(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】転削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 9/00 20060101AFI20240814BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B23C9/00 Z
B23Q11/00 Z
(21)【出願番号】P 2024536246
(86)(22)【出願日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2024005523
【審査請求日】2024-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香西 孝司
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-59331(JP,A)
【文献】特開2011-70829(JP,A)
【文献】特開2013-140860(JP,A)
【文献】実開平5-84023(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 9/00
B23C 5/10
B23Q 5/04
B23Q 5/58
B23Q 11/00
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部と、
前記シャフト部に取り付けられている本体部と、
前記本体部の内部空間に収容されている電池と、
前記電池に電気的に接続されているセンサとを備え
る転削工具であって、
前記内部空間に連通する通気孔が前記本体部に設けられ
、
前記シャフト部は、被加工物を切削する切削部が取り付けられる取付部を有し、
前記本体部は、前記取付部と前記電池との間に配置されている下壁部を有し、
前記下壁部に前記通気孔が設けられ、
前記転削工具は、軸線の周りを回転可能であり、
前記下壁部は、前記内部空間を形成する内面と、前記内面の反対に位置する外面とを有し、
前記軸線が延びている方向に対して垂直な方向を径方向とすると、
前記外面における前記通気孔の第1開口部は、前記内面における前記通気孔の第2開口部よりも前記径方向において前記軸線から遠い位置に配置されている、転削工具。
【請求項2】
前記第1開口部は、前記径方向において前記軸線から最も近い第1端部を有し、
前記第2開口部は、前記径方向において前記軸線から最も遠い第2端部を有し、
前記第1端部は前記第2端部よりも前記径方向において前記軸線から遠い位置に配置されている、請求項
1に記載の転削工具。
【請求項3】
前記通気孔は、前記電池に対向する位置に設けられている、請求項1
または請求項2に記載の転削工具。
【請求項4】
前記通気孔を塞ぐフィルタを備え、
前記フィルタは、液体を通さず、かつ気体を通す、請求項1
または請求項2に記載の転削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-54611号公報(特許文献1)には、電池が内部に配置されてある転削工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示に係る転削工具は、シャフト部と、本体部と、電池と、センサとを備えている。本体部は、シャフト部に取り付けられている。電池は、本体部の内部空間に収容されている。センサは、電池に電気的に接続されている。内部空間に連通する通気孔が本体部に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る転削工具の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る転削工具の概略底面図である。
【
図3】
図3は、
図2の線分III-IIIに沿った概略断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の領域IVにおける概略部分拡大断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る切削部が取り付けられたシャフト部の概略斜視図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る転削工具の概略部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の第2変形例に係る転削工具の概略部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の第3変形例に係る転削工具の概略部分拡大断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の第4変形例に係る通気孔の概略部分拡大断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の第5変形例に係る転削工具の概略部分拡大断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態の第6変形例に係る転削工具の概略部分拡大断面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態の第7変形例に係る転削工具の概略断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る転削工具の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
転削工具の状態を把握するためセンサに電力を供給する電池が、本体部の内部空間に収納される。電池がガスを放出するニッケル水素電池などである場合、本体部の内部空間が密閉されていると、本体部の内部空間にガスが充満する。そのため、当該ガスを内部空間から外部に排気する必要がある。
【0007】
本開示の目的は、電池から放出されたガスを外部に排気することができる転削工具を提供することである。
【0008】
[本開示の効果]
本開示によれば、電池から放出されたガスを外部に排気することができる転削工具を提供することができる。
【0009】
[実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0010】
(1)本開示に係る転削工具は、シャフト部と、本体部と、電池と、センサとを備えている。本体部は、シャフト部に取り付けられている。電池は、本体部の内部空間に収容されている。センサは、電池に電気的に接続されている。内部空間に連通する通気孔が本体部に設けられている。
【0011】
本開示に係る転削工具によれば、電池が収納されている本体部の内部空間から当該本体部の外部に電池から放出されたガスを排気することができる。
【0012】
(2)上記(1)に係る転削工具によれば、シャフト部は、取付部を有してもよい。取付部は、被加工物を切削する切削部が取り付けられてもよい。本体部は、下壁部を有してもよい。下壁部は、取付部と電池との間に配置されてもよい。下壁部に通気孔が設けられてもよい。これによって、電池から放出されたガスを下壁部から排気することができる。
【0013】
(3)上記(2)に係る転削工具は、軸線の周りを回転可能であってもよい。下壁部は、内部空間を形成する内面と、内面の反対に位置する外面とを有してもよい。軸線が延びている方向に対して垂直な方向を径方向としてもよい。外面における通気孔の第1開口部は、内面における通気孔の第2開口部よりも径方向において軸線から遠い位置に配置されてもよい。これによって、被加工物の加工時において、切削油が通気孔を介して内部空間に侵入することが低減する。
【0014】
(4)上記(3)に係る転削工具によれば、第1開口部は、径方向において軸線から最も近い第1端部を有してもよい。第2開口部は、径方向において軸線から最も遠い第2端部を有してもよい。第1端部は第2端部よりも径方向において軸線から遠い位置に配置されてもよい。これによって、被加工物の加工時において、切削油が通気孔を介して内部空間に侵入することが低減する。
【0015】
(5)上記(1)に係る転削工具によれば、シャフト部は、取付部を有してもよい。取付部は、被加工物を切削する切削部が取り付けられてもよい。本体部は、上壁部と、下壁部と、側壁部とを有してもよい。下壁部は、上壁部の反対にあってもよい。側壁部は、上壁部と下壁部とに連なってもよい。上壁部と下壁部との間に電池が配置されてもよい。上壁部および側壁部の少なくともいずれかに通気孔が設けられてもよい。これによって、電池が収納されている本体部の内部空間から当該本体部の外部に電池から放出されたガスを排気することができる。また、被加工物の加工時において、切削油が通気孔を介して内部空間に侵入することが低減する。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに係る転削工具によれば、通気孔は、電池に対向する位置に設けられてもよい。これによって、電池が収納されている本体部の内部空間から当該本体部の外部に電池から放出されたガスを効率よく排気することができる。
【0017】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに係る転削工具は、通気孔を塞ぐフィルタを備えてもよい。フィルタは、液体を通さず、かつ気体を通してもよい。これによって、被加工物の加工時において、切削油が通気孔を介して内部空間に侵入することが低減する。
【0018】
[実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本開示の実施形態(以降、本実施形態とも称する)の詳細について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0019】
(第1実施形態)
<転削工具の構成>
まず、第1実施形態に係る転削工具100について説明する。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る転削工具100の概略斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る転削工具100の概略底面図である。
図3は、
図2の線分III-IIIに沿った概略断面図である。
図4は、
図3の領域IVにおける概略部分拡大断面図である。
図5は、
図3の線分V-Vに沿った概略断面図である。第1実施形態に係る転削工具100は、シャフト部1と、本体部2と、電池4と、基板5と、センサ6とを有する。
【0021】
シャフト部1は、第1端面11aと、第2端面11bと、側面11cとを有する。側面11cは、第1端面11aと第2端面11bとに連なる。シャフト部1は、軸線Aに沿って第1端面11aから第2端面11bまで延在している。ここで、
図2から
図5に示されているように、第1端面11aから第2端面11bに向かって軸線Aが延びている方向を軸方向Zとする。軸方向Zに対して垂直であり、軸線Aから離れる方向に向かう方向を径方向Rとする。本体部2は、軸方向Zにおける側面11cの一部を取り囲むように配置されている。
【0022】
図1に示されているように、シャフト部1には、第1端面11aから第2端面11bに向かって側面11c上に切欠部として複数(第1実施形態に係る転削工具100においては2つ)の取付部9が形成されている。
【0023】
図2に示されているように、複数の取付部9は、軸線Aを中心として周方向に等間隔に配置されている。取付部9を形成する壁面には、切削部3が取り付けられている。切削部3は、たとえば、被加工物を切削する切削チップなどである。転削工具100は、ドリル、エンドミル、リーマのいずれかであってもよい。軸線Aの周りにシャフト部1を回転させ、切削部3を被加工物(図示せず)に接触させることで、被加工物を加工することができる。すなわち、転削工具100は、軸線Aの周りを回転可能な切削工具である。
【0024】
<シャフト部>
次に、シャフト部1の構成について説明する。
図6は、第1実施形態に係る切削部3が取り付けられたシャフト部1の概略斜視図である。側面11cは、第1領域11c1、第2領域11c2、第3領域11c3、および第4領域11c4を含む。第1端面11aから第2端面11bに向かって、第1領域11c1、第2領域11c2、第3領域11c3、第4領域11c4の順に配置されている。第1端面11aは、第1領域11c1に連なっている。第2端面11bは、第4領域11c4に連なっている。
【0025】
軸方向Zからみた第1領域11c1、第2領域11c2、および第4領域11c4の各々における側面11cの形状は、たとえば円状である。
図5に示されているように、軸方向Zからみた第3領域11c3における側面11cの形状は、たとえば八角形状である。軸方向Zからみた第3領域11c3における側面11cの形状は、たとえば四角形状であってもよく、五角形状であってもよく、六角形状であってもよい。第2領域11c2における側面11cの外径は、第1領域11c1における側面11cの外径より大きい。
【0026】
前述したように、複数の取付部9は、第1領域11c1に形成されている。切削部3として、たとえば切削チップは、機械的にシャフト部1に対して固定される。たとえば、切削チップに形成されたネジ孔に雄ネジを挿入し、当該雄ネジによって切削チップを締め付けることで切削チップをシャフト部1に対して固定してもよい(図示せず)。
【0027】
図3および
図4に示されているように、第2領域11c2に、下壁部23が配置される。下壁部23は、第3領域11c3の近傍における第2領域11c2に配置される。
【0028】
第3領域11c3は、本体部2によって取り囲まれる領域である。第3領域11c3には、複数(第1実施形態に係る転削工具100においては4つ)の凹部12が形成されていてもよい。凹部12は、第3領域11c3から軸線Aに向かって奥まっている。複数の凹部12は、軸線Aを中心として周方向に等間隔に配置されている。
【0029】
軸方向Zにおける凹部12の中心において、側面11cに溝部12aが形成されていてもよい。溝部12aは、側面11cから軸線Aに向かって奥まっている。溝部12aは、軸線Aを中心として周方向に形成されている。
【0030】
第3領域11c3と第4領域11c4との間において側面11cから径方向Rに上壁部21が突出している。前述したように、第2領域11c2に、下壁部23が配置される。つまり、第3領域11c3は、軸方向Zにおいて上壁部21と下壁部23との間に配置される。
【0031】
第4領域11c4は、たとえば、ツールホルダ10によって当該シャフト部1が保持される領域である(
図13参照)。
【0032】
<本体部>
本体部2の内部空間Qに、電池4と、基板5と、センサ6とが収容される。
図1から
図5に示されているように、本体部2は、上壁部21と、側壁部22と、下壁部23とを有する。取付部9が形成されている第1端面11aからみて、上壁部21は軸方向Zおいて下壁部23よりも遠い位置に配置されている。つまり、下壁部23は、軸方向Zにおいて上壁部21の反対にある。
【0033】
後述するように、センサで検知した情報を無線で外部に送信するために、本体部2の一部は、樹脂材料であってもよい。本体部2において上壁部21および側壁部22は、たとえばシャフト部1と同じ材料であり、たとえば、金属材料であってもよい。下壁部23の材料は、たとえば樹脂材料であってもよい。
【0034】
下壁部23は、外面23aと、内面23bとを有する。内面23bは、内部空間Qを形成する面である。つまり、内面23bは上壁部21に対向している。外面23aは、内面23bの反対に位置する。つまり、軸方向Zにおいて、外面23aは、内面23bより第1端面11aに近い。
【0035】
前述したように、第3領域11c3と第4領域11c4との間において側面11cから径方向Rに上壁部21が突出している。つまり、上壁部21は、シャフト部1と一体である。第2領域11c2に、下壁部23が配置される。
【0036】
側壁部22は、上壁部21と下壁部23とに連なる。側壁部22は、第3領域11c3における側面11cを取り囲む。側壁部22は、径方向Rにおいてシャフト部1の側面11cに対して離間して配置されている。つまり、軸線Aからみて径方向Rにおいて側面11cよりも遠い位置にて、側壁部22は、上壁部21と下壁部23とに連なる。本体部2の内部空間Qは、上壁部21、側壁部22、下壁部23、第3領域11c3における側面11cによって形成される。
【0037】
前述したように、本体部2の内部空間Qに、電池4と、基板5と、センサ6とが収容される。つまり、上壁部21と下壁部23との間に電池4と、基板5と、センサ6とが配置されている。下壁部23は、取付部9と電池4との間に配置されている。本体部2の内部空間Qにおいて電池4、基板5、およびセンサ6を固定する治具(図示せず)が本体部2の内部空間Qに収容されてもよい。
【0038】
図3から
図5に示されているように、凹部12を形成する壁面には、センサ6が配置される。センサ6は、たとえば、所望する物理量を計測できるセンサである。センサ6は、たとえば、歪みセンサ、温度センサ、加速度センサのいずれかであってもよい。複数の凹部12の各々に配置されるセンサ6は、互いに異なる物理量を計測できるセンサであってもよい。複数の凹部12の内、少なくともいずれかにセンサ6が配置されてもよい。
【0039】
基板5は、第1基板5aと、第2基板5bとを含んでもよい。
図5に示されているように、第1基板5aは、第3領域11c3の上に配置されている。第1基板5aは、側面11cの形状に沿って配置されている。
【0040】
図5に示されているように、第2基板5bは、第1基板5aに対して離間して配置されている。第2基板5bは、径方向Rにおいて第1基板5aと側壁部22との間に配置されている。軸方向Zからみて、第2基板5bは側壁部22に沿って配置されている。第1基板5aおよび第2基板5bは、接続部5cを介して電気的に接続されている。
【0041】
基板5は、樹脂などの絶縁体層と、絶縁体層の表面に形成されている銅などの回路パターン(図示せず)とを含む。基板5は、本体部2の内部空間Qに収容できるように可撓性を有する基板であってもよい。
【0042】
センサ6は、配線7を介して第1基板5aに電気的に接続されている。基板5上に、無線通信部、ADコンバータが配置されてもよい(図示せず)。センサ6で検知された物理量などの情報は、アナログ信号である。そのため、ADコンバータを基板5の表面上に配置することで、アナログ信号をデジタル信号に変換して無線通信部に送信することができる。無線通信部に送信された信号は、無線通信部から本体部2の外部へと送信される。当該信号は、本体部2の外部にて受信され、分析されることで、転削工具100の状態が把握される。
【0043】
電池4は、第1基板5aを介して電気的にセンサ6に接続されている。電池4は、センサ6、無線通信部、ADコンバータに電力を供給する。基板5上には、電池4に電気的に接続するためのコネクタ(図示せず)が設けられてもよい。
【0044】
図3および
図4に示されているように、電池4は径方向Rにおいて第1基板5aと第2基板5bとの間に配置されている。電池4は、たとえば1つであってもよく、2つであってもよい。2つの電池4が本体部2の内部空間Qに収容されている場合、
図5に示されているように、軸方向Zから見た平面視において軸線Aに対して点対称となるように電池4が配置されてもよい。このようにすれば、被加工物の加工時において、当該転削工具100の偏心が生じない。
【0045】
電池4は、充電可能なニッケル水素電池などの二次電池であってもよい。電池4がニッケル水素電池である場合、過充電が発生すると当該電池4はガスを放出する。本体部2の内部空間Qにガスが充満しないため、当該ガスを内部空間Qから外部に排気ための通気孔hが本体部2に設けられている。通気孔hは、本体部2の外部から内部空間Qに連通する。このようにすれば、通気孔hを介して電池4から放出されたガスを排気することができる。
【0046】
前述したように上壁部21および側壁部22は、金属材料である。一方、下壁部23は、樹脂材料である。そのため、下壁部23における剛性は、上壁部21および側壁部22における剛性より小さい。上壁部21および側壁部22よりも加工が容易な下壁部23に通気孔hを設けてもよい。
【0047】
通気孔hは、下壁部23の内面23bから外面23aに到達するように形成されている。つまり、通気孔hは、
図4に示されているように、外面23aにおける第1開口部haと、内面23bにおける第2開口部hbとを有する。
【0048】
図5に示されているように、通気孔hは、電池4に対向する位置に設けられている。このようにすれば、電池4から放出されたガスを効率よく排気することができる。
【0049】
通気孔hの数は、たとえば、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。通気孔hの数が多ければ、電池4から放出されたガスを効率よく排気することができる。
【0050】
被加工物の加工時において、被加工物を冷却するために切削油を使用する。そのため、切削油は、加工されている被加工物から飛散してくる。下壁部23に通気孔hを設けた場合、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入するおそれがある。そのため、
図4に示されているように、通気孔hにおける内周面は、軸方向Zに対して傾いていてもよい。具体的には、第1開口部haは、第2開口部hbよりも径方向Rにおいて軸線Aから遠い位置に配置されてもよい。このようにすれば、通気孔hに切削油が浸入したとしても、転削工具100が回転しているため、通気孔hに侵入した切削油に遠心力が働き、当該切削油は本体部2の外部に排出される。その結果、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。
【0051】
軸方向Zにおける通気孔hの厚みtが大きいと、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。また、径方向Rにおける通気孔hの幅wが小さいと、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。そのため、軸方向Zにおける通気孔hの厚みtは、径方向Rにおける通気孔hの幅wに対して0.5倍以上であってもよく、1倍以上であってもよく、2倍以上であってもよい。径方向Rにおける通気孔hの幅wは、4mm以下であってもよく、3mm以下であってもよく、2mm以下であってもよい。通気孔hに切削油および切り屑が詰まることを防止するために、径方向Rにおける通気孔hの幅wは、1mm以上であってもよい。
【0052】
<第1変形例>
図7は、第1実施形態の第1変形例に係る転削工具100の概略部分拡大断面図である。軸方向Zにおける切削部3から下壁部23までの距離が大きい場合、飛散した切削油が下壁部23に到達しないことがある。そのため、
図7に示されているように、通気孔hにおける内周面は、軸方向Zに沿って延在していてもよい。異なる観点から言うと、径方向Rにおいて軸線Aから第1開口部haまでの距離は、軸線Aから第2開口部hbまでの距離と同じであってもよい。
【0053】
<第2変形例>
図8は、第1実施形態の第2変形例に係る転削工具100の概略部分拡大断面図である。通気孔hにおける内周面は、径方向Rに沿って延在している部分と、軸方向Zに沿って延在している部分とを含んでいてもよい。
【0054】
具体的には、通気孔hは、第1内周領域h1、第2内周領域h2、および第3内周領域h3を含んでいてもよい。第1内周領域h1、第2内周領域h2、および第3内周領域h3は、通気孔hにおける内周面を形成している。第1内周領域h1および第3内周領域h3の各々は、軸方向Zに沿って延在している。第2内周領域h2は、径方向Rに沿って延在している。
【0055】
第1内周領域h1は、第1開口部haに連なっている。第2内周領域h2は、第1内周領域h1および第3内周領域h3に連なっている。第3内周領域h3は、第2開口部hbに連なっている。軸方向Zからみた平面視において、径方向Rにおいて軸線Aから第1内周領域h1までの距離は、軸線Aから第3内周領域h3までの距離より遠い。
【0056】
このようにすれば、径方向Rにおいて軸線Aから第1開口部haまでの距離が軸線Aから第2開口部hbまでの距離より遠くなる。その結果、通気孔hに切削油が浸入したとしても、当該切削油が本体部2の内部空間Qに侵入しない。
【0057】
<第3変形例>
図9は、第1実施形態の第3変形例に係る転削工具100の概略部分拡大断面図である。
図10は、
図9の領域Xにおける通気孔hの概略部分拡大断面図である。
【0058】
図10に示されているように、第1開口部haは、径方向Rにおいて軸線Aから最も近い第1端部pa1と、軸線Aから最も遠い第3端部pa3とを有する。第2開口部hbは、径方向Rにおいて軸線Aから最も遠い第2端部pb2と、軸線Aから最も近い第4端部pb4とを有する。
【0059】
被加工物の加工時において、切削油は、たとえば、被加工物に接触する切削部3から通気孔hに向かって飛散する。つまり、本体部2の内部空間Qに切削油が浸入しないために、切削部3と第1端部pa1とを繋ぐ直線からみて、軸線Aが配置されている領域に第2開口部hbが配置されてもよい。
【0060】
第1端面11aは、外周部9aを有する。外周部9aは、第1端面11aにおいて径方向Rにおいて軸線Aから最も遠い。第1端面11aは、第1領域11c1における側面11cと外周部9aにて連なっている。
図9に示されている直線Tは、外周部9aと第1端部pa1とを繋ぐ。
図10に示されているように、内面23bは、直線Tと交差する交点pcを有する。つまり、交点pcは、直線T上にあり、かつ内面23b上にある。第1端部pa1は、径方向Rにおいて交点pcよりも軸線Aに近い位置に配置される。
【0061】
図9に示されているように、直線Tからみて、第2開口部hbは軸線Aが配置されている領域に配置されてもよい。異なる観点からいうと、
図10に示されているように、第2端部pb2は、径方向Rにおいて交点pcよりも軸線Aに近い位置に配置されていればよい。このようにすれば、被加工物に接触する切削部3または取付部9から通気孔hに向かって(直線T上に沿って)切削油が飛散した場合、当該切削油は本体部2の内部空間Qに浸入しない。
【0062】
軸方向Zから見た平面視において第1開口部haが第2開口部hbに重ならなくてもよい。具体的には、
図9に示されているように、第1端部pa1は第2端部pb2よりも径方向Rにおいて軸線Aから遠い位置に配置されてもよい。異なる観点から言うと、径方向Rにおける軸線Aから第1端部pa1までの距離L1は、径方向Rにおける軸線Aから第2端部pb2までの距離L2より大きくてもよい。このようにすれば、軸方向Zから見た平面視において第1開口部haが第2開口部hbに重ならない。これによって、通気孔hに切削油が浸入したとしても、通気孔hに侵入した切削油に遠心力が働き、当該切削油は本体部2の外部に排出される。
【0063】
<第4変形例>
図11は、第1実施形態の第4変形例に係る通気孔hの概略部分拡大断面図である。第2端部pb2は、径方向Rにおいて交点pcよりも軸線Aに近い位置に配置されていればよい。そのため、軸方向Zから見た平面視において第1開口部haの一部が第2開口部hbの一部に重なっていてもよく、第2端部pb2は第1端部pa1よりも径方向Rにおいて軸線Aから遠い位置に配置されてもよい。
【0064】
異なる観点から言うと、径方向Rにおける軸線Aから交点pcまでの距離が径方向Rにおける軸線Aから第2端部pb2までの距離L2より小さければよく、径方向Rにおける軸線Aから第1端部pa1までの距離L1が径方向Rにおける軸線Aから第2端部pb2までの距離L2より小さくてもよい。このようにすれば、被加工物に接触する切削部3または取付部9から通気孔hに向かって(直線T上に沿って)切削油が飛散した場合、軸方向Zから見た平面視において第1開口部haの一部が第2開口部hbの一部に重なっていても、当該切削油は本体部2の内部空間Qに浸入しない。
【0065】
<第5変形例>
図12は、第1実施形態の第5変形例に係る転削工具100の概略部分拡大断面図である。転削工具100は、通気孔hを塞ぐフィルタ8を備えてもよい。フィルタ8は、液体を通さず、かつ気体を通すフィルタであればよい。このようにすれば、通気孔hに切削油が浸入したとしても、当該切削油はフィルタ8によって本体部2の内部空間Qに侵入しない。また、フィルタ8は、気体を通すため、電池4から放出されたガスを排気することができる。フィルタ8は、たとえば接着剤を用いて下壁部23に貼付されてもよい。
【0066】
フィルタ8は、外面23aにおける通気孔hの第1開口部haを塞ぐように、外面23a上に配置されてもよい。
【0067】
また、フィルタ8が内面23bにおける通気孔hの第2開口部hbを塞ぐように、内面23b上に配置されてもよい。このようにすれば、被加工物の加工時において、飛散した切り屑がフィルタ8に当たらない。
【0068】
<第6変形例>
図13は、第1実施形態の第6変形例に係る転削工具100の概略部分拡大断面図である。通気孔hは、本体部2の外部から内部空間Qに連通していればよく、上壁部21および側壁部22の少なくともいずれかに通気孔hが設けられてもよい。
【0069】
図13に示されているように、側壁部22に通気孔hが設けられてもよい。これによって、本体部2の内部空間Qから当該本体部2の外部に電池4から放出されたガスを排気することができる。また、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。
【0070】
<第7変形例>
図14は、第1実施形態の第7変形例に係る転削工具100の概略断面図である。前述したように、通気孔hの幅wが大きい場合、電池4から放出されたガスを排気することができる。通気孔hの幅wは、たとえば、4mm以上であってもよい。
図14に示されているように、通気孔hは、電池4に対向する位置に設けられていなくてもよい。
【0071】
(第2実施形態)
<転削工具の構成>
次に、第2実施形態に係る転削工具100について説明する。
【0072】
図15は、第2実施形態に係る転削工具100の概略斜視図である。転削工具100は、第1実施形態に係る転削工具100に加て、さらにツールホルダ10を有する。ツールホルダ10は、シャフト部1において第4領域11c4における側面11cを保持している。
【0073】
第2実施形態に係る転削工具100において、ツールホルダ10が工作機械の主軸に形成された挿入口に挿入される。このようにして、第2実施形態に係る転削工具100が工作機械の主軸に保持される。ツールホルダ10は、工作機械の主軸の保持機構に合わせて適宜変更してもよい。
【0074】
次に、本開示に係る転削工具100の作用効果について説明する。
転削工具100の状態を把握するために、本体部2の内部空間Qに、センサ6と、当該センサ6に電力を供給する電池4とが収容されている。電池4がガスを放出するニッケル水素電池などである場合、本体部2の内部空間Qにガスが充満してしまうおそれがある。
【0075】
本開示に係る転削工具100は、シャフト部1と、本体部2と、電池4と、センサ6とを備えている。本体部2は、シャフト部1に取り付けられている。電池4は、本体部2の内部空間Qに収容されている。センサ6は、電池4に電気的に接続されている。内部空間Qに連通する通気孔hが本体部2に設けられている。これによって、電池4が収納されている本体部2の内部空間Qから当該本体部2の外部に電池4から放出されたガスを排気することができる。
【0076】
本開示に係る転削工具100によれば、シャフト部1は、取付部9を有してもよい。取付部9は、被加工物を切削する切削部3が取り付けられてもよい。本体部2は、下壁部23を有してもよい。下壁部23は、取付部9と電池4との間に配置されもよい。下壁部23に通気孔hが設けられてもよい。これによって、電池4から放出されたガスを下壁部23から排気することができる。
【0077】
本開示に係る転削工具100は、軸線Aの周りを回転可能であってもよい。下壁部23は、内部空間Qを形成する内面23bと、内面23bの反対に位置する外面23aとを有してもよい。軸線Aが延びている方向に対して垂直な方向を径方向Rとしてもよい。外面23aにおける通気孔hの第1開口部haは、内面23bにおける通気孔hの第2開口部hbよりも径方向Rにおいて軸線Aから遠い位置に配置されてもよい。これによって、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。
【0078】
本開示に係る転削工具100によれば、第1開口部haは、径方向Rにおいて軸線Aから最も近い第1端部pa1を有してもよい。第2開口部hbは、径方向Rにおいて軸線Aから最も遠い第2端部pb2を有してもよい。第1端部pa1は第2端部pb2よりも径方向Rにおいて軸線Aから遠い位置に配置されてもよい。これによって、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。
【0079】
本開示に係る転削工具100によれば、シャフト部1は、取付部9を有してもよい。取付部9は、被加工物を切削する切削部3が取り付けられてもよい。本体部2は、上壁部21と、下壁部23と、側壁部22とを有してもよい。下壁部23は、上壁部21の反対にあってもよい。側壁部22は、上壁部21と下壁部23とに連なってもよい。上壁部21と下壁部23との間に電池4が配置されてもよい。上壁部21および側壁部22の少なくともいずれかに通気孔hが設けられてもよい。これによって、電池4が収納されている本体部2の内部空間Qから当該本体部2の外部に電池4から放出されたガスを排気することができる。また、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。
【0080】
本開示に係る転削工具100によれば、通気孔hは、電池4に対向する位置に設けられてもよい。これによって、電池4が収納されている本体部2の内部空間Qから当該本体部2の外部に電池4から放出されたガスを効率よく排気することができる。
【0081】
本開示に係る転削工具100は、通気孔hを塞ぐフィルタ8を備えてもよい。フィルタ8は、液体を通さず、かつ気体を通してもよい。これによって、被加工物の加工時において、切削油が通気孔hを介して内部空間Qに侵入することが低減する。
【0082】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は、上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
1 シャフト部、2 本体部、3 切削部、4 電池、5 基板、5a 第1基板、5b 第2基板、5c 接続部、6 センサ、7 配線、8 フィルタ、9 取付部、9a 外周部、10 ツールホルダ、11a 第1端面、11b 第2端面、11c 側面、11c1 第1領域、11c2 第2領域、11c3 第3領域、11c4 第4領域、12 凹部、12a 溝部、21 上壁部、22 側壁部、23 下壁部、23a 外面、23b 内面、100 転削工具、A 軸線、h 通気孔、h1 第1内周領域、h2 第2内周領域、h3 第3内周領域、ha 第1開口部、hb 第2開口部、L1,L2 距離、pa1 第1端部、pb2 第2端部、pa3 第3端部、pb4 第4端部、pc 交点、Q 内部空間、R 径方向、T 直線、w 幅、t 厚み、Z 軸方向。
【要約】
転削工具は、シャフト部と、本体部と、電池と、センサとを備えている。本体部は、シャフト部に取り付けられている。電池は、本体部の内部空間に収容されている。センサは、電池に電気的に接続されている。内部空間に連通する通気孔が本体部に設けられている。