IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

特許7537501アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置
<>
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図1
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図2
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図3
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図4
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図5
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図6
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図7
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図8
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図9
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図10
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図11
  • 特許-アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20240814BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20240814BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20240814BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q21/28
H01Q23/00
H01Q1/24 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022543297
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022637
(87)【国際公開番号】W WO2022038879
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020139735
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 直志
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】尾仲 健吾
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-113187(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149138(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/138448(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230475(WO,A1)
【文献】特開2019-029669(JP,A)
【文献】特開2019-213105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/06
H01Q 21/28
H01Q 23/00
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1放射電極および第1接地電極が配置された第1基板と、
第2放射電極および第2接地電極が配置された第2基板と、
第3接地電極が配置された第3基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に接続され、第4接地電極が配置された平板形状の第1接続部材とを備え、
前記第1放射電極には、前記第1接続部材を介して高周波信号が伝達され、
前記第1接続部材の主面と前記第3基板の主面とが接し、
前記第1接続部材の内部には、給電配線が形成されている、アンテナモジュール。
【請求項2】
前記第1接続部材は、前記第1接続部材の主面の法線方向から平面視した場合に、前記第3接地電極と前記第4接地電極とが重なるように配置される、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記第1接続部材は、前記第1基板から前記第2基板に至るまでに第1延伸方向から第2延伸方向へと屈曲する少なくとも1つの屈曲部を有する、請求項1または請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第3接地電極および前記第4接地電極は、電気的に接続され、
前記第3接地電極の電位および前記第4接地電極の電位は、略同電位である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記第1放射電極が電波を放射する第1放射方向と前記第2放射電極が電波を放射する第2放射方向とは、互いに異なる方向である、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記第1放射方向と前記第2放射方向とは互いに背向する、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記第1放射方向および前記第2放射方向は、前記第3基板の主面の法線方向と直交する方向であり、前記第3基板の主面の平面上において、前記第1放射方向および前記第2放射方向は互いに直交する方向である、請求項5に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記第1放射方向および前記第2放射方向の一方は、前記第3基板の主面の法線方向であり、
前記第1放射方向および前記第2放射方向の他方は、前記第3基板の主面の法線方向と直交する方向である、請求項7に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
前記第1基板の主面および前記第2基板の主面の少なくとも一方は、前記第3基板の側面と対向する、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
前記第1基板の主面および前記第2基板の主面の一方は、前記第3基板の側面と対向し、
前記第1基板の主面および前記第2基板の主面の他方は、前記第3基板の主面と対向する、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記第3基板の側面は、互いに法線方向が異なる第1面および第2面を有し、
前記第1基板の主面および前記第2基板の主面は、前記第1面および前記第2面のそれぞれに対向する、請求項9に記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
前記第3基板の主面は、互いに法線方向が異なる第3面および第4面を有し、
前記第1基板の主面および前記第2基板の主面は、前記第3面および前記第4面のそれぞれに対向する、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項13】
前記第1接続部材は、前記第1基板から取り外し可能である、請求項1~12のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項14】
前記第1接続部材は、前記第1基板と一体的に形成される、請求項1~12のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項15】
前記第1接続部材に配置され、前記第1放射電極と前記第3基板との間で伝達される高周波信号を増幅するように構成された増幅回路をさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項16】
前記第1放射電極および前記第2放射電極に高周波信号を供給するための給電回路をさらに備える、請求項1~15のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項17】
前記給電回路は、前記第2基板に配置される、請求項16に記載のアンテナモジュール。
【請求項18】
前記第2基板と前記第3基板との間に接続され、前記給電回路に信号を伝達する第2接続部材をさらに備える、請求項17に記載のアンテナモジュール。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載のアンテナモジュールを搭載した、通信装置。
【請求項20】
第1表示面および第2表示面を含む表示部をさらに備え、
前記表示部は、前記第1表示面と前記第2表示面とが対向するように前記表示部を折り曲げるように構成された折り曲げ部を有し、
前記第1基板は前記第1表示面に対向して配置され、
前記第2基板は前記第2表示面に対向して配置される、請求項19に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュール、およびそれを搭載した通信装置に関し、より特定的には、通信装置が含むアンテナ装置のアンテナ特性の低下を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/017116号公報(特許文献1)には、通信装置内において、当該通信装置の筐体側に放射電極および接地電極が取り付けられているアンテナモジュールが開示されている。
【0003】
特許文献1では、マザーボードから離れた位置に放射電極および接地電極を取り付け、放射電極および接地電極の位置を筐体に比較的近い位置とすることにより、放射電極から放射される電波が筐体によって反射されることを抑制するアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/017116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マザーボードからアンテナとして用いられる接地電極までの導電経路が長くなる場合、浮遊容量によってアンテナとして用いられる接地電極の電位は、マザーボードが有する接地電極の電位よりも高くなる。すなわち、アンテナとして用いられる接地電極は、いわゆる電気的に浮いた状態となる。
【0006】
このような状態となった接地電極は、マザーボードが有する接地電極に対して、意図しない新たなアンテナ(共振器)として機能し得る。通信装置が周波数帯域の互いに異なる複数のアンテナ装置を備える場合であって、このような意図しない共振器が発生した場合、当該共振器は、他のアンテナ装置と相互に電磁的に結合し、不要共振を発生させる。このように、意図しない不要共振の発生により周波数帯域が異なる他のアンテナ装置のアンテナ特性における損失が増大し得る。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的はアンテナモジュールにおいて、マザーボードから離れた位置にアンテナ装置が配置される場合であっても、通信装置が含むアンテナ装置のアンテナ特性における損失の増大を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従うアンテナモジュールは、第1放射電極および第1接地電極が配置された第1基板と、第2放射電極および第2接地電極が配置された第2基板と、第3接地電極が配置された第3基板と、第1基板と第2基板との間に接続され、第4接地電極が配置された平板形状の第1接続部材とを備える。第1放射電極には、第1接続部材を介して高周波信号が伝達され、第1接続部材の主面と第3基板の主面とが接する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係るアンテナモジュールでは、第1放射電極および第1接地電極が配置された第1基板と、第2放射電極および第2接地電極が配置された第2基板と、第3接地電極が配置された第3基板と、第1基板と第2基板との間に接続され、第4接地電極が配置された平板形状の第1接続部材とを備える。第1放射電極には、第1接続部材を介して高周波信号が伝達される。第1接続部材の主面と第3基板の主面とが接する。このような構成によって、特に、第1接続部材の第4接地電極と第3基板の第3接地電極との間の電位差が低減される。したがって、不要共振の発生を抑制することができ、通信装置が含むアンテナ装置のアンテナ特性における損失の増大を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態1に係るアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図の一例である。
図2】実施の形態1に係るアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを平面視した図である。
図3】アンテナ装置にはんだにより接続された接続部材を示す図である。
図4】FEMの概略図である。
図5】マザーボード上に配置された接続部材の断面図である。
図6】実施の形態1に対する比較例のアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを平面視した図である。
図7】変形例1に係るアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを平面視した図である。
図8】変形例1の接続部材とマザーボードとの断面図である。
図9】変形例2に係るアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを平面視した図である。
図10】変形例3に係るアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを平面視および側面視した図である。
図11】変形例4に係るアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを平面視および側面視した図である。
図12】変形例5に係るアンテナモジュールを実装した通信装置が有するマザーボードを背面視および側面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10のブロック図の一例である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末、通信機能を備えたパーソナルコンピュータ、または基地局などである。
【0013】
本実施の形態に係るアンテナモジュール100に用いられる電波の周波数帯域の一例は、たとえば28GHz、39GHzおよび60GHzなどを中心周波数とするミリ波帯の電波であるが、上記以外の周波数帯域の電波についても適用可能である。
【0014】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100を搭載する。通信装置10は、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200を備える。アンテナモジュール100は、RFIC110と、アンテナ装置120A,120Bと、切換回路130とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を高周波信号にアップコンバートしてアンテナ装置120A,120Bから放射するとともに、アンテナ装置120A,120Bによって受信した高周波信号をダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0015】
図1の例においては、説明を容易にするために、アンテナ装置120A,120B(以下、包括して「アンテナ装置120」とも称する。)の各々が、4つの放射電極(給電素子)を含む場合を示している。具体的には、アンテナ装置120Aは放射電極121A1~121A4を含んでおり、アンテナ装置120Bは放射電極121B1~121B4を含んでいる。
【0016】
なお、放射電極121A1~121A4を包括して「放射電極121A」とも称する。また、放射電極121B1~121B4を包括して「放射電極121B」とも称する。さらに、放射電極121A,121Bを包括して「放射電極121」とも称する。
【0017】
図1においては、アンテナ装置120は、4つの放射電極121が一列に配置された一次元のアンテナアレイである。なお、放射電極121は必ずしも複数である必要はなく、1つの放射電極121からアンテナ装置120が形成される場合であってもよい。また、複数の放射電極121が二次元に配置されたアレイアンテナであってもよい。実施の形態1においては、各放射電極121は、略正方形の平板形状を有するパッチアンテナである。図1では、説明を簡単にするために、放射電極121の各辺が矩形状の誘電体基板の辺と平行に配置されているが、放射電極121の各辺と矩形状の誘電体基板の辺とは、平行に配置されなくてもよい。
【0018】
また、各放射電極121は、互いに異なる偏波方向の電波を放射するため、給電点が2つ設けられている。他の局面においては、各放射電極121は、パッチアンテナではなく、スロットアンテナ、ダイポールアンテナ、またはモノポールアンテナなどの他の形態のアンテナであってもよい。
【0019】
RFIC110は、スイッチ111A~111D,113A~113D,117と、パワーアンプ112AT~112DTと、ローノイズアンプ112AR~112DRと、減衰器114A~114Dと、移相器115A~115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0020】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがパワーアンプ112AT~112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがローノイズアンプ112AR~112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0021】
切換回路130は、単極多投型(Single-pole Multiple Throw)スイッチであるスイッチ130A~130Dを含む。スイッチ130A~130Dは、RFIC110におけるスイッチ111A~111Dにそれぞれ接続される。切換回路130は、たとえばRFIC110によって制御され、RFIC110とアンテナ装置120Aの放射電極121Aとの間の接続、および、RFIC110とアンテナ装置120Bの放射電極121Bとの間の接続を切換えるように構成されている。
【0022】
スイッチ130Aは、第1端子T1Aと、第2端子T2Aと、第3端子T3Aとを含む。第1端子T1Aは、スイッチ111Aの共通端子に接続される。第2端子T2Aは、アンテナ装置120Aの放射電極121A1に接続される。第3端子T3Aは、アンテナ装置120Bの放射電極121B1に接続される。
【0023】
同様に、スイッチ130Bについては、第1端子T1Bがスイッチ111Bの共通端子に接続され、第2端子T2Bがアンテナ装置120Aの放射電極121A2に接続され、第3端子T3Bがアンテナ装置120Bの放射電極121B2に接続される。スイッチ130Cについては、第1端子T1Cがスイッチ111Cの共通端子に接続され、第2端子T2Cがアンテナ装置120Aの放射電極121A3に接続され、第3端子T3Cがアンテナ装置120Bの放射電極121B3に接続される。スイッチ130Dについては、第1端子T1Dがスイッチ111Dの共通端子に接続され、第2端子T2Dがアンテナ装置120Aの放射電極121A4に接続され、第3端子T3Dがアンテナ装置120Bの放射電極121B4に接続される。
【0024】
アンテナ装置120Aにおいて高周波信号を送受信する場合には、スイッチ130A~130Dの各々が第2端子T2A~T2Dにそれぞれ切換えられる。アンテナ装置120Bにおいて高周波信号を送受信する場合には、スイッチ130A~130Dの各々が第3端子T3A~T3Dにそれぞれ切換えられる。
【0025】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119によって増幅され、ミキサ118によってアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116によって4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる放射電極121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A~115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。減衰器114A~114Dは送信信号の強度を調整する。
【0026】
各放射電極121によって受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116によって合波される。合波された受信信号は、ミキサ118によってダウンコンバートされ、増幅回路119によって増幅されてBBIC200へ伝達される。なお、「放射電極121B」および「放射電極121A」は、本開示における「第1放射電極」および「第2放射電極」にそれぞれ対応する。
【0027】
(アンテナモジュールの構成)
図2は、実施の形態1に係るアンテナモジュール100を実装した通信装置10が有するマザーボード250を平面視した図である。図2に示す通信装置10は、典型的にはスマートフォンである。
【0028】
マザーボード250は、通信装置10が有する機能を実現するための部品が実装された平板形状のプリント基板である。マザーボード250は、たとえば、MLB(Multilayer board)から形成される。図2および以降の説明において、マザーボード250の法線方向をZ軸方向とし、それに直交する方向(マザーボード250の面内方向)をX軸およびY軸方向とする。マザーボード250は、BBIC200、カメラモジュール300を実装する。
【0029】
平面状のプリント基板であるマザーボード250は、図2に示すように、Z軸の正方向側の面にカメラモジュール300およびBBIC200を実装する。マザーボード250は、Z軸の負方向側の面にも他の部品を実装可能である。「マザーボード250」は「第3基板」に対応し、「マザーボード250のZ軸の正方向側および負方向側の面」は、本開示における「第3基板の主面」に対応する。また、「マザーボード250のX軸の正方向側および負方向側の面」および「「マザーボード250のY軸の正方向側および負方向側の面」は、本開示における「第3基板の側面」に対応する。以下では、カメラモジュール300およびBBIC200を実装する面であるマザーボード250のZ軸の正方向側および負方向側の面をマザーボード250の実装面と称する。
【0030】
マザーボード250の実装面の表面には、接地電極MGNDが配置される。図2では、接地電極MGNDは、マザーボード250の実装面の全面に広く貼り付けられるように配置されているが、マザーボード250の実装面の一部のみに配置されてもよい。また、接地電極MGNDは、マザーボード250の実装面の表層ではなく、内部に配置されていてもよい。
【0031】
カメラモジュール300は、スマートフォンである通信装置10が有するカメラ機能を実現するためのモジュールであり、レンズユニット、イメージセンサ、および信号処理部などを含む。
【0032】
アンテナモジュール100は、RFIC110と、放射電極121A1~121A4が形成されたアンテナ装置120Aと、放射電極121B1~121B4が形成されたアンテナ装置120Bとを含む。
【0033】
アンテナ装置120Aは、接続部材140Aを介してBBIC200に接続されている。また、アンテナ装置120Bは、接続部材140Bによってアンテナ装置120Aに接続されている。
【0034】
RFIC110は、アンテナ装置120AのY軸の負方向側に配置されている。RFIC110は、マザーボード250に配置されるBBIC200と電気的に接続されている。なお、「RFIC110」は、本開示における「給電回路」に対応する。
【0035】
アンテナ装置120を構成する誘電体基板は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシ、ポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂、PET(Polyethylene Terephthalate)材から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。なお、アンテナ装置120を構成する誘電体基板は必ずしも多層構造でなくてもよく、単層の基板であってもよい。
【0036】
放射電極121は、銅あるいはアルミニウムなどの平板形状の導電体で形成されている。放射電極121の形状は、図1に示したような矩形に限られず、多角形、円形、楕円、あるいは十字形状であってもよい。放射電極121は、誘電体基板の表面あるいは内部の層に形成される。
【0037】
図2の例においては、4つの放射電極121が一方向に配列されたアレイアンテナが示されているが、単独の放射電極121から形成されてもよいし、複数の放射電極が一次元あるいは二次元に配列された構成であってもよい。
【0038】
接地電極170Aは、アンテナ装置120Aの誘電体基板の内部において、放射電極121Aと対向して配置される。接地電極170Bは、アンテナ装置120Bの誘電体基板の内部において、放射電極121Bと対向して、配置される。
【0039】
なお、「アンテナ装置120Bを構成する誘電体基板」および「アンテナ装置120Aを構成する誘電体基板」は、本開示における「第1基板」および「第2基板」にそれぞれ対応する。「接地電極170B」および「接地電極170A」は、本開示における「第1接地電極」および「第2接地電極」にそれぞれ対応する。
【0040】
RFIC110からの高周波信号は、アンテナ装置120Aの放射電極121Aに対して供給される。また、RFIC110からの高周波信号は、接続部材140Bを介してアンテナ装置120Bの放射電極121Bに対して供給される。アンテナ装置120Aに高周波信号が供給されているときには、放射電極121Aから電波が放射され、放射電極121Bからは電波は放射されない。逆に、アンテナ装置120Bに高周波信号が供給されているときには、放射電極121Bから電波が放射され、放射電極121Aからは電波は放射されない。
【0041】
図2に示すように、放射電極121Aは、Y軸の正方向に対して露出する。すなわち、アンテナ装置120Aの電波の放射方向は、Y軸の正方向である。言い換えれば、アンテナ装置120Aの主面は、マザーボード250の側面であるY軸の正方向側の面と対向する。一方で、放射電極121Bは、X軸の負方向に対して露出する。すなわち、アンテナ装置120Bの電波の放射方向は、X軸の負方向である。言い換えれば、アンテナ装置120Bの主面は、マザーボード250の側面であるX軸の負方向側の面と対向する。なお、「マザーボード250の側面であるY軸の正方向側の面」は、本開示における「第1面」に対応し、「マザーボード250の側面であるX軸の負方向側の面」は、本開示における「第2面」に対応する。
【0042】
このように、実施の形態1のアンテナモジュール100が備えるアンテナ装置120Aおよびアンテナ装置120Bは、互いに異なる方向に向かって電波を放射する。なお、「アンテナ装置120Bの電波の放射方向」および「アンテナ装置120Aの電波の放射方向」は、本開示における「第1放射方向」および「第2放射方向」にそれぞれ対応する。
【0043】
接続部材140Aは、BBIC200とアンテナ装置120Aとを接続するための平板形状の接続部材である。接続部材140Aは、BBIC200からRFIC110に信号を伝達する。接続部材140Bは、アンテナ装置120Aに配置されたRFIC110からの高周波信号をアンテナ装置120Bに伝達する平板形状の接続部材である。なお、説明を簡単にするため、接続部材140Aおよび接続部材140Bを包括して「接続部材140」と称する場合がある。
【0044】
接続部材140は、平板形状のフラットケーブルである。すなわち、接続部材140のXY平面の面積は、接続部材140のXZ平面およびYZ平面の面積よりも比較的広い。たとえば、接続部材140Aでは、Z軸方向の長さがX軸方向の長さよりも比較的短い。
【0045】
よって、接続部材140は、Z軸の正方向側の面(以下では、表面と称する。)と、Z軸の負方向側の面(以下では、裏面と称する。)とを有する。以下では、接続部材140の表面および裏面を総称して「主面」と称する場合がある。接続部材140は、接続部材140の裏面がマザーボード250の実装面と接するように配置される。接続部材140は、たとえば、支持部材等によって接続部材140の表面側(Z軸の正方向側)から、Z軸の負方向側に押さえつけられる。
【0046】
接続部材140は、その内部に少なくとも1つの接地電極が形成されている。接続部材140Aは、接続部材140Aの内部において、接続部材140Aの裏面と対向するように接地電極FGND3Aを備える。接続部材140Bは、接続部材140Bの内部において、接続部材140Bの裏面と対向するように接地電極FGND3Bを備える。接地電極FGND3Aおよび接地電極FGND3Bは、接続部材140Bと同様に、XY平面がXZ平面およびYZ平面の面積よりも比較的広い平板形状を有する。以下では、「接地電極FGND3A」および「接地電極FGND3B」を総称して「接地電極FGND」と称する場合がある。なお、「接続部材140B」および「接続部材140A」は、本開示における「第1接続部材」および「第2接続部材」にそれぞれ対応する。
【0047】
上述の通り、接続部材140の裏面は、マザーボード250の実装面と広く面接触する。接続部材140の裏面とマザーボード250の実装面とが完全な面接触となる必要はないが、面接触する領域が広いほど望ましい。なお、実施の形態1における「接続部材140BのZ軸の正方向側および負方向側の面」である接続部材140Bの表面および裏面は、本開示における「第1接続部材の主面」に対応する。
【0048】
接続部材140A,140Bは、その内部に複数の給電配線が形成されている。接続部材140A,140Bは、LTCCなどのセラミックスあるいは樹脂によって形成された誘電体基板を有している。接続部材140A,140Bは、可撓性を有する材料で形成されていてもよいし、変形しないリジッドな材料で形成されてもよい。接続部材140A,140Bに含まれる給電配線および接地電極などの導電部材は、着脱可能の構成されたコネクタ、あるいは、はんだにより、各アンテナ装置およびマザーボード250に接続される。
【0049】
図3は、接続部材140Bがアンテナ装置120Bにはんだにより接続された例を示す図である。図3では、アンテナ装置120Bcは、アンテナ装置120Bと接続部材140Bが一体的に形成された構成である。接地電極GNDBは、接地電極FGND3Bと接地電極170Bとが一体となった構成である。これにより、アンテナ装置120Bcでは、接続部材140Bとアンテナ装置120Bとの間の接続コネクタを設ける必要がなくなり、接続コネクタの故障を防止することができる。
【0050】
図2に戻り、接続部材140Bの延伸方向は、アンテナ装置120Aからアンテナ装置120Bに至るまでにY軸の負方向からX軸の負方向へと屈曲する。なお、「接続部材140Bが延伸するY軸の負方向」および「接続部材140Bが延伸するX軸の負方向」は、本開示における「第1延伸方向」および「第2延伸方向」にそれぞれ対応する。接続部材140Bの屈曲の回数および各延伸方向は、図2に示す屈曲の回数および各延伸方向に限られない。また、各延伸方向は、X軸またはY軸と斜めに交差する方向であってもよい。
【0051】
図2で示すように、アンテナ装置120Bは、BBIC200、接続部材140A、アンテナ装置120A、および接続部材140Bを介して、マザーボード250から電力供給される。すなわち、アンテナ装置120Bは、マザーボード250からの信号伝達経路が長い位置に配置されている。
【0052】
アンテナ装置120Bに用いられる電波の周波数は、アンテナ装置120Aに用いられる電波の周波数よりも低い方が望ましい。たとえば、アンテナ装置120Bに用いられる電波の周波数は28GHzとし、アンテナ装置120Aに用いられる電波の周波数は39GHzとする。周波数の低い高周波信号の方が周波数の高い高周波信号よりも伝送線路において、発生するロスが少ないためである。
【0053】
実施の形態1では、さらに、伝送線路上においてアンテナ装置120Bが受信する高周波のロスを防止するために、増幅回路が設けられる。接続部材140Bには、アンテナ装置120Bとの接続箇所の近傍に、増幅回路であるフロントエンドモジュール(以下、「FEM(Front End Module)」とも称する。)180が配置されている。
【0054】
図4は、FEM180の概略図である。FEM180は、図4に示されるように、スイッチ181、182と、パワーアンプ183と、ローノイズアンプ184とを含む。FEM180においては、RFIC110の内部に設けられるスイッチ111A~111D、113A~113D、パワーアンプ112AT~112DT、ローノイズアンプ112AR~112DRと同様に、高周波信号を送信する場合にはスイッチ181、182がパワーアンプ183側に切換えられ、高周波信号を受信する場合にはスイッチ181、182がローノイズアンプ184側に切換えられる。
【0055】
パワーアンプ183とローノイズアンプ184は、それぞれ単一素子であり、複数のバンドをカバーできる。あるいは、パワーアンプ183とローノイズアンプ184は、それぞれのバンドごとに別個の素子として設けられてもよい。
【0056】
また、FEM180は、図示されていないコントローラ部を含む。当該コントローラ部は、スイッチ181、182と、パワーアンプ183と、ローノイズアンプ184とを制御する。
【0057】
FEM180は増幅回路であり、RFIC110とアンテナ装置120Bとの間を伝達する高周波信号を増幅して、RFIC110とアンテナ装置120Bとの間に生じる減衰を補償する。
【0058】
このように、FEM180が高周波信号を増幅して、伝送線路において発生するロスを減少させることができるため、アンテナ装置120Bは、比較的高い周波数帯である39GHzの電波が用いることができる。
【0059】
特に、RFIC110からの信号伝達経路の長さが比較的長いアンテナ装置120Bの近傍にFEM180が配置されることが望ましい。これにより、FEM180は、RFIC110内のパワーアンプ,ローノイズアンプにおいて増幅率が不足することを防止できる。なお、「FEM180」は、本開示における「増幅回路」に対応する。
【0060】
なお、図4においては、FEM180がパワーアンプ183およびローノイズアンプ184の双方を含む場合について説明したが、FEM180はパワーアンプ183およびローノイズアンプ184の少なくとも一方を含んでいればよく、パワーアンプ183またはローノイズアンプ184のいずれか一方のみを含む構成であってもよい。さらに、接続部材140Bは、FEM180を有さない構成であってもよい。
【0061】
図5は、マザーボード250上に配置された接続部材140Bの断面図である。接続部材140Bは、誘電体D1、伝送電極141、伝送電極142、接地電極FGND1B、接地電極FGND2B、および接地電極FGND3Bを備える。誘電体D1は、接続部材140Bの基材であり、たとえば、ポリイミドなどの樹脂から構成される。
【0062】
伝送電極141および伝送電極142は、それぞれ4つの伝送電極を含む。伝送電極141は、接地電極FGND1Bと接地電極FGND2Bとの間に挟まれることにより、トリプレート線路として機能する。伝送電極142は、接地電極FGND2Bと接地電極FGND3Bとの間に挟まれることにより、トリプレート線路として機能する。
【0063】
伝送電極141および伝送電極142を有する接続部材140Bは、合計して8つの伝送電極を備える。アンテナ装置120が備える各放射電極121は、異なる2つの偏波方向の電波を放射するように構成されているため、各放射電極121に給電点が2つ設けられている。すなわち、1つのアンテナ装置120は8つの給電点を備えており、接続部材の8つの伝送電極によりそれぞれ高周波信号が供給される。
【0064】
接続部材140Bは、Z軸の正方向側から支持部材等によって押圧されることにより、接続部材140Bの裏面がマザーボード250の実装面と広く面接触している。これにより、接続部材140Bの裏面がマザーボード250の実装面が接触していない場合よりも、マザーボード250の接地電極MGNDと接続部材140Bの接地電極FGND3との距離dが近づく。距離dは、接地電極MGNDと接地電極FGND3との間の距離を示す。なお、「接地電極MGND」および「接地電極FGND3」は、本開示における「第3接地電極」および「第4接地電極」にそれぞれ対応する。
【0065】
図2に戻り、接続部材140Bは、マザーボード250からの信号伝達経路が長いアンテナ装置120Bに接続されている。アンテナ装置120Bが備える接地電極170Bまたは接続部材140Bが備える接地電極FGND3Bは、浮遊容量によって、マザーボード250が備える接地電極MGNDよりも電位が高くなる。電位が高くなることにより、接地電極170Bおよび接地電極FGND3Bは、いわゆる電気的に浮いた状態となる。
【0066】
接続部材140Bおよび接地電極FGND3Bは、マザーボード250が備える接地電極MGNDとの電位差によってアンテナ(共振器)として機能し得る。実施の形態1のアンテナモジュール100においては、図5に示すように、接続部材140の裏面がマザーボード250の実装面と接することにより、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの距離dが小さくなる。このとき、たとえば距離dの長さは、0.1~0.2mmである。
【0067】
接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの距離dが小さくなれば、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間に発生する静電容量は大きくなる。また、容量性リアクタンスは静電容量に反比例するため、静電容量が大きくなれば、容量性リアクタンスは小さくなる。
【0068】
すなわち、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの距離dが小さくなれば、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間の容量性リアクタンスは小さくなる。その結果、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間が高周波的に接続し、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間の電位差は低減される。言い換えれば、浮遊容量によって接地電極MGNDの電位よりも高くなっていた接地電極FGND3Bの電位は低減される。
【0069】
したがって、接地電極FGND3Bおよび接地電極170Bの電位差は低減され、意図しない共振器が発生することを防止する。このように、実施の形態1のアンテナモジュール100では、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの距離dを小さくする。これにより、接地電極FGND3と接地電極MGNDとの間の電位差を低減し、接地電極FGND3と接地電極MGNDとが意図しない結合をすることを防ぎ、他のアンテナ装置との間において、不要共振が発生することを防ぐことができる。
【0070】
また、RFIC110は、パワーアンプ112AT~112DTおよび/またはローノイズアンプ112AR~112DRを含む給電回路であるため、信号増幅の際に発熱が生じ得る。アンテナ装置120Aはマザーボード250から突出した位置に配置されている。そのため、アンテナ装置120Aと通信装置10の筐体とが近接し、RFIC110からの熱によって筐体の温度が部分的に高くなる場合がある。
【0071】
実施の形態1のアンテナモジュール100では、接続部材140Bが、マザーボード250に面接触するように配置されている。これにより、アンテナ装置120Aに接続されている接続部材140Bを介して、RFIC110にて発生した熱をマザーボード250に伝達することができるため、アンテナモジュール100では、放熱効率を向上させることができる。
【0072】
また、接続部材140Bは、RFIC110からのみならずFEM180からも熱が伝達される。FEM180は、RFIC110と同様にパワーアンプ183および/またはローノイズアンプ184を含む増幅回路であるため、信号増幅の際に発熱が生じ得る。アンテナモジュール100は、FEM180にて発生した熱をも接続部材140Bを介してマザーボード250に伝達することができるため、放熱効率が向上する。接続部材140Bとマザーボード250との間に伝熱効率の高い部材(たとえば、銅などの金属)を配置して接触させてもよい。
【0073】
また、図2のアンテナモジュール100のように構成されることで、接続部材140Bは、カメラモジュール300を避けて配置することができる。すなわち、アンテナモジュール100では、接続部材140Bと他部品との不要な干渉が発生することを防止できる。
【0074】
アンテナ装置120Aおよびアンテナ装置120Bがマザーボード250のコーナー部に配置されることで、接続部材140Bの配線長を短くできる。なお、アンテナ装置120Bは、図示しない通信装置10の筐体と一体に形成されてもよい。すなわち、放射電極121Bは、通信装置10の筐体に配置され、接続部材140Bは、当該筐体とアンテナ装置120Aとを接続する。言い換えれば、アンテナモジュール100は、放射電極121Bが配置された通信装置10の筐体と、放射電極121Aおよび接地電極170Aが配置されたアンテナ装置120Aと、接地電極MGNDが配置されたマザーボード250と、筐体とアンテナ装置120Aとの間に接続され、接地電極FGND3Bが配置された平板形状の接続部材140Bとを備えてもよく、放射電極121Bには、接続部材140Bを介して高周波信号が伝達され、接続部材140Bの主面とマザーボード250の主面とが接してもよい。
(比較例)
図6は、実施の形態1に対する比較例のアンテナモジュール100Zを実装した通信装置10が有するマザーボード250を平面視した図である。図6のアンテナモジュール100Zは、実施の形態1と同様にマザーボード250に配置されたBBIC200、ならびにアンテナ装置120A,120Bに加えて、接続部材140A,140BZと、FEM180とを備える。なお、図6のアンテナモジュール100Zにおいて、図2のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0075】
図6では、接続部材140BZが、マザーボードの実装面上を通ることなく、マザーボード250のコーナー部を介して、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとを接続している。そのため、接続部材140BZとマザーボード250との間には、空気層w1,w2が生じる。接続部材140BZが支持部材等によって支持されマザーボード250のコーナーを介して接続される場合であっても、接続部材140BZとマザーボード250との間に少なくとも部分的に空気層w1,w2に対応する空気層が発生し得る。
【0076】
すなわち、接続部材140BZの裏面とマザーボード250の実装面とが接触する面積は、図2および図5に示す接続部材140Bの裏面とマザーボード250の実装面とが接触する面積よりも小さくなる。
【0077】
そのため、浮遊容量によって接地電極MGNDの電位よりも高くなっていた接地電極FGND3Bの電位は低減されることがなく、接地電極FGND3Bと接地電極170Bとの間に電位差が生じた状態となる。したがって、接地電極FGND3Bまたは接地電極170Bとマザーボード250の接地電極MGNDとが意図せずに共振器として機能し、他のアンテナ装置との間で不要共振を発生させ得る。その結果、他のアンテナ装置のアンテナ特性における損失は増大する。
【0078】
また、接続部材140Bに伝達されたRFIC110およびFEM180が発生させた熱は、接続部材140Bの裏面とマザーボード250の実装面とが接触する面積が小さいため、マザーボード250へ効率的に放熱することができず、筐体に熱が伝達されてしまう。
(変形例1)
図2では、アンテナ装置120A,120Bがマザーボード250の実装面方向であるX軸またはY軸方向に電波を放射する構成について説明した。しかしながら、通信装置10によっては、アンテナ装置120からの電波を、マザーボード250の実装面と直交する方向であるZ軸方向に向けて放射する場合がある。
【0079】
図7は、変形例1に係るアンテナモジュール100Aを実装した通信装置10が有するマザーボード250を平面視した図である。図7のアンテナモジュール100Aは、図2のアンテナモジュール100と同様にマザーボード250に実装されたBBIC200、ならびにアンテナ装置120A,120Bに加えて、接続部材140A,140Bと、FEM180とを備える。なお、図7のアンテナモジュール100Aにおいて、図2のアンテナモジュール100と重複する要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0080】
図7では、アンテナ装置120Aから放射される電波の放射方向が、図2のアンテナ装置120Aの放射方向と異なる。図7に示すように、アンテナ装置120Aの放射電極121A1~121A4は、Z軸の正方向に向かって電波を放射する。図7の接続部材140Bは、Z軸方向へ電波を放射するアンテナ装置120Aと、X軸方向に電波を放射するアンテナ装置120Bとを接続する。このように、アンテナ装置120の一方が、マザーボード250の主面の法線方向に電波を放射する場合であっても、接続部材140Bの主面とマザーボード250の主面とが接することにより、不要共振の発生の防止および放熱の効率性の向上を図ることができる。
【0081】
また、図7では、アンテナ装置120BがX軸方向に対して電波を放射し、アンテナ装置120AがZ軸方向に対して電波を放射する構成について説明したが、アンテナ装置120BがZ軸方向に電波を放射し、アンテナ装置120AがX軸方向またはY軸方向に対して電波を放射するように構成されてもよい。
【0082】
図8は、変形例1の接続部材140Bとマザーボード250との断面図である。なお、図8の接続部材140Bとマザーボード250との断面図において、図5の接続部材140Bとマザーボード250との断面図と重複する要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0083】
図5では、接続部材140Bが支持部材等によって押圧されることにより、接続部材140Bの裏面とマザーボード250の実装面とが接する構成について説明した。図8では、接続部材140Bがマザーボード250との間にビアVが形成されている。ビアVにより、接続部材140Bとマザーボード250とは、電気的に接続される。
【0084】
これにより、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間の電位差は、同電位となり、不要共振の発生を防ぐことができる。さらに、アンテナモジュール100Aでは、ビアVによって接続部材140Bとマザーボード250とが固定される。これにより、より安定して接続部材140Bの裏面とマザーボード250の実装面とが接触する面積を広く保つことができる。その結果、RFIC110およびFEM180にて発生した熱は、接続部材140Bを介して、より効率的に放熱される。
【0085】
あるいは、接続部材140Bは、接続部材140Bを形成する誘電体D1のうち、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間に配置している誘電体を備えない構成であってもよい。すなわち、接続部材140Bは、接地電極FGND3BがZ軸の負方向側に露出する構成となる。露出した接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとは、導電性の接着剤またははんだにより接合される。これにより、接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとが直接、面接触することとなり、より確実に接地電極FGND3Bと接地電極MGNDとの間の電位差を同電位とすることができる。
(変形例2)
図2および図7では、アンテナ装置120A,120Bの電波の放射方向が互いに異なる方向である場合について説明した。しかしながら、複数のアンテナ装置に同一の方向に電波を放射させて、電波の強度を高めたい場合が考えられる。
【0086】
そこで、変形例2においては、アンテナ装置120A,120Bがともに、X軸の負方向に向けて電波を放射する構成について説明する。図9は、変形例2に係るアンテナモジュール100Bを実装した通信装置10が有するマザーボード250を平面視した図である。図9を参照して、接続部材140Bは、X軸の負方向に向けて電波を放射するアンテナ装置120AとX軸の負方向に向けて電波を放射するアンテナ装置120Bとを接続する。
【0087】
この際、接続部材140Bは、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとの間の最短経路を通らずに、マザーボード250の実装面を経由してアンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとに接続される。同一方向に向けて電波を放射するアンテナ装置120の間の接続であっても、接続部材140Bの裏面をマザーボード250の実装面に接触させるように配置することによって、接続部材140Bとマザーボード250との接地面積を拡大し、接地電極間の電位差を低減することができる。したがって、同一方向に向けて電波を放射するアンテナ装置120の間の接続においても、不要共振の発生の防止および放熱の効率性の向上を図ることができる。
(変形例3)
変形例2では、少なくともアンテナ装置120Aまたはアンテナ装置120Bが、マザーボード250の実装面方向に向かって電波を放射する構成について説明した。しかしながら、アンテナ装置120Aおよびアンテナ装置120Bの両方から放射される電波を実装面方向と直交する方向に放射する場合が考えられる。たとえば、アンテナ装置120AからはZ軸方向の正方向に電波を放射し、アンテナ装置120BからはZ軸の負方向に電波を放射する場合がある。
【0088】
変形例3では、Z軸方向において、アンテナ装置120Aおよびアンテナ装置120Bが背向するように配置された構成について説明する。図10は、変形例3に係るアンテナモジュール100Cを実装した通信装置10が有するマザーボード250を平面視した図(図10(A))および側面視した図(図10(B))である。
【0089】
マザーボード250の実装面には、BBIC200が実装される。接続部材140Aは、アンテナ装置120AとBBIC200とを接続させる。接続部材140Bは、マザーボード250の実装面から該実装面と反対方向であるマザーボード250の裏面に向かって延伸するように配置し、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとを接続する。アンテナ装置120Aは、Z軸の正方向に向かって電波を放射し、アンテナ装置120Bは、Z軸の負方向に向かって電波を放射する。言い換えれば、アンテナ装置120Aの主面は、マザーボード250の主面であるZ軸の正方向側の面と対向する。また、アンテナ装置120Bの主面は、マザーボード250の主面であるZ軸の負方向側の面と対向する。なお、「マザーボード250の主面であるZ軸の正方向側の面」は、本開示における「第3面」に対応し、「マザーボード250の主面であるZ軸の負方向側の面」は、本開示における「第4面」に対応する。マザーボード250は、接地電極MGND1と接地電極MGND2とを備える。接地電極MGND1は、Z軸の正方向側に露出するように配置され、接地電極MGND2は、Z軸の負方向側に露出するように配置される。接地電極MGND1と接地電極MGND2とは、図示しない経路により接続されている。
【0090】
このように、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとが背向する方向に電波を放射する場合であっても、接続部材140Bをマザーボード250の実装面から該実装面と反対方向の面に向かって延伸するように配置することにより、接続部材140Bの裏面とマザーボード250のZ軸の正方向側の実装面とが接する。これにより、接続部材140Bの接地電極FGND3Bとマザーボード250の接地電極MGND1との電位差が低減される。
【0091】
また、接続部材140Bは、Z軸の正方向側のマザーボード250の実装面に加えて、Z軸の負方向側のマザーボード250の実装面と接触するように構成されてもよい。これにより、アンテナ装置120Bの近傍に配置された接地電極FGND3Bとマザーボード250の接地電極MGNDとの電位差を低減することができ、より効果的に不要共振の発生を防止することができる。
【0092】
また、アンテナモジュール100Cでは、アンテナ装置120BがZ軸の負方向側のマザーボード250の実装面においてY軸の正方向側に配置されていることにより、領域Ar1が生じる。これにより、アンテナモジュール100Cでは、領域Ar1に、たとえばカメラモジュールなどの他の部品を配置することが可能となる。
(変形例4)
変形例3では、アンテナ装置120BがZ軸の負方向側のマザーボード250の実装面においてY軸の正方向側に配置されている構成について説明した。しかしながら、接地電極FGND3とZ軸の負方向側に配置されたマザーボード250が備える接地電極MGND2との間の電位差を、より確実に低減したい場合が考えられる。
【0093】
図11は、変形例4に係るアンテナモジュール100Dを実装した通信装置10が有するマザーボード250を平面視した図(図11(A))および側面視した図(図11(B))である。
【0094】
図11のアンテナモジュール100Dでは、接続部材140Bがマザーボード250のZ軸の負方向側の実装面において、さらに延伸してアンテナ装置120Bと接続する。これにより、接続部材140Bとマザーボード250とは、領域Ar2において広く面接触する。これにより、より確実に接地電極FGND3Bと接地電極MGND2との間の電位差を低減することができる。
(変形例5)
変形例3および変形例4では、マザーボード250の部材がリジッドである構成について説明した。しかしながら、通信装置10に設けられたディスプレイが折り曲げ可能な部材から形成されている場合、可撓性のマザーボード250が用いられる場合がある。
【0095】
図12は、変形例5に係るアンテナモジュール100Eを実装した通信装置10が有するマザーボード250を背面視した図(図12(A))および側面視した図(図12(B))である。通信装置10は、ディスプレイDisを有するスマートフォンであり、ディスプレイDisは、折り曲げ部F1を支点として、Z軸の正方向側または負方向側に折り曲げることができる。
【0096】
筐体Cvは、通信装置10が含む最も外側の筐体である。図12(B)に示すように、ディスプレイDisは、Z軸の正方向側に向けて配置される。すなわち、ユーザーは、通信装置10をZ軸の正方向側から見ることによって、ディスプレイDisが表示する情報を確認することができる。
【0097】
図12(B)に示すようにマザーボード250は、筐体Cvの内部において、ディスプレイDisのZ軸の負方向側に配置される。接続部材140Bは、マザーボード250の実装面上から突出し、折り曲げ部F1を横切るように配置される。これにより、アンテナ装置120Bは、マザーボード250を平面視したときにマザーボード250と重ならない領域に配置することができる。このように、接続部材140Bを配置することで、アンテナ装置120Bは、ディスプレイ面DisS1に対向して配置され、アンテナ装置120Aはディスプレイ面DisS2に対向して配置される。
【0098】
通信装置10は、折り曲げ部F1を支点として、ディスプレイDisをZ軸の正方向側に折り曲げることができる。Z軸の正方向側に折り曲げる場合、ディスプレイDisが有するディスプレイ面DisS1とディスプレイ面DisS2とが互いに向かい合って、面接触する。折り曲げ部F1がZ軸の正方向側に折り曲げられた場合、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとは互いに背向する。
【0099】
あるいは、通信装置10は、折り曲げ部F1を支点としてZ軸の負方向側に折り曲げることができる。Z軸の負方向側に折り曲げられた場合、筐体Cvが有する筐体面CvS1と筐体面CvS2とが互いに向かい合って面接触し、アンテナ装置120Aとアンテナ装置120Bとは互いに対向する。
【0100】
図12に示すように、折り曲げ部F1を跨いで、アンテナ装置120Bがマザーボード250から離れた位置に配置される場合であっても、接続部材140Bが、マザーボード250の実装面と面接触するように配置されることにより、不要共振の発生の防止および放熱の効率性の向上を図ることができる。
【0101】
なお、「ディスプレイDis」は、本開示における「表示部」に対応する。「ディスプレイ面DisS1」および「ディスプレイ面DisS2」は、本開示における「第1表示面」および「第2表示面」にそれぞれ対応する。
【0102】
また、アンテナモジュール100Eでは、マザーボード250が、Z軸方向から平面視したときにディスプレイ面DisS1と重なる領域とディスプレイ面DisS2と重なる領域とに分割され、別個のマザーボードを備えてもよい。すなわち、マザーボード250は、折り曲げ部F1を境にして分割される。あるいは、マザーボード250は、Z軸方向から平面視したときにディスプレイ面DisS1と重なる領域とディスプレイ面DisS2と重なる領域とのいずれか一方の領域のみに配置されてもよい。
【0103】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
10 通信装置、100,100A,100B,100C,100D,100E,100Z アンテナモジュール、111A,111B,111C,111D,113A,113D,117,130A,130B,130C,130D,181 スイッチ、112AR,112DR,184 ローノイズアンプ、112AT,112DT,183 パワーアンプ、114A,114D 減衰器、115A,115D 移相器、116 分波器、118 ミキサ、119 増幅回路、120,120A,120B,120Bc アンテナ装置、121,121A,121A1,121A2,121A3,121A4,121B,121B1,121B2,121B3,121B4 放射電極、130 切換回路、140,140A,140B,140BZ 接続部材、141,142 伝送電極、170A,170B,FGND1B,FGND2B,FGND3B,GNDB,FGND3A,MGND,MGND1,MGND2 接地電極、250 マザーボード、300 カメラモジュール、Ar1,Ar2 領域、Cv 筐体、CvS1,CvS2 筐体面、D1 誘電体、Dis ディスプレイ、DisS1,DisS2 ディスプレイ面、F1 折り曲げ部、T1D,T1A,T1B,T1C 第1端子、T2A,T2D,T2B,T2C 第2端子、T3C,T3D,T3B,T3A 第3端子、V ビア、d 距離、w1,w2 空気層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12