樹脂組成物を含む樹脂シート;前記の硬化物を含む硬化物層を備えた回路基板;前記の硬化物を含む半導体チップパッケージ;並びに、前記の硬化物を含む硬化物層を備えた放熱性デバイス:を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、特定の基を含有する化合物で表面処理された無機充填材と熱硬化性樹脂とを含む樹脂組成物によれば、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の物を含む。
【0007】
[1] (A)無機充填材と、(B)熱硬化性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、
(A)無機充填材が、下記式(a-1)に示す基を含有する化合物で表面処理されている、樹脂組成物。
【化1】
((式(a-1)において、
R
1は、水素原子又は炭化水素基を表し、
R
2は、水素原子又は炭化水素基を表し、かつ、
R
1及びR
2の少なくとも一方は、炭化水素基である。)
[2] (A)無機充填材が、アルミナ粒子及びシリカ粒子からなる群より選ばれる粒子を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及び硬化剤を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 更に(C)ポリマーを含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5] (A)無機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以上95質量%以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6] 式(a-1)に示す基を含有する化合物の分子量が、1000以下である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[7] 支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備え、
前記樹脂組成物層が、[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
[8] [1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える、回路基板。
[9] [1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、半導体チップパッケージ。
[10] 電子部品と、該電子部品上に設けられた硬化物層と、該硬化物層上に設けられた放熱部材と、を備える放熱性デバイスであって、
前記硬化物層が、[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、放熱性デバイス。
[11] 式(a-1)に示す基を含有する化合物で表面処理される前の無機充填材と、式(a-1)に示す基を含有する化合物とを接触させて、(A)無機充填材を得る工程と、
(A)無機充填材と(B)熱硬化性樹脂とを混合する工程と、
を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い熱伝導率を有し、且つ、HAST試験後に導体層に対して高い密着性を有することができる硬化物を得ることが可能な、低い最低溶融粘度を有する樹脂組成物及びその製造方法;前記の樹脂組成物を含む樹脂シート;前記の硬化物を含む硬化物層を備えた回路基板;前記の硬化物を含む半導体チップパッケージ;並びに、前記の硬化物を含む硬化物層を備えた放熱性デバイス:を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0010】
以下の説明において、樹脂組成物中の「樹脂成分」とは、別に断らない限り、樹脂組成物中の不揮発成分のうち無機充填材を除いた成分を表す。
【0011】
[樹脂組成物の概要]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)無機充填材と、(B)熱硬化性樹脂と、を含む。(A)無機充填材は、下記式(a-1)に示す基を含有する化合物で表面処理されている。以下の説明では、「式(a-1)に示す基を含有する化合物」を「ヒンダードフェノール化合物」ということがある。また、ヒンダードフェノール化合物によって表面処理された(A)無機充填材を「(A)特定充填材」ということがある。
【0012】
【0013】
((式(a-1)において、R1は、水素原子又は炭化水素基を表し;R2は、水素原子又は炭化水素基を表し;かつ、R1及びR2の少なくとも一方は、炭化水素基である。また、式(a-1)において、*は、結合手を表す。)
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物は、低い最低溶融粘度を有することができる。また、本実施形態に係る樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、高い熱伝導率を有することができる。さらに、前記の硬化物は、HAST試験後に導体層に対して高い密着性を有することができる。また、前記の硬化物は、通常、HAST試験の前においても、導体層に対して高い密着性を有することができる。
【0015】
特定の理論に拘束されるものでは無いが、本発明者は、本実施形態に係る樹脂組成物によって前記の効果が得られる仕組みを、下記のように推察する。ただし、本発明の技術的範囲は、下記の推察によって制限されるものでは無い。
【0016】
無機充填材は、一般に、粒子状態で樹脂組成物の硬化物中に分散する。高温高湿環境においては、無機充填材と硬化物中の樹脂成分との界面には、水及び酸素が浸入し易いので、当該界面の近傍では樹脂成分の劣化が生じやすい。よって、従来は、HAST試験において樹脂成分の劣化が進行して、硬化物の破壊を伴う剥離が生じやすかった。
【0017】
これに対し、本実施形態に係る(A)特定充填材は、ヒンダードフェノール化合物によって表面処理されているので、当該(A)特定充填材の粒子の表面にヒンダードフェノール化合物を有する。このヒンダードフェノール化合物のフェノール性水酸基の水素原子は、フェノール性水酸基から外れて水素ラジカルとなり易い。例えば、下記の反応式(R1)で示すように、式(a-1)で表される基が脂肪族炭素原子に結合している場合、当該脂肪族炭素原子がフェノール性水酸基に向けて電子を押しているので、フェノール性水酸基の水素原子が外れて水素ラジカルとなり易い。そうすると、樹脂成分が劣化してラジカル(以下「樹脂ラジカル」ということがある。反応式(R1)では例として「ROO・」で示す。)を生じた場合、その樹脂ラジカルとフェノール性水酸基から外れた水素ラジカルとが反応して樹脂ラジカルの活性を失わせるので、樹脂成分の劣化の進行を抑制することができる(ステップ(1))。
【0018】
【0019】
また、水素原子が外れたヒンダードフェノール化合物は、その後、安定化するように分子構造を変化させる(ステップ(2)及び(3))。具体的には、フェノール性水酸基から水素原子が外れたことによって残った酸素ラジカルが二重結合によってベンゼン環に結合するように、構造の変化が進行する。この変化の結果、酸素ラジカルにあった不対電子の位置は、当該酸素ラジカルのパラ位に移動する(ステップ(2))。そして、このパラ位にある炭素原子がラジカルとなり、樹脂ラジカルと反応して、構造の安定化が達成される(ステップ(3))。このとき、酸素ラジカルは、式(a-1)のR1及びR2が表す炭化水素基によって保護されるので、他の分子への転移は抑制される。よって、前記の構造の安定化を十分に進行させることができるので、樹脂成分の劣化の進行を効果的に抑制することができる。
【0020】
前記のように、ヒンダードフェノール化合物によれば、樹脂成分の劣化を効果的に抑制できる。よって、(A)特定充填材の量が多くなることによって、(A)特定充填材と樹脂成分との界面が広くなった場合でも、HAST試験による樹脂成分の劣化を抑制することが可能である。したがって、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、HAST試験後に導体層に対して高い密着性を有することができる。
【0021】
また、ヒンダードフェノール化合物は、(A)特定充填材と樹脂成分との馴染みを高めることができる。具体的には、(A)特定充填材の粒子の表面にあるヒンダードフェノール化合物の作用により、(A)特定充填材の粒子と樹脂成分との親和性を高めることができる。よって、(A)特定充填材の粒子の分散性を高めたり、(A)特定充填材の粒子と樹脂組成物中の樹脂成分との間の摩擦を低減したりできるので、(A)特定充填材の量が多い場合であっても、樹脂組成物の最低溶融粘度を低くできる。
【0022】
そして、前記のように、HAST試験後の硬化物の導体層に対する密着性が高く、かつ、樹脂組成物の最低溶融粘度が低い条件で、(A)特定充填材の量を多くすることが可能であるので、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導率を有することができる。
【0023】
[(A)特定充填材(ヒンダードフェノール化合物で表面処理された無機充填材)]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)特定充填材(即ち、式(a-1)に示す基を含有するヒンダードフェノール化合物で表面処理された無機充填材)を含む。(A)特定充填材は、表面処理前の無機充填材としての無機材料の粒子にヒンダードフェノール化合物で表面処理して得られる充填材であり、通常は、樹脂組成物中に粒子の状態で含まれる。
【0024】
(A)特定充填材に含まれる無機材料としては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素、窒化ホウ素、などが挙げられる。無機材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アルミナ及びシリカが好ましい。よって、(A)特定充填材は、無機材料の粒子として、アルミナ粒子及びシリカ粒子からなる群より選ばれる1以上の粒子を含むことが好ましく、アルミナ粒子及びシリカ粒子からなる群より選ばれる1以上の粒子のみを含むことが更に好ましい。シリカ粒子には、例えば、無定形シリカ粒子、溶融シリカ粒子、結晶シリカ粒子、合成シリカ粒子、中空シリカ粒子等があるが、いずれを用いてもよい。無機材料の粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
一例において、前記の無機材料は、高い熱伝導率を有することが好ましい。無機材料の熱伝導率は、好ましくは20W/m・K以上、より好ましくは30W/m・K以上、さらに好ましくは50W/m・K以上、100W/m・K以上である。上限は、例えば、1000W/m・K以下でありうる。
【0026】
無機材料の粒子としては、市販品を用いてもよい。アルミナ粒子の市販品としては、例えば、デンカ社製「DAW-0525」、「ASFP-20」、「ASFP-03S」などが挙げられる。また、シリカ粒子の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」、「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-S」などが挙げられる。
【0027】
無機材料の粒子の平均粒径の範囲は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。無機材料の粒子の平均粒径が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0028】
無機材料の粒子及び(A)特定充填材等の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、粒子100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で粒子の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0029】
無機材料の粒子の比表面積の範囲は、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.5m2/g以上、さらに好ましくは1m2/g以上であり、好ましくは30m2/g以下、より好ましくは25m2/g以下、さらに好ましくは20m2/g以下である。無機材料の粒子の比表面積が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。無機材料の粒子及び(A)特定充填材等の粒子の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
【0030】
ヒンダードフェノール化合物は、式(a-1)に示す基を含有する。
【化4】
【0031】
式(a-1)において、R1は、水素原子又は炭化水素基を表す。R1が表す炭化水素基は、1価の炭化水素基である。炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
【0032】
R1が表す炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基でもよく、不飽和脂肪族炭化水素基でもよい。さらに、脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐状の鎖状炭化水素基であってもよく、環状の炭化水素基(即ち、脂環式炭化水素基)でもよく、鎖状炭化水素基と環状の炭化水素基との組み合わせであってもよい。中でも、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0033】
R1が表す炭化水素基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;などが挙げられる。ヒンダードフェノール化合物が1分子中に式(a-1)に示す基を2個以上含有する場合、R1は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0034】
式(a-1)において、R2は、水素原子又は炭化水素基を表す。R2の範囲は、R1の範囲と同じでありうる。また、R1とR2とは、同じでもよく、異なっていてもよい。ただし、式(a-1)に示す基において、R1及びR2の少なくとも一方が炭化水素基である。さらには、R1及びR2の両方が炭化水素基であることが好ましい。
【0035】
ヒンダードフェノール化合物は、1分子中に、式(a-1)に示す基を1個のみ含有していてもよく、2個以上含有していてもよい。ヒンダードフェノール化合物の1分子が式(a-1)に示す基を2個以上含有する場合、式(a-1)に示す基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0036】
ヒンダードフェノール化合物は、式(a-1)に示す基に組み合わせて、脂肪族炭化水素基を含むことが好ましい。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;メチレン基、エチレン基等のアルキレン基が挙げられる。そして、式(a-1)に示す基は、前記の脂肪族炭化水素基に結合していることが好ましい。
【0037】
ヒンダードフェノール化合物の分子量は、好ましくは108以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは900以下、更に好ましくは800以下である。ヒンダードフェノール化合物の分子量がこのように小さい範囲にある場合、ヒンダードフェノール化合物に占める式(a-1)に示す基の割合を大きくして、HAST試験後の硬化物の密着性を効果的に向上させることができる。
【0038】
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。「tBu」は、別に断らない限り、tert-ブチル基を表す。
【0039】
【0040】
ヒンダードフェノール化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
無機材料の粒子100質量部は、0.1質量部~5質量部のヒンダードフェノール化合物で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部のヒンダードフェノール化合物で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量部~2質量部のヒンダードフェノール化合物で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0042】
(A)特定充填材は、ヒンダードフェノール化合物に組み合わせて、ヒンダードフェノール化合物以外の任意の表面処理剤によって表面処理がされていてもよい。任意の表面処理剤による表面処理は、ヒンダードフェノール化合物による表面処理の前に行ってもよく、ヒンダードフェノール化合物による表面処理と同時に行ってもよく、ヒンダードフェノール化合物による表面処理の後に行ってもよい。
【0043】
任意の表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM-403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE-903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM-103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。任意の表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0044】
無機材料の粒子100質量部は、0.1質量部~5質量部の任意の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部の任意の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量部~2質量部の任意の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0045】
ヒンダードフェノール化合物及び任意の表面処理剤といった表面処理剤による表面処理の程度は、(A)特定充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(A)特定充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましく、また、1.0mg/m2以下が好ましく、0.9mg/m2以下がより好ましく、0.8mg/m2以下がさらに好ましい。
【0046】
(A)特定充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(A)特定充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを(A)特定充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて(A)特定充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0047】
(A)特定充填材の平均粒径の範囲は、好ましくは、表面処理前の無機充填材としての無機材料の粒子の平均粒径の前記範囲と同じである。(A)特定充填材の平均粒径がこのような範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0048】
(A)特定充填材の比表面積の範囲は、好ましくは、表面処理前の無機充填材としての無機材料の粒子の比表面積の前記範囲と同じである。(A)特定充填材の比表面積がこのような範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0049】
(A)特定充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上又は80質量%以上であってもよく、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。(A)特定充填材の量が前記の範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0050】
[(B)熱硬化性樹脂]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)熱硬化性樹脂を含む。(B)熱硬化性樹脂は、熱によって反応して結合を生じ、樹脂組成物を硬化させることができる。よって、(A)特定充填材及び(B)熱硬化性樹脂を組み合わせて含む樹脂組成物は、硬化して、硬化物を形成することができる。
【0051】
(B)熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、活性エステル系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、酸無水物系樹脂、アミン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、チオール系樹脂などが挙げられる。(B)熱硬化性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明の効果を顕著に得る観点から、(B)熱硬化性樹脂は、(B-1)エポキシ樹脂と、その(B-1)エポキシ樹脂と反応して結合しうる樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(B-1)エポキシ樹脂と反応して結合しうる樹脂を、以下、適宜、「(B-2)硬化剤」と呼ぶことがある。(B)熱硬化性樹脂は、(B-1)エポキシ樹脂と(B-2)硬化剤との組み合わせのみを含んでいてもよい。
【0053】
(B-1)エポキシ樹脂としては、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物を用いうる。(B-1)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、脂肪族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(B-1)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(B-1)エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香族構造を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。芳香族構造とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、多環芳香族及び芳香族複素環をも含む。芳香族構造を含有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビシキレノール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、芳香族構造を有する線状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族構造を有するブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、芳香族構造を有する脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、芳香族構造を有するスピロ環含有エポキシ樹脂、芳香族構造を有するシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するトリメチロール型エポキシ樹脂、芳香族構造を有するテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】
(B-1)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B-1)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0056】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。(B-1)エポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0057】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂肪族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びイソシアヌル酸型エポキシ樹脂が更に好ましい。
【0058】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);日鉄ケミカル&マテリアル製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-321L」(脂肪族トリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日産化学社製「TEPIC-FL」(イソシアヌル酸型エポキシ樹脂);等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、ビキシレノール型エポキシ樹脂及びビフェニル型エポキシ樹脂が更に好ましい。
【0060】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(B-1)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:1~1:10、特に好ましくは7:1~1:7である。
【0062】
(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~3,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは110g/eq.~1,000g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0063】
(B-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0064】
樹脂組成物中の(B-1)エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。(B-1)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0065】
樹脂組成物中の(B-1)エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。(B-1)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0066】
樹脂組成物中の(B-1)エポキシ樹脂の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。(B-1)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0067】
(B-2)硬化剤としては、例えば、活性エステル系樹脂、フェノール系樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボジイミド系樹脂、酸無水物系樹脂、アミン系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、チオール系樹脂などが挙げられる。(B-2)硬化剤の中でも、フェノール系樹脂及び活性エステル系樹脂が好ましい。(B-2)硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
活性エステル系樹脂としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いうる。中でも、活性エステル系樹脂としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0069】
活性エステル系樹脂の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル系樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル系樹脂が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0070】
活性エステル系樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル系樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル系樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル系樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0071】
樹脂組成物中の活性エステル系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。活性エステル系樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0072】
樹脂組成物中の活性エステル系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。活性エステル系樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0073】
樹脂組成物中の活性エステル系樹脂の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。活性エステル系樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0074】
フェノール系樹脂としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する化合物を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系樹脂が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系樹脂が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系樹脂がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系樹脂が好ましい。
【0075】
フェノール系樹脂の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0076】
樹脂組成物中のフェノール系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。フェノール系樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0077】
樹脂組成物中のフェノール系樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。フェノール系樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0078】
樹脂組成物中のフェノール系樹脂の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。フェノール系樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0079】
シアネートエステル系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のシアネート基を有する化合物を用いうる。シアネートエステル系樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系樹脂の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル系樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル系樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0080】
カルボジイミド系樹脂としては、1分子中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド基(-N=C=N-)を有する化合物を用いうる。カルボジイミド系樹脂の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系樹脂の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-05」「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0081】
酸無水物系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上の酸無水物基を有する化合物を用いうる。酸無水物系樹脂の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系樹脂の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0082】
アミン系樹脂としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する化合物を用いうる。アミン系樹脂としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系樹脂は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系樹脂の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系樹脂は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0083】
ベンゾオキサジン系樹脂の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」、「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」;昭和高分子社製の「HFB2006M」等が挙げられる。
【0084】
チオール系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0085】
(B-2)硬化剤の活性基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、活性基1当量あたりの樹脂の質量を表す。
【0086】
一例において、(B-2)硬化剤の重量平均分子量(Mw)の範囲は、(B-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲と同じであってもよい。
【0087】
(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B-2)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。(B-2)硬化剤の活性基とは、活性水酸基等であり、(B-2)硬化剤の種類によって異なる。また、(B-1)エポキシ樹脂のエポキシ基数とは、各エポキシ樹脂の質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。さらに、(B-2)硬化剤の活性基数とは、各硬化剤の質量を活性基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0088】
樹脂組成物中の(B-2)硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。(B-2)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0089】
樹脂組成物中の(B-2)硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。(B-2)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0090】
樹脂組成物中の(B-2)硬化剤の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。(B-2)硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0091】
一例において、(B)熱硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲は、(B-1)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)の範囲と同じであってもよい。
【0092】
樹脂組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。(B)熱硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0093】
樹脂組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。(B)熱硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0094】
樹脂組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。(B)熱硬化性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0095】
[(C)ポリマー]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(C)ポリマーを含んでいてもよい。(C)成分としての(C)ポリマーには、上述した上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。また、(C)ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(C)ポリマーは、通常、大きい分子量を有する。具体的には、(C)ポリマーの数平均分子量Mnの範囲は、好ましくは2000より大きく、より好ましくは3000より大きく、更に好ましくは5000より大きく、好ましくは100000以下、より好ましくは80000以下、更に好ましくは50000以下である。また、(C)ポリマーの重量平均分子量Mwの範囲は、好ましくは5000より大きく、より好ましくは8000以上、さらに好ましくは10000以上、特に好ましくは20000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下、特に好ましくは50000以下である。(C)ポリマーは、通常、上記範囲の数平均分子量Mn及び上記範囲の重量平均分子量Mの少なくとも一方を有し、好ましくは上記範囲の数平均分子量Mn及び上記範囲の重量平均分子量Mの両方を有する。(C)ポリマーの数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算の値で測定できる。
【0097】
(C)ポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリブタジエン樹脂及びポリイミド樹脂が好ましい。
【0098】
ポリブタジエン樹脂は、ポリブタジエン構造を含有する樹脂を表す。ポリブタジエン構造は、ブタジエンを重合して形成される構造だけでなく、当該構造に水素添加して形成される構造も含む。また、ブタジエン構造は、その一部のみが水素添加されていてもよく、その全てが水素添加されていてもよい。さらに、ポリブタジエン構造は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
【0099】
ポリブタジエン樹脂の好ましい例としては、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。中でも、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂が更に好ましい。ここで、「水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂」とは、ポリブタジエン骨格の少なくとも一部が水素化された樹脂をいい、ポリブタジエン骨格が完全に水素化された樹脂、及び、ポリブタジエン骨格の一部が水素化された樹脂の両方を包含する。水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられる。また、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂としては、ポリブタジエン構造を有し、かつフェノール性水酸基を有する樹脂等が挙げられる。
【0100】
ポリブタジエン樹脂の具体例としては、クレイバレー社製の「Ricon 130MA8」、「Ricon 130MA13」、「Ricon 130MA20」、「Ricon 131MA5」、「Ricon 131MA10」、「Ricon 131MA17」、「Ricon 131MA20」、「Ricon 184MA6」(酸無水物基含有ポリブタジエン)、日本曹達社製の「GQ-1000」(水酸基、カルボキシル基導入ポリブタジエン)、「G-1000」、「G-2000」、「G-3000」(両末端水酸基ポリブタジエン)、「GI-1000」、「GI-2000」、「GI-3000」(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)、ナガセケムテックス社製の「FCA-061L」(水素化ポリブタジエン骨格エポキシ樹脂)等が挙げられる。また、ポリブタジエン樹脂の具体例としては、ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を原料とする線状ポリイミド(特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号に記載のポリイミド)が挙げられる。該ポリイミド樹脂のブタジエン構造の含有率は、好ましくは60質量%~95質量%、より好ましくは75質量%~85質量%である。該ポリイミド樹脂の詳細は、特開2006-37083号公報、国際公開第2008/153208号の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
ポリイミド樹脂は、イミド結合を含有する繰り返し単位を含む樹脂を表す。通常、ポリイミド樹脂は、ジアミン化合物と酸無水物とを反応(イミド化反応)させて得られる構造を有する繰り返し単位を含む。
【0102】
ジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン化合物、及び芳香族ジアミン化合物を挙げることができ、中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましい。芳香族ジアミン化合物としては、例えば、フェニレンジアミン化合物、ナフタレンジアミン化合物、ジアニリン化合物等が挙げられ、中でも、ジアニリン化合物が好ましい。
【0103】
ジアニリン化合物とは、分子内に2個のアニリン構造を含む化合物を表す。アニリン構造中のベンゼン環は、それぞれ、任意で1~3個の置換基を有していてもよい。ジアニリン化合物における2個のアニリン構造は、直接結合していてもよく、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を介して結合していてもよい。
【0104】
ジアニリン化合物における「リンカー構造」の具体例としては、-NHCO-、-CONH-、-OCO-、-COO-、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-CH=CH-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-NH-、-Ph-、-Ph-Ph-、-C(CH3)2-Ph-C(CH3)2-、-O-Ph-O-、-O-Ph-Ph-O-、-O-Ph-SO2-Ph-O-、-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-、-Ph-CO-O-Ph-、-C(CH3)2-Ph-C(CH3)2-、下記式(c-1)で表される基、(c-2)で表される基、及び、これらの組み合わせからなる基、が挙げられる。本明細書中、「Ph」は、別に断らない限り、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基または1,2-フェニレン基を示す。式(c-1)及び(c-2)において、「*」は結合手を表す。
【0105】
【0106】
ジアニリン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジトリフルオロメチル-1,1’-ビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,3-ジイソプロピルベンゼン、α,α-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,4-ジイソプロピルベンゼン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、9,9’-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン等が挙げられる。ジアミン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
酸無水物としては、通常、酸二無水物を用いることができ、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、アントラセンテトラカルボン酸二無水物、ジフタル酸二無水物等が挙げられ、ジフタル酸二無水物が好ましい。
【0108】
ジフタル酸二無水物とは、分子内に2個の無水フタル酸構造を含む化合物を表す。無水フタル酸構造中のベンゼン環は、それぞれ、任意で1~3個の置換基を有していてもよい。ジフタル酸二無水物における2個の無水フタル酸構造は、直接結合していてもよく、炭素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群より選ばれる1~100個の骨格原子を有するリンカー構造を介して結合していてもよい。
【0109】
ジフタル酸二無水物における「リンカー構造」の例としては、-[Rc-Ph]m-Rc-[Ph-Rc]n-で表される2価の基が挙げられる。この式において、Rcは、それぞれ独立して、単結合、-(置換又は無置換のアルキレン基)-、-O-、-S-、-CO-、-SO2-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し;m及びnは、それぞれ独立して、0~2の整数(好ましくは、0又は1)を示す。リンカー構造の具体例としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-O-、-CO-、-SO2-、-Ph-、-O-Ph-O-、-O-Ph-SO2-Ph-O-、-O-Ph-C(CH3)2-Ph-O-等が挙げられる。
【0110】
ジフタル酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物等が挙げられる。酸無水物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
ポリイミド樹脂は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、ジアミン化合物、酸無水物及び溶剤の混合物を加熱して反応させることを含む方法により、ポリイミド樹脂を製造してもよい。また、ポリイミド樹脂として市販品を用いてもよい。市販のポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0112】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
【0113】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0114】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0115】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0116】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0117】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。
【0118】
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
【0119】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0120】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0121】
(C)ポリマーは、(B)熱硬化性樹脂と反応できる官能基を有していてもよい。(B)熱硬化性樹脂と反応できる官能基には、加熱によって現れる官能基が包含される。(B)熱硬化性樹脂と反応できる官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基からなる群から選択される1種以上の官能基でありうる。中でも、当該官能基としては、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基、エポキシ基、イソシアネート基及びウレタン基が好ましく、ヒドロキシ基、酸無水物基、フェノール性水酸基及びエポキシ基がより好ましく、フェノール性水酸基が特に好ましい。官能基を含む(C)ポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、通常、(B)熱硬化性樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)よりそれぞれ大きい。
【0122】
(C)ポリマーは、柔軟性を有するエラストマーであってもよい。エラストマーは、ゴム弾性を有する樹脂、または、他の成分と重合してゴム弾性を示す樹脂でありうる。ゴム弾性を有する樹脂は、日本工業規格(JIS K7161)に準拠し、温度25℃、湿度40%RHにて、引っ張り試験を行った場合に、1GPa以下の弾性率を示す樹脂を表す。
【0123】
(C)ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂及び25℃以下で液状である樹脂からなる群より選択される1以上であってもよい。ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは15℃以下であり、好ましくは-15℃以上でありうる。また、25℃以下で液状である樹脂は、好ましくは20℃以下で液状である樹脂であり、より好ましくは15℃以下で液状である樹脂である。ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)により、5℃/分の昇温速度で測定しうる。
【0124】
(C)ポリマーは、当該(C)ポリマー以外の樹脂成分と相溶して樹脂組成物及びその硬化物に含まれていてもよい。また、(C)ポリマーは、当該(C)ポリマー以外の樹脂成分と相溶せず粒子として樹脂組成物及びその硬化物に含まれていてもよい。中でも、(C)ポリマーは、(C)ポリマー以外の樹脂成分と相溶して樹脂組成物及びその硬化物に含まれることが好ましい。
【0125】
樹脂組成物中の(C)ポリマーの量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。(C)ポリマーの量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0126】
樹脂組成物中の(C)ポリマーの量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。(C)ポリマーの量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0127】
樹脂組成物中の(C)ポリマーの量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。(C)ポリマーの量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0128】
樹脂組成物中の(C)ポリマーの量の範囲は、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。(C)ポリマーの量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の最低溶融粘度の低減、硬化物の熱伝導率の向上、及び、HAST試験後の硬化物の密着性の向上といった利点を効果的に得ることができる。
【0129】
[(D)硬化促進剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。(D)成分としての(D)硬化促進剤には、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)硬化促進剤は、(B)熱硬化性樹脂の反応に触媒として作用して樹脂組成物の硬化を促進させることができる。
【0130】
(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。(D)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0132】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0133】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0134】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
【0135】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0136】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
【0137】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0138】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0139】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0140】
樹脂組成物中の(D)硬化促進剤の量の範囲は、(B)熱硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0141】
[(E)任意の無機充填材]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(A)特定充填材以外の(E)任意の無機充填材を含んでいてもよい。(E)成分としての(E)任意の無機充填材には、上述した(A)特定充填材に該当するものは含めない。(E)任意の無機充填材は、ヒンダードフェノール化合物で表面処理されていない無機充填材を表す。
【0142】
(E)任意の無機充填材としては、ヒンダードフェノール化合物で表面処理されていないこと以外は(A)特定充填材と同じ無機充填材を用いうる。(E)任意の無機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
樹脂組成物中の(E)任意の無機充填材の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、0質量%でもよく、0質量%より多くてもよく、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0144】
樹脂組成物中の(E)任意の無機充填材の量の範囲は、(A)特定充填材100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは70質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。
【0145】
[(F)任意の添加剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(F)任意の添加剤を含んでいてもよい。(F)成分としての(F)任意の添加剤には、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)任意の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤、が挙げられる。(F)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
[(G)溶剤]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(F)成分といった不揮発成分に組み合わせて、更に揮発性成分として(G)溶剤を含みうる。(G)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(G)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
(G)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
【0148】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上述した成分を混合することによって、製造することができる。通常は、樹脂組成物の製造方法は、ヒンダードフェノール化合物で表面処理される前の無機充填材と、ヒンダードフェノール化合物とを接触させて、(A)特定充填材を得る工程と;(A)特定充填材と(B)熱硬化性樹脂とを混合する工程と、を含む。ヒンダードフェノール化合物で表面処理される前の無機充填材を、以下「処理前充填材」と呼ぶことがある。
【0149】
処理前充填材としては、任意の表面処理剤で表面処理されていない無機材料の粒子を用いてもよい。また、処理前充填材としては、任意の表面処理剤で表面処理された無機材料の粒子を用いてもよい。処理前充填材の表面処理は、処理前充填材とヒンダードフェノール化合物とを接触させることによって行いうる。例えば、処理前充填材を攪拌しながら当該処理前充填材にヒンダードフェノール化合物を供給することにより、処理前充填材とヒンダードフェノール化合物とを接触させて、表面処理を行ってもよい。均一な表面処理を実施する観点から、ヒンダードフェノール化合物は、噴霧によって供給することが好ましい。
【0150】
処理前充填材にヒンダードフェノール化合物で表面処理して(A)特定充填材を得た後で、その(A)特定充填材に更に任意の表面処理剤で表面処理を行ってもよい。任意の表面処理剤による表面処理は、例えば、ヒンダードフェノール化合物による表面処理と同じ方法によって行いうる。
【0151】
(A)特定充填材を得た後で、(A)特定充填材及び(B)熱硬化性樹脂、並びに、必要に応じて任意の成分を混合して、樹脂組成物を得ることができる。これらの成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
【0152】
[樹脂組成物の特性]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、低い最低溶融粘度を有することができる。よって、例えば表面に配線を備える基材上に樹脂組成物層を形成する場合に、基材表面の配線を樹脂組成物層に良好に埋め込むことができる。樹脂組成物の具体的な最低溶融粘度の範囲は、好ましくは7000poise未満、より好ましくは6000poise未満、更に好ましくは5000poise未満、特に好ましくは4000poise未満である。下限は、例えば、1000poise以上、2000poise以上などでありうる。
【0153】
樹脂組成物の最低溶融粘度は、動的粘弾性測定装置を使用して、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/min、測定温度間隔2.5℃、振動周波数1Hzの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、測定された溶融粘度の最低値を最低溶融粘度として得ることができる。具体的な測定方法は、実施例で説明する方法を採用しうる。
【0154】
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱によって硬化できる。よって、樹脂組成物を熱硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物を得ることができる。通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(G)溶剤等の揮発性成分は、熱硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(F)成分といった不揮発成分は、熱硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
【0155】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、高い熱伝導率を有することができる。硬化物の具体的な熱伝導率の範囲は、好ましくは1.0W/m・K以上、より好ましくは1.5W/m・K以上、更に好ましくは2.0W/m・K以上である。上限は、特に制限はなく、例えば10W/m・K以下でありうる。
【0156】
硬化物の熱伝導率λ(W/m・K)は、硬化物の熱拡散率α(m2/s)と、比熱容量Cp(J/kg・K)と、密度ρ(kg/m3)とを用いて、下記式(M1)から求めることができる。比熱容量Cpは、-40℃から80℃の温度範囲において、昇温速度10℃/分の条件で測定した25℃での値を採用しうる。
λ=α×Cp×ρ (M1)
試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を180℃、90分の硬化条件で熱硬化して硬化物を得て、硬化物の熱伝導率λを測定できる。具体的な測定方法は、実施例で説明する方法を採用しうる。
【0157】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、HAST試験後に導体層に対して高い密着性を有することができる。一例においては、導体層としての銅箔に密着した硬化物は、130℃、85%RHの高温高湿条件で100時間の加速環境試験(HAST試験)を実施した後において、銅箔に対し高い密着性を発揮できる。前記の密着性は、硬化物から銅箔を引き剥がすために要する荷重[kgf/cm]としての銅箔引き剥がし強度によって評価できる。具体的なHAST試験後の銅箔引き剥がし強度の範囲は、好ましくは0.15kgf/cm以上、より好ましくは0.20kgf/cm以上、更に好ましくは0.25kgf/cm以上である。
【0158】
銅箔引き剥がし強度は、銅箔に幅10mm、長さ100mmの部分を囲む切込みを形成し、この部分の一端をつかみ具で掴み、25℃において50mm/分の速度で垂直方向に引っ張って剥がすときの荷重として測定できる。測定は、日本工業規格JIS C6481に準拠して行いうる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、樹脂組成物によって樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層と銅箔とをラミネートし、200℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して硬化物及び銅箔を備える評価基板を得て、銅箔引き剥がし強度を測定できる。具体的な測定方法は、実施例で説明する方法を採用しうる。
【0159】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、HAST試験後だけでなく、HAST試験前においても、導体層に対して高い密着性を有することができる。一例においては、HAST試験前の銅箔引き剥がし強度の範囲は、好ましくは0.20kgf/cm以上、より好ましくは0.30kgf/cm以上、更に好ましくは0.40kgf/cm以上である。HAST試験前の銅箔引き剥がし強度は、HAST試験後の銅箔引き剥がし強度と同じ方法によって測定できる。
【0160】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、HAST試験による導体層に対する密着性の低下の程度を小さくできる。一例においては、導体層としての銅箔に密着した硬化物は、130℃、85%RHの高温高湿条件での100時間の加速環境試験(HAST試験)による銅箔引き剥がし強度の低下率r(%)を小さくできる。具体的な低下率rの範囲は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下である。この低下率r(%)は、HAST試験前の銅箔引き剥がし強度P0と、HAST試験後の銅箔引き剥がし強度P1とを用いて、下記の式(M2)から求めることができる。
r(%)={(P0-P1)/P0}×100 (M2)
【0161】
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、更に、通常は電気絶縁性を有する。したがって、これらの特性を活用して、本実施形態に係る樹脂組成物及びその硬化物は、電子機器及び電子部品に設けて用いることができる。例えば、樹脂組成物は、ヒートシンクと電子部品とを接着するための樹脂組成物(ヒートシンクの接着用樹脂組成物)、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用樹脂組成物)、回路基板(プリント配線板を含む)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、樹脂組成物は、その上にメッキにより導体層が形成される層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(メッキにより導体層を形成する回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができる。さらに、樹脂組成物は、半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用樹脂組成物)、半導体チップに配線を形成するための樹脂組成物(半導体チップ配線形成用樹脂組成物)としても好適に使用することができる。
【0162】
[樹脂シート]
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。樹脂組成物層の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。樹脂組成物層の厚みの下限は、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上等でありうる。
【0163】
支持体としては、例えば、プラスチック材料のフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料のフィルム、金属箔が好ましい。
【0164】
支持体としてプラスチック材料のフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0165】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0166】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0167】
支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、ウレタン系離型剤、及びシリコーン系離型剤からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、シリコーン系離型剤又はアルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「PET501010」、「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0168】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、好ましくは75μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0169】
樹脂シートは、必要に応じて任意の部材を備えていてもよく、例えば、樹脂組成物層を保護する保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムは、通常、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを備える場合、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制できる。
【0170】
樹脂シートは、例えば、支持体上に樹脂組成物層を形成することを含む方法によって、製造できる。樹脂組成物層は、例えば、樹脂組成物を用意し、その樹脂組成物を支持体上に塗布することを含む方法によって、形成できる。必要に応じて樹脂組成物に溶剤を混合してワニス状の樹脂組成物を用意し、このワニス状の樹脂組成物を支持体上に塗布してもよい。有機溶剤を用いる場合、必要に応じて塗布後に乾燥を行ってもよい。
【0171】
樹脂組成物の塗布は、ダイコーター等の塗布装置を用いて行いうる。また、乾燥は、例えば、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施しうる。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の量が好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。溶剤の沸点によっても異なりうるが、乾燥は、例えば、50℃~150℃で3分間~10分間の条件で行いうる。
【0172】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0173】
[回路基板]
本発明の一実施形態に係る回路基板は、上述した樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える。硬化物層は、好ましくは、上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(I)~(II)を含む製造方法によって製造できる。
(I)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(II)樹脂組成物層を硬化して、硬化物層を形成する工程。
【0174】
工程(I)では、基材としては、通常、内層基板を用いる。「内層基板」とは、回路基板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該内層基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。片面または両面に導体層(回路)を有する内層基板は「内層回路基板」ということがある。また回路基板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。回路基板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0175】
内層基板が備える導体層がパターン加工されている場合、最低溶融粘度が小さいという樹脂組成物の特性を活用する観点から、その導体層の最小ライン/スペース比は、小さいことが好ましい。「ライン」とは、導体層の配線幅を表し、「スペース」とは配線間の間隔幅を表す。最小ライン/スペース比の範囲は、好ましくは100/100μm以下(即ち、ピッチが200μm以下)、より好ましくは50/50μm以下、更に好ましくは30/30μm以下、更に好ましくは20/20μm以下、更に好ましくは10/10μm以下である。下限は、例えば、0.5/0.5μm以上でありうる。ピッチは、導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。導体層の最小ピッチは、例えば、100μm以下、60μm以下、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0176】
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板と樹脂シートとを積層することによって行いうる。内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0177】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法に係る積層条件は、例えば、下記の通りでありうる。加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
【0178】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0179】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0180】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0181】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を形成する。この硬化物層は、通常、絶縁層として機能できる。樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の具体的な硬化条件は、樹脂組成物の組成によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
【0182】
回路基板の製造方法は、樹脂組成物層の熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0183】
回路基板を製造するに際しては、(III)硬化物層に穴あけする工程、(IV)硬化物層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、回路基板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の硬化物層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板等の多層構造を有する回路基板を製造してもよい。
【0184】
工程(III)は、硬化物層に穴あけする工程であり、これにより硬化物層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、硬化物層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、回路基板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0185】
工程(IV)は、硬化物層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。よって、前記の粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、回路基板の硬化物層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して硬化物層を粗化処理することができる。
【0186】
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に硬化物層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。硬化物層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に硬化物層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0187】
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に硬化物層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0188】
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0189】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、硬化物層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0190】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、硬化物層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0191】
導体層の厚さは、所望の回路基板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0192】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により硬化物層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0193】
まず、硬化物層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0194】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して硬化物層を形成する。その後、硬化物層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0195】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0196】
[半導体チップパッケージ]
本発明の一実施形態に係る半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、半導体チップパッケージは、樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を備える。硬化物層は、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。硬化物層は、通常、絶縁層として機能できる。この半導体チップパッケージとしては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0197】
第一の例に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0198】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0199】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間の範囲)である。
【0200】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0201】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよい。
【0202】
第二の例に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと硬化物層とを含む。第二の例に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-out型PLP等が挙げられる。第二の例に係る半導体チップパッケージは、例えば、半導体チップ、半導体チップの周囲を覆うように形成された封止層、半導体チップの封止層とは反対側の面に設けられた絶縁層としての再配線形成層、再配線形成層上に形成された導体層としての再配線層、ソルダーレジスト層、及び、バンプを備えうる。
【0203】
このような半導体チップパッケージは、例えば、
(i)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(ii)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(iii)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(iv)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(v)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に再配線形成層を形成する工程、並びに、
(vi)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
を含む製造方法によって製造できる。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(vii)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、及び、
(viii)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0204】
<工程(i)>
工程(i)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における内層基板と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0205】
基材としては、例えば、シリコンウエハ;ガラスウエハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0206】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0207】
<工程(ii)>
工程(ii)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0208】
<工程(iii)>
工程(iii)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、例えば、感光性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物によって形成しうる。この封止層を、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層によって形成してもよい。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成できる。
【0209】
半導体チップ上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板の代わりに半導体チップを用いること以外は、前記の回路基板の製造方法で説明した内層基板上への樹脂組成物層の形成方法と同じ方法で行いうる。また、樹脂組成物層の硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の硬化条件と同じ条件を採用してもよい。樹脂組成物層を熱硬化させる場合には、その熱硬化の前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。
【0210】
<工程(iv)>
工程(iv)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0211】
前記のように基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離すると、封止層の面が露出する。半導体チップパッケージの製造方法は、この露出した封止層の面を研磨することを含んでいてもよい。研磨により、封止層の表面の平滑性を向上させることができる。
【0212】
<工程(v)>
工程(v)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。通常、この再配線形成層は、半導体チップ及び封止層上に形成される。再配線形成層は、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。また、再配線形成層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層によって形成してもよい。通常、再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを接続するために、再配線形成層にビアホールを形成する。
【0213】
<工程(vi)>
工程(vi)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における硬化物層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(v)及び工程(vi)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0214】
<工程(vii)>
工程(vii)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物が好ましい。ソルダーレジスト層は、上述した実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によって形成してもよい。
【0215】
工程(vii)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。
【0216】
<工程(viii)>
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(i)~(vii)以外に、工程(viii)を含んでいてもよい。工程(viii)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0217】
上述した第二の例に係る半導体チップパッケージの製造方法は、最初に半導体チップを設け、その端子電極面に再配線層を形成する工法、すなわちチップ1st(Chip-1st)工法で製造する方法の一例である。半導体チップパッケージは、斯かるチップ1st工法のほか、最初に再配線層を設け、該再配線層に、その端子電極面が再配線層と電気接続し得るような状態にて、半導体チップを設け、封止する工法、すなわち再配線層1st(RDL-1st)工法で製造してもよい。
【0218】
上述した樹脂組成物を用いて封止層及び再配線形成層等の層を形成した場合、ファンイン(Fan-In)型パッケージ、ファンアウト(Fan-Out)型パッケージ等の半導体チップパッケージを得ることができる。上述した樹脂組成物は、ファンアウト型パネルレベルパッケージ(FOPLP)、ファンアウト型ウェハレベルパッケージ(FOWLP)の別を問わずに適用できる。
【0219】
[半導体装置]
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、前記の回路基板及び半導体チップパッケージの少なくとも一方を備える。このような半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、カメラモジュール、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0220】
[放熱性デバイス]
本発明の一実施形態に係る放熱性デバイスは、電子部品と、該電子部品上に設けられた硬化物層と、該硬化物層上に設けられた放熱部材とを備える。また、硬化物層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。樹脂組成物の硬化物が高い熱伝導率を有するので、前記のように電子部品と放熱部材との間に硬化物層を設けた場合、電子部品から放熱部材への放熱効率を高くできる。
【0221】
放熱性デバイスの硬化物層は、例えば、回路基板の硬化物層と同じ方法によって形成できる。放熱性デバイスは、放熱部材を複数備えていてもよい。この場合、放熱性デバイスは、電子部品と、該電子部品上に設けられた第1の硬化物層と、該第1の硬化物層上に設けられた第1の放熱部材と、該第1の放熱部材上に設けられた第2の硬化物層と、該第2の硬化物層上に装着された第2の放熱部材と、を備えることが好ましい。第1の硬化物層と第2の硬化物層とは、同じ組成を有していてもよく、異なる組成を有していてもよい。また、第1の放熱部材と第2の放熱部材とは、同じ放熱部材であってもよく、異なる放熱部材であってもよい。
【0222】
放熱部材としては、例えば、ヒートスプレッダー、ヒートシンク等が挙げられる。また、電子部品としては、例えば、半導体チップパッケージ、パワー半導体、LED-PKG等が挙げられる。放熱性デバイスとしては、例えば、回路基板、半導体チップパッケージ、半導体装置等が挙げられる。
【実施例】
【0223】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)であった。
【0224】
<合成例1:フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂(エラストマーA)の合成>
反応容器に、2官能性ヒドロキシ基末端ポリブタジエン(日本曹達社製「G-3000」、数平均分子量=3000、ヒドロキシ基当量=1800g/eq.)69gと、芳香族炭化水素系混合溶剤(出光興産社製「イプゾール150」)40gと、ジブチル錫ラウレート0.005gとを入れ、混合して均一に溶解させて、反応液を得た。均一になったところで反応液を60℃に昇温し、更に撹拌しながらイソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン社製「IPDI」、イソシアネート基当量=113g/eq.)8gを添加し、約3時間反応を行った。
【0225】
次いで反応液に、クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「KA-1160」、水酸基当量=117g/eq.)23gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル社製)60gとを添加し、攪拌しながら150℃まで昇温し、約10時間反応を行った。FT-IRによって2250cm-1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピークの消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応液を室温まで降温した。そして、反応液を100メッシュの濾布で濾過して、ポリマーとしてのエラストマーA(ブタジエン構造及びフェノール性水酸基を含有するポリマー;フェノール性水酸基含有ブタジエン樹脂)を含むエラストマー溶液(不揮発成分50質量%)を得た。エラストマーAの数平均分子量は5900、ガラス転移点温度は-7℃であった。
【0226】
<合成例2:ポリイミド樹脂Bの合成>
環流冷却器を連結した水分定量受器、窒素導入管、及び攪拌器を備えた、500mLのセパラブルフラスコを用意した。このフラスコに、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)20.3g、γ-ブチロラクトン200g、トルエン20g、及び、5-(4-アミノフェノキシ)-3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,3-トリメチルインダン29.6gを加えて反応溶液を用意し、窒素気流下で45℃にて2時間攪拌して、反応を行った。次いで、この反応溶液を昇温し、約160℃に保持しながら、窒素気流下で縮合水をトルエンとともに共沸除去した。水分定量受器に所定量の水がたまっていること、及び、水の流出が見られなくなっていることを確認した。確認後、反応溶液を更に昇温し、200℃で1時間攪拌した。その後、冷却して、ポリマーとしてのポリイミド樹脂(1,1,3-トリメチルインダン骨格を有するポリイミド樹脂)を含むポリイミド溶液(不揮発分20質量%)を得た。得られたポリイミド樹脂は、下記式(X1)で表される繰り返し単位及び下記式(X2)で示す繰り返し単位を有していた。また、前記のポリイミド樹脂の重量平均分子量は、12,000であった。
【0227】
【0228】
<製造例1:アルミナ粒子1の製造>
処理前充填材としてのアルミナ粒子(デンカ株式会社製「ASFP-03S」、平均粒径0.4μm、比表面積6.0m2/g)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)1.0質量部を噴霧しながら10分間攪拌して、特定充填材としてのアルミナ粒子1(単位面積あたりのカーボン量0.50mg/m2)を製造した。
【0229】
<製造例2:アルミナ粒子2の製造>
処理前充填材としてのアルミナ粒子(デンカ株式会社製「ASFP-03S」、平均粒径0.4μm、比表面積6.0m2/g)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.5質量部を噴霧しながら攪拌して、表面処理した。さらに、そのアルミナ粒子に、ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)0.5質量部を噴霧しながら10分間攪拌して、特定充填材としてのアルミナ粒子2(単位面積あたりのカーボン量0.52mg/m2)を製造した。
【0230】
<製造例3:アルミナ粒子3の製造>
処理前充填材としてのアルミナ粒子(デンカ株式会社製「ASFP-03S」、平均粒径0.4μm、比表面積6.0m2/g)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)0.5質量部を噴霧しながら10分間攪拌して、表面処理した。さらに、そのアルミナ粒子に、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.5質量部を噴霧しながら攪拌して、特定充填材としてのアルミナ粒子3(単位面積あたりのカーボン量0.48mg/m2)を製造した。
【0231】
<製造例4:アルミナ粒子4の製造>
ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)1.0質量部の代わりに下記のヒンダードフェノール化合物(ADEKA社製「アデカスタブAO-330」;1,3,5-tris(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenylmethl)-2,4,6-trimethylbenzene)1.0質量部を用いたこと以外は製造例1と同じ方法により、特定充填材としてのアルミナ粒子4(単位面積あたりのカーボン量0.44mg/m2)を製造した。
【0232】
【0233】
<製造例5:アルミナ粒子5の製造>
ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)1.0質量部の代わりに下記のヒンダードフェノール化合物(ADEKA社製「アデカスタブAO-50」;Octadecyl 3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)1.0質量部を用いたこと以外は製造例1と同じ方法により、特定充填材としてのアルミナ粒子5(単位面積あたりのカーボン量0.51mg/m2)を製造した。
【0234】
【0235】
<製造例6:アルミナ粒子6の製造>
ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)の量を1.0質量部から1.8質量部に変更したこと以外は製造例1と同じ方法により、特定充填材としてのアルミナ粒子6(単位面積あたりのカーボン量0.77mg/m2)を製造した。
【0236】
<製造例7:アルミナ粒子7の製造>
ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)の量を1.0質量部から0.5質量部に変更したこと以外は製造例1と同じ方法により、特定充填材としてのアルミナ粒子7(単位面積あたりのカーボン量0.20mg/m2)を製造した。
【0237】
<製造例8:アルミナ粒子8の用意>
処理前充填材としてのアルミナ粒子(デンカ株式会社製「ASFP-03S」、平均粒径0.4μm、比表面積6.0m2/g)それ自体を、アルミナ粒子8として用意した。
【0238】
<製造例9:アルミナ粒子9の製造>
処理前充填材としてのアルミナ粒子(デンカ株式会社製「ASFP-03S」、平均粒径0.4μm、比表面積6.0m2/g)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)0.5質量部を噴霧しながら攪拌して、アルミナ粒子9(単位面積あたりのカーボン量0.20mg/m2)を製造した。
【0239】
<製造例10:アルミナ粒子10の製造>
処理前充填材としてのアルミナ粒子(デンカ株式会社製「ASFP-03S」、平均粒径0.4μm、比表面積6.0m2/g)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、ノボラック型フェノール系硬化剤(DIC社製「TD-2090」、式(a-1)に示す基を含有しない化合物、活性基当量約105g/eq.)0.4質量部を噴霧しながら攪拌して、アルミナ粒子10(単位面積あたりのカーボン量0.18mg/m2)を製造した。
【0240】
<製造例11:シリカ粒子11の製造>
処理前充填材としての球形シリカ粒子(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m2/g)100質量部をヘンシェル型混粉機に投入し、ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)0.5質量部を噴霧しながら10分間攪拌して、特定充填材としてのシリカ粒子11(単位面積あたりのカーボン量0.20mg/m2)を製造した。
【0241】
<無機充填材の単位面積当たりのカーボン量の測定方法>
表面処理された無機充填材の3gを試料として用いた。試料と30gのMEK(メチルエチルケトン)を遠心分離機の遠心管に入れ、撹拌し固形分を懸濁させて、500Wの超音波を5分間照射した。その後、遠心分離により固液分離し、上澄液を除去した。さらに、30gのMEKを足し、撹拌して固形分を懸濁させて、500Wの超音波を5分間照射した。その後、遠心分離により固液分離し、上澄液を除去した。固形分を150℃にて30分間乾燥させた。この乾燥試料0.3gを測定用坩堝に正確に量りとり、さらに測定用坩堝に助燃剤(タングステン3.0g,スズ0.3g)を入れた。測定用坩堝をカーボン分析計にセットし、カーボン量を測定した。カーボン分析計は、堀場製作所製EMIA-320Vを使用した。測定したカーボン量を無機充填材の比表面積で割った値を、単位面
積当たりのカーボン量とした。
【0242】
<実施例1>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)6部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」、エポキシ当量190g/eq.)8部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)3部を、メチルエチルケトン20部に撹拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。
【0243】
このエポキシ樹脂の溶解組成物に、製造例1で得られた「アルミナ粒子1」200部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)3部、ナフトール型硬化剤(日鉄ケミカル&マテリアル社製「SN-485」、水酸基当量約205g/eq.)2部、合成例1で得られたエラストマーAの溶液(不揮発成分50質量%)を20部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.1部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物を調製した。
【0244】
<実施例2>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)3部をイソシアヌル酸型エポキシ樹脂(日産化学社製「TEPIC-FL」、エポキシ当量約170g/eq.)3部に変更した。また、「アルミナ粒子1」200部を、製造例2で得られた「アルミナ粒子2」200部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0245】
<実施例3>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例3で得られた「アルミナ粒子3」200部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0246】
<実施例4>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例4で得られた「アルミナ粒子4」150部に変更した。また、エラストマーAの溶液(不揮発成分50質量%)20部を、合成例2で得たポリイミド溶液(不揮発分20質量%)16部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0247】
<実施例5>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)3部をイソシアヌル酸型エポキシ樹脂(日産化学社製「TEPIC-FL」、エポキシ当量約170g/eq.)3部に変更した。また、「アルミナ粒子1」200部を、製造例5で得られた「アルミナ粒子5」100部と製造例9で得られた「アルミナ粒子9」100部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0248】
<実施例6>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例6で得られた「アルミナ粒子6」200部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0249】
<実施例7>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例7で得られた「アルミナ粒子7」200部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0250】
<実施例8>
「アルミナ粒子1」の量を200部から90部に変更した。また、樹脂組成物に製造例11で得られた「シリカ粒子11」50部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0251】
<比較例1>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例8で得られた「アルミナ8」200部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0252】
<比較例2>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)3部をイソシアヌル酸型エポキシ樹脂(日産化学社製「TEPIC-FL」、エポキシ当量約170g/eq.)3部に変更した。また、「アルミナ粒子1」200部を、製造例9で得られた「アルミナ粒子9」200部に変更した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0253】
<比較例3>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例10で得られた「アルミナ粒子10」200部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0254】
<比較例4>
「アルミナ粒子1」200部を、製造例9で得られた「アルミナ9」200部に変更した。また、樹脂組成物に、ヒンダードフェノール化合物(東京化成品工業製、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;BHT)0.5質量部を追加した。以上の事項以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0255】
<樹脂シートの製造方法>
支持体として、離型層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。この支持体の離型層上に、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるように均一に塗布した。その後、樹脂組成物を80℃~100℃(平均90℃)で4分間乾燥させて、支持体及び樹脂組成物層を含む樹脂シートを得た。
【0256】
<導体層に対する密着性の評価方法>
樹脂組成物の硬化物の導体層に対する密着性の評価は、以下の手順にて、銅箔引き剥がし強度を測定することにより行った。
【0257】
(評価基板の作製)
(1)銅箔の下地処理:
電解銅箔(三井金属鉱山社製「3EC-III」、厚み35μm)の光沢面を、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行い、次いで防錆処理(CL8300)を施した。このように表面を前記のマイクロエッチング剤でエッチングされた銅箔を、以下「CZ銅箔」ということがある。さらに、この銅箔を130℃のオーブンで30分間加熱処理して、粗化処理を施された処理面を有する銅箔Iを得た。
【0258】
(2)内層基板の用意:
表面に銅箔を有し、内層回路を形成されたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.4mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。このガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板の両面をマイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)にて1μmエッチングして、銅箔表面の粗化処理を行った。これにより、処理面を有するCZ銅箔を表面に有する内層基板を得た。
【0259】
(3)樹脂組成物層の積層:
実施例及び比較例で作製した樹脂シートを、内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が上記内層基板と接するように行った。また、前記のラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下に調整した後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを100℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。その後、支持体を剥がし、樹脂組成物層を露出させた。
【0260】
(4)銅箔の積層及び樹脂組成物層の硬化:
露出させた樹脂組成物層上に、銅箔Iの処理面を、上記「(3)樹脂組成物層の積層」と同様の条件で、ラミネートした。そして、200℃、90分の硬化条件で樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物を含む硬化物層を形成した。以上の操作により、硬化物層の両面にCZ銅箔が積層された評価基板Aを得た。この評価基板Aは、銅箔I/硬化物層/内層基板/硬化物層/銅箔Iの層構成を有していた。
【0261】
(銅箔引き剥がし強度の測定)
評価基板Aを150mm×30mmの小片に切断した。小片の銅箔Iに、カッターを用いて幅10mm、長さ100mmの部分を囲む切込みをいれた。この部分の一端を剥がして、引っ張り試験機(ティー・エス・イー社製オートコム万能試験機「AC-50C-SL」)のつかみ具で掴んだ。室温(25℃)にて、50mm/分の速度で垂直方向に引っ張って、35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm]を銅箔引き剥がし強度として測定した。測定は、日本工業規格JIS C6481に準拠して行った。
【0262】
(HAST後の銅箔引き剥がし強度の測定)
作製した評価基板Aに対し、高度加速寿命試験装置(楠本化成社製「PM422」)を用いて、130℃、85%RHの高温高湿条件で100時間の加速環境試験(HAST試験)を実施した。その後、HAST試験後の評価基板Aについて、上記(銅箔引き剥がし強度の測定)と同じ方法で銅箔引き剥がし強度を測定した。HAST試験後の評価基板Aについて測定された銅箔引き剥がし強度の荷重[kgf/cm]の値を「HAST試験後の銅箔引き剥がし強度」とした。
【0263】
<樹脂組成物の最低溶融粘度の測定>
樹脂シートの樹脂組成物層を25枚重ね合わせて、1mm厚の樹脂組成物層を得た。この1mm厚の樹脂組成物層を直径20mmに打ち抜き、測定試料を調製した。調製した測定試料について、動的粘弾性測定装置(UBM社製「Rheogel-G3000」)を使用して、開始温度60℃から200℃まで、昇温速度5℃/min、測定温度間隔2.5℃、振動周波数1Hzの測定条件にて動的粘弾性率を測定することで、樹脂組成物の最低溶融粘度を測定した。測定された最低溶融粘度を、以下の基準で評価した。
○:4000poise未満。
△:4000poise以上7000poise未満。
×:7000poise以上。
【0264】
<硬化物の熱伝導率の測定>
(1)硬化物試料の作製:
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層を3枚重ね合わせた後、ラミネートを行った。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後20秒間、100℃、圧力0.4MPaでプレスすることにより行った。前記のラミネートによって、厚い樹脂組成物層を得た。この厚い樹脂組成物層を、180℃、90分の硬化条件で熱硬化し、硬化物試料を得た。
【0265】
(2)熱拡散率αの測定:
硬化物試料について、該硬化物試料の厚さ方向の熱拡散率α(m2/s)を、測定装置(ai-Phase社製「ai-Phase Mobile 1u」)を用いた温度波分析法により測定した。同一試料について3回測定を行い、平均値を算出した。
【0266】
(3)比熱容量Cpの測定:
硬化物試料について、示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製「DSC7020」)を用いて、-40℃から80℃まで10℃/分で昇温し、測定することにより、硬化物試料の25℃での比熱容量Cp(J/kg・K)を算出した。
【0267】
(4)密度ρの測定:
硬化物試料の密度(kg/m3)を、分析天秤(メトラー・トレド社製「XP105」(比重測定キット使用))を用いて測定した。
【0268】
(5)熱伝導率λの算出:
上記(2)乃至(4)で得られた熱拡散率α(m2/s)、比熱容量Cp(J/kg・K)、及び密度ρ(kg/m3)を下記式(M1)に代入して、硬化物の熱伝導率λ(W/m・K)を算出した。
λ=α×Cp×ρ (M1)
【0269】
<結果>
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
銅箔密着:HAST試験前の銅箔引き剥がし強度。
HAST後の密着:HAST試験後の銅箔引き剥がし強度。
【0270】
【0271】