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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】モジュールの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/14 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B62D65/14 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023539499
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2021029192
(87)【国際公開番号】W WO2023012986
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】澤田 康宏
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011692(JP,A)
【文献】特許第5302797(JP,B2)
【文献】特公平05-041471(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に停止させた車体に、作業ロボットで把持したモジュールを取り付ける方法であって、
前記車体の前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向として、前記車体及び前記モジュールが、夫々の左右に、X方向に相対向する車体側接合部及びモジュール側接合部を有し、
前記車体に対して、左右の前記車体側接合部のX,Y,Z方向の位置、及びX,Y,Z軸回りの角度を計測して、その計測値と前記車体の基準位置との差である車体側誤差を検出する第1工程と、
前記作業ロボットで把持した前記モジュールに対して、左右の前記モジュール側接合部のX,Y,Z方向の位置、及びX,Y,Z軸回りの角度を計測して、その計測値と前記モジュールの基準位置との差であるモジュール側誤差を検出する第2工程と、
前記車体内に前記モジュールを移動させて、前記車体側接合部と前記モジュール側接合部とを相対向させると共に、前記車体側誤差及び前記モジュール側誤差に基づいて前記モジュールのX,Y,Z方向の位置及びX,Y,Z軸回りの角度を修正する第3工程と、
前記第3工程後において、前記車体側誤差を使用しつつ前記車体の左右両側面のY方向の位置を計測して前記車体のY方向の車体中心を検出する第4工程と、
前記第3工程後において、前記車体側誤差を使用しつつ前記モジュールの左右両側面のY方向の位置を計測して前記モジュールのY方向のモジュール中心を検出する第5工程と、
前記第4工程で検出した前記車体中心に、前記第5工程で検出した前記モジュール中心が一致するように、前記モジュールの位置を修正する第6工程とを備えたことを特徴とするモジュールの取り付け方法。
【請求項2】
前記作業ロボットで把持した前記モジュールに対向する固定部位に配置した非接触式の固定側測距センサと、前記車体の左右両側に配置した第2及び第3の作業ロボットと、前記第2及び第3の作業ロボットの夫々のハンドに設けた非接触式の可動側測距センサとを用い、
前記固定側測距センサにより、前記第2工程における前記モジュール側接合部の計測を行うと共に、
前記第2及び第3の作業ロボットの夫々の前記可動側測距センサにより、前記第1工程における前記車体側接合部の計測、前記第4工程における前記車体の左右両側面の計測、及び前記第5工程における前記モジュールの左右両側面の計測を行うことを特徴とする請求項1に記載のモジュールの取り付け方法。
【請求項3】
前記可動側測距センサ及び前記固定側測距センサの夫々が、二次元画像センサと、距離センサとを備えていることを特徴とする請求項2に記載のモジュールの取り付け方法。
【請求項4】
前記車体における左右の前記車体側接合部の少なくとも一方に、X方向から当接する接触センサを用い、
前記車体に対する前記モジュールのセンタリングを行う前に、前記車体側接合部のX方向の位置を前記接触センサで検出し、
前記車体内に移動させた前記モジュールの前記モジュール側接合部のX方向の位置を前記接触センサで検出することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のモジュール取り付け方法。
【請求項5】
前記車体及び前記モジュールの夫々の左右両側面に、取り付け時に合致する車体側目標部位及びモジュール側目標部位を設定し、
前記第4工程において、前記車体のY方向の前記車体中心を検出すると共に、前記車体側目標部位のZ方向の位置を計測し、
前記第5工程において、前記モジュールのY方向の前記モジュール中心を検出すると共に、前記モジュール側目標部位のZ方向の位置を検出し、
前記第6工程において、前記車体中心に前記モジュール中心が一致するように、前記モジュールの左右の位置を修正すると共に、
記車体側目標部位に前記モジュール側目標部位が一致するように、前記モジュールの上下の位置を修正することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のモジュールの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の製造ラインにおいて、所定位置に搬送された車体に、インストルメントパネル等の各種モジュールを取り付ける際に用いられるモジュールの取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したようなモジュールの取り付けとしては、例えば、特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載の取り付け方法は、車両の車室内にインストルメントパネル(以下、「インパネ」と略記する。)を組み付けるための方法である。上記取り付け方法は、車両における対称位置で左右一対の車体側計測基準部の車幅方向位置を計測し、さらに、車室内に搬入される前のインパネにおける対称位置で左右一対のインパネ側計測基準部の車幅方向位置を計測する。
【0003】
そして、上記取り付け方法は、上記した夫々の計測により得た車両の平面視車幅方向中心位置と、インパネの平面視車幅方向位置との中心差を求め、その中心差に基づいて、車室内に搬入されたインパネの車幅方向位置を調整した後、車体にインパネを組み付けて固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許第5302797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の取り付け方法では、所定位置に停止した車両の位置誤差や、作業ロボットに把持されたインパネの位置誤差を考慮していない。このため、上記従来の取り付け方法では、例えば、所定位置に停止した車両や作業ロボットに把持されたインパネが斜めになった場合、充分なセンタリング精度を得ることが困難であるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、所定位置に停止させた車体や作業ロボットに把持されたモジュールに位置誤差がある場合でも、その位置誤差を補正して充分なセンタリング精度を得ることができるモジュールの取り付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わるモジュールの取り付け方法は、所定位置に停止させた車体に、作業ロボットで把持したモジュールを取り付けるに際し、車体の前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向として、車体及び前記モジュールが、夫々の左右に、X方向に相対向する車体側接合部及びモジュール側接合部を有する。
【0008】
上記の取り付け方法は、車体に対して、左右の車体側接合部のX,Y,Z方向の位置、及びX,Y,Z軸回りの角度を計測して、その計測値と前記車体の基準位置との差である車体側誤差(補正値)を検出する第1工程と、作業ロボットで把持したモジュールに対して、左右のモジュール側接合部のX,Y,Z方向の位置、及びX,Y,Z軸回りの角度を計測して、その計測値とモジュールの基準位置との差であるモジュール側誤差(補正値)を検出する第2工程と、車体内にモジュールを移動させて、車体側接合部とモジュール側接合部とを相対向させると共に、車体側誤差及び前記モジュール側誤差に基づいてモジュールのX,Y,Z方向の位置及びX,Y,Z軸回りの角度を修正(補正)する第3工程とを有する。
【0009】
また、上記の取り付け方法は、第3工程後において、車体側誤差を使用しつつ車体の左右両側面のY方向の位置を計測して車体のY方向の車体中心を検出する第4工程と、第3工程後において、車体側誤差を使用しつつモジュールの左右両側面のY方向の位置を計測してモジュールのY方向のモジュール中心を検出する第5工程と、第4工程で検出した車体中心に、第5工程で検出したモジュール中心が一致するように、モジュールの位置を修正する第6工程とを備えたことを特徴としている。なお、X,Y,Z軸回りの角度の計測値には、X,Y,Z方向の位置を用いて演算した値も含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係わるモジュールの取り付け方法は、上記構成を採用したことにより、所定位置に停止させた車体や作業ロボットに把持されたモジュールに位置誤差がある場合でも、その位置誤差を補正して充分なセンタリング精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係わるモジュールの取り付け方法の第1実施形態を説明するフローチャートである。
図2】車体側接合部の計測を示す平面図である。
図3】モジュール側接合部の計測を示す平面図である。
図4】車体及びモジュールの左右両側面の計測を示す平面図である。
図5】接触式センサによるモジュール側接合部の計測を示す平面図である。
図6】モジュール取り付けの最終工程を段階的に示す平面図である。
図7】本発明に係わるモジュールの取り付け方法の第2実施形態において、車体及びモジュールの側面の計測を示す説明図である。
図8】第2実施形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈第1実施形態〉
図1図6は、本発明に係わるモジュールの取り付け方法の一実施形態を説明する図である。このモジュールの取り付け方法は、車両の製造ラインにおいて、所定位置に停止させた車体Bに、作業ロボットで把持したモジュールMを取り付ける方法である。この実施形態では、車体Bに、インストルメントパネル等を含むコックピットモジュール(以下、単に「モジュール」と記載する。)Mを取り付ける場合を例示している。
【0013】
本発明に係わるモジュールの取り付け方法では、車体Bの前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向とし、X,Y,Z軸回りの角度をW,P,Rとしている。さらに、車体B及びモジュールMは、夫々の左右対称位置に、互いにX方向に相対向する車体側接合部Ba,Ba及びモジュール側接合部Ma,Maを有している。
【0014】
また、本発明に係わるモジュールの取り付け方法では、モジュールMを把持する第1作業ロボットR1と、車体Bの左右両側に配置した第2及び第3の作業ロボットR2,R3を用いる。第1作業ロボットR1は、ハンドに、モジュールMを把持・解放するクランプ機構を有する。第2及び第3のロボットR2,R3は、ハンドに、後記する各種のセンサ類やボルトランナ等の工具類を有する。各作業ロボットR1~R3は、多軸制御型の周知のものであり、X,Y,Z方向の及び各軸回り(角度W,P,R)にハンドを制御することができる。
【0015】
上記の取り付け方法は、図1に示すように、車体Bに対して、左右の車体側接合部BaのX,Y,Z方向の位置、及びX,Y,Z軸回りの角度W,P,Rを計測して、その計測値と車体Bの基準位置との差である車体側誤差(補正値)を検出する第1工程S1を備えている。この際、車体Bの基準位置は、車体Bのマスターモデルを用いて、予め計測しておく。なお、第1工程S1の「第1」は、他の工程と区別するための番号であって、工程の順番を示すものではない。この番号は以下の説明においても同様である。
【0016】
第1工程S1では、図2に示すように、車体Bの左右に配置した第2及び第3の作業ロボットR2,R3と、これらのハンドに装着した非接触式の測距センサを用いる。測距センサは、二次元画像センサ(カメラ)A1と、レーザを用いた距離センサA2との組み合わせである。二次元画像センサA1は、その画像から、主として車体側接合部BaのY,Z方向の位置を検出し得る。距離センサA2は、その測定値から、主として車体側接合部MaのX方向の位置を検出し得る。
【0017】
また、測距センサは、作業ロボットR2,R3とともに車体Bの左右に配置してあるので、双方のデータから車体側接合部Baの各軸回りの角度W,P,Rを算出することができる。車体側接合部Baは、車体後方に向けて突出するロケートピン1を有する。第1工程S1において車体側誤差を検出すると、図1に示すステップS21においてボルト1の締結位置を算出する。
【0018】
次に、上記の取り付け方法は、図1に示すステップS11においてモジュールMを把持する。そして、取り付け方法は、左右のモジュール側接合部MaのX,Y,Z方向の位置、及び各軸回りの角度W,P,Rを計測して、その計測値とモジュールMの基準位置との差であるモジュール側誤差(補正値)を検出する第2工程S12を備えている。この際、モジュールMの基準位置は、モジュールMのマスターモデルを用いて、予め計測しておく。
【0019】
第2工程S12では、図3に示すように、作業ロボットR1により把持したモジュールMに対して、モジュール側接合部Maに対向する固定部位に配置した非接触式の測距センサを用いる。測距センサは、第2及び第3の作業ロボットR2,R3に装着したものと同様に、二次元画像センサA1と距離センサA2の組み合わせであり、モジュール側接合部MaのX,Y,Z方向の位置を検出すると共に、これらのデータから各軸回りの角度W,P,Rを算出し得る。なお、図示例のモジュール側接合部Maは、車体側接合部Baに相対向するフランジであり、ロケートピン1の挿通穴(図示せず)を有する。
【0020】
次に、上記の取り付け方法は、図1に示すステップS13において車体B内にモジュールMを移動させた後、車体側接合部Baとモジュール側接合部Maとを相対向させると共に、車体側誤差及びモジュール側誤差に基づいてモジュールのX,Y,Z方向の位置及び各軸回りの角度W,P,Rを修正する第3工程S22を備えている。この第3工程22では、車体側誤差及びモジュール側誤差を補正値としてモジュール搭載位置を算出し、その算出結果を第1作業ロボットR1の動作指令とする。
【0021】
また、上記の取り付け方法は、車体Bにおける左右の車体側接合部Baの少なくとも一方に、X方向から当接する接触センサA3を用い、車体Bに対するモジュールMのセンタリングを行う前に、車体側接合部BaのX方向の位置を接触センサA3で検出し、車体B内に移動させたモジュールMのモジュール側接合部MaのX方向の位置を接触センサA3で検出する。この実施形態では、図1に示すステップS2において車体側接合部BaのX方向の位置を接触センサA3で検出し、後に、図1に示すステップS17においてモジュール側接合部MaのX方向の位置を接触センサA3で検出する。
【0022】
上記の取り付け方法では、図4に示すように、第2作業ロボットR2のハンドに接触センサA3が装着してある。この接触センサA3による計測は、第2及び第3の作業ロボットR2,R3を用いて、左右の車体側接合部Ba,Baを計測しても構わないが、第1作業ロボットR1がモジュールMを片持ち状態で保持しているので、ハンドに近い方の安定した車体側接合部Baを計測すれば充分である。
【0023】
次に、上記の取り付け方法は、センタリング工程として、第3工程S22後において、第1工程S1で求めた車体側誤差を使用しつつ車体Bにおける左右両側面のY方向の位置を計測して、車体BのY方向の車体中心Bcを検出する第4工程S3を有する。また、センタリング工程は、第3工程S22後において、第1工程S1で求めた車体側誤差を使用しつつモジュールMにおける左右両側面のY方向の位置を計測して、モジュールMのY方向のモジュール中心Mcを検出する第5工程S16を有する。さらに、センタリング工程は、第4工程S3で検出した車体中心Bcに、第5工程S16で検出したモジュール中心Mcが一致するように、モジュールMの位置を修正する第6工程S24を有する。
【0024】
第4工程S3では、図4に示すように、第2及び第3の作業ロボットR2,R3及び夫々のハンドに装着した測距センサ(A1,A2)を用い、車体Bの左右両側面を計測する。この際、車体Bの位置には、第1工程S1で計測した車体側誤差が含まれている。そこで、第4工程S3では、補正値である車体側誤差を使用して車体中心Bcを検出している。
【0025】
また、第5工程S16では、図4に示すように、同じ測距センサ(A1,A2)を用いて車体Bの左右両側面を計測する。この際、モジュールMの位置は、第3工程S3で修正されているが、車体側誤差を含む車体Bに対して修正されている。そこで、第5工程S16では、第4工程S3と同じ補正値である車体側誤差を使用してモジュール中心Mcを検出している。
【0026】
なお、車体B及びモジュールMの被計測部位は、とくに限定されないが、左右対称位置における凹凸や穴などの識別しやすい部位であることが望ましく、具体的には、ボディサイドやモジュールMに形成したロケート穴などを利用すれば、周辺機器の影響を受けずに正確な計測を行うことが可能である。
【0027】
第6工程S24では、図4に示すように、第4工程S3及び第5工程S16により計測した車体中心Bcとモジュール中心Mcとの差Dを算出し、その差Dが解消されるように、すなわち、図5に示す如く車体中心Bcにモジュール中心Mcが一致するように第1作業ロボットR1に動作指令を出力する。
【0028】
また、上記の取り付け方法では、先のステップS2における車体側接合部BaのX方向の位置検出に対し、図1に示すステップS17において、接触センサA3を用いて車体B内に移動させたモジュールMにおけるモジュール側接合部MaのX方向の位置検出を行う。そして、ステップS25において車体側接合部Baの位置からモジュール側接合部MaまでのX方向の距離(X方向の搭載位置)を算出し、第1作業ロボットR1に動作指令を出力する。
【0029】
これにより、図1に示すステップS4及びS5において、車体Bに対するモジュールMの最終的な搭載及び固定が行われる。具体的には、上記の取り付け方法では、図5に示すようにモジュールMのセンタリングが完了した時点で、車体B内に投入されたモジュールMが、車体側接合部Baとモジュール側接合部Maとが所定距離をおいて離間する位置まで前進している。
【0030】
そこで、上記の取り付け方法では、図5に示すように、モジュール側接合部MaのX方向の位置を接触センサA3で計測(ステップS17)することで、予め計測(ステップS2)した車体側接合部Baの位置からジュール側接合部MaのX方向の位置までの距離を算出(ステップS25)する。
【0031】
そして、上記の取り付け方法は、図6に示すように、X方向の算出距離分だけモジュールMを前進させる。この前進動作は、モジュールMを把持している第1作業ロボットR1により行う。
【0032】
この実施形態の取り付け方法では、図6の第1段(最上段)に示すように、モジュールMを前進させると、図6の第2段に示すように、モジュールMに固定したシール部品2が車体Bに当接する。次いで、図6の第3段に示すように、車体側接合部Baにモジュール側接合部Maがゼロタッチとなった時点で、シール部品2が圧縮され且つモジュールMの前進を停止する。これにより、車体側接合部Baにモジュール側接合部Maが当接し、車体側接合部Baのロケートピン1が、モジュール側接合部Maの挿通孔(図示せず)に貫通した状態になる。
【0033】
その後、上記の取り付け方法は、図6の第4段(最下段)に示すように、モジュール側接合部Maに通したボルト3を車体側接合部Baに螺着することで、モジュールMの固定が完了する(ステップS5)。ボルト3の螺着は、第2作業ロボットR2のハンドに装着したボルトランナにより行う。こののち、車体Bは次工程に搬送される。
【0034】
上記実施形態で説明したモジュールの取り付け方法は、第1工程S1、第2工程S12、第3工程S22、第4工程S3、第5工程S16、及び第6工程S24を経ることにより、所定位置に停止させた車体Bや作業ロボットR1に把持されたモジュールMに初期の位置誤差がある場合でも、誤差のばらつきに関わらず高精度な計測が可能であり、位置誤差を補正して充分なセンタリング精度を得ることができる。
【0035】
すなわち、上記の取り付け方法では、第1工程S1~第3工程S22により、車体Bに対するモジュールMの位置精度をある程度確保することができるが、その後、第4工程S3及び第5工程S16において同じ車体側誤差(補正値)を使用して車体中心Bc及びモジュール中心Mcを検出し、第6工程S24に移行することにより、ロボットアームの撓み等の影響を解消してより正確なセンタリングを実現する。
【0036】
ここで、車体Bでは、上記のモジュール(コックピットモジュール)Mの左右にドアトリムを配置するが、人為的な作業でモジュールMを取り付ける場合でも、モジュールMと左右のドアトリムとの間隔(隙間)や高さを左右均一にすることが難しい。これに対して、上記のモジュールの取り付け方法では、高いセンタリング精度が得られるので、自動組立により、モジュールMと各ドアトリムとの間隔を段差の無い左右均一な状態にすることができ、車両の品質向上に貢献することができる。
【0037】
また、上記の取り付け方法は、車体B及びモジュールMに対して、作業ロボットR2,R3の制御精度や測距センサ(A1,A2)の計測精度を同じ環境・条件にして計測するので、高精度の計測が可能であり、僅かに残る誤差のばらつきの影響を受けることなく、常に高精度のセンタリングを行うことができる。
【0038】
さらに、上記の取り付け方法は、左右一対の測距センサとして、二次元画像センサA1及び距離センサA2の組み合わせを採用したので、X,Y,Zの各方向の位置、及び各軸回りの角度W,P,Rを計測(算出)することができ、1つの製造ラインで複数車種の製造を行う混流生産にも容易に対応することができる。
【0039】
さらに、上記の取り付け方法は、車体Bにおける左右の車体側接合部Baの少なくとも一方に、X方向から当接する接触センサA3を用い、車体側接合部BaのX方向の位置、及び車体B内でのモジュール側接合部MaのX方向の位置を同じ接触センサA3で検出する。これにより、上記の取り付け方法は、最終の組付けにおいて、車体側接合部Baやモジュール側接合部Maに余計な外力を与えることなく、双方の接合部Ba,Maを正確に位置決めして結合することができる。
【0040】
〈第2実施形態〉
図7及び図8は、本発明に係わるモジュールの取り付け方法の第2実施形態を説明する図である。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成部位に同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0041】
この実施形態のモジュールの取り付け方法は、図7に示すように、第1実施形態と同様の基本構成を備えると共に、車体B及びモジュールの夫々の左右両側面に、取り付け時に合致する車体側目標部位BT及びモジュール側目標部位MTを設定する。この実施形態における車体側目標部位BTは、ドアサイドパネルのドア取り付け面に設けたロケート穴BTaと、その近傍の平坦部BTbである。他方、モジュール側目標部位MTは、ドアトリムとの合わせ部近傍に設けたトリム取り付け穴である。
【0042】
この実施形態の取り付け方法では、第1作業ロボットR1が、モジュールMを片持ち状態で把持している。そこで、上記の取り付け方法では、図1に示すステップS14においてハンド対面側のモジュール側接合部Maの計測を行い、ステップS23においてハンド連結位置を算出し、ステップS15において、図示しない別の作業ロボットによりモジュールMを把持して第1作業ロボットR1をサポートする。これにより、第1作業ロボットR1を構成するアームの撓み等の影響を解消して、より正確な取り付けを実現する。なお、モジュールMが安定的に把持されている場合には、ステップS14,S23,S15を省略しても良い。
【0043】
上記の取り付け方法は、図8に示すように、第4工程S3のステップS3aにおいて、車体のY方向の車体中心Bcを検出すると共に、次のステップS3bにおいて車体側目標部位BTのZ方向の位置(高さ)を計測する。また、取り付け方法は、第5工程S16のステップS16aにおいて、モジュールMのY方向のモジュール中心Mcを検出すると共に、次のステップS16bにおいてモジュール側目標部位BTのZ方向の位置(高さ)を検出する。
【0044】
上記の取り付け方法では、測距センサの距離センサA2により、車体側目標部位BTの平坦部BTbの位置や、モジュール側目標部位BTの位置を計測する。なお、とくに車体Bに対しては、二次元画像センサA1により車体側目標部位BTの取り付け穴BTa及び平坦部BTbの位置を確認したうえで、距離センサA2により平坦部BTbの位置を計測することで、測定精度を高めるようにしても良い。
【0045】
そして、上記の取り付け方向は、第6工程S24において、車体中心Bcとモジュール中心Mcとを算出し、車体中心Bにモジュール中心Mcが一致するように、第1作業ロボットR1に動作指令を出力し、モジュールの左右位置を修正する。その一方で、第6工程S24では、車体側目標部位BT及びモジュール側目標部位MTのZ方向の位置(高さ)を算出し、車体側目標部位BTにモジュール側目標部位MTが一致するように、第1作業ロボットR1に動作指令を出力し、モジュールの上下位置を修正する。この際、上記の取り付け方法では、Z方向の位置合わせをより高精度に行うために、ステップS2で実施いた接触センサA3の計測値を第3工程S22に入力している。
【0046】
上記第2実施形態のモジュールの取り付け方法は、第1実施形態と同様に、所定位置に停止させた車体Bや作業ロボットR1に把持されたモジュールMに初期の位置誤差がある場合でも、位置誤差を補正して充分なセンタリング精度を得ることができる。
【0047】
また、上記の取り付け方法は、第1実施形態に加えて、第4工程S3で車体側目標部位BTのZ方向の位置を計測し(S3b)、第5工程S16でモジュール側目標部位MTのZ方向の位置を検出し(S16b)、第6工程S24で車体側目標部位BTにモジュール側目標部位MTが一致するように、モジュールMの上下位置を修正している。
【0048】
これにより、上記の取り付け方法は、Y及びZ方向におけるセンタリング精度をより一層向上させることができる。また、上記の取り付け方法は、上記のセンタリング精度の向上に伴って、車体Bに装着したロケートピン(図2中の符号1)を廃止することができ、工数の削減や製造コストの低減を実現する。
【0049】
なお、本発明に係わるモジュールの取り付け方法は、その構成が上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能であり、モジュールとしては、各実施形態で説明したコックピットモジュールの他、フロントエンドモジュール、バックドアモジュール、ヘッドランプ、リアコンビランプ、及びフードなどの各種モジュールや各種部品の取り付けに適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
A1 二次元画像センサ(非接触式の測距センサ)
A2 距離センサ(非接触式の測距センサ)
A3 接触式センサ
B 車体
Ba 車体側接合部
Bc 車体中心
BT 車体側目標部位
M モジュール
Ma モジュール側接合部
Mc モジュール中心
MT モジュール側目標部位
R1 第1作業ロボット
R2 第2作業ロボット
R3 第3作業ロボット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8