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特許7537613磁性材料、電磁気部品及び磁性材料の製造方法
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  • 特許-磁性材料、電磁気部品及び磁性材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】磁性材料、電磁気部品及び磁性材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/00 20060101AFI20240814BHJP
   H01F 1/14 20060101ALI20240814BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01F1/00 190
H01F1/14
H01F41/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023527556
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2022018564
(87)【国際公開番号】W WO2022259775
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021097470
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 匡矩
(72)【発明者】
【氏名】部田 武志
(72)【発明者】
【氏名】駒垣 幸次郎
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112225220(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112251193(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111629575(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110591641(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0092641(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0166733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0029477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00
H01F 1/14
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾又は終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記粒子の厚さの平均値が、1nm以上10nm以下であり、
前記粒子の層と前記磁性金属イオンとが接触している、磁性材料。
【請求項2】
前記磁性金属イオンが、互いに隣接する前記層と層との間に存在している、請求項1に記載の磁性材料。
【請求項3】
最大飽和磁化が、0.01emu/cm以上である、請求項1に記載の磁性材料。
【請求項4】
前記磁性金属イオンが、Feイオン及び/又はCoイオンである、請求項1に記載の磁性材料。
【請求項5】
前記Mが、Tiで表される、請求項1に記載の磁性材料。
【請求項6】
導電率が500S/cm以上である、請求項1に記載の磁性材料。
【請求項7】
請求項6に記載の磁性材料を含む磁性膜又は磁性構造体。
【請求項8】
請求項7に記載の磁性膜又は磁性構造体を含む磁性物品。
【請求項9】
(p)1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを接触させる工程;及び、
(q)前記層状材料の粒子を少なくとも含むスラリーから膜又は構造体を形成する工程を含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾又は終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記粒子の厚さの平均値が、1nm以上10nm以下である、磁性膜又は磁性構造体の製造方法。
【請求項10】
前記工程(q)において、前記磁性金属イオンと接触させた後の層状材料の粒子を含むスラリーを用いる、請求項9に記載の磁性膜又は磁性構造体の製造方法。
【請求項11】
前記工程(p)において、前記膜又は構造体中に存在する層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させる、請求項9に記載の磁性膜又は磁性構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料、電磁気部品及び磁性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1つ又は複数の層の形態を有する層状材料、いわゆる二次元材料としてMXene、グラフェン、黒リンなどが注目されている。MXeneは、導電性を有する新規材料であり、後述するように、1つ又は複数の層の形態を有する層状材料である。一般的に、MXeneは、かかる層状材料の粒子(粉末、フレーク、ナノシート等を含み得る)の形態を有する。
【0003】
現在、種々の電気デバイスへのMXeneの応用に向けて様々な研究がなされている。上記応用に向け、MXeneを含む材料の導電性、強度等の特性を高めることが求められている。その検討の一環として、MXeneに金属イオンを挿入することが試みられている。例えば特許文献1には、デラミネーション処理を行っていないMXeneと金属塩とを接触させた粉末を得たことが提案されている。また、特許文献2には、MXeneと酸化鉄とを混合した粉末を得たことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第111629575号公報
【文献】中国特許出願公開第110591641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1、2の方法により金属イオンを導入した複合材料では、MXeneがデラミネーションされておらず、複数の層が厚く重なった層状粒子が乱雑に存在しており、複合材料全体としてみると、また必ずしも層状粒子の配向性が十分でなく、層状粒子と金属イオンとの接触面積も十分に大きくないと考えられる。そのためか、導電性、磁気特性が十分に満足できるものではなかった。また、膜としての成型性も確認されていない。
【0006】
本発明は、層状粒子の配向性に優れ、磁気特性及び導電性を発揮できるとともに、膜としての成型性も良好である磁性材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾又は終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記粒子の厚さの平均値が、1nm以上10nm以下であり、
前記粒子の層と前記磁性金属イオンとが接触している、磁性材料。
[2]前記磁性金属イオンが、互いに隣接する前記層と層との間に存在している、[1]に記載の磁性材料。
[3]最大飽和磁化が、0.01emu/cm以上である、[1]又は[2]に記載の磁性材料。
[4]前記磁性金属イオンが、Feイオン及び/又はCoイオンである、[1]~[3]のいずれかに記載の磁性材料。
[5]前記Mが、Tiで表される、[1]~[4]のいずれかに記載の磁性材料。
[6]導電率が500S/cm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の磁性材料。
[7][6]に記載の磁性材料を含む磁性膜又は磁性構造体。
[8][7]に記載の磁性膜又は磁性構造体を含む磁性物品。
[9](p)1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを接触させる工程;及び、
(q)前記層状材料の粒子を少なくとも含むスラリーから膜又は構造体を形成する工程を含み、
前記層が、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾又は終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記粒子の厚さの平均値が、1nm以上10nm以下である、磁性膜又は磁性構造体の製造方法。
[10]前記工程(q)において、前記磁性金属イオンと接触させた後の層状材料の粒子を含むスラリーを用いる、[9]に記載の磁性膜又は磁性構造体の製造方法。
[11]前記工程(p)において、前記膜又は構造体中に存在する層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させる、[9]に記載の磁性膜又は磁性構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、層状粒子の配向性に優れ、磁気特性及び導電性を発揮できるとともに、膜としての成型性も良好である磁性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の1つの実施形態における磁性材料に利用可能な層状材料であるMXeneを示す概略模式断面図であって、(a)は単層MXeneを示し、(b)は多層(例示的に二層)MXeneを示す。
図2】本発明の磁性材料の配向性のメカニズムの概略説明図であり、磁性金属イオンを含むMXene膜(磁性材料)を示す。
図3】本発明に係る遷移元素含有MXene粒子における層間距離を説明する図である。
図4】本発明に係る磁性膜の外観写真であって、(a)は実施例3で得られた磁性膜の外観写真であり、(b)は比較例2で得られた磁性膜の外観写真である。
図5】実施例1で得られた磁性材料の磁化率測定により得られた磁気ヒステリシスである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1:磁性材料)
以下、本発明の1つの実施形態における磁性材料について詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態における磁性材料は、1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを含む。
【0012】
前記層状材料の層は、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾又は終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含む。
【0013】
本明細書では、前記磁性金属イオンを含まない層状材料を「MXene」、その粒子を「MXene粒子」という。また、MXene粒子中の隣接する2つの層の間に磁性金属イオンが存在している粒子を、前記磁性金属イオンを含まないMXeneと区別するため、「磁性金属イオン含有MXene粒子」ということがある。
【0014】
上記層状材料は、層状化合物として理解され得、「M」とも表され、sは任意の数であり、従来、sに代えてx又はzが使用されることもある。代表的には、nは、1、2、3又は4であり得るが、これに限定されない。
【0015】
MXeneの上記式中、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびMnからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、Ti、V、CrおよびMoからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。
【0016】
MXeneは、上記の式:Mが、以下のように表現されるものが知られている。
ScC、TiC、TiN、ZrC、ZrN、HfC、HfN、VC、VN、NbC、TaC、CrC、CrN、MoC、Mo1.3C、Cr1.3C、(Ti,V)C、(Ti,Nb)C、WC、W1.3C、MoN、Nb1.3C、Mo1.30.6C(上記式中、「1.3」および「0.6」は、それぞれ約1.3(=4/3)および約0.6(=2/3)を意味する。)、
Ti、Ti、Ti(CN)、Zr、(Ti,V)、(TiNb)C、(TiTa)C、(TiMn)C、Hf、(HfV)C、(HfMn)C、(VTi)C、(CrTi)C、(CrV)C、(CrNb)C、(CrTa)C、(MoSc)C、(MoTi)C、(MoZr)C、(MoHf)C、(MoV)C、(MoNb)C、(MoTa)C、(WTi)C、(WZr)C、(WHf)C
Ti、V、Nb、Ta、(Ti,Nb)、(Nb,Zr)、(TiNb)C、(TiTa)C、(VTi)C、(VNb)C、(VTa)C、(NbTa)C、(CrTi)C、(Cr)C、(CrNb)C、(CrTa)C、(MoTi)C、(MoZr)C、(MoHf)C、(Mo)C、(MoNb)C、(MoTa)C、(WTi)C、(WZr)C、(WHf)C、(Mo2.71.3)C(上記式中、「2.7」および「1.3」は、それぞれ約2.7(=8/3)および約1.3(=4/3)を意味する。)
【0017】
代表的には、上記の式において、Mがチタン又はバナジウムであり、Xが炭素原子又は窒素原子であり得る。例えば、MAX相は、TiAlCであり、MXeneは、Tiである(換言すれば、MがTiであり、XがCであり、nが2であり、mが3である)。
【0018】
なお、本発明において、MXeneは、残留するA原子を比較的少量、例えば元のA原子に対して10質量%以下で含んでいてもよい。A原子の残留量は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下であり得る。しかしながら、A原子の残留量は、10質量%を超えていたとしても、磁性材料の用途や使用条件によっては問題がない場合もあり得る。
【0019】
本実施形態に係る層状材料の粒子の骨格に該当する構造は、磁性金属イオン含有MXene粒子の場合と、磁性金属イオンを含まないMXene粒子の場合とで、層状材料の層間距離が広がること等を除き、同じである。以下では、磁性金属イオンを含まないMXene粒子の骨格について説明しているが、磁性金属イオンを図示しないことを除き、磁性金属イオン含有MXene粒子の骨格についても同様の説明が当てはまる。
【0020】
前記MXene粒子は、図1(a)に模式的に例示する1つの層のMXene10a(単層MXene)を含む集合物である。MXene10aは、より詳細には、Mで表される層本体(M層)1aと、層本体1aの表面(より詳細には、各層にて互いに対向する2つの表面の少なくとも一方)に存在する修飾又は終端T3a、5aとを有するMXene層7aである。よって、MXene層7aは、「M」とも表され、sは任意の数である。
【0021】
本実施形態の磁性材料を構成する層状材料は、1つの層と共に複数の層を含みうる。前記複数の層のMXene(多層MXene)として、図1(b)に模式的に示す通り、2つの層のMXene10bが挙げられるが、これらの例に限定されない。図1(b)中の、1b、3b、5b、7bは、前述の図1(a)の1a、3a、5a、7aと同じである。多層MXeneの、隣接する2つのMXene層(例えば7aと7b)は、必ずしも完全に離間していなくてもよく、部分的に接触していてもよい。前記MXene10aは、上記多層MXene10bが個々に分離されることで1つの層で存在しうるものであり、分離されていない多層MXene10bが残存していてもよい。例えば前記層状材料は、上記単層MXene10aと多層MXene10bとの混合物であってもよい。
【0022】
本実施形態を限定するものではないが、MXeneの各層(上記のMXene層7a、7bに相当する)の厚さは、例えば0.8nm以上、5nm以下、特に0.8nm以上、3nm以下である(主に、各層に含まれるM原子層の数により異なり得る)。含まれうる多層MXeneの、個々の積層体について、層間距離(又は空隙寸法、図1(b)中にΔdにて示す)は、例えば0.8nm以上、8nm以下、特に0.8nm以上、5nm以下、より特に約1nmであってよい。前記MXeneの各層の厚さ及び層間距離は、例えば、X線回折法により測定することができる。層の総数の平均値は、2以上、10以下でありうる。
【0023】
上記MXeneは、層間剥離処理を経て得られた、層数の少ないMXene(単層MXene及び多層MXeneを含む)を含む。前記「層数が少ない」とは、例えばMXeneの積層数が10層以下、好ましくは6層以下であることをいう。以下、この「層数の少ない多層MXene」を「少層MXene」ということがある。少層MXeneの積層方向の厚さは、15nm以下、好ましくは10nm以下であることが好ましい。また、単層MXeneと少層MXeneとを併せて「単層・少層MXene」ということがある。
【0024】
単層・少層MXeneを含むことによって、MXeneの比表面積が大きくなる傾向にあり、その結果、磁性金属イオンと層状材料との接触面積が大きく、かつ、配向性が良好となり、磁気特性および導電性をより高めることができる。例えば本実施形態の磁性材料に含まれる層状材料の粒子(全MXene)において、単層・少層MXeneの割合は、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましく、更に好ましくは95体積%以上である。また、単層MXeneの体積は、少層MXeneの体積よりも大きいことがより好ましい。またMXeneの真密度は、存在形態により大きく変動しないため、単層MXeneの質量の合計が、少層MXeneの質量の合計よりも大きいことがより好ましいともいえる。これらの関係にある場合、層状材料と磁性金属イオンとの接触面積を更に増大させつつ層状材料の配向性を向上させることができ、性能を更に高めることができる。本実施形態の磁性材料において、層状材料が単層MXeneのみで形成されていることが磁気特性及び導電性の観点からは好ましい。
【0025】
前記層状材料の粒子の厚さの平均値は、1nm以上10nm以下である。前記厚さの平均値は、好ましくは7nm以下であり、より好ましくは5nm以下である。一方、単層MXeneの厚さを考慮すると、粒子の厚さの下限は上記の通り1nmとなる。上記粒子の厚さは、単層MXeneの場合、上記図1のMXene層7aの厚さに相当し、多層MXene(好ましくは少層MXene)として、例えば図1(b)の通り2層である場合、MXene層7aの厚さ、空隙ΔdおよびMXene層7bの厚さの合計に相当する。なお本明細書において、前記粒子の厚さは、前記粒子に含まれる層の積層方向(粒子の層に垂直な方向)の長さを意味するものとする。
【0026】
粒子の層の総数または厚さの平均値は次のようにして求める。すなわち、原子間力顕微鏡(AFM)を用い、後述の実施例の通り写真を撮影し、写真において任意に選択される50個のMXene粒子を対象として、各MXene粒子の層の総数または厚さを求め、平均値を求める。
【0027】
粒子の層に平行な平面内における最大寸法の平均値は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。上記最大寸法の平均値が好ましくは0.1μm以上であることにより、磁性金属イオンと層状材料の接触面積がより大きく、かつ層状材料の配向性も向上するため、例えば磁気特性や導電性を向上させることができる。一方、例えば成形性等の観点から、上記最大寸法の平均値は、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
【0028】
粒子の層に平行な平面内における最大寸法の平均値は次のようにして求める。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、後述の実施例の通り写真を撮影し、写真において任意に選択される50個のMXene粒子を対象として、各MXene粒子のシート面に平行な方向(平面)の最大寸法を求め、50個の平均値を求める。
【0029】
本実施形態の磁性材料は、磁性金属イオンを含む。磁性金属イオンは、好ましくは強磁性、常磁性を示す金属イオンを表し、例えば、Mg、Fe、Ni、Co、Cu、Zn等の遷移金属元素のイオン;希土類元素のイオン等が挙げられる。磁性金属イオンとしては、1種を用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。かかる2種の磁性金属イオンの組合せとしては、FeイオンとCoイオンとの組合せ等が挙げられる。磁性金属イオンとしては、とりわけ遷移金属元素のイオンを用いることができ、特にFeイオン、Coイオン、または、FeイオンとCoイオンとの組合せを用いることができる。
【0030】
前記磁性金属イオンは、前記層状材料の粒子の層と接触しており、互いに隣接する2つの前記層の間に存在していることが好ましい。
【0031】
前記磁性金属イオンが例えばFeイオンの場合、図2に模式的に例示する通り、磁性金属イオン(図2の場合、Feイオン41)が、MXene粒子10dの層7d間にインターカレートされて、磁性金属イオン含有MXene粒子10dの層7d間にFeイオンが担持され、層7dと層7dをFeイオン41がつなぎとめる作用効果を発揮すると考えられる。その結果、前記従来のMXeneと磁性金属とを単に混合した磁性材料では、MXene粒子の層と磁性金属イオンとの接触面積やMXene層の配向性が十分でなく、磁気特性、導電性、成膜性も十分でなかったのに対し、MXene粒子10dの層7dと磁性金属イオン41との接触面積を高めることができるとともに、MXene粒子10dの層7dの配向性が良好となり、磁気特性、導電性を発揮でき、成膜性も良好になると考えられる。更に、磁性金属イオン(図2の場合、Feイオン41)がMXene粒子10dの層7dをつなぎとめることで、磁性材料から形成される磁性膜及び磁性構造体の強度確保にも寄与すると考えられる。更に、あくまで推測であるが、前記磁性金属イオン7dがMXene粒子10dを構成する層と接触し、好ましくはMXene粒子10dを構成する層7dと層7dの間に存在することで、前記磁性金属イオン(図2の場合、Feイオン41)が層の平面と平行な方向に配向しつつMXene粒子10dの層7dの表面に存在する元素と相互作用し、それが磁気特性向上の一因となりうると考えられる。
【0032】
なお上記では、多層MXene(粒子)の層間を例に説明したが、本実施形態におけるMXene粒子において、「互いに隣接する層と層との間」とは、これに限定されず、例えば、単層MXene(粒子)と他の単層MXene(粒子)との間、単層MXene(粒子)と多層MXene(粒子)との間、多層MXene(粒子)と多層MXene(粒子)との間をもいう。
【0033】
本実施形態の磁性材料は、好ましくはMXeneを構成する層と層の間に磁性金属イオンが存在し、MXeneを構成する層と層の間の距離が、前記磁性金属イオンを含まないMXene膜よりも短い。上記「MXeneを構成する層と層の間の距離」とは、MがTiで表されるTi(O-term)の場合、結晶構造は図3に模式的に示す通りであり(図3中、50はチタン原子、51は酸素原子であり、その他の元素については省略されている)、この図3における両矢印で示される距離をいう。上記距離は、X線回折測定して得られるXRDプロファイルにおける、MXeneの(002)面に相当する11°(deg)以下の低角のピークの位置(2θ)で判断できる。XRDプロファイルにおけるピークが高角であるほど、層間距離が狭まっていることを示す。前記ピークは、ピークトップをいう。前記X線回折測定は、後述する実施例に示す条件で測定すればよい。上記低角のピークの位置(2θ)として、例えば5~11°の範囲が挙げられ、その中でも例えば6.2°以上、更には6.3°以上であることが挙げられる。
【0034】
なお、本明細書においてXRDプロファイルにおけるピークは、前後1点の測定点より数値が高い(つまり正の極値を有する)部分をピーク頂点とし、該ピーク頂点からベースラインへ垂線を引いた時の高さをピーク高さとしたとき、ピーク高さが(002)面に相当するピークの1/500以上であるものをいう。
【0035】
前記磁性材料における磁性金属イオン濃度は、質量基準で、例えば0.01ppm以上、10ppm以上、さらには500ppm以上であってよく、例えば50質量%以下、20質量%以下、さらには10質量%以下であってよい。
【0036】
磁性金属イオン含有率は、誘導結合プラズマ発光分光分析法を用いたICP-AESにより測定することができる。
【0037】
本実施形態の磁性材料の最大飽和磁化は、例えば0.03emu/cm以上、さらには0.04emu/cm以上であることが好ましく、例えば100emu/cm以下、さらには50emu/cm以下であってよい。
【0038】
前記磁性材料の最大飽和磁化は、振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定することができる。
【0039】
前記磁性材料の導電率は、例えば500S/cm以上、さらには1,000S/cm以上、特に1,500S/cm以上であることが好ましく、例えば100,000S/cm以下、さらには5,0000S/cm以下であってよい。
【0040】
本実施形態の磁性材料の導電率は、磁性材料の厚さと、4探針法で測定した磁性材料の表面抵抗率を下記式に代入して求められる、5000S/cm以上でありうる。
導電率[S/cm]=1/(磁性材料の厚さ[cm]×磁性材料の表面抵抗率[Ω/□])
【0041】
前記磁性材料の厚さは、マイクロメーター、走査型電子顕微鏡、又は触針式表面形状測定器で測定できる。前記磁性材料の測定方法は、前記磁性材料の厚さに応じて決定する。測定方法の採用の目安として、前記マイクロメーターでの測定は、前記磁性材料の厚さが薄い場合に用いればよい。前記磁性材料の厚さが5μm以上の場合に用いてもよい。前記触針式表面形状測定器での測定は、前記磁性材料の厚さが400μm以下の場合、前記走査型電子顕微鏡での測定は、前記磁性材料の厚みが200μm以下の場合であって、上記触針式表面形状測定器で測定できない場合に用いる。前記走査型電子顕微鏡で測定する場合、測定倍率は、膜厚に応じて決定すればよい。触針式表面形状測定器で測定する場合、Veeco Instruments Inc社のDektak(登録商標)測定器を用いて測定する。前記磁性材料の厚さは、平均値として算出する。
【0042】
前記磁性材料は、スラリー、クレイ等の不定形材料としての形態を有し得;膜、構造体等の定形材料としての形態を有し得る。前記不定形材料、定形材料は、磁性材料の他セラミックス、金属及び樹脂材料のうちの1以上の材料を更に含むことができる。
【0043】
上記セラミックスとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、酸化セリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム系、ヘキサフェライト、ムライトなどの金属酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ホウ素、ホウ化チタン等の非酸化物セラミックスが挙げられる。上記金属としては、鉄、チタン、マグネシウム、アルミニウムと、これらを基とする合金が挙げられる。
【0044】
また上記樹脂材料(ポリマー)としては、セルロース系と合成高分子系が挙げられる。上記ポリマーとして、例えば、親水性ポリマー(疎水性ポリマーに親水性助剤が配合されて親水性を呈するものと、疎水性ポリマー等の表面を親水化処理したものを含む)、疎水性ポリマーが挙げられる。前記親水性ポリマーとして、ポリスルホン、セルロースアセテート、再生セルロース、ポリエーテルスルホン、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、アクリル酸系水溶性ポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアニリンスルホン酸、およびナイロンからなる群より選択される1以上を含むものが挙げられる。また、前記疎水性ポリマーとして、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PANI)、難燃性ポリイミドの様に第2級アミノ基を含むポリイミド(PI)、ウレタン結合(-NHCO-)を有するポリマー種として、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアクリルアミド(PMA)、ナイロン(ポリアミド系樹脂)、DNA(デオキシリボ核酸)アセトアニリド、アセトアミノフェン等が挙げられる。
【0045】
前記複合材料に含まれる前記樹脂材料(ポリマー)の割合は、用途に応じて適宜設定することができる。例えば前記ポリマーの割合は、複合材料(乾燥時)に占める割合で、0体積%超であって、例えば80体積%以下とすることができ、更には50体積%以下、更には30体積%以下、更には10体積%以下、より更には5体積%以下とすることができる。
【0046】
前記複合材料を製造する方法は特に限定されない。一態様として、本実施形態の複合材料がポリマーを含み、シート状の形態を有るものである場合、例えば次に例示する通り、前記磁性材料を混合し、塗膜を形成することが挙げられる。
【0047】
まず、前記磁性材料を溶媒中に存在させた磁性材料水分散体、磁性材料有機溶媒分散体、または磁性材料粉末と、ポリマーとを混合すればよい。上記磁性材料水分散体の溶媒は、代表的には水であり、場合により、水に加えて他の液状物質を比較的少量(全体基準で例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下)で含んでいてもよい。
【0048】
上記磁性材料と樹脂材料(ポリマー)の撹拌は、ホモジナイザー、プロペラ撹拌機、薄膜旋回型撹拌機、プラネタリーミキサー、機械式振とう機、ボルテックスミキサーなどの分散装置を用いて行うことができる。
【0049】
複合材料のシートを形成するためには、上記磁性材料とポリマーの混合物であるスラリーを、基材(例えば基板)に塗布すればよいが、塗布方法は限定されない。例えば、1流体ノズル、2流体ノズル、エアブラシ等のノズルを用いて、スプレー塗布を行う方法、テーブルコーター、コンマコーター、バーコーターを用いたスリットコート、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等の方法、スピンコート、浸漬、滴下による塗布方法が挙げられる。
【0050】
上記塗布および乾燥は、所望の厚みの膜が得られるまで、必要に応じて複数回繰り返し行ってもよい。乾燥および硬化は、例えば、常圧オーブンあるいは真空オーブンを用いて400度以下の温度で行ってもよい。
【0051】
本実施形態の複合材料が、セラミックス又は金属を含む複合材料である場合、その製造方法として、例えば粒子状の前記磁性材料と、例えば粒子状のセラミックスまたは金属とを混合し、前記磁性材料の組成を維持可能な低温で加熱して複合材料を製造する方法が挙げられる。
【0052】
さらに、前記不定形材料は、磁性材料の他、分散媒等を含むことができる。
【0053】
前記分散媒としては、水;N-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、酢酸等の有機系媒体等が挙げられる。
【0054】
本実施形態の磁性材料並びに前記磁性材料を含む磁性膜及び磁性構造体は、磁性物品として、任意の適切な用途に利用され得る。例えば、任意の適切な電気デバイス・磁性デバイスにおける電磁シールド(EMIシールド)、インダクタ、リアクトル、モーター、磁気センサー、磁気記憶媒体など、磁気特性が要求される用途に利用され得る。
【0055】
(実施形態2:磁性膜又は磁性構造体の製造方法)
以下、本発明の実施形態における磁性材料の製造方法について詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0056】
本実施形態の1つの磁性膜又は磁性構造体の製造方法は、
(p)1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを接触させる工程;及び、
(q)前記層状材料の粒子を少なくとも含むスラリーから磁性膜又は磁性構造体を形成する工程を含み、
前記層は、以下の式:

(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される層本体と、該層本体の表面に存在する修飾又は終端T(Tは、水酸基、フッ素原子、塩素原子、酸素原子および水素原子からなる群より選択される少なくとも1種である)とを含み、
前記粒子の厚さの平均値は、1nm以上10nm以下である。
【0057】
以下、工程(p)、(q)において用いられる層状材料の粒子を「単層・少層MXene粒子」ということがある。すなわち前記工程(p)では、前記単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンとを接触させ、前記工程(q)では、前記単層・少層MXene粒子を少なくとも含むスラリーから磁性膜又は磁性構造体を形成するともいえる。また、磁性膜を単に「膜」といい、磁性構造体を単に「構造体」ということがある。
【0058】
・工程(p)
単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンとを接触させる。たとえば、前記磁性金属イオンを含む溶液と単層・少層MXene粒子とを接触させればよい。接触の方法は、単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液との混合であってよく、単層・少層MXene粒子が膜又は構造体中に存在している場合には、前記膜又は構造体への塗布、特に前記膜又は構造体の前記磁性金属イオンを含む溶液への浸漬であってよい。
【0059】
前記磁性金属イオンを含む溶液は、前記磁性金属を含む化合物と溶媒とを含むことが好ましい。前記磁性金属を含む化合物としては、前記磁性金属を含む塩が挙げられ、例えば、前記磁性金属の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩からなる群より選択される1以上の無機酸塩を用いることが好ましく、硝酸塩、酢酸塩がより好ましい。カウンターアニオン源として、前記無機酸塩を用いることができるが、酸は必須でなくともよい。
【0060】
前記溶液中における前記化合物の濃度は、例えば0.001M以上、0.01M以上としてもよく、例えば0.5M以下、0.2M以下としてもよい。
【0061】
また、前記化合物の量は、前記単層・少層MXene100gに対して、例えば0.1モル以上、0.5モル以上、1モル以上であってよく、例えば10モル以下、5モル以下、2モル以下であってよい。
【0062】
前記溶媒としては、水(例えば、蒸留水、脱イオン水等の精製水等);炭素数2~4程度の低級アルコール系溶媒(たとえば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等);ヘキサン等の炭化水素系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒等が挙げられ、水が好ましい。
【0063】
前記塗布の方法には、例えば、浸漬、刷毛、ローラー、ロールコーター、エアースプレー、エアレススプレー、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター、静電塗装等の塗装方法が含まれる。
【0064】
前記塗布(特に浸漬)後、例えば、水で洗浄してから、乾燥してもよい。前記乾燥温度は、10~160℃であってよく、乾燥時間は1~50時間であってよい。前記乾燥は、低温乾燥と高温乾燥の2段階で実施してもよく、前記低温乾燥時の乾燥温度は10~50℃であってよく、高温乾燥時の乾燥温度は60~160℃であってよい。
【0065】
・工程(q)
前記単層・少層MXene粒子を少なくとも含むスラリーから膜又は構造体を形成する。前記スラリーには、磁性金属イオンが担持されていない単層・少層MXene粒子のみが含まれていてもよく、磁性金属イオンが担持された単層・少層MXene粒子が含まれていてもよい。
【0066】
前記スラリーにおける単層・少層Mxene粒子又は磁性金属イオンが担持された単層・少層MXene粒子の濃度は、例えば5mg/mL以上、10mg/mL以上、20mg/mL以上、30mg/mL以上であり得、200mg/mL以下であり得る。前記濃度が高いほど、膜又は構造体を厚くすることが容易となり、工業的量産に適する。前記磁性金属イオンが担持されていてもよい単層・少層MXene粒子の濃度は、スラリーにおける固形分濃度として理解され、前記固形分濃度は、例えば加熱乾燥重量測定法、凍結乾燥重量測定法、ろ過重量測定法などを用いて測定可能である。
【0067】
前記スラリーは、前記磁性金属イオンが担持されていてもよい単層・少層MXeneを液状媒体中に含む分散液及び/又は懸濁液であってよい。前記液状媒体は、水性媒体及び/又は有機系媒体であり得、好ましくは水性媒体である。前記水性媒体は、代表的には水であり、場合により、水に加えて他の液状物質を比較的少量(水性媒体全体基準で例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下)含んでいてもよい。前記有機系媒体は、例えば、N-メチルピロリドン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、酢酸等であってよい。
【0068】
前記スラリーから膜又は構造体を形成する方法は、吸引ろ過、スプレーコーティング、スクリーン印刷、バーコート等であってよい。
【0069】
前記膜又は構造体は、基材上に形成されてよい。前記基材は、任意の適切な材料から成り得る。基材は、例えば樹脂フィルム、金属箔、プリント配線基板、実装型電子部品、金属ピン、金属配線、金属ワイヤなどであってよい。
【0070】
前記膜又は構造体の形成後、乾燥することが好ましい。乾燥は、自然乾燥(代表的には常温常圧下にて、空気雰囲気中に配置する)や空気乾燥(空気を吹き付ける)などのマイルドな条件で行っても、温風乾燥(加熱した空気を吹き付ける)、加熱乾燥、および/又は真空乾燥などの比較的アクティブな条件で行ってもよい。
【0071】
前記工程(p)及び工程(q)は、どの順で実施されてもよく、例えば、工程(p)の後に工程(q)を実施してもよく、工程(q)の後に工程(p)を実施してもよい。
【0072】
すなわち、一態様では、工程(p)において、前記膜又は構造体中に存在する層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させることが好ましく、この態様における製造方法は、
(q1)前記層状材料の粒子を含むスラリーから膜又は構造体を形成する工程;及び
(p1)前記膜又は構造体中に存在する層状材料の粒子と、磁性金属イオンをと接触させる工程
を含むことが好ましい。
【0073】
膜又は構造体を形成した後であっても、前記層状材料の粒子が、単層・少層MXene粒子であるためか、磁性金属イオンを層状材料の粒子と接触、好ましくは層状材料の粒子の層と層との間に導入することが可能であり、注目される。
【0074】
・工程(q1)
前記層状材料の粒子を含むスラリーから膜又は構造体を形成する工程としては、工程(p)の説明において上記した条件をいずれも採用することができる。
・工程(p1)
工程(p1)では、膜又は構造体に磁性金属イオンを導入する。層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させる方法としては、工程(p)と同様、単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液と接触させる方法が挙げられる。前記磁性金属イオンを含む溶液に用いられる磁性金属を含む化合物及び溶媒としては、工程(p)の説明において上記した化合物及び溶媒を、上記した濃度又は単層・少層MXeneに対する量となるように用いることができる。
【0075】
前記単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液とを接触させる方法としては、上記した方法のなかでも、とりわけ単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液の塗布、特に浸漬が挙げられる。
【0076】
層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させた後、工程(p)の説明において上記した方法により乾燥してもよい。
【0077】
また、別の一態様では、工程(q)において、前記磁性金属イオンと接触させた後の層状材料の粒子を含むスラリーを用いることが好ましく、この態様における製造方法は、
(p2)1つ又は複数の層を含む層状材料の粒子と、磁性金属イオンとを接触させて、その層に磁性金属イオンが接触している層状材料の粒子(以下、「磁性金属イオン担持MXene粒子」ということがある)を得る工程;及び、
(q2)前記磁性金属イオン担持MXene粒子を含むスラリーから膜又は構造体を形成する工程
を含むことが好ましい。
【0078】
磁性金属イオンと接触させた後の層状材料の粒子であっても、前記層状材料の粒子が単層・少層MXene粒子であるためか、成膜性、成型性が良好である。また、得られる磁性材料は導電性を示すことからMXene粒子の層の配向性が良好であることも示唆され、注目される。
【0079】
・工程(p2)
工程(p2)において、層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させる方法としては、工程(p)と同様、単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液と接触させる方法が挙げられる。前記磁性金属イオンを含む溶液に用いられる磁性金属を含む化合物及び溶媒としては、工程(p)の説明において上記した化合物及び溶媒を、上記した濃度又は単層・少層MXeneに対する量となるように用いることができる。
【0080】
前記単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液とを接触させる方法としては、上記した方法のなかでも、とりわけ単層・少層MXene粒子と磁性金属イオンを含む溶液との混合が挙げられる。
【0081】
層状材料の粒子と磁性金属イオンとを接触させた後、工程(p)の説明において上記した方法により乾燥してもよい。
【0082】
・工程(q2)
工程(q)の説明において上記した方法と同様の方法により、スラリーを調製し、膜又は構造体を形成することができる。
【0083】
前記単層・少層MXeneは、例えば以下の方法(第1製造方法)により製造することができる。第1製造方法は、
(a)以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b1)エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行うこと、
(c1)前記エッチング処理により得られたエッチング処理物を、水洗浄すること、
(d1)前記水洗浄により得られた水洗浄処理物と、1価の金属イオンを含む金属化合物とを混合する工程を含む、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行うこと、
(e)前記1価の金属イオンのインターカレーション処理を行って得られたインターカレーション処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
(f)デラミネーション処理して得られたデラミネーション処理物を、水で洗浄して単層・少層MXene粒子を得ること
を含む。
【0084】
また、前記単層・少層MXene粒子は、以下の方法(第2製造方法)により製造することもできる。第2製造方法は、
(a)以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される前駆体を準備すること、
(b2)1価の金属イオンを含む金属化合物を含むエッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去するエッチング処理を行うとともに、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行うこと、
(c2)前記エッチング処理および1価の金属イオンのインターカレーション処理を行って得られた、(エッチング+インターカレーション)処理物を、水洗浄すること、
(e)前記水洗浄により得られた水洗浄処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行うこと、
を含む。
【0085】
・工程(a)
まず、所定の前駆体を準備する。本実施形態において使用可能な所定の前駆体は、MXeneの前駆体であるMAX相であり、
以下の式:
AX
(式中、Mは、少なくとも1種の第3、4、5、6、7族金属であり、
Xは、炭素原子、窒素原子又はそれらの組み合わせであり、
Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、
nは、1以上4以下であり、
mは、nより大きく、5以下である)
で表される。
【0086】
上記M、X、nおよびmは、MXeneで説明した通りである。Aは、少なくとも1種の第12、13、14、15、16族元素であり、通常はA族元素、代表的にはIIIA族およびIVA族であり、より詳細にはAl、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、SおよびCdからなる群より選択される少なくとも1種を含み得、好ましくはAlである。
【0087】
MAX相は、Mで表される2つの層(各XがMの八面体アレイ内に位置する結晶格子を有し得る)の間に、A原子により構成される層が位置した結晶構造を有する。MAX相は、代表的にm=n+1の場合、n+1層のM原子の層の各間にX原子の層が1層ずつ配置され(これらを合わせて「M層」とも称する)、n+1番目のM原子の層の次の層としてA原子の層(「A原子層」)が配置された繰り返し単位を有するが、これに限定されない。
【0088】
上記MAX相は、既知の方法で製造することができる。例えばTiC粉末、Ti粉末およびAl粉末を、ボールミルで混合し、得られた混合粉末をAr雰囲気下で焼成し、焼成体(ブロック状のMAX相)を得る。その後、得られた焼成体をエンドミルで粉砕して次工程用の粉末状MAX相を得ることができる。
【0089】
・工程(b1)
第1製造方法では、エッチング液を用いて、前記前駆体から少なくとも一部のA原子を除去する、エッチング処理を行う。エッチング処理の条件は、特に限定されず、既知の条件を採用することができる。前述のとおりエッチングは、Fを含むエッチング液を用いて実施され得、例えば、フッ酸を用いた方法、フッ酸および塩酸の混合液を用いた方法、フッ化リチウムおよび塩酸の混合液を用いた方法などが挙げられる。エッチング液には更にリン酸等が含まれていてもよい。これらの方法では、上記酸等と溶媒として例えば純水との混合液を用いることが挙げられる。上記エッチング処理により得られたエッチング処理物として例えばスラリーが挙げられる。
【0090】
・工程(c1)
前記エッチング処理により得られたエッチング処理物を、水洗浄する。水洗浄を行うことによって、上記エッチング処理で用いた酸等を十分に除去できる。エッチング処理物と混合させる水の量や洗浄方法は特に限定されない。例えば水を加えて撹拌、遠心分離等を行うことが挙げられる。撹拌方法として、ハンドシェイク、オートマチックシェーカー、シェアミキサー、ポットミルなどを用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となる酸処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。前記水での洗浄は1回以上行えばよい。好ましくは水での洗浄を複数回行うことである。例えば具体的に、(i)(エッチング処理物又は下記(iii)で得られた残りの沈殿物に)水を加えて撹拌、(ii)撹拌物を遠心分離する、(iii)遠心分離後に上澄み液を廃棄する、の工程(i)~(iii)を2回以上、例えば15回以下の範囲内で行うことが挙げられる。
【0091】
・工程(d1)
前記水洗浄により得られた水洗浄処理物と、1価の金属イオンを含む金属化合物とを混合する工程を含む、1価の金属のインターカレーション処理を行う。
【0092】
前記1価の金属イオンを含む金属化合物を構成する1価の金属イオンとして、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、銅イオン、銀イオン、金イオン等が挙げられる。前記1価の金属イオンを含む金属化合物として、上記金属イオンと陽イオンが結合したイオン性化合物が挙げられる。例えば上記金属イオンの、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩を含む硫化物塩、硝酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。前記1価の金属イオンとして、前述の通りリチウムイオンが好ましく、1価の金属イオンを含む金属化合物として、リチウムイオンを含む金属化合物が好ましく、リチウムイオンのイオン性化合物がより好ましく、リチウムイオンのヨウ化物、リン酸塩、硫化物塩のうちの1以上が更に好ましい。金属イオンとしてリチウムイオンを用いれば、リチウムイオンに水和している水が最も負の誘電率を有するため、単層化しやすくなると考えられる。
【0093】
1価の金属イオンのインターカレーション処理用配合物に占める、1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率は、0.001質量%以上とすることが好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性の観点からは、1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0094】
インターカレーション処理の具体的な方法は特に限定されず、例えば、上記MXeneの水分媒体クレイに対して、1価の金属イオンを含む金属化合物を混合し、撹拌を行ってもよいし、静置してもよい。例えば室温で撹拌することが挙げられる。上記撹拌の方法は、例えば、スターラー等の撹拌子を用いる方法、撹拌翼を用いる方法、ミキサーを用いる方法、及び遠心装置を用いる方法等が挙げられ、撹拌時間は、単層・少層MXene粒子の製造規模に応じて設定することができ、例えば12~24時間の間で設定することが挙げられる。
【0095】
第2製造方法では、工程(b2)で、前駆体のエッチング処理と1価の金属イオンのインターカレーション処理をあわせて行う。
【0096】
・工程(b2)
第2製造方法では、1価の金属イオンを含む金属化合物を含むエッチング液を用いて、前記前駆体から、少なくとも一部のA原子(および場合によりM原子の一部)をエッチング(除去および場合により層分離)するとともに、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行う。
【0097】
本実施形態では、MAX相からの少なくとも一部のA原子(および場合によりM原子の一部)のエッチング(除去および場合により層分離)時に、M層の層間に1価の金属イオンを挿入する、1価の金属イオンのインターカレーション処理を行う。
【0098】
1価の金属族イオンを含む金属含有化合物として、第1製造方法における工程(d1)で示したイオン性化合物を用いることができる。エッチング液中の1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率は、0.001質量%以上とすることが好ましい。上記含有率は、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。一方、溶液中の分散性の観点からは、エッチング液中の1価の金属イオンを含む金属化合物の含有率を、10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0099】
工程(b2)におけるエッチング液は、1価の金属イオンを含む金属化合物を含んでいればよく、エッチング液のその他の構成は特に限定されず、既知の条件を採用することができる。例えば上記工程(b1)で述べた通り、Fを更に含むエッチング液を用いて実施され得、例えば、フッ酸を用いた方法、フッ酸および塩酸の混合液を用いた方法、フッ化リチウムおよび塩酸の混合液を用いた方法などが挙げられる。エッチング液には更にリン酸等が含まれていてもよい。これらの方法では、上記酸等と溶媒として例えば純水との混合液を用いることが挙げられる。上記エッチング処理により得られたエッチング処理物として例えばスラリーが挙げられる。
【0100】
・工程(c2)
前記エッチング処理および1価の金属イオンのインターカレーション処理を実施して得られた、(エッチング+インターカレーション)処理物を、水洗浄する。水洗浄を行うことによって、上記(エッチング+インターカレーション)処理で用いた酸等を十分に除去できる。(エッチング+インターカレーション)処理物と混合させる水の量や洗浄方法は特に限定されない。例えば水を加えて撹拌、遠心分離等を行うことが挙げられる。撹拌方法として、ハンドシェイク、オートマチックシェーカー、シェアミキサー、ポットミルなどを用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となる酸処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。前記水での洗浄は1回以上行えばよい。好ましくは水での洗浄を複数回行うことである。例えば具体的に、(i)((エッチング+インターカレーション)処理物又は下記(iii)で得られた残りの沈殿物に)水を加えて撹拌、(ii)撹拌物を遠心分離する、(iii)遠心分離後に上澄み液を廃棄する、の工程(i)~(iii)を2回以上、例えば15回以下の範囲内で行うことが挙げられる。
【0101】
第1製造方法と第2製造方法のうち、第1製造方法の通り、工程(b1)エッチング処理の工程と、工程(d1)1価の金属イオンのインターカレーション処理の工程とを分けた製造方法によれば、MXeneをより単層化しやすいため好ましい。
【0102】
・工程(e)
第1製造方法における工程(d1)の1価の金属イオンのインターカレーション処理により得られた1価の金属イオンのインターカレーション処理物、又は第2製造方法における工程(c2)の水洗浄により得られた水洗浄処理物を撹拌する工程を含む、デラミネーション処理を行う。このデラミネーション処理により、MXeneの単層・少層化を図ることができる。デラミネーション処理の条件は特に限定されず、既知の方法で行うことができる。例えば撹拌方法として、超音波処理、ハンドシェイク、オートマチックシェーカーなどを用いた撹拌が挙げられる。撹拌速度、撹拌時間等の撹拌の程度は、処理対象となる処理物の量や濃度等に応じて調整すればよい。例えば、上記インターカレーション後のスラリーを、遠心分離して上澄み液を廃棄した後に、残りの沈殿物に純水添加-例えばハンドシェイク又はオートマチックシェーカーによる撹拌を行って層分離を行うことが挙げられる。未剥離物の除去は、遠心分離して上澄みを廃棄後、残りの沈殿物を水で洗浄する工程が挙げられる。例えば、(i)上澄み廃棄後の残りの沈殿物に、純水を追加して撹拌、(ii)遠心分離し、(iii)上澄み液を回収する。この(i)~(iii)の操作を、1回以上、好ましくは2回以上、10回以下繰り返して、デラミネーション処理物として、酸処理前の単層・少層MXene含有上澄み液を得ることが挙げられる。又は、この上澄み液を遠心分離して、遠心分離後の上澄み液を廃棄し、デラミネーション処理物として、酸処理前の単層・少層MXene含有クレイを得てもよい。
【0103】
本実施形態の製造方法では、デラミネーションとして超音波処理を行わなくともよい。超音波処理を行わない場合、粒子破壊が生じ難く、粒子の層に平行な平面、すなわち2次元面の大きい単層・少層MXene粒子を得ることが容易となる。
【0104】
撹拌して得られたデラミネーション処理物は、そのまま単層・少層MXene粒子として用いることができ、必要に応じ水で洗浄してもよい。
【0105】
以上、本発明の実施形態における磁性材料、磁性膜、磁性構造体、これらを含む物品並びに磁性膜及び磁性構造体の製造方法について詳述したが、種々の改変が可能である。なお、本発明の磁性材料、磁性膜及び磁性構造体は、上述の実施形態における製造方法とは異なる方法によって製造されてよく、また、本発明の磁性膜及び磁性構造体の製造方法は、上述の実施形態における磁性膜及び磁性構造体を提供するもののみに限定されないことに留意されたい。
【実施例
【0106】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0107】
〔磁性金属イオン担持MXene膜の製造〕
(実施例1)
・単層・少層MXene粒子の調製
MAX粒子としてTiAlC粒子を既知の方法で調製した。このTiAlC粒子(粉末)をLiFと共に9モル/Lの塩酸に添加して(TiAlC粒子1gにつき、LiF 1g、9モル/Lの塩酸10mLとした)、35℃にてスターラーで24時間撹拌して、TiAlC粒子に由来する固体成分を含む固液混合物(懸濁液)を得た。
【0108】
前記固液混合物(懸濁液)に対して、純水による洗浄および遠心分離機を用いたデカンテーションによる上澄みの分離除去(上澄みを除いた残りの沈降物を再び洗浄に付す)操作を10回程度繰り返し実施した。そして、沈降物に純水を添加した混合物をオートマチックシェーカーで15分間撹拌し、その後、遠心分離機で5分間の遠心分離操作に付して上澄みと沈降物に分離させ、上澄みを遠心脱水により分離除去した。これにより、上澄みを除いた残りの沈降物に純水を添加することにより希釈して、粗精製スラリーを得た。
【0109】
粗精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneと、層分離(デラミネーション)不足により単層化されていない多層MXeneとを含み得、更に、MXene粒子以外の不純物(未反応のMAX粒子および、エッチングされたA原子に由来する副生成物の結晶物(例えばAlFの結晶物)等)を含むと理解される。
【0110】
上記で得た粗精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、2600×gの相対遠心力(RCF)にて5分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて回収し、精製スラリーを得た。精製スラリーは、MXene粒子として、ほとんどのMXeneがデラミネーション済みの単層MXeneであると理解される。上澄みを除いた残りの沈降物は、その後、使用しなかった。
【0111】
・単層・少層MXene粒子を含むスラリーからの膜の形成
上記で得た精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、3500×gの相対遠心力(RCF)にて120分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて分離除去した。分離除去した上澄みは、その後、使用しなかった。上澄みを除いた残りの沈降物として粘土状物質(クレイ)を得た。これにより、MXeneクレイとして、Ti-水分散体クレイを得た。このMXeneクレイと純水とを適切な量で混合して、固形分濃度(MXene濃度)が約34mg/mLのMXeneスラリーを準備した。MXene水分散体(MXene固形分濃度34mg/mL)5mLをスポイトでとり、一晩吸引ろ過し、ろ過膜を得た。ろ過膜はメンブレンフィルター孔径0.45μm(メルク株式会社製 デュラポア)を用いた。
【0112】
・単層・少層MXene粒子とFeイオンとの接触
次に、硝酸鉄(III)九水和物(和光・富士フィルム株式会社製)を2.020g計り取り、全量が50mLとなるように純水を加え、0.1M硝酸鉄(III)水溶液を作製した。作製した0.1M硝酸鉄(III)水溶液を20mLに前述で作製したMXeneろ過膜に浸し、24時間室温で放置した。24時間後、硝酸鉄(III)水溶液からMXeneろ過膜を取り出し、純水で表面を洗浄したのち、室温でさらに1日放置し乾燥させ、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させ、鉄(III)イオンが導入されたろ過膜を得た。
【0113】
(実施例2)
・単層・少層MXene粒子の調製
MAX粒子としてTiAlC粒子を既知の方法で調製した。このTiAlC粒子(粉末)をLiFと共に9モル/Lの塩酸に添加して(TiAlC粒子1gにつき、LiF 1g、9モル/Lの塩酸10mLとした)、35℃にてスターラーで24時間撹拌して、TiAlC粒子に由来する固体成分を含む固液混合物(懸濁液)を得た。これに対して、純水による洗浄および遠心分離機を用いたデカンテーションによる上澄みの分離除去(上澄みを除いた残りの沈降物を再び洗浄に付す)操作を10回程度繰り返し実施した。そして、沈降物に純水を添加した混合物をオートマチックシェーカーで15分間撹拌し、その後、遠心分離機で5分間の遠心分離操作に付して上澄みと沈降物に分離させ、上澄みを遠心脱水により分離除去した。これにより、上澄みを除いた残りの沈降物に純水を添加することにより希釈して、粗精製スラリーを得た。粗精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneと、層分離(デラミネーション)不足により単層化されていない多層MXeneとを含み得、更に、MXene粒子以外の不純物(未反応のMAX粒子および、エッチングされたA原子に由来する副生成物の結晶物(例えばAlFの結晶物)等)を含むと理解される。
【0114】
上記で得た粗精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、2600×gの相対遠心力(RCF)にて5分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて回収し、精製スラリーを得た。精製スラリーは、MXene粒子として、ほとんどのMXeneがデラミネーション済みの単層MXeneであると理解される。上澄みを除いた残りの沈降物は、その後、使用しなかった。
【0115】
上記で得た精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、3500×gの相対遠心力(RCF)にて120分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて分離除去した。分離除去した上澄みは、その後、使用しなかった。上澄みを除いた残りの沈降物として粘土状物質(クレイ)を得た。これにより、MXeneクレイとして、Ti-水分散体クレイを得た。このMXeneクレイと純水とを適切な量で混合して、固形分濃度(MXene濃度)が約34mg/mLのMXeneスラリーを準備した。
【0116】
・単層・少層MXene粒子を含むスラリーからの膜の形成
MXene水分散体(MXene固形分濃度34mg/mL)10mLをスポイトでとり、二晩吸引ろ過し、ろ過膜を得た。ろ過膜はメンブレンフィルター孔径0.45μm(メルク株式会社製 デュラポア)を用いた。
【0117】
・単層・少層MXene粒子とCoイオンとの接触
次に、酢酸コバルト(II)四水和物(和光・富士フィルム株式会社製)1.25g計り取り、全量が50mLとなるように純水を加え、0.1M酢酸コバルト(II)水溶液を作製した。作製した0.1M酢酸コバルト(II)水溶液20mLに前述で作製したMXeneろ過膜に浸し、24時間室温で放置した。24時間後、酢酸コバルト(II)水溶液からMXeneろ過膜を取り出し、純水で洗浄したのち、室温でさらに1日放置し乾燥させ、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させ、コバルト(II)イオンが導入されたろ過膜を得た。
【0118】
(実施例3)
・単層・少層MXene粒子の調製
MAX粒子としてTiAlC粒子を既知の方法で調製した。このTiAlC粒子(粉末)をLiFと共に9モル/Lの塩酸に添加して(TiAlC粒子1gにつき、LiF 1g、9モル/Lの塩酸10mLとした)、35℃にてスターラーで24時間撹拌して、TiAlC粒子に由来する固体成分を含む固液混合物(懸濁液)を得た。これに対して、純水による洗浄および遠心分離機を用いたデカンテーションによる上澄みの分離除去(上澄みを除いた残りの沈降物を再び洗浄に付す)操作を10回程度繰り返し実施した。そして、沈降物に純水を添加した混合物をオートマチックシェーカーで15分間撹拌し、その後、遠心分離機で5分間の遠心分離操作に付して上澄みと沈降物に分離させ、上澄みを遠心脱水により分離除去した。これにより、上澄みを除いた残りの沈降物に純水を添加することにより希釈して、粗精製スラリーを得た。粗精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneと、層分離(デラミネーション)不足により単層化されていない多層MXeneとを含み得、更に、MXene粒子以外の不純物(未反応のMAX粒子および、エッチングされたA原子に由来する副生成物の結晶物(例えばAlFの結晶物)等)を含むと理解される。
【0119】
上記で得た粗精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、遠心力2600rcfにて5分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて回収し、精製スラリーを得た。精製スラリーは、MXene粒子として、ほとんどのMXeneがデラミネーション済みの単層MXeneであると理解される。上澄みを除いた残りの沈降物は、その後、使用しなかった。
【0120】
・単層・少層MXene粒子とFeイオンとの接触
上記で得た精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、3500×gの相対遠心力(RCF)にて120分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて分離除去した。分離除去した上澄みは、その後、使用しなかった。上澄みを除いた残りの沈降物として粘土状物質(クレイ)を得た。これにより、MXeneクレイとして、Ti-水分散体クレイを得た。このMXeneクレイと純水とを適切な量で混合して、固形分濃度(MXene濃度)が約34mg/mLのMXeneスラリーを準備した。
【0121】
・Feイオンが担持された単層・少層MXene粒子を含むスラリーからの膜の形成
上記で得たMXeneスラリー10mLをスポイトでとり、実施例1と同様に作製した0.1M硝酸鉄(III)水溶液30mLと混合し、その後2晩吸引ろ過し、純水で洗浄したのちろ過膜を得た。ろ過膜はメンブレンフィルター孔径0.45μm(メルク株式会社製 デュラポア)を用いた。この方法で得られた膜はきれいな円形(メンブレンフィルタの形状)の膜が得られた(図4(a))。次に24時間室温で放置し、24時間後、室温でさらに1日放置し、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させ、Fe(III)イオンが導入されたろ過膜を得た。
【0122】
(比較例1)
MAX粒子としてTiAlC粒子を既知の方法で調製した。このTiAlC粒子(粉末)をLiFと共に9モル/Lの塩酸に添加して(TiAlC粒子1gにつき、LiF 1g、9モル/Lの塩酸10mLとした)、35℃にてスターラーで24時間撹拌して、TiAlC粒子に由来する固体成分を含む固液混合物(懸濁液)を得た。これに対して、純水による洗浄および遠心分離機を用いたデカンテーションによる上澄みの分離除去(上澄みを除いた残りの沈降物を再び洗浄に付す)操作を10回程度繰り返し実施した。そして、沈降物に純水を添加した混合物をオートマチックシェーカーで15分間撹拌し、その後、遠心分離機で5分間の遠心分離操作に付して上澄みと沈降物に分離させ、上澄みを遠心脱水により分離除去した。これにより、上澄みを除いた残りの沈降物に純水を添加することにより希釈して、粗精製スラリーを得た。粗精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneと、層分離(デラミネーション)不足により単層化されていない多層MXeneとを含み得、更に、MXene粒子以外の不純物(未反応のMAX粒子および、エッチングされたA原子に由来する副生成物の結晶物(例えばAlFの結晶物)等)を含むと理解される。
【0123】
上記で得た粗精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、2600×gの相対遠心力(RCF)にて5分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて回収し、精製スラリーを得た。精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneを多く含むと理解される。上澄みを除いた残りの沈降物は、その後、使用しなかった。
【0124】
上記で得た精製スラリーを遠心管に入れ、遠心分離機を用いて、3500×gの相対遠心力(RCF)にて120分間の遠心分離を行った。これにより遠心分離された上澄みをデカンテーションにて分離除去した。分離除去した上澄みは、その後、使用しなかった。上澄みを除いた残りの沈降物として粘土状物質(クレイ)を得た。これにより、MXeneクレイとして、Ti-水分散体クレイを得た。このMXeneクレイと純水とを適切な量で混合して、固形分濃度(MXene濃度)が約34mg/mLのMXeneスラリーを準備した。
【0125】
MXene水分散体(MXene固形分濃度34mg/mL)5mLをスポイトでとり、一晩吸引ろ過し、ろ過膜を得た。ろ過膜はメンブレンフィルター孔径0.45μm(メルク株式会社製 デュラポア)を用いた。次に24時間室温で放置し、24時間後、室温でさらに1日放置し、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させ、コントロールのろ過膜を得た。
【0126】
(比較例2)
MAX粒子としてTiAlC粒子を既知の方法で調製した。このTiAlC粒子(粉末)をLiFと共に9モル/Lの塩酸に添加して(TiAlC粒子1gにつき、LiF 1g、9モル/Lの塩酸10mLとした)、35℃にてスターラーで24時間撹拌して、TiAlC粒子に由来する固体成分を含む固液混合物(懸濁液)を得た。これに対して、純水による洗浄および遠心分離機を用いたデカンテーションによる上澄みの分離除去(上澄みを除いた残りの沈降物を再び洗浄に付す)操作を10回程度繰り返し実施した。そして、沈降物に純水を添加した混合物をオートマチックシェーカーで15分間撹拌し、その後、遠心分離機で5分間の遠心分離操作に付して上澄みと沈降物に分離させ、上澄みを遠心脱水により分離除去した。これにより、上澄みを除いた残りの沈降物に純水を添加することにより希釈して、粗精製スラリーを得た。粗精製スラリーは、MXene粒子として、単層MXeneと、層分離(デラミネーション)不足により単層化されていない多層MXeneとを含み得、更に、MXene粒子以外の不純物(未反応のMAX粒子および、エッチングされたA原子に由来する副生成物の結晶物(例えばAlFの結晶物)等)を含むと理解される。
【0127】
上記で得た粗精製スラリー10mLをスポイトでとり、実施例1と同様に作製した0.1M硝酸鉄(III)水溶液30mLと混合し、その後2晩吸引ろ過し、その後純水で洗浄したのちろ過膜を得た。ろ過膜はメンブレンフィルター孔径0.45μm(メルク株式会社製 デュラポア)を用いた。次に24時間室温で放置し、24時間後、室温でさらに1日放置し、その後80℃真空オーブンで一晩乾燥させ、デラミネーションされていないMXene膜にFe(III)イオンが担持されたろ過膜を得た。この方法で得られた膜は、乾燥後に変形し、割れが生じた(図4(b))。
【0128】
〔磁性金属イオン担持MXene膜の評価〕
(導電率の測定)
実施例、比較例のサンプルを用い、導電率を測定するとともに、以下の通り評価した。
【0129】
導電率の測定は、1サンプルにつき、膜中央付近を含む3か所で行った。また導電率の測定には、低抵抗導電率計(株式会社三菱ケミカルアナリティク製 ロレスタAX MCP-T370)を用いた。サンプル(乾燥膜)の厚さはマイクロメーター(株式会社ミツトヨ製MDH-25MB)を用いて測定した。
【0130】
(磁化率の測定)
実施例、比較例のサンプルを用い、磁化率を測定した。
【0131】
磁化率の測定には、振動試料型磁力計(VSM、東英株式会社製VSM-5型)を用いた。実施例1のサンプルは、粉末状にし、カプセル状のサンプルホルダーに入れ磁化率測定を行った。実施例2、3、比較例1、2のサンプルは、膜の状態で磁化率測定を行った。磁化率を測定する際の磁気掃引方向は、実施例1のサンプルでは、カプセルの長軸方向、実施例2、3、比較例2のサンプルでは、膜の平面方向とした。比較例1のサンプルについては、膜の平面方向及び垂直方向のいずれについても磁気掃引を行って磁化率を測定した。最大飽和磁化は、実施例1では0.129emu/cm、実施例2では0.04188emu/cm、実施例3では0.0545emu/cm、比較例1では磁化を検出できず、比較例2では、0.0267emucmであった。
【0132】
現状、磁性体であるか否かは、VSMによる磁気ヒステリシスに基づき判断できる。例えば、最大飽和磁化が、VSMの測定限界である0.01emu/cmより一桁以上大きな値であれば、磁性を確認でき、磁性体であるということができる。
【0133】
実施例1では、最大飽和磁化が0.129emu/cmであり、磁性を示すことが確認された(図5)。デラミネーションによりMXeneが単層・少層MXeneとなっているためか、FeイオンがMXeneの層と層との間に浸透しやすく、FeイオンがMXeneの層にそって配置されやすくなり、また、MXene粒子との接触面積が大きくなった結果、磁性が発現したと推察される。
【0134】
実施例2では、最大飽和磁化が0.04188emu/cmであり、磁性を示すことが確認された。デラミネーションによりMXeneが単層・少層MXeneとなっているためか、Feイオンの場合と同様、CoイオンもMXeneの層と層との間に浸透しやすくイオンがMXeneの層にそって配置されやすくなり、また、MXene粒子との接触面積が大きくなった結果、磁性が発現したと推察される。
【0135】
実施例3では、最大飽和磁化が0.0545emu/cmであり、磁性を確認することができた。また、導電率は2092S/cmであり、導電性を示すことが確認された。また、MXeneを用いた材料において、導電性とMXeneの層の配向性とは通常相関していることから、導電性を示すことにより、MXeneの層の配向性が良好であることも示唆される。
【0136】
一方、比較例1は、磁性金属イオンを含まない例であり、膜の平面方向、垂直方向のいずれに磁気掃引した場合においても、磁性を確認することはできなかった。
【0137】
また、比較例2では、最大飽和磁化は0.0267emu/cmであり、実施例1~3と同様、磁性金属イオンであるFeイオンを同程度含むにも関わらず、磁性が弱くなることが確認された。また、導電率は、362S/cmと低く、MXeneの層の配向性が良好でないことも示唆された。さらに、デラミネーションされていないMXeneを用いているためか、成膜性も良好でなかった。
【0138】
通常、ナノ構造に由来する磁性はそれほど強くなく、VSMで確認できる程度の最大飽和磁化が得られない場合もありうる。そのため、磁性金属イオンの導入により磁気特性が得られる点は、注目される特性であるといえる。さらに、本開示による磁性材料では、MXeneの膜を形成した後であっても磁性金属イオンを導入できるとともに、磁性金属イオンを導入したMXeneを用いても、膜の形成が可能であって、MXene自体の導電性や、MXeneの層の配向性、成膜性も失われない。以上より、本開示による磁性材料は、ナノメートルスケールのEMIシールドや、磁気記憶媒体として有用であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の磁性材料は、任意の適切な用途に利用され得、例えば電気デバイスにおける電極や電磁シールド、電極として、例えば大容量のキャパシタ、バッテリ、低いインピーダンスの生体電極、高感度センサ、アンテナ、電磁シールドとして、例えば高遮蔽EMIシールドに特に好ましく使用され得る。
【符号の説明】
【0140】
1a、1b 層本体(M層)
3a、5a、3b、5b 修飾又は終端T
7a、7b、7d MXene層
10a、10b、10c MXene粒子
10d 遷移元素含有MXene粒子
41 Feイオン
50 チタン原子
51 酸素原子
図1
図2
図3
図4
図5