(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】天井搬送車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/06 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
B61B13/06 B
(21)【出願番号】P 2023539642
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016085
(87)【国際公開番号】W WO2023013172
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021126800
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-359436(JP,A)
【文献】特開平10-250978(JP,A)
【文献】特開2017-145134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を保持する本体部が走行部に懸垂支持される天井搬送車であって、
前記走行部に懸垂されるベース部と、
前記本体部に設けられると共に、前記ベース部を水平方向に延在する回動軸を介して回動可能に支持する支持部と、
前記回動軸が延在する第一方向及び鉛直方向の両方に直交する第二方向において、前記回動軸を挟むように前記ベース部に設けられると共に、前記本体部に接触するように構成される一対のダンパーと、を備える、天井搬送車。
【請求項2】
前記回動軸は、前記走行部の走行方向及び鉛直方向の両方に直交する方向に延在するように配置されると共に、前記走行部の走行方向において前記本体部の中央部に配置されており、
前記一対のダンパーは、前記走行部の走行方向において前記回動軸を挟むように設けられる、請求項1記載の天井搬送車。
【請求項3】
前記ベース部は、前記走行部から鉛直方向下方に向かって延在する一対の懸垂部材を介して前記走行部に懸垂されており、
前記ベース部は、前記懸垂部材の延在方向を回動軸とする軸周りに回動可能に前記懸垂部材を支持する、請求項2記載の天井搬送車。
【請求項4】
前記走行部は、走行レールに配置された磁気プレートとの間で発生する磁力によって加速又は制動させる走行駆動部を有し、
鉛直方向から見た平面視において前記一対の懸垂部材と前記一対のダンパーとは、互いに重ならないように配置されている、請求項3記載の天井搬送車。
【請求項5】
前記ダンパーは、ゴム部材とバネ部材とを有する、請求項1~4の何れか一項記載の天井搬送車。
【請求項6】
前記支持部は、ゴムブッシュを介して前記回動軸を回動可能に支持する、請求項1~5の何れか一項記載の天井搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、天井搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、台車と、台車に対して防振用のダンパーを介して取り付けられる無人搬送車本体と、無人搬送車本体に取り付けられた移載装置と、を備える、無人搬送車が開示されている。特許文献1の無人搬送車では、走行中に物品に伝わる振動を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の無人搬送車によれば走行中に物品(被搬送物)に伝わる振動を低減することができるものの、被搬送物には揺れが生じるおそれがある。特に、被搬送物を保持する本体部が走行部に懸垂支持される構成の天井搬送車では、被搬送物に生じる揺れが大きくなる。
【0005】
そこで、本発明の一側面の目的は、走行部からの振動が被搬送物に伝播するのを抑制しつつ、かつ被搬送物に揺れが生じることを抑制できる天井搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る天井搬送車は、搬送物を保持する本体部が走行部に懸垂支持される天井搬送車であって、走行部に懸垂されるベース部と、本体部に設けられると共に、ベース部を水平方向に延在する回動軸を介して回動可能に支持する支持部と、回動軸が延在する第一方向及び鉛直方向の両方に直交する第二方向において、回動軸を挟むようにベース部に設けられると共に、本体部に接触するように構成される一対のダンパーと、を備える。
【0007】
この構成の天井搬送車では、走行部から伝播される振動が本体部に対して回動可能に支持されるベース部によって吸収されると共に、本体部と走行部との相対位置関係(走行部に対する本体部の姿勢)がダンパーによって安定的に維持される。これらの結果、走行部からの振動が被搬送物に伝播するのを抑制しつつ、かつ被搬送物に揺れが生じることを抑制できる。
【0008】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、回動軸は、走行部の走行方向及び鉛直方向の両方に直交する方向に延在するように配置されると共に、走行部の走行方向において本体部の中央部に配置されており、一対のダンパーは、走行部の走行方向において回動軸を挟むように設けられてもよい。この構成では、本体部に対して走行部の角度変化を許容するにあたり、走行部の走行方向にのみ角度変化が許容されるので、走行方向に直交する左右方向(横方向)への被搬送物の移載時に本体部が傾くことを最小限に留めることができる。
【0009】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、ベース部は、走行部から鉛直方向下方に向かって延在する一対の懸垂部材を介して走行部に懸垂されており、ベース部は、懸垂部材の延在方向を回動軸とする軸周りに回動可能に懸垂部材を支持してもよい。この構成では、懸垂部材において走行部に対する取付部分とベース部に対する取付部分との間にねじれ応力が生じることを低減できる。
【0010】
本発明の一側面に係る天井搬送車の走行部は、走行レールに配置された磁気プレートとの間で発生する磁力によって加速又は制動させる走行駆動部を有していてもよい。このような走行駆動部を有する天井走行車では、走行駆動部の一部である電磁石(LDM(Linear DC Motor))と磁気プレートとが微小隙間を介して配置されるので、本体部の姿勢の変化によって走行部が上方に押し上げられると、走行駆動部と磁気プレートとが衝突するおそれがある。この構成の天井搬送車では、本体部に直接接触するダンパーと走行部に接続される懸垂部材とが平面視において互いに重ならないように配置されるので、本体部の姿勢の変化がダイレクトに走行部を押し上げることを抑制できる。この結果、走行駆動部と磁気プレートとが衝突するおそれを低減できる。
【0011】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、ダンパーは、ゴム部材とバネ部材とを有してもよい。この構成では、バネ部材を圧縮することによってダンパーに生じさせる与圧の調整を容易に行うことができるので、本体部と走行部との相対位置関係をより安定的に維持することができる。
【0012】
本発明の一側面に係る天井搬送車では、支持部は、ゴムブッシュを介して回動軸を回動可能に支持してもよい。この構成によれば、回動軸の回動方向における振動だけでなく、その他の方向における振動についても、走行部からの振動が被搬送物に伝播するのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、走行部からの振動が被搬送物に伝播するのを抑制しつつ、かつ被搬送物に揺れが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る天井搬送車を側面から見た側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の天井搬送車の本体フレームを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、防振ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、防振ユニットを側面から見た側面図である。
【
図5】
図5は、防振ユニットを前後方向に沿って切断した断面図である。
【
図6】
図6は、ダンパーの内部構成を示した断面斜視図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)のそれぞれは、与圧が付与されたダンパーの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して一実施形態に係る天井搬送車1について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示される天井搬送車1は、クリーンルームの天井等、床面より高い位置に設けられる走行レールRに沿って走行する。天井搬送車1は、例えば保管設備と所定のロードポートとの間で被搬送物90を搬送する。被搬送物90の例には、複数の半導体ウェハを格納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びガラス基板を格納するレチクルポッド等のような容器、並びに一般部品等が含まれる。上記の容器は、天井搬送車1に保持されるフランジ98を有している。
【0017】
以下の説明では、説明の便宜のため、
図1における左右方向(X軸方向)を天井搬送車1の前後方向(第二方向)とする。
図1における上下方向(Z軸方向)を天井搬送車1の上下方向(鉛直方向)方向とする。
図1における奥行方向(Y軸方向)を天井搬送車1の左右方向又は幅方向(第一方向)とする。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに直交する。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、天井搬送車1は、走行部2と、本体部3と、昇降部10と、を備えている。走行部2は、天井搬送車1を走行レールRに沿って移動させる。走行部2は、走行レールR内に配置されている。
【0019】
走行部2は、前方走行体2Aと、後方走行体2Bと、を有している。前方走行体2Aに設けられる連結部2Dと後方走行体2Bに設けられる連結部2Dとは、連結軸2Eによって回動可能に連結されている。前方走行体2A及び後方走行体2Bのそれぞれには、走行ローラ2C,2Cと、走行駆動部2M,2Mと、が設けられている。本実施形態の走行駆動部2Mは、走行レールRの上面に配置された磁気プレートPとの間で発生する磁力によって、天井搬送車1を加速又は制動させるLDM(Linear DC Motor)である。
【0020】
本体部3は、走行部2に懸垂支持されている。より詳細には、走行部2から鉛直方向下方に延在する一対の懸垂部材2F,2Fが本体部3の本体フレーム4に設けられる防振ユニット20に接続されることによって、本体部3は、走行部2に懸垂支持されている。なお、防振ユニット20の詳細については、後段にて詳述する。本体部3は、本体フレーム4と、水平駆動部5と、回転駆動部6と、昇降駆動部7と、昇降部10と、一対のカバー8,8と、コントローラ80と、を有している。
【0021】
水平駆動部5は、本体フレーム4の下部に固定されている。水平駆動部5は、回転駆動部6、昇降駆動部7及び昇降部10を、水平面内で走行レールRの延在方向に直交する方向(左右方向)に移動させる。回転駆動部6は、昇降駆動部7及び昇降部10を、水平面内で回転させる。昇降駆動部7は、四本のベルト9の巻き上げ及び繰り出しにより昇降部10を昇降させる。なお、昇降駆動部7におけるベルト9は、ワイヤ及びロープ等、適宜の吊持部材を用いてもよい。
【0022】
昇降部10は、昇降駆動部7によって昇降可能に設けられており、天井搬送車1における昇降台として機能している。昇降部10は、被搬送物90を把持する保持装置11を有すると共に、本体部としての水平駆動部5、回転駆動部6及び昇降駆動部7に対してベルト9によって昇降される。保持装置11は、被搬送物90を保持する。保持装置11は、L字状に形成された一対のアーム12,12と、各アーム12,12に固定された爪部13,13と、一対のアーム12,12を開閉させる開閉機構15と、を備えている。
【0023】
開閉機構15は、一対のアーム12,12を、互いに近接する方向及び互いに離間する方向に移動させる。一対のアーム12,12は、開閉機構15の動作によって前後方向に進退する。これにより、アーム12,12に固定された一対の爪部13,13が開閉する。
【0024】
本実施形態では、一対の爪部13,13が開状態のときに、爪部13の保持面がフランジ98の下面の高さより下方となるように、保持装置11(昇降部10)の高さ位置が調整(下降)される。そして、この状態で一対の爪部13,13が閉状態となることで、爪部13,13の保持面がフランジ98の下面の下方へ進出し、この状態で昇降部10を上昇させることにより、一対の爪部13,13によってフランジ98が保持(把持)され、被搬送物90の支持が行われる。
【0025】
一対のカバー8,8は、水平駆動部5、回転駆動部6、昇降駆動部7、昇降部10及び保持装置11を覆うように、走行方向の前後に設けられている。一対のカバー8,8は、昇降部10が上昇端まで上昇した状態において保持装置11の下方に、被搬送物90が収容される空間を形成している。一対のカバー8,8のそれぞれは、落下防止機構8Aと、揺れ抑制機構8Bと、を有している。落下防止機構8Aは、昇降部10が上昇端まで上昇した状態において保持装置11に保持された被搬送物90の落下を防止する。揺れ抑制機構8Bは、走行時における保持装置11に保持された被搬送物90の天井搬送車1の前後方向(走行方向)及び左右方向の揺れを抑制する。
【0026】
コントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。コントローラ80は、天井搬送車1における各種動作を制御する。具体的には、コントローラ80は、走行部2と、水平駆動部5と、回転駆動部6と、昇降駆動部7と、を制御する。コントローラ80は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。コントローラ80は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。コントローラ80は、走行レールRの給電部(給電線)又はフィーダー線等を利用して、上位コントローラ(図示せず)と通信を行う。
【0027】
防振ユニット20について説明する。
図3~
図5に示されるように、防振ユニット20は、一対の支持部21,21と、ベース部23と、一対のダンパー30,30と、を備えている。
【0028】
一対の支持部21,21は、左右方向に間隔をあけて配列されており、本体フレーム4の上面4aに固定されている。一対の支持部21,21は、例えば、ネジ22等の部材によって本体フレーム4に固定されている。一対の支持部21,21には、左右方向に水平に延在する一本の回動軸26が掛け渡されている。より詳細には、一対の支持部21,21のそれぞれには、回動軸26が挿通される挿通孔21aが形成されている。挿通孔21aには、筒状の樹脂ブッシュ27が内挿され、回動軸26は、樹脂ブッシュ27に内挿されている。すなわち、回動軸26は、樹脂ブッシュ27を介して一対の支持部21,21に支持されている。回動軸26は、前後方向において本体フレーム4の略中央部に配置されているが、本体フレーム4の重心位置等に応じて前後いずれかにずらしてもよい。
【0029】
ベース部23は、走行部2に一対の懸垂部材2F,2Fを介して懸垂される。ベース部23は、前後方向に延在する部材である。ベース部23には、一対の懸垂部材2F,2Fを挿通可能な挿通孔23a,23aが形成されている。挿通孔23a,23aは、ベース部23の前後方向における両端部に形成されている。また、挿通孔23aの内周面には、懸垂部材2Fの延在方向に沿う軸周りに回動可能に懸垂部材2Fを支持するベアリング23bが設けられている。
【0030】
ベース部23は、回動軸26に対して回動不能に設けられている。より詳細には、回動軸26は、ベース部23に形成された挿通孔23cに挿入されており、回動軸26とベース部23とはネジ24Aによって固定されている。ベース部23は、水平方向に延在する回動軸26を介して回動可能な状態で一対の支持部21,21に支持されている。言い換えれば、一対の支持部21,21は、ベース部23と一体的に回動する回動軸26を回動可能に支持している。
【0031】
一対のダンパー30,30は、前後方向において、回動軸26を挟むように設けられると共に本体フレーム4の上面4aに接触するように設けられている。また、ダンパー30は、ベース部23に形成された挿通孔23dに内挿されており、下方(本体フレーム4の上面4a)に向かって一部が突出するように設けられている。ダンパー30は、本体フレーム4の上面4aに接触したときに生じるエネルギーを吸収する。
【0032】
図5及び
図6に示されるように、ダンパー30は、ゴム部材31と、バネ部材32と、接触部33と、収容部34と、緩衝部35と、を有する。ゴム部材31は、弾性力を有しており、例えばウレタンゴム等の材料により形成されている。バネ部材32は、ゴム部材31を内挿するように配置されている。バネ部材32の弾性力は、ゴム部材31の弾性力よりも大きくてもよい。これにより、バネ部材32がある程度縮むとゴム部材31の弾性力が接触部33に追加されるようになる。接触部33は、本体フレーム4の上面4aに接触する部材である。接触部33の下部の本体フレーム4の上面4aに接触する部分は、超高分子量ポリエチレン等の耐圧縮性を有する材料によって形成されている。接触部33の上部には、ゴム部材31の下端及びバネ部材32の下端に接触するフランジ部33aが形成されている。本実施形態のバネ部材32は、圧縮が加えられた状態、すなわち与圧が付加された状態で接触部33に接している。収容部34は、ゴム部材31と、バネ部材32と、接触部33の一部とを収容する。緩衝部35は、接触部33の上下動による摩耗を防ぐために設けられる樹脂ブッシュである。
【0033】
ベース部23には、挿通孔23dの上部開口を覆う蓋部28が設けられている。蓋部28は、ネジ28A等でベース部23に固定される。蓋部28の中央部には、ダンパー30による本体フレーム4への押付量(接触部33のベース部23からの突出量)を調整する調整用ネジ29が設けられている。調整用ネジ29の先端は、収容部34の上面34aに当接している。ベース部23の下面から突出する接触部33の突出量は、蓋部28に対する調整用ネジ29を回転させることによって調整することができる。
【0034】
上記実施形態の天井搬送車1における作用効果について説明する。
図4に示されるように、上記実施形態の天井搬送車1では、走行部2から伝播される振動が、本体部3(本体フレーム4)に対して回動可能に支持されるベース部23によって吸収される。更に、上記実施形態の天井搬送車1では、走行中に走行部2が段差等に乗り上げることによって走行部2が傾いた場合であっても、走行部2に対して重量値が相対的に大きな本体部3は慣性力によってその姿勢を維持しようとする。また、上記実施形態の天井搬送車1では、本体部3と走行部2との相対位置関係がダンパー30によって安定的に維持される。これらの結果、走行部2からの振動が被搬送物90に伝播するのを抑制しつつ、かつ被搬送物90に揺れが生じることを抑制することができる。
【0035】
上記実施形態の天井搬送車1では、
図5に示されるように、回動軸26は、左右方向に延在するように配置されると共に、走行部2の走行方向において本体部3の中央部に配置されており、一対のダンパー30,30は、走行部2の走行方向において回動軸26を挟むように設けられている。これにより、本体部3に対して走行部2の角度変化を許容するにあたり、走行部2の走行方向にのみ角度変化が許容されるので、左右方向(横方向)への被搬送物90の移載時に本体部3が傾くことを最小限に留めることができる。
【0036】
上記実施形態の天井搬送車1では、懸垂部材2F,2Fは、ベアリング23bを介してベース部23に対して懸垂部材2F,2Fの延在方向を回動軸とする軸周りに回動可能に支持されている。このため、懸垂部材2F,2Fにおける走行部2に対する取付部分とベース部23に対する取付部分との間にねじれ応力が生じることを低減できる。
【0037】
上記実施形態の天井搬送車1では、本体部3に直接接触する一対のダンパー30,30と走行部2に接続される一対の懸垂部材2F,2Fとが平面視において互いに重ならないように配置されるので、本体部3の姿勢の変化がダイレクトに走行部2を押し上げることを抑制できる。これにより、走行駆動部2Mを構成するLDMと磁気プレートPとが衝突するおそれを低減できる。
【0038】
上記実施形態の天井搬送車1では、ダンパー30は、
図6に示されるように、ゴム部材31とバネ部材32とを有しているので、バネ部材32を圧縮することによってダンパー30に生じさせる与圧の調整を容易に行うことができる。本実施形態のダンパー30では、所定の与圧が付与されている。また、本実施形態の天井搬送車1では、
図7(A)に示されるように、走行部2及び本体部3の両方に傾きが無い場合には、ダンパー30の接触部33と本体フレーム4の上面4aとは、接触部33が本体フレーム4に力を作用させない状態で互いに接触している。なお、調整用ネジ29を回転させて接触部33の突出量を調整することで、接触部33を本体フレーム4の上面4aに接触させることができる。
【0039】
ここで、走行部2が前方に加速した場合、
図7(B)に示されるように、回動自在な状態のベース部23には前側に沈み込むような力が作用する。しかしながら、与圧が付与されたダンパー30では、ベース部23の前側が沈み込むような力が作用したとしても、所定以上の力(すなわち、与圧としてバネ部材32に付与された力以上の力)が作用するまではバネ部材32及びゴム部材31が圧縮されることはなく、ベース部23が本体フレーム4に対して傾くことはない。上記実施形態のダンパー30では、想定される加速度によって生じる力に耐え得るような与圧が設定されている。このような構成によって、天井搬送車1の加速時に本体フレーム4の姿勢変化が生じることが抑制できる。すなわち、天井搬送車1の加速時に被搬送物90の揺れが生じることを抑制できる。
【0040】
本実施形態の天井搬送車1では、前後方向両方のダンパー30,30に上述したような与圧が付与されているので、
図7(B)に示されるような図示はしないが、天井搬送車1の減速時においても本体フレーム4の姿勢変化が生じることが抑制できる。すなわち、本実施形態では、想定される減速度によって生じる力に耐え得るような与圧が設定されているので、天井搬送車1の減速時に被搬送物90の揺れが生じることを抑制できる。
【0041】
以上、一実施形態について説明したが、本発明の一側面は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
上記実施形態の天井搬送車1では、一対の支持部21、21は、樹脂ブッシュ27を介して回動軸26を回動可能に支持するが、樹脂ブッシュ27を、例えばニトリルゴム等から形成されるゴムブッシュに変更すれば、ゴムブッシュのねじれにより、回動軸26の回動方向における振動だけでなく、その他の方向における振動についても、走行部2からの振動が被搬送物90に伝播することを効果的に抑制することができる。
【0043】
上記実施形態では、ベース部23が前後方向に(左右方向に延在する軸を回動軸として)のみ回動可能に構成された例を挙げて説明したが、ベース部23が左右方向に(前後方向に延在する軸を回動軸として)のみ回動可能に構成されてもよい。
【0044】
上記実施形態及び変形例では、走行部2が互いに回動可能な前方走行体2Aと後方走行体2Bとを有している例を挙げて説明したが、単体の走行体から形成されていてもよい。
【0045】
上記実施形態及び変形例では、回動軸26は、樹脂ブッシュ27を介して一対の支持部21,21に支持されている例を挙げて説明した。そして、一対の支持部21,21のそれぞれの挿通孔21aに内挿される樹脂ブッシュ27,27は、互いに硬度が異なる材料によって形成されてもよい。例えば、左右の樹脂ブッシュ27,27を互いに異ならせることによって、Z軸方向から見たときの防振ユニット20の重心位置と本体部3の重心位置とが異なる場合や、左右方向(横方向)に被搬送物90を移載する場合に、走行部2に対する本体部3の相対位置関係(走行部2に対する本体部3の姿勢)の維持を容易にできる。
【符号の説明】
【0046】
1…天井搬送車、2…走行部、2F…懸垂部材、3…本体部、4…本体フレーム、4a…上面、20…防振ユニット、21…支持部、23…ベース部、23a…挿通孔、23b…ベアリング、23c…挿通孔、23d…挿通孔、24A…ネジ、26…回動軸、27…樹脂ブッシュ、28…蓋部、28A…ネジ、29…調整用ネジ、30…ダンパー、31…ゴム部材、32…バネ部材、33…接触部、34…収容部。