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特許7537507データ処理システム、データ処理方法、及び情報処理装置を用いてデータ処理方法を実行するためのコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】データ処理システム、データ処理方法、及び情報処理装置を用いてデータ処理方法を実行するためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240814BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240814BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 B
G06T1/00 200D
G06T1/00 200E
C12Q1/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022553454
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016767
(87)【国際公開番号】W WO2022070494
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020164499
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】澤田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛士
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-031593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G06T 1/00-1/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置及び情報表示装置を有するデータ処理システムであって、
前記情報処理装置は、
所定のデータ取得装置により取得された複数のデータを、前記データとそれぞれの前記データの少なくとも1種類の付随情報とを関連付けて前記データ処理システムで取り扱うデータとして登録するように構成されたデータ登録部と、
前記データ登録部により登録されたデータを保持する登録データ保持部と、
任意に選択された種類の前記付随情報を用いて、前記登録データ保持部に保持されている前記複数のデータを当該付随情報が共通する前記データが同じグループに属するようにグループ分けし、前記複数のデータがグループごとに分けられた状態を示す仮想的なデータツリーを作成するデータツリー作成部と、
前記データツリー作成部により作成されたデータツリーを前記情報表示装置に表示するように構成された情報表示部と、を備え、
前記データ登録部は、前記複数のデータのそれぞれに複数種類の前記付随情報を関連付けて登録するように構成されており、
前記データツリー作成部は、前記グループ分けに複数種類の前記付随情報を使用するように設定されている場合に、前記付随情報の種類ごとに予め設定されている優先順位が高い種類の前記付随情報ほど上層に位置する階層構造の前記データツリーを作成するように構成されており、
前記優先順位は、任意に変更可能であるように構成されており、
前記データは細胞培養の画像、又は、前記画像を解析して取得された数値であり、
前記付随情報は、継代数及び培養日数の少なくともいずれか一方を含む、データ処理システム。
【請求項2】
前記データは分析又は解析により取得された数値であり、
前記情報処理装置は、前記データツリー作成部により作成された前記データツリーの構造に基づき、前記複数のデータの各数値を示す第1の軸、及び、前記グループ分けに使用された少なくとも1つの前記付随情報を示す第2の軸を有するグラフを作成するグラフ作成部をさらに備えている、請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項3】
所定のデータ取得装置により取得された複数のデータを、前記データとそれぞれの前記データの少なくとも1種類の付随情報とを関連付けて登録する登録ステップと、
任意に選択された種類の前記付随情報を用いて、当該付随情報が共通する前記データが同じグループに属するように、前記登録するステップにおいて登録された前記複数のデータをグループ分けし、前記複数のデータがグループごとに分けられた状態を示す仮想的なデータツリーを作成するツリー作成ステップと、
前記ツリー作成ステップで作成されたデータツリーを所定の情報表示装置に表示する表示ステップと、を備え、
前記登録ステップにおいて前記複数のデータのそれぞれに複数種類の前記付随情報を関連付けて登録し、
前記ツリー作成ステップにおいて、前記付随情報の種類ごとに予め設定されている優先順位が高い種類の前記付随情報ほど上層に位置する階層構造の前記データツリーを作成し、
前記優先順位を変更する順位変更ステップをさらに備えており、
前記データは細胞培養の画像、又は、前記画像を解析して取得された数値であり、
前記付随情報は、継代数及び培養日数の少なくともいずれか一方を含む、データ処理方法。
【請求項4】
前記データが分析又は解析により取得された数値である場合に、前記ツリー作成ステップで作成された前記データツリーの構造に基づき、前記複数のデータの各数値を示す第1の軸、及び、前記グループ分けに使用された少なくとも1つの前記付随情報を示す第2の軸を有するグラフを作成するグラフ作成ステップをさらに備えている、請求項に記載のデータ処理方法。
【請求項5】
情報処理装置に適用されることにより請求項に記載されたデータ処理方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理システム、データ処理方法、及び情報処理装置を用いてデータ処理方法を実行するためのコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養では、培養プレートの各ウェル内の状態を観察するために、顕微鏡を用いて各ウェル内を撮像することが一般的である。各ウェル内の撮像画像は、細胞の継代数、培養日数、培養プレートにおける各ウェルの位置、撮像に用いた顕微鏡の種類といった付随情報と紐づけて管理される必要がある。そのため、PC(パーソナルコンピュータ)に各画像データを保存する際には、各画像データのファイル名にデータの付随情報を入れるとともに、画像の付随情報が付された複数のフォルダ群で形成される階層構造のフォルダ構成を作成し、付随情報の適合するフォルダ内に各画像データを振り分けて格納するといった手法が取られることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように階層構造のフォルダ構成によって多数の画像データを管理する手法では、フォルダ分け、ファイル名の命名等に関する規則は作業者によって異なり得るものである。そのため、最初にデータを整理した作業者以外の者はどのフォルダにどのようなデータが格納されているのかを把握することが難しいという問題があった。
【0004】
また、階層構造のフォルダ構成とすると、別のフォルダ内に格納されている複数のデータを同時に確認したり比較したりする作業が煩雑になり、作業ミスの原因になり得る。階層構造をもつフォルダ構成では、親フォルダの下層に子フォルダ又はデータファイルを紐づけることになるので、一度構築されたフォルダ構成の構造を変更して別のデータ構成を再構築することも容易ではない。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、付随情報の異なる多数のデータの管理を容易にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るデータ処理システムは、情報処理装置及び情報表示装置を有するデータ処理システムであって、前記情報処理装置が、所定のデータ取得装置により取得された複数のデータを、前記データとそれぞれの前記データの少なくとも1種類の付随情報とを関連付けて前記データ処理システムで取り扱うデータとして登録するように構成されたデータ登録部と、前記データ登録部により登録されたデータを保持する登録データ保持部と、任意に選択された種類の前記付随情報を用いて、前記登録データ保持部に保持されている前記複数のデータを当該付随情報が共通する前記データが同じグループに属するようにグループ分けし、前記複数のデータがグループごとに分けられた状態を示す仮想的なデータツリーを作成するデータツリー作成部と、前記データツリー作成部により作成されたデータツリーを前記情報表示装置に表示するように構成された情報表示部と、を備えているものである。
【0007】
本発明に係るデータ処理方法は、所定のデータ取得装置により取得された複数のデータを、前記データとそれぞれの前記データの少なくとも1種類の付随情報とを関連付けながら登録する登録ステップと、任意に選択された種類の前記付随情報を用いて、当該付随情報が共通する前記データが同じグループに属するように、前記登録するステップにおいて登録された前記複数のデータをグループ分けし、前記複数のデータがグループごとに分けられた状態を示す仮想的なデータツリーを作成するツリー作成ステップと、前記ツリー作成ステップで作成されたデータツリーを所定の情報表示装置に表示する表示ステップと、を備えている。
【0008】
ここで、「所定のデータ取得装置」には、細胞培養ウェル内を撮像するための顕微鏡、そのような顕微鏡によって取得された画像を解析する解析装置などが含まれる。データ取得装置が細胞培養ウェル内を撮像する顕微鏡である場合には、取得されるデータは画像のデータである。また、データ取得装置がそのような画像を解析する解析装置である場合には、取得されるデータは画像中の細胞(セル)の数、画像中で細胞領域が占める面積の割合といった数値のデータである。これらのデータの「付随情報」には、撮像されたウェルに関する情報(培養プレートにおけるウェルの位置等)、撮像に用いられた顕微鏡の種類、細胞の培養日数、細胞の継代数といった種類の情報を含むことができる。
【0009】
本発明では、所定のデータ取得装置で取得された複数のデータを特定の階層構造を形成する複数のフォルダに振り分けて管理するのではなく、複数のデータのそれぞれに付随情報を関連付けて管理する。各データに関連付けられた付随情報は各データの属性を示すラベルの役割を果たすものであり、ユーザがラベルとして有効に機能させたい付随情報の種類を選択すると、選択された種類の付随情報が共通する(すなわち、その種類の付随情報として入力されている数値等の情報が同一である)データが同じグループに属するように各データをグループ分けし、あたかも階層構造をもつフォルダ構成が構築されているように、仮想的なデータツリーを作成して表示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るデータ処理システム及びデータ処理方法では、ユーザがラベルとして有効に機能させたい付随情報の種類を選択すると、選択された種類の付随情報が共通するデータが同じグループに属するように各データがグループ分けされ、あたかも階層構造をもつフォルダ構成が構築されているように、仮想的なデータツリーが自動的に作成されて表示されるので、実際に階層構造をもつフォルダ構成をユーザが構築しなくても、異なる付随情報をもつ多数のデータを容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】データ処理システムの一実施例を示すブロック図である。
図2】同実施例におけるデータ登録に関する一連の動作の一例を示すフローチャートである。
図3】データ登録の際に表示される画面の一例である。
図4】複数のデータが登録された後のデータ構成の概念図である。
図5】同実施例において仮想的なデータツリーを表示するための動作を示すフローチャートである。
図6】仮想的なデータツリーの一例である。
図7】グループ分けに使用する付随情報の優先順位を図6のデータツリーから変更したときに作成されるデータツリーの一例である。
図8】グループ分けに使用する付随情報の1つを無効にしたときに作成されるデータツリーの一例である。
図9】グラフの作成の基となるデータツリーの一例である。
図10図9のデータツリーに基づいて作成されたグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るデータ処理システム、データ処理方法及びコンピュータプログラムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に、データ処理システムの概略的構成を示す。
【0014】
データ処理システム1は情報処理装置2及び情報表示装置4を備えている。情報処理装置2は、データ取得装置6で取得された複数のデータを取り込んで所定の処理を行なう機能を有するものである。情報処理装置2は、ハードディスクドライブなどの情報記憶媒体及びCPU(中央演算装置)を備えた電子回路を備えたコンピュータ装置(例えば、パーソナルコンピュータ)であって、後述する各機能を実現するためのコンピュータプログラムが導入されたものである。情報表示装置4は情報処理装置2と通信可能に接続されたディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)である。データ取得装置6としては、細胞培養プレートの各ウェル内を撮像するための顕微鏡、そのような顕微鏡により取得された画像を解析する解析装置などが挙げられる。なお、この実施例では示されていないが、情報処理装置2が顕微鏡から取り込まれた画像データの解析を行なう機能を備えている場合、情報処理装置2が解析データを取得するためのデータ取得装置6としても機能する。
【0015】
情報処理装置2は、データ登録部8、登録データ保持部10、データツリー作成部12、情報表示部14及びグラフ作成部16を備えている。データ登録部8、データツリー作成部12、情報表示部14及びグラフ作成部16は、情報処理装置2に導入されている所定のコンピュータプログラムがCPUによって実行されることで実現される機能である。登録データ保持部10は、情報処理装置2内の情報記憶媒体の一部の記憶領域によって実現される機能である。
【0016】
データ登録部8は、データ取得装置6によって取得されたデータを、そのデータの付随情報と関連付けてこのデータ処理システム1で取り扱うデータとして登録するように構成されている。登録データ保持部10は、データ登録部8により登録されたデータを保持するように構成されている。
【0017】
図2及び図3を用いて、データ登録に関する一連の動作について説明する。
【0018】
ユーザがデータの登録の指示を情報処理装置2に入力すると、データ登録部8は、図3に示されるようなデータ登録画面を情報表示装置4に表示する。ユーザは、表示されたデータ登録画面上で、情報処理装置2に取り込まれている又は取り込むことが可能なデータを参照して、登録したいデータを選択し、そのデータの付随情報を入力する(ステップ101)。
【0019】
図3は、顕微鏡によって撮像された細胞培養ウェルの画像データの登録画面の例であり、データの付随情報として細胞の継代数、培養日数を入力するようになっている。ユーザが登録すべきデータを選択してそのデータの付随情報を入力し、その内容を決定する(図3では登録ボタンを押す)と、データ登録部8は選択されているデータと入力された付随情報とを互いに関連付け(ステップ102)、このデータ処理システム1で取り扱うデータとして登録する(ステップ103)。データ登録部8によって登録されたデータは、付随情報と関連付けられた状態で登録データ保持部10に保存される(ステップ104)。
【0020】
上記の一連の動作を、データ処理システム1で取り扱うべきデータのすべてについて実行する。その結果、登録データ保持部10には、図4に示されているように、複数のデータが共通の種類の付随情報と関連付けられた状態で存在することになる。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。情報処理装置2のデータツリー作成部12は、登録データ保持部10に保持されている複数のデータを各データに関連付けられた付随情報によってグループ分けし、階層構造を有する仮想的なデータツリーを作成するように構成されている。データツリーとは、各データの付随情報に対応するタイトルの複数のフォルダに各データが振り分けられた状態を一覧で示す形式である。データツリー作成部12によるデータツリーの作成は、例えば、ユーザに対して登録データ保持部10に保持されている複数のデータを提示する際に実行される。情報表示部14は、データツリー作成部12により作成された仮想的なデータツリーを情報表示装置4に表示するように構成されている。
【0022】
図5を用いて、データツリーの作成に関する一連の動作について説明する。
【0023】
データツリー作成部12は、例えばユーザがこのデータ処理システム1に登録されたデータを参照しようとしたときに、対象の登録データを登録データ保持部10から読み出し(ステップ201)、それらの登録データに関連付けられている付随情報を用いて読み出した登録データのグループ分けを行ない(ステップ202)、そのグループ分けに基づいた階層構造のデータツリーを作成する(ステップ203)。情報表示部14は、データツリー作成部12により作成された仮想的なデータツリーを情報表示装置4に表示する(ステップ204)。
【0024】
ここで、登録データに関連付けられる付随情報には、グループ分けに使用するか否か、グループ分けに使用される優先順位がそれぞれ予め設定されている。これらの設定は、ユーザが任意に変更することができる。例えば、デフォルトの設定ではすべの付随情報がグループ分けに使用されるようになっており、各付随情報にデフォルトの優先順位が設定されている。ユーザがデータを参照しようとした際には、デフォルトの優先順位に基づいたデータツリーがデータツリー作成部12によって作成され、作成されたデータツリーが、グループ分けに使用する付随情報及びそれらの付随情報の優先関係を示すグループ分け条件とともに情報表示装置4に表示される。ユーザは、各付随情報についてグループ分けに使用する(有効)かグループ分けに使用しない(無効)かの切替え、及び、各付随情報の優先関係の入替えを行なうことができ、任意にグループ分け条件を変更することができる。このようなグループ分け条件の変更操作は、マウスによるドラッグ、キー入力などによって行なうことができる。ユーザによってグループ分け条件が変更されると、データツリー作成部12によって変更後のグループ分け条件に基づくデータツリーが即時に作成され、情報表示装置4に表示される。これにより、ユーザの所望するグループ分け条件に基づくデータツリーがリアルタイムで表示される。
【0025】
図6は、データツリー作成部12により作成された仮想的なデータツリーの一例である。登録されたデータA~Hのそれぞれに、「培養日数」、「継代数」という種類の付随情報が関連付けられており、いずれの種類の付随情報もグループ分けに使用するように設定されている。最上部には、グループ分けに使用する付随情報の種類とそれらの優先関係を示すグループ分け条件が表示されており、この例では、「培養日数」の優先順位が「継代数」の優先順位よりも高く設定されている。この設定では、最初に、培養日数が共通するデータが同じグループに属するように「培養日数:1」のグループ(データA~D)と「培養日数:2」のグループ(データE~F)に分けられ、各グループ内で「継代数:1」のグループと「継代数:2」のグループに分けられる。その結果、図のような階層構造のデータツリーが作成される。
【0026】
図7は、図6のデータツリーから付随情報の優先関係を変更したときに作成されるデータツリーの一例である。ユーザが継代数の優先順位を培養日数の優先順位よりも高く設定すると、最初に継代数が同じデータが同じグループに属するように「継代数:1」のグループと「継代数:2」のグループに分けられ、各グループ内で「培養日数:1」のグループと「培養日数:2」のグループに分けられる。その結果、図のような階層構造のデータツリーが作成される。
【0027】
図8は、図7の例においてグループ分けに使用されていた付随情報「培養日数」を無効(グループ分けに使用しない)に設定したときに作成されるデータツリーの一例である。この例では、付随情報「培養日数」が無効にされたため、有効になっている付随情報「継代数」のみで各データA~Hのグループ分けが行われ、「継代数:1」のグループと「継代数:2」のグループからなるデータツリーが作成されている。
【0028】
以上のように、この実施例のデータ処理システム1では、ユーザが登録済みの複数のデータを参照しようとしたときに、任意の付随情報を任意の優先関係で用いてグループ分けし、データツリーとして表示することができる。
【0029】
なお、このデータ処理システム1で取り扱う「データ」は、データ取得装置6が細胞培養ウェルの画像を撮像する顕微鏡である場合には画像データであるが、情報処理装置2がその画像の解析処理を行なう機能を備えている場合に、情報処理装置2自身が画像データを解析処理して得られた「細胞数」、「細胞領域の占める面積割合」といった数値データも「データ」に含まれ得る。その場合、データ登録部8は、画像データを解析処理して得られた数値データを、元の画像データに関連付けられていた「培養日数」、「継代数」等の付随情報と関連付けて登録し、登録データ保持部10に保持させるように構成することができる。
【0030】
図1に戻って、情報処理装置2のグラフ作成部16は、登録データが数値データである場合に、各登録データの数値と各登録データに関連付けられている付随情報を用いて、データツリー作成部12により作成されたデータツリーに基づくグラフを作成するように構成されている。データツリー作成部12によって作成されるデータツリーとグラフ作成部16によって作成されるグラフとの関係の一例を、図9及び図10を用いて以下に説明する。
【0031】
図9は、登録された数値データA~Lが付随情報「培養日数」、「継代数」によってグループ分けされた状態を示すデータツリーである。このようなデータツリーが作成されたときに、例えばユーザがデータの解析を指示すると、グラフ作成部16は、図10に示されているように、最下層の(最も優先順位が低い)付随情報である「継代数」を横軸にとり、各データの数値を表すための数値(ここではセルカウント数)を縦軸にとり、最下層から2番目の付随情報である「培養日数」を凡例とするグラフを作成する。この例では、各培養日数に2つの数値データ(例えば、培養日数:1かつ継代数:1の数値データはデータA、B)が存在するため、それらの平均値がグラフ表示されている。
【0032】
グラフ作成部16が作成するグラフは、図10のような棒グラフに限定されるものではなく、折れ線グラフ、円グラフ等、種々のグラフであってよい。
【0033】
以上において説明した実施例は、本発明の実施形態の例示に過ぎない。本発明の実施形態は以下に示す通りである。
【0034】
本発明に係るデータ処理システムの実施形態は、情報処理装置及び情報表示装置を有するデータ処理システムであって、前記情報処理装置は、所定のデータ取得装置により取得された複数のデータを、前記データとそれぞれの前記データの少なくとも1種類の付随情報とを関連付けて前記データ処理システムで取り扱うデータとして登録するように構成されたデータ登録部と、前記データ登録部により登録されたデータを保持する登録データ保持部と、任意に選択された種類の前記付随情報を用いて、前記登録データ保持部に保持されている前記複数のデータを当該付随情報が共通する前記データが同じグループに属するようにグループ分けし、前記複数のデータがグループごとに分けられた状態を示す仮想的なデータツリーを作成するデータツリー作成部と、前記データツリー作成部により作成されたデータツリーを前記情報表示装置に表示するように構成された情報表示部と、を備えている。
【0035】
データ処理システムの前記実施形態の第1態様では、前記データ登録部は、前記複数のデータのそれぞれに複数種類の前記付随情報を関連付けて登録するように構成されており、前記データツリー作成部は、前記グループ分けに複数種類の前記付随情報を使用するように設定されている場合に、前記付随情報の種類ごとに予め設定されている優先順位が高い種類の前記付随情報ほど上層に位置する階層構造の前記データツリーを作成するように構成されている。
【0036】
上記第1態様において、前記優先順位は、任意に変更可能であるように構成されていてもよい。そうすれば、ユーザは任意にデータツリーの階層構造を変更することができ、データ管理が容易になる。
【0037】
データ処理システムの前記実施形態の第2態様では、前記データは細胞培養の画像、又は、前記画像を解析して取得された数値である。その場合、前記付随情報として、継代数及び培養日数の少なくともいずれか一方を含むことができる。この第2態様は上記第1態様と組み合わせることができる。
【0038】
データ処理システムの前記実施形態の第3態様では、前記データは分析又は解析により取得された数値である。その場合、前記情報処理装置は、前記データツリー作成部により作成された前記データツリーの構造に基づき、前記複数のデータの各数値を示す第1の軸、及び、前記グループ分けに使用された少なくとも1つの前記付随情報を示す第2の軸を有するグラフを作成するグラフ作成部をさらに備えていてもよい。この第3態様は、上記第1態様及び/又は第2態様と組み合わせることができる。
【0039】
本発明に係るデータ処理方法の実施形態は、所定のデータ取得装置により取得された複数のデータを、前記データとそれぞれの前記データの少なくとも1種類の付随情報とを関連付けて登録する登録ステップと、任意に選択された種類の前記付随情報を用いて、当該付随情報が共通する前記データが同じグループに属するように、前記登録するステップにおいて登録された前記複数のデータをグループ分けし、前記複数のデータがグループごとに分けられた状態を示す仮想的なデータツリーを作成するツリー作成ステップと、前記ツリー作成ステップで作成されたデータツリーを所定の情報表示装置に表示する表示ステップと、を備えている。
【0040】
データ処理方法の実施形態の第1態様では、前記登録ステップにおいて前記複数のデータのそれぞれに複数種類の前記付随情報を関連付けて登録し、前記ツリー作成ステップにおいて、前記付随情報の種類ごとに予め設定されている優先順位が高い種類の前記付随情報ほど上層に位置する階層構造の前記データツリーを作成する。
【0041】
上記第1態様において、前記優先順位を変更する順位変更ステップをさらに備えることができる。そうすれば、ユーザは任意にデータツリーの階層構造を変更することができ、データ管理が容易になる。
【0042】
データ処理方法の実施形態の第2態様では、前記データが分析又は解析により取得された数値である場合に、前記ツリー作成ステップで作成された前記データツリーの構造に基づき、前記複数のデータの各数値を示す第1の軸、及び、前記グループ分けに使用された少なくとも1つの前記付随情報を示す第2の軸を有するグラフを作成するグラフ作成ステップをさらに備えている。
【0043】
本発明に係るコンピュータプログラムの実施形態は、情報処理装置に適用されることにより上述のデータ処理方法を実行するように構成されたものである。
【符号の説明】
【0044】
1 データ処理システム
2 情報処理装置
4 情報表示装置
6 データ取得装置
8 データ登録部
10 登録データ保持部
12 データツリー作成部
14 情報表示部
16 グラフ作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10