(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】発振器、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
(21)【出願番号】P 2022193351
(22)【出願日】2022-12-02
(62)【分割の表示】P 2019031051の分割
【原出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-12-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
(72)【発明者】
【氏名】西澤 竜太
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-196105(JP,A)
【文献】特開2016-187131(JP,A)
【文献】特開2011-061577(JP,A)
【文献】特開2013-080993(JP,A)
【文献】特開2017-130861(JP,A)
【文献】特開2017-175202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板および前記ベース基板の一方の主面側に接合されているリッドを含み、内部空間を有する第1容器と、
前記内部空間に配置されている第2容器と、
前記第2容器に収容されている振動片と、
前記第2容器に収容されている温度センサーと、
前記第2容器に収容されており、前記振動片を発振させ、前記温度センサーの検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路を含む第1回路素子と、
前記ベース基板の他方の主面側に配置され、前記発振信号の周波数を制御する周波数制御回路を含む第2回路素子と、を備え、
前記第1容器は、前記ベース基板の前記一方の主面側に開放する第1凹部と、前記ベース基板の前記他方の主面側に開放する第2凹部と、を有し、
前記第1凹部および前記第2凹部を有する前記ベース基板は、セラミックスで一体的に形成されており、
前記第1凹部の底面に前記第2容器が接合され、
前記第2回路素子は、前記第2凹部内に配置され、かつ、前記ベース基板の厚さ方向において、前記ベース基板の前記他方の主面よりも前記一方の主面側に位置しており、
前記第2容器と前記第2回路素子とは、離間し、かつ、平面視で重なって配置されており、
平面視で、前記第2回路素子は、前記振動片の全体および前記第1回路素子の全体と重なっていることを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記第2凹部内には、前記第2回路素子を覆うモールド部が配置されている請求項
1に記載の発振器。
【請求項3】
前記ベース基板の前記他方の主面側に接合され、前記第2凹部の開口を覆う他のリッドを有する請求項
1に記載の発振器。
【請求項4】
前記第1容器は、前記第1凹部の底面に開口する第3凹部を有し、
前記第3凹部内に配置されているバイパスコンデンサーを備える請求項
1に記載の発振器。
【請求項5】
前記第1容器内は、大気圧に対して減圧されている請求項1に記載の発振器。
【請求項6】
前記第2容器は、前記発振回路用の電源電圧が印加される電源端子を有し、
前記バイパスコンデンサーは、前記電源端子に接続されている請求項
4に記載の発振器。
【請求項7】
前記第2容器は、前記温度センサーの出力信号が出力される温度出力端子を有し、
前記温度出力端子は、前記周波数制御回路に電気的に接続されている請求項1に記載の発振器。
【請求項8】
請求項1に記載の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1に記載の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器、電子機器および移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外側パッケージと、外側パッケージに収容されている内側パッケージと、内側パッケージに収容されている振動片と、外側パッケージに収容されており、内側パッケージ上に配置されている回路素子と、を有する発振器が記載されている。また、特許文献1の発振器では、回路素子に温度センサーが含まれており、温度センサーが検出する温度に基づいて出力信号の周波数を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発振器では、温度センサーを含む回路素子が振動片を収容する内側パッケージの外側に位置しているため、温度センサーと振動片との温度差が生じ易く、出力信号の補正を高い精度で行うことが困難となる。そのため、出力信号の周波数精度が低下するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の適用例に係る発振器は、第1容器と、
前記第1容器に収容されている第2容器と、
前記第2容器に収容されている振動片と、
前記第2容器に収容されている温度センサーと、
前記第2容器に収容され、前記振動片を発振させ、前記温度センサーの検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路を含む第1回路素子と、
前記第1容器に収容され、前記発振信号の周波数を制御する周波数制御回路を含む第2回路素子と、を備え、
前記第2容器と前記第2回路素子とは離間し、かつ、平面視で互いに重なって配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第1容器は、凹部を有する第1ベース基板と、前記凹部の開口を塞ぐように前記第1ベース基板に接合されている第1リッドと、を有し、
前記第2容器は、前記凹部内に配置され、
前記第2回路素子は、前記第2容器と前記第1リッドとの間に配置されていることが好ましい。
【0007】
本発明の適用例に係る発振器では、前記凹部は、前記第1ベース基板の前記リッド側の面に開放する第1凹部と、
前記第1凹部の底面に開口する第2凹部と、を有し、
前記第2凹部の底面に前記第2容器が接合され、
前記第1凹部の底面に前記第2回路素子が接合され、
前記第2回路素子は、平面視で、前記第2凹部と重なっていることが好ましい。
【0008】
本発明の適用例に係る発振器では、前記凹部は、前記第2凹部の底面に開口する第3凹部を有し、
前記第3凹部内に配置されているバイパスコンデンサーを備えることが好ましい。
【0009】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、前記発振回路用の電源電圧が印加される電源端子を有し、
前記バイパスコンデンサーは、前記電源端子に接続されていることが好ましい。
【0010】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、前記温度センサーの出力信号が出力される温度出力端子を有し、
前記温度出力端子は、前記周波数制御回路に電気的に接続されていることが好ましい。
【0011】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第1容器内は、大気圧に対して減圧されていることが好ましい。
【0012】
本発明の適用例に係る発振器では、前記第2容器は、前記振動片が固定されている第2ベース基板と、
前記第2ベース基板との間に前記振動片を収容するように前記第2ベース基板に接合されている第2リッドと、を有し、
前記第2リッドが接合部材を介して前記第1ベース基板に接合されていることが好ましい。
【0013】
本発明の適用例に係る発振器は、ベース基板および前記ベース基板の一方の主面側に接合されているリッドを含み、内部空間を有する第1容器と、
前記内部空間に配置されている第2容器と、
前記第2容器に収容されている振動片と、
前記第2容器に収容されている温度センサーと、
前記第2容器に収容されており、前記振動片を発振させ、前記温度センサーの検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路を含む第1回路素子と、
前記ベース基板の他方の主面側に配置され、前記発振信号の周波数を制御する周波数制御回路を含む第2回路素子と、を備え、
前記第2容器と前記第2回路素子とは、離間し、かつ、平面視で重なって配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の適用例に係る発振器は、第1容器と、
前記第1容器に収容され、ベース基板および前記ベース基板の一方の主面側に接合されているリッドを含み、内部空間を有する第2容器と、
前記内部空間に配置され、前記ベース基板に配置されている振動片と、
前記ベース基板の他方の主面側に配置されている温度センサーと、
前記ベース基板の他方の主面側に配置され、前記振動片を発振させ、前記温度センサーの検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路を含む第1回路素子と、
前記第1容器に収容され、前記発振信号の周波数を制御する周波数制御回路を含む第2回路素子と、を備え、
前記第2容器と前記第2回路素子とは、離間し、かつ、平面視で重なって配置されていることを特徴とする発振器。
【0015】
本発明の適用例に係る電子機器は、上述の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明の適用例に係る移動体は、上述の発振器と、
前記発振器の出力信号に基づいて信号処理を行う信号処理回路と、を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図1の発振器が有する温度補償型水晶発振器を示す平面図である。
【
図4】
図1の発振器が有する第2回路素子の回路図である。
【
図8】第5実施形態のパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の発振器、電子機器および移動体の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の発振器を示す断面図である。
図2は、
図1の発振器を示す平面図である。
図3は、
図1の発振器が有する温度補償型水晶発振器を示す平面図である。
図4は、
図1の発振器が有する第2回路素子の回路図である。なお、説明の便宜上、各図には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を図示している。また、以下では、Z軸方向プラス側を「上」とも言い、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z軸方向からの平面視を単に「平面視」とも言う。
【0020】
図1に示す発振器1は、外側パッケージ2と、外側パッケージ2に収容されている温度補償型水晶発振器3(TCXO)、第2回路素子4およびディスクリート部品81、82と、を有する。また、温度補償型水晶発振器3は、内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6および第1回路素子7と、を有する。
【0021】
外側パッケージ2は、上面に開口する凹部211を備える第1ベース基板21と、凹部211の開口を塞ぐように第1ベース基板21の上面に接合部材23を介して接合されている第1リッド22と、を有する。外側パッケージ2の内側には凹部211によって気密な内部空間S2が形成され、内部空間S2に温度補償型水晶発振器3および第1回路素子7が収容されている。なお、特に限定されないが、第1ベース基板21は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、第1リッド22は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0022】
また、凹部211は、複数の凹部で構成され、図示の構成では、第1ベース基板21の上面に開口する凹部211aと、凹部211aの底面に開口し、凹部211aよりも開口が小さい凹部211bと、凹部211bの底面に開口し、凹部211bよりも開口が小さい凹部211cと、凹部211cの底面に開口し、凹部211cよりも開口が小さい凹部211dと、を有する。ただし、凹部211の構成は、特に限定されない。
【0023】
そして、凹部211bの底面に、凹部211cの開口を覆うようにして第2回路素子4が固定され、凹部211cの底面に、凹部211dの開口を覆うようにして温度補償型水晶発振器3が固定されている。また、凹部211dの底面には、単体の回路部品である2つのディスクリート部品81、82が固定されている。このような配置によれば、第2回路素子4、温度補償型水晶発振器3および各ディスクリート部品81、82を外側パッケージ2内においてZ軸方向すなわち発振器1の高さ方向に重ねて配置することができる。そのため、第2回路素子4、温度補償型水晶発振器3および各ディスクリート部品81、82を外側パッケージ2内においてコンパクトに収容することができ、発振器1の小型化を図ることができる。
【0024】
特に、本実施形態では、
図2に示すように、Z軸方向からの平面視で、各ディスクリート部品81、82は、その全域が温度補償型水晶発振器3と重なっており、温度補償型水晶発振器3は、その全域が第2回路素子4と重なっている。これにより、各ディスクリート部品81、82、温度補償型水晶発振器3および第2回路素子4のX軸およびY軸方向へのずれが抑制され、外側パッケージ2のX軸およびY軸方向への広がりを抑制することができ、発振器1のさらなる小型化を図ることができる。ただし、これに限定されず、Z軸方向からの平面視で、ディスクリート部品81、82の一部が温度補償型水晶発振器3の外縁から外側にはみ出していてもよいし、温度補償型水晶発振器3の一部が第2回路素子4の外縁から外側にはみ出していてもよい。
【0025】
また、
図1に示すように、凹部211aの底面には複数の内部端子241が配置され、凹部211cの底面には複数の内部端子242が配置され、第1ベース基板21の下面には複数の外部端子243が配置されている。これら内部端子241、242および外部端子243は、第1ベース基板21内に形成されている図示しない配線を介して電気的に接続されている。また、複数の内部端子241は、それぞれ、ボンディングワイヤーBW1を介して第2回路素子4と電気的に接続され、複数の内部端子242は、それぞれ、導電性の接合部材B1を介して温度補償型水晶発振器3と電気的に接続されている。
【0026】
内部空間S2の雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換され、大気圧に対して減圧された減圧状態、特に真空状態であることが好ましい。これにより、外側パッケージ2の断熱性が高まり、外部の温度の影響を受け難い発振器1となる。また、外側パッケージ2に収容されている内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換、特に、対流による熱交換が抑制される。そのため、第2回路素子4の熱によって、第1回路素子7に含まれる温度センサー71と振動片6とが不均一に加熱されるのを抑制することができる。つまり、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを抑制することができる。したがって、高い精度の発振器1が得られる。
【0027】
なお、内部空間S2の雰囲気としては、これに限定されず、例えば、大気圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。また、内部空間S2は、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換されておらず、大気すなわち空気で満たされていてもよい。また、内部空間S2は、気密でなく、外側パッケージ2の外部と連通していてもよい。
【0028】
図1に示すように、温度補償型水晶発振器3は、第1ベース基板21に搭載されている内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6および第1回路素子7と、を有する。内側パッケージ5は、上面に開口する凹部511を備える第2ベース基板51と、凹部511の開口を塞ぐように第2ベース基板51の上面に接合部材53を介して接合されている第2リッド52と、を有する。内側パッケージ5には凹部511により気密な内部空間S5が形成され、内部空間S5に振動片6および第1回路素子7が収容されている。なお、特に限定されないが、第2ベース基板51は、アルミナ等のセラミックスで構成することができ、第2リッド52は、コバール等の金属材料で構成することができる。
【0029】
また、凹部511は、複数の凹部によって構成され、図示の構成では、第2ベース基板51の上面に開口する凹部511aと、凹部511aの底面に開口し、凹部511aよりも開口が小さい凹部511bと、凹部511bの底面に開口し、凹部511bよりも開口が小さい凹部511cと、凹部511cの底面に開口し、凹部511cよりも開口が小さい凹部511dと、を有する。ただし、凹部511の構成は、特に限定されない。
【0030】
そして、凹部511bの底面に振動片6が固定され、凹部511dの底面に第1回路素子7が固定されている。このような配置によれば、振動片6および第1回路素子7を内側パッケージ5内においてZ軸方向すなわち発振器1の高さ方向に重ねて配置することができる。そのため、これらを内側パッケージ5内においてコンパクトに収容することができ、温度補償型水晶発振器3の小型化、さらには、発振器1の小型化を図ることができる。なお、振動片6の配置は、これに限定されず、例えば、第1回路素子7の上面に固定されていてもよい。
【0031】
また、凹部511aの底面には複数の内部端子541が配置され、凹部511cの底面には複数の内部端子542が配置され、第2ベース基板51の下面には複数の外部端子543が配置されている。これら内部端子541、542および外部端子543は、第2ベース基板51内に形成されている図示しない配線を介して電気的に接続されている。また、複数の内部端子541は、それぞれ、ボンディングワイヤーBW2を介して振動片6と電気的に接続され、複数の内部端子542は、それぞれ、ボンディングワイヤーBW3を介して第1回路素子7と電気的に接続されている。ただし、振動片6と内部端子541との接続方法および第1回路素子7と内部端子542との接続方法は、それぞれ、特に限定されない。
【0032】
内部空間S5の雰囲気としては、特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換され、大気圧に対して減圧された減圧状態、特に真空状態であることが好ましい。これにより、粘性抵抗が減り、振動片6を効率よく振動させることができる。ただし、内部空間S5の雰囲気としては、これに限定されず、大気圧状態、加圧状態であってもよい。これにより、内部空間S5内に対流による熱移動が生じ易くなり、振動片6と後述する温度センサー71との温度差をより小さくすることができ、温度センサー71による振動片6の温度検知の精度が高まる。また、内部空間S5は、窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換されておらず、大気すなわち空気で満たされていてもよい。また、内部空間S2は、気密でなく、内部空間S2と連通していてもよい。
【0033】
振動片6は、ATカット水晶振動片である。ATカット水晶振動片は、三次の周波数温度特性を有するため、周波数安定性に優れている。
図3に示すように、振動片6は、ATカットで切り出された矩形の水晶基板60と、水晶基板60の表面に配置されている電極61と、を有する。また、電極61は、水晶基板60の上面に配置されている第1励振電極621と、水晶基板60の下面に配置され、水晶基板60を介して第1励振電極621と対向している第2励振電極631と、を有する。また、電極61は、水晶基板60の上面であって、その縁部に並んで配置されている第1パッド電極622および第2パッド電極632と、第1励振電極621と第1パッド電極622とを電気的に接続する第1引出電極623と、第2励振電極631と第2パッド電極632とを電気的に接続する第2引出電極633と、を有する。
【0034】
このような振動片6は、その一端部において接合部材B2を介して凹部511bの底面に接合されている。そして、第1パッド電極622および第2パッド電極632がそれぞれボンディングワイヤーBW2を介して内部端子541と電気的に接続されている。なお、第1パッド電極622および第2パッド電極632は、ボンディングワイヤーを介してではなく、それぞれが導電性接着剤を介して内側パッケージ5と電気的に接続されていても良い。また、接合部材B2としては、特に限定されず、例えば、金属バンプ、半田、ろう材、金属ペースト、導電性樹脂接着剤に代表される導電性接合部材であってもよいし、エポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系等の各種樹脂接着剤に代表される絶縁性接合部材であってもよいが、導電性接合部材であることが好ましい。
【0035】
導電性接合部材は、金属材料を含んでいるため、樹脂接着剤に代表される金属材料を含まない絶縁性接合部材と比べて熱伝導率が高い。そのため、接合部材B2および第2ベース基板51を介して振動片6と第1回路素子7とが熱的に結合し易く、これらの間の温度差をより小さく抑えることができる。そのため、温度センサー71によって振動片6の温度を精度よく検出することができる。
【0036】
ただし、振動片6の構成は、特に限定されない。例えば、水晶基板60の平面視形状は、矩形に限定されない。また、振動片6として、ATカット水晶振動片の他にも、SCカット水晶振動片、BTカット水晶振動片、音叉型水晶振動片、弾性表面波共振子、その他の圧電振動片、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)共振素子等を用いることもできる。
【0037】
また、水晶基板に替えて、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、リン酸ガリウム(GaPO4)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO、Zn2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbPO3)、ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO3)等の各種圧電基板を用いてもよいし、例えば、シリコン基板等の圧電基板以外の基板を用いてもよい。
【0038】
図1および
図3に示すように、第1回路素子7は、温度センサー71と、発振回路72と、を有する。発振回路72は、振動片6を発振させ、温度センサー71の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する機能を有する。つまり、発振回路72は、振動片6と電気的に接続され、振動片6の出力信号を増幅し、増幅した信号を振動片6にフィードバックすることにより振動片6を発振させる発振回路部721と、温度センサー71から出力される温度情報に基づいて、出力信号の周波数変動が振動片6自身の周波数温度特性よりも小さくなるように温度補償する温度補償回路部722と、を有する。なお、発振回路72としては、例えば、ピアース発振回路、インバーター型発振回路、コルピッツ発振回路、ハートレー発振回路等の発振回路を用いることができる。なお、発振回路72が有する温度補償回路部722としては、例えば、発振回路部721に接続された可変容量回路の容量を調整することにより発振回路部721の発振周波数を調整するものであってもよいし、発振回路部721の出力信号の周波数をPLL回路やダイレクトデジタルシンセサイザー回路により調整するものであってもよい。
【0039】
このように、温度センサー71および振動片6を共に内側パッケージ5に収容することにより、温度センサー71を振動片6と同じ空間でかつ振動片6の近傍に配置することが可能となる。そのため、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。
【0040】
なお、本実施形態では、温度センサー71がIC温度センサーで構成され、第1回路素子7に内蔵されているが、これに限定されない。つまり、温度センサー71は、第1回路素子7と別体で設けられるディスクリート部品であってもよい。この場合、温度センサー71は、例えば、サーミスタ、熱電対等によって構成することができる。また、温度センサー71の配置は、内部空間S5内であって、振動片6の温度を検出することができれば、特に限定されず、例えば、第2ベース基板51や第1回路素子7の上面に配置することができる。
【0041】
以上、温度補償型水晶発振器3について説明した。温度補償型水晶発振器3は、前述した外部端子543を4つ有しており、
図3に示すように、1つは第1回路素子7の電源電圧用の端子543aであり、1つは電源電圧に対するグランド用の端子543bであり、1つは発振回路72から出力される発振信号用の端子543cであり、1つは温度センサー71の出力信号用の端子543dである。ただし、外部端子543の数や用途は、特に限定されない。
【0042】
以上のような温度補償型水晶発振器3は、
図1に示すように、第2ベース基板51の下面を凹部211cの底面に向けた姿勢で配置され、第2ベース基板51の下面が接合部材B1を介して凹部211cの底面に固定されている。また、接合部材B1を介して各外部端子543が内部端子242と電気的に接続されている。接合部材B1としては、特に限定されず、例えば、金属バンプ、半田、ろう材、金属ペースト、導電性樹脂接着剤等を用いることができる。
【0043】
図1に示すように、第2回路素子4は、第1ベース基板21に搭載された状態で外側パッケージ2に収容されている。すなわち、第2回路素子4は、その下面の外周部が、接合部材B3を介して凹部211bの底面に接合されている。接合部材B3としては、特に限定されず、例えば、金属バンプ、半田、ろう材、金属ペースト、導電性樹脂接着剤等の導電性を有するものであってもよいし、樹脂接着剤等の絶縁性を有するものであってもよい。
【0044】
このような第2回路素子4は、
図4に示すように、発振回路72から出力される発振信号の周波数を制御し、温度補償型水晶発振器3が出力する発振信号に残っている周波数温度特性をさらに補正する周波数制御回路としての小数分周型のPLL回路40(位相同期回路)と、温度補正テーブル481が記憶されている記憶部48と、出力回路49と、を有する。本実施形態では、PLL回路40、記憶部48および出力回路49が1チップの回路素子として構成されているが、複数チップの回路素子によって構成されていてもよいし、一部がディスクリート部品によって構成されていてもよい。
【0045】
PLL回路40は、位相比較器41と、チャージポンプ42と、ローパスフィルター43と、電圧制御型発振回路44と、分周回路45と、を有する。位相比較器41は、発振回路72が出力する発振信号と分周回路45が出力するクロック信号の位相差を比較し、その比較結果をパルス電圧として出力する。チャージポンプ42は、位相比較器41が出力するパルス電圧を電流に変換し、ローパスフィルター43は、チャージポンプ42が出力する電流を平滑化および電圧変換する。
【0046】
電圧制御型発振回路44は、ローパスフィルター43の出力電圧を制御電圧として、制御電圧に応じて周波数が変化する信号を出力する。なお、本実施形態の電圧制御型発振回路44は、コイル等のインダクタンス素子とコンデンサー等の容量素子とを用いて構成されるLC発振回路であるが、これに限定されず、例えば、水晶振動子等の圧電振動子を用いた発振回路を用いることもできる。分周回路45は、温度センサー71の出力信号と温度補正テーブル481とから決定する分周比で、電圧制御型発振回路44が出力するクロック信号を小数分周したクロック信号を出力する。なお、分周回路45の分周比は、温度補正テーブル481によって定められる構成に限定されない。例えば多項式演算によって定められてもよいし、機械学習された学習済みモデルに基づくニューラルネットワーク演算によって定められてもよい。
【0047】
出力回路49は、PLL回路40が出力するクロック信号が入力され、その振幅が所望のレベルに調整された発振信号を生成する。出力回路49が生成する発振信号は、発振器1の外部端子243を介して発振器1の外部に出力される。
【0048】
このように、温度補償型水晶発振器3が出力する発振信号に残っている周波数温度特性をPLL回路40によってさらに補正することにより、温度による周波数偏差がさらに小さい発振器1が得られる。なお、PLL回路40としては、特に限定されず、例えば、発振回路72と位相比較器41との間に発振回路72が出力する発振信号を整数の分周比で分周する整数分周型のPLL回路を備えていてもよい。また、PLL回路40は、温度補償型水晶発振器3の出力信号をさらに温度補償するものに限られない。例えば、所望の周波数信号を得るために、PLL回路40が温度補償型水晶発振器3の出力周波数を固定値で逓倍する構成であってもよい。
【0049】
以上のような構成の第2回路素子4は、
図1に示すように、温度補償型水晶発振器3の内側パッケージ5と共に、第1ベース基板21に搭載され、外側パッケージ2内に収容されているが、第2回路素子4と内側パッケージ5とはZ軸方向に離間して配置されている。つまり、第2回路素子4と内側パッケージ5との間に空隙Gが形成され、非接触となっている。これにより、これらが接触している場合と比べて、第2回路素子4の熱が温度補償型水晶発振器3に伝わり難くなり、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを効果的に抑制することができる。これにより、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができる。特に、本実施形態では、第2回路素子4がPLL回路40を有し、このPLL回路40は、消費電力が比較的大きく発熱し易い。したがって、第2回路素子4と内側パッケージ5との間に空隙Gを形成することにより、上述した効果をより顕著に発揮することができる。また、第2回路素子4も温度センサー71が出力する温度情報信号に基づいて動作するため、第2回路素子4内に温度センサーを設けた場合に比べて自身の発熱の影響を受け難い。
【0050】
なお、空隙Gの幅すなわち第2回路素子4と内側パッケージ5との離間距離Dとしては、特に限定されないが、例えば、0.01mm以上0.1mm以下とすることが好ましく、0.03mm以上0.009mm以下とすることがより好ましい。これにより、発振器1の過度な大型化を回避しつつ、第2回路素子4の熱により振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを十分に抑制することができる。本実施形態では、第2回路素子4と内側パッケージ5とが共に第1ベース基板21に搭載されているため、第1ベース基板21に形成されている凹部211cの深さを適宜定めることにより、離間距離Dを上述したような所望の値とすることができる。また、離間距離Dを調整するために、図示しないスペーサーを用いることもできる。
【0051】
また、第2回路素子4は、温度補償型水晶発振器3の上方に位置し、温度補償型水晶発振器3と第1リッド22との間に位置している。前述したように、温度補償型水晶発振器3の内側パッケージ5は、その下面において凹部211cの底面に固定されているため、第2回路素子4は、内側パッケージ5の第1ベース基板21と接合されている側とは反対側に位置しているとも言える。このような配置によれば、第2回路素子4と第1ベース基板21との接合部と、内側パッケージ5と第1ベース基板21との接合部との間の熱伝達経路を十分に長くすることができる。そのため、第2回路素子4の熱が第1ベース基板21を介して内側パッケージ5に伝わり難くなり、第2回路素子4の熱により振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを効果的に抑制することができる。
【0052】
ディスクリート部品81、82は、前述したように、外側パッケージ2に収容されており、凹部211dの底面に接合されている。ディスクリート部品81、82は、それぞれ、バイパスコンデンサー810、820である。そして、
図4に示すように、バイパスコンデンサー810は、外側パッケージ2に設けられている外部端子243と、内側パッケージ5に設けられている電源電圧用の端子543aとの間において、端子543aと接続されている。これにより、外部端子243を介して供給された電源電圧からノイズを除去することができ、安定した電源電圧を第1回路素子7に供給することができる。
【0053】
一方、バイパスコンデンサー820は、温度センサー71の出力信号用の端子543dとPLL回路40との間において端子543dと接続されている。これにより、温度センサー71の出力信号からノイズを除去することができ、より正確な出力信号をPLL回路40に供給することができる。そのため、分周回路45による分周比をより精度よく決定することができる。なお、ディスクリート部品81、82としては、バイパスコンデンサー810、820に限定されず、例えば、サーミスタ、抵抗、ダイオード等であってもよい。また、ディスクリート部品81、82の少なくとも一方を省略してもよいし、他のディスクリート部品を追加してもよい。また、バイパスコンデンサー810、820は、第2回路素子4に内蔵されていてもよい。
【0054】
以上、発振器1について説明した。発振器1は、前述したように、第1容器としての外側パッケージ2と、外側パッケージ2に収容されている第2容器としての内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6と、内側パッケージ5に収容されている温度センサー71と、内側パッケージ5に収容され、振動片6を発振させ、温度センサー71の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路72を含む第1回路素子7と、外側パッケージ2に収容され、発振回路72から出力される発振信号の周波数を制御する周波数制御回路としてのPLL回路40を含む第2回路素子4と、を備える。そして、内側パッケージ5と第2回路素子4とは離間し、かつ、平面視で互いに重なって配置されている。
【0055】
このような構成によれば、温度センサー71および振動片6が共に内側パッケージ5に収容されているため、温度センサー71を振動片6と同じ空間でかつ振動片6の近傍に配置することが可能となる。また、内側パッケージ5と第2回路素子4とを離間して配置することにより、内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換が抑制され、温度センサー71と振動片6とが不均一に加熱されるのを抑制することができる。そのため、振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じたり、その温度差が変動したりするのを効果的に抑制することができる。その結果、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。また、PLL回路40から周波数偏差が小さい発振信号を出力することができる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0056】
また、内側パッケージ5と第2回路素子4とがZ軸方向に重なって配置されるため、外側パッケージ2のX軸およびY軸方向への広がりが抑制され、発振器1の小型化を図ることもできる。
【0057】
また、前述したように、外側パッケージ2は、凹部211を有する第1ベース基板21と、凹部211の開口を塞ぐように第1ベース基板21に接合されている第1リッド22と、を有する。そして、内側パッケージ5は、凹部211内に配置され、第2回路素子4は、内側パッケージ5と第1リッド22との間に配置されている。これにより、第2回路素子4と第1ベース基板21との接合部と、内側パッケージ5と第1ベース基板21との接合部との間の熱伝達経路を十分に長くすることができる。そのため、第2回路素子4の熱が第1ベース基板21を介して内側パッケージ5に伝わり難くなり、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さく抑えることができる。
【0058】
また、前述したように、凹部211は、第1凹部としての凹部211bと、凹部211bの底面に開口する第2凹部としての凹部211cと、を有する。また、凹部211cの底面に内側パッケージ5が接合され、凹部211bの底面に第2回路素子4が接合されている。そして、第2回路素子4は、平面視で、凹部211bと重なっている。言い換えると、第2回路素子4は、凹部211cの開口の少なくとも一部を塞ぐようにして、凹部211bの底面に接合されている。このような配置によれば、より確実に、内側パッケージ5と第2回路素子4とをZ軸方向に重ねて配置することができる。また、凹部211cの深さを調整することにより、第2回路素子4と内側パッケージ5との間の空隙Gの広さを簡単に制御することができる。
【0059】
また、前述したように、凹部211は、凹部211cの底面に開口する第3凹部としての凹部211dを有する。そして、発振器1は、凹部211d内に配置されているバイパスコンデンサー810、820を備える。このような配置によれば、バイパスコンデンサー810、820、内側パッケージ5および第2回路素子4をZ軸方向に重ねて配置することができるため、発振器1の小型化を図ることができる。
【0060】
また、前述したように、内側パッケージ5は、発振回路72用の電源電圧が印加される電源端子としての端子543aを有する。そして、バイパスコンデンサー810は、端子543aに接続されている。これにより、バイパスコンデンサー810によってノイズを除去することができ、発振回路72に安定した電源電圧を供給することができる。
【0061】
また、前述したように、内側パッケージ5は、温度センサー71の出力信号が出力される温度出力端子としての端子543dを有する。そして、端子543dは、PLL回路40に電気的に接続されている。これにより、温度センサー71が検出した温度情報をPLL回路40にフィードバックすることができ、PLL回路40からより高精度な周波数信号を出力することができる
【0062】
また、前述したように、外側パッケージ2内は、大気圧に対して減圧されている。これにより、内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換、特に、対流による熱交換が抑制される。これにより、第2回路素子4の熱によって、温度センサー71と振動片6とがアンバランスに加熱されてしまうことを抑制することができる。つまり、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に過度な温度差が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0063】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の発振器を示す断面図である。
【0064】
本実施形態は、温度補償型水晶発振器3の姿勢が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図5において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0065】
図5に示すように、本実施形態の発振器1では、外側パッケージ2の凹部211は、第1ベース基板21の上面に開口する凹部211aと、凹部211aの底面に開口する凹部211bと、凹部211bの底面に開口する凹部211cと、凹部211cの底面に開口する凹部211dと、凹部211dの底面に開口する凹部211eと、を有する。そして、凹部211bの底面に第2回路素子4が固定され、凹部211dの底面に温度補償型水晶発振器3が固定され、凹部211eの底面にディスクリート部品81、82が固定されている。また、凹部211aの底面に複数の内部端子241が配置され、凹部211cの底面に複数の内部端子242が配置されている。
【0066】
また、温度補償型水晶発振器3は、前述の第1実施形態と上下反対の姿勢、すなわち、第2リッド52を凹部211dの底面側に向けた姿勢で配置されている。そして、第2リッド52が接合部材B5を介して凹部211dの底面に固定され、第2ベース基板51に配置されている4つの外部端子543がそれぞれボンディングワイヤーBW4を介して内部端子242と電気的に接続されている。
【0067】
このような姿勢で温度補償型水晶発振器3を配置することにより、例えば、前述の第1実施形態のように第2ベース基板51が接合部材B1を介して第1ベース基板21に固定されている場合と比べて、内側パッケージ5と第1ベース基板21との接合部から振動片6および第1回路素子7までの熱の伝達経路を長くすることができる。そのため、前述した第1実施形態と比べて、第2回路素子4の熱が振動片6および第1回路素子7に伝わり難くなる。その結果、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さく抑えることができる。
【0068】
以上のように、本実施形態の発振器1では、内側パッケージ5は、振動片6が固定されている第2ベース基板51と、第2ベース基板51との間に振動片6を収容するように第2ベース基板51に接合されている第2リッド52と、を有する。そして、第2リッドが接合部材B5を介して第1ベース基板21に接合されている。これにより、第2回路素子4の熱が振動片6および第1回路素子7に、より伝わり難くなる。その結果、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さく抑えることができる。
【0069】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の発振器を示す断面図である。
【0070】
本実施形態は、第2回路素子4の配置が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図6において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0071】
図6に示すように、本実施形態の発振器1では、第2回路素子4が外側パッケージ2の外側すなわち内部空間S2外に配置されている。以下、具体的に説明する。
【0072】
第1ベース基板21は、その下面に開口する凹部212を有する。また、凹部212は、複数の凹部で構成されており、図示の構成では、第1ベース基板21の下面に開口する凹部212aと、凹部212aの底面に開口し、凹部212aよりも開口が小さい凹部212bと、を有する。そして、凹部212bの底面に第2回路素子4が固定されている。また、凹部212aの底面には複数の内部端子241が設けられており、これら内部端子241と第2回路素子4とがボンディングワイヤーBW1を介して電気的に接続されている。
【0073】
また、凹部212には第2回路素子4を覆うモールド部25が配置され、第2回路素子4が水分、埃、塵、衝撃等から保護されている。ただし、モールド部25は、省略してもよい。その際には、例えば、リッドを準備し、このリッドを凹部212の開口を覆うように第1ベース基板21の下面に接合してもよい。これにより、第2回路素子4を収容する内部空間が形成され、第2回路素子4を好適に保護することができる。
【0074】
一方、第1ベース基板21が有する凹部211は、第1ベース基板21の上面に開口する凹部211aと、凹部211aの底面に開口し、凹部211aよりも開口が小さい凹部211bと、を有する。そして、凹部211aの底面に、温度補償型水晶発振器3が固定され、凹部211bの底面に、ディスクリート部品81、82が固定されている。
【0075】
このように、第2回路素子4を外側パッケージ2の外側に配置し、温度補償型水晶発振器3を外側パッケージ2の内側に配置することにより、第2回路素子4と温度補償型水晶発振器3とを互い分離された異なる空間に分けて配置することができる。そのため、第2回路素子4の熱が対流や放射(輻射)によって温度補償型水晶発振器3に伝わるのをより効果的に抑制することができる。そのため、振動片6と温度センサー71との温度差をより小さく抑えることができ、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0076】
また、本実施形態でも、前述の第1実施形態と同様に、平面視で、第2回路素子4、温度補償型水晶発振器3および各ディスクリート部品81、82が互いに重なって配置されている。そのため、外側パッケージ2のX軸およびY軸方向への広がりを抑制でき、発振器1の小型化を図ることができる。
【0077】
以上のように、本実施形態の発振器1は、ベース基板としての第1ベース基板21および第1ベース基板21の上面(一方の主面)側に接合されているリッドとしての第1リッド22を含み、内部空間S2を有する第1容器としての外側パッケージ2と、内部空間S2に配置されている第2容器としての内側パッケージ5と、内側パッケージ5に収容されている振動片6と、内側パッケージ5に収容されている温度センサー71と、内側パッケージ5に収容されており、振動片6を発振させ、温度センサー71の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路72を含む第1回路素子7と、第1ベース基板21の下面(他方の主面)側に配置され、発振回路72からの発振信号の周波数を制御する周波数制御回路としてのPLL回路40を含む第2回路素子4と、を備えている。そして、内側パッケージ5と第2回路素子4とは、離間し、かつ、平面視で重なって配置されている。
【0078】
このような構成によれば、温度センサー71および振動片6が共に内側パッケージ5に収容されているため、温度センサー71を振動片6と同じ空間でかつ振動片6の近傍に配置することが可能となる。また、内側パッケージ5と第2回路素子4とを離間して配置することにより、内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換が抑制され、温度センサー71と振動片6とが不均一に加熱されるのを抑制することができる。そのため、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを効果的に抑制することができる。そのため、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0079】
また、内側パッケージ5と第2回路素子4とがZ軸方向に重なって配置されるため、外側パッケージ2のX軸およびY軸方向への広がりが抑制され、発振器1の小型化を図ることもできる。
【0080】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の発振器を示す断面図である。
【0081】
本実施形態は、温度補償型水晶発振器3の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図7において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0082】
図7に示すように、本実施形態の発振器1では、第1回路素子7が内側パッケージ5の外側すなわち内部空間S5外に配置されている。以下、具体的に説明する。
【0083】
第2ベース基板51は、その下面に開口する凹部512を有する。また、凹部512は、複数の凹部で構成されており、図示の構成では、第2ベース基板51の下面に開口する凹部512aと、凹部512aの底面に開口し、凹部512aよりも開口が小さい凹部512bと、を有する。そして、凹部512bの底面に第1回路素子7が固定されている。また、凹部512aの底面には複数の内部端子542が設けられており、これら内部端子542と第1回路素子7とがボンディングワイヤーBW3を介して電気的に接続されている。なお、凹部512と凹部211とで形成されている内部空間S6は、気密であってもよいし、内部空間S2と連通していてもよい。
【0084】
一方、凹部511は、第2ベース基板51の上面に開口する凹部511aと、凹部511aの底面に開口し、凹部511aよりも開口が小さい凹部511bと、を有する。そして、凹部511bの底面に振動片6が固定され、凹部511bの底面に複数の内部端子541が配置されている。そして、振動片6と複数の内部端子541とがボンディングワイヤーBW2を介して電気的に接続されている。
【0085】
このように、第2ベース基板51の凹部511と凹部512とに挟まれている部分513を間に挟んで振動片6と第1回路素子7とを配置することにより、当該部分513を介して振動片6と第1回路素子7とが熱的に結合し、振動片6と第1回路素子7内の温度センサー71との温度差がより小さくなる。そのため、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0086】
また、本実施形態でも、前述の第1実施形態と同様に、平面視で、第2回路素子4、温度補償型水晶発振器3および各ディスクリート部品81、82が互いに重なって配置されている。そのため、外側パッケージ2のX軸およびY軸方向への広がりを抑制でき、発振器1の小型化を図ることができる。
【0087】
以上のように、本実施形態の発振器1は、第1容器としての外側パッケージ2と、外側パッケージ2に収容され、ベース基板としての第2ベース基板51および第2ベース基板51の上面(一方の主面)側に接合されているリッドとしての第2リッド52を含み、内部空間S5を有する第2容器としての内側パッケージ5と、内部空間S5に配置され、第2ベース基板51に配置されている振動片6と、第2ベース基板51の下面(他方の主面)側に配置されている温度センサー71と、第2ベース基板51の下面側に配置され、振動片6を発振させ、温度センサー71の検出温度に基づいて温度補償された発振信号を生成する発振回路72を含む第1回路素子7と、外側パッケージ2に収容され、発振信号の周波数を制御する周波数制御回路としてのPLL回路40を含む第2回路素子4と、を備える。そして、内側パッケージ5と第2回路素子4とは、離間し、かつ、平面視で重なって配置されている。
【0088】
このような構成によれば、温度センサー71および振動片6が第2ベース基板51を介して熱的に結合する。また、内側パッケージ5と第2回路素子4とを離間して配置することにより、内側パッケージ5と第2回路素子4との間の熱交換が抑制され、温度センサー71と振動片6とが不均一に加熱されるのを抑制することができる。そのため、第2回路素子4の熱によって振動片6と温度センサー71との間に温度差が生じるのを効果的に抑制することができる。そのため、温度センサー71によって振動片6の温度をより精度よく検出することができ、発振回路72による温度補償がより正確なものとなる。したがって、高精度な周波数信号を出力可能な発振器1となる。
【0089】
また、内側パッケージ5と第2回路素子4とがZ軸方向に重なって配置されるため、外側パッケージ2のX軸およびY軸方向への広がりが抑制され、発振器1の小型化を図ることもできる。
【0090】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態のパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
【0091】
図8に示す電子機器としてのパーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、発振器1が内蔵されている。また、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102や表示部1108などの制御に関する演算処理を行う信号処理回路1110を備えている。信号処理回路1110は、発振器1から出力される発振信号に基づいて動作する。
【0092】
このように、電子機器としてのパーソナルコンピューター1100は、発振器1と、発振器1の出力信号(発振信号)に基づいて信号処理を行う信号処理回路1110と、を備える。そのため、前述した発振器1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0093】
なお、発振器1を備える電子機器は、前述したパーソナルコンピューター1100の他、例えば、デジタルスチールカメラ、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチを含む時計、インクジェット式吐出装置、例えばインクジェットプリンター、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡のような医療機器、魚群探知機、各種測定機器、車両、航空機、船舶のような計器類、携帯端末用の基地局、フライトシミュレーター等であってもよい。
【0094】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態の自動車を示す斜視図である。
【0095】
図9に示すように、移動体としての自動車1500には、発振器1と、発振器1から出力される発振信号に基づいて動作する信号処理回路1510と、が内蔵されている。発振器1と信号処理回路1510は、例えば、キーレスエントリー、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロール、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター、車体姿勢制御システム等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
【0096】
このように、移動体としての自動車1500は、発振器1と、発振器1の出力信号(発振信号)に基づいて信号処理を行う信号処理回路1510と、を備える。そのため、前述した発振器1の効果を享受でき、高い信頼性を発揮することができる。
【0097】
なお、発振器1を備える移動体は、自動車1500の他、例えば、ロボット、ドローン、二輪車、航空機、船舶、電車、ロケット、宇宙船等であってもよい。
【0098】
以上、本発明の発振器、電子機器および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…発振器、2…外側パッケージ、3…温度補償型水晶発振器、4…第2回路素子、5…内側パッケージ、6…振動片、7…第1回路素子、21…第1ベース基板、22…第1リッド、23…接合部材、25…モールド部、40…PLL回路、41…位相比較器、42…チャージポンプ、43…ローパスフィルター、44…電圧制御型発振回路、45…分周回路、48…記憶部、49…出力回路、51…第2ベース基板、52…第2リッド、53…接合部材、60…水晶基板、61…電極、71…温度センサー、72…発振回路、81、82…ディスクリート部品、211、211a~211e…凹部、212、212a、212b…凹部、241、242…内部端子、243…外部端子、481…温度補正テーブル、511、511a~511d…凹部、512、512a、512b…凹部、513…部分、541、542…内部端子、543…外部端子、543a~543d…端子、621…第1励振電極、622…第1パッド電極、623…第1引出電極、631…第2励振電極、632…第2パッド電極、633…第2引出電極、721…発振回路部、722…温度補償回路部、810、820…バイパスコンデンサー、1100…パーソナルコンピューター、1102…キーボード、1104…本体部、1106…表示ユニット、1108…表示部、1110…信号処理回路、1500…自動車、1510…信号処理回路、B1~B3、B5…接合部材、BW1~BW4…ボンディングワイヤー、D…離間距離、G…空隙、S2、S5、S6…内部空間