(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ステータアッシー、ブラシレスモータ、および、ステータアッシーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H02K1/18 E
(21)【出願番号】P 2022553475
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2021024718
(87)【国際公開番号】W WO2022070537
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020166696
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 修
(72)【発明者】
【氏名】古屋 美幸
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0272904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にロータを配置可能なステータアッシーであって、
ステータと、
前記ステータが配置される空間を有する筐体と、
絶縁性樹脂と、
を備え、
前記筐体は
、
平面視して円形の第1主壁と前記第1主壁の外周端に沿って形成され前記第1主壁の主面に直交する方向に延びる円筒形の第1側壁とを備え、前記第1側壁における延びる方向の一方端を前記第1主壁で塞ぎ、他方端を塞がないようにして形成される第1開口を有する第1筐体部材と
、
平面視して円形の第2主壁を備え、前記第2主壁を貫通する形状で形成され、前記第1開口よりも開口面積が小さい第2開口を有する第2筐体部材と
、
を備え、
前記第2筐体部材は
、前記第1側壁の前記延びる方向の他方端に配置され、かつ、前記第1主壁と前記第2主壁とが略平行になり、前記第2開口が前記第1開口の中心に重なるように前記第1筐体部材に配置され、
前記第2開口が前記ロータの軸を前記ステータアッシーの外部に突出させるための開口であり
、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とで囲まれる空間における前記第1開口が前記第2筐体部材で塞がれる部分で前記ステータが配置される空間を構成し、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とで囲まれる空間における前記ステータが配置される空間よりも前記平面視において中央側に、前記第1開口の中央部と前記第2開口とが重なる部分で前記ロータを配置するための空間を構成し、
前記第1筐体部材と前記第2筐体部材と前記ステータとは、前記ステータが配置される空間に充填された前記絶縁性樹脂によって固定されている、
ステータアッシー。
【請求項2】
前記絶縁性樹脂は、前記第1筐体部材の内壁面、および、前記第2筐体部材の内壁面に、面で接している、
請求項1に記載のステータアッシー。
【請求項3】
前記絶縁性樹脂は、空気よりも高い熱伝導率を有する、
請求項1または請求項2に記載のステータアッシー。
【請求項4】
前記ステータの内周端に沿って配置され、前記筐体とともに前記ステータおよび前記絶縁性樹脂を囲む補助部材を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のステータアッシー。
【請求項5】
前記補助部材は、前記ステータを構成する複数のステータコアの間に挟み込まれる複数の突起部を備える、
請求項4に記載のステータアッシー。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のステータアッシーと、
前記ステータの内側に配置されたロータと、
を備え、
前記ロータのシャフトは、前記第2開口から前記ステータアッシーの外部に突出している、
ブラシレスモータ。
【請求項7】
内部にロータを配置可能なステータアッシーの製造方法であって、
平面視して円形の第1主壁と前記第1主壁の外周端に沿って形成され前記第1主壁の主面に直交する方向に延びる円筒形の第1側壁とを備え、前記第1側壁における延びる方向の一方端を前記第1主壁で塞ぎ、他方端を塞がないようにして形成される第1開口を有する第1筐体部材に、ステータを配置する工程と、
平面視して円形の第2主壁を備え、前記第2主壁を貫通する形状で形成され、前記第1開口よりも開口面積の小さい第2開口を有する第2筐体部材を、
前記第1側壁の前記延びる方向の他方端に配置し、かつ、前記第1主壁と前記第2主壁とが略平行になり、前記第2開口が前記第1開口の中心に重なるように前記第1筐体部材に配置して、前記第2開口が前記ロータの軸を前記ステータアッシーの外部に突出させるための開口となり
、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とで囲まれる空間における前記第1開口が前記第2筐体部材で塞がれる部分で前記ステータが配置される空間を構成
し、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とで囲まれる空間における前記ステータが配置される空間よりも前記平面視において中央側に、前記第1開口の中央部と前記第2開口とが重なる部分で前記ロータを配置するための空間を構成する工程と、
前記ステータ、前記第1筐体部材の内部空間を形成する内壁面、および、前記第2筐体部材の内部空間を形成する内壁面に当接するように、前記第1筐体部材と前記第2筐体部材とで囲まれる空間における前記第2筐体部材によって塞がれ、前記ステータが配置されている部分に絶縁性樹脂を流入する工程と、
前記絶縁性樹脂を硬化させる工程と、
を有する、ステータアッシーの製造方法。
【請求項8】
前記ステータを配置する工程の前に、前記ステータが配置される空間を形成するための補助部材を、前記第1筐体部材に装着する工程を、
さらに有する、請求項7に記載のステータアッシーの製造方法。
【請求項9】
前記補助部材は、円筒形の主体部と、円環形の底部と、前記主体部の円周面に設けられた複数の突起部とを備え、一体成形されていることを特徴とする、請求項8に記載のステータアッシーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータのステータアッシーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インナーロータ型で片軸構造のブラシレスモータが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のブラシレスモータは、ロータ、ステータ、保持板、および、カバー部材を備える。ロータの軸の一方端側には、保持板が配置され、ロータの軸の一方端は、保持板に当接する。ステータは、ロータの外周側に配置される。ステータは、保持板に固定される。
【0004】
カバー部材は、一方端が開口する円筒形であり、ステータおよびロータを覆うように配置される。保持板は、カバー部材の開口を覆うように、カバー部材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す構造では、ロータの回転によって生じる振動から、大きな音が発生してしまう。
【0007】
したがって、本発明は、静音性に優れたブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のステータアッシーは、ステータと、ステータが配置される空間を有する筐体と、空間に配置された絶縁性樹脂と、を備える。筐体とステータとは、絶縁性樹脂によって固定されている。
【0009】
この構成では、筐体とステータとが絶縁性樹脂によって固定され、一体化された構造体となる。これにより、励磁振動、および、構造体共振が抑制される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、静音性に優れたブラシレスモータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るブラシレスモータ10の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るブラシレスモータ10の構成を示す側面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るステータアッシー20の構成を示す側面断面図である。
【
図4】
図4(A)は、振動レベルの周波数特性を示し、
図4(B)は、モータ温度上昇量の時間特性を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係るステータアッシーの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るステータアッシー20Aの構成を示す側面断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るステータアッシー20Aの分解斜視図である。
【
図8】
図8は、充填用補助部材の別形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るブラシレスモータ、ステータアッシー、および、これらの製造方法について、図を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るブラシレスモータ10の外観斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係るブラシレスモータ10の構成を示す側面断面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るステータアッシー20の構成を示す側面断面図である。
【0014】
(ブラシレスモータ10の概略構成)
図1、
図2に示すように、ブラシレスモータ10は、ステータアッシー20、および、ロータ30を備える。ステータアッシー20の具体的な構造は後述する。
【0015】
ロータ30は、
図2に示すように、ロータヨーク31、磁石32、および、シャフト33を備える。ロータ30の具体的な構造の説明は省略する。
【0016】
ステータアッシー20は、開口234を有する。ロータ30は、開口234から、ステータアッシー20の内部に挿入される。ブラシレスモータ10(ステータアッシー20)を平面視して、開口234は、
図7に示すようにステータ40の中央空間400と重なっている。これにより、ロータ30は、ステータ40の内側に配置される。言い換えれば、ステータ40は、ロータ30の外周側に配置される。
【0017】
ロータ30のシャフト33の延びる方向の一方端は、ステータアッシー20の開口234側から外部に突出している。ロータ30のシャフト33の延びる方向の他方端は、ステータアッシー20によって回転可能に支持されている。
【0018】
この構成において、ステータ40に与える信号を制御することで、ロータ30の回転は、制御される。これにより、ブラシレスモータ10は、インナーロータ型で片軸構造のブラシレスモータを実現する。
【0019】
(ステータアッシー20の具体的な構成)
図1、
図2、
図3に示すように、ステータアッシー20は、筐体21、絶縁性樹脂24、軸用蓋部材25、軸受け26、吸引磁石27、ヨーク28、および、ステータ40を備える。
【0020】
筐体21は、第1筐体部材22および第2筐体部材23を備える。第1筐体部材22および第2筐体部材23は、SUS等の剛性の高い材料からなる。
【0021】
第1筐体部材22は、主壁221、側壁222、および、内部壁223を備える。主壁221は、平面視して、円形である。側壁222は、円筒形であり、主壁221の外周端に沿って形成され、主壁221の主面に直交する方向に延びる形状である。
【0022】
内部壁223は円筒形であり、主壁221の中央に形成され、主壁221の主面に直交する方向に延びる形状である。内部壁223は、円筒形の両側で開口する中空部225を有する。主壁231には、中空部225と重なる領域に開口を有する。したがって、中空部225は、第1筐体部材22における主壁231側の外部にも連通する。
【0023】
主壁221、側壁222、および、内部壁223が上述の構成であることによって、第1筐体部材22は、主壁221、側壁222、および、内部壁223によって囲まれる空間224を有する。空間224は、平面視して環状であり、主壁221側と反対側で開口する。
【0024】
第2筐体部材23は、主壁231と側壁232とを備える。主壁231は、平面視して円形である。側壁232は、平面視して円筒形である。側壁232は、円筒形であり、主壁231の外周端に沿って形成され、主壁231の主面に直交する方向に延びる形状である。これにより、第2筐体部材23は、主壁231と側壁232とによって囲まれる空間235を有する。空間235は、平面視において円形であり、主壁231側と反対側で開口する。
【0025】
主壁231は、主壁231を厚み方向に貫通する開口234を、中央に有する。開口234は、空間235に連通する。開口234は、平面視して円形である。開口234の外形は、ロータ30を平面視した外形(シャフト33の一方端または他方端側から視た外形)に対して相似形である。開口234の面積は、ロータ30が挿入可能な面積であり、例えば、ステータ40の中央空間400の平面面積程度である。
【0026】
また、主壁231は、複数の孔236を有する。複数の孔236は、主壁231を厚み方向に貫通し、空間235に連通する。複数の孔236は、開口234の外周に沿って配置される。
【0027】
第1筐体部材22と第2筐体部材23とは、互いに組み付けられる。より具体的には、第1筐体部材22は、空間224の開口が第2筐体部材23側に向くように、第2筐体部材23は、空間235の開口が第1筐体部材22側に向くように、配置される。そして、第2筐体部材23は、側壁232の外壁が第1筐体部材22の側壁222の内壁面2221に当接するように、第1筐体部材22に嵌め込まれる。
【0028】
これにより、筐体21は、内部空間を有する。筐体21の内部空間は、上述の開口234および複数の孔236によって、第2筐体部材23側の外部に連通する。
【0029】
軸用蓋部材25は、円板形であり、一方主面から凹む凹部を有する。軸用蓋部材25は、中空部225における主壁221側の端部付近に配置される。
【0030】
軸受け26は、円筒形であり、中空部225に配置され、内部壁223の中空部225側の壁に固定される。
【0031】
吸引磁石27は、円環形である。吸引磁石27は、内部壁223の先端、言い換えれば、内部壁223における主壁221への接続端と反対側の端部に配置される。
【0032】
ヨーク28は、円環形である。ヨーク28の形状は、吸引磁石27の形状と略同じである。ヨーク28は、内部壁223の先端付近に配置され、吸引磁石27の主壁221側に配置される。
【0033】
図7に示すように、ステータ40は、複数のステータコア41、インシュレータ42、および、複数のコイル導体43を備える。ステータ40は、円環形であり、中央空間400を有する。複数のステータコア41は、円環形の周方向に沿って、互いに間隔を空けて配置される。複数のコイル導体43は、インシュレータ42を間に挟んで、複数のステータコア41に巻き付けられている。より具体的には、複数のコイル導体43は、ステータ40の円環形の中心から外方に延びる方向を軸としてステータコア41に対して、巻回される。
【0034】
ステータ40を平面視した外形は、第1筐体部材22の側壁222の内壁面2221と略同じ形状で、且つ、内壁面2221よりも小さい。ステータ40を平面視した中央空間の外形、言い換えれば、ステータ40の内端の形状は、後述するロータ30の外形と略同じ形状で、且つ、ロータ30の外形よりも大きい。
【0035】
ステータ40は、筐体21の内部空間に配置される。より具体的には、ステータ40は、第1筐体部材22の空間224および第2筐体部材23の空間235に収容されるように配置される。この際、平面視した状態において、ステータ40の中心と筐体21の内部空間の中心とは略一致する。また、ステータ40の外周端は、第1筐体部材22の側壁222の内壁面2221に接触せず、近接する。なお、ステータ40の第1筐体部材22に対する位置決めは、例えば、ステータ40に形成された脚部材を第1筐体部材22の主壁221の内面に当接することによって実現される。
【0036】
絶縁性樹脂24は、円環形であり、筐体21の内部空間に配置される。より具体的には、絶縁性樹脂24は、ステータ40の略全体を覆う。また、絶縁性樹脂24は、第1筐体部材22の主壁221の内壁面2211の略全面、および、側壁222の内壁面2221の略全面に当接する。さらに、絶縁性樹脂24は、第2筐体部材23の主壁231の内壁面2311の略全面、および、側壁232の内壁面2321の略全面に当接する。また、絶縁性樹脂24の中央に形成された円柱形の空間は、ロータ30が収容可能な形状および大きさである。
【0037】
この構成によって、ステータ40と筐体21とは、絶縁性樹脂24によって固定される。さらに、第1筐体部材22、および、第2筐体部材23は、絶縁性樹脂24によって固定される。これにより、ステータ40、絶縁性樹脂24、第1筐体部材22、および、第2筐体部材23からなる構造体が一体に形成される。この結果、ロータ30が回転制御されたときにステータアッシー20に生じる励磁振動、および、構造体共振が抑制される。
【0038】
図4(A)は、振動レベルの周波数特性を示す。なお、
図4(A)における比較構成は、筐体21に絶縁性樹脂24を充填せず、ステータ40を筐体21と一体化させた構造を採用しない構成である。
図4(A)に示すように、本実施形態の構成を用いることで、広い周波数帯域に亘って、振動レベルを抑圧できる。
【0039】
また、第1筐体部材22および第2筐体部材23が、ネジ、ビス等によって固定されていない。したがって、ネジ留め、ビス留めで生じる第1筐体部材22と第2筐体部材23との位置ズレは生じず、この位置ズレによる不所望な振動の発生を抑制できる。また、第1筐体部材22および第2筐体部材23にネジ、ビス等を設置する部分を必要としない。したがって、ステータ40の形状を維持したままで、ネジ、ビスを用いる構造よりも、筐体21を小型化できる。
【0040】
また、絶縁性樹脂24の材料を、空気よりも熱伝導率の高い材料にする。これにより、ステータ40で発生した熱は、絶縁性樹脂24を介して、筐体21に効率的に伝搬される。したがって、ステータアッシー20の放熱効率は向上する。特に、本実施形態では、ステータ40を覆う絶縁性樹脂24は、第1筐体部材22および第2筐体部材23に面で接する。これにより、第1筐体部材22および第2筐体部材23、すなわち、筐体21への熱伝導性は、さらに向上し、ステータアッシー20の放熱効率は、さらに向上する。さらに、絶縁性樹脂24は、内壁面2211の略全面、内壁面2221の略全面、内壁面2311の略全面、および、内壁面2321の略全面に当接する。これにより、第1筐体部材22および第2筐体部材23、すなわち、筐体21への熱伝導性は、より一層向上し、ステータアッシー20の放熱効率は、より一層向上する。
【0041】
図4(B)は、モータ温度上昇量の時間特性を示す。なお、
図4(B)における比較構成は、筐体21に絶縁性樹脂24を充填しない構成である。
図4(B)に示すように、本実施形態の構成を用いることで、過渡時におけるモータの温度上昇を抑制でき、定常運転時におけるモータの温度を低くできる。
【0042】
(ステータアッシー20の製造方法)
上述の構成からなるステータアッシー20は、例えば、次に示す方法によって製造できる。
図5は、本発明の実施形態に係るステータアッシー20の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、まず、第1筐体部材22の空間224にステータ40を配置する(S11)。次に、第1筐体部材22に第2筐体部材23を装着する(S12)。より具体的には、第1筐体部材22の空間224(本発明の「第1空間」に対応。)と、第2筐体部材23の空間235(本発明の「第2空間」に対応。)が連通するように、第1筐体部材22に第2筐体部材23を装着する。
【0044】
次に、筐体21の内部空間に絶縁性樹脂24を充填する(S13)。具体的には、第2筐体部材23に形成された複数の孔236から、筐体21内に絶縁性樹脂24を流入し、充填する。この際、後にロータ30が配置される領域には、金型等を挿入する。これにより、ロータ30が配置される領域には、絶縁性樹脂24は、入り込まない。次に、絶縁性樹脂24を硬化する(S14)。なお、挿入した金型は、例えば、絶縁性樹脂24の硬化後に、取り外せばよい。
【0045】
このような製造方法を用いることによって、ステータアッシー20は、容易に製造できる。
【0046】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るブラシレスモータ、ステータアッシー、および、これらの製造方法について、図を参照して説明する。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るステータアッシー20Aの構成を示す側面断面図である。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るステータアッシー20Aの分解斜視図である。なお、
図7では、絶縁性樹脂24を省略して記載している。言い換えれば、
図7は、絶縁性樹脂24が充填、硬化される前の状態の図である。
【0048】
図6、
図7に示すように、第2の実施形態に係るブラシレスモータのステータアッシー20Aは、第1の実施形態に係るステータアッシー20に対して、充填用補助部材50を備える点で異なる。ステータアッシー20Aの他の構成は、ステータアッシー20と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0049】
ステータアッシー20Aは、充填用補助部材50を備える。充填用補助部材50は、円筒形であり、非磁性の絶縁性樹脂を材料とする。充填用補助部材50が、本発明の「補助部材」に対応する。
【0050】
充填用補助部材50は、円筒形の主体部51、円環形の底部52を備える。主体部51、底部52は、例えば、一体成形される。底部52は、主体部51における円筒形の軸方向の一方端に配置される。
【0051】
充填用補助部材50は、主体部51の円周面がステータ40の内周端に近接し、この内周端に沿うように配置される。底部52は、第1筐体部材22の主壁221に当接し、主体部51における底部52側と反対側の端部は、第2筐体部材23の主壁231に当接する。これにより、ステータ40は、充填用補助部材50、第1筐体部材22の主壁221、側壁222、および、第2筐体部材23の主壁231によって囲まれた空間内に配置される。
【0052】
絶縁性樹脂24は、この充填用補助部材50、第1筐体部材22の主壁221、側壁222、および、第2筐体部材23の主壁231によって囲まれた空間内に充填される。
【0053】
なお、
図7に示すように、充填用補助部材50は、底部に円環形の固定部を備えており、この固定部が、第1筐体部材22の主壁221に、接着材等によって固着される。これにより、絶縁性樹脂24が充填されるときの充填用補助部材50の移動が抑制される。したがって、所望の空間に絶縁性樹脂24を充填できる。
【0054】
このような構成を用いることで、第1の実施形態に示した金型等を用いることなく、絶縁性樹脂24を、所望の空間により確実に充填できる。また、絶縁性樹脂24の硬化を待たずに、ステータアッシー20へのロータ30の挿入が可能になり、製造時間を短くできる。
【0055】
図8は、充填用補助部材50の別形状を示す斜視図である。
図7に示した充填用補助部材50に比して、主体部51の円周面に沿って間隔を空けて配置される、複数の突起部53が設けられている点が相違する。
【0056】
複数の突起部53を備えることによって、当該複数の突起部53をステータ40のステータコア41間に挟み込むように、ステータ40を配置することが可能になる。これにより、例えば、絶縁性樹脂24の量を削減できる。
【0057】
上述の各実施形態の構成では、ステータ40を囲む空間の全体に絶縁性樹脂24を充填する態様を示した。しかしながら、少なくともステータ40の底部が所定深さで絶縁性樹脂24に埋まる態様であれば、上述の作用効果を奏することが可能である。このような状態が、本発明における「筐体とステータとが固定された」状態を意味する。言い換えれば、振動に対して筐体とステータとが一体物とみなせるように、筐体とステータとが接合、接着された状態が、本発明における「筐体とステータとが固定された」状態を意味する。この「固定」の定義は、第1筐体部材22と第2筐体部材23との接合、接着についても同じである。
【0058】
また、例えば、ステータ40を囲む空間の約70%以上に、絶縁性樹脂24が充填されていれば、上述の作用効果は、より効果的に得られる。
【符号の説明】
【0059】
10:ブラシレスモータ
20、20A:ステータアッシー
21:筐体
22:第1筐体部材
23:第2筐体部材
24:絶縁性樹脂
25:軸用蓋部材
26:軸受け
27:吸引磁石
28:ヨーク
30:ロータ
31:ロータヨーク
32:磁石
33:シャフト
40:ステータ
41:複数のステータコア
42:インシュレータ
43:コイル導体
50:充填用補助部材