(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】接着剤組成物、接着シート、電磁波シールドフィルム、積層体およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C09J 123/30 20060101AFI20240814BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240814BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240814BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240814BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C09J123/30
C09J11/06
C09J7/30
H05K1/03 610J
B32B27/00 D
(21)【出願番号】P 2023562787
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2023001208
(87)【国際公開番号】W WO2023136361
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2022005258
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薗田 遼
(72)【発明者】
【氏名】川楠 哲生
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063353(JP,A)
【文献】特開2021-003886(JP,A)
【文献】国際公開第2021/070606(WO,A1)
【文献】特開平8-109333(JP,A)
【文献】特開2004-99519(JP,A)
【文献】特表2019-502809(JP,A)
【文献】特開2000-103969(JP,A)
【文献】特開2005-105203(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109130393(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B27/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が5~40mgKOH/gである酸変性ポリオレフィン(a)
を主剤として含み、
さらに硬化剤(b)およびリン系難燃剤(c)を含む接着剤組成物であり、
前記リン系難燃剤(c)が分子中に脂環骨格を有する、接着剤組成物。
【請求項2】
酸変性ポリオレフィン(a)および硬化剤(b)の合計量100質量部に対して、リン系難燃剤(c)を1~60質量部含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
硬化剤(b)がエポキシ樹脂、ポリイソシアネートおよびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種類を含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
リン系難燃剤(c)が、分子中にさらに芳香族環を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
リン系難燃剤(c)が非晶性である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、硬化剤(b)を0.5~60質量部含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
10GHzの比誘電率が3.0以下、誘電正接が0.02以下である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する接着シート。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する電磁波シールドフィルム。
【請求項10】
請求項1~
7のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する積層体。
【請求項11】
請求項
10に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。より詳しくは、樹脂基材と樹脂基材または金属基材との接着に用いられる接着剤組成物に関する。特にフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと略す)用接着剤組成物、並びにそれを含む接着シート、電磁波シールド材、積層体およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC)は、優れた屈曲性を有することから、狭く複雑な電子機器の内部空間に電子回路基板を組み込むことを可能とすることでき、パソコン(PC)やスマートフォンなどの多機能化、小型化に貢献している。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これらの流行から配線板(電子回路基板)の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特にFPCにおける伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでいる。これに伴い、FPCには、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。高周波領域におけるFPCの低誘電特性を達成するため、FPCの基材や接着剤の誘電体損失を低減する方策がなされており、低誘電性接着剤組成物については、特許文献1においてはα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された変性ポリオレフィン樹脂とエポキシ樹脂とを含有する接着剤組成物が開示されている。さらに上記の目的で使用する接着剤組成物は可燃性であることが多く、難燃性を付与することが求められる場合がある。難燃剤としてはハロゲン系有機化合物を使用した系が優れた難燃性を有することが知られているが、この方法は燃焼時に腐食性のハロゲンガスを発する等の問題があり、その点の回避策としては、例えば特許文献2では、特定の化学構造と重量平均分子量を有するビニル化合物、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂、硬化剤および有機ホスフィン酸アルミニウムを含有する樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2016/047289号
【文献】特開2014-34668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における乾燥状態でのハンダ耐熱試験が良好であることをもって、高温多湿など様々な環境下で製造されるFPC用接着剤のハンダ耐熱性が優れるとまでは言い難い。また、特許文献2では、誘電率や難燃性について言及されているが、実施例において示されている接着性は対銅箔の場合のみであり、ポリイミド基材や液晶ポリマー(LCP)基材との接着性の評価データは示されておらず、実際のところは不明である。またFPC用途において必要とされるハンダ耐熱性については言及されておらず、意識さえされていないようである。また、いずれの文献でも高温高湿下での絶縁信頼性について、検討されていなかった。
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の組成を有する接着剤組成物が、ポリイミドフィルムなどの樹脂基材と、銅箔などの金属基材との、双方に対して高い接着性を有し、かつハンダ耐熱性、低誘電特性に優れ、さらに絶縁信頼性やUL-94に基づくVTM-0の難燃性を有することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリイミドなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つハンダ耐熱性、低誘電特性、絶縁信頼性および難燃性にも優れた接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 酸変性ポリオレフィン(a)、硬化剤(b)およびリン系難燃剤(c)を含む接着剤組成物であり、リン系難燃剤(c)が分子中に脂環骨格を有する、接着剤組成物。
[2] 酸変性ポリオレフィン(a)および硬化剤(b)の合計量100質量部に対して、リン系難燃剤(c)を1~60質量部含有する前記[1]に記載の接着剤組成物。
[3] 酸変性ポリオレフィン(a)の酸価が5~40mgKOH/gである前記[1]または[2]に記載の接着剤組成物。
[4] 硬化剤(b)がエポキシ樹脂、ポリイソシアネートおよびポリカルボジイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種類を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[5] リン系難燃剤(c)が、分子中にさらに芳香族環を有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[6] リン系難燃剤(c)が非晶性である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[7] 酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、硬化剤(b)を0.5~60質量部含有する前記[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[8] 10GHzにおける比誘電率が3.0未満である前記[1]~[7]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[9] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する接着シート。
[10] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する電磁波シールドフィルム。
[11] 前記[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤組成物からなる層を有する積層体。
[12] 前記[11]に記載の積層体を構成要素として含むプリント配線板。
【0008】
[13] リン系難燃剤(c)が、式(1)のリン系難燃剤を含有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[14] リン系難燃剤(c)が、式(2)~式(5)から選ばれる1種または2種以上リン系難燃剤を含有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の接着剤組成物。
[15] 前記[13]または[14]に記載の接着剤組成物からなる層を有する接着シート。
[16] 前記[13]または[14]に記載の接着剤組成物からなる層を有する電磁波シールドフィルム。
[17] 前記[13]または[14]に記載の接着剤組成物からなる層を有する積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる接着剤組成物は、ポリイミドなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つハンダ耐熱性、低誘電特性、絶縁信頼性および難燃性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<酸変性ポリオレフィン樹脂(a)>
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン樹脂(a)(以下、単に(a)成分ともいう。)は限定的ではないが、ポリオレフィン樹脂にα,β-不飽和カルボン酸およびその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレン等に例示されるオレフィンモノマーのうちの1種からなる単独重合体または2種以上のモノマーからなる共重合体、および得られた重合体の水素化物やハロゲン化物など、炭化水素骨格を主体とする重合体を指す。酸変性ポリオレフィン樹脂(a)は、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびプロピレン-α-オレフィン共重合体の少なくとも1種に、α,β-不飽和カルボン酸およびその酸無水物の少なくとも1種をグラフトすることにより得られるものが好ましい。
【0011】
本発明で用いる酸変性ポリオレフィン樹脂(a)は、特に限定されないが、プロピレン-α-オレフィン共重合体の酸変性体であることが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体は、プロピレンを主体としてこれにα-オレフィンを共重合したものである。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを1種又は数種用いるこができる。これらのα-オレフィンの中では、エチレン、1-ブテンが好ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体のプロピレン成分とα-オレフィン成分との比率は限定されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。また、酸変性ポリオレフィン樹脂(a)は、酢酸ビニル等の非α-オレフィンモノマーを共重合成分として含んでも差し支えなく、また非α-オレフィンモノマーを共重合成分として含まなくても良い。
【0012】
α,β-不飽和カルボン酸およびその酸無水物の少なくとも1種としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。すなわち、酸変性ポリオレフィン樹脂(a)は、具体的には、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、無水マレイン酸変性プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が挙げられ、これら無水マレイン酸変性ポリオレフィンを1種類又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂(a)の酸価は、ハンダ耐熱性および樹脂基材や金属基材との接着性の観点から、下限は5mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは6mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは7mgKOH/g以上であり、特に好ましくは10mgKOH/g以上である。前記下限値以上とすることで硬化剤(b)との反応性が良好となり、優れた接着強度を発現することができる。また、架橋密度が高くハンダ耐熱性が良好となる。上限は30mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは28mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは25mgKOH/g以下である。前記上限値以下とすることで接着性が良好となる。また、溶液の粘度や粘度の経時的な安定性が良好となり、優れたポットライフ性を発現できる。さらに基材への塗工工程において経時的な増粘が抑制できることから、積層体の製造効率も向上する。
【0014】
酸変性ポリオレフィン樹脂(a)の数平均分子量(Mn)は、10,000~50,000の範囲であることが好ましい。より好ましくは15,000~45,000の範囲であり、さらに好ましくは20,000~40000の範囲であり、特に好ましくは22,000~38,000の範囲である。前記下限値以上とすることで凝集力が良好となり、優れた接着性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで流動性に優れ、操作性が良好となる。
【0015】
酸変性ポリオレフィン樹脂(a)は、結晶性であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂を試料とし、示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で昇温融解し、次いで液体窒素温度まで急冷し、その後、20℃/分の速度で再度昇温融解した際の融解ピークのトップ温度を融点とする。左記の再度の昇温過程において明確な融解ピークを示したものを結晶性、明確な融解ピークが示さなかったものを非晶性、とする。
【0016】
酸変性ポリオレフィン樹脂(a)の融点(Tm)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは60℃~100℃の範囲であり、最も好ましくは70℃~90℃の範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性やハンダ耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0017】
酸変性ポリオレフィン樹脂(a)の融解熱量(ΔH)は、5J/g~60J/gの範囲であることが好ましい。より好ましくは10J/g~50J/gの範囲であり、最も好ましくは20J/g~40J/gの範囲である。前記下限値以上とすることで結晶由来の凝集力が良好となり、優れた接着性やハンダ耐熱性を発現することができる。また、前記上限値以下とすることで溶液安定性、流動性に優れ、接着時の操作性が良好となる。
【0018】
酸変性ポリオレフィン樹脂(a)の製造方法としては、特に限定されず、例えばラジカルグラフト反応(すなわち主鎖となるポリマーに対してラジカル種を生成し、そのラジカル種を重合開始点として不飽和カルボン酸および酸無水物をグラフト重合させる反応)、などが挙げられる。
【0019】
ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、有機過酸化物を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、特に限定されないが、ジ-tert-ブチルパーオキシフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類等が挙げられる。
【0020】
<硬化剤(b)>
本発明の接着剤組成物は、硬化剤(b)(以下、単に(b)成分ともいう。)を含有する。接着剤組成物に硬化剤(b)を含有させることで、接着性およびハンダ耐熱性をさらに向上させることが可能である。硬化剤(b)としては、公知のものを用いることができる。硬化剤(b)として、例えば、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド、オキサゾリン架橋剤、アジリジン架橋剤を挙げることができる。好ましくはエポキシ樹脂、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミドである。これらの架橋剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
<エポキシ樹脂>
本発明で用いるエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。具体的には、特に限定されないが、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン等のアミノ基含有エポキシ樹脂、およびエポキシ変性ポリブタジエン等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられ、これらを1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。ハンダ耐熱性が向上することから芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂およびアミノ基含有エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはアミノ基含有エポキシ樹脂である。芳香族エポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはノボラック型エポキシ樹脂であり、脂環式エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましい。これらエポキシ樹脂と、ポリイソシアネート、ポリカルボジイミド等の他の硬化剤とを併用してもよい。
【0022】
本発明で用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、50g/eq以上であることが好ましく、より好ましくは70g/eq以上であり、さらに好ましくは80g/eq以上である。また、400g/eq以下であることが好ましく、より好ましくは350g/eq以下であり、さらに好ましくは300g/eq以下である。前記範囲内とすることで、優れたハンダ耐熱性を発現することができる。
【0023】
<ポリカルボジイミド>
本発明で用いるポリカルボジイミドとしては、分子内にカルボジイミド基を有するものであれば、特に限定されない。好ましくは分子内にカルボジイミド基を2個以上有するポリカルボジイミドである。
【0024】
ポリカルボジイミドは、芳香族カルボジイミド化合物、脂環族カルボジイミド化合物または脂肪族カルボジイミド化合物のいずれでも良く、これらを単独で使用することができるし、2種以上を併用することもできる。芳香族カルボジイミド化合物としては、ポリ-m-フェニレンカルボジイミド、ポリ-p-フェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)などが挙げられる。脂環族カルボジイミド化合物としては、ポリ-m-シクロヘキシルカルボジイミド、ポリ-p-シクロヘキシルカルボジイミド、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ポリ(3,3’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドなどが挙げられる。脂肪族カルボジイミド化合物としては、直鎖状または分岐状の脂肪族カルボジイミド化合物のいずれであっても構わない。好ましくは直鎖状の脂肪族カルボジイミド化合物であり、具体的には、ポリメチレンカルボジイミド、ポリエチレンカルボジイミド、ポリプロピレンカルボジイミド、ポリブチレンカルボジイミド、ポリペンタメチレンカルボジイミド、ポリヘキサメチレンカルボジイミドなどが挙げられる。これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。中でも芳香族カルボジイミド化合物または脂環族カルボジイミド化合物であることが好ましい。
【0025】
<ポリイソシアネート>
本発明で用いるポリイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物であることが好ましい。また、多官能イソシアネート化合物から誘導された化合物も使用することができる。
【0026】
ポリイソシアネートは、芳香族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物または脂肪族イソシアネート化合物のいずれでも良く、これらを単独で使用することができるし、2種以上を併用することもできる。中でも脂肪族イソシアネート化合物であることが好ましく、より好ましくは脂肪族ジイソシアネート化合物である。芳香族イソシアネート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,8-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビフェニルジイソシアネート、4,4’-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。なかでも3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネートが好ましい。脂環族イソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。脂肪族イソシアネート化合物としては、直鎖状または分岐状の脂肪族イソシアネートのいずれであっても構わない。好ましくは直鎖状の脂肪族ジイソシアネート化合物であり、具体的には、1,3-プロパンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート、1,8-オクタメチレンジイソシアネート、1,9-ノナメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を併用して使用することができる。中でも1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートであることが好ましい。
【0027】
ポリイソシアネートは、前記イソシアネート化合物のイソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット体、ウレトジオン体、またはアロファネート体であっても差し支えない。また、ポリイソシアネートは、イソシアネート基がブロック化されたブロックイソシアネートを用いてもよい。これらの化合物を単独で使用しても良いし、2種以上を併用することもできる。中でも、イソシアヌレート体またはビウレット体であることが好ましい。
【0028】
本発明の接着剤組成物において、硬化剤(b)の含有量は、酸変性ポリオレフィン(a)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上であり、特に好ましくは10質量部以上である。前記下限値以上とすることで十分な硬化効果が得られ、優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。また、60質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、さらに好ましくは40質量部以下である。前記上限値以下とすることで接着剤組成物の低誘電特性および絶縁信頼性が良好となる。すなわち、前記範囲内とすることで、接着性、ハンダ耐熱性およびポットライフ性に加え、優れた低誘電特性および絶縁信頼性を有する接着剤組成物を得ることができる。リン系難燃剤(c)の好適な例として、式(1)の化合物を含有する難燃剤を挙げることができる。リン系難燃剤(c)としては、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)から選ばれる1種または2種以上の化合物を含有するものであることがより好ましく、入手容易な点で、式(2)の化合物であるテトラキス(2,6-ジメチルフェニル)=(3,3,5-トリメチルシクロヘキサン-1,1-ジイル)ビス(4,1-フェニレン)=ビス(ホスフェート)を含有するものであることがさらに好ましい。
【0029】
式(1)
【化1】
式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であり、R
5、R
6およびR
9はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のアルコキシ基であり、R
7およびR
8はそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であり、nは1~10の整数であり、n
1およびn
2はそれぞれ独立して0~3の整数であり、m
1およびm
2はそれぞれ独立して0~4の整数であり、pは0~26の整数であり、kは3~12の整数であり、pが2以上のとき任意の2つのR
9同士が繋がって該R
9が結合している環の炭素原子と一緒になって別の環を形成してもよい。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
<リン系難燃剤(c)>
本発明の接着剤組成物は、リン系難燃剤(c)(以下、単に(c)成分ともいう。)を含有する。本発明に用いるリン系難燃剤(c)は、分子中に脂環骨格を有するものである。リン系難燃剤(c)が脂環骨格を有することで吸湿性が低減され、リン系難燃剤(c)の加水分解によるリン酸発生を抑制でき、マイグレーション発生を抑えるため、絶縁信頼性を発揮することができる。
【0035】
リン系難燃剤(c)は非晶性であることが好ましい。リン系難燃剤を試料とし、示差走査熱量計を用いて20℃/分の速度で昇温した際に、明確な融解ピークを示したものを結晶性、明確な融解ピークが示さなかったものを非晶性、とする。リン系難燃剤(c)が非晶性であることで、酸変性ポリオレフィン(a)との相溶性が良好となるため、接着剤組成物としたときの接着性が向上する。また、リン系難燃剤(c)は接着剤組成物中の他成分との相溶性向上の観点から、分子量は1000以下であることが好ましく、900以下であることがより好ましい。
【0036】
リン系難燃剤(c)は、難燃性に優れる硬化物を得る観点から、分子中に占めるリン原子の濃度(質量%)が大きいほど好ましい。リン系難燃剤(c)の分子中に占めるリン原子の濃度(質量%)は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上であり、上限は特に限定されるものではないが、例えば、30質量%以下、25質量%以下または20質量%以下である。
【0037】
リン系難燃剤(c)は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、分子中に含まれるアリール基(すなわち芳香族環)の数が多いほど好ましい。リン系難燃剤(c)が含むアリール基の数は、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは5以上であり、特に好ましくは6以上であり、上限は特に限定されるものではないが、例えば、20以下、15以下または10以下である。リン系難燃剤(c)は、難燃性及び耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、分子中に占めるリン原子の濃度(質量%)が大きく、かつ、分子中に含まれるアリール基の数が多いほど好ましい。しかし、通常、アリール基の数が多いほど高分子量化するため分子中に占めるリン原子の濃度(質量%)が相対的に小さくなる。そこで、リン系難燃剤(c)は、分子中に占めるリン原子の濃度が5質量%以上であり、かつ、分子中に含まれるアリール基の数が6以上であることが特に好ましい。
【0038】
また、前記芳香族環は、リン系難燃剤(c)の有するリン原子の近傍に位置していることが耐加水分解性の観点から好ましい。リン系難燃剤(c)が加水分解を起こすとリン酸が発生し、その結果回路基板の銅が溶出することで絶縁信頼性が悪化する懸念があるが、リン原子の近傍に大きな立体障害を有する基が存在すると、高温加湿下においてもリン系難燃剤(c)の加水分解によるリン酸の発生が抑制され、絶縁信頼性が高まる。具体的には、例えば、芳香族環はリン酸エステル結合を介してリン原子と結合していることが好ましい。また、立体障害の効果をさらに高める観点から、芳香族環には例えばアルキル基等の置換基を有していることも好ましい。
【0039】
リン系難燃剤(c)の含有量は、前記(a)および(b)成分の合計100質量部に対し、1~60質量部の範囲であることが好ましく、3~55質量部の範囲がより好ましく、5~50質量部の範囲がさらに好ましい。前記範囲内にすることで、接着剤組成物の接着性、ハンダ耐熱性、電気特性、絶縁信頼性および難燃性が良好となる。
【0040】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、前記(a)成分~(c)成分を含有することで、液晶ポリマー(LCP)などの低極性樹脂基材や金属基材との優れた接着性、電気特性(低誘電特性)、ハンダ耐熱性、絶縁信頼性および難燃性を発現することができる。すなわち、接着剤組成物を基材に塗布、硬化後の接着剤塗膜(接着剤層)が優れた低誘電率特性、ハンダ耐熱性、絶縁信頼性および難燃性を発現することができる。
【0041】
本発明の接着剤組成物は、さらに有機溶剤を含有することができる。本発明で用いる有機溶剤は、酸変性ポリオレフィン(a)、硬化剤(b)およびリン系難燃剤(c)を溶解させるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノiso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等を使用することができ、これら1種または2種以上を併用することができる。特に作業環境性、乾燥性から、メチルシクロへキサンやトルエンが好ましい。
【0042】
有機溶剤は、酸変性オレフィン(a)100質量部に対して、100~1000質量部の範囲であることが好ましく、200~900質量部の範囲であることがより好ましく、300~800質量部の範囲であることが最も好ましい。前記下限値以上とすることで液状およびポットライフ性が良好となる。また、前記上限値以下とすることで製造コストや輸送コストの面から有利となる。
【0043】
本願発明に係る接着剤組成物は、周波数10GHzにおける比誘電率(εc)が3.0以下であることが好ましい。より好ましくは2.6以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。下限は特に限定されないが、実用上は2.0である。また、周波数1GHz~60GHzの全領域における比誘電率(εc)が3.0以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.3以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本願発明に係る接着剤組成物は、周波数10GHzにおける誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましい。より好ましくは0.01以下であり、さらにより好ましくは0.008以下である。下限は特に限定されないが、実用上は0.0001である。また、周波数1GHz~60GHzの全領域における誘電正接(tanδ)が0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましく、0.008以下であることがさらに好ましい。
【0045】
本発明において、比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)は、以下のとおり測定することができる。すなわち、接着剤組成物を離型基材に乾燥後の厚みが25μmとなるよう塗布し、約130℃で約3分間乾燥する。次いで約140℃で約4時間熱処理して硬化させて、硬化後の接着剤組成物層(接着剤層)を離型フィルムから剥離する。剥離後の該接着剤組成物層の周波数10GHzにおける比誘電率(εc)を測定する。具体的には、空洞共振器摂動法による測定から比誘電率(εc)および誘電正接(tanδ)を算出することができる。
【0046】
また、本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、さらに他の成分を必要に応じて含有してもよい。このような成分の具体例としては、オリゴフェニレンエーテルや無機充填剤、粘着付与剤、シランカップリング剤が挙げられる。
【0047】
<オリゴフェニレンエーテル>
本発明で用いるオリゴフェニレンエーテルはフェニレンエーテル構造の繰り返し単位を有する化合物であり、好ましくは下記一般式(6)で表される構造単位および/または一般式(7)の構造単位を有する化合物を用いることができる。
【化6】
【0048】
一般式(6)中、R1,R2,R3,R4は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましい。置換されていてもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基またはエチル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルケニル基の「アルケニル基」としては、例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、エテニル基または1-プロペニル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルキニル基の「アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル(プロパルギル)基、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられ、エチニル基、1-プロピニル基または2-プロピニル(プロパルギル)基であることがより好ましい。置換されていてもよいアリール基の「アリール基」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアラルキル基の「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、α-メチルベンジル基、2-ビニルフェネチル基、4-ビニルフェネチル基等が挙げられ、ベンジル基であることがより好ましい。置換されていてもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」は、例えば炭素数が1以上6以下、好ましくは炭素数が1以上3以下の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基である。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、メトキシ基またはエトキシ基であることがより好ましい。上記のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、及びアルコキシ基が置換されている場合、置換基を1または2以上有していてよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アルケニル基(例えば、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。なかでもR1およびR4がメチル基であり、R2およびR3が水素であることが好ましい。
【0049】
【化7】
一般式(7)中、R
11,R
12,R
13,R
14,R
15,R
16,R
17,R
18は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基または置換されていてもよいアルコキシ基であることが好ましい。なお、各置換基の定義は、前記のとおりである。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であることが好ましい。なかでもR
13、R
14、R
17およびR
18がメチル基であり、R
11、R
12、R
15およびR
16が水素であることが好ましい。また、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状もしくは環状の2価の炭化水素基、または酸素であることが好ましい。Aの炭素数は1以上15以下であることがより好ましく、さらに好ましくは2以上10以下である。また、Aの2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基等が挙げられ、なかでもフェニレン基であることが好ましい。特に好ましくは酸素である。
【0050】
オリゴフェニレンエーテルは、一部又は全部を、メタクリル基やビニルベンジル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、及びシリル基等で官能基化された変性ポリフェニレンエーテルとしてもよい。さらに両末端が、ヒドロキシ基、エポキシ基、またはエチレン性不飽和基を有することがハンダ耐熱性向上の観点から好ましい。エチレン性不飽和基としては、エテニル基、アリル基、メタアクリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、ビニルベンジル基、ビニルナフチル基等のアルケニルアリール基が挙げられる。また、両末端は、同一の官能基であってもよいし、異なる官能基であってもよい。低誘電正接及び樹脂残渣の低減のバランスを高度に制御する観点から、両末端が、ヒドロキシ基、メタクリル基またはビニルベンジル基であることが好ましく、両末端のいずれもが、ヒドロキシ基、メタクリル基またはビニルベンジル基であることがより好ましい。
【0051】
一般式(6)または一般式(7)で表される構造単位を有する化合物としては、一般式(8)の化合物であることが特に好ましい。
【0052】
【化8】
一般式(8)において、nは2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。mは2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。-A-は、一般式(7)と同様である。
【0053】
また、一般式(6)または一般式(7)で表される構造単位を有する化合物としては、一般式(9)または一般式(10)の化合物であることが特に好ましい。
【0054】
【化9】
一般式(9)において、nは2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。mは2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。-A-は、一般式(7)の場合と同様である。
【0055】
【化10】
一般式(10)において、nは2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。mは2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、12以下であることが好ましく、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。-A-は、一般式(7)の場合と同様である。
【0056】
オリゴフェニレンエーテルの数平均分子量は、3000以下であることが好ましく、2700以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましい。またオリゴフェニレンエーテルの数平均分子量は500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。オリゴフェニレンエーテルの数平均分子量を下限値以上とすることにより、得られる接着剤層の可撓性を良好にできる。一方、オリゴフェニレンエーテルの数平均分子量を上限値以下とすることにより、有機溶剤に対する溶解性を良好にできる。
【0057】
オリゴフェニレンエーテルの含有量は、(a)成分100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましい。より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上である。前記下限値以上とすることで優れたハンダ耐熱性を発現することができる。また、200質量部以下であることが好ましい。より好ましくは150質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下であり、特に好ましくは50質量部以下である。前記上限値以下とすることで優れた接着性およびハンダ耐熱性を発現することができる。
【0058】
<無機充填剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて無機充填剤を配合しても良い。成分を含有することにより、接着剤組成物で作製した積層体のハンダ耐熱性が良好となる。無機充填剤としては、フィラーであることが好ましく、シリカフィラー(以下、単にシリカともいう。)であることがより好ましい。シリカを配合することによりハンダ耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シリカとしては一般に疎水性シリカと親水性シリカが知られており、疎水性シリカとしては、ジメチルジクロロシランやヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等で処理を行ったシリカが挙げられ、疎水性シリカは接着剤組成物に耐吸湿性を付与することができる。また、親水性シリカとしては、無処理であり表面にシラノール基やシロキサンを有するシリカが挙げられる。
【0059】
無機充填剤の平均粒子径は、0.01~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.02~5μmであり、さらに好ましくは0.1~1μmである。平均粒子径(メジアン径)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて体積基準で測定することができる。
【0060】
本発明の接着剤組成物において、無機充填剤の含有量は、(a)~(c)成分の合計100質量部に対し、2~50質量部の範囲であることが好ましく、3~45質量部の範囲がより好ましく、5~40質量部の範囲がさらに好ましい。前記範囲内にすることで、接着剤組成物の接着性、ハンダ耐熱性、電気特性が良好となる。
【0061】
<粘着付与剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じて粘着付与剤を配合しても良い。粘着付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。粘着付与剤を含有させる場合、(a)~(c)成分の合計100質量部に対し、1~200質量部の範囲で含有させることが好ましく、5~150質量部の範囲がより好ましく、10~100質量部の範囲が最も好ましい。前記下限値以上とすることで粘着付与剤の効果を奏することができる。また、前記上限値以下とすることで接着性、ハンダ耐熱性、電気特性等が低下することがない。
【0062】
<シランカップリング剤>
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損ねない範囲で、必要に応じてシランカップリング剤を配合しても良い。シランカップリング剤を配合することにより金属への接着性やハンダ耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されないが、不飽和基を有するもの、グリシジル基を有するもの、アミノ基を有するものなどが挙げられる。これらのうちハンダ耐熱性の観点からγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランやβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有したシランカップリング剤がさらに好ましい。シランカップリング剤を配合する場合、その配合量は(a)~(c)成分の合計100質量部に対して0.5~20質量部の配合量であることが好ましい。0.5質量部以上とすることで優れたハンダ耐熱性が良好となる。一方、20質量部以下とすることでハンダ耐熱性や接着性が良好となる。
【0063】
<積層体>
本発明の積層体は、基材に接着剤組成物を積層したもの(基材/接着剤層の2層積層体)、または、さらに基材を貼り合わせたもの(基材/接着剤層/基材の3層積層体)である。ここで、接着剤層とは、本発明の接着剤組成物を基材に塗布し、乾燥させた後の接着剤組成物の層をいう。本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種基材に塗布、乾燥すること、およびさらに他の基材を積層することにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0064】
<基材>
基材とは、本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥し、接着剤層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂等の樹脂基材、金属板や金属箔等の金属基材、紙類等を挙げることができる。
【0065】
樹脂基材の素材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。好ましくはフィルム状樹脂からなる基材(以下、基材フィルム層ともいう)である。
【0066】
金属基材としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。素材としては、SUS、銅、アルミニウム、鉄、スチール、亜鉛、ニッケル等の各種金属、及びそれぞれの合金、めっき品、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属等を例示することができる。好ましくは金属箔であり、より好ましくは銅箔である。金属箔の厚みについては特に限定はないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下ある。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。金属箔は、通常、ロール状の形態で提供されている。本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。リボン状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250~500cm程度であるのが好ましい。
【0067】
紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等を例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシ等を例示することができる。
【0068】
接着剤組成物との接着力、また基材自体および積層体の耐久性の観点から、基材の素材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、またはガラスエポキシが好ましい。
【0069】
<接着シート>
本発明において、接着シートとは、前記積層体と離型基材とを接着剤組成物を介して積したものである。具体的な構成態様としては、積層体/接着剤層/離型基材、または離型基材/接着剤層/積層体/接着剤層/離型基材が挙げられる。離型基材を積層することで接着層および基材の保護層として機能する。また離型基材を使用することで、接着シートから離型基材を離型して、さらに別の基材に接着剤層を転写することができる。
【0070】
本発明の接着剤組成物を、常法に従い、各種積層体に塗布、乾燥することにより、本発明の接着シートを得ることができる。また乾燥後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。
【0071】
<離型基材>
離型基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系等の離型剤が塗布されたものが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、及びポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものも挙げられる。離型基材と接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、またはポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
【0072】
なお、本発明において接着剤組成物を基材上にコーティングする方法としては、特に限定されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥後の接着剤層の厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5~200μmの範囲である。接着フィルム厚が5μm未満では、接着強度が不十分である。200μm以上では乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1質量%以下が好ましい。1質量%超では、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、フクレを生じるという問題点が挙げられる。
【0073】
<プリント配線板>
本発明における「プリント配線板」は、導体回路を形成する金属箔と樹脂基材とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などをも含む総称である。
【0074】
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。
【0075】
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
【0076】
本発明の接着剤組成物はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の接着剤組成物を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する従来のポリイミド、ポリエステルフィルム、銅箔だけでなく、LCPなどの低極性の樹脂基材と高い接着性を有し、耐ハンダリフロー性を得ることができ、接着剤層自身が低誘電特性に優れる。そのため、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔及びボンディングシートに用いる接着剤組成物として好適である。
【0077】
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。樹脂フィルムの樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。特に、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の低極性基材に対しても、優れた接着性を有する。
【0078】
<カバーフィルム>
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたは液晶ポリマーフィルムである。
【0079】
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプロセスを用いて製造することができる。
【0080】
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。
【0081】
基材フィルム側半製品は、例えば、(A)前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程、(B)(A)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)を含む製造法により得られる。
【0082】
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アディティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
【0083】
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0084】
カバーフィルム側半製品は、例えば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0085】
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0086】
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、例えば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロ-ル装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
【0087】
補強材側半製品は、例えば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、例えばSUS、アルミ等の金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板等のように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
【0088】
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
【0089】
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強材側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
【0090】
<電磁波シールドフィルム>
本発明における電磁波シールドフィルムは、接着剤層と保護層からなるものであり、前記接着剤層は本発明の接着剤組成物に導電性粒子を配合した導電性接着剤組成物であることが好ましい。前記接着剤層が導電性接着剤組成物からなるものである場合、本発明の電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際に、プリント配線板のグランド回路と導電性接着剤層とを接触させることによりグランド回路と導電性接着剤層とを電気的に接続することができ、電磁波シールド性を発揮させることができる。
【0091】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0092】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、前記接着剤層と前記保護層との間には、金属層が配置されていても良い。このような金属層は、電磁波を吸収及び反射するシールド層として機能する。そのため、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド特性を向上させることができる。
【0093】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。実施例中および比較例中に単に部とあるのは質量部を示す。
【0094】
(物性評価方法)
(酸価)
酸価(mgKOH/g)は、樹脂試料をトルエンに溶解し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として滴定した値である。
【0095】
(数平均分子量(Mn))
数平均分子量は(株)島津製作所製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC、標準物質:ポリスチレン樹脂、移動相:テトラヒドロフラン、カラム:Shodex KF-802 + KF-804L + KF-806L、カラム温度:30℃、流速:1.0ml/分、検出器:示差屈折率(RI)検出器)によって測定した値である。
【0096】
(融点(Tm)、融解熱量(ΔH)の測定)
(酸変性ポリオレフィンの場合)
示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q-2000)を用いて、20℃/分の速度で160℃まで昇温融解し、次いで液体窒素温度まで急冷した。その後、20℃/分の速度で再度昇温融解し、融解ピークのトップ温度および面積から、融点と融解熱量を求めた。なお、左記の再度の昇温過程において明確な融解ピークを示したものを結晶性、明確な融解ピークが示さなかったものを非晶性、とした。
(リン系難燃剤の場合)
示差走査熱量計(以下、DSC、ティー・エー・インスツルメント・ジャパン製、Q-2000)を用いて、20℃/分の速度で昇温した際の融解ピークのトップ温度を融点とした、なお、左記の昇温過程において明確な融解ピークを示したものを結晶性、明確な融解ピークが示さなかったものを非晶性、とした。
【0097】
(積層体等の特性の評価方法)
(1)剥離強度(接着性)
厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))、または、厚さ25μmのLCPフィルム(株式会社クラレ製、ベクスター(登録商標))に、後述する接着剤組成物を乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を厚さ18μmの圧延銅箔(JX金属株式会社製、BHYシリーズ)と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤層と接する様にして、160℃で40kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、接着した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た。剥離強度は、25℃において、フィルム引き、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
◎:1.2N/mm以上
○:0.9N/mm以上1.2N/mm未満
△:0.6N/mm以上0.9N/mm未満
×:0.6N/mm未満
【0098】
(2)ハンダ耐熱性
上記と同じ方法でサンプルを作製し、2.0cm×2.0cmのサンプル片を23℃で2日間エージング処理を行い、280℃で溶融したハンダ浴に10秒フロートし、膨れなどの外観変化の有無を確認した。
<評価基準>
◎:膨れなし、変色なし
○:部分的に膨れあり、変色なし
△:全面に膨れあり、変色なし
×:一部または全面に膨れあり、変色あり
【0099】
(3)比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)
後述する接着剤組成物を厚さ100μmのテフロン(登録商標)シートに、乾燥硬化後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて試験用の接着剤樹脂シートを得た。得られた試験用接着剤樹脂シートを8cm×3mmの短冊状に裁断し、試験用サンプルを得た。比誘電率(εc)及び誘電正接(tanδ)は、ネットワークアナライザー(アンリツ社製)を使用し、空洞共振器摂動法で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。得られた比誘電率、誘電正接について、以下の通りに評価した。
<比誘電率の評価基準>
◎:2.3以下
○:2.3を超え2.6以下
△:2.6を超え3.0以下
×:3.0を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.006以下
○:0.006を超え0.009以下
△:0.009を超え0.015以下
×:0.015を超える
【0100】
(4)絶縁信頼性
後述する接着剤組成物を厚さ12.5μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を、L/S=50/50μmのくし型パターンに真空プレスラミネート機を用いて、160℃、3MPa、30秒間減圧下で熱圧着させ、その後、140℃で4時間加熱硬化した。温度85℃、湿度85%の環境下、200Vの電圧を250時間印加した。
<評価基準>
×:250時間以内に短絡した。
△:250時間後に短絡しておらず、抵抗値1×108Ω未満。よって、デンドライトなしと判定。
○:250時間後に短絡しておらず、抵抗値1×108Ω以上。よって、デンドライトなしと判定。
【0101】
(5)難燃性
後述する接着剤組成物を厚さ25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカル(登録商標))に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。次いでロールラミネーターにてロール温度100℃、ラミネート速度30m/min、ラミネート圧力23.6N/cmでポリイミドフィルムと貼り合わせた後、140℃で4時間熱処理して硬化させて、積層体を得た。積層体を用いてUL94に基づきサンプル片を作製し、VTM法に基づいて燃焼試験を行った。
<評価基準>
○:VTM-0相当である。
△:VTM-1相当である。
×:VTM-2相当である、またはVTM-2相当よりも難燃性に劣る。
【0102】
<実施例1>
a-1 100質量部、エポキシ樹脂HP-7200Hを10質量部、リン系難燃剤SR-3000を20質量部および有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v(体積比)))を配合し、混合溶液を得た。配合量、接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性、絶縁信頼性および難燃性を表1に示す。なお、有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v))は固形分濃度が20質量%となるように調整した。
【0103】
<実施例2~20>
各成分の種類と量を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様な方法で実施例2~20を行った。接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性、絶縁信頼性および難燃性を表1に示す。なお、有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v))は固形分濃度が20質量%となるように調整した。
【0104】
<比較例1~5>
各成分の種類と量を表1に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様な方法で比較例1~5を行った。接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性、絶縁信頼性および難燃性を表1に示す。なお、有機溶媒(メチルシクロヘキサン/トルエン=80/20(v/v))は固形分濃度が20質量%となるように調整した。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表1~3において、PI/Ad/Cuはポリイミドフィルムと圧延銅箔とを接着剤組成物で貼り合わせた評価用サンプル、LCP/Ad/CuはLCPフィルムと圧延銅箔とを接着剤組成物で貼り合わせた評価用サンプルを使用したことを指す。
【0109】
表1~3で用いた硬化剤(b)、リン系難燃剤(c)および添加剤(d)は以下のものである。
【0110】
(硬化剤(b))
(エポキシ樹脂)
b-1:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:HP-7200H(DIC社製 エポキシ当量 278g/eq)
b-2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:jER-152(三菱ケミカル社製 エポキシ当量 177g/eq
b-3:グリシジルアミン型エポキシ樹脂:jER-630(三菱ケミカル社製 エポキシ当量 98g/eq
(ポリイソシアネート)
b-4:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:スミジュール(登録商標)N-3300(バイエル社製)
(ポリカルボジイミド)
b-5:カルボジイミド樹脂:V-09GB(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 216g/eq)
b-6:カルボジイミド樹脂:V-03(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド当量 209g/eq)
【0111】
(リン系難燃剤(c))
c-1:SR-3000(大八化学工業社製):式(2)の化合物を含有する難燃剤。脂環骨格および芳香環を有する非晶性のリン酸エステル難燃剤。
c-2:PX-200(大八化学工業社製):1,3-フェニレン-テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)リン酸エステルを含有する難燃剤。脂環骨格を有さず、芳香環を有する結晶性のリン酸エステル難燃剤。
c-3:PX-202(大八化学工業社製):4,4’-ビフェニレン-テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)リン酸エステルを含有する難燃剤。脂環骨格を有さず、芳香環を有する結晶性のリン酸エステル難燃剤。
【0112】
(添加剤(d))
d-1:OPE-2St 2200(三菱ガス化学社製 Mn2000の一般式(9)の構造を有するオリゴフェニレンエーテルスチレン変性品)
d-2:SA90(SABIC社製 Mn1800の一般式(8)の構造を有するオリゴフェニレンエーテル)
d-3:SA9000(SABIC製 Mn1700の一般式(10)の構造を有するオリゴフェニレンエーテルメタクリル変性品)
【0113】
表1で用いた酸変性ポリオレフィン(a)は、以下の製造例のとおり作製したものである。
【0114】
(製造例1)
1Lオートクレーブに、プロピレン-ブテン共重合体(三井化学社製「タフマー(登録商標)XM7080」)100質量部、トルエン150質量部及び無水マレイン酸19質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド6質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に3時間撹拌した。その後、得られた反応液を冷却後、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、当該樹脂を含有する液を遠心分離することにより、無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離、精製した。その後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-1、酸価19mgKOH/g、数平均分子量25,000、Tm80℃、△H35J/g)を得た。
【0115】
(製造例2)
無水マレイン酸の仕込み量を14質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-2、酸価14mgKOH/g、数平均分子量30,000、Tm78℃、△H25J/g)を得た。
【0116】
(製造例3)
無水マレイン酸の仕込み量を11質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-3、酸価11mgKOH/g、数平均分子量33,000、Tm80℃、△H25J/g)を得た。
【0117】
(製造例4)
無水マレイン酸の仕込み量を6質量部に変更した以外は製造例1と同様にすることにより、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(a-4、酸価7mgKOH/g、数平均分子量35,000、Tm82℃、△H25J/g)を得た。
【0118】
表1から明らかなように、実施例1~20では、接着剤として、ポリイミド(PI)及びLCPと銅箔との優れた接着性、ハンダ耐熱性を有しながら、銅箔とも優れた接着性、ハンダ耐熱性、絶縁信頼性および難燃性を有する。これに対し、比較例1では、リン系難燃剤(c)を配合していないため、難燃性が劣る。比較例2では、硬化剤(b)を配合していないためハンダ耐熱性が低い。比較例3では、ポリオレフィン樹脂(a)を配合していないため接着性等が劣る。比較例4、5では、脂環骨格を有しないリン系難燃剤(c)であるため、絶縁信頼性、接着強度が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の接着剤組成物は、従来のポリイミド、液晶ポリマーだけでなく、銅箔などの金属基材との、高い接着性を有し、高いハンダ耐熱性を得ることができ、さらに低誘電特性および難燃性や絶縁信頼性にも優れる。本発明の接着剤組成物は、接着性シート、およびこれを用いて接着した積層体を得ることができる。上記特性により、フレキシブルプリント配線板用途、特に高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が求められるFPC用途、電磁波シールド材において有用である。