(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】二次電池、電子機器及び電動工具
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20240814BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240814BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240814BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20240814BHJP
H01M 50/538 20210101ALI20240814BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240814BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20240814BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M50/536
H01M50/538
H01M10/04 W
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2022579435
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022002036
(87)【国際公開番号】W WO2022168623
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2021014743
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】大谷 彬
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-32112(JP,A)
【文献】特開2010-10117(JP,A)
【文献】特開2017-143003(JP,A)
【文献】特開2012-142206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層された電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
前記正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と、正極活物質非被覆部とを有し、
前記正極活物質非被覆部は、前記電極巻回体の端部の一方において、前記正極集電板と接合されており、
前記負極は、帯状の負極箔の第1の主面に、負極活物質層が被覆された第1の負極活物質被覆部と、前記負極箔の長手方向に延在する第1の負極活物質非被覆部と、前記第1の負極活物質被覆部と前記第1の負極活物質非被覆部との間に設けられる第1の絶縁層と、を有し、
前記負極は、更に、前記負極箔の他方の第2の主面に、負極活物質層が被覆された第2の負極活物質被覆部と、前記負極箔の長手方向に延在する第2の負極活物質非被覆部と、前記第2の負極活物質被覆部と前記第2の負極活物質非被覆部との間に設けられる第2の絶縁層と、を有し、
前記電極巻回体は、前記第1の負極活物質非被覆部と前記第2の負極活物質非被覆部とを含む負極活物質非被覆部が、前記電極巻回体の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、前記負極側の端面に形成された溝とを有し、
前記平坦面に対して前記負極集電板が接合されており、
前記電極巻回体の少なくとも負極側を、前記中心軸を含む平面で切断し、断面視した場合に、前記第1の主面が前記電極巻回体の中心軸に対向しており、更に、前記第1の絶縁層の長さが前記第2の絶縁層の長さより小さい
二次電池。
【請求項2】
前記第2の絶縁層の長さに対する前記第1の絶縁層の長さの比率が、52%以上92%以下である
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1の絶縁層の長さと前記第2の絶縁層の長さとの差が0.1mm以上1.0mm以下である
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層は、PVDFを含む
請求項1から3までの何れかに記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層は、前記負極箔を構成する金属よりもX線遮蔽効果が高い金属、又は、前記負極箔を構成する金属よりもX線遮蔽効果が高い金属を含む金属化合物を含有する
請求項1から4までの何れかに記載の二次電池。
【請求項6】
請求項1から5までの何れかに記載の二次電池を有する電子機器。
【請求項7】
請求項1から5までの何れかに記載の二次電池を有する電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電子機器及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電動工具や自動車といった高出力を要する用途に向けても開発されるようになってきている。高出力を行う一つの方法としては、電池から比較的大電流を流すハイレート放電が挙げられる。ハイレート放電では、大電流を流すことから、電池の内部抵抗を低くすることが望まれる。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、正極側の集電体露出部を正極集電板に、負極側の集電体露出部を負極集電板に溶接した円筒型電池の電池が記載されている。特許文献1に記載の電池では、正負側及び負極側ともに、集電板露出部の基部に樹脂被覆を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電池は、集電体露出部を折り曲げて溶接する構造であり、集電体露出部を重ねていないため溶接が安定しないという問題があった。また、集電体露出部を折り曲げる際に座屈が発生し、溶接箇所の平坦性を確保できないという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、負極側の活物質非被覆部(集電体露出部)の曲がる位置(以下、折曲ポイントと適宜、称する)を安定させることで集電体露出部が重なる箇所に生じる隙間を抑制し、溶接箇所の平面性を向上させた二次電池、及び、当該二次電池を有する電子機器及び電動工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層され、中心軸の周りに巻回された構造を有する電極巻回体と、正極集電板及び負極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と、正極活物質非被覆部とを有し、
正極活物質非被覆部は、電極巻回体の端部の一方において、正極集電板と接合されており、
負極は、帯状の負極箔の第1の主面に、負極活物質層が被覆された第1の負極活物質被覆部と、負極箔の長手方向に延在する第1の負極活物質非被覆部と、第1の負極活物質被覆部と第1の負極活物質非被覆部との間に設けられる第1の絶縁層と、を有し、
負極は、更に、負極箔の他方の第2の主面に、負極活物質層が被覆された第2の負極活物質被覆部と、負極箔の長手方向に延在する第2の負極活物質非被覆部と、第2の負極活物質被覆部と第2の負極活物質非被覆部との間に設けられる第2の絶縁層と、を有し、
電極巻回体は、第1の負極活物質非被覆部と第2の負極活物質非被覆部とを含む負極活物質非被覆部が、電極巻回体の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面と、負極側の端面に形成された溝とを有し、
平坦面に対して負極集電板が接合されており、
電極巻回体の少なくとも負極側を、中心軸を含む平面で切断し、断面視した場合に、第1の主面が電極巻回体の中心軸に対向しており、更に、第1の絶縁層の長さが第2の絶縁層の長さより小さい
二次電池である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも実施形態によれば、折曲ポイントを安定させることで活物質非被覆部が重なる箇所に生じる隙間を抑制し、溶接箇所の平坦性を向上させることができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン電池の断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る負極(巻回前)の一方の主面側の構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る負極(巻回前)の他方の主面側の構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る負極(巻回前)を側面から視た図である。
【
図6】
図6は、巻回前の正極、負極、及び、セパレータを示す図である。
【
図7】
図7Aは一実施形態に係る正極集電板の平面図であり、
図7Bは一実施形態に係る負極集電板の平面図である。
【
図8】
図8は、第1の絶縁層及び第2の絶縁層の詳細を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の絶縁層及び第2の絶縁層の詳細を説明するための図である。
【
図18】
図18は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
【
図19】
図19は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
【
図20】
図20は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<一実施形態>
<変形例>
<応用例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。なお、説明の理解を容易とするために、各図における一部の構成を拡大したり、若しくは縮小したり、一部の図示を簡略化する場合もある。
【0011】
<一実施形態>
[リチウムイオン電池の構成例]
本発明の一実施形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。
図1から
図9を参照しつつ、本実施形態に係るリチウムイオン電池(リチウムイオン電池1)の構成例に関して説明する。
図1は、リチウムイオン電池1の概略断面図である。リチウムイオン電池1は、例えば、
図1に示すように、電池缶11の内部に電極巻回体20が収納されている円筒型のリチウムイオン電池1である。
【0012】
リチウムイオン電池1は、概略的には円筒状の電池缶11を有し、電池缶11の内部に、一対の絶縁板12、13と、電極巻回体20とを備えている。なお、リチウムイオン電池1は、電池缶11の内部に、例えば、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上をさらに備えていてもよい。
【0013】
(電池缶)
電池缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。この電池缶11は、例えば、一端面が開放されると共に他端面が閉塞された円筒状の容器である。即ち、電池缶11は、開放された一端面(開放端面11N)を有している。この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。電池缶11の表面に、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0014】
(絶縁板)
絶縁板12、13は、電極巻回体20の中心軸(電極巻回体20の端面の略中心を通り
図1のZ軸と平行な方向)に対して略垂直な面を有する円板状の板である。また、絶縁板12、13は、例えば、互いに電極巻回体20を挟むように配置されている。
【0015】
(かしめ構造)
電池缶11の開放端面11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介してかしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11は密閉されている。
【0016】
(電池蓋)
電池蓋14は、主に、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11の開放端面11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、例えば、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、+Z方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、例えば、安全弁機構30に接触している。
【0017】
(ガスケット)
ガスケット15は、主に、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ガスケット15の表面に、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0018】
ガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプロピレン(PP)などの高分子材料を用いることができる。中でも、絶縁性材料としては、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。電池缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を十分に封止することができるからである。
【0019】
(安全弁機構)
安全弁機構30は、主に、電池缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0020】
(電極巻回体)
円筒形状のリチウムイオン電池1では、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を挟んで積層され、且つ、中心軸の周りに渦巻き状に巻回された電極巻回体20が電解液に含浸された状態で、電池缶11に収まっている。正極21は正極箔21Aの片面又は両面に正極活物質層21Bを形成したものであり、正極箔21Aの材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金でできた金属箔である。負極22は負極箔22Aの片面又は両面に負極活物質層を形成したものであり、負極箔22Aの材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金でできた金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、イオンや電解液等の物質の移動を可能にしている。
【0021】
図2Aは巻回前の正極21を正面から視た図であり、
図2Bは
図2Aの正極21を側面から視た図である。なお、
図2A、
図3、
図4、
図6の説明において、図面に向かって水平方向(長手方向と称する場合もある)をX軸方向、垂直方向(幅方向と称する場合もある)をY軸方向、奥行方向をZ軸方向と称する場合がある。
【0022】
正極21は、正極箔21Aの一方の主面及び他方の主面に正極活物質層21Bで被覆した部分(ドットを付した部分)を有するとともに、正極活物質層21Bで被覆していない部分である正極活物質非被覆部21Cを有する。なお、以下の説明において、正極活物質層21Bで被覆した部分を正極活物質被覆部21Bと適宜、称する。本実施形態では、正極箔21Aの両面とも同様の構成を有しているが、正極箔21Aの一方の主面に、正極活物質被覆部21Bが設けられる構成でもよい。また、正極活物質被覆部21Bと正極活物質非被覆部21Cとの間に絶縁層101(
図2A及び
図2Bで灰色で示す部分)が設けられている。
【0023】
負極22の負極箔22Aは、一方の主面29Aa(第1の主面の一例)と、他方の主面29Ab(第2の主面の一例)とを有している。電極巻回体20においては、主面29Aaが電極巻回体20の中心軸に対向する面であり、他方の主面29Abが電極巻回体20の周面に対向する面である。
図3は、巻回前の負極22の一方の主面29Aaを正面から視た図である。負極22は、負極箔22Aの主面29Aaに負極活物質層で被覆した部分(ドットを付した部分)を有するとともに、負極活物質層で被覆していない部分である負極活物質非被覆部22Caを有する。なお、以下の説明において、負極活物質層で被覆した部分を負極活物質被覆部と適宜、称する。具体的には、主面29Aaに形成された負極活物質被覆部を負極活物質被覆部22Ba(第1の負極活物質被覆部の一例)と適宜、称し、主面29Abに形成された負極活物質被覆部(第2の負極活物質被覆部の一例)を負極活物質被覆部22Bbと適宜、称する。
【0024】
図3に示すように、負極活物質非被覆部22Caは、例えば、負極22の長手方向(X軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Aa(第1の負極活物質非被覆部の一例)と、負極22の巻回開始側において負極22の幅方向(Y軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Baと、負極22の巻回終止側において負極22の幅方向(Y軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Caとを有している。なお、
図3において、負極活物質非被覆部221Aaと負極活物質非被覆部221Baとの境界、及び、負極活物質非被覆部221Aaと負極活物質非被覆部221Caとの境界のそれぞれには点線DL1、DL2を付している。
【0025】
負極22は、主面29Aaに、更に、第1の絶縁層22Daを有している。第1の絶縁層22Daは、負極活物質被覆部22Baと負極活物質非被覆部221Aaとの間に設けられている。さらに詳しく言えば、第1の絶縁層22Daは、負極22の長手方向(X軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Aaと負極活物質被覆部22Baとの境界に沿って存在している。主面29Aaに設けられる第1の絶縁層22Daは、電極巻回体20の少なくとも負極側を、中心軸を含む平面で切断して断面視した場合に、電極巻回体20の中心軸に対向している。また、第1の絶縁層22Daの厚みは、負極活物質被覆部22Baの厚み以下である。なお、リチウムイオン電池1の正極側とは略円筒状を有する電極巻回体20の両端面のうち一方の端面(端面41)を含む領域を意味する。電極巻回体20の負極側とは略円筒状を有する電極巻回体20の両端面のうち他方の端面(端面42)を含む領域を意味する。
【0026】
図4は、負極箔22Aの主面29Abを正面から視た図である。主面29Aaと同様に負極箔22Aの主面29Abに負極活物質被覆部22Bbが設けられている。また、主面29Abには、負極活物質層が被覆されていない負極活物質非被覆部22Cbが設けられている。
【0027】
図4に示すように、負極活物質非被覆部22Cbは、例えば、負極22の長手方向(X軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Ab(第2の負極活物質非被覆部の一例)と、負極22の巻回開始側において負極22の幅方向(Y軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Bbと、負極22の巻回終止側において負極22の幅方向(Y軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Cbとを有している。なお、
図4において、負極活物質非被覆部221Abと負極活物質非被覆部221Bbとの境界、及び、負極活物質非被覆部221Abと負極活物質非被覆部221Cbとの境界のそれぞれには点線DL3、DL4を付している。
【0028】
負極22は、主面29Abに、更に、第2の絶縁層22Dbを有している。第2の絶縁層22Dbは、負極活物質被覆部22Bbと負極活物質非被覆部221Abとの間に設けられている。さらに詳しく言えば、第2の絶縁層22Dbは、負極22の長手方向(X軸方向)に延在している負極活物質非被覆部221Abと負極活物質被覆部22Bbとの境界に沿って存在している。主面29Abに設けられる第2の絶縁層22Dbは、電極巻回体20の少なくとも負極側を、中心軸を含む平面で切断して断面視した場合に、電極巻回体20の周面に対向している。第2の絶縁層22Dbの厚みは、負極活物質被覆部22Bbの厚み以下である。
【0029】
図5は、負極22を側面から視た図である。負極22の左側が電極巻回体20の中心軸に対向する面、負極22の右側が電極巻回体20の周面に対向する面である。
図5に示すように、第1の絶縁層22Daの長さLAは、第2の絶縁層22Dbの長さLBより小さくなっている。第1の絶縁層22Daの長さLA及び第2の絶縁層22Dbの長さLBは、帯状の負極22の幅方向の長さということも言えるし、電極巻回体20の中心軸に沿う方向の長さとも言える。
【0030】
次に、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Db(以下、両者を特に区別する必要がない場合は、第1の絶縁層22Da等と適宜、略称する)は、例えば、PVDF等の樹脂を含む。第1の絶縁層22Da等は、更に無機粒子または有機粒子を含んでも良い。無機粒子の例としては例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などの何れか1種、または2種以上を含むものが挙げられる。
【0031】
更に、第1の絶縁層22Da等は、X線遮蔽効果が所定より高い金属又は金属化合物を含有してもよい。具体的には、第1の絶縁層22Da等は、負極箔22Aを構成する金属(主成分の金属)よりもX線遮蔽効果が高い金属、又は、負極箔22Aを構成する金属(主成分の金属)よりもX線遮蔽効果が高い金属を含む金属化合物を含有してもよい。さらに具体的には、第1の絶縁層22Da等は上記の金属の粒子、又は上記金属化合物の粒子を含有してもよい。
【0032】
負極箔22Aを構成する金属(例えば、銅)よりもX線遮蔽効果が高い金属は、例えば、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、及び、金(Au)からなる群より選ばれる1つ以上である。負極箔22Aを構成する金属よりもX線遮蔽効果が高い金属を含む金属化合物は、金属酸化物、金属硫酸塩化合物、及び、金属炭酸塩化合物からなる群より選ばれる1つ以上である。金属酸化物は、例えば、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、五酸化タンタル、及び、酸化タングステンからなる群より選ばれる1つ以上である。また、金属硫酸塩化合物は、硫酸バリウム、及び、硫酸ストロンチウムからなる群より選ばれる1つ以上である。また、金属炭酸塩化合物は、炭酸ストロンチウムである。
【0033】
本実施形態に係る円筒形状のリチウムイオン電池1では、電極巻回体20は正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部221Aa、221Abとが互いに逆方向を向くようにしてセパレータ23を介して重ねられて巻回されている。
【0034】
電極巻回体20の中心には貫通孔26が設けられている。具体的には、貫通孔26は、正極21、負極22及びセパレータ23が積層した積層物の略中心にできる孔部である。貫通孔26はリチウムイオン電池1の組み立て工程で、棒状の溶接器具(以下、溶接棒と適宜、称する)等を挿入する孔として使用される。
【0035】
電極巻回体20の詳細について説明する。
図6に正極21、負極22とセパレータ23を積層した巻回前の構造の一例を示す。本実施形態に係る正極21は、正極活物質被覆部21B(
図6においてドットが疎に付された部分)と正極活物質非被覆部21Cとの境界を被覆する絶縁層101(
図6における上側の灰色の領域部分)を更に有している。絶縁層101の幅方向の長さは、例えば、3mm程度である。セパレータ23を介して負極活物質被覆部22Baに対向する正極活物質非被覆部21Cの全ての領域が絶縁層101で覆われている。絶縁層101は、負極活物質被覆部22Baと正極活物質非被覆部21Cとの間に異物が侵入したときのリチウムイオン電池1の内部短絡を確実に防ぐ効果がある。また、絶縁層101は、リチウムイオン電池1に衝撃が加わったときに衝撃を吸収し、正極活物質非被覆部21Cの折れ曲がりや、負極22との短絡を確実に防ぐ効果がある。
【0036】
ここで、
図6に示すように、正極活物質非被覆部21Cの幅方向の長さをD5とし、負極活物質被覆部22Baの端部から負極箔22Aの端部までの長さをD6とする。一実施形態ではD5>D6であることが好ましく、例えばD5=7(mm)、D6=4(mm)である。正極活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した部分の長さをD7とし、第1の絶縁層22Da及び負極活物質非被覆部221Aa(又は第2の絶縁層22Db及び負極活物質非被覆部221Ab)がセパレータ23の幅方向の他端から突出した部分の長さをD8とした場合に、一実施形態ではD7>D8であることが好ましく、例えば、D7=4.5(mm)、D8=3(mm)である。
【0037】
正極箔21Aと正極活物質非被覆部21Cとは例えばアルミニウムなどからなり、負極箔22A、負極活物質非被覆部221Aa、及び、負極活物質非被覆部221Abは例えば銅などからなる。このように、一般的に正極活物質非被覆部21Cの方が負極活物質非被覆部22Caや負極活物質非被覆部22Cbよりも柔らかい(ヤング率が低い)。このため、一実施形態では、D5>D6且つD7>D8であることがより好ましく、この場合、両極側から同時に同じ圧力で正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部(本例では、負極活物質非被覆部221Aa及び負極活物質非被覆部221Ab)とが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、正極活物質非被覆部21Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、リチウムイオン電池1の作製工程(詳細は後述)において、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24とのレーザ溶接による接合を容易に行うことができる。また、負極活物質非被覆部221Aa及び負極活物質非被覆部221Abが折り曲げられて適度に重なり合うので、リチウムイオン電池1の作製工程において、折り曲げられた箇所と負極集電板25とのレーザ溶接による接合を容易に行うことができる。
【0038】
(集電板)
通常のリチウムイオン電池では例えば、正極と負極との一か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されているが、これでは電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、本実施形態のリチウムイオン電池1では、電極巻回体20の一方の端面41に正極集電板24を配置し、電極巻回体20の他方の端面42に負極集電板25を配置する。そして、正極集電板24と端面41に存在する正極活物質非被覆部21Cとを多点で溶接し、また、負極集電板25と端面42に存在する負極活物質非被覆部221Aa及び負極活物質非被覆部221Abとを多点で溶接することで、リチウムイオン電池1の内部抵抗を低く抑え、ハイレート放電を可能としている。
【0039】
図7A及び
図7Bに、集電板の一例を示す。
図7Aが正極集電板24であり、
図7Bは負極集電板25である。正極集電板24及び負極集電板25は電池缶11に収容される(
図1参照)。正極集電板24の材料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の単体若しくは複合材でできた金属板であり、負極集電板25の材料は、例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金の単体若しくは複合材でできた金属板である。
図7Aに示すように、正極集電板24の形状は平坦な扇形をした扇状部31に、矩形の帯状部32が付いた形状になっている。扇状部31の中央付近に孔35があいていて、孔35の位置は貫通孔26に対応する位置である。
【0040】
図7Aのドットで示す部分は帯状部32に絶縁テープが貼付されているか絶縁材料が塗布された絶縁部32Aであり、図面のドット部より下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、貫通孔26に金属製のセンターピン(図示せず)を備えていない電池構造の場合には帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低いため、絶縁部32Aが無くても良い。その場合には、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ大きくして充放電容量を大きくすることができる。
【0041】
負極集電板25の形状は正極集電板24と殆ど同じ形状だが、帯状部の形状が異なっている。
図7Bの負極集電板の帯状部34は、正極集電板の帯状部32より短く、絶縁部32Aに相当する部分がない。帯状部34には、複数の丸印で示される丸型の突起部(プロジェクション)37が設けられている。抵抗溶接時には、電流が突起部37に集中し、突起部37が溶けて帯状部34が電池缶11の底に溶接される。正極集電板24と同様に、負極集電板25には扇状部33の中央付近に孔36があいていて、孔36の位置は貫通孔26に対応する位置である。正極集電板24の扇状部31と負極集電板25の扇状部33は扇形の形状をしているため、端面41、42の一部を覆うようになっている。全部を覆わないことにより、リチウムイオン電池1を組み立てる際に電極巻回体20へ電解液を円滑に浸透させることができ、且つ、リチウムイオン電池1が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスをリチウムイオン電池1外へ放出しやすくすることができる。
【0042】
(正極)
正極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有複合酸化物又はリチウム含有リン酸化合物が好ましい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0043】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリイミドなどである。
【0044】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0045】
(負極)
負極22を構成する負極箔22Aの表面は、負極活物質層との密着性向上のために粗面化されていることが好ましい。負極活物質層は、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0046】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0047】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiOx(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0048】
(セパレータ)
セパレータ23は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。セパレータ23は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。
【0049】
樹脂層は、PVDFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層は、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0050】
(電解液)
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0051】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。電解質塩の含有量は特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0052】
(折り曲げ部及び平坦面について)
次に、
図8及び
図9を参照しつつ、折り曲げ部及び平坦面について説明する。
図8及び
図9は、電極巻回体20の負極側の部分断面図である。
図8に示すように、第1の絶縁層22Daの長さ(
図8におけるZ軸方向の長さ)は、第2の絶縁層22Dbの長さ(
図8におけるZ軸方向の長さ)よりも小さい。
【0053】
リチウムイオン電池1の作製工程(詳細は後述)では、負極活物質非被覆部221Aa及び負極活物質非被覆部221Abを含む負極活物質非被覆部(以下、負極活物質非被覆部221と適宜、称する)に対して荷重が印加される。荷重の印加に伴って、
図9に示すように、負極活物質非被覆部221の各層が第1の絶縁層22Daの端部を折曲ポイントPAとして中心軸に向かって折れ曲がり、重なり合って平坦面72が形成される。また、端面42の一部には、後述する溝43が形成される。平坦面72と負極集電板25とがレーザ溶接等によって接合される。
【0054】
[リチウムイオン電池の作製方法]
次に、
図10Aから
図10Fを参照して、一実施形態に係るリチウムイオン電池1の作製方法について説明する。まず、正極活物質を、帯状の正極箔21Aの表面に塗着させ、これを正極活物質被覆部21Bとし、負極活物質を、帯状の負極箔22Aの表面に塗着させ、これを負極活物質被覆部22Ba、22Bbとした。このとき、正極箔21Aの幅方向の一端側に正極活物質が塗着されていない正極活物質非被覆部21Cを設けた。負極箔22Aの一方の主面29Aaに、負極活物質被覆部22Ba及び第1の絶縁層22Daを設けた。これによって主面29Aaには、負極活物質非被覆部221Aa、221Ba、221Caが形成された。また、負極箔22Aの他方の主面29Abに、負極活物質被覆部22Bb及び第2の絶縁層22Dbを設けた。これによって主面29Abには、負極活物質非被覆部221Ab、221Bb、221Cbが形成された。次に、正極21と負極22とに対して乾燥等の工程を行った。そして、正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部221Aa、221Abとが逆方向となるようにセパレータ23を介して重ね、中心軸に貫通孔26ができるように、渦巻き状に巻回して、
図10Aのような電極巻回体20を作製した。円筒形状を有する電極巻回体20の一方の端面41には正極活物質非被覆部21Cが露出している。他方の端面42には負極活物質非被覆部221が露出している。端面41を含む部分を電極巻回体20の正極側と称する。端面42を含む部分を電極巻回体20の負極側と称する。
【0055】
次に、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)等の端を端面41、42に対して垂直に押し付けることで、
図10Bに示すように、端面41の一部と端面42の一部とに溝43を作製した。この方法により、貫通孔26から放射状に延びる溝43を作製した。具体的には正極側の端面41の一部及び負極側の端面42の一部のそれぞれに溝43を作製した。溝43は、例えば、端面41、42のそれぞれの外縁部27、28から貫通孔26まで延在している。なお、
図10Bに示される、溝43の数や配置はあくまでも一例であって図示した例に限定されるものではない。
【0056】
そして、同時に同じ圧力を端面41、42に対して略垂直方向に加え、正極活物質非被覆部21C及び負極活物質非被覆部221を巻回構造の中心軸に向かって折り曲げ、端面41、42が平坦面となるように形成した。このとき、端面41にある正極活物質非被覆部21C及び端面42にある負極活物質非被覆部221のそれぞれが、中心軸に向かって曲折し重なり合うように、荷重を加えた。その後、
図10Cに示すように、端面41に正極集電板24の扇状部31をレーザ溶接し、端面42に負極集電板25の扇状部33をレーザ溶接し、接合した。
【0057】
続いて、
図10Dに示すように、正極集電板24の帯状部32及び負極集電板25の帯状部34を折り曲げ、正極集電板24に絶縁板12、負極集電板25に絶縁板13を貼り付けた。次に、
図10Eに示される電池缶11内に上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入し、溶接棒を使用して負極集電板25を電池缶11の缶底に溶接した。電解液を電池缶11内に注入した後、
図10Fに示すように、ガスケット15及び電池蓋14で電池缶11の開口部を封止した。以上のようにして、リチウムイオン電池1を作製した。
【0058】
なお、絶縁板12及び絶縁板13は、絶縁テープであってもよい。また、上記接合方法は、レーザ溶接の他の方法であってもよい。また、溝43が正極集電板24や負極集電板25の一部と接合されていてもよい。
【0059】
なお、本明細書における「平坦面」とは、完全に平坦な面のみならず、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24、及び、負極活物質非被覆部221と負極集電板25とが接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する面を意味している。
【0060】
[本実施形態により得られる効果]
本実施形態では、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbを設け、第1の絶縁層22Daの長さを第2の絶縁層22Dbの長さよりも小さくしている。これによって、各層における負極活物質非被覆部221が、第1の絶縁層22Daの端部を折曲ポイントPAとして電極巻回体20の中心軸に向かって折れ曲がりやすくすることができる。即ち、各層における負極活物質非被覆部221が一様に電極巻回体20の中心軸に向かって折れ曲がるのでシワやボイド(空隙、空間)が発生せず、平坦面72の平坦性を向上させることができる。これによって、負極集電板25と平坦面72とを安定して接合することができ、溶接不良の発生を抑制できる。なお、「シワ」や「ボイド」とは曲折した負極活物質非被覆部221に偏りが生じ、これによって面の高低差が生じて平坦面72が平坦とはならない部分を意味する。
【0061】
負極活物質非被覆部221を折り曲げたときや、溝43を形成する時に、負極活物質非被覆部221から僅かながら金属粉が発生する可能性がある。この金属粉が電極巻回体20内に侵入すると内部ショートの原因となる。本実施形態では、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbを設けているので、折曲ポイントPA付近における負極箔22Aの露出を少なくしているので、上述した金属粉の発生を抑制できる。
【0062】
第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbが、負極箔22Aを構成する金属よりもX線遮蔽効果が高い金属、又は、負極箔22Aを構成する金属よりもX線遮蔽効果が高い金属を含む金属化合物を含有することで、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbのそれぞれの位置を識別することができる。具体的には、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22DbにX線を照射することで得られるX線透過画像に基づいて、それぞれの絶縁層の位置を識別することができる。また、負極活物質被覆部22Ba、22Bbの端部も識別することが可能となり、リチウムイオン電池1の正極21と負極22との巻きズレ(正極活物質被覆部21Bと負極活物質被覆部22Baとが対向していない状態)を検査することが可能となる。巻きズレの検査が可能となるため、正極活物質被覆部21Bの幅方向の長さを、余裕をもって小さくする必要がなくなる。従って、正極活物質被覆部21Bの幅方向の長さを大きくすることができる。これにより、リチウムイオン電池1の電池容量を増加させることができる。
【0063】
リチウムイオン電池1の作製時において、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)などの端を端面41、42に対して垂直方向に押し付ける際に(
図10Bに示す工程を行う際に)、電極巻回体20の巻回開始側(電極巻回体20の最内周にある負極の長手方向の端側)において、負極活物質被覆部22Baから負極活物質が剥離することがある。この剥離は端面42に対して上記平板を押し付ける際に発生するストレスが原因と考えられる。剥離した負極活物質が電極巻回体20内部に侵入し、これによりリチウムイオン電池1の内部ショートが発生する虞がある。本実施形態では、負極活物質非被覆部221Ba、221Bbを設けているので負極活物質の剥離を効果的に防ぐことができ、内部ショートの発生を防止できる。係る効果は、負極活物質非被覆部221Ba又は負極活物質非被覆部221Bbの一方のみを設ける構成によっても得られるが、両方設けることがより好ましい。
【0064】
電極巻回体20の巻回終止側において、負極22は、正極活物質被覆部21Bに対向しない側の主面で、負極活物質非被覆部の領域を有することができる。正極活物質被覆部21Bに対向しない主面に負極活物質被覆部を有したとしても、それは充放電への寄与が低いと考えられるからである。負極活物質非被覆部の領域は、電極巻回体20の3/4周以上5/4周以下であることが好ましい。このとき、充放電への寄与が低い負極活物質被覆部22Baを設けていないため、同じ電極巻回体20の容積に対して、初期容量を高くすることができる。
【0065】
本実施形態では、電極巻回体20は、正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部221Aa、221Abとが逆方向を向くように重ねて巻回してあるので、端面41には、正極活物質非被覆部21Cが集まり、電極巻回体20の端面42には、負極活物質非被覆部221が集まる。係る正極活物質非被覆部21C及び負極活物質非被覆部221が曲折されて、端面41、42が平坦面となっている。曲折する方向は端面41、42のそれぞれの外縁部27、28から中心軸に向かう方向であり、巻回された状態で隣接する周の活物質非被覆部同士が重なり合っている。端面41が平坦面となることで、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24との接触が良好となる。端面42が平坦面となることで、負極活物質非被覆部221と負極集電板25との接触が良好となる。また、端面41、42が平坦面となっていることで、リチウムイオン電池1の低抵抗化を実現することができる。
【0066】
また、正極活物質非被覆部21C、負極活物質非被覆部221を曲折することで、端面41、42を平坦面にすることが可能に思われる。しかし、曲折する前に何らの加工もないと、端面41、42にシワやボイド(空隙、空間)が発生して、端面41、42が平坦面とならない虞がある。本実施形態では、端面41及び端面42側のそれぞれに貫通孔26から放射方向に予め溝43が形成されるようにしている。溝43が形成されていることで、このシワやボイドの発生を抑制することができ、端面41、42をより平坦とすることができる。
【実施例】
【0067】
上記のようにして作製したリチウムイオン電池1の溶接不良率について評価した実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0068】
以下の全ての実施例及び比較例において、電池サイズを21700(直径21mm、高さ70mm)とし、正極活物質被覆部21Bの長手方向の長さを1320mmとし、負極活物質被覆部22Ba、22Bbの長手方向の長さを1400mmとし、負極活物質被覆部22Ba、22Bbの幅方向の長さを63mmとし、セパレータ23の幅方向の長さを64mmとした。セパレータ23を正極活物質被覆部21Bと負極活物質被覆部22Ba、22Bbの全範囲を覆うように重ねた。また、
図11に示すように、負極活物質被覆部22Ba、22Bbの端部と負極箔22Aの端部との間(負極活物質が塗布されていない箇所)の長さ(
図6におけるD6)を3.0mmとし、負極活物質被覆部22Ba、22Bbの端部とセパレータ23の端部との間の距離(クリアランスとも称され、
図6におけるD10)を1.0mmとして電極巻回体を作製した。また、溝43の数を8とし略等角間隔となるように配置した。
図11は実施例1に、
図12は比較例1に、
図13は比較例2に、
図14は比較例3にそれぞれ対応する。
【0069】
[実施例1]
リチウムイオン電池1を上述した工程により作製した。この際、
図8及び
図9に示すように、負極箔22Aの一方の主面29Aaに第1の絶縁層22Daを設け、他方の主面29Abに第2の絶縁層22Dbを設けた。
図11に示すように、
第1の絶縁層22Daの長さLA(
図11におけるZ軸方向の長さ)<第2の絶縁層の長さLB(
図11におけるZ軸方向の長さ)
とし、具体的には、第1の絶縁層22Daの長さLAを1.1mm、第2の絶縁層22Dbの長さLBを1.6mmとした。
実施例1及び比較例2、3では、各絶縁層の長さは、以下のようにして測定した。
作製した電極巻回体20を解体し、負極活物質被覆部22Baの終端(負極活物質被覆部22Baと負極活物質非被覆部22Caとの境界)から、第1の絶縁層22Daの端部P1までの距離をマイクロスコープで測定した。負極22の長手方向の中間付近で、10mm間隔で5か所を測定した。負極活物質被覆部22Bbの終端(負極活物質被覆部22Bbと負極活物質非被覆部22Cbとの境界)から第2の絶縁層22Dbの端部P2までの距離をマイクロスコープで、上記同様に5か所を測定した。各々の測定結果の平均値を第1の絶縁層22Daの長さLA、第2の絶縁層22Dbの長さLBとした。
電極巻回体20の端面41,端面42におけるシワやボイド(空隙、空間)の有無についてはマイクロスコープを用いて確認した。
第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbは、PVDFと硫酸バリウム粒子とNMPを含む塗料を塗布し、塗膜を乾燥することによって形成した。
【0070】
[比較例1]
比較例1では、
図12に示すように、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbを設けなかった。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0071】
[比較例2]
比較例2では、
図13に示すように、
第1の絶縁層22Daの長さLA(
図13におけるZ軸方向の長さ)=第2の絶縁層の長さLB(
図13におけるZ軸方向の長さ)
とし、具体的には、第1の絶縁層22Daの長さLA及び第2の絶縁層22Dbの長さLBを1.1mmとした。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0072】
[比較例3]
比較例3では、
図14に示すように、
第1の絶縁層22Daの長さLA(
図14におけるZ軸方向の長さ)>第2の絶縁層の長さLB(
図14におけるZ軸方向の長さ)
とし、具体的には、第1の絶縁層22Daの長さLAを1.6mm、第2の絶縁層22Dbの長さLBを1.1mmとした。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0073】
[評価]
負極集電板25をレーザ溶接した後、外観検査を行い負極集電板25の表面に穴あきの発生している電極巻回体、及び、負極集電板25を引きはがした後に第1の絶縁層22a及び第2の絶縁層22bの少なくとも一方が溶接の熱の影響で黒く変色している電極巻回体を溶接不良と判断した。実施例1、及び、比較例1~3について、各200本ずつの電極巻回体を作成し、不良の合計数を総数で割ったものを溶接不良率として定義した。
結果を表1に示す。
【0074】
【0075】
実施例1の溶接不良率は、比較例1から比較例3までのそれぞれの溶接不良率と比べて顕著に小さかった。実施例1では、LA<LBの関係を満たすことで、折曲ポイントPAを境に負極活物質非被覆部221が略一様に中心側に折れ重なったため、平坦面72に「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」がほとんどなくなった。即ち、実施例1では、平坦面72の平坦性が向上したことにより、レーザ溶接時に集電板に穴あきが発生する頻度が極端に減り、その結果、溶接不良が少なくなったと考えられる。
【0076】
比較例1では、溶接不良率が4.0%と大きかった。比較例1では、平坦面72に「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」の領域が複数形成された。これは、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbがないため折曲ポイントが安定せず、
図15に示すように、負極活物質非被覆部(
図15における負極活物質非被覆部222)の折れ曲りの挙動がランダムになった。その結果、平坦面72に「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」の領域が形成されたと考えられる。平坦面72の平坦性が低下したため、レーザ溶接時に負極集電板25の表面に負極活物質非被覆部222が接触していない箇所が発生した。この結果、負極集電板25に過剰に熱エネルギーが集中したことで穴あきが発生したり、溶接ができていない箇所が発生し、溶接不良率が大きくなったと考えられる。
【0077】
比較例2では、溶接不良率が3.5%と大きかった。比較例2では、平坦面72に「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」の領域が複数形成された。これは、LA=LBであるため、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbがない場合と同じように折曲ポイントが安定せず、
図16に示すように、負極活物質非被覆部(
図16における負極活物質非被覆部223)の折れ曲りの挙動がランダムになった。その結果、平坦面72に「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」の領域が形成されたと考えられる。平坦面72の平坦性が低下したため、レーザ溶接時に負極集電板25の表面に負極活物質非被覆部223が接触していない箇所が発生した。この結果、負極集電板25に過剰に熱エネルギーが集中したことで穴あきが発生したり、溶接ができていない箇所が発生し、溶接不良率が大きくなったと考えられる。
【0078】
比較例3では、溶接不良率が5.5%と、比較例1や比較例2よりも大きかった。比較例3では、平坦面72に「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」の領域が比較例1や比較例2よりも多数、形成された。これは、LA>LBであるため、
図17に示すように、折曲ポイントPAが負極活物質非被覆部224の外側となり、負極活物質非被覆部224を折り曲げるときに当該負極活物質非被覆部224が一度外側に折れ曲がる挙動が顕著となる。この結果、負極活物質非被覆部224が安定して重ならず、「シワ」や「ボイド(空隙、空間)」の領域が実施例1はもとより比較例1や比較例2よりも多く形成され、その結果、溶接不良率が顕著に大きくなったと考えられる。
以上から、実施例1に対応する構成がリチウムイオン電池1の好ましい構成と言える。
【0079】
次に、LA<LBとし、LAとLBとの差を変化させた場合の溶接不良率の変化について考察した。
LAとLBとの差は、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbに硫酸バリウムを混ぜて塗布し、作製した電極巻回体にX線を照射した。得られたX線透過画像に基づいて、第1の絶縁層22Da及び第2の絶縁層22Dbの位置を特定した。X線透過画像のコントラストで濃い箇所(主面29Aa及び主面29Abともに絶縁層が形成されている部分)に基づいて第2の絶縁層22Dbの位置を特定し、X線透過画像のコントラストで薄い箇所(第1の絶縁層22Daと第2の絶縁層22Dbとの差分箇所の絶縁層)に基づいて第1の絶縁層22Daの位置を特定した。実施例1と同様にしてLA及びLBのそれぞれを測定した。
LBに対するLAの比率は、LAをLBで割ったときの百分率で算出した。
また、実施例1等と同様に溶接不良率を定義した。
【0080】
[実施例2]
実施例2では、第1の絶縁層22Daの長さLAを1.1mm、第2の絶縁層22Dbの長さLBを1.15mmとした。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0081】
[実施例3]
実施例3では、第1の絶縁層22Daの長さLAを1.1mm、第2の絶縁層22Dbの長さLBを1.2mmとした。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0082】
[実施例4]
実施例4では、第1の絶縁層22Daの長さLAを1.1mm、第2の絶縁層22Dbの長さLBを2.1mmとした。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
【0083】
[実施例5]
実施例5では、第1の絶縁層22Daの長さLAを1.1mm、第2の絶縁層22Dbの長さLBを2.2mmとした。その他については実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。
結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
実施例2(LAとLBとの差が0.05mm、LBに対するLAの比率95.65%)の溶接不良率が2.0%であった。比較例1~3より溶接不良率が小さかったものの、LAとLBの差が小さいため、電極巻回体によっては比較例2の場合(LA=LB)の電極巻回体と同様の挙動を示したものがあった。その結果、溶接不良率がやや大きくなった。
【0086】
実施例3(LAとLBの差が0.1mm、LBに対するLAの比率91.67%)及び実施例4(LAとLBとの差が1.0mm、LBに対するLAの比率52.38%)の場合は、負極活物質非被覆部221の折れ曲りの挙動(態様)が実施例1と同様となり、平坦面72の平坦性が向上した。この結果、実施例3及び実施例4の溶接不良率は0.5%となり、実施例1と同様に小さかった。
【0087】
実施例5(LAとLBの差が1.1mm、LBに対するLAの高さの比率50.00%)の溶接不良率は1.0%であった。負極活物質非被覆部221の折れ曲りの挙動は実施例3や4と同様であったが、電極巻回体20を解体すると、第2の絶縁層22Dbの一部が黒く変色した。また、第2の絶縁層22Dbによって、隣接する負極活物質非被覆部221の間に空隙を有する箇所が存在した。その結果、溶接不良率がやや大きくなった。
以上から、LBに対するLAの長さの割合が、52%以上92%以下(より好ましくは、52.38%以上91.67%以下)、若しくは、LA<LB且つLAとLBとの差が0.1mm以上1.0mm以下である構成がより好ましい。
【0088】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0089】
本発明は、正極活物質非被覆部21Cが折り曲げられていないタブレス構造の電池にも適用可能である。また、負極活物質非被覆部221Ba、221Bbや負極活物質非被覆部221Caや221Cbが設けられる構成が好ましいが、これらが無いリチウムイオン電池に対しても本発明を適用することができる。
実施例及び比較例では、溝43の数を8としていたが、これ以外の数であってもよい。電池サイズを21700(直径21mm、高さ70mm)としていたが、18650(直径18mm、高さ65mm)やこれら以外のサイズであってもよい。
扇状部31、33の形状は、扇形の形状以外の形状であってもよい。
【0090】
本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は、リチウムイオン電池以外の他の電池や、円筒形状以外の電池(例えば、ラミネート型電池、角型電池、コイン型電池、ボタン型電池)に適用することも可能である。この場合において、「電極巻回体の端面」の形状は、円筒形状のみならず、楕円形状や扁平形状なども採り得る。
【0091】
<応用例>
(1)電池パック
図18は、本発明の実施形態又は実施例に係る二次電池を電池パック300に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、充電制御スイッチ302aと、放電制御スイッチ303a、を備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、制御部310を備えている。制御部310は各デバイスの制御を行い、さらに異常発熱時に充放電制御を行ったり、電池パック300の残容量の算出や補正を行ったりすることが可能である。電池パック300の正極端子321及び負極端子322は、充電器や電子機器に接続され、充放電が行われる。
【0092】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。
図18では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されている。二次電池301aに対して本発明の二次電池を適用可能である。
【0093】
温度検出部318は、温度検出素子308(例えばサーミスタ)と接続されており、組電池301又は電池パック300の温度を測定して、測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0094】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流をもとに、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aが過充電検出電圧(例えば4.20V±0.05V)以上若しくは過放電検出電圧(2.4V±0.1V)以下になったときに、スイッチ部304にOFFの制御信号を送ることにより、過充電又は過放電を防止する。
【0095】
充電制御スイッチ302a又は放電制御スイッチ303aがOFFした後は、ダイオード302b又はダイオード303bを介することによってのみ、充電又は放電が可能となる。これらの充放電スイッチは、MOSFETなどの半導体スイッチを使用することができる。なお、
図18では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0096】
メモリ317は、RAMやROMからなり、制御部310で演算された電池特性の値や、満充電容量、残容量などが記憶され、書き換えられる。
【0097】
(2)電子機器
上述した本発明の実施形態又は実施例に係る二次電池は、電子機器や電動輸送機器、蓄電装置などの機器に搭載され、電力を供給するために使用することができる。
【0098】
電子機器としては、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、デジタルスチルカメラ、電子書籍、音楽プレイヤー、ゲーム機、補聴器、電動工具、テレビ、照明機器、玩具、医療機器、ロボットが挙げられる。また、後述する電動輸送機器、蓄電装置、電動工具、電動式無人航空機も、広義では電子機器に含まれ得る。
【0099】
電動輸送機器としては電気自動車(ハイブリッド自動車を含む。)、電動バイク、電動アシスト自転車、電動バス、電動カート、無人搬送車(AGV)、鉄道車両などが挙げられる。また、電動旅客航空機や輸送用の電動式無人航空機も含まれる。本発明に係る二次電池は、これらの駆動用電源のみならず、補助用電源、エネルギー回生用電源などとしても用いられる。
【0100】
蓄電装置としては、商業用又は家庭用の蓄電モジュールや、住宅、ビル、オフィスなどの建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0101】
(3)電動工具
図19を参照して、本発明が適用可能な電動工具として電動ドライバの例について概略的に説明する。電動ドライバ431には、シャフト434に回転動力を伝達するモータ433と、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430は、電動ドライバ431に対して内蔵されているか、又は着脱自在とされている。電池パック430を構成する電池に対して、本発明の二次電池を適用可能である。
【0102】
電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれには、マイクロコンピュータ(不図示)が備えられており、電池パック430の充放電情報が相互に通信できるようにしてもよい。モータ制御部435は、モータ433の動作を制御すると共に、過放電などの異常時にモータ433への電源供給を遮断することができる。
【0103】
(4)電動車両用蓄電システム
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例として、
図20に、シリーズハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV)の構成例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンを動力とする発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0104】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置(直流モータ又は交流モータ。以下単に「モータ603」という。)、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608としては、本発明の二次電池、又は、本発明の二次電池を複数搭載した蓄電モジュールが適用され得る。
【0105】
バッテリ608の電力によってモータ603が作動し、モータ603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。エンジン601によって産み出された回転力によって、発電機602で生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度を制御したりする。
【0106】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ603に回転力として加わり、この回転力によって生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。また、バッテリ608は、ハイブリッド車両600の充電口611を介して外部の電源に接続されることで充電することが可能である。このようなHV車両を、プラグインハイブリッド車(PHV又はPHEV)という。
【0107】
なお、本発明に係る二次電池を小型化された一次電池に応用して、車輪604、605に内蔵された空気圧センサシステム(TPMS: Tire Pressure Monitoring system)の電源として用いることも可能である。
【0108】
以上では、シリーズハイブリッド車を例として説明したが、エンジンとモータを併用するパラレル方式、又は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたハイブリッド車に対しても本発明は適用可能である。さらに、エンジンを用いない駆動モータのみで走行する電気自動車(EV又はBEV)や、燃料電池車(FCV)に対しても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1・・・リチウムイオン電池、12,13・・・絶縁板、21・・・正極、21A・・・正極箔、21B・・・正極活物質層、21C・・・正極活物質非被覆部、22・・・負極、22A・・・負極箔、22Ba・・・(第1の)負極活物質被覆部、22Bb・・・(第2の)負極活物質被覆部、22Ca、22Cb・・・負極活物質非被覆部、23・・・セパレータ、22Da・・・第1の絶縁層、22Db・・・第2の絶縁層、24・・・正極集電板、25・・・負極集電板、26・・・貫通孔、29Aa・・・(第1の)主面、29Ab・・・(第2の)主面、41、42・・・端面、43・・・溝、221Aa・・・(第1の)負極活物質非被覆部、221Ab・・・(第2の)負極活物質非被覆部