(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】制駆動力制御方法及び制駆動力制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B60T8/17 Z
B60T8/17 C
(21)【出願番号】P 2023523861
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020182
(87)【国際公開番号】W WO2022249393
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】須合 謙
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-095222(JP,A)
【文献】特開平05-042861(JP,A)
【文献】特開2020-059367(JP,A)
【文献】特開2019-126148(JP,A)
【文献】特開2020-100349(JP,A)
【文献】特開2016-141232(JP,A)
【文献】特開2020-067041(JP,A)
【文献】特開2017-087799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の制駆動力を制御するコントローラの制駆動力制御方法であって、
前記コントローラは、
アクセルペダルのストローク量であるアクセルストローク量を検出し、
前記アクセルストローク量が所定の第1ストローク量よりも大きいときには車両駆動力源に発生させる駆動力を算出し、前記アクセルストローク量が前記第1ストローク量以下の第2ストローク量よりも小さいときには前記車両駆動力源に発生させる減速駆動力を算出し、
算出された前記駆動力及び前記減速駆動力を発生するように前記車両駆動力源を制御し、
前記算出された減速駆動力に応じ
てブレーキペダルのストローク量であるブレーキストローク量を制御するとともに、前記算出された減速駆動力に応じて制御された前記ブレーキストローク量により発生する摩擦制動トルクを抑制し、
運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作に応じて車輪の制動力を制御する、
ことを特徴とする制駆動力制御方法。
【請求項2】
車両の走行速度である車速を検出し、
アクセルストローク量が前記第2ストローク量よりも小さいときに、前記車速が高い場合に前記車速が低い場合よりも大きな減速駆動力を算出することを特徴とする請求項1に記載の制駆動力制御方法。
【請求項3】
前記アクセルストローク量が前記第2ストローク量よりも小さい第3ストローク量よりも小さいときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行い、前記アクセルストローク量が前記第3ストローク量以上であるときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行わないことを特徴とする請求項1又は2に記載の制駆動力制御方法。
【請求項4】
前記アクセルストローク量が前記第2ストローク量よりも小さい第3ストローク量よりも小さいか、または前記アクセルストローク量の変化速度が閾値よりも大きいときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行い、前記アクセルストローク量が前記第3ストローク量以上であり且つ前記変化速度が前記閾値以下であるときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行わないことを特徴とする請求項1又は2に記載の制駆動力制御方法。
【請求項5】
前記アクセルストローク量の変化速度が小さい場合に比べて前記アクセルストローク量の変化速度が大きい場合に、より大きな前記第3ストローク量を設定することを特徴とする請求項3又は4に記載の制駆動力制御方法。
【請求項6】
前記車両駆動力源である電動機の回生制動力を制御することにより、前記減速駆動力を制御することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の制駆動力制御方法。
【請求項7】
アクセルペダル及びブレーキペダルと、
車両駆動力源と、
運転者による前記ブレーキペダルの踏み込み操作に応じて車輪に制動力を発生させる制動装置と、
前記アクセルペダルのストローク量であるアクセルストローク量を検出するアクセルセンサと、
前記アクセルセンサが検出した前記アクセルストローク量が所定の第1ストローク量よりも大きいときには前記車両駆動力源に発生させる駆動力を算出し、前記アクセルストローク量が前記第1ストローク量以下の第2ストローク量よりも小さいときには前記車両駆動力源に発生させる減速駆動力を算出し、算出された前記駆動力及び前記減速駆動力を発生するように前記車両駆動力源を制御し、前記算出された減速駆動力に応じて前記ブレーキペダルのストローク量であるブレーキストローク量を制御するとともに、前記算出された減速駆動力に応じて制御された前記ブレーキストローク量により発生する摩擦制動トルクを抑制する少なくとも1つのコントローラと、
を備えることを特徴とする制駆動力制御装置。
【請求項8】
前記制動装置は、
ブレーキストローク量に応じた量のブレーキ液を排出するマスターシリンダと、
前記マスターシリンダに油路を介して接続し、前記油路の油圧に応じた制動力を発生するブレーキキャリパと、
前記油路に接続され、前記コントローラが前記算出された減速駆動力に応じて前記ブレーキストローク量を制御したときにマスターシリンダから排出されるブレーキ液を貯留する貯留タンクと、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の制駆動力制御装置。
【請求項9】
前記制動装置は、前記貯留タンクの内部のブレーキ液に所定の圧力を付与する加圧器を備えることを特徴とする請求項8に記載の制駆動力制御装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記アクセルストローク量が前記第2ストローク量よりも小さい第3ストローク量よりも小さいときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行い、前記アクセルストローク量が前記第3ストローク量以上であるときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行わないことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記アクセルストローク量が前記第2ストローク量よりも小さい第3ストローク量よりも小さいか、または前記アクセルストローク量の変化速度が閾値よりも大きいときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行い、前記アクセルストローク量が前記第3ストローク量以上であり且つ前記変化速度が前記閾値以下であるときに、前記減速駆動力に応じた前記ブレーキストローク量の制御を行わないことを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのコントローラは、前記アクセルストローク量の変化速度が小さい場合に比べて前記アクセルストローク量の変化速度が大きい場合に、より大きな前記第3ストローク量を設定することを特徴とする請求項10又は11に記載の制駆動力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制駆動力制御方法及び制駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、アクセルペダルの操作量が所定の操作量よりも大きいときには駆動力を発生させ、アクセルペダルの操作量が所定の操作量よりも小さいときには減速駆動力を発生することによって、アクセルペダルの操作のみで加速、減速できる車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような車両においては、車両駆動力源の減速駆動力に加えてブレーキペダルの操作に応じた減速度を発生できるようにするため、ブレーキペダルの操作に応じて減速度を発生させる摩擦ブレーキが備えられている。このような車両において運転者がアクセルペダルから足を離してからブレーキペダルを操作すると、ブレーキペダルを操作する前に既に車両に減速度が発生しているため、運転者に違和感を与えることがある。
本発明は、アクセルペダルの操作量に応じて駆動力と減速駆動力とを発生させる制駆動力制御装置において、ブレーキペダル操作時の運転者の違和感を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の制駆動力制御方法では、アクセルペダルのストローク量であるアクセルストローク量を検出し、アクセルストローク量が所定の第1ストローク量よりも大きいときには車両駆動力源に発生させる駆動力を算出し、アクセルストローク量が第1ストローク量以下の第2ストローク量よりも小さいときには車両駆動力源に発生させる減速駆動力を算出し、算出された駆動力及び減速駆動力を発生するように車両駆動力源を制御し、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作に応じて車輪に制動力を発生させ、算出された減速駆動力に応じてブレーキペダルのストローク量であるブレーキストローク量を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アクセルペダルの操作量に応じて駆動力と減速駆動力とを発生させる制駆動力制御装置において、ブレーキペダル操作時の運転者の違和感を軽減できる。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の制駆動力制御装置を備える車両の一例の概略構成図である。
【
図2】液圧アクチュエータの一例の概略構成図である。
【
図3A】アクセルストローク量と加速トルク及び減速トルクとの間の関係の説明図である。
【
図3B】ブレーキストローク量と減速トルクとの間の関係の説明図である。
【
図4A】ワンペダル制御時の車速の一例のタイムチャートである。
【
図4B】ワンペダル制御時のアクセルストローク量の一例のタイムチャートである。
【
図4C】ワンペダル制御時の要求減速トルクの一例のタイムチャートである。
【
図4D】ワンペダル制御時の回生制動トルクの一例のタイムチャートである。
【
図4E】ワンペダル制御時のブレーキストローク量の一例のタイムチャートである。
【
図4F】ワンペダル制御時のブレーキキャリパのブレーキ液圧の一例のタイムチャートである。
【
図5】駆動力コントローラの機能構成の一例のブロック図である。
【
図6】実施形態の制駆動力制御方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(構成)
図1は、実施形態の制駆動力制御装置を備える車両の一例の概略構成図である。制駆動力制御装置1は、アクセルセンサ2と、ブレーキセンサ3と、車速センサ4と、駆動力コントローラ5と、ブースタ6と、電動モータ7と、マスターシリンダ8と、ブースタコントローラ9と、液圧アクチュエータコントローラ10と、液圧アクチュエータ11を備える。また、制駆動力制御装置1は、右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRLにそれぞれ配置した右前輪ブレーキキャリパ12FR、左前輪ブレーキキャリパ12FL、右後輪ブレーキキャリパ12RR、左後輪ブレーキキャリパ12RLを備える。これらブレーキキャリパ12FR、12FL、12RR及び12RLを「ブレーキキャリパ12」と総称することがある。また、制駆動力制御装置1は、動力コントローラ13と、駆動力源14を備える。なお、以下ではブースタコントローラ9、ブースタ6、マスターシリンダ8、ブレーキキャリパ12を総称して制動装置とも言う。また、駆動力コントローラ5とブースタコントローラ9とを総称して車両の制駆動力を制御するコントローラと言う。
【0009】
アクセルセンサ2は、運転者によって操作可能なアクセルペダル15のストローク量(踏み込み量)であるアクセルストローク量Saを検出する。アクセルペダル15は、運転者が制動力要求(運転者自身の制動意図)または駆動力要求(運転者自身の駆動意図)に応じて踏込むペダルである。アクセルセンサ2は、アクセルストローク量Saの情報信号を駆動力コントローラ5へ出力する。
ブレーキセンサ3は、運転者によって操作可能なブレーキペダル16のストローク量(踏み込み量)であるブレーキストローク量Sbを検出する。ブレーキペダル16は、運転者が制動力要求のみに応じて踏込むペダルであり、アクセルペダル15とは別個に設ける。ブレーキセンサ3は、ブレーキストローク量Sbの情報信号をブースタコントローラ9へ出力する。
【0010】
車速センサ4は、駆動力源14である駆動用モータやエンジンの回転数や、車輪WFR、WFL、WRR、WRLの回転速度(車輪速)などから車両の車速を検出する。車速センサ4は、車速の情報信号を駆動力コントローラ5へ出力する。
駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saに基づいて車両に発生させる制動力と駆動力を制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)であり、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。以下に説明する駆動力コントローラ5の機能は、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。駆動力コントローラ5は、専用のハードウエアにより形成してもよい。例えば、駆動力コントローラ5は汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路(例えばFPGAやASICなど)を備えてもよい。
【0011】
駆動力コントローラ5は、入力される各種の情報信号を用いて、ブースタ6、液圧アクチュエータ11、及び駆動力源14を制御するための指令信号(減速トルク指令信号、加速トルク指令信号)を出力する。駆動力コントローラ5の具体的な構成については後述する。
減速トルク指令信号は、アクセルストローク量Saに基づいて車両に発生させる制動力を制御するための制動力指令値の情報信号である。減速トルク指令信号は、各ブレーキキャリパ12の油圧を制御するための指令値である摩擦制動トルク指令値、及び駆動力源14に含まれるモータ(電動機)で発生させる回生制動トルク指令値のうち少なくとも一方を含む。駆動力源14に含まれるモータで発生させる回生制動トルク(負の駆動トルク)は、特許請求の範囲に記載された「減速駆動力」の一例である。減速トルク指令信号は、運転者による制動力要求等に応じて、駆動力コントローラ5により算出する。
加速トルク指令信号は、駆動力源14が発生させる駆動力を制御するための駆動力指令値の情報信号である。加速トルク指令信号は、運転者による駆動力要求等に応じて駆動力コントローラ5により算出する。
【0012】
ブースタ6は、運転者によるブレーキペダル16の踏み込み操作時に、電動モータ7により発生させた力を用いてペダル踏力をアシストする電動倍力装置である。
ブースタコントローラ9は、ブースタ6の電動モータ7を制御する電子制御ユニットであり、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。以下に説明するブースタコントローラ9の機能は、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。ブースタコントローラ9は、専用のハードウエアにより形成してもよい。
ブースタコントローラ9は、駆動力コントローラ5が出力する減速トルク指令信号(摩擦制動トルク指令値)と、ブレーキセンサ3の検出値とに基づいて電動モータ7を駆動してブレーキストローク量Sbを制御する。
マスターシリンダ8は、ブレーキペダル16の踏み込み操作時に、液圧ピストンへ加えられるペダル踏力とブースタ6によるアシスト推力をマスターシリンダ圧に変換する。
液圧アクチュエータ11は、マスターシリンダ8とブレーキキャリパ12との間に介装されて、ブレーキキャリパ12のブレーキ液圧(ホイールシリンダ圧)を制御する。
【0013】
図2は、液圧アクチュエータ11の一例の概略構成図である。液圧アクチュエータ11は、液圧ポンプ20と、後輪インバルブ21、前輪インバルブ22と、後輪アウトバルブ23と、前輪アウトバルブ24と、カットバルブ25と、サクションバルブ26と、貯留タンク27と、ダンパ28を備える。液圧アクチュエータ11は、
図2に示す油圧回路を2系統備えており、一方の系統で右前輪ブレーキキャリパ12FRと左後輪ブレーキキャリパ12RLのブレーキ液圧を制御し、他方の系統で左前輪ブレーキキャリパ12FLと右後輪ブレーキキャリパ12RRのブレーキ液圧を制御する。
液圧ポンプ20は、液圧アクチュエータコントローラ10から出力される駆動指令により制御されて、貯留タンク27内に貯えられたブレーキ液をマスターシリンダ8やブレーキキャリパ12に送る。後輪インバルブ21及び前輪インバルブ22は、液圧アクチュエータコントローラ10から出力されるソレノイド指令により、油圧経路を増圧または保持の経路に切り替える。後輪アウトバルブ23及び前輪アウトバルブ24は、液圧アクチュエータコントローラ10から出力されるソレノイド指令により、油圧経路を増圧、保持または減圧の経路に切り替える。
【0014】
カットバルブ25は、VDC(Vehicle Dynamics Control)機能の作動時にマスターシリンダ8からの通常ブレーキ経路を遮断する。サクションバルブ26は、VDC機能の作動時にマスターシリンダ8から液圧ポンプ20への経路を開放する。
貯留タンク27は、減圧時、各輪のブレーキキャリパ12内から抜いたブレーキ液を一時的に貯える。貯留タンク27には、貯留タンク27内部のブレーキ液に所定の圧力を付与する加圧器27aが設けられている。加圧器27aは、液圧ポンプ20が貯留タンク27内部のブレーキ液を吸い出す際に、ブレーキ液が貯留タンク27に残留するのを抑制する。加圧器27aは、例えば貯留タンク27内に摺嵌されたピストンと、このピストンを貯留タンク27のブレーキ液の出入口に向けて付勢する付勢部材とを備えてよい。付勢部材は、例えばバネなどの弾性体であってよい。
ダンパ28は、VDC機能、ABS(Anti-lock Brake System)機能の作動時に、ブレーキ液の脈動を抑える。
【0015】
図1を参照する。液圧アクチュエータコントローラ10は、液圧アクチュエータ11の液圧ポンプ20や、各バルブ21~26を制御する電子制御ユニットであり、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。以下に説明する液圧アクチュエータコントローラ10の機能は、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。液圧アクチュエータコントローラ10は、専用のハードウエアにより形成してもよい。
動力コントローラ13は、駆動力源14に発生させる駆動トルク及び回生制動トルクを制御する電子制御ユニットであり、プロセッサと、記憶装置等の周辺部品とを含む。動力コントローラ13は、専用のハードウエアにより形成してもよい。動力コントローラ13は、駆動力コントローラ5から出力される回生制動トルク指令値と加速トルク指令信号とに基づいて、駆動力源14に発生させる回生制動トルク及び駆動トルクを制御する。
なお、駆動力コントローラ5、ブースタコントローラ9、液圧アクチュエータコントローラ10及び動力コントローラ13は、それぞれ別個のコントローラであってもよく、これらコントローラのいずれか又は全てを同じコントローラに統合してもよい。
【0016】
次に、駆動力コントローラ5による制動力と駆動力の制御について説明する。駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saが所定の第1閾値Sa1よりも大きいときには加速度を車両に発生させ、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1以下の値に設定された第2閾値Sa2よりも小さいときには減速度を車両に発生させる。このようなアクセルストローク量Saに応じた制動力と駆動力の制御を、以下の説明において「ワンペダル制御」と表記することがある。
本明細書では、第2閾値Sa2が第1閾値Sa1と同じ値に設定された場合(すなわちアクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも小さいときには車両に減速度を発生させる場合)の例について説明するが、第2閾値Sa2は、第1閾値Sa1よりも小さい値に設定してもよい。
【0017】
図3Aは、アクセルストローク量Saと、駆動力コントローラ5により算出される要求加速トルク及び要求減速トルクと間の関係の説明図である。アクセルストローク量Saが最大値(100%)であるときに要求加速トルクは最大値(100%)となり、アクセルストローク量Saが小さくなるほど要求加速トルクが小さくなり、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1に至ると要求加速トルクが0となる。第1閾値Sa1は、例えばアクセルストローク量Saの最大値の4分の1(25%)であってよい。
アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも小さくなると、
アクセルストローク量Saが小さくなるほど要求減速トルクが大きくなり、アクセルストローク量Saが0に至ると要求減速トルクは所定値Td0となる。以下、所定値Td0を「アクセルオフ減速トルクTd0」と表記することがある。アクセルオフ減速トルクTd0は、例えば車両に減速度0.2Gを発生させる減速トルクであってよい。
【0018】
このようなワンペダル制御において、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも小さいときに車両に減速度を発生させると、運転者がアクセルペダル15から足を離してからブレーキペダル16を操作したときに違和感を覚えることがある。
例えば、運転者がアクセルペダル15からブレーキペダル16へ足を踏み替えた時点において、アクセルオフ減速トルクTd0が発生し且つブレーキストローク量Sbがゼロである状態から、ブレーキペダル16の踏み込み操作に応じてさらに減速トルクを発生させると、ワンペダル制御を実施しない場合よりも少ないブレーキストローク量Sbで最大減速トルクが発生してしまう。このため、ワンペダル制御を実施する場合と実施しない場合で、ブレーキストローク量Sbに応じて発生する減速トルクが異なり運転者に違和感を与える虞がある。また、最大減速トルクが発生した後は、ブレーキストローク量Sbを増やしても減速トルクが変わらないため運転者に違和感を与える虞がある。なお、ワンペダル制御を実施する場合と実施しない場合とは、同一の車両でワンペダル制御を実施する場合と実施しない場合に加えて、例えばワンペダル制御を実施しない車両とワンペダル制御を実施する他の車両とで乗り換えた場合を意味する。
この問題を解消するために、ワンペダル制御を実施する場合と実施しない場合とで、同じブレーキストローク量Sbで最大減速トルクが発生するように、ブレーキストローク量Sbに対する減速トルクの特性を変更することが考えられるが、この場合もブレーキストローク量Sbに対する減速トルクの特性が変化することにより運転者に違和感を与える虞がある。また、同じブレーキストローク量Sbで最大減速トルクが発生するように回生制動トルクの発生量を調整するために、回生エネルギーの回収効率が低下する。
【0019】
そこで実施形態の駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saに応じた減速トルクを発生させる場合に、発生させる減速トルクに応じてブレーキペダル16のブレーキストローク量Sbを制御する。
例えば、ブレーキペダル16のブレーキストローク量Sbが、アクセルストローク量Saに応じて算出される要求減速トルクに相当するストローク量になるように制御する。すなわち、アクセルストローク量Saに応じた要求減速トルクをTdrとし、ワンペダル制御を実施しない場合に減速トルクTdrを発生させるのに要するブレーキストローク量をSbrとすると、ブレーキペダル16のブレーキストローク量SbがSbrとなるよう制御する。
ブレーキストローク量Sbを制御するために、例えば駆動力コントローラ5は、要求減速トルクTdrを示す減速トルク指令信号をブースタコントローラ9へ出力してよい。ブースタコントローラ9は、ブレーキセンサ3が検出するブレーキストローク量Sbが、減速トルク指令信号が示す要求減速トルクTdrに相当するストローク量Sbrとなるように、電動モータ7を制御する。
【0020】
図3Bは、ブレーキストローク量Sbと車輪の減速トルクとの間の関係の説明図である。
ブレーキストローク量Sbが0の場合に減速トルクは0であり、ブレーキストローク量Sbが増加すると減速トルクが増加して、ブレーキストローク量Sbが最大値(100%)であるときに減速トルクは最大値(100%)となる。
ブレーキストローク量Sb1は、アクセルストローク量Saが0であるときの要求減速トルク(アクセルオフ減速トルク)Td0に相当するブレーキストローク量Sbである。例えばブレーキストローク量Sb1は、ブレーキストローク量Sbの最大値の20%であってよい。ブースタコントローラ9は、減速トルク指令信号が示す要求減速トルクが0からTd0まで増加する間に、電動モータ7を駆動してブレーキストローク量Sbを0からSb1まで増大させる。
【0021】
以上のとおり、ワンペダル制御ではアクセルストローク量Saが最大値(100%)からSa1まで変化すると、車両に発生させる加速度が最大値(100%)から0まで変化する。この間は、電動モータ7によるブレーキストローク量Sbの制御は行わない。アクセルストローク量SaがSa1から0まで変化すると、車両に発生させる減速度が0からアクセルオフ減速トルクTd0まで変化するとともに、電動モータ7によりブレーキストローク量Sbを0からSb1まで増大させる。
その後に、運転者がアクセルペダル15から足を離してブレーキペダル16の踏み込み操作を開始すると、ブレーキストローク量SbはSb1から増加する。ブレーキストローク量Sbが最大値(100%)まで変化すると、減速トルクが最大値(100%)まで変化する。
【0022】
このように、要求減速トルクに応じてブースタコントローラ9がブレーキストローク量Sbを増加させると、マスターシリンダ8からブレーキ液が流れ出す。このブレーキ液によってブレーキキャリパ12のブレーキ液圧が上昇すると摩擦制動トルクが発生してしまい、要求減速トルクを回生制動で発生できなくなる。
このため、駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saに応じた減速トルクを発生させる際には、摩擦制動トルクを抑制する摩擦制動抑制指令信号を液圧アクチュエータコントローラ10に出力する。
液圧アクチュエータコントローラ10は、摩擦制動抑制指令信号を受信すると、前輪インバルブ22により経路を遮断して前輪のブレーキキャリパ12FL及び12FRによる摩擦制動トルクの発生を抑制する。また、後輪インバルブ21と後輪アウトバルブ23により経路を開放して、マスターシリンダ8から流れ出したブレーキ液を貯留タンク27に一時的に貯える。これにより、後輪のブレーキキャリパ12RL及び12RRによる摩擦制動トルクの発生を抑制する。
【0023】
車速が低下して駆動力源14が発生できる回生制動トルクが要求減速トルク未満になると、制動トルクの不足を摩擦制動トルクで補う回生協調制御が実施される。この場合に駆動力コントローラ5は、液圧アクチュエータコントローラ10に回生協調指令信号を出力する。回生協調指令信号は、制動トルクの不足量(要求減速トルク-回生制動トルク)の情報信号を含んでもよい。
液圧アクチュエータコントローラ10は、回生協調指令信号を受信すると後輪インバルブ21及び前輪インバルブ22により経路を開放させることで、前後輪のブレーキキャリパ12へのブレーキ液の流入を許容する。液圧アクチュエータコントローラ10は、液圧ポンプ20を作動させて貯留タンク27内のブレーキ液を前後輪のブレーキキャリパ12へ送ることにより、不足する制動トルクを補う摩擦制動トルクを発生させる。
【0024】
このように、貯留タンク27にブレーキ液を逃がすことで、ワンペダル制御によってブースタコントローラ9がブレーキストローク量Sbを制御しても摩擦制動トルクの発生を抑制できる。これにより、回生制動を積極的に活用して回生エネルギーを回収することができる。
しかしながら、貯留タンク27には貯留タンク27内部のブレーキ液に所定の圧力を付与する加圧器27aが設けられている。この圧力が後輪のブレーキキャリパ12RL及び12RRに印加されることにより比較的小さい値では有るが摩擦制動トルクが発生する。このため回収できる回生エネルギーが低減する。
【0025】
そこで、実施形態の駆動力コントローラ5は、ブースタコントローラ9によるブレーキストローク量Sbの制御を遅らせることにより、摩擦制動トルクの発生を遅らせる。
ワンペダル制御を行う際には運転者はアクセルペダル15に足を乗せており、アクセルペダル15から足を離す前はブレーキペダル16に足を乗せていない。このため、アクセルペダル15から足を離す直前まで、ブースタコントローラ9によるブレーキストローク量Sbの制御を遅らせても差し支えない。
例えば、駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも小さな第3閾値Sa3よりも小さくなるまで、ブースタコントローラ9への減速トルク指令信号の出力を遅延させる。すなわち、アクセルストローク量Saが第3閾値Sa3よりも小さいときに減速トルク指令信号をブースタコントローラ9へ出力し、アクセルストローク量Saが第3閾値Sa3以上であるときには、ブースタコントローラ9への減速トルク指令信号を出力しない。
これにより、ワンペダル制御においてアクセルストローク量Saが第1閾値Sa1未満かつ第3閾値Sa3以上の範囲にある場合に、摩擦制動トルクの発生を防止できる。
なお、上記のように第2閾値Sa2を第1閾値Sa1よりも小さな値に設定した場合には、第2閾値Sa2よりも小さな値に第3閾値Sa3を設定する。
【0026】
図4A~
図4Fは、それぞれワンペダル制御時の車速、アクセルストローク量Sa、駆動力コントローラ5による要求減速トルク(要求制動トルク)、回生制動トルク、ブレーキストローク量Sb、ブレーキキャリパ12のブレーキ液圧の一例のタイムチャートである。
時刻t1においてアクセルストローク量Saの減少が開始する。時刻t2においてアクセルストローク量Saが第1閾値Sa1に至ると、駆動力コントローラ5により算出される要求加速トルクは0まで減少し、車両の加速が停止する。このときの要求減速トルクは0である。
その後に、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1より小さくなると、駆動力コントローラ5は、0よりも大きな要求減速トルクを算出する。駆動力コントローラ5は、回生制動トルク指令値を動力コントローラ13に出力して、要求減速トルクと等しい回生制動トルクを駆動力源14に発生させるとともに、摩擦制動抑制指令信号を液圧アクチュエータコントローラ10に出力する。
【0027】
時刻t3においてアクセルストローク量Saが第3閾値Sa3に至る。
図4Eの実線は、アクセルストローク量Saが第3閾値Sa3よりも小さくなるまで制御を遅らせた場合のブレーキストローク量Sbを示し、
図4Eの破線は制御を遅らせない場合のブレーキストローク量Sbを示す。
ブレーキストローク量Sbの制御を遅らせない場合(
図4Eの破線)、時刻t2において駆動力コントローラ5は、ブレーキストローク量Sbの制御を開始する。このとき、摩擦制動抑制指令信号によって貯留タンク27にブレーキ液が流入するのでブレーキキャリパ12のブレーキ液圧の上昇が抑制されるが、貯留タンク27の加圧器27aの作用により摩擦制動トルクが発生する。
ブレーキストローク量Sbの制御を遅らせる場合(
図4Eの実線)、駆動力コントローラ5は、時刻t3においてブレーキストローク量Sbの制御を開始し、変化速度Sb’=dSb/dtでストローク量Sb1まで増加させる。これにより時刻t2から時刻t3の間に加圧器27aによる摩擦制動トルクの発生を防止できる。
【0028】
時刻t4において駆動力コントローラ5は、車速の低下に応じて要求減速トルクを徐々に減少させる。
時刻t5において車速が0になると、駆動力コントローラ5は車両の停止状態を保持するための制動トルク(停止保持トルク)を発生させる。駆動力コントローラ5は、停止保持トルクを発生させる摩擦制動トルク指令値をブースタコントローラ9へ出力するとともに、摩擦制動抑制指令信号を停止する。ブースタコントローラ9は、摩擦制動トルク指令値に応じてブースタ6の電動モータ7を駆動して停止保持トルクを発生させる。これによりブレーキストローク量Sbが増加する。
その後に、運転者がアクセルペダル15を再び踏み込みむと、駆動力コントローラ5は停止保持トルクを停止する。また、時刻t6においてアクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも大きくなると、0よりも大きな要求加速トルクを算出する。これにより車両は再発進する。
【0029】
次に、駆動力コントローラ5の機能構成について説明する。
図5を参照する。駆動力コントローラ5は、加速トルク指令値算出部30と、アクセルストローク変化速度算出部31と、閾値設定部32と、ブレーキストローク変化速度設定部33と、減速トルク指令値算出部34を備える。
加速トルク指令値算出部30は、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも大きいときには、アクセルストローク量Saが大きいほど大きな要求加速トルクを算出し、算出した要求加速トルクを示す加速トルク指令信号を生成して動力コントローラ13へ出力する。
アクセルストローク変化速度算出部31は、アクセルストローク量Saの変化速度Sa’=dSa/dtを算出する。アクセルストローク変化速度算出部31は、算出した変化速度Sa’を閾値設定部32とブレーキストローク変化速度設定部33と減速トルク指令値算出部34に出力する。
【0030】
閾値設定部32は、アクセルストローク量Saが減少するときの変化速度Sa’(すなわち負値の変化速度Sa’)に基づいて第3閾値Sa3を設定する。例えば閾値設定部32は、負値の変化速度Sa’の絶対値|Sa’|が大きい場合に(すなわちアクセルストローク量Saが速く減少する場合に)負値の変化速度の絶対値|Sa’|が小さい場合よりも大きな第3閾値Sa3を設定して、ブレーキストローク量Sbの制御の遅延量を小さくしてよい。たとえば、負値の変化速度の絶対値|Sa’|が大きいほど大きな第3閾値Sa3を設定してよい。閾値設定部32は、算出した第3閾値Sa3を減速トルク指令値算出部34に出力する。
【0031】
ブレーキストローク変化速度設定部33は、アクセルストローク量Saが減少するときの変化速度Sa’(すなわち、負値の変化速度Sa’)に基づいて、ブレーキストローク量Sbを制御するときのブレーキストローク量Sbの変化速度Sb’を設定する。例えばブレーキストローク変化速度設定部33は、負値の変化速度Sa’の絶対値|Sa’|が大きい場合に負値の変化速度の絶対値|Sa’|が小さい場合よりも速い変化速度Sb’を設定して、ブレーキストローク量Sbの制御の遅延量を小さくしてよい。たとえば、負値の変化速度の絶対値|Sa’|が大きいほど速い変化速度Sb’を設定してよい。ブレーキストローク変化速度設定部33は、算出した変化速度Sb’を減速トルク指令値算出部34に出力する。
【0032】
減速トルク指令値算出部34は、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも小さいときには、アクセルストローク量Saが小さいほど大きな要求減速トルクを算出する。
減速トルク指令値算出部34は、車速センサ4が検出した車速に基づいて、要求減速トルク以下の回生制動トルク指令値を算出する。減速トルク指令値算出部34は、車速が低い場合に比べて高い場合により大きな回生制動トルク指令値を算出する。例えば、車速が高いほど大きな回生制動トルク指令値を算出する。
【0033】
例えば、減速トルク指令値算出部34は、車速に応じて駆動力源14に発生させることができる最大回生制動トルクを算出し、最大回生制動トルクが要求減速トルク以上の場合には、要求減速トルクを回生制動トルク指令値に設定し、最大回生制動トルクが要求減速トルク未満の場合には、最大回生制動トルクを回生制動トルク指令値に設定してよい。減速トルク指令値算出部34は、回生制動トルク指令値を含む減速トルク指令信号を動力コントローラ13へ出力する。
また、減速トルク指令値算出部34は、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1よりも小さくなると、回生制動トルクを発生させる際に摩擦制動トルクの発生を抑制するために、摩擦制動抑制指令信号を液圧アクチュエータコントローラ10に出力する。
【0034】
アクセルストローク量Saが第3閾値Sa3よりも小さくなると、減速トルク指令値算出部34は、摩擦制動トルク指令値を含む減速トルク指令信号をブースタコントローラ9へ出力することにより、ブレーキストローク量Sbを制御する。減速トルク指令値算出部34は、ブレーキストローク変化速度設定部33が設定した変化速度Sb’でブレーキストローク量Sbが増加するように摩擦制動トルク指令値を制御して、摩擦制動トルク指令値を要求減速トルクまで増加させる。
車速が低下して駆動力源14が発生できる回生制動トルクが要求減速トルク未満になると、制動トルクの不足を摩擦制動トルクで補う回生協調制御が実施される。この場合に減速トルク指令値算出部34は、回生協調指令信号を液圧アクチュエータコントローラ10に出力する。
車速が0になると、減速トルク指令値算出部34は、車両の停止状態を保持するための摩擦制動トルク指令値をブースタコントローラ9へ出力するとともに、摩擦制動抑制指令信号の出力を停止する。
【0035】
図6は、実施形態の制駆動力制御方法の一例のフローチャートである。
ステップS1においてアクセルセンサ2は、アクセルストローク量Saを検出する。
ステップS2において駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1より小さいか否かを判定する。アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1以上である場合(ステップS2:N)に処理はステップS3へ進む。アクセルストローク量Saが第1閾値Sa1より小さい場合(ステップS2:Y)に処理はステップS4へ進む。なお、上述の通り本実施形態においては第1閾値Sa1と第2閾値Sa2とを同一の値としている。しかしながら、第1閾値Sa1よりも小さな第2閾値Sa2が設定されている場合には、ステップS2においてアクセルストローク量Saが第1閾値Sa1より小さい場合には更にアクセルストローク量Saが第2閾値Sa2より小さいか否かを判定し、アクセルストローク量Saが第2閾値Sa2より小さい場合にステップS4へ進み、アクセルストローク量Saが第2閾値Sa2以上である場合には再度ステップS2へ戻ってアクセルストローク量Saと第1閾値Sa1との比較を行う。
【0036】
ステップS3において駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saが大きいほど大きな要求加速トルクを算出する。その後に処理はステップS6へ進む。
ステップS4において駆動力コントローラ5は、アクセルストローク量Saが小さいほど大きな要求減速トルクを算出する。その後に処理はステップS5へ進む。
【0037】
ステップS5において駆動力コントローラ5とブースタコントローラ9は、要求減速トルクに応じてブレーキストローク量Sbを制御する。その後に処理はステップS6へ進む。
ステップS6において駆動力源14は、要求加速トルク及び要求減速トルクに応じて駆動トルク及び回生制動トルクをそれぞれ発生させる。
【0038】
(実施形態の効果)
(1)制駆動力制御装置は、アクセルペダルと、ブレーキペダルと、車両駆動力源と、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作に応じて車輪に制動力を発生させる制動装置と、アクセルペダルのストローク量であるアクセルストローク量を検出するアクセルセンサと、アクセルセンサが検出したアクセルストローク量が所定の第1ストローク量よりも大きいときには車両駆動力源に発生させる駆動力を算出し、アクセルストローク量が第1ストローク量以下の第2ストローク量よりも小さいときには車両駆動力源に発生させる減速駆動力を算出し、算出された駆動力及び減速駆動力を発生するように車両駆動力源を制御し、算出された減速駆動力に応じてブレーキペダルのストローク量であるブレーキストローク量を制御する少なくとも1つのコントローラと、を備える。
これにより、アクセルペダルの操作量に応じて駆動力と減速駆動力とを発生させる制駆動力制御装置において、ブレーキペダル操作時の運転者の違和感を軽減できる。
【0039】
(2)制駆動力制御装置は、車両の走行速度である車速を検出する車速センサを備えてもよい。少なくとも1つのコントローラは、アクセルストローク量が第2ストローク量よりも小さいときに、車速が高い場合に車速が低い場合よりも大きな減速駆動力を算出してもよい。これにより、車速が高い場合により大きな回生制動力を発生させ、より多くの回生エネルギーを回収できる。
(3)制動装置は、ブレーキストローク量に応じた量のブレーキ液を排出するマスターシリンダと、マスターシリンダに油路を介して接続し、油路の油圧に応じた制動力を発生するブレーキキャリパと、油路に接続され、コントローラが算出された減速駆動力に応じてブレーキストローク量を制御したときにマスターシリンダから排出されるブレーキ液を貯留する貯留タンクと、を備えてよい。これにより、減速駆動力に応じてブレーキストローク量を制御しても摩擦制動トルクの発生を抑制して回生制動を効率的に利用できる。
【0040】
(4)制動装置は、貯留タンクの内部のブレーキ液に所定の圧力を付与する加圧器を備えてもよい。これにより貯留タンクの内部にブレーキ液が残留することを抑制できる。
(5)少なくとも1つのコントローラは、アクセルストローク量が第2ストローク量よりも小さい第3ストローク量よりも小さいときに、減速駆動力に応じたブレーキストローク量の制御を行い、アクセルストローク量が第3ストローク量以上であるときに、減速駆動力に応じたブレーキストローク量の制御を行わなくてもよい。これにより、アクセルストローク量が第2ストローク量よりも小さく第3ストローク量以上であるときの摩擦制動トルクの発生を抑制して回生制動を効率的に利用できる。
【0041】
(6)少なくとも1つのコントローラは、アクセルストローク量が第2ストローク量よりも小さい第3ストローク量よりも小さいか、またはアクセルストローク量の変化速度が閾値よりも大きいときに、減速駆動力に応じたブレーキストローク量の制御を行い、アクセルストローク量が第3ストローク量以上であり且つ変化速度が閾値以下であるときに、減速駆動力に応じたブレーキストローク量の制御を行わなくてよい。これにより、アクセルストローク量が小さくなる変化速度が早い場合に、ブレーキストローク量の制御の遅れを少なくできる。
(7)少なくとも1つのコントローラは、アクセルストローク量の変化速度が小さい場合に比べてアクセルストローク量の変化速度が大きい場合に、より大きな第3ストローク量を設定してよい。これにより、アクセルストローク量が小さくなる変化速度が早い場合に、ブレーキストローク量の制御の遅れを少なくできる。
(8)少なくとも1つのコントローラは、車両駆動力源である電動機の回生制動力を制御することにより、減速駆動力を制御してもよい。これにより回生制動を利用して車両を減速できる。
【符号の説明】
【0042】
1…制駆動力制御装置、6…ブースタ、7…電動モータ、8…マスターシリンダ、11…液圧アクチュエータ、WFL、WFR、WRL、WRR…車輪、12FR、12FL、12RR、12RL…ブレーキキャリパ、15…アクセルペダル、16…ブレーキペダル、20…液圧ポンプ、21…後輪インバルブ、22…前輪インバルブ、23…後輪アウトバルブ、24…前輪アウトバルブ、25…カットバルブ、26…サクションバルブ、27…貯留タンク、27a…加圧器、28…ダンパ