(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】測定方法、測定装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240814BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61B10/00 E
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2023518618
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2022001647
(87)【国際公開番号】W WO2022234694
(87)【国際公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2021079320
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】クラーク ジョン ケンジ
(72)【発明者】
【氏名】中村 滋
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-518936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0145754(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
A61B 3/10
A61B 1/00
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を半導体波長可変レーザの出力光の波長として選択し、選択される前記1つのサンプル波長が時間に応じて離散的に順次変わるように前記出力光が出力されるよう制御し、
前記出力光が分割された測定光と参照光について、前記測定光がサンプルに照射されることにより得られた散乱光と、前記参照光とが合波されて干渉した干渉光が検出されて変換された電気信号を、前記複数のサンプル波長の各々について取得し、
前記複数のサンプル波長の各々について得られた前記電気信号について圧縮センシングを実行することで、前記サンプルの散乱プロファイルを導出し、
前記出力光の出力の制御において、前記複数のサンプル波長に関するパラメータが以下の式(1)を満たすように制御をする、
ことをコンピュータが実行する測定方法。
【数1】
・・・(1)
(ただし、式(1)において、
【数2】
・・・(2)
は、前記複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは前記複数のサンプル波長の数であり、hは、前記散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルの非零要素の数である。)
【請求項2】
前記複数のサンプル波長に関するパラメータは、以下の式(3)を満たす、
請求項1に記載の測定方法。
【数3】
・・・(3)
(ただし、式(3)において、z
maxは、前記散乱光の最大の深度であり、Δzは、深度プロファイルの解である。)
【請求項3】
前記散乱プロファイルの導出において、
前記各複数のサンプル波長についての前記電気信号の測定値を構成要素として有する測定ベクトルと、前記測定光の前記サンプルへの伝搬方向に沿った前記散乱プロファイルを示す解ベクトルと、前記各複数のサンプル波長に対応する行及び前記伝搬方向に沿った位置に対応する列を有する不均一離散フーリエ変換行列と、を定義し、
前記測定ベクトル及び前記不均一離散フーリエ変換行列を用いて、前記解ベクトルのスパース表現を特定する、
ことをコンピュータが実行する請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記解ベクトルのスパース表現の特定において、
前記不均一離散フーリエ変換行列と前記解ベクトルの行列積が前記測定ベクトルと等しくなる条件を満たしつつ、前記解ベクトルの値が前記解ベクトルのLpノルム(pは0以上1以下)を最小化するように、前記スパース表現を特定する、
ことをコンピュータが実行する請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記解ベクトルのLpノルムはL1ノルムである、
請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
前記解ベクトルのスパース表現の特定において、
LASSO(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)を最小化する前記解ベクトルの値を見つけることにより、前記スパース表現を特定する、
ことをコンピュータが実行する請求項3に記載の測定方法。
【請求項7】
時間に応じて波長を離散的に変化させるように出力光を出力する半導体波長可変レーザと、
前記出力光を測定光と参照光に分割し、前記測定光をサンプルに照射させることにより得られた散乱光と、前記参照光とを合波して干渉させた干渉光を生成する干渉計と、
前記干渉光を検出して電気信号に変換する光検出器と、
複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を前記出力光の波長として選択し、選択する前記1つのサンプル波長が時間に応じて順次変わるように設定するとともに、各前記複数のサンプル波長について得られた前記電気信号について圧縮センシングを実行することで、前記サンプルの散乱プロファイルを導出する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記複数のサンプル波長に関するパラメータが以下の式(4)を満たすように、前記半導体波長可変レーザが前記出力光を出力するよう制御する、
測定装置。
【数4】
・・・(4)
(ただし、式(4)において、
【数5】
・・・(5)
は、前記複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは前記複数のサンプル波長の数であり、hは、前記散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルの非零要素の数である。)
【請求項8】
前記半導体波長可変レーザは、SGDBR(Sampled-Grating Distributed Bragg Reflector)レーザである、
請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を半導体波長可変レーザの出力光の波長として選択し、選択される前記1つのサンプル波長が時間に応じて離散的に順次変わるように前記出力光が出力されるよう制御し、
前記出力光が分割された測定光と参照光について、前記測定光がサンプルに照射されることにより得られた散乱光と、前記参照光とが合波されて干渉した干渉光が検出されて変換された電気信号を、前記複数のサンプル波長の各々について取得し、
前記複数のサンプル波長の各々について得られた前記電気信号について圧縮センシングを実行することで、前記サンプルの散乱プロファイルを導出し、
前記出力光の出力の制御において、前記複数のサンプル波長に関するパラメータが以下の式(6)を満たすように制御をする、
ことをコンピュータに実行させるプログラム
。
【数6】
・・・(6)
(ただし、式(6)において、
【数7】
・・・(7)
は、前記複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは前記複数のサンプル波長の数であり、hは、前記散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルの非零要素の数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は測定方法、測定装置及び非一時的なコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに測定光を出力して反射させ、その反射光と参照光とを合成して得られる干渉光を用いることで、サンプルの断層データを生成する光干渉断層法(OCT:Optical Coherence Tomography)の技術が、近年用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、信号光と参照光の間の位相差を既定の2つの位相差に交互に変更しながら対象物を信号光でスキャンし、スキャンをオーバーサンプリングレシオで実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この開示は、先行技術文献に開示された技術を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態にかかる一態様の測定方法は、複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を半導体波長可変レーザの出力光の波長として選択し、選択される前記1つのサンプル波長が時間に応じて離散的に順次変わるように前記出力光が出力されるよう制御し、前記出力光が分割された測定光と参照光について、前記測定光がサンプルに照射されることにより得られた散乱光と、前記参照光とが合波されて干渉した干渉光が検出されて変換された電気信号を、前記複数のサンプル波長の各々について取得し、前記複数のサンプル波長の各々について得られた前記電気信号について圧縮センシングを実行することで、前記サンプルの散乱プロファイルを導出することをコンピュータが実行するものである。ここで、複数のサンプル波長に関するパラメータは以下の式(1)を満たす。
【数1】
・・・(1)
ただし、式(1)において、
【数2】
・・・(2)
は、複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは複数のサンプル波長の数であり、hは、前記散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルの非零要素の数である。
【0007】
本実施形態にかかる一態様の測定装置は、時間に応じて波長を離散的に変化させるように半導体波長可変レーザの出力光を出力する波長可変光源と、前記出力光を測定光と参照光に分割し、前記測定光をサンプルに照射させることにより得られた散乱光と、前記参照光とを合波して干渉させた干渉光を生成する干渉計と、前記干渉光を検出して電気信号に変換する光検出器と、複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を前記出力光の波長として選択し、選択する前記1つのサンプル波長が時間に応じて順次変わるように設定するとともに、各前記複数のサンプル波長について得られた前記電気信号について圧縮センシングを実行することで、前記サンプルの散乱プロファイルを導出する制御手段を備える。ここで、複数のサンプル波長に関するパラメータは以下の式(3)を満たす。
【数3】
・・・(3)
ただし、式(3)において、
【数4】
・・・(4)
は、複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは複数のサンプル波長の数であり、hは、前記散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルの非零要素の数である。
【0008】
本実施形態にかかる一態様のプログラムは、複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を半導体波長可変レーザの出力光の波長として選択し、選択される前記1つのサンプル波長が時間に応じて離散的に順次変わるように前記出力光が出力されるよう制御し、前記出力光が分割された測定光と参照光について、前記測定光がサンプルに照射されることにより得られた散乱光と、前記参照光とが合波されて干渉した干渉光が検出されて変換された電気信号を、前記複数のサンプル波長の各々について取得し、前記複数のサンプル波長の各々について得られた前記電気信号について圧縮センシングを実行することで、前記サンプルの散乱プロファイルを導出することをコンピュータに実行させるものである。ここで、複数のサンプル波長に関するパラメータは以下の式(5)を満たす。
【数5】
・・・(5)
ただし、式(5)において、
【数6】
・・・(6)
は、複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは複数のサンプル波長の数であり、hは、前記散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルの非零要素の数である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる測定装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1にかかる測定装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態7にかかるSS-OCT装置の一例を示す構成図である。
【
図4】実施の形態7にかかるOCT A-スキャンを取得するためのプロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図5】関連技術にかかるOCT A-スキャンを抽出する方法の例を示すフローチャートである。
【
図6A】関連技術にかかる干渉信号の測定値の例を示すグラフである。
【
図6B】関連技術にかかるOCT A-スキャンの例を示すグラフである。
【
図6C】関連技術において、干渉信号が非一定の波数間隔でサンプリングされる場合の干渉信号の例を示すグラフである。
【
図6D】関連技術において、干渉信号が非一定の波数間隔でサンプリングされる場合のOCT A-スキャンの例を示すグラフである。
【
図7A】ランダムに分布する1セットの波長でサンプリングされた干渉信号の測定値の例を示すグラフである。
【
図7B】測定値に対して圧縮センシングを適用することで得られるOCT A-スキャンの例を示すグラフである。
【
図8A】理想的なサンプルのOCT A-スキャンの例を示すグラフである。
【
図8B】サンプル波長に周期的なギャップがある場合の干渉信号の測定値の例を示すグラフである。
【
図8C】圧縮センシングを用いて、
図8Bに示されるサンプル波長のセットから抽出されたOCT A-スキャンの例を示すグラフである。
【
図8D】ランダムに分布したサンプル波長で干渉信号がサンプリングされた場合の干渉信号の測定値の例を示すグラフである。
【
図8E】圧縮センシングを用いて、
図8Dに示されるサンプル波長のセットから抽出されたOCT A-スキャンの例を示すグラフである。
【
図9】実施の形態7にかかるSGDBRレーザの模式図である。
【
図10A】実施の形態7にかかる電流I
Gが経時変化する例を示すグラフである。
【
図10B】実施の形態7にかかる電流I
FMが経時変化する例を示すグラフである。
【
図10C】実施の形態7にかかる電流I
RMが経時変化する例を示すグラフである。
【
図10D】実施の形態7にかかる電流I
Phが経時変化する例を示すグラフである。
【
図10E】実施の形態7にかかるレーザ光の波長が経時変化する例を示すグラフである。
【
図11】実施の形態7にかかる圧縮センシングを使用するプロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図12】各実施の形態にかかる装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(関連技術)
まず、この開示の関連技術について、改めて説明する。OCTは、サンプルからの後方散乱光によって生じる干渉パターンと参照光とに基づいて、サンプルの表面下構造の3D断層像を取得する技術である。OCTは、眼科、歯科、非破壊検査等の様々な分野において、高解像度の断層画像情報を得るために適用されている。
【0011】
OCTでは、一般的に、光源からのビーム光が、参照光ビームとサンプル光ビームとに分割される。その後、サンプル光ビームはサンプルに照射され、サンプルから後方散乱されたサンプル光(後方散乱光)が参照光ビームと干渉して干渉光が生成される。検出装置は、その干渉光を検出する。後方散乱光と参照光ビームの干渉によって生成される干渉パターンから、A-スキャンとして知られる、サンプル光ビームの軸方向(伝搬方向)に沿ったサンプルの散乱プロファイルが抽出される。A-スキャンを抽出する正確な手段は、実施されるOCTのタイプに依存する。なお、サンプル光ビームは、サンプルの散乱プロファイルの3D画像を構築するために、サンプルを横切って横方向に走査される。
【0012】
OCTには、時間領域OCT(TD-OCT;Time Domain Optical Coherence Tomography) とフーリエ領域OCT(FD-OCT;Fourier Domain Optical Coherence Tomography)の2つの主なタイプがあり、それぞれの動作原理は異なる。TD-OCTでは、短いコヒーレンス長の光源が用いられ、参照光ビームの光路長が時間に依存して変化する。後方散乱光と参照光との干渉は、その2つの光が同じ光路長を有する場合に発生する。従って、A-スキャン散乱プロファイルは、干渉信号の包絡線から抽出される。
【0013】
一方、FD-OCTでは、広帯域または可変波長の光源が使用され、波長範囲にわたる干渉信号が測定される。A-スキャンは、波数領域における干渉信号の逆フーリエ変換がなされることによって、干渉信号から抽出される。
【0014】
FD-OCTは、使用する光源と検出装置のタイプに基づいて、スペクトル領域OCT (SD-OCT;Spectral Domain Optical Coherence Tomography)とSS-OCTに細分される。SD-OCTでは、広帯域光源が用いられ、光スペクトロメータを用いることによってスペクトル分解干渉信号が得られる。これに対し、多くのSS-OCT(Swept-Source Optical Coherence Tomography)では、光源として波長掃引レーザ(Swept-Source laser)が使用され、干渉信号の強度を検出するために光検出器が使用される。光源の波長を経時的に変化させ、光源の波長を変化させながら干渉信号の強度を測定することによって、スペクトル分解された干渉信号が得られる。なお、波長掃引レーザは、後述の半導体波長可変レーザ(semiconductor wavelength-tunable laser)と異なり、波長掃引が離散的でなく連続的になされるものである。また、波長掃引レーザは、半導体波長可変レーザと比較すると、出力光のコヒーレンス長が短く、広帯域である。
【0015】
SS-OCTシステムの実際の実装では、干渉信号を波長の離散セットでサンプリングし、逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier transform)を波数領域のスペクトル分解干渉信号に適用することにより、A-スキャンを得る。ここで、所定の波長における波数の値は、単に波長の逆数である。逆離散フーリエ変換を用いて抽出された逆フーリエ変換が、プローブされるサンプルの実際のA-スキャンを正確に表すためには、スペクトル分解された干渉信号のサンプリングレートが、少なくともナイキストレートと同じくらい高いことが重要である。すなわち、サンプル波長間の波数間隔は、サンプル波長の範囲全体にわたって、深度範囲(depth range)の2倍の逆数よりも小さくなければならない。これは、次の式(7)で表される。
【数7】
・・・(7)
ここで、Δkは、隣接するサンプルされた波長(sampled wavelength;以下、サンプル波長と記載)間の波数間隔であり、z
maxは、サンプル光ビームが後方散乱される最大の深度である。サンプリングレートがナイキストレートの要求するものよりも低い場合、抽出されたA-スキャンはエイリアシングノイズを有する。このA-スキャン深度範囲の波数間隔への依存性が意味することは、長距離にわたり低ノイズのA-スキャンを得るために、光源の波長が、理想として、時間内で波数に関して線形に変化されるべきであることである。
【0016】
SS-OCTシステムの大部分は、光源として波長掃引レーザを利用する。波長掃引レーザの波長は、ある波長の範囲にわたって連続的に掃引(sweep)されることができるので、SS-OCTにとって理想的である。しかしながら、波長掃引レーザは、一般に、可変サイズのレーザキャビティを形成するために、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)反射器又は外部光キャビティのような調節可能な外部光部品を備えた半導体レーザに頼ることになる。そのようなレーザは嵩張り、製造することが高価である。また、複雑な製造手順が要求されるため、波長掃引レーザのコストが増大する。その結果、SS-OCTシステムが高価になり、SS-OCTの潜在用途が制限される。
【0017】
さらに、波長掃引レーザは、その利用可能な波長の範囲にわたって掃引されるので、レーザの波数は、一般に、時間に対して完全に直線的には変化しない。これにより、一様な波数間隔を得るために干渉信号をいつサンプリングすべきかをユーザに知らせる不均一周波数kクロック信号を準備するか、または干渉信号を収集後に一様な波数間隔で補間するかのいずれかの処理が必要となる。
【0018】
SS-OCTのコストを削減し、kクロック信号や線形補間の必要性をなくすために、半導体波長可変レーザが波長掃引レーザの代替として使用されている。半導体波長可変レーザの一例は、サンプル格子分布ブラッグ反射器(SGDBR) レーザや、分布帰還(DFB)レーザが挙げられるが、これらに限られない。半導体波長可変レーザの波長は、広範囲にわたる離散した波長に調整されることが可能である。半導体波長可変レーザは、例えば、波長分割多重のように、テレコミュニケーションにおいて広範囲に適用される。波長を離散的に調整する能力は、一定の波数間隔を有する干渉スペクトルの波長を潜在的に選択可能であることを意味する。さらに、SGDBRレーザのようないくつかの形態の半導体波長可変レーザは、全ての半導体アーキテクチャに存在し、極めて低い潜在的な製造コストを可能とする。なお、半導体波長可変レーザは、波長掃引レーザと比較すると、コヒーレンス長が長く、狭帯域の出力光を発する。
【0019】
しかし、半導体波長可変レーザは、SS―OCTへの応用に関していくつかの制約がある。第1に、半導体波長可変レーザの波長変更時に一定の波数間隔を得るためには、半導体波長可変レーザの入力を多変数空間上で精密に制御する複雑な制御機構が必要である。第2に、半導体波長可変レーザは、一般に、その全可変範囲にわたって安定ではなく、レーザ波長またはパワーが不安定な領域が存在する。この不安定領域は、干渉信号の取得後の後処理ステップで除去されなければならない。また、この不安定領域の除去は、エイリアシングノイズをもたらし、抽出されたA-スキャンの深度範囲を減少させる。
【0020】
上記の問題を回避しつつ、低コストの半導体波長可変レーザを利用できるSS-OCT装置が依然として要求されている。
【0021】
(この開示の技術の原理)
次に、この開示の技術の原理について説明する。この開示の技術は、高分解能かつ深度範囲が大きい断層撮影データの取得を可能にするSS-OCT装置を提供することを可能にする。この装置は、光源としての半導体波長可変レーザと圧縮センシングとの組合せを利用して、高分解能で深度範囲が大きいOCTのA-スキャンを得る。
【0022】
圧縮センシングは、スパースでない(not sparse)ある基底における信号の限られた数の測定値から、他の基底においてスパースである(sparse)信号の正確な抽出を可能にする技術である。測定基底で値が測定される測定ベクトルyで表される信号と、ベクトルx(解ベクトル)で表されるスパースな基底での信号のスパース表現と、スパースな基底でのベクトルxを測定基底での測定ベクトルyに変換する線形演算子(行列)Aとは、式(8)のように表される。
【数8】
・・・(8)
ここで、不均一離散フーリエ変換行列A(以下、不均一離散フーリエ変換行列を単に変換行列と記載する)の行は、各サンプル波長に対応し、変換行列Aの列は、サンプル光ビームの伝搬方向に沿った位置に対応する。ベクトルxは、深度範囲における散乱強度のベクトルであり、このベクトルxを求めることにより、OCTのA-スキャンを得ることができる。
【0023】
ベクトルxのスパース表現を得ることは、少なくともxの要素と同じ数の測定値がない限り、通常は不可能である。圧縮センシングは、ベクトルxがスパースである、換言すれば、ベクトルxにゼロでない要素がほとんどなく、変換行列Aが小さい相互コヒーレンスMを有するという条件下で、ベクトルxにおける要素の数よりもはるかに少ない測定数であっても、スパース表現xの抽出を可能とする。相互コヒーレンスMは、式(9)で与えられる。
【数9】
・・・(9)
ここで、a
iは変換行列Aの列を表し、nはxの要素数を表す。スパース表現xは、式(10)によって記述されるように、(L0ノルムでの)xにおける非零要素の数を最小化することによって抽出される。
【数10】
・・・(10)
なお、ここで式(8)が満たされていることに留意されたい。
【0024】
圧縮センシングの実際の実装では、L0ノルムの代わりにL1ノルムがしばしば最小化される。ノルムは、L0ノルム、L1ノルムに限られず、一般化されたLpノルム(pは0以上1以下)を用いることができる。
【0025】
測定基底内の信号がノイズを有する場合、圧縮センシングのいくつかの実装は、式(11)によって与えられるLASSO(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator) を最小化する。
【数11】
・・・(11)
ここで、λは、信号内のノイズの大きさに応じて変化するラグランジュ乗数として知られるパラメータである。このLASSOを最小化するベクトルxを特定することにより、OCTのA-スキャンを得ることができる。圧縮センシングが取り得る様々な実装が存在し、当業者は、このような実装のいずれであっても使用できることを理解するであろう。
【0026】
SS-OCTにおいて、プローブされるサンプルは、一般に、限られた数の散乱特徴を有するようなものであり、A-スキャンは、深度基底においてとても少ない非零要素を有するスパース信号と考えることができる。一方、干渉信号は、スパース信号ではなく、サンプリングされる全ての波長に対して一般にゼロではない。フーリエ変換、より具体的には離散フーリエ変換は、A-スキャン信号をスパース深度基底から非スパースの波数基底に変換する線形変換を表す。干渉信号がサンプリングされる複数の波長が、それらの波長間に一定の波数間隔を有さない場合、不均一離散フーリエ変換は、深度基底から波数基底に信号を変換する線形演算子である。従って、変換行列の相互コヒーレンスが小さい条件下で、圧縮センシングを用いて干渉信号の限られた数のサンプルからスパースな散乱プロファイルを有するサンプルのOCT A-スキャンを抽出することが可能である。不均一離散フーリエ変換における要素の正確な値は、干渉信号がサンプリングされる波長に依存するので、不均一離散フーリエ変換の相互コヒーレンスは、干渉信号がサンプリングされる波長の選択を最適化することによって最小化され得る。
【0027】
この開示は、低コストの光源を用いて高解像度で深度範囲が大きいOCT A-スキャンを実現するために、半導体波長可変レーザをレーザ源として使用することと、標準的なSS-OCT装置における干渉信号からOCT A-スキャンを抽出する手段としての圧縮センシングとを組み合わせることを開示する。半導体波長可変レーザの使用は、レーザ波長を時間内に精密に制御することを可能にし、最小の相互コヒーレンスを有する変換行列をもたらすサンプル波長のセットを使用することを可能にする。圧縮センシングの応用は、不均一波数間隔の波長でサンプリングしたサンプルの干渉信号から、スパースな散乱プロファイルを有するサンプルのOCT A-スキャンの抽出を可能にする。
【0028】
この開示は、半導体波長可変レーザをレーザ源として使用する場合の高品質のOCT A-スキャンを達成するための障害、すなわち、レーザの全波長範囲にわたってサンプリングされた波長間の均一な波数間隔を達成することの困難さ、および半導体波長可変レーザの可変波長範囲内の特定の波長における半導体波長可変レーザの不安定性を克服することを可能にする。また、圧縮センシングを使用することにより、標準的なSS-OCTシステムに典型的なkクロックまたは干渉信号の補間が、必要ではなくなる。また、レーザ源の波長を自由に調整するというこの開示の能力は、最小の相互コヒーレンスを有する不均一離散フーリエ変換を達成することを可能にすることによって、波長掃引レーザおよび圧縮センシングを利用するSS-OCT装置をさらに改善し、散乱プロファイルにおいてより低いスパース性を有するサンプルのためのOCT A-スキャンの抽出を可能にする。
【0029】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して実施の形態1について説明する。実施の形態1は、この開示の技術に係る測定装置を開示する。
【0030】
図1は、実施の形態1にかかる測定装置の一例を示す。
図1の測定装置10は、少なくとも、半導体波長可変レーザ11と、干渉計12と、光検出器13と、制御部14を備える。以下、各部について説明する。
【0031】
半導体波長可変レーザ11は、時間に応じて波長を離散的に変化させるように出力光を出力する。
【0032】
干渉計12は、半導体波長可変レーザ11が出力した出力光を測定光と参照光に分割し、測定光をサンプルに照射させることにより得られた散乱光と、参照光とを合波して干渉させた干渉光を生成する。干渉計12の具体例は、マイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計であるが、これらに限定されるものではない。光検出器13は、生成された干渉光を検出して電気信号に変換する。
【0033】
制御部14は、複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を出力光の波長として選択し、選択する1つのサンプル波長が時間に応じて順次変わるように設定する。このようにして、制御部14は、時間に応じて半導体波長可変レーザ11の出力光の波長が離散的に変化されるように制御する。また、制御部14は、各複数のサンプル波長について得られた電気信号について圧縮センシングを実行することで、サンプルの散乱プロファイルを導出する。例えば、制御部14は、電気信号のデータと、各サンプル波長及びサンプル光ビームの伝搬方向に沿った位置で示される変換行列とを用いて、散乱プロファイルであるA-スキャン(非零要素が少ないスパース信号)を導出する。この詳細については、上述の通りである。また、制御部14は、コンピュータとしての測定装置に、各処理を実行させるよう制御する。
【0034】
図2は、測定装置10の制御部14が実行する処理例を示すフローチャートである。以下、各処理について説明する。
【0035】
まず、制御部14は、複数のサンプル波長の中から1つのサンプル波長を出力光の波長として選択し、選択される1つのサンプル波長が時間に応じて離散的に順次変わるように、出力光が出力されるよう制御する(ステップS11;制御ステップ)。干渉計12は、サンプル波長毎に、出力光が分割された測定光と参照光について、測定光がサンプルに照射されることにより得られた散乱光と、参照光とが合波されて干渉した干渉光を生成する。この干渉光は、光検出器13により、電気信号に変換される。
【0036】
次に、制御部14は、干渉光が検出されて変換された電気信号を、複数のサンプル波長の各々について取得する(ステップS12;取得ステップ)。そして、制御部14は、複数のサンプル波長の各々について得られた電気信号について圧縮センシングを実行することで、サンプルの散乱プロファイルを導出する(ステップS13;導出ステップ)。
【0037】
ここで、制御部14は、ステップS11において、複数のサンプル波長に関するパラメータが以下の式(12)を満たすように、半導体波長可変レーザが出力光を出力するよう制御する。
【数12】
・・・(12)
ただし、式(12)において、
【数13】
・・・(13)
は、複数のサンプル波長に関するサンプリングマスクのフーリエ変換であり、zは深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mは複数のサンプル波長の数であり、hは、散乱プロファイルに関する、深度範囲における散乱強度のベクトルxの非零要素の数である。
【0038】
以上のようにして、測定装置10は、圧縮センシングを用いることで、深度範囲の低下を抑制することができる。この詳細は上述の通りである。また、半導体波長可変レーザ11として、出力光のサンプル波長が時間に応じて離散的に順次変わるような光源を用いることができるので、光源のコストを削減することができる。さらに、式(12)に示される通り、波数領域における複数のサンプル波長のセットの周期性が低いため、測定装置10は、高い精度でOCT A-スキャンを抽出することができる。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態1において、波数空間内の複数のサンプル波長に関するパラメータは、以下の式(14)を満たしても良い。
【数14】
・・・(14)
ただし、式(14)において、z
maxは、散乱光の最大の深度であり、Δzは、深度プロファイルの解である。式(14)は、関連技術の説明で示した式(7)とは、明らかに異なる。この式(14)により、波数領域における複数のサンプル波長のセットの周期性を、より確実に低くすることができる。そのため、測定装置10は、確実に高い精度でOCT A-スキャンを抽出することができる。
【0040】
(実施の形態3)
実施の形態1又は2において、制御部14は、ステップS13(導出ステップ)において、以下の処理を実行しても良い。制御部14は、各複数のサンプル波長について得られた電気信号の測定値を構成要素として有する測定ベクトルと、測定光のサンプルへの伝搬方向に沿った散乱プロファイルを示す解ベクトルと、各複数のサンプル波長に対応する行及び伝搬方向に沿った位置に対応する列を有する不均一離散フーリエ変換行列と、を定義する(定義ステップ)。そして、制御部14は、定義された測定ベクトル及び不均一離散フーリエ変換行列を用いて、解ベクトルのスパース表現を特定する(特定ステップ)。これにより、測定装置10は、解ベクトルを困難なく算出することができる。
【0041】
(実施の形態4)
実施の形態3において、特定ステップは、不均一離散フーリエ変換行列と解ベクトルの行列積が測定ベクトルと等しくなる条件を満たしつつ、解ベクトルの値が解ベクトルのLpノルム(pは0以上1以下)を最小化するような、解ベクトルのスパース表現を特定するステップであっても良い。これにより、計算処理において、圧縮センシングの技術を容易に適用することができる。
【0042】
(実施の形態5)
実施の形態4において、解ベクトルのLpノルムはL1ノルムであっても良い。これにより、制御部14での計算を容易にすることができる。
【0043】
(実施の形態6)
実施の形態3において、特定ステップは、LASSOを最小化する解ベクトルの値を見つけることにより、解ベクトルのスパース表現を特定するステップであっても良い。これにより、計算処理において、圧縮センシングの技術を容易に適用することができる。
【0044】
(実施の形態7)
以下、図面を参照して実施の形態7について説明する。実施の形態7では、各実施形態にかかる測定装置の、より具体的な適用例について説明する。
【0045】
図3は、実施の形態7にかかるSS-OCT装置の一例を示す。
図3のSS-OCT装置100は、任意のサンプル101の3D断層データを生成する。SS-OCT装置100は、少なくとも、コントローラ102と、半導体波長可変レーザ103と、干渉計104と、光検出器110を備える。
【0046】
コントローラ102は、実施の形態1の制御部14に対応し、制御信号105を半導体波長可変レーザ103に出力して、半導体波長可変レーザ103が出射するレーザ光106の波長とパワーを決定する。コントローラ(制御部)102は、制御信号105を時間的に変化するように出力することにより、半導体波長可変レーザ103が出射するレーザ光106の波長を、時間に応じて離散的に変化させる。
【0047】
半導体波長可変レーザ103は、実施の形態1の半導体波長可変レーザ11に対応し、制御信号105に応じて、時間に応じて波長が離散的に変化するようにレーザ光106を出力する。レーザ光106は、干渉計104に入射される。
【0048】
干渉計104は、実施の形態1の干渉計12に対応し、レーザ光106を用いて干渉光を生成する。詳細には、レーザ光106は干渉計104内で少なくとも2つの光ビームに分割される。分割された一方の少なくとも1つの光ビームはサンプル光ビーム107であり、分割された他方の少なくとも1つの光ビームは参照光ビーム108である。サンプル光ビーム107はサンプル101を照射し、サンプル101によって後方散乱されたサンプル光ビーム107は、干渉計104に戻される。戻されたサンプル光ビーム107が参照光ビーム108と干渉することにより、少なくとも1つの光干渉信号109を生成する。
【0049】
光検出器110は、実施の形態1の光検出器13に対応し、サンプル波長毎に光干渉信号109を検出し、その信号を電気干渉信号111に変換する。電気干渉信号111はコントローラ102に出力される。コントローラ102は、圧縮センシングを適用して、電気干渉信号111からOCT A-スキャンを抽出する。
【0050】
一例として、第1の光干渉信号109とは別に、第2の光干渉信号112があっても良い。この場合、第2の光干渉信号112は、第1の光干渉信号109と相補的であり、光検出器110は、バランス型検出器である。第1の光干渉信号109及び第2の光干渉信号112は、上述と同様、電気干渉信号111に変換され、コントローラ102は、その電気干渉信号111からOCT A-スキャンを抽出する。
【0051】
以下、干渉計104の具体例についてさらに説明する。この例では、干渉計104は光ファイバマイケルソン干渉計であり、干渉計104は、光サーキュレータ113、中間ファイバ114、カプラ115、サンプル光ファイバ116、参照光ファイバ117、サンプルコリメータレンズ118、参照コリメータレンズ119及び参照ミラー120を有する。
【0052】
レーザ光106は、光ファイバケーブル内を通過して(つまり、光ファイバケーブルに結合して)、光サーキュレータ113に伝送される。光サーキュレータ113は、通過するレーザ光106を中間ファイバ114に出力するほか、上述の第2の光干渉信号112を出力しても良い。レーザ光106は、中間ファイバ114を介してカプラ115に到達する。カプラ115は、レーザ光106を、サンプル光ファイバ116に結合されたサンプル光ビーム107と、参照光ファイバ117に結合された参照光ビーム108とに分割する。
【0053】
サンプル光ファイバ116におけるカプラ115側の端部とは逆側の端部にあるサンプルコリメータレンズ118は、サンプル101を照射するサンプル光ビーム107を平行にする。サンプル101から後方散乱された光はサンプルコリメータレンズ118によって集められ、サンプル光ファイバ116に結合されて、カプラ115に戻る。
【0054】
ある実施例では、ビームであるサンプル光ビーム107は、まず、スキャナ121および対物レンズ122を通過して、サンプル101を照射する。スキャナ121は、サンプル光ビーム107が対物レンズ122に入射する角度を変更するために使用される。対物レンズ122は、サンプル光ビーム107をサンプル101上に集束させる。そのため、スキャナ121により、サンプル光ビーム107が対物レンズ122に入射する角度が変更されることで、サンプル光ビーム107が集束されるサンプル101上の横方向の位置が変更される。サンプル101上の横方向の位置ごとにOCT A-スキャンを取得することによって、サンプル101の3D断層像が生成される。
【0055】
一方、参照光ファイバ117におけるカプラ115側の端部とは逆側の端部にある参照コリメータレンズ119は、参照光ビーム108を平行にし、参照ミラー120を照射する。参照ミラー120は参照光ビーム108を反射し、その反射光は参照コリメータレンズ119によって収集され、参照光ファイバ117に結合されてカプラ115に戻る。反射された参照光ビーム108およびサンプルによる後方散乱光は、カプラ115内で干渉し、第1の光干渉信号109を生成する。第1の光干渉信号109は、光検出器110に入力され、そこで検出される。一方、相補的な光信号である第2の光干渉信号112は、中間ファイバ114及び光サーキュレータ113を通過した後、光検出器110に入力され、そこで検出される。
【0056】
一例では、コントローラ102は、プロセッサと、少なくとも一つのデジタル-アナログ変換器(DAC)と、少なくとも一つのアナログ-デジタル変換器(ADC)とを有する。プロセッサは、デジタル信号を少なくとも一つのDACに送り、DACは、デジタル信号に基づいて、制御信号105を生成する。制御信号105は、半導体波長可変レーザ103のアーキテクチャと、半導体波長可変レーザ103によって放射されるレーザ光106の波長および出力パワーを制御するための手段とに依存する、単一チャネル信号またはマルチチャネル信号を含み得る。
【0057】
コントローラ102に入力される電気干渉信号111は、ADCによってデジタル干渉信号に変換され、そのデジタル干渉信号はプロセッサに出力される。次に、プロセッサは、圧縮センシングを適用して、デジタル干渉信号からOCT A-スキャンを抽出する。プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、コンピュータ、マイクロコントローラ、または任意の他のコンピューティングデバイスとすることができる。
【0058】
図4は、SS-OCT装置100が半導体波長可変レーザおよび圧縮センシングを用いてOCT A-スキャンを取得するためのプロセスの一例を示すフローチャートである。以下、
図4を用いて、プロセスの各処理を説明する。
【0059】
最初に、コントローラ102は、制御信号105を出力することで、半導体波長可変レーザ103によって放射されるレーザ光の波長を、ある期間にわたって、複数のサンプル波長で構成されたシーケンスにチューンする(ステップS21)。ここで、レーザ光がチューンされる各波長を、サンプル波長と呼称する。レーザ光の波長は、別のサンプル波長に変化するまでの期間、一定に保たれていてもよい。つまり、レーザ光の波長は、時系列データにおいて、階段状に変化してもよい。あるサンプル波長が別のサンプル波長に変化するまでの期間は、一定であってもよく、またはサンプリングされた波長ごとに変化してもよい。
【0060】
半導体波長可変レーザ103は、ステップS201で設定された波長で、レーザ光106を干渉計104に出力する(ステップS22)。出力されたレーザ光は干渉計104を通過し、2つの光路のいずれかを移動する。干渉計104内の一方の光路では、サンプル光ビーム107がサンプル101を照射し、そのサンプルからの後方散乱光が干渉計104に戻る。他方の光路は、参照光ビーム108が通過する光路(
図3参照)である。
【0061】
光検出器110は、参照光ビーム108とサンプル101からの後方散乱光との干渉によって生成される光干渉信号109を、各サンプル波長で検出(測定)する(ステップS23)。光検出器110は、サンプル波長毎に、光干渉信号109を電気干渉信号111に変換し、コントローラ102に出力する。
【0062】
コントローラ102は、電気干渉信号111からデジタル干渉信号を生成し、そのデジタル干渉信号に対して圧縮センシングを適用することにより、各サンプル波長で測定された干渉信号からサンプルのOCT A-スキャンを抽出する(ステップS24)。圧縮センシングの詳細な手法については、上述の通りである。
【0063】
圧縮センシングの取り得る様々な実装としては、一例として、最小L0ノルムを有するA-スキャンを特定すること、最小L1ノルムを有するA-スキャンを特定すること、最小のLASSOを有するA-スキャンを特定すること等を含むが、これらに限定されない。上述の通り、ノルムは、L0ノルム、L1ノルムに限られず、一般化されたLpノルム(pは0以上1以下)を用いることができる。圧縮センシングは、干渉信号の測定後に実行されてもよい。また、干渉信号は、後の後処理のために、コントローラ102内部に記憶されてもよい。
【0064】
SS-OCT装置を用いてサンプル光ビームの横方向位置を走査して3Dデータを取得する場合には、サンプル光ビームをサンプル上で新たな位置に移動させる前に、サンプル上の1つの位置について得られた干渉信号に対して圧縮センシングを行ってもよい。または、サンプル光ビーム走査のタイミングを考慮せずに、干渉信号の測定後の任意のタイミングで圧縮センシングを行ってもよい。
【0065】
図5、
図6A~6Dは、上述の関連技術にかかる標準的なSS-OCT装置においてOCT A-スキャンを得るための標準的な方法を示す。詳細には、
図5は、OCT A-スキャンを抽出する標準的な方法例を説明するフローチャートである。
図6Aは、ナイキストレートを超えるレートで一定の間隔で干渉信号がサンプリングされる理想的な場合の、干渉信号の測定値の例を示すグラフである。
図6Bは、理想的な場合に標準的な方法を用いて得られるOCT A-スキャンの例を示す。
図6Cは、半導体波長可変レーザがレーザ源として使用されることで、干渉信号が非一定の波数間隔でサンプリングされる場合の干渉信号のグラフの例である。
図6Dは、半導体波長可変レーザがレーザ源として使用されることで、波数間隔が一定でない場合に標準的な方法を用いて得られるOCT A-スキャンの例を示す。以下、
図5、
図6A~6Dを用いて、関連技術によって得られるOCT A-スキャンを、実施形態2に記載のSS-OCT装置100との比較のために説明する。
【0066】
図5を参照すると、まず、SS-OCT装置は、レーザの波長を所定の波長範囲にわたって掃引し、干渉計に出力する(ステップS31)。掃引されたレーザ光は干渉計を通過する。干渉計内の一つの光路では、レーザ光はサンプルを照射し、そのサンプルからの後方散乱光はその光路内で収集される。干渉計内の他方の光路は、参照光レーザ用の光路である。この参照光と試料からの後方散乱光とが干渉することで、干渉光が生成される。
【0067】
SS-OCT装置は、干渉計により生成された干渉光を測定する(ステップS32)。SS-OCT装置は、干渉信号を一定の時間間隔で(すなわち一定の波数間隔で)測定しても良いし、kクロックを使用することで測定をトリガし、一定の波数間隔となる複数の波長で測定値を得ても良い。
【0068】
SS-OCT装置は、干渉信号を一定の時間間隔で測定した場合、一定の波長間隔でその干渉信号を補間する(ステップS33)。なお、一定の時間間隔を得るためにkクロックが使用された場合、ステップS33はスキップされる。SS-OCT装置は、A-スキャンを、定波数間隔の干渉信号の離散フーリエ変換をとることによって抽出する(ステップS34)。
【0069】
図6Aは、サンプルにより生成された理論上の干渉信号の一例を実線で示し、一定の波数間隔における理論上の干渉信号の測定値をドットで示す。
図6Bは、
図6Aに示した一定の波数間隔の測定値を離散フーリエ変換して得られるOCT A-スキャンを示す。
図6A、6Bでは、サンプルの散乱プロファイルが、得られたOCT A-スキャンに正確に反映される。
【0070】
しかしながら、半導体波長可変レーザを使用する場合のように、サンプル波長間の波数間隔が一定でない場合には、サンプルの散乱プロファイルがOCT A-スキャンに正確に反映されないことがある。
図6Cは、サンプルにより生成された理論上の干渉信号の一例を実線で示し、サンプル波長間の波数間隔が一定でない場合に測定された干渉信号の測定値をドットで示す。
図6Cにおける実線のグラフは、
図6Aにおける実線のグラフと同じものである。
図6Aと比較すると、
図6Cでは、干渉信号の測定値が偏って検出されていることが見てとれる。
【0071】
図6Dは、
図6Cに示した測定値を一定の波数間隔で補間した後、離散フーリエ変換をして得られるOCT A-スキャンを示す。
図6Bと
図6Dとを比較すると分かるように、
図6Dにおいて、サンプルの散乱プロファイルの繊細な構造的詳細は失われ、OCT A-スキャンにはエイリアシングノイズが生じる。
【0072】
しかしながら、圧縮センシングを用いることで、この課題を解決することができる。
図7A、7Bを用いて、不均一な波数間隔でサンプリングされた干渉信号からOCT A-スキャンを抽出する圧縮センシングの能力について説明する。
【0073】
図7Aは、サンプルにより生成された理論上の干渉信号の一例を実線で示し、半導体波長可変レーザの可変波長範囲全体にわたってランダムに分布する1セットの波長でサンプリングされた干渉信号の測定値をドットで示す。
図7Aにおける実線のグラフは、
図6A、6Cにおける実線のグラフと同じものである。
【0074】
図7Bは、
図7Aに示した測定値に対して圧縮センシングを適用することで得られるOCT A-スキャンを示す。
図7Bと
図6B、6Dとを比較すると分かるように、圧縮センシングを適用することで、サンプルの散乱プロファイルの繊細な構造的詳細が精度良く再現され、エイリアシングノイズが抑制されていることが見てとれる。
【0075】
圧縮センシングを用いて抽出されるOCT A-スキャンが正確であるための一つの重要な基準は、変換行列の相互コヒーレンスが小さいことである。具体的には、変換行列の相互コヒーレンスMが以下の式(15)に従う場合に、圧縮センシングを適用するときに、h以下の非零要素を有するOCT A-スキャンを抽出することができる。
【数15】
・・・(15)
L1ノルム又はLASSOを用いる場合には、式(15)に代えて、次の式(16)が、相互コヒーレンスMに関する条件となる。
【数16】
・・・(16)
【0076】
実際には、相互コヒーレンスが、式(15)(又は式(16))で要求される相互コヒーレンスよりも大きい場合であっても、OCT A-スキャンを高い精度で抽出することができる場合がある。しかしながら、相互コヒーレンスが小さくなるにつれて、より多くの非零要素を有するA-スキャンを抽出することが可能になることは、依然として事実である。
【0077】
不均一離散フーリエ変換に対しては、サンプル波長の選択が行列の相互コヒーレンスを支配する。サンプル波長のセットが波数領域でその値に周期性を有する場合、変換行列は、高い相互コヒーレンスを有することになる。一方、サンプル波長のセットが波数領域でその値に周期性を有さない場合、相互コヒーレンスは低いことになる。ある範囲にわたってランダムに分布されたサンプル波長の値は、非常に低い周期性を有し、低い相互コヒーレンスを有する変換行列をもたらすサンプル波長値のセットの一例である。
【0078】
波数領域におけるサンプル波長のセットの値の周期性は、以下のように定量化されることができる。まず、サンプル波長のサンプリングマスクを、次のように定義する。サンプリングマスクの値は、対応するサンプル波長が存在する波数では1となり、対応するサンプル波長が存在しない波数では0となる。ある波長に対応する波数は、単純にその波長の逆数である。サンプリングマスクのフーリエ変換は、次の式(17)のように表される。
【数17】
・・・(17)
式(17)の左辺である
【数18】
・・・(18)
はサンプリングマスクのフーリエ変換であり、右辺のf
samp(k)はサンプリングマスクであり、Fはフーリエ変換の操作を示す。サンプル波長の値のセットは、サンプリングマスクのフーリエ変換が以下の式(19)に従う場合に、十分に非周期的となる。
【数19】
・・・(19)
ここでz(z
0,z
1,・・・z
n)は、深度プロファイルが抽出される特定の深度であり、mはサンプル波長の値の数であり、hは上述の通りである。相互コヒーレンスと全く同様に、実際のところ、OCT A-スキャンは、周期性が式(19)で要求されるよりも高くても、高い精度で抽出できる場合がある。しかしながら、周期性が式(19)の条件を満たす場合には、確実に高い精度でOCT A-スキャンを抽出することができる。
【0079】
また、波数空間内の複数のサンプル波長に関するパラメータは、以下の式(20)を満たすことが好ましい。
【数20】
・・・(20)
ここで、z
maxは、上述の通り、サンプル光ビームが後方散乱される最大の深度であり、Δzは、深度プロファイルの解である。関連技術の説明で示した式(7)と比べると、波数間隔が大きくなっている。したがって、式(20)では、式(7)と比べると、各サンプル波長が波数空間において、より離散的に存在する。そのため、波数領域におけるサンプル波長のセットの周期性を、より確実に低くすることができる。
【0080】
以下、説明のために、
図8A~8Eを用いて、圧縮センシングを用いて得られたOCT A-スキャンの精度に対する、サンプル波長のセットにおける周期性の影響を示す。
【0081】
図8Aは、単一の散乱ポイントを有する理想的なサンプルのOCT A-スキャンの例を示す。OCT A-スキャンとして得られる結果がこのグラフに近いほど、方法の精度が良いといえる。
【0082】
図8Bは、干渉信号がナイキストレートで(すなわち、高分解能で)サンプリングされたが、サンプル波長に周期的なギャップがある場合の干渉信号の測定値の例を示す。
図8Bは、干渉信号の一例を実線で示し、サンプリングされた干渉信号の測定値をドットで示す。
【0083】
図8Cは、圧縮センシングを用いて、
図8Bに示されるサンプル波長のセットから抽出されたOCT A-スキャンの例を示す。
図8Cからは、OCT A-スキャン結果に3つの偽ピークが存在することが明らかに見てとれる。
【0084】
図8Dは、ランダムに分布したサンプル波長で(つまり、サンプル波長の値の周期性が小さい状態で)干渉信号がサンプリングされた場合の干渉信号の測定値の例を示す。
図8Dは、干渉信号の一例を実線で示し、サンプリングされた干渉信号の測定値をドットで示す。
図8Dにおける実線のグラフは、
図8Bにおける実線のグラフと同じものである。
【0085】
図8Eは、圧縮センシングを用いて、
図8Dに示されるサンプル波長のセットから抽出されたOCT A-スキャンの例を示す。
図8Eは、
図8Cのような偽ピークがOCT A-スキャン結果に存在せず、
図8Aと同じ場所に単一の散乱ポイントがあることを示す。以上のようにして、正確なOCT A-スキャンを得るために、低い周期性を有するサンプル波長が重要であることが説明された。
【0086】
以下、
図9、
図10A~10Eを用いて、半導体波長可変レーザを使用して、周期性の低いサンプル波長のセットを得られる方法の例を示す。
【0087】
図9は、半導体波長可変レーザの一種であるSGDBR(Sampled-Grating Distributed Bragg Reflector)レーザの模式図である。SGDBRレーザ600は、レーザ利得媒質601、第1のSGDBRである、いわゆるフロントミラー602、第2のSGDBRである、いわゆるリアミラー603、及び位相器素子604を備える。SGDBRレーザ600が出射するレーザ光609のパワーおよび波長は、レーザ利得媒質601、フロントミラー602、リアミラー603および位相器素子604にそれぞれ入力される電流I
G605、I
FM606、I
RM607およびI
Ph608によって決定される。
【0088】
図3のSS-OCT装置100において、SGDBRレーザ600を半導体波長可変レーザ103に適用させることができる。ここで、レーザ光609は、レーザ光106に相当する。また、各電流I
G605~I
Ph608は、コントローラ102が決定する、時間に応じて変化する出力光の波長とパワーに応じた値を有する。
【0089】
図10A~10Eは、各電流I
G605~I
Ph608の経時変化の一例を示す。詳細には、
図10Aは、電流I
G605が経時的に一定であることを示し、
図10Bは、電流I
FM606が階段状波形で経時変化することを示す。また、
図10Cは、電流I
RM607が鋸歯状波形で経時変化することを示し、
図10Dは、電流I
Ph608が正弦波に類似した形状で経時変化することを示す。
【0090】
図10Eは、
図10A~10Dのように各電流がチューンされた場合に、SGDBRレーザ600から出射されるレーザ光609の波長λが経時変化する一例を示す。
図10Eからは、波長λがランダムに経時変化することが見てとれる。
【0091】
以上に示したように、半導体波長可変レーザのレーザ光の波長は、設定された時間間隔にわたって放射される波長が互いに最小の周期性を有し、複数の波長でサンプリングされる変換行列が最小の相互コヒーレンスを有するように調整されても良い。レーザ光の波長は、放射される個々の波長が最小の周期性を有するセットを構成する限り、時間の経過とともに波長が単調に変化するように調整できること、または、任意の数の可能な形状を有しても良いことが当業者には理解されるであろう。
【0092】
図11は、コントローラ102が、サンプル波長のセットでサンプリングされたデジタル干渉信号からOCT A-スキャンを抽出するために圧縮センシングを使用するプロセスの一例を示すフローチャートである。
【0093】
コントローラ102は、各サンプル波長で測定されたデジタル干渉信号の強度の測定値で要素が構成される測定ベクトルyを定義する(ステップS41)。次に、コントローラ102は、ベクトルxによって記述されるOCT A-スキャンをスパースな深度基底から測定された波数基底に変換するための、不均一離散フーリエ変換によって与えられる変換行列Aを定義する(ステップS42)。詳細には、コントローラ102は、外部若しくは内部のメモリ、若しくは処理装置の記憶装置から予め計算された行列を検索すること、または行列を計算することによって、変換行列Aを定義する。
【0094】
コントローラ102は、例えば、式 (5) によって記述されるLASSOを最小化するベクトルxの値を特定することによって、OCT A-スキャンに対する解(すなわち、散乱プロファイルを表す解)を見出す(ステップS43)。なお、LASSOにおけるラグランジュ乗数項λは、事前に設定されるか、あるいはOCT A-スキャンを解く際に最適化される。
【0095】
最後に、コントローラ102は、OCT A-スキャンを表すベクトルxを、メモリ又は記憶装置に格納する処理と、ベクトルxをSS-OCT装置100の表示部に表示する処理との少なくともいずれかを実行する(ステップS44)。
【0096】
以上のようにして、SS-OCT装置100は、圧縮センシングを用いることで、深度範囲の低下を抑制することができる。また、半導体波長可変レーザ103を用いることができるので、光源のコストを削減することができる。
【0097】
また、複数のサンプル波長は、所定の波長の範囲内でランダムに分散された複数の波長とすることができる。これにより、上述の通り、変換行列の相互コヒーレンスMが小さくなるため、より多くの非零要素を有するA-スキャンを抽出することができる。したがって、SS-OCT装置100が適用可能な状況を拡大することができる。
【0098】
また、SS-OCT装置100は、測定ベクトルと、散乱プロファイルを示すベクトルxと、各複数のサンプル波長に対応する行及び測定光のサンプルへの伝搬方向に沿った位置に対応する列を有する変換行列と、を定義し、測定ベクトル及び変換行列を用いて、解ベクトルのスパース表現を特定することができる。これにより、SS-OCT装置100は、解ベクトルを困難なく算出することができる。
【0099】
また、解ベクトルのスパース表現を特定する方法は、様々な方法を採用することが可能である。例えば、変換行列と解ベクトルの行列積が測定ベクトルと等しくなる条件(式(2))を満たしつつ、解ベクトルの値が解ベクトルのLpノルム(pは0以上1以下)を最小化するようにしても良い。これにより、圧縮センシングの技術を容易に適用することができる。また、解ベクトルのLpノルムはL1ノルムとすることにより、計算を容易にすることもできる。
【0100】
解ベクトルのスパース表現を特定する別の方法として、LASSOを最小化する解ベクトルの値を見つけても良い。これによっても、圧縮センシングの技術を容易に適用することができる。
【0101】
以上に示した測定装置又はSS-OCT装置は、様々な用途に適用することができる。
【0102】
以上に示した実施の形態では、この開示をハードウェアの構成として説明したが、この開示は、これに限定されるものではない。この開示は、上述の各実施形態において説明された装置の処理(ステップ)を、コンピュータ内のプロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0103】
図12は、以上に示した各実施の形態の処理が実行されるコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図12を参照すると、このコンピュータ90は、信号処理回路91、プロセッサ92及びメモリ93を含む。コンピュータ90は、例えば測定装置10、SS-OCT装置100に設けられるコンピュータである。
【0104】
信号処理回路91は、プロセッサ92の制御に応じて、信号を処理するための回路である。なお、信号処理回路91は、送信装置から信号を受信する通信回路を含んでいても良い。
【0105】
プロセッサ92は、メモリ93からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の各実施形態において説明された装置の処理を行う。プロセッサ92の一例として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)のうち一つを用いてもよいし、そのうちの複数を並列で用いてもよい。
【0106】
メモリ93は、揮発性メモリや不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせで構成される。メモリ93は、1個に限られず、複数設けられてもよい。なお、揮発性メモリは、例えば、DRAM (Dynamic Random Access Memory)、SRAM (Static Random Access Memory)等のRAM (Random Access Memory)であってもよい。不揮発性メモリは、例えば、PROM (Programmable Random Only Memory)、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory) 等のROM (Random Only Memory)や、SSD(Solid State Drive)であってもよい。
【0107】
メモリ93は、1以上の命令を格納するために使用される。ここで、1以上の命令は、ソフトウェアモジュール群としてメモリ93に格納される。プロセッサ92は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ93から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された処理を行うことができる。
【0108】
なお、メモリ93は、プロセッサ92の外部に設けられるものに加えて、プロセッサ92に内蔵されているものを含んでもよい。また、メモリ93は、プロセッサ92を構成するプロセッサから離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ92は、I/O(Input / Output)インタフェースを介してメモリ93にアクセスすることができる。
【0109】
以上に説明したように、上述の実施形態における各装置が有する1又は複数のプロセッサは、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。この処理により、各実施の形態に記載された信号処理方法が実現できる。
【0110】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0111】
以上、実施の形態1~7を参照してこの開示を説明したが、この開示は上記によって限定されるものではない。この開示の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0112】
この出願は、2021年5月7日に出願された日本出願特願2021-079320を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0113】
10 測定装置
11 半導体波長可変レーザ
12 干渉計
13 光検出器
14 制御部
100 SS-OCT装置
101 サンプル
102 コントローラ
103 半導体波長可変レーザ
104 干渉計
105 制御信号
106 レーザ光
107 サンプル光ビーム
108 参照光ビーム
109 第1の光干渉信号
110 光検出器
111 電気干渉信号
112 第2の光干渉信号
113 光サーキュレータ
114 中間ファイバ
115 カプラ
116 サンプル光ファイバ
117 参照光ファイバ
118 サンプルコリメータレンズ
119 参照コリメータレンズ
120 参照ミラー
121 スキャナ
122 対物レンズ
600 SGDBRレーザ
601 レーザ利得媒質
602 フロントミラー
603 リアミラー
604 位相器素子
605 電流IG
606 電流IFM
607 電流IRM
608 電流IPh
609 レーザ光