(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/28 20060101AFI20240814BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02K3/28 J
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2022559087
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2021039073
(87)【国際公開番号】W WO2022091964
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020181851
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊縫 賢
(72)【発明者】
【氏名】仲野 領祐
(72)【発明者】
【氏名】曹 智翔
(72)【発明者】
【氏名】軍司 悟
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-027781(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/28
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースを有するステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記複数のティースのそれぞれに巻かれるコイルを有する巻線と、を有するブラシレスモータと、
前記巻線が接続される回路基板と、
前記ブラシレスモータにより駆動される出力部と、を備え、
前記巻線は、
互いに異なる相を形成する複数のコイルと、互いに同じ相を形成する複数のコイルと、を有し、前記複数のティースにおいて一方向に隣り合うティースに対して順番に巻かれた後、前記複数のティースにおいて対向するティースに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれ、異なる相の複数の前記コイルがデルタ結線されると共に、同じ相の複数の前記コイルが並列接続され、
前記回路基板は、隣り合うティースに巻かれ
て互いに異なる相を形成するコイル同士を接続する
よう導体パターンで形成された第1短絡部と、隣り合わないティースに巻かれ
て互いに異なる相を形成するコイル同士を接続する
よう導体パターンで形成された第2短絡部と、を有する短絡部を備える、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
複数のティースを有するステータと、前記ステータに対して回転するロータと、
前記複数のティースのそれぞれに巻かれるコイルを有する巻線と、を有するブラシレスモータと、
前記巻線が接続される回路基板と、
前記ブラシレスモータにより駆動される出力部と、を備え、
前記巻線は、互いに異なる相を形成する複数のコイルと、互いに同じ相を形成する複数のコイルと、を有し、異なる相の複数の前記コイルがデルタ結線されると共に、同じ相の複数の前記コイルが並列接続され、
前記回路基板は、隣り合うティースに巻かれて互いに異なる相を形成するコイル
同士を接続するよう導体パターンで形成された第1短絡部と、隣り合わないティースに巻かれて互いに異なる相を形成するコイル同士を接続するよう導体パターンで形成された第2短絡部と、を有する短絡部
を備え、
前記回路基板と垂直な方向から見た場合、
前記回路基板の第1領域には、前記第1短絡部である第1の導体パターンが形成され、
前記第1領域と異なる前記回路基板の第2領域には、前記第2短絡部である第2の導体パターンが形成され、
前記第1領域と異なるとともに前記第2領域と部分的に重複する前記回路基板の第3領域には、前記第2短絡部であり前記第2の導体パターンと異なる第3の導体パターンが形成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項
2に記載の作業機であって、
前記巻線は、前記複数のティースにおいて一方向に隣り合うティースに対して順番に巻かれた後、前記複数のティースにおいて対向するティースに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれる、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項
2に記載の作業機であって、
前記巻線は、対向するティースに巻かれて、一方向に隣り合うティースに対して順番に巻かれて、対向するティースに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれる、
ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項
1に記載の作業機であって、
前記回路基板と垂直な方向から見た場合、
前記回路基板の第1領域には、
前記第1短絡部である第1の
導体パターンが形成され、
前記第1の領域と異なる前記回路基板の第2領域には、
前記第2短絡部である第2の
導体パターンが形成され、
前記第1の領域と異なるとともに前記第2の領域と部分的に重複する前記回路基板の第3領域には、
前記第2短絡部であり前記第2の導体パターンと異なる第3の
導体パターンが形成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
請求項2又は5に記載の作業機であって、
前記回路基板は、前記第1の導体パターンが形成された第1の層と、前記第2の導体パターンが形成された第2の層と、前記第3の導体パターンが形成された第3の層と、を有する、
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項2又は5に記載の作業機であって、
前記回路基板は、前記第2の導体パターンが形成された第2の層と、前記第3の導体パターンが形成された第3の層と、を有し、
前記第1の導体パターンは前記第2の層及び前記第3の層の一方に形成される、
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに複数のコイルを有する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機、例えば電動工具の高出力化が進んでいる。モータコイルの結線方式を工夫することは、高出力化に寄与している。下記特許文献1には、複数の相をデルタ結線して各相の複数のコイルを並列に接続する、所謂、デルタ結線並列巻とすることによってモータの高性能化を図った電動工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータコイルの結線方式を工夫することでモータの高性能化を図ることができるが、モータの構造、例えばモータコイルの接続構造が複雑になってしまう課題がある。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、モータの構造(モータコイルの接続構造)を工夫し、組立性を向上させた作業機を提供することにある。また、モータコイルの接続を容易に行える作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
複数のティースを有するステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記複数のティースのそれぞれに巻かれるコイルを有する巻線と、を有するブラシレスモータと、
前記巻線が接続される回路基板と、
前記ブラシレスモータにより駆動される出力部と、を備え、
前記巻線は、互いに異なる相を形成する複数のコイルと、互いに同じ相を形成する複数のコイルと、を有し、前記複数のティースにおいて一方向に隣り合うティースに対して順番に巻かれた後、前記複数のティースにおいて対向するティースに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれ、異なる相の複数の前記コイルがデルタ結線されると共に、同じ相の複数の前記コイルが並列接続され、
前記回路基板は、隣り合うティースに巻かれて互いに異なる相を形成するコイル同士を接続するよう導体パターンで形成された第1短絡部と、隣り合わないティースに巻かれて互いに異なる相を形成するコイル同士を接続するよう導体パターンで形成された第2短絡部と、を有する短絡部を備える。
この態様によれば、複数のコイルの接続を容易に行うことができる。よって、モータの組み立てを容易に行うことができる。また、設計の自由度を向上することができる。また、コイルの接続を複雑化せずに高出力を得ることができる。
【0007】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
複数のティースを有するステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記複数のティースのそれぞれに巻かれるコイルを有する巻線と、を有するブラシレスモータと、
前記巻線が接続される回路基板と、
前記ブラシレスモータにより駆動される出力部と、を備え、
前記巻線は、互いに異なる相を形成する複数のコイルと、互いに同じ相を形成する複数のコイルと、を有し、異なる相の複数の前記コイルがデルタ結線されると共に、同じ相の複数の前記コイルが並列接続され、
前記回路基板は、隣り合うティースに巻かれて互いに異なる相を形成するコイル同士を接続するよう導体パターンで形成された第1短絡部と、隣り合わないティースに巻かれて互いに異なる相を形成するコイル同士を接続するよう導体パターンで形成された第2短絡部と、を有する短絡部を備え、
前記回路基板と垂直な方向から見た場合、
前記回路基板の第1領域には、前記第1短絡部である第1の導体パターンが形成され、
前記第1領域と異なる前記回路基板の第2領域には、前記第2短絡部である第2の導体パターンが形成され、
前記第1領域と異なるとともに前記第2領域と部分的に重複する前記回路基板の第3領域には、前記第2短絡部であり前記第2の導体パターンと異なる第3の導体パターンが形成される、ことを特徴とする。
この態様によれば、複数のコイルの接続を容易に行うことができる。よって、モータの組み立てを容易に行うことができる。また、設計の自由度を向上することができる。また、コイルの接続を複雑化せずに高出力を得ることができる。
【0012】
前記巻線は、前記複数のティースにおいて一方向に隣り合うティースに対して順番に巻かれた後、前記複数のティースにおいて対向するティースに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれてもよい。これによれば、短絡部を小さくでき、例えば2層分の回路基板でも実現可能である。
【0013】
前記巻線は、対向するティースに巻かれて、一方向に隣り合うティースに対して順番に巻かれて、対向するティースに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれてもよい。これによれば、短絡部を小さくでき、例えば2層分の回路基板でも実現可能である。
【0014】
前記回路基板と垂直な方向から見た場合、
前記回路基板の第1領域には、前記第1短絡部である第1の導体パターンが形成され、
前記第1の領域と異なる前記回路基板の第2領域には、前記第2短絡部である第2の導体パターンが形成され、
前記第1の領域と異なるとともに前記第2の領域と部分的に重複する前記回路基板の第3領域には、前記第2短絡部であり前記第2の導体パターンと異なる第3の導体パターンが形成されてもよい。
【0015】
前記回路基板は、前記第1の導体パターンが形成された第1の層と、前記第2の導体パターンが形成された第2の層と、前記第3の導体パターンが形成された第3の層と、を有してもよい。
【0016】
前記回路基板は、前記第2の導体パターンが形成された第2の層と、前記第3の導体パターンが形成された第3の層と、を有し、
前記第1の導体パターンは前記第2の層及び前記第3の層の一方に形成されてもよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータの構造(モータコイルの接続構造)を工夫し、組立性を向上させた作業機を提供することができる。また、モータコイルの接続を容易に行える作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の側面図。
【
図3】作業機1のモータ6のステータ組の分解斜視図。
【
図5】モータ6のステータ組を、ステータコイル6h及び回路基板6nを省略して後方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示である。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
本実施の形態は、作業機1に関する。作業機1は、セーバソーである。
図1により、作業機1における互いに直交する前後、上下方向を定義する。
図1及び
図2に示すように、作業機1は、例えば樹脂成形体からなるハウジング3及びフロントカバー4を備える。ハウジング3の前端部にフロントカバー4が接続固定される。
【0024】
ハウジング3は、モータ6を収容するモータ収容部3aと、作業者が把持可能なハンドル部3bと、を有する。モータ収容部3a内の、モータ6の下方には、制御基板7が設けられる。ハンドル部3bの上部には、作業者が操作してモータ6の駆動、停止を指示するためのトリガスイッチ8が設けられる。ハンドル部3bの下端部には、電池パック9が着脱可能に接続される。作業機1は、電池パック9から供給される電力で動作する。
【0025】
モータ6は、ブラシレスモータであって、ハウジング3のモータ収容部3a内に、回転軸が前後方向と平行になるように保持される。モータ6の動力は、伝達機構50により、出力部(先端工具)としての鋸刃5に伝達される。伝達機構50は、モータ6の回転を前後方向への往復動に変換して鋸刃5に伝達する往復駆動機構と、モータ6の回転を利用して鋸刃5を上下方向に揺動させる揺動機構と、を有する。揺動機構を動作させて鋸刃5を上下方向に揺動させながら切断する(しゃくり切断する)オービタルモードの有効、無効は、図示しないチェンジレバーにより作業者が切替え可能である。ここで、鋸刃5、伝達機構の少なくとも一方が出力部に相当する。
【0026】
図3~
図6に示すように、モータ6は、出力軸6aの周囲に設けられて出力軸6aと一体に回転する円筒状のロータコア6bと、ロータコア6bに周方向において90度間隔で挿入保持された4つのロータマグネット(永久磁石)6cと、ロータコア6bの外周を囲むように設けられたステータコア6eと、ステータコア6eに設けられた6つのステータコイル6h(
図3及び
図4)と、を含む。ロータコア6bとロータマグネット6cは、モータ6のロータを構成する。ステータコア6eは、モータ6のステータを構成する。6つのステータコイル6hは、モータ6の巻線を構成する。
図5及び
図6では、ステータコイル6hの図示を省略している。
【0027】
ステータコア6eは、円筒状(環状)のヨーク部6fと、ヨーク部6fから径方向内側に突出する6つのティース6gと、を含む。各ティース6gに、ステータコイル6hが設けられる。すなわち、各ティース6gは、巻線スロットを成す。
図7(A)等に示すように、ステータコイル6hは、U相ステータコイルU1,U2、V相ステータコイルV1,V2、及びW相ステータコイルW1,W2を有する。ステータコイル6hは、モータ6の軸周り方向において、V相ステータコイルV1,U相ステータコイルU2、W相ステータコイルW1,V相ステータコイルV2、U相ステータコイルU1,W相ステータコイルW2、の順に設けられる。
【0028】
図3及び
図4に示すように、ステータコア6eの後端面には、インシュレータ6iが設けられる。インシュレータ6iは、例えば樹脂成形体である。インシュレータ6iには、6つのヒュージング端子6jが周方向に等角度間隔で保持される。各ヒュージング端子6jは、後方に延びる突出部6kと、各ステータコイル6hの端部を引っ掛ける引っ掛け部6mと、を有する。各ヒュージング端子6jは、各ステータコイル6hの端部と電気的に接続される。インシュレータ6iの後方に、回路基板6nが接続される。回路基板6nは、前後方向と垂直となるようにインシュレータ6iにネジ止め等により固定される。回路基板6nは、6つの貫通穴6pを周方向に等角度間隔で有する。各ヒュージング端子6jの突出部6kが各貫通穴6pを貫通し、はんだ付け等により回路基板6nに電気的に接続される。ステータコア6eの前端面には、インシュレータ6rが設けられる。
【0029】
図7~
図11を参照し、モータ6の巻線形態を説明する。
図7~
図11において、点u1,u2は、それぞれU相ステータコイルU1,U2の巻き始め側の端部である。点v1,v2は、それぞれV相ステータコイルV1,V2の巻き始め側の端部である。点w1,w2は、それぞれW相ステータコイルW1,W2の巻き始め側の端部である。モータ6において、ステータコイル6hはデルタ結線並列巻とされる。すなわち、U相ステータコイルU1,U2と、V相ステータコイルV1,V2と、W相ステータコイルW1,W2と、がデルタ結線されると共に、U相ステータコイルU1,U2が並列接続され、V相ステータコイルV1,V2が並列接続され、W相ステータコイルW1,W2が並列接続される。本実施の形態では、デルタ結線並列巻の巻線形態を5通り示す。
【0030】
(巻線形態1)
図7(A)~(F)は、巻線形態1に関する。
図7(A)は、巻線形態1における各ステータコイル(U1,U2,V1,V2,W1,W2)の配線順序を示す模式図である。
図7(B)は、巻線形態1における、回路基板6n上での各ステータコイルの端部(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の接続関係を示す模式図である。
図7(C)は、巻線形態1における、ステータコア6eを展開して見た場合の各ステータコイル及びその相互接続関係を示す模式図である。
図7(D)~(F)は、巻線形態1における回路基板6nの導体パターンをハッチングで示す模式図である。
【0031】
図7(A)及び
図7(C)に示すように、巻線形態1では、巻線は、6つのティース6gにおいて隣り合うティース6gに対して順番に巻かれ、U相ステータコイルU1、V相ステータコイルV2、W相ステータコイルW1、U相ステータコイルU2、V相ステータコイルV1、W相ステータコイルW2の順に巻かれる。
図7(B)及び
図7(D)~
図7(F)に示すように、回路基板6nには、それぞれが短絡部として機能する例えば銅箔である、第1導体パターン61、第2導体パターン62、及び第3導体パターン63が形成される。
【0032】
第1導体パターン61は、モータ6の中心軸線を挟んで対向するティース6gに巻かれるU相ステータコイルU1,U2の一端同士(u1,u2)を電気的に接続する。第2導体パターン62は、モータ6の中心軸線(以下「中心軸線」とも表記)を挟んで対向するティース6gに巻かれるV相ステータコイルV1,V2の一端同士(v1,v2)を電気的に接続する。第3導体パターン63は、モータ6の中心軸線を挟んで対向するティース6gに巻かれるW相ステータコイルW1,W2の一端同士(w1,w2)を電気的に接続する。
【0033】
回路基板6nにおいて、第1導体パターン61が形成される第1領域、第2導体パターン62が形成される第2領域、及び第3導体パターン63が形成される第3領域は、回路基板6nと垂直な方向から見て互いに部分的に重複する。このため、第1導体パターン61、第2導体パターン62、及び第3導体パターン63は、回路基板6nの互いに異なる層に設けられる。回路基板6nは、導体パターンを形成可能な層を少なくとも3層有する。
【0034】
(巻線形態2)
図8(A)~(F)は、巻線形態2に関する。
図8(A)は、巻線形態2における各ステータコイル(U1,U2,V1,V2,W1,W2)の配線順序を示す模式図である。
図8(B)は、巻線形態2における、回路基板6n上での各ステータコイルの端部(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の接続関係を示す模式図である。
図8(C)は、巻線形態2における、ステータコア6eを展開して見た場合の各ステータコイル及びその相互接続関係を示す模式図である。
図8(D)~(F)は、巻線形態2における回路基板6nの導体パターンをハッチングで示す模式図である。
【0035】
図8(A)及び
図8(C)に示すように、巻線形態2では、巻線は、6つのティース6gにおいて一方向に隣り合うティース6gに対して順番に巻かれた後、中心軸線を挟んで対向するティース6gに巻かれて、他方向に隣り合うティースに巻かれ、これにより、U相ステータコイルU1、V相ステータコイルV2、W相ステータコイルW1、W相ステータコイルW2、V相ステータコイルV1、U相ステータコイルU2の順に巻かれる。
図8(B)及び
図8(D)~
図8(F)に示すように、回路基板6nには、それぞれが短絡部として機能する例えば銅箔である、第1導体パターン64、第2導体パターン65、及び第3導体パターン66が形成される。
【0036】
第1導体パターン64は、第1短絡部の例示であり、隣り合うティース6gに巻かれるU相ステータコイルU1及びW相ステータコイルW2の一端同士(u1,w2)を電気的に接続する。第2導体パターン65は、第2短絡部の例示であり、隣り合わないティース6gに巻かれるV相ステータコイルV1及びW相ステータコイルW1の一端同士(v1,w1)を電気的に接続する。第3導体パターン66は、第2短絡部の例示であり、隣り合わないティース6gに巻かれるU相ステータコイルU2及びW相ステータコイルW2の一端同士(u2,w2)を電気的に接続する。
【0037】
回路基板6nにおいて、第2導体パターン65が形成される第2領域、及び第3導体パターン66が形成される第3領域は、回路基板6nと垂直な方向から見て互いに部分的に重複する。一方、第1導体パターン64が形成される第1領域は、同方向から見て第2領域及び第3領域と重複しない。このため、
図8(D)~(F)では第1導体パターン64、第2導体パターン65、及び第3導体パターン66を回路基板6nの互いに異なる層に設けたが、第2導体パターン65及び第3導体パターン66を、回路基板6nの互いに異なる層に設け、第1導体パターン64を、第2導体パターン65又は第3導体パターン66と同じ層に設けてもよい。この場合の回路基板6nは、導体パターンを形成可能な層を少なくとも2層有すればよい。
【0038】
(巻線形態3)
図9(A)~(F)は、巻線形態3に関する。
図9(A)は、巻線形態3における各ステータコイル(U1,U2,V1,V2,W1,W2)の配線順序を示す模式図である。
図9(B)は、巻線形態3における、回路基板6n上での各ステータコイルの端部(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の接続関係を示す模式図である。
図9(C)は、巻線形態3における、ステータコア6eを展開して見た場合の各ステータコイル及びその相互接続関係を示す模式図である。
図9(D)~(F)は、巻線形態3における回路基板6nの導体パターンをハッチングで示す模式図である。
【0039】
図9(A)及び
図9(C)に示すように、巻線形態3では、巻線は、対向するティース6gに巻かれて、一方向に隣り合うティース6gに対して順番に巻かれて、対向するティース6gに巻かれて、他方向に隣り合うティース6gに巻かれ、これにより、U相ステータコイルU1、U相ステータコイルU2、W相ステータコイルW1、V相ステータコイルV2、V相ステータコイルV1、W相ステータコイルW2の順に巻かれる。
図9(B)及び
図9(D)~(F)に示すように、回路基板6nには、それぞれが短絡部として機能する例えば銅箔である、第1導体パターン67、第2導体パターン68、及び第3導体パターン69が形成される。
【0040】
第1導体パターン67は、第1短絡部の例示であり、隣り合うティース6gに巻かれるU相ステータコイルU2及びV相ステータコイルV1の一端同士(u2,v1)を電気的に接続する。第2導体パターン68は、第2短絡部の例示であり、隣り合わないティース6gに巻かれるV相ステータコイルV2及びW相ステータコイルW2の一端同士(v2,w2)を電気的に接続する。第3導体パターン69は、第2短絡部の例示であり、隣り合わないティース6gに巻かれるU相ステータコイルU1及びW相ステータコイルW1の一端同士(u1,w1)を電気的に接続する。
【0041】
回路基板6nにおいて、第2導体パターン68が形成される第2領域、及び第3導体パターン69が形成される第3領域は、回路基板6nと垂直な方向から見て互いに部分的に重複する。一方、第1導体パターン67が形成される第1領域は、同方向から見て第2領域及び第3領域と重複しない。このため、
図9(D)~(F)では第1導体パターン67、第2導体パターン68、及び第3導体パターン69を回路基板6nの互いに異なる層に設けたが、第2導体パターン68及び第3導体パターン69を、回路基板6nの互いに異なる層に設け、第1導体パターン67を、第2導体パターン68又は第3導体パターン69と同じ層に設けてもよい。この場合の回路基板6nは、導体パターンを形成可能な層を少なくとも2層有すればよい。
【0042】
(巻線形態4)
図10(A)~(F)は、巻線形態4に関する。
図10(A)は、巻線形態4における各ステータコイル(U1,U2,V1,V2,W1,W2)の配線順序を示す模式図である。
図10(B)は、巻線形態4における、回路基板6n上での各ステータコイルの端部(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の接続関係を示す模式図である。
図10(C)は、巻線形態4における、ステータコア6eを展開して見た場合の各ステータコイル及びその相互接続関係を示す模式図である。
図10(D)~(F)は、巻線形態4における回路基板6nの導体パターンをハッチングで示す模式図である。
【0043】
図10(A)及び
図10(C)に示すように、巻線形態4では、巻線は、6つのティース6gにおいて、一方向で一つ置きのティース6gに巻かれて、対向するティース6gに巻かれて、他方向で一つ置きのティース6gに巻かれ、これにより、U相ステータコイルU1、V相ステータコイルV1、W相ステータコイルW1、W相ステータコイルW2、V相ステータコイルV2、U相ステータコイルU2の順に巻かれる。
図10(B)及び
図10(D)~(F)に示すように、回路基板6nには、それぞれが短絡部として機能する例えば銅箔である、第1導体パターン70、第2導体パターン71、及び第3導体パターン72が形成される。
【0044】
第1導体パターン70は、隣り合うティース6gに巻かれるU相ステータコイルU1及びW相ステータコイルW2の一端同士(u1,w2)を電気的に接続する。第2導体パターン71は、隣り合うティース6gに巻かれるU相ステータコイルU2及びV相ステータコイルV1の一端同士(u2,v1)を電気的に接続する。第3導体パターン72は、隣り合うティース6gに巻かれるV相ステータコイルV2及びW相ステータコイルW1の一端同士(v2,w1)を電気的に接続する。
【0045】
回路基板6nにおいて、第1導体パターン70が形成される第1領域、第2導体パターン71が形成される第2領域、及び第3導体パターン72が形成される第3領域は、回路基板6nと垂直な方向から見て互いに重複しない。このため、
図10(D)~(F)では第1導体パターン70、第2導体パターン71、及び第3導体パターン72を回路基板6nの互いに異なる層に設けたが、第1導体パターン70、第2導体パターン71及び第3導体パターン72を、回路基板6nの同じ層に設けてもよい。また、第1導体パターン70、第2導体パターン71及び第3導体パターン72の内の2つを同じ層に設け、残り1つを別の層に設けてもよい。すなわち、回路基板6nは、導体パターンを形成可能な層を少なくとも1層有すればよい。
【0046】
(巻線形態5)
図11(A)~(F)は、巻線形態5に関する。
図11(A)は、巻線形態5における各ステータコイル(U1,U2,V1,V2,W1,W2)の配線順序を示す模式図である。
図11(B)は、巻線形態5における、回路基板6n上での各ステータコイルの端部(u1,u2,v1,v2,w1,w2)の接続関係を示す模式図である。
図11(C)は、巻線形態5における、ステータコア6eを展開して見た場合の各ステータコイル及びその相互接続関係を示す模式図である。
図11(D)~(F)は、巻線形態5における回路基板6nの導体パターンをハッチングで示す模式図である。
【0047】
図11(A)及び
図11(C)に示すように、巻線形態5では、巻線は、6つのティース6gにおいて、対向するティース6gに巻かれて、一方向に一つ置きのティース6gに巻かれ、対向するティース6gに巻かれ、他方向に一つ置きのティース6gに巻かれ、これにより、U相ステータコイルU1、U相ステータコイルU2、W相ステータコイルW2、V相ステータコイルV2、V相ステータコイルV1、W相ステータコイルW1の順に巻かれる。
図11(B)及び
図11(D)~(F)に示すように、回路基板6nには、それぞれが短絡部として機能する例えば銅箔である、第1導体パターン73、第2導体パターン74、及び第3導体パターン75が形成される。
【0048】
第1導体パターン73は、隣り合うティース6gに巻かれるU相ステータコイルU1及びW相ステータコイルW2の一端同士(u1,w2)を電気的に接続する。第2導体パターン74は、隣り合うティース6gに巻かれるU相ステータコイルU2及びV相ステータコイルV1の一端同士(u2,v1)を電気的に接続する。第3導体パターン75は、隣り合うティース6gに巻かれるV相ステータコイルV2及びW相ステータコイルW1の一端同士(v2,w1)を電気的に接続する。
【0049】
回路基板6nにおいて、第1導体パターン73が形成される第1領域、第2導体パターン74が形成される第2領域、及び第3導体パターン75が形成される第3領域は、回路基板6nと垂直な方向から見て互いに重複しない。このため、
図11(D)~(F)では第1導体パターン73、第2導体パターン74、及び第3導体パターン75を回路基板6nの互いに異なる層に設けたが、第1導体パターン73、第2導体パターン74及び第3導体パターン75を、回路基板6nの同じ層に設けてもよい。また、第1導体パターン73、第2導体パターン74及び第3導体パターン75の内の2つを同じ層に設け、残り1つを別の層に設けてもよい。すなわち、回路基板6nは、導体パターンを形成可能な層を少なくとも1層有すればよい。なお、いずれの巻線形態においても、回路基板6nに、モータ6の回転検出用の回転検出素子(後述する磁気センサ43)を配置するための層を更に設けてもよいし、導体パターンが形成された層を兼用してもよい。回転検出素子をモータ6(ロータ)と対向する層に設けるとよい。
【0050】
図12は、作業機1の回路ブロック図である。インバータ回路42は、三相ブリッジ接続されたFETやIGBT等のスイッチング素子Q1~Q6からなる。ホールIC等の磁気センサ43は、モータ6の近傍に配置され、モータ6の回転位置に応じた信号を出力する。制御基板7には、制御部41、電流検出回路44、制御電源回路45、駆動信号出力回路47、及び回転位置検出回路48が設けられる。
【0051】
電流検出回路44は、モータ6の電流経路に設けられた抵抗Rsの両端の電圧によりモータ6の電流を検出し、制御部41に送信する。制御電源回路45は、電池パック9の電圧を制御部41等の電源電圧に変換し、制御部41等に供給する。駆動信号出力回路47は、制御部41の制御に従い、インバータ回路42のスイッチング素子Q1~Q6に駆動信号を出力する。回転位置検出回路48は、磁気センサ43の出力信号によりモータ6の回転位置を検出し、制御部41に送信する。制御部41は、マイクロコントローラ等を含み、トリガスイッチ8の操作に応じて、モード設定スイッチ46で設定されたモードで駆動信号出力回路47を介してインバータ回路42を制御し、モータ6の駆動を制御する。
【0052】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0053】
(1) 回路基板6nに設けた導体パターンで、デルタ結線並列巻に必要なステータコイル6h間の短絡(接続)を行うため、ステータコイル6h間の接続を容易に行える。よって、高出力化に有利なデルタ結線並列巻としながら構成の複雑化を抑制でき、モータ6の組み立てを容易に行える(組立性を向上できる)。また、設計の自由度を向上できる。また、回路基板6nは、モータ6の回転検出用のセンサ基板とすることができるため、短絡専用の部材を設ける必要がない。
【0054】
(2) 巻線形態1によれば、6つのティース6gにおいて隣り合うティース6gに対して順番に巻くため、ステータコイル間を中心軸線周りに渡すための渡り線がシンプルで、容易に結線できる。
【0055】
(3) 巻線形態2、3によれば、巻線形態1と比較して、渡り線は複雑になるものの、短絡用の導体パターンを小さくでき、回路基板6nの層数を1層減らすことができる。よって2層分の基板でも実現可能となる。
【0056】
(4) 巻線形態4、5によれば、巻線形態2、3と比較して、渡り線は複雑になるものの、短絡用の導体パターンを小さくでき、回路基板6nの層数を最大で2層減らすことができる。よって1層分の基板でも実現可能となる。
【0057】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0058】
作業機1は、セーバソーに限定されず、ブラシレスモータを有する他の種類のものであってもよい。作業機1は、電池パック9の電力で動作するコードレスタイプに限定されず、外部交流電源からの供給電力で動作するコード付きタイプであってもよい。ティース6g及びステータコイル6hの数やロータマグネットの数などは、実施の形態で例示した具体的な数に限定されず、任意である。
【符号の説明】
【0059】
1…作業機、3…ハウジング、3a…モータ収容部、3b…ハンドル部、4…フロントカバー、5…鋸刃(先端工具)、6…モータ(電動モータ)、6a…出力軸(回転軸)、6b…ロータコア、6c…ロータマグネット、6e…ステータコア、6h…ステータコイル、6f…ヨーク部、6g…ティース(突極)、6h…ステータコイル、6i…インシュレータ、6j…ヒュージング端子、6k…突出部、6m…引っ掛け部、6n…回路基板、6p…貫通穴、6r…インシュレータ、7…制御基板、8…トリガスイッチ、9…電池パック、61~75…導体パターン。